(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753486
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 37/10 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
F02M37/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-274868(P2011-274868)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-124629(P2013-124629A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 義彦
(72)【発明者】
【氏名】川北 洋一
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−280486(JP,A)
【文献】
特開2000−023332(JP,A)
【文献】
特開平07−091343(JP,A)
【文献】
特開2008−038649(JP,A)
【文献】
特開2008−064030(JP,A)
【文献】
特開2012−055054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00−37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に配置される燃料ポンプであって、
ハウジングと、
ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第1配線が接続される第1端子と、
ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第2配線が接続される第2端子と、
第1端子及び第2端子に接続されており、外部電源から第1端子及び第2端子を介して供給される電力によって回転するモータと、を備えており、
第1端子及び第2端子は、互いに間隔を空けた状態で第1平面より突出しており、
第1平面の第1端子と第2端子の間には、第1端子と第2端子の両者に接触する液滴が形成されることを防止する液滴形成防止手段が設けられており、
液滴形成防止手段は、第1平面に形成された溝であり、溝の一端は第1平面の周縁に達すると共に開放されており、
溝の長手方向に直交する方向の幅は、第1端子と溝との間にある第1平面の第1端子と溝を結ぶ方向の幅より短く、かつ、第2端子と溝との間にある第1平面の第2端子と溝を結ぶ方向の幅より短い、燃料ポンプ。
【請求項2】
燃料タンク内に配置される燃料ポンプであって、
ハウジングと、
ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第1配線が接続される第1端子と、
ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第2配線が接続される第2端子と、
第1端子及び第2端子に接続されており、外部電源から第1端子及び第2端子を介して供給される電力によって回転するモータと、を備えており、
第1端子及び第2端子は、互いに間隔を空けた状態で第1平面より突出しており、
第1平面の第1端子と第2端子の間には、第1端子と第2端子の両者に接触する液滴が形成されることを防止する液滴形成防止手段が設けられており、
液滴形成防止手段は、第1平面に形成された溝であり、溝の一端は第1平面の周縁に達すると共に開放されており、
溝の長手方向に直交する方向の幅は、溝の深さよりも長い、燃料ポンプ。
【請求項3】
溝の長手方向に直交する方向の幅は、溝の深さよりも長い、請求項1に記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
溝の底は、前記一端に向かって傾斜している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
第1配線と第2配線の端部にはコネクタが設けられており、該コネクタを第1端子及び第2端子に挿し込むことで、第1端子と第1配線が接続されると共に第2端子と第2配線が接続されるようになっており、
コネクタが第1端子及び第2端子に挿し込まれたときに、コネクタの底面と当接するストッパをさらに有しており、
コネクタの底面がストッパに当接することで、コネクタの底面と第1平面との間に隙間が形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内に配置される燃料ポンプでは、燃料中に含まれる水や劣化した燃料によって端子が電食することがある。特許文献1には、かかる問題を解決するための技術が開示されている。特許文献1の技術では、電源コネクタが挿し込まれる燃料ポンプのコネクタ部に液体排出口が形成される。燃料タンクの液位が低下し、コネクタ部が完全に空気中に露出すると、コネクタ部に入り込んでいる燃料が液体排出口より排出される。これによって、端子の電食が防止されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−91343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、燃料ポンプのコネクタ部に入り込んだ燃料を液体排出口からある程度は排出できるものの、燃料ポンプのコネクタ部に入り込んだ燃料を完全には排出できない。すなわち、燃料の表面張力によって、少量の燃料が燃料ポンプのコネクタ部に残留する。燃料ポンプの端子周辺に燃料が残留すると、その残留する燃料によって端子が電食する虞がある。
【0005】
本明細書は、燃料ポンプの端子の電食をより抑制することができる燃料ポンプを開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する燃料ポンプは、燃料タンク内に配置される燃料ポンプであって、ハウジングと、ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第1配線が接続される第1端子と、ハウジングの第1平面に設けられ、外部電源に接続される第2配線が接続される第2端子と、第1端子及び第2端子に接続されており、外部電源から第1端子及び第2端子を介して供給される電力によって回転するモータを備えている。第1端子及び第2端子は、互いに間隔を空けた状態で第1平面より突出している。そして、第1平面の第1端子と第2端子の間には、第1端子と第2端子の両者に接触する液滴が形成されることを防止する液滴形成防止手段が設けられている。
【0007】
この燃料ポンプでは、第1端子と第2端子が突設された第1平面に液滴形成防止手段が設けられている。このため、第1端子と第2端子の両者に接触する液滴が形成されることが防止され、燃料の液滴を介して第1端子と第2端子の間に電流が流れることが防止される。その結果、第1端子及び第2端子の電食を防止することができる。
【0008】
上記の液滴形成防止手段は、例えば、第1端子と第2端子の間に位置する第1平面上の燃料を、第1端子側に形成される液滴と、第2端子側に形成される液滴とに分離するものとすることができる。このような構成によると、第1端子と第2端子の間の第1平面上に燃料が残留しても、それらは第1端子側の液滴と、第2端子側の液滴とに分離される。このため、第1端子と第2端子の間に電流が流れることが防止され、第1端子及び第2端子の電食を防止することができる。
【0009】
上記の燃料ポンプの一実施態様では、液滴形成防止手段は、第1平面に形成された溝であり、溝の一端は第1平面の周縁に達すると共に開放されている。このような構成によると、第1端子と第2端子の間の第1平面上の燃料は、溝を流れて第1平面の周縁から外部に排出することができる。
【0010】
上記の場合、溝の底は、前記一端に向かって傾斜していることが好ましい。このような構成によると、溝内の燃料を前記一端に向かって流れ易くすることができる。
【0011】
上記の溝の長手方向に直交する方向の幅は、第1端子と溝との間にある第1平面の第1端子と溝を結ぶ方向の幅より短く、かつ、第2端子と溝との間にある第1平面の第2端子と溝を結ぶ方向の幅より短いことが好ましい。このような構成によると、第1端子側の液滴と、第2端子側の液滴とが、凹部を越えて繋がることを防止することができる。
【0012】
また、上記の溝の長手方向に直交する方向の幅は、溝の深さよりも長いことが好ましい。このような構成によると、第1端子側の液滴と、第2端子側の液滴とが、凹部を越えて繋がることをより防止することができる。
【0013】
また、上記の燃料ポンプの他の実施態様では、第1配線と第2配線の端部にはコネクタが設けられており、該コネクタを第1端子及び第2端子に挿し込むことで、第1端子と第1配線が接続されると共に第2端子と第2配線が接続されるようになっていてもよい。この場合に、コネクタが第1端子及び第2端子に挿し込まれたときに、コネクタの底面と当接するストッパをさらに有しており、コネクタの底面がストッパに当接することで、コネクタの底面と第1平面との間に隙間が形成されていてもよい。このような構成によると、コネクタの底面と第1平面との間に適切な隙間が形成され、コネクタの底面と第1平面との間に燃料が残留してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】トップカバーに形成されるコネクタ部と、そのコネクタ部に挿し込まれる配線コネクタを示す図。
【
図7】トップカバーのコネクタ部にコネクタが挿し込まれた状態を示す図。
【
図9】実施例2のトップカバーに形成されるコネクタ部を示す図。
【
図19】実施例1の他の変形例において、トップカバーのコネクタ部にコネクタが挿し込まれた状態を示す図。
【実施例1】
【0015】
実施例1の燃料ポンプを図を用いて説明する。本実施例の燃料ポンプは、自動車用の燃料ポンプであり、燃料タンク内に配置され、自動車のエンジンへ燃料を供給するために利用される。
図1に示すように、燃料ポンプ10は、モータ部12とポンプ部14を備えており、モータ部12とポンプ部14がハウジング16内に収容されている。モータ部12は回転子18を有している。回転子18は、シャフト20と、シャフト20に固定されている積層鉄芯22と、積層鉄芯22に巻かれている図示されていないコイルと、そのコイルの端部が接続されている整流子24を有している。シャフト20は、ハウジング16に対して、軸受26,28によって回転可能に支持されている。ハウジング16の内側には、回転子18を取囲むように、永久磁石30が固定されている。ハウジング16の上部に取り付けられたトップカバー32には、後で詳述するコネクタ部60(端子62,64)が設けられており、コネクタ部60を介してモータ部12に電力が供給される。ブラシ34と整流子24を介してコイルに通電すると、回転子18とシャフト20が回転する。
【0016】
ハウジング16の下部にはポンプ部14が収容されている。ポンプ部14は、略円板状のインペラ36を備えている。インペラ36の上面には、外周縁に沿って凹所群36aが設けられている。インペラ36の下面には、外周縁に沿って凹所群36bが設けられている。インペラ36の中心にはシャフト20と相対回転不能に係合する貫通孔が設けられており、シャフト20が回転するとインペラ36も回転する。
【0017】
インペラ36を収容するポンプケーシングは、吐出側ケーシング38と吸入側ケーシング40とから構成される。吐出側ケーシング38には、インペラ36の外周縁に対向する領域に溝38aが形成されている。溝38aは、インペラ36の回転方向に沿って上流端から下流端まで伸びる略C字型に形成されている。吐出側ケーシング38には、溝38aの下流端から吐出側ケーシング38の上面に至る吐出口50が形成されている。吐出口50は、ポンプケーシングの内部と外部(モータ部12の内部空間)とを連通させている。
【0018】
吸入側ケーシング40には、インペラ36の外周縁に対向する領域に溝40aが形成されている。溝40aも溝38aと同様に、インペラ36の回転方向に沿って上流端から下流端まで伸びる略C字型に形成されている。吸入側ケーシング40には、吸入側ケーシング40の下面から溝40aの上流端に至る吸入口42が形成されている。吸入口42は、ポンプケーシングの内部と外部(燃料ポンプの外部)とを連通させている。また、吸入側ケーシング40にはベーパ排出口41が形成されている。ベーパ排出口41は、溝40a内で発生したベーパをポンプ外に排出する。凹所群36a,36b、溝38a、溝40aによって、インペラ36の外周縁を覆うようにポンプ流路44が形成されている。
【0019】
インペラ36がポンプケーシング38,40内で回転すると、燃料が吸入口42からポンプ部14内に吸引されてポンプ流路44に導入される。ポンプ流路44を流れるうちに昇圧された燃料は、吐出口50からモータ部12側に送り出される。モータ部12に送り出された燃料は、モータ部12を通過し、トップカバー32に形成されている吐出ポート48から外部に送り出される。
【0020】
次に、トップカバー32に形成されるコネクタ部60について、
図2〜7を参照して説明する。
図2〜7に示すように、コネクタ部60は、トップカバー32の上面に突設された突壁66を有している。突壁66とトップカバー32により形成される空間(すなわち、上端が開放された空間)に、コネクタ80が挿し込まれるようになっている。
図3に示すように、突壁66にはスリット孔76が形成されている。コネクタ80のコネクタハウジング86には、凸部84が形成されている。コネクタ部60にコネクタ80が挿し込まれると、コネクタハウジング86の凸部84が突壁66のスリット孔76に係合する。これによって、コネクタ部60からコネクタ80が脱落することが防止される。
【0021】
コネクタ部60の底面68(トップカバー32の上面)には、端子62,64が配設されている。端子62,64は、コネクタ部60の底面68より上方に突出している(
図4,6等参照)。端子62,64は、互いに間隔を空けて配置されている。端子62,64の周囲は突壁66によって囲まれ、また、端子62,64の上端は突壁66の上縁よりも低くされている。これによって、端子62,64は突壁66によって保護されている。なお、コネクタ部60の底面68には、端子62,64の周囲に凹部78b,78aが形成されている。凹部78b,78aは、端子62,64とトップカバー32とをインサート成形により一体に成形する際に、端子62,64にバリのはい上がりを防止するために設けられている。
【0022】
図3,7に示すように、コネクタ部60にコネクタ80が挿し込まれると、端子62,64に配線82b,82aが接続される。これによって、端子62,64は、配線82b,82aを介して図示しない外部電源に接続される。すなわち、端子62,64の一方は外部電源の正極(+極)に接続され、端子62,64の他方は外部電源の負極(−極)に接続される。したがって、外部電源からの電力は、端子62,64を介してモータ部12に供給される。上述した説明から明らかなように、トップカバー32は、請求項でいう「ハウジング」の一例であり、底面68(トップカバー32の上面)は、請求項でいう「第1平面」の一例に相当し、端子62,64は、請求項でいう「第1端子」,「第2端子」の一例に相当し、配線82a、82bは、請求項でいう「第1配線」,「第2配線」の一例に相当する。
【0023】
図2に示すように、コネクタ部60の底面68には、溝70,72a,72b,74a,74bが形成されている。溝74a,74bは、y方向(すなわち、端子64から端子62に向かう方向)に伸びている。溝74aは、突壁66の内周面に沿って伸びている。溝74bは、溝74aと端子62,64との間に設けられている。溝74bの両端は突壁66にまで達している。溝72a,72bは、x方向に伸びる突壁66の内周面に沿って伸びている。溝72a,72bの一端は、溝74a,74bの一端に接続されている。溝70は、端子62,64の中央に設けられており、x方向に伸びている。溝70の一端は、74a,74bに接続されている。溝70の他端は、突壁66のスリット孔76を通過して、トップカバー32の上面の周縁に達すると共に開放されている(
図3,6参照)。なお、溝70,72a,72b,74a,74bは、端子62,64の周囲に形成された凹部78a,78bとは接続していない。
【0024】
図4,5に示すように、溝70,72a,72bの幅b(溝の長手方向に直交する方向の寸法)は、溝70,72a,72bの深さcよりも長くされている。これによって、溝70,72a,72bを跨って液滴が形成されることが防止されている。なお、
図4,5に溝74a,74bは図示されていないが、溝74a,74bの幅と深さも、溝70,72a,72bの幅と深さと同一とされている。
【0025】
また、溝70,72a,72b,74a,74bの幅bは、端子62と端子64の間にある底面68の平面部68b,68cの幅a2よりも小さくされている。ここで、平面部68bは、凹部78aから溝70までの範囲に位置しており、平面部68cは、凹部78bから溝70までの範囲に位置している。また、溝70,72a,72b,74a,74bの幅bは、突壁66と端子64の間にある底面68の平面部68aの幅a3より小さく、また、突壁66と端子62の間にある底面68の平面部68dの幅a1より小さくされている。平面部68a,68b,68c,68dの幅a1,a2,a3は2mm以下とされている。なお、
図2から明らかなように、溝74aと溝74bとの間にある底面68の平面部の幅(x方向の長さ)及び溝74bと凹部78a,78bとの間にある底面68の平面部の幅(x方向の長さ)は、平面部68a,68b,68c,68dの幅より狭く、2mm以下とされている。
【0026】
上述した燃料ポンプ10では、燃料タンクの液位が低下し、コネクタ部60が完全に空気中に露出すると、コネクタ部60に入り込んでいる燃料が溝70,72a,72b,74a,74bから排出される。ここで、コネクタ部60の底面68には、溝70,72a,72b,74a,74bが形成されているため、溝70,72a,72b,74a,74bによって、コネクタ部60の底面68が面積の小さな複数の平面部68a,68b,68c,68d・・に分割されている。これによって、底面68上の燃料の表面張力による液滴が破壊され、大きな燃料の液滴が形成されることが防止される。その結果、底面68上の燃料は、溝70,72a,72b,74a,74b内に流れ、溝70の一端(スリット孔76側の端部)から燃料タンク内に排出される。また、燃料が残留し易い突壁66の近傍には、溝72a,72b,74が形成されている。このため、突壁66の近傍の燃料は、溝72a,72b,74内に流れ、溝70を通ってコネクタ部60の外に排出される。これらによって、コネクタ部60から燃料が排出されるため、端子62,64の電食が防止される。
【0027】
さらに、端子62,64の間には溝70が形成され、端子62,64の間の底面68を分割している。したがって、コネクタ部60の端子62,64の間に燃料が残留しても、その燃料が端子62,64の両者に接触する液滴となることが防止される。すなわち、溝70によって、端子62側の液滴と、端子64側の液滴とに分離される。特に、端子62,64の間の平面部68b,68cの幅a2が2mm以下とされ、溝70の幅bが平面部68b,68cの幅a2より小さくされ、溝70の幅bは溝70の深さcより大きくされている。これらによって、溝70を跨って液滴が形成されることが好適に防止される。このため、燃料の液滴を介して端子62,64の間に電流が流れることが防止され、端子62,64の電食を防止することができる。
【0028】
ここで、実施例1に係る燃料ポンプと、従来の燃料ポンプ(比較例)とを用いて、端子間に流れる電流を測定した一実験例を説明する。実験では、燃料ポンプの端子間に電圧を印加した状態でコネクタ部に燃料を所定量だけ滴下し、端子間に流れる電流を測定した。
図20に示すように、実施例1の燃料ポンプでは、コネクタ部に滴下された燃料がコネクタ部から速やかに排出され、端子間を流れる電流が短時間で減少した。一方、比較例の燃料ポンプでは、コネクタ部に滴下された燃料がコネクタ部から排出されず、長期間に亘って端子間を電流が流れた。このことから、実施例1の燃料ポンプでは、コネクタ部から速やかに燃料が排出され、端子の電食を防止することができることが確認できた。
【実施例2】
【0029】
実施例2の燃料ポンプを図を用いて説明する。実施例2の燃料ポンプは、実施例1の燃料ポンプの一部を変更したものである。従って、ここでは実施例1の燃料ポンプとの相違点について説明する。なお、実施例1の燃料ポンプと同一の部材については、同一符号を用い、その詳細な説明を省略することとする。
【0030】
図8〜12に示すように、実施例2の燃料ポンプでは、コネクタ部60の底面68に形成される溝100a,100b,102a,102bの形状が、実施例1と相違する。すなわち、底面68には、x方向に伸びる溝100a,100bと、y方向に伸びる5本の溝102a,102bが形成されている。溝100a,100bは、突壁90に沿って伸びている。溝100a,100bは、突壁90に形成された燃料排出口94a,94bをそれぞれ通過して、その一端がトップカバーの上面の周縁に達すると共に開放されている(
図9,12参照)。
【0031】
5本の溝102a,102bは、x方向に略均等な間隔を空けて配置されている。各溝102aは、その一端が溝100aに接続されており、溝100aからy方向(詳細には、y軸のマイナス方向)に伸びている。5本の溝102aのうちx方向の一端(マイナス側の端部)に配置される1本の溝102aは、突壁90に沿って伸びている。5本の溝102aのうちx方向の他端(プラス側の端部)に配置される3本の溝102aは、その基端部が溝100aと凹部78bの間に形成され、その先端部が凹部78bと凹部78aの間に形成されている。これらの溝102aは、その基端部と先端部が凹部78bを介して接続している。一方、溝102bは、その一端が溝100bに接続されており、溝100bからy方向(詳細には、y軸のプラス方向)に伸びている。5本の溝102bのうちx方向の一端に配置される溝102aは、突壁90に沿って伸びている。5本の溝102bのうちx方向の他端に配置される3本の溝102bは、その基端部が溝100bと凹部78aの間に形成され、その先端部が凹部78aと凹部78bの間に形成されている。これらの溝102bは、その基端部と先端部が凹部78aを介して接続している。
【0032】
なお、
図11に示すように、溝102aと溝102bの間の平面部168の幅a4(y方向の間隔)は、2mm以下とされると共に、溝100a,100b,102a,102bの幅bよりも大きくされている。なお、実施例1と同様に、各溝100a,100b,102a,102bは、同一の寸法(すなわち、幅b及び深さc)を有しており、溝100a,100b,102a,102bの幅b(溝の長手方向に直交する方向の寸法)は、溝70,72a,72bの深さcよりも長くされている。
【0033】
なお、突壁90には、実施例1のスリット孔76と比較して開口面積の小さい係合孔92が形成されている(
図9参照)。コネクタ部60にコネクタ80が挿し込まれると、コネクタハウジング86の凸部84が突壁90の係合孔92に係合する。これによって、コネクタ部60からコネクタ80が脱落することが防止されている。
【0034】
実施例2の燃料ポンプでも、燃料タンクの液位が低下し、コネクタ部60が完全に空気中に露出すると、コネクタ部60に入り込んでいる燃料が溝100a,100b,102a,102bから排出される。コネクタ部60の底面68は、溝100a,100b,102a,102bによって分割されているため、底面68上に大きな燃料の液滴が形成されることが防止される。その結果、底面68上の燃料は、溝100a,100b,102a,102bを通って、溝100a,100bの一端(燃料排出口94a,94b側の端部)から燃料タンク内に好適に排出される。また、突壁90に沿って溝100a,100b,102a,102bが形成されているため、突壁90の近傍に燃料が残留することが防止される。これらによって、コネクタ部60から燃料が好適に排出され、端子62,64の電食が防止される。
【0035】
また、端子62,64の間には、溝102a,102bの一部が形成されている。詳細には、端子62の周囲に形成された凹部78bと、端子64の周囲に形成された凹部78aとの間に、溝102a,102bの一部が形成されている。その結果、端子62,64の間に燃料が残留しても、その燃料が端子62,64の両者に接触する液滴となることが防止される。このため、燃料の液滴を介して端子62,64の間に電流が流れることが防止され、端子62,64の電食を好適に防止することができる。
【実施例3】
【0036】
実施例3の燃料ポンプを図を用いて説明する。実施例3の燃料ポンプは、実施例2の燃料ポンプの一部を変更したものである。従って、ここでは実施例2の燃料ポンプとの相違点について説明する。なお、実施例2の燃料ポンプと同一の部材については、同一符号を用い、その詳細な説明を省略することとする。
【0037】
図13〜16に示すように、実施例3の燃料ポンプでは、コネクタ部60の底面68に形成される溝110a,110b,112,114a,114b,116の形状が、実施例2と相違する。すなわち、底面68には、突壁90に沿って伸びる溝110a,110b,112と、突壁90のコーナ部に形成された溝114a,114bと、端子62,64の間に形成された2本の溝116が形成されている。溝110a,110bの一端は、突壁90に形成された燃料排出口(図示省略)をそれぞれ通過して、その一端がトップカバーの上面の周縁に達すると共に開放されている。
【0038】
溝112は、溝110aの他端と溝110bの他端とを接続している。溝112と溝110aの接続部の近傍には溝114aが形成され、溝112と溝110aが溝114aを介してさらに接続されている。また、溝112と溝110bの接続部の近傍には溝114bが形成され、溝112と溝110bが溝114bを介してさらに接続されている。
【0039】
2本の溝116は、
図13に示すように、端子62,64の中央近傍で交差するように形成されている。
図14,15に示すように、凹部78aと溝116の間の平面部178aの幅a5(及び凹部78bと溝116の平面部178bの幅)は、2mm以下とされると共に、溝110a,110b,112,114a,114b,116の幅bよりも大きくされている。なお、
図13のXIV-XIV線に沿った断面では2本の溝116が交差する。このため、溝116のy方向の幅dは、溝116の幅bよりも大きくなるが、平面部178a,178bの幅a5よりは小さい。
【0040】
実施例3の燃料ポンプでも、実施例1,2と同様に、コネクタ部60の底面68が溝110a,110b,112,114a,114b,116によって分割されている。このため、底面68上の燃料は、溝110a,110b,112,114a,114b,116を通って燃料タンク内に好適に排出される。また、突壁90に沿って溝110a,110b,112が形成され、さらに、突壁90のコーナ部には溝114a,114bが形成されている。このため、突壁90の近傍に燃料が残留することが防止される。これらによって、コネクタ部60から燃料が好適に排出され、端子62,64の電食が防止される。
【0041】
さらに、端子62,64の間に溝116が形成され、端子62,64の両者に接触する燃料の液滴が形成されることが防止される。このため、燃料の液滴を介して端子62,64の間に電流が流れることが防止され、端子62,64の電食を好適に防止することができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0043】
例えば、コネクタ部60の底面68に形成される溝は、その排出端に向かって傾斜するようにしてもよい。例えば、
図16に示すように、溝120を排出端に向かって傾斜するように形成してもよい。このような構成によると、溝120内に流れた燃料を好適に燃料タンク内に排出することができる。なお、溝を排出端に向かって傾斜させる構成は、上述した各実施例に適用することができる。
【0044】
さらには、コネクタ部60にコネクタ80が挿し込まれたときに、コネクタ部60の底面68とコネクタ80(コネクタハウジング86)の間に隙間が形成されるようにしてもよい。例えば、
図17〜19に示すように、突壁66の底面68であって、突壁66の4つのコーナ部にストッパ122a,122b,122c,122dを形成する。かかる構成において、コネクタ部60にコネクタ80が挿し込まれると、コネクタハウジング86とストッパ122a,122b,122c,122dとが当接し、コネクタ部60の底面68とコネクタハウジング86の間に隙間が形成される。このため、コネクタ部60とコネクタハウジング86の間に燃料が残留することをより抑制することができる。なお、コネクタ部60の底面68とコネクタハウジング86の間に形成される隙間は、0.3mm以上とすることが好ましい。隙間を0.3mm以上とすることで、両者の間に燃料が残留することを好適に抑制することができる。なお、コネクタ部の底面にストッパを形成する構成は、上述した各実施例に適用することができる。
【0045】
なお、上述した各実施例では、端子62,64の周囲に凹部78b,78aを形成していたが、このような形態に限られない。例えば、端子62,64とトップカバー32とをインサート成形により一体に成形せず、トップカバー32に端子62,64を圧入して保持する場合には、端子62,64の周囲に凹部を形成する必要は無い。
【0046】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
12:モータ部
14:ポンプ部
16:ハウジング
18:回転子
20:シャフト
22:積層鉄芯
24:整流子
26,28:軸受
30:永久磁石
32:トップカバー
34:ブラシ
36:インペラ、36a,36b:凹所
38:吐出側ケーシング、38a:溝
40:吸入側ケーシング、40a:溝
42:吸入口
44:ポンプ流路
48:吐出ポート
50:吐出口
60:コネクタ部
62,64:端子
66:突壁
68:底面
70,72a,72,74a,74b:溝
76:スリット孔
78a,78b:凹部
80:コネクタ
82a,82b:配線
86:コネクタハウジング