(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のパルス駆動部及び前記第2のパルス駆動部は、それぞれ前記パルス信号列及び前記エッジパルスを差動信号として送信し、前記信号伝送部は、前記差動信号を差動通信により伝送し、前記第1の受信判定部及び前記第2の受信判定部は、前記差動信号を受信判定して、それぞれ前記パルス信号列及び前記エッジパルスを検知することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
前記受信部は、前記第1の受信判定部及び前記第2の受信判定部の出力に基づいて、前記第1の受信判定部の出力を制御するパルス受信制御回路を有する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の通信システム。
前記復号信号生成部は、前記第1の受信判定部の出力信号を所定の期間伸長するパルスストレッチ回路を有し、前記第2の受信判定部の出力信号に応じて、前記パルスストレッチ回路による前記第1の受信判定部の出力信号の伸長を停止することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の通信システム。
前記信号伝送部から伝送されたパルスの電圧レベルが前記第2の電圧レベルよりも高い場合において、前記第1の受信判定部及び前記第2の受信判定部は、それぞれ前記パルス信号列及び前記エッジパルスを受信判定できる範囲になるように前記信号伝送部から伝送されたパルスの電圧レベルを調整する電圧レベル調整回路を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の通信システム。
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の通信システムにおいて、2つの前記送信部と2つの前記受信部とを備え、一方の前記送信部及び一方の前記受信部は前記信号伝送部の1次側に接続され、他方の前記送信部及び他方の前記受信部は前記信号伝送部の2次側に接続され、前記一方の送信部から前記他方の受信部への信号の通信を行い、前記他方の送信部から前記一方の受信部への信号の通信を行う双方向であることを特徴とする通信システム。
前記2つの送信部は、それぞれ前記第1のパルス駆動部及び前記第2のパルス駆動部の出力を制御するパルス出力段制御回路を有し、前記パルス出力段制御回路はパルスを送信しない期間に当該送信部のインピーダンスを高くすることを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
前記他方の受信部は、前記第1の受信判定部で受信した前記パルス信号列に基づいて、前記一方の送信部のクロックと同期したクロックを生成する同期クロック生成回路を有し、前記他方の送信部は、前記同期クロック生成回路で生成したクロックに基づいて、前記パルス信号列を、前記一方の送信部から送信される前記パルス信号列の隙間を埋めるように送信することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の通信システム。
前記一方の送信部が送信する前記エッジパルスと、前記他方の送信部が送信する前記エッジパルスとは、パルス幅又はパルス数が互いに異なることを特徴とする請求項7、請求項8又は請求項10の何れか一項に記載の通信システム。
前記通信システムとして請求項7乃至請求項10の何れか一項に記載の通信システムを備え、前記半導体スイッチング素子のオン・オフ状態を判定する状態判定回路を更に備え、前記他方の送信部は前記状態判定回路による判定結果を前記一方の受信部に送信し、前記一方の受信部は前記判定結果を前記上位論理部に出力することを特徴とする請求項12に記載の半導体駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する形態について、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
[通信システムの構成]
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る通信システム1の基本構成について説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る通信システム1は、送信部2、受信部3及び信号伝送部4から構成されている。通信システム1は、送信部2に入力された入力信号S
INを連続パルスとエッジパルスとからなるパルス信号に変換して、信号伝送部4を介して受信部3に伝送し、受信部3によってパルス信号から元の信号を復号して出力信号S
OUTとして出力するものである。
【0015】
ここで、通信システム1は、例えば、発電設備のような大型産業機器で用いられる電力変換装置において、電力変換用の半導体スイッチング素子の駆動指令信号を発生する制御回路である上位論理部から出力される駆動指令信号を入力信号S
INとして入力し、その駆動指令信号を絶縁を介して半導体スイッチング素子の駆動側に出力信号S
OUTとして出力するものである。
続いて各部の構成について説明する。
【0016】
送信部2は、複数の送信側電源14,15及び送信側GND(グランド)12に接続されている。一方、受信部3は、受信側電源16及び受信側GND(グランド)13に接続されている。また、この通信システム1が絶縁通信システムに適用される場合は、一般に送信側GND12と受信側GND13とは異なる電位となる。更に、
図1における信号伝送部4は、差動信号を伝送する場合を例として示している。
【0017】
送信部2は、連続パルス生成部5と、連続パルス駆動部6と、エッジパルス生成部7と、エッジパルス駆動部8とを有して構成されている。
【0018】
連続パルス生成部(第1のパルス生成部)5は、入力信号S
INに応じてパルスが連続したパルス信号列を生成し、生成したパルス信号列(以下、連続パルスという)を連続パルス駆動部6に出力する。本実施形態では、連続パルス生成部5は、入力信号S
INがHiレベルのときに連続パルスを発生するが、これに限定されるものではなく、例えば、入力信号S
INがLoレベルのときに連続パルスを発生するように構成してもよい。
【0019】
連続パルス駆動部(第1のパルス駆動部)6は、連続パルス生成部5から入力した連続パルスを、所定の電圧レベル(パルス高)のパルス信号に変換して、信号伝送部4を介して受信部3に送信する。
【0020】
エッジパルス生成部(第2のパルス生成部)7は、入力信号S
INの立上り及び立下りで、比較的パルス幅が狭いエッジパルスを生成し、生成したエッジパルスをエッジパルス駆動部8に出力する。
【0021】
エッジパルス駆動部(第2のパルス駆動部)8は、エッジパルス生成部7から入力したエッジパルスを、所定の電圧レベル(パルス高)のパルス信号に変換して、信号伝送部4を介して受信部3に送信する。
ここで、エッジパルス駆動部8から送信するエッジパルスの電圧レベルは、連続パルス駆動部6から送信する連続パルスの電圧レベルよりも、高い電圧レベルとする。
【0022】
なお、ここで電圧レベルが高いとは、Loレベルの電圧レベルとHiレベルの電圧レベルとの差の絶対値が大きいことをいうものとする。従って、正極性のパルスであっても、負極性のパルスであっても、振幅の大きなパルスであることをいうものとする。
【0023】
これを実現するために、例えば、
図1に示すように、エッジパルス駆動部8が接続される送信側電源15の電圧V
DD1’が、連続パルス駆動部6が接続される送信側電源14の電圧V
DD1よりも高い場合に、連続パルス駆動部6及びエッジパルス駆動部8から送信されるエッジパルス及び連続パルスの電圧を、それぞれ電圧V
DD1’及び電圧V
DD1とすることができる。あるいは、送信側電源14及び15の電圧V
DD1’及び電圧V
DD1が同一である場合は、連続パルスの電圧レベルを、例えば分圧抵抗を用いて送信側電源14の電圧V
DD1よりも低くするようにすることができる。
【0024】
以下、本実施形態は、後者の場合を例として説明し、電源(電圧レベル)の説明は、適宜省略する。
なお、送信側電源14の電圧V
DD1よりも高い電圧の送信側電源15の電圧V
DD1’を得る方法としては、チャージポンプ回路等の昇圧回路で実現することができる。あるいは、本発明の適用が期待できる半導体駆動装置において、駆動回路の電源(例えば5V)の他に、半導体のゲート駆動を制御するために電圧の高い電源(例えば15V)を有している場合は、高低2種類の電圧V
DD1’及び電圧V
DD1を容易に利用することができる。
【0025】
信号伝送部4は、送信部2と受信部3との間で絶縁通信を行うための信号の伝送手段である。信号伝送部4としては、具体的には、磁気結合素子、容量結合素子やGMR(Giant Magneto Resistive effect)素子などを用いて構成することができる。
本実施形態では、磁気結合素子である絶縁トランスを用いた場合を例として説明する。
【0026】
受信部3は、連続パルス判定部9と、エッジパルス判定部10と、復号信号生成部11と、を有して構成されており、信号伝送部4を介して送信部2から送信される連続パルス及びエッジパルスを受信し、入力信号S
INを復元して出力信号S
OUTとして出力するものである。
【0027】
連続パルス判定部(第1の受信判定部)9は、信号伝送部4を介して受信した信号から連続パルスの受信判定(連続パルスの検知)を行うものである。連続パルス判定部9は、受信判定結果を復号信号生成部11に出力する。
【0028】
エッジパルス判定部(第2の受信判定部)10は、信号伝送部4を介して受信した信号からエッジパルスの受信判定(エッジパルスの検知)を行うものである。エッジパルス判定部10は、受信判定結果を復号信号生成部11に出力する。
【0029】
復号信号生成部11は、連続パルス判定部9及びエッジパルス判定部10から、それぞれ連続パルスの受信判定結果及びエッジパルスの受信判定結果を入力し、これらの受信判定結果に基づいて元の入力信号S
INを復号して、復号した信号を出力信号S
OUTとして外部に出力するものである。
【0030】
次に、
図2を参照して、第1実施形態に係る通信システム1の、より具体的な構成について説明する。
【0031】
図2に示す通信システム1は、絶縁通信のために信号伝送部4に磁気結合素子である絶縁トランス200を用いたトランス通信システムである。通信システム1は、絶縁トランス200の磁気飽和を抑制するために、送信部2から受信部3に伝送するパルス信号として、双極性のパルスを送受信する構成になっている。
【0032】
連続パルス生成部5は、2つの連続パルス生成回路102及び103と、クロック生成回路100とを有している。
【0033】
クロック生成回路100は、連続パルス生成回路102及び103にクロック周期T
CLKのクロックパルスを提供すると共に、立上りエッジパルス生成回路104が出力するエッジパルスに対して、予め規定された間隔をあけて連続パルスを生成する機能を有する。クロック生成回路100は、更に、入力信号S
INがLoレベルになると、連続パルス生成回路102及び103に出力するクロックを即座に停止する機能を有する。
【0034】
連続パルス生成回路102及び連続パルス生成回路103は、それぞれ互いに位相が180°ずれ、それぞれ正極性及び負極性の連続パルスを生成し、それぞれ連続パルス駆動部6のパルス出力段106及び107に出力する。すなわち、連続パルス生成部5からは、T
CLK/2ごとに、正極性のパルスと負極性のパルスとが交互に出力される。
【0035】
また、エッジパルス生成部7は、立上りエッジパルス生成回路104及び立下りエッジパルス生成回路105を有している。
【0036】
立上りエッジパルス生成回路104及び立下りエッジパルス生成回路105は、それぞれ、入力信号S
INの立上り(LoレベルからHiレベルへの変化時)及び立下り(HiレベルからLoレベルへの変化時)に、パルスを生成し、それぞれエッジパルス駆動部8のパルス出力段108及び109に出力する。このとき、本実施形態では、立上りエッジを示すエッジパルスは正極性とし、立下りエッジを示すエッジパルスは負極性とする。
【0037】
連続パルス駆動部6は、パルス出力段106及びパルス出力段107と、整流素子111及び整流素子112、とを有している。
【0038】
パルス出力段106及びパルス出力段107は、それぞれ連続パルス生成回路102により生成された正極性の連続パルス及び連続パルス生成回路103により生成された負極性の連続パルスを、所定の電圧レベルのパルス信号として、それぞれ整流素子111及び整流素子112を介して信号伝送部4の絶縁トランス200の一次側に出力する。
【0039】
整流素子111及び整流素子112は、それぞれパルス出力段106及び107と絶縁トランス200の一次側の端部との間に設けられ、パルス出力段108及び109が、パルス出力段106及び107と異なる電源に接続されている場合に、パルス出力段108及び109が送信する信号がパルス出力段106及び107を介した電流にクランプされるのを抑制する目的で設けられている逆流防止用の整流素子である。
【0040】
エッジパルス駆動部8は、パルス出力段108及びパルス出力段109を有している。
【0041】
パルス出力段108及びパルス出力段109は、それぞれエッジパルス生成回路104により生成された正極性のエッジパルス及びエッジパルス生成回路105により生成された負極性のエッジパルスを、所定の電圧レベルにパルス信号として、信号伝送部4の絶縁トランス200の一次側に出力する。
このとき、パルス出力段108及び109が出力するパルスの電圧レベルは、パルス出力段106及び107が出力するパルスの電圧レベルよりも高くなるように設定されている。
【0042】
信号伝送部4は、絶縁トランス200と、受信抵抗201及び202とを有して構成されている。受信抵抗201及び202は、それぞれ、その一端が絶縁トランス200の2次側(受信部3側)の互いに異なる端部に接続され、他端が、何れも受信側GND13に接続されている。
【0043】
ここで、絶縁トランス(トランス)200は、送信部2から送信された信号を、磁気結合作用によって、絶縁トランス200の2次側に電流を励起させる。そして、受信抵抗201及び202は、この2次側に励起された電流を電圧に変換するものである。
【0044】
連続パルス判定部9は、電圧レベル調整回路300及び301と、コンパレータ304,305とを有して構成されている。また、エッジパルス判定部10は、電圧レベル調整回路302及び303と、コンパレータ306及び307とを有して構成されている。
【0045】
電圧レベル調整回路300及び301は、絶縁トランス200の2次側のトランス端子間の差動電圧を、それぞれコンパレータ304及び305による連続パルスの受信に最適に調整するものである。一方、電圧レベル調整回路302及び303は、それぞれコンパレータ306及び307による、連続パルスよりも電圧レベルの高いエッジパルスの受信に最適に調整するものである。
【0046】
例えば、ノイズによる信号の誤受信と、ノイズによる信号振幅の減少起因する受信不可が同じ電圧レベルで発生する場合、コンパレータ304及び305の判定レベルは連続パルスの電圧振幅(第1の電圧レベル)V
Lの1/2に設定することが好ましい。同様に、コンパレータ306及び307の判定レベルは、エッジパルスの電圧振幅(第2の電圧レベル)V
Hの1/2に設定することが好ましい。これによって、それぞれ適切にパルス信号の受信判定をすることができる。以下、本実施形態は、コンパレータ304、305、及びコンパレータ306、307の判定レベルを、それぞれV
Lの1/2及びV
Hの1/2に設定した場合を例として説明するが、本発明の通信システムは、これに限定されるものではない。
なお、電圧レベル調整回路300〜303の詳細については後記する。
【0047】
また、コンパレータ304〜307は、絶縁トランス200の2次側のトランス端子間の差動電圧V
Tを判定してパルス信号を受信するものである。なお、本実施形態では、コンパレータ304〜307は、それぞれ、対応する電圧レベル調整回路300〜303によって対応するパルスの判定に最適な電圧レベルに調整された信号が入力される。
【0048】
コンパレータ304及び305は、電圧レベル調整回路300及び301によってパルス信号の受信判定に最適な電圧レベルに調整された絶縁トランス200の2次側の端子間電圧を、互いに逆極性となるように入力し、それぞれ正極性及び負極性の連続パルスを受信判定するものである。そして、コンパレータ304及び305は、それぞれの連続パルスの受信判定信号をパルスストレッチ回路309に出力する。また、コンパレータ304及び305の出力制御端子には、パルス受信制御回路308から受信判定信号の出力を制御する信号が入力され、出力を停止する信号が入力されたときは、受信判定信号の出力を停止、すなわち、受信判定を停止する。
【0049】
また、コンパレータ306及び307は、電圧レベル調整回路302及び303によってパルス信号の受信判定に最適な電圧レベルに調整された絶縁トランス200の2次側の端子間電圧を、互いに逆極性となるように入力し、入力信号S
INのそれぞれ立上りを示すエッジパルス及び立下りを示すエッジパルスを受信判定するものである。そして、コンパレータ306及び307は、それぞれエッジパルスの受信判定信号を復号信号生成部11のOR回路312及び313の入力端子に出力すると共に、パルス受信制御回路308に出力する。更に、コンパレータ307は、立下りを示すエッジパルスの受信判定信号をパルスストレッチ回路309に出力する。
【0050】
ここで、
図3を参照して、電圧レベル調整回路300の具体例について説明する。なお、電圧レベル調整回路301〜303も同様の回路を用いることができる。
図3に示すように、電圧レベル調整回路300は、整流素子400と、分圧抵抗401〜403と、整流素子404及び405とを有して構成されている。
【0051】
分圧抵抗402及び403は受信側電源16と受信側GND13との間に直列に接続されている。また、整流素子400及び分圧抵抗401は、入力端子と分圧抵抗402及び403の接続点との間に直列に接続されている。また、整流素子404及び405は、受信側電源16と受信側GND13との間に直列に接続されている。更に、分圧抵抗402及び403の接続点と整流素子404及び405の接続点とは出力端子と接続されている。
【0052】
電圧レベル調整回路300に入力される電圧が、受信部3の受信側電源16の電圧V
DD2よりも高い場合であっても、分圧抵抗401〜403の抵抗値を調整することにより、コンパレータ304(
図2参照)への入力電圧を受信側電源16の電圧V
DD2の電圧以下にすることができる。ここで、整流素子400は電流の逆流を防止する目的で設置され、一方で整流素子404及び405は、ノイズ電流の流入時にコンパレータ304への入力部の電圧が素子耐圧を超えることを防止する目的で設けられている保護用の整流素子である。
【0053】
図2に戻って、復号信号生成部11は、パルスストレッチ回路309と、信号比較回路310と、フィルタ回路311と、OR回路312及び313と、RS型フリップフロップ回路314と、NOT回路315と、AND回路316及び317と、バッファ318と、を有して構成されている。
【0054】
パルスストレッチ回路309は、コンパレータ304及び305で生成した連続パルスの受信判定信号を入力し、正極性及び負極性のパルスを併せた連続パルスの間隔(T
CLK/2)だけストレッチ(伸張)して、連続パルス受信信号(第1の復号信号)S
AMIを生成するものである。また、パルスストレッチ回路309は、コンパレータ307から受信判定信号を入力し、立下りエッジパルスを受信判定した信号が入力されると、パルスのストレッチを即座に停止する機能を有する。これにより、連続パルス受信信号S
AMIの立下りを、送信部2側の入力信号S
INの立下りと同期させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、受信部3は、パルス受信制御回路308を備えている。パルス受信制御回路308は、エッジパルス判定部10がエッジパルスの受信判定をする際に、連続パルス判定部9が受信判定しないように制御するものである。このために、パルス受信制御回路308は、コンパレータ307及び308から、それぞれ立上りエッジパルス及び立下りエッジパルスを入力し、何れかのエッジパルスが入力されたときに、連続パルスの判定を停止する制御信号を生成して、コンパレータ304及び305の出力制御端子に出力する。
【0056】
コンパレータ306及び307で生成したエッジパルスの受信判定信号は、それぞれOR回路312及び313を介して、RS型フリップフロップ回路314のそれぞれS端子及びR端子に入力されてエッジパルスラッチ信号(第2の復号信号)S
RSが生成され、RS型フリップフロップ回路314のQ端子から出力される。この信号は、バッファ318を介して出力信号S
OUTとして外部に出力される。
【0057】
信号比較回路310は、パルスストレッチ回路309から入力する連続パルス受信信号S
AMIとRS型フリップフロップ回路314から入力するエッジパルスラッチ信号S
RSとを比較し、状態が異なるときにHiレベルとなる比較信号S
XORを出力する。具体的には、信号比較回路310はXOR回路などで実現することができる。
【0058】
フィルタ回路311は、信号比較回路310から比較信号S
XORを入力し、入力した比較信号S
XORから、予め定められた所定期間であるラッチ信号修正期間T
TRG未満の長さのHiレベルの信号をフィルタ(除去)するものである。但し、T
TRG>T
STRとする。フィルタ回路311は、フィルタ処理後の比較信号S
XORを、AND回路316及び317に出力する。
【0059】
NOT回路315、AND回路316及び317からなるロジック回路は、パルスストレッチ回路309から出力される連続パルス受信信号S
AMIと、フィルタ回路311から出力される前記したフィルタ処理後の比較信号S
XORとを入力し、エッジパルスラッチ信号S
RSとなるRS型フリップフロップ回路314の保持データ(Q端子の出力データ)を書き変える信号を生成するものである。AND回路316及び317の一方の入力端子には、何れもフィルタ回路311の出力信号が入力され、他方の入力端子には、それぞれ連続パルス受信信号S
AMI及び連続パルス受信信号S
AMIがNOT回路315によって反転された信号が入力される。また、AND回路316及び317の出力信号は、それぞれOR回路312及び313に出力される。
【0060】
このロジック回路は、フィルタ処理前の比較信号S
XORが、ラッチ信号修正期間T
TRG以上に渡って連続パルス受信信号S
AMIとエッジパルスラッチ信号S
RSとに差異が発生する場合の連続パルス受信信号S
AMIの状態を抽出し、RS型フリップフロップ回路314の保持データを書き変えることで信号の差異状態を解消する。この結果、より信頼性の高いエッジパルスラッチ信号S
RSを出力信号S
OUTとしてバッファ318を介して出力することができる。
【0061】
なお、本発明による通信システムは、差動信号を伝送する場合に限定されず、一般のシングルエンド信号の通信にも適用することができる。この場合は、
図2のRS型フリップフロップ回路314を、例えばT型フリップフロップ回路に置き換えることで実現することができる。
【0062】
[通信システムの動作]
次に、本実施形態に係る通信システム1の動作について説明する。
まず、
図4を参照(適宜
図2参照)して、本実施形態に係る通信システム1において、ノイズのない状態の各信号のタイムシーケンスについて説明する
【0063】
図4に示した例では、通信システム1は、パルス受信制御回路308によって、コンパレータ304で立上りのエッジパルスを受信判定しないように制御されているため、入力信号S
INの立上りで比較信号S
XORがHiレベルになる。しかしながら、このS
XOR信号発生期間T
XORがラッチ信号修正期間T
TRG未満であるため、エッジパルスラッチ信号S
RSは反転されない。従って、出力信号S
OUTは、入力信号S
INのままである。
そして、立下りエッジパルスの入力に同期して、出力信号S
OUTがLoレベルとなる。
【0064】
次に、
図5〜
図7を参照(適宜
図2参照)して、本実施形態に係る通信システム1において、ノイズ重畳時の各信号のタイムシーケンスについて説明する。
【0065】
図5は、入力信号S
INがない場合(Loレベルの状態)にノイズが重畳したときの各信号のタイムシーケンスを表している。
まず、連続パルスの受信判定レベルV
L/2よりもわずかに大きい小振幅ノイズが発生した場合(時間t1)は、この小振幅ノイズが連続パルス判定部9で連続パルスとして受信判定される。そして、パルスストレッチ回路309でこの受信判定信号がT
STRにストレッチされるため、連続パルス受信信号S
AMIは、T
STRの期間にHiレベルとなる。
【0066】
しかしながら、この期間は予め定められたラッチ信号修正期間T
TRGに満たないため、エッジパルスラッチ信号S
RSは反転されない。従って、出力信号S
OUTはLoレベルのままである。すなわち、入力信号S
INが正しく復元される。
【0067】
これに対して、連続パルスの電圧振幅が本実施形態における設定と同じV
Lであり(すなわち損失が同程度である)、その受信判定レベルがV
L/2とした場合に、前記した特許文献2に記載の方法のように、入力信号が発生している期間中に、連続的なパルスを受信側に送信する方法では、この小振幅ノイズで出力信号S
OUTは次のパルスを入力するまでの期間はHiレベル(誤り状態)となる。従って、本発明では、連続パルスのみを送信する方法と同等の損失で、小振幅のノイズに対するノイズ耐量を向上させることができる。
【0068】
次に、エッジパルスの受信判定レベルV
H/2よりも大きい大振幅ノイズが発生した場合(時間t2)について説明する。
図2に示した本実施形態に係る通信システム1では、この大振幅ノイズがエッジパルス判定部10で立上りのエッジパルスとして受信判定される。そして、エッジパルスラッチ信号S
RSがHiレベルとなる。
【0069】
しかしながら、連続パルス受信信号S
AMIが発生しない(Loレベルのままである)ため、比較信号S
XORがHiレベルとなる。これによって、ラッチ信号修正期間T
TRG後にエッジパルスラッチ信号S
RSはLoレベルに修正される。従って、出力信号S
OUTに発生する信号の誤り状態は、ラッチ信号修正期間T
TRG後に修正される。
【0070】
これに対し、エッジパルスの電圧振幅が本実施形態における設定と同じV
Hであり、かつその受信判定レベルがV
H/2とした場合に、前記した特許文献1に記載の方法のように、信号の立上り及び立下りを示すエッジパルス信号を伝送し、受信側でこのエッジパルス信号の状態をフリップフロップ回路によって保持する方法では、前記した小振幅ノイズでは信号の誤りは発生しないが、大振幅ノイズでは次の正しいエッジパルスが入力されるまでの長期間にわたって信号の誤り状態を保持することになる。従って、本発明により、エッジパルスのみを送信して保持する方法では発生する、エッジパルスラッチ信号S
RSの長期間の誤り状態の保持の問題を解消できる。
【0071】
なお、
図2に示す本実施形態の通信システム1では、コンパレータ306で立上りエッジパルスを受信判定した際は、コンパレータ304で立上りエッジパルスを連続パルスとして受信させないようにしている。これによって、大振幅ノイズ発生時に連続パルス受信信号S
AMIが発生することを抑制し、即座に比較信号S
XORがHiレベルになるようにすることで、出力信号S
OUTに発生する誤り状態の保持期間を短縮することができる。
【0072】
次に、
図6及び
図7を参照(適宜
図2参照)して、入力信号S
INがHiレベル状態である期間における各信号のタイムシーケンスについて説明する。
図6は、小振幅ノイズによって、連続パルスの1つが受信判定レベル(V
L/2)以下になった場合(時間t3)の、各信号のタイムシーケンスを示している。小振幅ノイズにより連続パルスの受信ができなかったため、連続パルス受信信号S
AMIは、ストレッチされたT
STRの期間だけ反転する。しかしながら、この連続パルス受信信号S
AMIが反転する期間はラッチ信号修正期間T
TRGに満たないため(前記の通り、T
TRG>T
STRとする)、フィルタ回路311によって除去される。このため、RS型フリップフロップ回路314の保持データであるエッジパルスラッチ信号S
RSは書き換えられず、出力信号S
OUTに誤りは発生しない。
【0073】
この場合も、前記した特許文献2に記載の方法のように、入力信号が発生している期間中に、連続的なパルスを受信側に送信する方法では、出力信号S
OUTにパルスストレッチ期間T
STRに相当する期間の信号反転が発生する。従って、本発明により、連続パルスのみを送信する方法と同等の損失で、小振幅のノイズに対するノイズ耐量を向上させることができる。
【0074】
図7は、大振幅ノイズによって、エッジパルス判定部10が立下りエッジパルスを誤受信した場合(時間t4)の、各信号のタイムシーケンスを示している。この場合、立下りエッジパルスを誤受信したことで、OR回路313の出力がHiレベルとなり、RS型フリップフロップ回路314のR端子にHiレベル信号が入力され、Q端子の出力であるエッジパルスラッチ信号S
RSが反転してLoレベルとなる。
【0075】
また、立下りエッジパルスを誤受信したことで、一時的に連続パルスを受信判定するコンパレータ304及び305による出力が停止するために、連続パルス受信信号S
AMIも反転してLoレベルとなる。しかし、その後に続く連続パルスを受信することで連続パルス受信信号S
AMIはすぐにHiレベルに復帰するため、比較信号S
XORがHiレベルとなる。この比較信号S
XORのHiレベルの期間がラッチ信号修正期間T
TRG連続すると、エッジパルスラッチ信号S
RSはHiレベルに修正される。
【0076】
この場合も、前記した特許文献1に記載の方法のように、エッジパルス信号のみを伝送し、受信側でこのエッジパルス信号の状態をフリップフロップ回路によって保持する方法では、長期間の誤り状態の保持が発生する。従って、本発明により、エッジパルスラッチ信号S
RSの誤り状態の保持問題を解消できる。
【0077】
本発明は、特にノイズの発生期間が比較的に短い場合に有効である。例えば、半導体駆動装置の場合、強いノイズに晒される期間は、主に駆動する半導体のスイッチング動作時である。このため、本発明の通信システムを、半導体駆動装置の半導体のスイッチングの駆動指令信号の伝送装置として、好適に適用することができる。
【0078】
次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の第1実施形態に係る通信システム1の変形例について説明する。
<変形例1>
図8は、
図2に示した第1実施形態に係る通信システム1で実現できる通信方法の一変形例(変形例1)を示す図である。この変形例1は、送信部2の連続パルス生成部5が出力する連続パルスの極性が双極性であり、かつオンデューティが100%であることが特徴である。すなわち、連続パルス生成回路102が生成する正極性のパルス及び連続パルス生成回路103が生成する負極性のパルスによって構成される連続パルス信号は、期間T
CLK/2ごとに「+V
L」と「−V
L」のレベルが交替する信号となる。
連続パルスのデューティを100%とすることで、ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0079】
<変形例2>
図9は、
図2に示した第1実施形態に係る通信システム1で実現できる通信方法の他の変形例(変形例2)を示す図である。この変形例2は、送信部2の連続パルス生成部5が出力する連続パルスの極性が単極性であり、かつオンデューティが100%であることが特徴である。すなわち、連続パルス生成回路102が生成する正極性のパルスによって構成される連続パルス信号は、期間T
CLK/2ごとに「+V
L」と「0」のレベルが交替する信号となる。これによって、連続パルス生成回路103を省略することができる。なお、連続パルス生成回路102を省略して、負極性のパルスのみを用いるようにしてもよい。
なお、変形例2は、磁気飽和の発生しにくいET積の比較的大きな絶縁トランス200(
図2参照)を用いた通信システム1に適用することが好ましい。
【0080】
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る通信システム1は、復号信号生成部11によって、エッジパルス判定部10が出力する信号から、フリップフロップ回路等でエッジパルスラッチ信号S
RSを生成し、更に、連続パルス判定部9の出力信号に基づいて連続パルス受信信号S
AMIを生成し、これらの信号がある一定期間以上異なる場合にエッジパルスラッチ信号S
RSの状態を書き変えるものである。
【0081】
このとき、エッジパルスの電圧だけを高くしたことで、通信における損失の増加を抑制しながらエッジパルスラッチ信号S
RSの耐ノイズ性を向上させることができる。また、もし、エッジパルスラッチ信号S
RSに誤り状態が発生しても、誤り状態を保持する懸念がない連続パルス受信信号S
AMIに基づいてエッジパルスラッチ信号S
RSを修正すことができるため、従来のように、フリップフロップ回路だけで復号した場合のように、長期間に渡り、誤り状態を保持することがなく、信頼性の高い通信を実現することができる。
【0082】
更に、通信システム1は、送信する連続パルスのデューティ及び極性に依存せず、エッジパルスによって入力信号のエッジのタイミングを伝送できるため、偏磁による磁気飽和状態となりやすいET積が小さな絶縁トランスを用いたトランス通信においても、入出力信号の同期性を容易に実現できるものである。
【0083】
<第2実施形態>
次に、
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係る通信システムについて説明する。
図10に示した第2実施形態に係る通信システム1Aは、
図1に示した第1実施形態に係る通信システム1を、双方向の通信システムに拡張したものである。双方向通信を行うために、通信システム1Aは、信号伝送部4Aと、信号伝送部4Aの1次側に設けられた送信部2及び受信部21と、信号伝送部4Aの2次側に設けられた送信部20及び受信部3と、を備えている。
【0084】
ここで、信号伝送部4Aは、磁気結合素子や容量結合素子等を用いることで、双方向の通信を実現している。第2実施形態に係る通信システム1Aは、第1実施形態に係る通信システム1と同様の方法で、信号伝送部4Aの1次側の送信部2に入力された入力信号SIN1を、送信部2においてパルス信号列に変換して送信し、信号伝送部4Aを介して2次側の受信部3で受信する。2次側の受信部3では、この受信信号を基にして信号を復号し、復号した信号を出力信号S
OUT2として出力する。
【0085】
同様に、信号伝送部4Aの2次側の送信部20に入力された入力信号S
IN2は、送信部20でパルス信号に変換し、信号伝送部4Aを介して1次側の受信部21に送信する。そして、1次側の受信部21は受信した信号を復号し、復号した信号を出力信号S
OUT1として出力する。
【0086】
ここで、第2実施形態に係る通信システム1Aにおける送信部2及び送信部20は、
図1に示した第1実施形態に係る通信システム1における送信部2と同様の構成であり、送信部20の連続パルス生成部30、連続パルス駆動部31、エッジパルス生成部32及びエッジパルス駆動部33は、それぞれ送信部2の連続パルス生成部5、連続パルス駆動部6、エッジパルス生成部7及びエッジパルス駆動部8に相当し、同様の構成のものである。
また、送信部20には、同期クロック生成部504が設けられており、受信部3の連続パルス判定部9が受信判定した連続パルスに基づいて、1次側のクロックと同期した2次側用のクロックを生成するように構成されている。
【0087】
また、第2実施形態に係る通信システム1Aにおける受信部3及び受信部21は、
図1に示した第1実施形態に係る通信システム1における受信部3と同様の構成であり、受信部21の連続パルス判定部34、エッジパルス判定部35及び復号信号生成部36は、それぞれ受信部3の連続パルス判定部9、エッジパルス判定部10及び復号信号生成部11に相当し、同様の構成のものである。
【0088】
なお、1次側の受信部21の各部には、1次側の送信部2と同じ電源14が接続され、2次側の送信部20の連続パルス駆動部31には、2次側の受信部3と同じ電源16が接続され、2次側の送信部20のエッジパルス駆動部33には、電源16の電圧V
DD2よりも高い電圧V
DD2’の電源17が接続されている。
【0089】
この通信システム1Aによって双方向の通信を実現する方法としては、送信パルスのデューティは50%以下とし、1次側から送信するパルスの隙間に、2次側から送信するパルスを時分割で埋める方法が考えられる。あるいは、信号伝送部4Aとしてトランスを用いたトランス通信を行う場合は、
図8に示したように、1次側(又は2次側)から送信するパルスのデューティを100%とし、2次側(又は1次側)では負荷インピーダンスを変化させることにより、パルス駆動電流の変化を通して送信側に情報を伝達することも可能である。
本実施形態では、前者を例として説明する。
【0090】
時分割で双方向にパルスを送信する場合、1次側と2次側のクロックを同期させ、パルスの干渉を防ぐ必要がある。本実施形態では、
図10に示すように、2次側の連続パルス判定部9の受信信号を基にして、同期クロック生成部504で1次側のクロックと同期した周期T
CLKのクロックを2次側のクロックとして生成して用いるように構成している。
【0091】
この場合、ノイズ等の影響で、同期化のトリガとなる受信信号に欠損(すなわち生成されるクロックに欠損)が生じる場合を想定し、同期クロック生成部504は、トリガがない場合は内蔵クロックで自走する機能を有することが好ましい。このような機能は、例えば、公知のPLL(Phase Lock Loop)回路や同期クリア付カウンタ回路等で実現することができる。
【0092】
図11は、本実施形態の通信システム1Aにおける信号のタイムシーケンスの一例を示したものである。
図11に示すように、信号伝送部4Aの差動電圧V
Tには、時分割で送信した1次側送信信号と2次側送信信号とが重畳する。ここで、ハッチングを付したパルス信号が、2次側送信信号を示しており、1次側の送信パルスの隙間を埋めるように(隙間にはまるように)、2次側の送信パルスが重畳されている。
【0093】
2次側の受信部3は、1次側送信パルスに基づいて、時間t5〜時間t7の期間にHiレベルとなる2次側出力信号S
OUT2を出力し、1次側の受信部21は、2次側送信パルスに基づいて、時間t6〜時間t8の期間にHiレベルとなる2次側出力信号S
OUT1を出力している。
【0094】
<第3実施形態>
次に、
図12を参照して、本発明の第3実施形態に係る半導体駆動装置について説明する。
図12に示した半導体駆動装置600は、
図10に示した第2実施形態に係る双方向の通信システム1Aを、半導体スイッチング素子Q1を制御するための駆動指令信号と半導体スイッチング素子Q1の動作状態を示す状態信号とを双方向通信するための通信手段に適用したものである。
なお、
図12に示す半導体駆動装置600の内、既に第2実施形態に係る通信システム1Aについて説明した構成については適宜説明を省略する。
【0095】
図12に示すように、半導体駆動装置600は、マイクロコンピュータなどの上位論理部(図示せず)で生成された半導体スイッチング素子Q1のオン・オフを指令する駆動指令信号を送受信するために、
図10に示した送信部2で構成される駆動指令送信部601と、同じく
図10に示した受信部3で構成される駆動指令受信部602とを備えている。ここで、駆動指令送信部601に入力される駆動指令信号が、
図10における入力信号S
IN1に相当し、駆動指令受信部602からゲート駆動回路500に出力する駆動指令信号が、
図10における出力信号S
OUT2に相当する。
【0096】
更に、半導体駆動装置600は、半導体スイッチング素子Q1のオン状態を表す状態信号を送受信するために、
図10に示した送信部20で構成される状態信号送信部604と、同じく
図10に示した受信部21で構成される状態信号受信部603とを備えている。ここで、状態判定回路503から状態信号送信部604に入力される状態信号が、
図10における入力信号S
IN2に相当し、状態信号受信部603から上位論理部(図示せず)に出力される状態信号が、
図10における出力信号S
OUT1に相当する。
【0097】
また、半導体駆動装置600は、駆動指令受信部602から出力される駆動指令信号に基づいて半導体スイッチング素子Q1を駆動するゲート駆動回路500と、半導体スイッチング素子Q1のオン状態を判定する状態判定回路503とを備えている。
【0098】
なお、
図12に示した例では、半導体スイッチング素子Q1は、電源502から負荷501に電圧V
Bの電力の供給のオン・オフを制御するスイッチとして用いられている。半導体スイッチング素子Q1としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などを用いることができる。なお、
図12は、半導体スイッチング素子Q1としてIGBTを用いた場合の例を示している。
【0099】
一般に、半導体駆動装置は、半導体スイッチング素子のオン・オフに伴う電位変動のために、上位論理部と駆動する半導体スイッチング素子との間で絶縁を介した通信を行う必要がある。本実施形態に示す半導体駆動装置600の信号伝送部4Aは、そのような絶縁通信を実現するために絶縁トランス200を用いている。
【0100】
更に、
図12示す例では、低コスト化のために単一の絶縁トランス200を用いて、前記した駆動指令信号と状態信号との双方向の通信を実現する構成を示している。信号伝送部4Aは、双方向のパルスを受信するためのインピーダンスを得るために、絶縁トランス200の1次側に設けられた受信抵抗201及び202に加えて、2次側に受信抵抗203及び204を設けている。
【0101】
なお、受信抵抗203及び204は、それぞれの一端が絶縁トランス200の2次側の異なる端部に接続され、他端が、何れも半導体スイッチング素子Q1のエミッタ端子に接続されると共に、状態判定回路503の入力端子に接続されている。
【0102】
上位論理部(図示せず)から駆動指令送信部601に駆動指令信号が入力されると、駆動指令送信部601は、この入力信号を連続パルス及びエッジパルスからなるパルス信号に変換して絶縁トランス200を介して駆動指令受信部602に送信する。そして、駆動指令受信部602は、受信したパルス信号を復号し、復号した駆動指令信号をゲート駆動回路500に出力する。ゲート駆動回路500は、この駆動指令信号に基づいて、半導体スイッチング素子Q1のゲート電圧を変化させることにより、半導体スイッチング素子Q1をオン・オフさせる。
【0103】
状態判定回路503は、半導体スイッチング素子Q1のオン・オフ状態を、半導体スイッチング素子Q1のゲート−エミッタ間の電圧をモニタすることにより判定する。状態判定回路503は、判定結果である状態信号を状態信号送信部604に出力する。
【0104】
また、本実施形態における駆動指令送信部601は、
図2に示した通信システム1における送信部2と同様の構成に加えて、パルス出力段制御回路101を有している。
パルス出力段制御回路101は、駆動指令送信部601がパルスを送信しない期間中に、状態信号受信部603が、状態信号送信部604によって送信された信号を受信抵抗201及び202を用いて受信するために、駆動指令送信部601の出力段のインピーダンスを高くする(いわゆる、高インピーダンス状態にする)機能を有するものである。
【0105】
状態信号送信部604も同様に、
図10に示した通信システム1Aにおける送信部20と同様の構成に加えて、パルス出力段制御回路505を有している。このパルス出力段制御回路505は、パルス出力段制御回路101と同様の機能を有する回路である。すなわち、状態信号送信部604がパルスを送信しない期間中に、駆動指令受信部602が、駆動指令送信部601によって送信された信号を受信抵抗203及び204を用いて受信するために、状態信号送信部604のインピーダンスを高くするものである。
パルス出力段制御回路101及び505によって、時分割の双方向通信を実現することができる。
【0106】
また、状態信号送信部604は、
図10に示した通信システム1Aにおける送信部20と同様に、同期クロック生成部504を有している。双方向通信を実現するために、状態信号送信部604は、連続パルス判定部9の出力信号を基に、同期クロック生成回路504によって駆動指令送信部601のクロックと同期したクロックを生成する。そして、同期クロック生成部504によって生成したクロックは、連続パルス生成部30、エッジパルス生成部32及び状態判定回路503に出力され、それぞれの回路のクロック信号として用いられる。
【0107】
これによって、状態信号送信部604の連続パルス生成部30で生成する連続パルス信号は、駆動指令送信部601の連続パルス駆動部6から送信される連続パルスの隙間を埋めるように(パルスのオン期間が重複しないように)生成させることができ、従って駆動指令送信部601の連続パルス駆動部6及び状態信号送信部604の連続パルス駆動部31の双方から送信される連続パルス同士の干渉を防ぐことができる。
【0108】
同様に、エッジパルス生成部32は、同期クロック生成回路504が生成したクロックを用いてエッジパルスを用いることにより、エッジパルス駆動部33及び駆動指令送信部601のエッジパルス駆動部8の双方から送信されるエッジパルス同士の干渉が発生しないように生成することができる。
【0109】
また、駆動指令受信部602は、
図10に示した通信システム1Aにおける受信部3と同様の構成に加えて、パルス受信制御回路308Aを有している。パルス受信制御回路308Aは、
図2に示した第1実施形態に係る通信システム1における受信部3のパルス受信制御回路308と同様の機能に加え、状態信号送信部604が信号を送信する期間中に、連続パルス判定部9及びエッジパルス判定部10による受信判定を停止する機能を有するものである。これは、双方向通信に対応した機能であり、同じ側の送信部(状態信号送信部604)で送信した信号を同じ側の受信部(駆動指令受信部602)で直接受信することを防ぐためである。
【0110】
状態信号受信部603は、駆動指令受信部602と同様に、パルス受信制御回路308Aに相当するパルス受信制御回路506を有している。
パルス受信制御回路506は、パルス受信制御回路308Aと同様に、駆動指令送信部601が信号を送信する期間中に、連続パルス判定部34及びエッジパルス判定部35による受信判定を停止する機能を有するものである。これによって、同じ側の送信部(駆動指令送信部601)で送信した信号を同じ側の受信部(状態信号受信部603)で直接受信することを防ぐことができる。
【0111】
以上説明したように、第3実施形態である半導体駆動装置600においては、上位論理部(図示せず)から供給される半導体スイッチング素子Q1に対してオンを指令することを示す駆動指令信号の送信と、半導体スイッチング素子Q1のオン状態を示す状態信号の送信と、を絶縁トランスを介して双方向に通信する。これによって、上位論理部(図示せず)は、供給した駆動指令信号に応じて制御される半導体スイッチング素子Q1のオン、オフ状態を取得することができ、半導体スイッチング素子Q1が正常に駆動されているかどうかを検知して、例えば、異常時には迅速に適切な処理を施すことができる。
【0112】
次に、第3実施形態に係る半導体駆動装置600の双方向の通信において、双方向に送信される連続パルスとエッジパルスとの干渉時に発生する入出力信号の非同期性を改善するための変形例について説明する。
【0113】
<変形例1>
入出力信号の同期性が要求される場合は、エッジパルスのパルス幅を連続パルスのパルス幅よりも広くし、強制的にエッジパルスを送信することで同期性を改善することができる。これによって、連続パルスとエッジパルスとが干渉した場合であっても、エッジパルスのパルス幅が連続パルスのパルス幅より広いため、エッジパルスに連続パルスと重複しない部分が生じることになる。従って、エッジパルス判定部10及び35は、このエッジパルスと重複しない部分から連続パルスを確実に受信判定することができる。
【0114】
なお、連続パルスとエッジパルスとが干渉することで、連続パルスに欠損が発生することがあるが、
図2に示したフィルタ回路311によりフィルタ(除外)する時間であるラッチ信号修正期間T
TRGとクロック生成回路100の生成するクロック周期T
CLKとを調整することにより、この連続パルスの欠損が出力信号に影響しないようにすることができる。すなわち、ラッチ信号修正期間T
TRGを、例えばクロック周期T
CLK超とすることにより、
図4に示した例において、正極性と負極性とを併せた連続パルスの間隔がT
CLK/2である場合に、連続パルスが2つ欠損した場合でも、出力信号に影響を与えないようにすることができる。
【0115】
但し、ラッチ信号修正期間T
TRGを長くすることにより、エッジパルスラッチ信号S
RSと連続パルス受信信号S
AMIとの差異状態の許容時間であるS
XOR信号発生期間T
XORを増加させることにつながる。
そのため、信号の同期性とS
XOR信号発生期間T
XORの短縮とで優先度を考慮する必要がある。一般に、電力変換装置で用いられる半導体駆動装置においては、信号の誤りによってアーム短絡などが発生する可能性があるため、後者の差異状態の許容時間であるS
XOR信号発生期間T
XORの短縮の優先度を高くすることが望ましい。
【0116】
<変形例2>
次に、双方向通信の際に、1次側が送信するエッジパルスと2次側が送信するエッジパルスとが干渉した場合に、入出力信号の非同期性を改善する方法について、
図13を参照して説明する。
図13に示すように、本変形例では、1次側が送信するエッジパルスの幅と2次側が送信するエッジパルスの幅とを異なるようにし、かつ、エッジパルスの幅の狭い方のエッジパルスを、所定の間隔をあけて複数パルス(2パルス)送信するようにした。
【0117】
ここで、1次側が送信するエッジパルスの幅をT
W1とする。また、2次側が送信するエッジパルスの幅をT
W2、連続して出力するパルス数を2パルスとし、その間隔をT
BWとする。そして、T
W1>T
W2 かつ T
BW>T
W1−2×T
W2の関係を満たすようにする。
【0118】
この場合において、双方向のエッジパルスが干渉した場合について説明する。
まず、1次側から送信されるエッジパルスは、幅T
W1であり、2次側が送信するエッジパルスの幅T
W2より広いため、2次側が送信するエッジパルスと重ならない部分が必ず発生する。従って、1次側から送信したエッジパルスは、2次側の受信部によって、この重ならない部分で受信される。
【0119】
また、2次側から送信されるエッジパルスは、幅T
W2のパルスが間隔T
BWで出力され、前記した後半の条件式より、T
BW+2×T
W2>T
W1であるため、2パルスの少なくとも何れか一方は、1次側が送信するエッジパルスと重ならない部分が必ず発生する。従って、2次側から送信したエッジパルスは、1次側の受信部によって、この重ならない部分で受信される。
以上説明したように、双方向から送信されるエッジパルスが干渉した場合でも、双方のエッジパルス信号が失われないようにすることができる。
【0120】
<変形例3>
入出力信号の同期性を改善するその他の方法として、受信側の付加インピーダンスの変化を利用した方法もある。この方法は、例えば
図12の状態信号送信部604の代わりに駆動指令受信部602側に受信抵抗203及び204の値を変化する機能を有するインピーダンス制御回路(図示せず)を設け、かつ、駆動指令送信部601側にパルス駆動電流を検知する電流検知回路(図示せず)を設けるものである。
【0121】
このように構成することにより、状態信号の送信側では、パルスを送信することで情報を伝送する代わりに、インピーダンス制御回路(図示せず)によって受信抵抗203及び204を変化させ(すなわちインピーダンスを変化させ)、その結果として駆動指令送信部601側(すなわち状態信号受信部603側)のパルス駆動電流を変化させることで情報を伝達することができる。例えば、半導体スイッチング素子Q1のオン期間中は、受信抵抗203及び204の値を2倍にすると仮定すると、駆動指令送信部601側のパルス駆動電流は1/2となる。そこで、駆動指令送信部601側は、電流検知回路(図示せず)によって、この電流の減少をモニタすることにより、半導体スイッチング素子Q1がオン状態にあるかどうかを検知することができる。
【0122】
すなわち、半導体スイッチング素子Q1のオン状態を、パルス信号として送信することなく、状態信号受信部603側に伝達することができる。これによって、双方向のパルスが干渉することによる同期性の劣化を改善することができる。
【0123】
以上説明した、第2実施形態及びその各変形例では、半導体駆動装置を例として、本発明による通信システムを用いて双方向通信を実現する方法を示したが、本実施形態で説明した双方向の通信システム及びその制御方法は、他の一般の通信システムにも適用できることは明らかである。
【0124】
また、半導体駆動装置のように、高い信頼性が要求される場合には、本発明の第1実施形態に係る通信システム1を、2つの信号伝送部4を設けた2チャンネルの単方向通信に適用することが考えられる。この場合、信号伝送部4の追加によるコストの増加が発生する一方で、パルス信号の干渉のリスクがなく、入出力信号の同期性のある高信頼なリアルタイム通信を実現することができる。
【0125】
また、このように構成することで、送信する連続パルスの自由度が広がり、高付加価値の通信を実現することも可能である。例えば、半導体駆動装置に適用する場合、半導体の温度、導通電流、直流電源電圧等の情報をデジタル多重化し、この情報を連続パルスによるシリアルデータとして制御部側へ伝達することができる。これにより、上位論理部は半導体スイッチング素子の動作環境を解析し、より好適な制御を実現することができる。この場合も、第1実施形態についての説明で示したように、連続パルスはエッジパルスのラッチ信号の健全性を保証する役割を果たし、より信頼性の高い通信に寄与するものである。
【0126】
<第4実施形態>
次に、
図14を参照して、本発明の第4実施形態に係る電力変換装置について説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、前記した第3実施形態又はその変形例に係る半導体駆動装置600を、電力変換装置における半導体スイッチング素子の駆動装置として適用したものである。
【0127】
図14に示すように、本実施形態に係る電力変換装置700は、半導体スイッチング素子Q11〜Q16、ダイオードD11〜D16、半導体駆動装置GD11〜GD16、及び半導体駆動装置GD11〜GD16を介して、半導体スイッチング素子Q11〜Q16に対してスイッチング動作の制御信号である駆動指令信号を発生する上位論理部L1を備えて構成されている。なお、本実施形態に係る電力変換装置700は、電圧V
Bの直流電源502の直流電力を交流電力に変換するインバータ装置である。
また、本実施形態では、半導体スイッチング素子Q11〜Q16としてIGBTを用いているが、MOSFETなど他のスイッチング素子を用いて構成することもできる。
【0128】
電力変換装置700は、直流電源502の正負の端子間に、2個の半導体スイッチング素子(Q11及びQ12、Q13及びQ14、Q15及びQ16)が極性を揃えて直列に接続された上下アームが3組接続されている。また、各半導体スイッチング素子Q11〜Q16のエミッタ−コレクタ間には、負荷電流を還流させるためのダイオードD11〜D16が逆極性かつ並列に、それぞれ接続されている。また、各半導体スイッチング素子Q11〜Q16のゲート端子には、スイッチングの駆動指令信号を出力する半導体駆動装置GD11〜GD16がそれぞれ接続されている。また、直列接続された2個の半導体スイッチング素子(Q11及びQ12、Q13及びQ14、Q15及びQ16)の接続点は、それぞれ交流の出力端子となり、負荷である三相交流モータM1に接続されている。
【0129】
そして、電力変換装置700は、上位論理部L1によって、半導体駆動装置GD11〜GD16を介して、それぞれ半導体スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング動作を制御して、交流端子に接続された三相交流モータM1に交流電力を供給する。
【0130】
ここで、電力変換装置700は、上位論理部L1によって、各半導体スイッチング素子Q11〜Q16に対する駆動指令信号を発生し、この半導体駆動装置GD11〜GD16を介して、この駆動指令信号を半導体スイッチング素子Q11〜Q16のゲート端子(制御端子)に送信することで電力変換動作を行う。このとき、電力変換装置700は、半導体駆動装置GD11によって駆動指令信号を絶縁通信によって送信するため、半導体スイッチング素子Q11〜Q16のスイッチング時に発生するノイズの影響が低減される。このため、電力変換装置700は、高い信頼性で電力変換を行うことができる。
【0131】
なお、本実施形態では、本発明の半導体駆動装置の電力変換装置への適用例として、インバータ装置の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、直流−直流コンバータや、交流−直流コンバータなど、他の電力変換装置に適用することもできる。
また、半導体駆動装置は、通信システムとして双方向通信を行うものに限定されず、上位論理側L1から制御信号を入力し、半導体スイッチング素子Q11〜Q16に復号した制御信号を出力する単方向の通信を行うものであってもよい。