(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753500
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置
(51)【国際特許分類】
F16D 66/02 20060101AFI20150702BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20150702BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
F16D66/02 F
B61H5/00
G01B11/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-15661(P2012-15661)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-155785(P2013-155785A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000182993
【氏名又は名称】日鉄住金レールウェイテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134957
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 英幸
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】胡内 直登
【審査官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−243488(JP,A)
【文献】
特開2005−321091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 66/02
B61H 5/00
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車輪の板部を挟んで一対のブレーキディスクが対向配置され、そのブレーキディスクがボルトによって締結されてなるブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置であって、
鉄道車輪のボス穴を支持し、鉄道車輪の中心軸を中心に回転する車輪受け台と、
一方のブレーキディスクの摺動面に対向して配設され、車輪受け台の回転に伴って前記摺動面の一周にわたる高さ変位を計測する第1変位計と、
前記摺動面側の鉄道車輪のリム面に対向して配設され、車輪受け台の回転に伴って前記リム面の一周にわたる高さ変位を計測する第2変位計と、
第1変位計から計測データを取得して前記摺動面の高さ変位の最大値と最小値の差を算出するとともに、第2変位計から計測データを取得して前記リム面の高さ変位の最大値と最小値の差を算出し、算出した両方の差の値同士の差をブレーキディスクのうねりとして導出する演算器と、
を備えた
ことを特徴とするブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置。
【請求項2】
前記第1変位計および前記第2変位計は、車輪受け台に支持された鉄道車輪の一方のブレーキディスクの摺動面側と他方のブレーキディスクの摺動面側に一組ずつ配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置。
【請求項3】
前記第1変位計および前記第2変位計が反射型レーザー変位センサである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載されるブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の制動装置としてディスクブレーキが採用されている。ディスクブレーキでは、鉄道車輪(以下、単に「車輪」ともいう)の両側面にブレーキディスク(以下、単に「ディスク」ともいう)を取り付けたディスク付き車輪が多用される。
【0003】
図1は、一般的なディスク付き車輪の断面図である。同図に示すディスク付き車輪は、車輪1と、ドーナツ形円盤状の一対のディスク2と、これらを締結するためのボルト3およびナット4とから構成される。一対のディスク2は、それぞれ、表面側を摺動面2eとし、その裏面には複数の冷却フィン部2aが放射状に形成されている。車輪1の板部1aおよびディスク2には、それぞれ、ボルト3を挿通させるボルト穴1b、2bが形成されている。ディスク付き車輪は、一対のディスク2が車輪1の板部1aを挟み込むように対向配置され、冷却フィン部2aが車輪1の板部1aと接触した状態で、ボルト穴1b、2bを挿通したボルト3とナット4によりディスク2が車輪1に締結されてなる。
【0004】
このような構成のディスク付き車輪を組み立てる際、車輪1とディスク2の間に異物が入り込むことがあってはならない。もし万一、この様なことが起こると、ディスク付き車輪は、ディスク2が車輪1に対して傾いて取り付けられることから、鉄道車両の走行中に車輪1の回転に伴ってディスク2のうねりが生じる。ディスク2のうねりが著しいと、制動時にディスク2の摺動面2eとブレーキライニングとの接触状態が不安定になり、ブレーキ性能が低下する可能性がある。このため、ディスク付き車輪においては、車輪1に取り付けられたディスク2の高さ方向のうねりを管理する必要があり、従来から、ディスク摺動面2eのうねり測定が実施されている。
【0005】
従来、ディスク付き車輪におけるディスク摺動面2eのうねり測定は、専用のゲージスタンドに耳金を固定したダイヤルゲージを用い、手作業により行っている。すなわち、ディスク付き車輪を測定台に平置きした状態で、その上面側のディスク2の摺動面2eにゲージの測定子を接触させつつ、車輪の上面側のリム面1eを基準面としてそのリム面1e上にゲージスタンドを配置し、この状態からゲージの指針を注視しながら、ゲージスタンドをリム面1e上で一周以上滑らせ、ゲージ指針の振れの最大と最小の目盛を読み取る。そして、読み取った両目盛の差を手計算で算出し、その値をディスク摺動面2eのうねりとして把握している。
【0006】
また、下面側のディスク摺動面2eのうねりを測定する場合は、ディスク付き車輪をクレーンや特殊な反転機で上下反転させ、下面側を上面側に配置し直してから、上記と同様にダイヤルゲージによって測定している。測定対象のディスク2が下面側に配置されている状態のままでは、下向きのリム面1e上でゲージスタンドを滑らせることも、ゲージ指針を読み取ることも困難だからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のうねり測定手法によれば、ディスク摺動面のうねりを測定することが一応は可能である。しかし、従来のうねり測定手法は、測定のすべてが手作業であり、作業者がゲージスタンドをリム面上で慎重に滑らせると同時に、ゲージ指針を注視する必要があるため、格別な経験と集中力を要する上、多大な時間と労力がかかることは否めない。一対のディスクを両方とも測定する場合は、さらに負担が増す。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクの摺動面のうねりを測定する際、作業者の経験と集中力の制約を低減し、迅速に測定を行えるうねり測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のうねり測定装置は、鉄道車輪の板部を挟んで一対のブレーキディスクが対向配置され、そのブレーキディスクがボルトによって締結されてなるブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置であって、
鉄道車輪のボス穴を支持し、鉄道車輪の中心軸を中心に回転する車輪受け台と、
一方のブレーキディスクの摺動面に対向して配設され、車輪受け台の回転に伴って前記摺動面の一周にわたる高さ変位を計測する第1変位計と、
前記摺動面側の鉄道車輪のリム面に対向して配設され、車輪受け台の回転に伴って前記リム面の一周にわたる高さ変位を計測する第2変位計と、
第1変位計から計測データを取得して前記摺動面の高さ変位の最大値と最小値の差を算出するとともに、第2変位計から計測データを取得して前記リム面の高さ変位の最大値と最小値の差を算出し、算出した両方の差の値同士の差をブレーキディスクのうねりとして導出する演算器と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記のうねり測定装置において、前記第1変位計および前記第2変位計は、車輪受け台に支持された鉄道車輪の一方のブレーキディスクの摺動面側と他方のブレーキディスクの摺動面側に一組ずつ配設されていることが好ましい。
【0011】
また、上記のうねり測定装置では、前記第1変位計および前記第2変位計が反射型レーザー変位センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のうねり測定装置によれば、ディスク付き車輪を支持した車輪受け台を回転駆動させ、これに伴って第1変位計および第2変位計により計測した計測データに基づき、演算器によってディスクの摺動面のうねりを導出することができるので、作業者に格別な経験も集中力も強いることなく、迅速にうねり測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明のディスク付き車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のディスク付き車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置について、その実施形態を詳述する。
【0015】
図2は、本発明のディスク付き車輪におけるブレーキディスクのうねり測定装置の一例を示す断面図である。本発明のうねり測定装置は、前記
図1に示すディスク付き車輪におけるディスク摺動面のうねりを測定する際に用いられるものであり、車輪1を支持する車輪受け台10を備える。
【0016】
車輪受け台10は、鉛直方向の中心軸を中心にして回転駆動が可能に構成されている。例えば、
図2に示すように、車輪受け台10の下面からは、その中心軸に沿って棒状の支軸12が突出しており、この支軸12は、固定の管状支柱13の内部に、図示しないベアリングを介して嵌め込まれている。さらに、支軸12には、図示しない電動モータから歯車やベルトを介して回転駆動の動力が伝達されるようになっている。
【0017】
また、車輪受け台10の上面からは、その中心軸を中心とする円柱部11が突出している。この円柱部11の外周面は、上方に行くほど直径が縮小するテーパ状であり、その下端部の直径が車輪1のボス穴1dの直径と同一であるか、それよりも僅かに小さい程度に形成されている。
【0018】
このような構成の車輪受け台10には、車輪1が、そのフランジ側とは反対側の面を下にされ、そのボス穴1dが円柱部11に嵌合する状態で載置される。このとき、車輪受け台10に載置された車輪1、すなわちディスク付き車輪は、そのボス穴1dが円柱部11に嵌合して支持されていることから、自己の中心軸が車輪受け台10の中心軸と概ね一致した状態になる。そして、ディスク付き車輪は、車輪受け台10の回転駆動に伴って、概ね車輪1の中心軸を中心に回転することが可能になる。
【0019】
これに加え、本発明のうねり測定装置は、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪の上方に、一組の変位計21、22を備える。具体的には、車輪1のフランジ側に配置されるディスク(以下、「フランジ側ディスク」ともいう)2の摺動面2eに対向して第1変位計21が配設され、車輪1のフランジ側のリム面1eに対向して第2変位計22が配設されている。これらの一組の第1変位計21および第2変位計22は、図示しない配線を介して演算器23に接続されている。
【0020】
また、
図2に示すうねり測定装置は、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪の下方にも、上記と同様に、一組の変位計21、22と演算器23を備える。具体的には、車輪1のフランジ側とは反対側に配置されるディスク(以下、「反フランジ側ディスク」ともいう)2の摺動面2eに対向して第1変位計21が配設され、車輪1の反フランジ側のリム面1eに対向して第2変位計22が配設されている。これらの一組の第1変位計21および第2変位計22は、図示しない配線を介して演算器23に接続されている。
【0021】
車輪受け台10を回転駆動させ、これに伴ってディスク付き車輪が一回転する間、上側の第1変位計21は、フランジ側ディスク2の摺動面2eの一周にわたる高さ変位を計測し、上側の第2変位計22は、車輪1のフランジ側のリム面1eの一周にわたる高さ変位を計測する。これらの計測データは、逐次上側の演算器23に送出される。これとあわせ、下側の第1変位計21は、反フランジ側ディスク2の摺動面2eの一周にわたる高さ変位を計測し、下側の第2変位計22は、車輪1の反フランジ側のリム面1eの一周にわたる高さ変位を計測する。これらの計測データは、逐次下側の演算器23に送出される。
【0022】
第1変位計21および第2変位計22としては、非接触式の変位計が好ましい。車輪1のリム面1eやディスク2の摺動面2eに不用意にキズがつくのを確実に防止できるからである。例えば、第1変位計21および第2変位計22には、反射型レーザー変位センサが実用的である。そのほかに、超音波変位センサや渦電流変位センサなどを採用することもできる。
【0023】
上側の演算器23は、以下の処理を行う。上側の第1変位計21から逐次送出される計測データを取得し、その計測データからフランジ側ディスク2の摺動面2eの高さ変位の最大値(DUmax)と最小値(DUmin)を抽出し、この最大値(DUmax)と最小値(DUmin)の差(DU)を算出する。これと同時に、上側の第2変位計22から逐次送出される計測データを取得し、その計測データから車輪1のフランジ側のリム面1eの高さ変位の最大値(WUmax)と最小値(WUmin)を抽出し、この最大値(WUmax)と最小値(WUmin)の差(WU)を算出する。そして、摺動面2eに関する上記の差(DU)の値とリム面1eに関する上記の差(WU)の値の差(DU−WU)を算出し、この差(DU−WU)の値をフランジ側ディスク2の摺動面2eのうねりとして導出する。
【0024】
同様に、下側の演算器23は、以下の処理を行う。下側の第1変位計21から逐次送出される計測データを取得し、その計測データから反フランジ側ディスク2の摺動面2eの高さ変位の最大値(DBmax)と最小値(DBmin)を抽出し、この最大値(DBmax)と最小値(DBmin)の差(DB)を算出する。これと同時に、下側の第2変位計22から逐次送出される計測データを取得し、その計測データから車輪1の反フランジ側のリム面1eの高さ変位の最大値(WBmax)と最小値(WBmin)を抽出し、この最大値(WBmax)と最小値(WBmin)の差(WB)を算出する。そして、摺動面2eに関する上記の差(DB)の値とリム面1eに関する上記の差(WB)の値の差(DB−WB)を算出し、この差(DB−WB)の値を反フランジ側ディスク2の摺動面2eのうねりとして導出する。
【0025】
このように、ディスク2の摺動面2eのうねりを導出するにあたり、ディスク2の摺動面2eの高さ変位を計測する第1変位計21からの計測データのみならず、車輪1のリム面1eの高さ変位を計測する第2変位計22からの計測データを用いる理由は、以下のとおりである。確かに、車輪受け台10の中心軸と、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪の中心軸が完全に一致した状態であれば、車輪1のリム面1eは車輪受け台10の中心軸、すなわち回転軸に対して直交する。この場合、車輪受け台10を回転駆動させて行うディスク2の摺動面2eのうねり測定では、リム面1eの一周にわたる高さ変位(上記の差(WU、WB))が0(ゼロ)になることから、第1変位計21によって計測したディスク2の摺動面2eの高さ変位(上記の差(DU、DB))のみで摺動面2eのうねり測定を行え、第2変位計22は不必要ともいえる。
【0026】
ただし、現実には、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪は、その中心軸が車輪受け台10の中心軸に対して多少なり傾いた状態で支持される可能性があり、車輪1のリム面1eは車輪受け台10の中心軸、すなわち回転軸に対して完全には直交せずに傾いた状態になることが想定される。この場合、車輪受け台10を回転駆動させて行うディスク2の摺動面2eのうねり測定では、第1変位計21によって計測したディスク2の摺動面2eの高さ変位(上記の差(DU、DB))に、リム面1eの傾きによる高さ変位が加算される。このため、リム面1eの傾きによる高さ変位を第2変位計22によって計測し、このリム面1eの高さ変位(上記の差(WU、WB))を、第1変位計21によって計測したディスク2の摺動面2eの高さ変位(上記の差(DU、DB))から差し引く。これにより、正確に摺動面2eのうねり測定を行うことが可能になる。
【0027】
なお、
図2に示すように、第1変位計21および第2変位計22は、支柱25から水平に突出するアーム部26に取り付けられており、演算器23は、支柱25に取り付けられている。うねり測定に際し、車輪受け台10にディスク付き車輪を載置させる段階では、第1変位計21および第2変位計22は、ディスク付き車輪が干渉しないように、アーム部26と一体で、支柱25を中心軸として回動したり、支柱25とともに水平方向にスライド移動したりして退避する構造となっている。
【0028】
本実施形態では、
図2に示すように、上側の演算器23は表示部24を有し、その表示部24にフランジ側ディスク2の摺動面2eのうねり(上記の差(DU−WU))の値を表示する。同様に、下側の演算器23は表示部24を有し、その表示部24に反フランジ側ディスク2の摺動面2eのうねり(上記の差(DB−WB))の値を表示する。作業者はそれらの値からディスク2のうねりを認識することができる。
【0029】
本発明のうねり測定装置によれば、ディスク付き車輪を支持した車輪受け台10を回転駆動させ、これに伴って第1変位計21および第2変位計22により計測した計測データに基づき、演算器23によってディスク2の摺動面2eのうねりを導出することができるので、作業者に格別な経験も集中力も強いることなく、迅速にうねり測定を行うことが可能になる。
【0030】
とりわけ、
図2に示すように、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪の上下、すなわち一方のディスク2であるフランジ側ディスク2の摺動面側と他方のディスク2である反フランジ側ディスク2の摺動面側に、第1変位計21および第2変位計22を一組ずつ配設した場合、両方のディスク2のうねり測定を同時に行える。このため、従来のうねり測定手法のようなディスク付き車輪の上下反転は不要であり、測定時間の短縮と労力の低減がより一層可能になる。
【0031】
測定時間に関していえば、従来のうねり測定手法では、一方のディスクを測定するのに2分、ディスク付き車輪を上下反転させるのに5分、他方のディスクを測定するのに2分、さらにディスク付き車輪を上下反転させて元の状態に戻すのに5分と、合計で14分程度を要する。これに対し、
図2に示すうねり測定装置による測定では、例えば、車輪受け台10の回転速度を1rpmとしても十分に測定が可能であり、この場合、約1分と極めて短時間で測定が済む。
【0032】
ところで、本発明のうねり測定装置において、第1変位計21として反射型レーザー変位センサを用いる場合に、スポットビームを出射して1次元で変位の計測が可能なスポットレーザー変位センサを採用し、このスポットレーザー変位センサを第1変位計21としてディスク2の径方向に複数個並べて配設することができる。また、ラインビームを出射して2次元で変位の計測が可能な2次元レーザー変位センサを採用し、この2次元レーザー変位センサを第1変位計21としてビームラインがディスク2の径方向に沿うように配設することもできる。
【0033】
このように第1変位計21として複数個のスポットレーザー変位センサまたは2次元レーザー変位センサを用いた場合、ディスク2の摺動面2eのうねり測定をディスク2の内周側から外周側までの全域にわたって行えることから、測定精度が向上する点で有用である。ちなみに、従来のうねり測定手法では、ディスク摺動面2eのうちでダイヤルゲージの測定子が接触する特定の円周上に限定してうねり測定を行っているに過ぎず、うねり値の評価(測定)に限界がある。
【0034】
また、第1変位計21として複数個のスポットレーザー変位センサまたは2次元レーザー変位センサを用いた場合、ディスク摺動面2eの円周方向のうねり測定のみならず、さらに径方向のうねり測定を行える点でも有用である。径方向のうねり測定の一例を挙げると、演算器23により、第1変位計21(複数個のスポットレーザー変位センサまたは2次元レーザー変位センサ)より送出された計測データのうちから、半径方向の外周側と内周側の高さ変位をそれぞれ抽出し、その差(R)を算出する。この差(R)の値がディスク摺動面2eの径方向のうねりに相当する。これにより、ディスク摺動面2eの径方向のうねりを測定することができ、ディスク2の反りなどといった変形を認識することが可能になる。
【0035】
ただし、ディスク摺動面2eの径方向のうねり測定は、車輪受け台10の中心軸と、車輪受け台10に支持されたディスク付き車輪の中心軸が完全に一致し、車輪1のリム面1eが車輪受け台10の中心軸、すなわち回転軸に対して傾くことなく直交する状態で行うのが前提である。このため、演算器23により、車輪1のリム面1eの一周にわたる高さ変位(上記の差(WU、WB))を算出し、これが、リム面1eが回転軸に対して直交しているとみなすことのできる規定範囲内、例えば0.1mm以内であれば、ディスク摺動面2eの径方向のうねり測定を行う。その規定範囲を超える場合は、その要因を排除した後に改めて測定を行えばよい。
【0036】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、車輪受け台に支持されたディスク付き車輪の上下に、第1変位計および第2変位計を一組ずつ配設しているが、上下のいずれか一方に、一組の第1変位計および第2変位計を配設する態様であっても構わない。測定の合間にディスク付き車輪の上下反転が必要となるが、従来のうねり測定手法のような測定に際しての作業者の経験と集中力を低減できることに変わりはないからである。
【0037】
また、上記の実施形態では、演算器が表示部にディスク摺動面のうねり値を表示することにより、作業者がディスクのうねりを認識することができるようにしているが、予め、うねりの管理値を演算器に登録しておき、測定によって導出したうねり値がその管理値を超えた場合に警報を発するように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のうねり測定装置は、ブレーキディスク付き鉄道車輪におけるブレーキディスクのうねり測定に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:鉄道車輪、 1a:車輪の板部、 1b:車輪のボルト穴、
1d:車輪のボス穴、 1e:車輪のリム面、
2:ブレーキディスク、 2a:ディスクの冷却フィン部、
2b:ディスクのボルト穴、 2e:ディスクの摺動面、
3:ボルト、 4:ナット、
10:車輪受け台、 11:円柱部、 12:支軸、 13:管状支柱、
21:第1変位計、 22:第2変位計、 23:演算器、 24:表示部、
25:支柱、 26:アーム部