特許第5753526号(P5753526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753526
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】セラミックハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/12 20060101AFI20150702BHJP
   B28B 11/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B28B11/12
   B28B11/02
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-235569(P2012-235569)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-83799(P2014-83799A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂樹
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−059415(JP,A)
【文献】 実開昭60−080303(JP,U)
【文献】 特開2003−291054(JP,A)
【文献】 特開2003−262118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00−11/24
17/00−17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面及び他方の端面を有する円筒状のセラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面及び前記他方の端面を仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体を得る仕上げ工程と、
前記仕上げセラミックハニカム乾燥体を焼成して、セラミックハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え、
前記仕上げ工程における前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面及び前記他方の端面の仕上げ加工位置を、下記(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程、及び(D)最小円筒度算出工程によって決定するセラミックハニカム構造体の製造方法。
(A)第一外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面側の端部において、前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向に離間した複数の箇所にて、前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(B)第二外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向の中央部において、前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向に前記(A)第一外周形状測定の各測定箇所からそれぞれ一定の距離離間した複数の箇所にて、前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(C)第三外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記他方の端面側の端部において前記(A)第一外周形状測定の各測定箇所から前記セラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離離間した複数の箇所にて前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(D)円筒度算出工程:前記(A)第一外周形状測定において測定された外周形状のうちの一の外周形状、前記(B)第二外周形状測定において前記一の外周形状の測定箇所から前記一定の距離離間した測定箇所において測定された外周形状、及び前記(C)第三外周形状測定において前記一の外周形状の測定箇所から前記セラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離離間した測定箇所において測定された外周形状の3つの外周形状が一組となるように、測定された前記外周形状を組分けし、前記組分けした各組の前記外周形状から、それぞれの組ごとに前記セラミックハニカム乾燥体の円筒度を算出し、算出したそれぞれの前記円筒度から、前記円筒度が最も小さくなる前記外周形状の組を求め、前記円筒度が最も小さくなる組の前記(A)第一外周形状測定の測定箇所及び前記(C)第三外周形状測定の測定箇所を、前記仕上げ加工位置とする。
【請求項2】
前記(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程において、前記セラミックハニカム乾燥体を、前記一方の端面が底面となるように測定台に載置して前記外周形状を測定する請求項1に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックハニカム乾燥体と前記測定台との間の少なくとも3箇所に、スペーサーを配置する請求項2に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックハニカム乾燥体を前記測定台に載置した際の、水平面に対する前記セラミックハニカム乾燥体の底面の傾きの高低差が4mm以下である請求項2又は3に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記外周形状を、反射式の非接触レーザー変位計によって測定する請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記外周形状を測定する際の前記セラミックハニカム乾燥体の温度が、20〜150℃である請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックハニカム乾燥体が、外周に凹凸を有する請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記セラミックハニカム乾燥体の外径寸法が、100mm以上である請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記セラミックハニカム乾燥体が、焼成してコージェライトとなる成形原料からなる請求項1〜8のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記仕上げセラミックハニカム乾燥体又は前記セラミックハニカム構造体のセルの端部に封止材料を充填する目封止部作製工程を更に備えた請求項1〜9のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックハニカム構造体の製造方法に関する。更に詳しくは、生産性に優れ、且つ、セラミックハニカム構造体の外径寸法の大小に関わらず、円筒度が優れたセラミックハニカム構造体を製造することが可能なセラミックハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体として、セラミック製のハニカム構造体(セラミックハニカム構造体)が採用されている。また、セラミック製のハニカム構造体は、排ガス浄化用のフィルタとしても用いられている。このようなセラミック製のハニカム構造体は、耐熱性、耐食性に優れたものであり、上述したような種々の用途に採用されている。ハニカム構造体は、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する構造体である。
【0003】
従来、外径寸法が150mm未満のハニカム構造体は、以下の方法によって製造されている。まず、成形原料を含む坏土をハニカム状に成形して、ハニカム成形体を得る。ハニカム成形体は、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルが隔壁によって区画形成された円筒状のものである。このハニカム成形体を、上記セルの延びる方向の長さが、仕上げ寸法の長さよりも長くなるように切断し、更に、ハニカム成形体を乾燥して、ハニカム乾燥体を得る。次に、ハニカム乾燥体のセルの延びる方向の長さを、仕上げ寸法となるように仕上げ加工して仕上げハニカム乾燥体を得る。次に、仕上げハニカム乾燥体を焼成して、ハニカム構造体を得る。また、このような方法よって製造されたハニカム構造体については、その外径寸法が、基準となる外径寸法公差を満たしているか否かの検査が行われ、検査に合格したものが製品として出荷される。
【0004】
一方、外径寸法が150mm以上のハニカム構造体を製造する際には、外壁を別途作製する工程が追加されることがある。外壁を別途作製する工程としては、例えば、仕上げハニカム乾燥体を焼成した後、得られた焼成体の外周を研削加工し、研削加工した外周部分に、外周コートを行って外壁を別途作製する工程を挙げることができる。外径寸法が150mm以上となるようなハニカム構造体を、「大型のハニカム構造体」ということがある。
【0005】
先に挙げられた、ハニカム成形体を乾燥し、仕上げ加工し、焼成することによってハニカム構造体を製造する製造方法を、以下、「一体成形による製造方法」ということがある。また、外壁を別途作製する工程が追加された製造方法を、以下、「外周コートによる製造方法」ということがある。また、ハニカム構造体の端面を仕上げ加工する方法として、ハニカム構造体の姿勢を補正し、この状態で仕上げ加工を行う方法等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−231475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のハニカム構造体の製造方法においては、得られるハニカム構造体の円筒度が不十分という問題があった。特に、上述した一体成形による製造方法では、上記円筒度の低下が顕著となる。また、近年、ハニカム構造体の円筒度に対する許容範囲が厳しくなっており、ハニカム構造体の円筒度の向上が求められている。円筒度の許容範囲とは、製品としてのセラミックハニカム構造体に要求される円筒度の基準値を満たす範囲のことを意味する。
【0008】
また、外周コートによる製造方法は、製造工程が煩雑であるという問題もあった。例えば、大型のハニカム構造体は、成形体の歪み等が大きいため、外周コートによる製造方法が主として用いられている。しかし、製造コストの低下等の観点から、一体成形による製造方法によって、大型のハニカム構造体を製造することが検討されている。但し、大型のハニカム構造体を一体成形による製造方法によって製造すると、ハニカム構造体の円筒度の低下がより顕著となる。このようなことから、従来、一体成形による製造方法によって大型のハニカム構造体を製造することは、極めて困難と考えられていた。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものである。本発明は、生産性に優れ、且つ、セラミックハニカム構造体の外径寸法の大小に関わらず、円筒度が優れたセラミックハニカム構造体を製造することが可能なセラミックハニカム構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下のセラミックハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0011】
[1] 一方の端面及び他方の端面を有する円筒状のセラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面及び前記他方の端面を仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体を得る仕上げ工程と、前記仕上げセラミックハニカム乾燥体を焼成して、セラミックハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え、前記仕上げ工程における前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面及び前記他方の端面の仕上げ加工位置を、下記(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程、及び(D)最小円筒度算出工程によって決定するセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0012】
(A)第一外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面側の端部において、前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向に離間した複数の箇所にて、前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(B)第二外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向の中央部において、前記一方の端面から前記他方の端面に向かう方向に前記(A)第一外周形状測定の各測定箇所からそれぞれ一定の距離離間した複数の箇所にて、前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(C)第三外周形状測定:前記セラミックハニカム乾燥体の前記他方の端面側の端部において前記(A)第一外周形状測定の各測定箇所から前記セラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離離間した複数の箇所にて前記セラミックハニカム乾燥体の外壁表面の外周形状を測定する。
(D)円筒度算出工程:前記(A)第一外周形状測定において測定された外周形状のうちの一の外周形状、前記(B)第二外周形状測定において前記一の外周形状の測定箇所から前記一定の距離離間した測定箇所において測定された外周形状、及び前記(C)第三外周形状測定において前記一の外周形状の測定箇所から前記セラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離離間した測定箇所において測定された外周形状の3つの外周形状が一組となるように、測定された前記外周形状を組分けし、前記組分けした各組の前記外周形状から、それぞれの組ごとに前記セラミックハニカム乾燥体の円筒度を算出し、算出したそれぞれの前記円筒度から、前記円筒度が最も小さくなる前記外周形状の組を求め、前記円筒度が最も小さくなる組の前記(A)第一外周形状測定の測定箇所及び前記(C)第三外周形状測定の測定箇所を、前記仕上げ加工位置とする。
【0013】
[2] 前記(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程において、前記セラミックハニカム乾燥体を、前記一方の端面が底面となるように測定台に載置して前記外周形状を測定する前記[1]に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0014】
[3] 前記セラミックハニカム乾燥体と前記測定台との間の少なくとも3箇所に、スペーサーを配置する前記[2]に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0015】
[4] 前記セラミックハニカム乾燥体を前記測定台に載置した際の、水平面に対する前記セラミックハニカム乾燥体の底面の傾きの高低差が4mm以下である前記[2]又は[3]に記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0016】
[5] 前記外周形状を、反射式の非接触レーザー変位計によって測定する前記[1]〜[4]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0017】
[6] 前記外周形状を測定する際の前記セラミックハニカム乾燥体の温度が、20〜150℃である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0018】
[7] 前記セラミックハニカム乾燥体が、外周に凹凸を有する前記[1]〜[6]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0019】
[8] 前記セラミックハニカム乾燥体の外径寸法が、100mm以上である前記[1]〜[7]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[9] 前記セラミックハニカム乾燥体が、焼成してコージェライトとなる成形原料からなる前記[1]〜[8]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【0021】
[10] 前記仕上げセラミックハニカム乾燥体又は前記セラミックハニカム構造体のセルの端部に封止材料を充填する目封止部作製工程を更に備えた前記[1]〜[9]のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法によれば、セラミックハニカム構造体の外径寸法の大小に関わらず、円筒度が優れたセラミックハニカム構造体を製造することができる。また、上述した外周コートによる製造方法のような煩雑な工程を行う必要がないため、生産性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、セラミックハニカム構造体が形成される過程を模式的に示した斜視図である。
図2】仕上げ工程における外周形状の測定方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図3A】(A)第一外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図3B】(B)第二外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図3C】(C)第三外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図3D】(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、及び(C)第三外周形状測定工程の他の例を模式的に示す斜視図である。
図3E】セラミックハニカム乾燥体の側面を模式的に示す斜視図である。
図4A】セラミックハニカム乾燥体を第一受け台及び第二受け台に載置した状態を模式的に示す側面図である。
図4B図4Aをセラミックハニカム乾燥体の一方の端面側から見た平面図である。
図4C】仕上げ工程における仕上げ加工の一の例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0025】
(1)セラミックハニカム構造体の製造方法:
本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法の一の実施形態は、図1に示すように、仕上げ工程Aと、焼成工程Bと、を備えたセラミックハニカム構造体の製造方法である。図1は、本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、セラミックハニカム構造体が形成される過程を模式的に示した斜視図である。仕上げ工程Aは、一方の端面61及び他方の端面62を有する円筒状のセラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62を仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体70を得る工程である。セラミックハニカム乾燥体50は、一方の端面61から他方の端面62まで延びる複数のセル52が隔壁51によって区画形成された円筒状のものである。焼成工程Bは、仕上げ工程Aにて得られた仕上げセラミックハニカム乾燥体70を焼成して、セラミックハニカム構造体100を得る工程である。以下、セラミックハニカム乾燥体50を、単に「ハニカム乾燥体50」ということがある。仕上げセラミックハニカム乾燥体70を、単に「仕上げハニカム乾燥体70」ということがある。セラミックハニカム構造体100を、単に「ハニカム構造体100」ということがある。
【0026】
ここで、仕上げ加工前のセラミックハニカム乾燥体50は、筒状のもの、より具体的には、略円筒状のものであるが、成形時及び成形後に歪み等が生じて、僅かに円筒度が悪くなっていることがある。ここで、「円筒度」とは、円筒であるべき部分の幾何学的円筒からのずれの大きさのことを意味する。例えば、筒状の対象物の円筒度は、その対象物の表面上の全ての点が、2つの同軸円筒の間にあり、その円筒の半径方向からの間隔が最小となる場合の、この2つの円筒の半径方向の間隔で表すことができる。円筒度が小さければ、幾何学的円筒により近い形状であるといえる。
【0027】
本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法においては、仕上げ工程Aにおけるセラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62の仕上げ加工位置を、以下のようにして決定する。即ち、以下の(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程、及び(D)最小円筒度算出工程によって、上述した仕上げ加工位置を決定する。ここで、図2は、仕上げ工程における外周形状の測定方法の一例を模式的に示す斜視図である。図3Aは、(A)第一外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。図3Bは、(B)第二外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。図3Cは、(C)第三外周形状測定工程の一例を模式的に示す斜視図である。また、図3Eは、セラミックハニカム乾燥体の側面を模式的に示す斜視図である。
【0028】
(A)第一外周形状測定では、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61側の端部において、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向に離間した複数の箇所にて、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状を測定する。図3Aにおいては、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向に離間した4箇所にて、外周形状A、A、A、Aを測定した場合の例を示す。ここで、「(A)第一外周形状測定において測定された外周形状」を、「外周形状A(x=1,2,3・・・、)」とする。また、後述する「(B)第二外周形状測定において測定された外周形状」を、「外周形状B(x=1,2,3・・・、)」とする。また、「(C)第三外周形状測定において測定された外周形状」を、「外周形状C(x=1,2,3・・・、)」とする。xは、一方の端面61側の端部、中央部、及び他方の端面62側の端部に外周形状の測定数に対応し、例えば、一方の端面61側の端部における1番目に測定された外周形状を「外周形状A」とする。また、外周形状Aを測定した箇所から、外周形状Cを測定した箇所までの長さを「仕上げ寸法m(x=1,2,3・・・、)」とする。例えば、外周形状Aを測定した箇所から、外周形状Cを測定した箇所までの長さを「仕上げ寸法m」とする。
【0029】
(B)第二外周形状測定では、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から他方の端面62に向かう方向の中央部において、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状Bを測定する。この中央部での外周形状Bの測定は、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向に(A)第一外周形状測定の各測定箇所からそれぞれ一定の距離離間した複数の箇所にて行う。即ち、図3Bにおいては、(A)第一外周形状測定の4箇所の測定箇所から、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向にそれぞれ一定離間した4箇所にて、外周形状B、B、B、Bを測定した場合の例を示す。即ち、外周形状Bの測定箇所は、前記の外周形状Aと後述する外周形状Cとの中央部に位置する。外周形状B、B、Bも同様の位置関係を測定する。
【0030】
(C)第三外周形状測定では、セラミックハニカム乾燥体50の他方の端面62側の端部において、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状Cを測定する。この他方の端面62側の端部での外周形状Cの測定は、(A)第一外周形状測定の各測定箇所からセラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離(仕上げ寸法m(x=1,2,3・・・、))離間した複数の箇所にて行う。即ち、図3Cにおいては、(A)第一外周形状測定の4箇所の測定箇所から、セラミックハニカム乾燥体50の仕上げ寸法に相当する距離(仕上げ寸法m、m、m、m)離間した4箇所にて、外周形状C、C、C、Cを測定した場合の例を示す。
【0031】
このような(A)第一外周形状測定、(B)第二外周形状測定、及び(C)第三外周形状測定によって、図3Eに示すように、外周形状A、A、A、A、外周形状B、B、B、B、及び外周形状C、C、C、Cがそれぞれ測定される。ここで、「セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から他方の端面62までの長さ」から、「仕上げ寸法m、m、m、m」を減法した長さを、セラミックハニカム乾燥体50の「余剰長さ」とした場合、(A)第一外周形状測定及び(C)第三外周形状測定は、以下のような範囲にて行われることが好ましい。(A)第一外周形状測定は、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から上記余剰長さに相当する範囲にて行われることが好ましい。即ち、(A)第一外周形状測定が行われる「一方の端面61側の端部」は、この一方の端面61から上記余剰長さに相当する範囲であることが好ましい。また、(C)第三外周形状測定は、セラミックハニカム乾燥体50の他方の端面62から上記余剰長さに相当する範囲にて行われることが好ましい。即ち、(C)第三外周形状測定が行われる「他方の端面62側の端部」は、この他方の端面62から上記余剰長さに相当する範囲であることが好ましい。また、(B)第二外周形状測定が行われる「中央部」は、上述した「一方の端面61側の端部」及び「他方の端面62側の端部」を除く、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から他方の端面に向かう方向の中間部分である。特に、外周形状Aの測定箇所と外周形状Cの測定箇所とから等間隔の位置が、外周形状Bの測定箇所になることが好ましい。外周形状B、B、Bの測定箇所も同様である。
【0032】
次に、(D)円筒度算出工程では、まず、(A)第一外周形状測定、(B)第二外周形状測定、及び(C)第三外周形状測定において測定された外周形状を組分けする。この組分けは、例えば、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cの3つの外周形状が一組となるように行われる。即ち、外周形状Aと、外周形状Aの測定箇所から一定の距離離間した測定箇所において測定された外周形状Bと、外周形状Aの測定箇所から仕上げ寸法に相当する距離離間した測定箇所において測定された外周形状Cとが同じ組となる。同様に、例えば、外周形状Aを選択する場合には、外周形状B、及び外周形状Cが一組となるように組み合わせが行われる。
【0033】
次に、組分けした各組の外周形状から、それぞれの組ごとにセラミックハニカム乾燥体50の円筒度を算出する。次に、算出したそれぞれの円筒度から、円筒度が最も小さくなる外周形状の組を求める。このようして求められた円筒度が最も小さくなる組の、(A)第一外周形状測定の測定箇所、及び(C)第三外周形状測定の測定箇所を、仕上げ加工位置とする。例えば、図4A図4Cにおいては、外周形状A及び外周形状Cの測定箇所が、仕上げ加工位置となる場合の例を示す。ここで、図4Aは、セラミックハニカム乾燥体を第一受け台及び第二受け台に載置した状態を模式的に示す側面図である。図4Bは、図4Aをセラミックハニカム乾燥体の一方の端面側から見た平面図である。図4Cは、仕上げ工程における仕上げ加工の一の例を模式的に示す側面図である。
【0034】
このように構成することによって、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62を仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体70を得る際に、円筒度がより良くなる加工位置にて仕上げ加工を行うことができる。仕上げ加工とは、ハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62の仕上げ寸法mからの余剰部分50a、50bを切断する工程のことをいう。従来の製造方法では、両端面からほぼ均等な距離において仕上げ加工を行うことがあったが、このような方法では、円筒度がより良くなる加工位置から外れた箇所にて仕上げ加工を行うことがあり、生産性に優れ、且つ、セラミックハニカム構造体の外径寸法の大小に関わらず、円筒度が優れたセラミックハニカム構造体を製造することは困難であった。
【0035】
「セラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法」とは、仕上げセラミックハニカム乾燥体に要求される一方の端面から他方の端面までの長さのことをいう。仕上げセラミックハニカム乾燥体に要求される一方の端面から他方の端面までの長さについては、最終製品であるセラミックハニカム構造体の一方の端面から他方の端面までの規格の長さから、焼成時の収縮量等を考慮して、適宜決定される。
【0036】
以下、本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法について、更に詳細に説明する。
【0037】
(1−1)セラミックハニカム乾燥体の作製:
まず、本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法に用いられるセラミックハニカム乾燥体の作製方法について説明する。セラミックハニカム乾燥体の作製方法については、以下の作製方法に限定されることはない。即ち、セラミックハニカム乾燥体は、一方の端面から他方の端面に向かう方向の長さが、仕上げ寸法となるように仕上げ加工される前のものであれば、その作製方法等については、特に制限はない。
【0038】
セラミックハニカム乾燥体の作製方法としては、一般的な、押出成形法を用いる。例えば、セラミック材料と成形助剤を含有する成形原料を混練して、真空土練機等により坏土を形成する、間欠成形(ラム成形)方法を挙げることができる。また、別法として、混合粉末を直接坏土化し、成形する、連続成形法を挙げることができる。成形原料に含まれるセラミック材料としては、特に制限はなく、従来公知のセラミックハニカム構造体の製造方法において、成形原料として用いられるセラミック材料を用いることができる。例えば、セラミック材料としては、コージェライト、コージェライト化原料、炭化珪素、アルミナ等を挙げることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0039】
また、成形原料には、分散媒となる水を含有させる。更に、成形原料には、必要に応じて、造孔材、バインダ、分散剤、界面活性剤等を含有させてもよい。造孔材、バインダ、分散剤、界面活性剤等は、従来公知のセラミックハニカム構造体の製造方法に用いられるものを好適に用いることができる。
【0040】
次に、例えば、押出成形により、ハニカム状に成形して、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルが隔壁によって区画形成された円筒状のハニカム成形体を得る。成形方法としては、間欠押出成形、又は連続押出成形を挙げることができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いる。
【0041】
次に、得られたハニカム成形体を、ハニカム成形体のセルの延びる方向に切断する。なお、ハニカム成形体を切断する際には、切断された各ハニカム成形体の一方の端面から他方の端面に向かう方向の長さが、ハニカム構造体の仕上げ寸法よりも長くなるようにする。各ハニカム成形体の仕上げ寸法よりも長い部分は、仕上げ工程において切断除去される。
【0042】
次に、切断されたハニカム成形体を乾燥して、ハニカム乾燥体を得る。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0043】
(1−2)仕上げ工程:
次に、図1及び図2に示すように、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62を仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体70を得る。この仕上げ工程により、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から他方の端面62までの長さが、仕上げ寸法mとなるように加工される。この際、(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、(C)第三外周形状測定工程、及び(D)最小円筒度算出工程によって、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61及び他方の端面62の仕上げ加工位置を決定する。
【0044】
(1−2A)(A)第一外周形状測定工程:
(A)第一外周形状測定では、図3Aに示すように、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61側の端部において、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向に離間した複数の箇所にて、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状A(x=1,2,3・・・、)を測定する。外周形状Aの測定方法については、特に制限はない。例えば、図3Aに示すように、レーザー変位計67によって外周形状Aを測定することができる。レーザー変位計67としては、反射式の非接触レーザー変位計、を好適に用いることができる。このようなレーザー変位計は、セラミックハニカム乾燥体50の外周形状をより正確に測定することができる。
【0045】
セラミックハニカム乾燥体50の外周形状Aを測定する際には、まず、外周形状Aの測定開始点P1から、外周形状の測定開始点P1を含む周方向全周に渡って外周形状Aを測定する。この外周形状Aの測定が終了した後、外周形状Aの測定開始点P2から、外周形状の測定開始点P2を含む周方向全周に渡って外周形状Aを測定する。以下、順次、測定開始点P3から外周形状Aを測定し、測定開始点P4から外周形状Aを測定する。このようにして、必要な数の外周形状Aの測定を行う。また、後述する(B)第二外周形状測定、及び(C)第三外周形状測定を、(A)第一外周形状測定と同時に行ってもよい。例えば、図3Dに示すように、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cの測定を同時に行い、順次、外周形状A、外周形状B、及び外周形状C等の測定を行ってもよい。外周形状Aの測定位置と、外周形状Aの測定位置との間隔については特に制限はなく、例えば、10mm程度離れていることが好ましい。ここで、図3Dは、(A)第一外周形状測定工程、(B)第二外周形状測定工程、及び(C)第三外周形状測定工程の他の例を模式的に示す斜視図である。
【0046】
外周形状の測定時における、セラミックハニカム乾燥体の温度については、特に制限はないが、セラミックハニカム乾燥体の温度が、20〜150℃であることが好ましい。セラミックハニカム乾燥体の温度は、可能であれば、室温であることがより好ましい。セラミックハニカム成形体を乾燥した後のセラミックハニカム乾燥体は、50〜150℃程度となっており、このセラミックハニカム乾燥体を一旦室温まで冷却した後に外周形状を測定することも可能である。但し、室温まで冷却すると、熱効率、及び作業効率が悪くなる。逆に、セラミックハニカム成形体を乾燥した後のセラミックハニカム乾燥体を、速やかに外周形状の測定に供することができれば、作業効率をより向上させることができる。外周形状の測定においては、測定結果に対して温度補正を行ってもよいし、温度補正を行わなくてもよい。温度補正を行う際には、セラミックハニカム成形体の「基準の外径寸法」を、セラミック材料、成形助剤の熱膨張係数を予め測定して、「温度に対応した基準の外径寸法」に補正する。
【0047】
外周形状の測定は、図3Aに示すように、測定対象物を水平に載置可能な測定台65上に、セラミックハニカム乾燥体50を載置して行われることが好ましい。このような測定台65を用いると、セラミックハニカム乾燥体50の外周形状を簡便に測定することができる。例えば、レーザー変位計67が固定式の場合は、図3Dに示すように、レーザー変位計67を3個配置して、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cの測定を同時に行うことが好ましい。セラミックハニカム乾燥体50を載置した測定台65を水平面内で1回転させることにより、セラミックハニカム乾燥体50の外周形状を連続的に測定することができる。図3Aにおいては、測定台65上に載置したセラミックハニカム乾燥体50を、符号80に示す回転方向に回転させて、外周形状を測定している。レーザー変位計67は、可動式のものであってもよい。また、測定台65と、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61との間には、スペーサー66を配置することが好ましい。セラミックハニカム乾燥体50は、成形時の切断、乾燥工程により、端面61の平面性が悪化しており、測定台65が回転する際、ハニカム乾燥体50が遠心力で移動する可能性がある。外周形状の測定精度を確保するため、スペーサー66を3箇所配置することが好ましい。
【0048】
セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61側の端部における外周形状の測定数については、図3Aに示すように、4箇所に限定されることなく、特に限定されない。押出成形は、金太郎飴に代表されるように、どこを切断しても同じ顔が現れる、即ち、ハニカム成形体であれば、どこで切断しても同じ形状となるのが特徴である。比較的、形状の再現性が高い、外径寸法が150mm以下のハニカムであれば、オフラインで2〜4箇所測定し、仕上げの切断位置を決定し、同一切断位置で生産することも可能である。また、比較的、形状の再現性が低い、外径寸法が150mm以上の大型ハニカムでは、インラインで2〜4箇所測定し、個体ごとに切断位置を決定することも好適である。即ち、ハニカム成形体の形状に応じて、オフライン、インラインを選択し、測定数は2〜4箇所測定するのが好ましい。
【0049】
(1−2B)(B)第二外周形状測定工程:
(B)第二外周形状測定では、図3Bに示すように、セラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61から他方の端面62に向かう方向の中央部において、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状を測定する。この中央部での外周形状の測定は、一方の端面61から他方の端面62に向かう方向に(A)第一外周形状測定の各測定箇所からそれぞれ一定の距離離間した複数の箇所にて行う。例えば、外周形状Aの測定箇所から外周形状Bの測定箇所までの距離と、外周形状Aの測定箇所から外周形状Bの測定箇所までの距離とが同じとなるように、各外周形状Bの測定を行う。外周形状の測定方法についは、上述した(A)第一外周形状測定工程と同様の方法によって行うことができる。
【0050】
(1−2C)(C)第三外周形状測定工程:
(C)第三外周形状測定では、図3Cに示すように、セラミックハニカム乾燥体50の他方の端面62側の端部において、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の外周形状を測定する。この他方の端面62側の端部での測定は、(A)第一外周形状測定の各測定箇所からセラミックハニカム乾燥体の仕上げ寸法に相当する距離離間した複数の箇所にて行う。例えば、外周形状Aの測定箇所から外周形状Cの測定箇所までの距離が、仕上げ寸法に相当する距離となるように、各外周形状Cの測定を行う。外周形状の測定方法についは、上述した(A)第一外周形状測定工程と同様の方法によって行うことができる。
【0051】
(1−2D)(D)円筒度算出工程:
(D)円筒度算出工程では、まず、(A)第一外周形状測定、(B)第二外周形状測定、及び(C)第三外周形状測定において測定された外周形状を組分けする。上記組分けは、例えば、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cの3つの外周形状が一組となるように行われる。
【0052】
次に、組分けした各組の外周形状から、それぞれの組ごとにセラミックハニカム乾燥体50の円筒度を算出する。セラミックハニカム乾燥体50の端面61には傾きが生じており、円筒度の算出結果には、その傾き量が加味されていることとなる。このため、円筒度を算出する際には、この傾き量を補正することが好ましい。また、測定台65に載置し、セラミックハニカム乾燥体50を移動させることなく、(A)第一外周形状測定、(B)第二外周形状測定、及び(C)第三外周形状測定を行うことから、円筒度の相対比較も可能である。即ち、最小円筒度を求める際には、傾き量の補正を行わなくてもよい。円筒度の算出方法としては、以下の方法を挙げることができる。まず、組分けした3つの外周形状、例えば、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cについて、個々の面積重心を求める。そして、個々の面積重心から、「外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cを断面形状とする立体」の算出中心軸を求める。この算出中心軸は、個々の面積重心から最小二乗法等を用いた近似によって求めることができる。このようにして求めた算出中心軸を、幾何学的円筒の中心軸とする。従って、「外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cを断面形状とする立体」の円筒度は、上記算出中心軸を軸とする幾何学的円筒からのずれの大きさとなる。次に、算出したそれぞれの円筒度から、円筒度が最も小さくなる外周形状の組を求める。このようして求められた円筒度が最も小さくなる組の、(A)第一外周形状測定の測定箇所、及び(C)第三外周形状測定の測定箇所を、仕上げ加工位置とする。
【0053】
このようにして仕上げ加工位置を決定した後、決定した仕上げ加工位置にて、セラミックハニカム乾燥体の一方の端面及び他方の端面を仕上げ加工する。図4A図4Cに示すように、セラミックハニカム乾燥体50の外壁63を第一受け台68a及び第二受け台68bにて支持し、その状態にて仕上げ加工を行う方法を挙げることができる。図4A図4Cにおいては、セラミックハニカム乾燥体50が、上述した第一受け台68a及び第二受け台68bと、補助受け台69とによって支持されている。また、図4A図4Cに示す例では、第一受け台68a及び第二受け台68bと、切断具75a,75bとが平行になるように配置されている。即ち、切断具75a,75bによって切断されたセラミックハニカム乾燥体50の一方の端面及び他方の端面は、第一受け台68a及び第二受け台68bに対して平行な面となる。このようにして、第一受け台68a及び第二受け台68bに載置されたセラミックハニカム乾燥体50の端面を、切断具75a,75bによって仕上げ加工する。
【0054】
以上のようにして、円筒度が優れた仕上げセラミックハニカム乾燥体を得ることができる。本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法においては、セラミックハニカム乾燥体の外径寸法の大小に関わらず、得られる仕上げセラミックハニカム乾燥体の円筒度を向上させることができる。このため、本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法は、セラミックハニカム乾燥体の外径寸法が、100mm以上である場合に好適であり、セラミックハニカム乾燥体の外径寸法が、150mm以上である場合に更に好適である。セラミックハニカム乾燥体の外径寸法が、100mm以上のセラミックハニカム乾燥体は、成形時における変形などが起こりやすく、従来の製造方法における仕上げ加工では、円筒度が著しく低下してしまう。
【0055】
本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法においては、これまでに説明した外周形状の測定結果を元に、セラミックハニカム乾燥体の形状測定を併せて行うこともできる。即ち、インライン測定において、外周形状の測定結果から、そのセラミックハニカム乾燥体の外周形状が、規定された条件を満たすものか否かについての判定を行うことができる。例えば、セラミックハニカム乾燥体の外周形状が、規定された数値範囲内である場合、「規定された条件を満たす」とする。そして、セラミックハニカム乾燥体の外周形状が、規定された数値範囲外である場合、「規定された条件を満たさない」とする。規定された条件を満たさないセラミックハニカム乾燥体については、仕上げ加工を行わないようにしてもよい。
【0056】
上述したセラミックハニカム乾燥体の形状測定を行うことにより、円筒度がより良くなるような仕上げ加工を行うことができるとともに、外周形状が、規定された条件を満たさないセラミックハニカム乾燥体を、仕上げ加工前に取り除くことができる。外周形状が、規定された条件を満たさないセラミックハニカム乾燥体は、最終の検査によって不良と判断されるため、そのようなセラミックハニカム乾燥体を仕上げ加工前に取り除くことで、不要な仕上げ工程、焼成工程及び検査工程を省略することができる。
【0057】
(1−3)焼成工程:
本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法においては、このようにして得られた仕上げセラミックハニカム乾燥体を焼成して、セラミックハニカム構造体を得る。これにより、仕上げセラミックハニカム乾燥体の良好な円筒度が反映された、セラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0058】
焼成を行うときは、まず、成形助剤等を除去するため、脱脂を行い、更に、引き続き温度を上げて、本焼成してセラミックハニカム構造体を形成する。脱脂及び本焼成の条件については特に制限はない。セラミックハニカム乾燥体の成形原料に適した条件にて、脱脂及び本焼成を行うことが好ましい。例えば、脱脂は、成形原料中の成形助剤等である有機物の種類及びその添加量に応じて行われることが好ましい。上記有機物としては、有機バインダ、分散剤、造孔材等を挙げることができる。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適切な条件を選択すればよい。例えば、焼成温度は一般的には、約1400〜1600℃前後程度であるが、これに限定されるものではない。脱脂と本焼成とは、別工程としてもよい。脱脂及び本焼成は、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0059】
(1−4)目封止部作製工程:
本実施形態のセラミックハニカム構造体の製造方法においては、目封止部作製工程を更に備えていてもよい。目封止部作製工程は、仕上げセラミックハニカム乾燥体又はセラミックハニカム構造体のセル内に封止材料を充填する工程である。このような目封止部作製工程を備えることにより、セラミックハニカム構造体のセルの開口端部に目封止部が市松模様に配設された、目封止セラミックハニカム構造体を製造することができる。
【0060】
目封止セラミックハニカム構造体は、流体中の不純物を除去するためのフィルタとして用いることができる。このようなフィルタとしては、例えば、排ガス中の粒子状物質を取り除くための排ガス浄化用のフィルタを挙げることができる。排ガス浄化用のフィルタとしては、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中の粒子状物質を除去するためのディーゼルパティキュレートフィルタを挙げることができる。
【0061】
目封止部作製工程については、従来公知の目封止セラミックハニカム構造体の製造方法における目封止部作製工程と同様の工程に準じて行うことができる。目封止部作製工程は、仕上げ工程を行った後、又は、焼成工程を行った後に行うことが好ましい。
【0062】
以下、仕上げ工程を行った後の仕上げセラミックハニカム乾燥体に対して、目封止部作製工程を行う場合の例について説明する。まず、仕上げセラミックハニカム乾燥体の所定のセルの一方の開口端部及び残余のセルの他方の開口端部に、スラリー状の封止材料を充填する。仕上げセラミックハニカム乾燥体のセルの開口端部に封止材料を充填する際には、まず、一方の開口端部に封止材料を充填し、その後、他方の開口端部に封止材料を充填する。
【0063】
一方の開口端部に封止材料を充填する方法としては、以下の方法を挙げることができる。まず、仕上げセラミックハニカム乾燥体の一方の端面にシートを貼り付ける。次に、このシートに、封止材料を充填するための孔を市松模様となる位置に開ける。封止材料を充填するための孔は、目封止部を形成しようとするセルが存在する位置とする。シートが貼り付けられた仕上げセラミックハニカム乾燥体を、封止材料が貯留された容器内に圧入する。即ち、シートが貼り付けられた仕上げセラミックハニカム乾燥体の端部を、上記容器内に圧入する。これにより、シートの孔を通じて、所定のセル内に、封止材料が充填される。
【0064】
セルの一方の開口端部に封止材料を充填した後、セルの他方の開口端部の残余のセルについても、これまでに説明した方法と同様の方法で、封止材料を充填する。即ち、仕上げセラミックハニカム乾燥体の他方の端面についても、一方の端面と同様にシートを貼り付け、上記と同様の方法で、封止材料を充填する。
【0065】
仕上げセラミックハニカム乾燥体のセルに充填された封止材料を乾燥させることにより、目封止部を形成することができる。なお、封止材料の乾燥は、一方の開口端部毎に行ってもよい。通常、セルに充填された封止材料を乾燥した後に焼成して、ディーゼルパティキュレートフィルタを製造する。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
まず、仕上げ工程を行うためのセラミックハニカム乾燥体を作製した。セラミックハニカム乾燥体を作製するため、セラミック原料としてコージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、成形助剤を所定量添加するとともに、水を添加して、混合粉末を調製した。
【0068】
次に、得られた混合粉末を、セラミックハニカム成形体を成形するための金型を用いて押出成形した。押出成形は、連続成形によって行い、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルが区画形成された円筒状のセラミックハニカム成形体を作製した。次に、セラミックハニカム成形体を、セルの延びる方向に、仕上げ寸法よりもセルの延びる方向の長さが長くなるように切断した。
【0069】
次に、セラミックハニカム成形体を乾燥して、セラミックハニカム乾燥体を作製した。乾燥は、誘電乾燥と熱風乾燥とを組み合わせて行った。
【0070】
次に、図3Aに示すように、得られたセラミックハニカム乾燥体50を、水平面内で回転可能な測定台65上に載置した。セラミックハニカム乾燥体50の外壁63表面の周方向の外周形状を、レーザー変位計67によって連続的に測定した。レーザー変位計67は、反射式の非接触レーザー変位計を用いた。外周形状の測定は、1つの周方向について、3000点測定を行って、得られた測定結果から当該周方向の外周形状を求めた。実施例1においては、図3Aにおけるスペーサー66を、測定台65とセラミックハニカム乾燥体50の一方の端面61との間に配置せずに外周形状の測定を行った。
【0071】
実施例1においては、(A)第一外周形状測定工程において、10mm間隔で、4箇所で外周形状A、A、A、Aを測定した。また、(B)第二外周形状測定工程において、10mm間隔で外周形状B、B、B、Bを測定し、(C)第三外周形状測定工程において、10mm間隔で外周形状C、C、C、Cを測定した。セラミックハニカム乾燥体50は、一方の端面61から他方の端面62までの長さが、仕上げ寸法よりも50mm長いものとした。実施例1におけるセラミックハニカム乾燥体50の仕上げ寸法は、150mmとした。また、セラミックハニカム乾燥体50の外径寸法は150mmであった。表1に、セラミックハニカム乾燥体の「外径寸法」、仕上げセラミックハニカム乾燥体の「仕上げ寸法」を示す。
【0072】
次に、(D)円筒度算出工程として、まず、外周形状A、A、A、A、B、B、B、B、C、C、C、Cを、下記第1組〜第4組に組分けした。第1組を、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cとし、第2組を、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cとし、第3組を、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cとし、第4組を、外周形状A、外周形状B、及び外周形状Cとした。この第1組〜第4組の各組の外周形状から、それぞれの組ごとにセラミックハニカム乾燥体50の円筒度を算出した。円筒度を算出する際には、測定時におけるセラミックハニカム乾燥体の傾き量を補正した。そして、円筒度が最も小さくなる組を求め、円筒度が最も小さくなる組の(A)第一外周形状測定の測定箇所及び(C)第三外周形状測定の測定箇所を、仕上げ加工位置とした。
【0073】
次に、図4A図4Cに示すように、セラミックハニカム乾燥体50を、第一受け台68a及び第二受け台68bに載置した。この際、図4Cに示すように、上述した(D)円筒度算出工程によって決定された仕上げ加工位置にて、切断具75a,75bによる仕上げ加工が行われるように、第一受け台68a及び第二受け台68bに載置するセラミックハニカム乾燥体50の位置を調節した。そして、セラミックハニカム乾燥体50の端面を、切断具75a,75bによって仕上げ加工して、仕上げセラミックハニカム乾燥体を得た。切断具75a,75bとしては、円盤状の砥石を用いた。
【0074】
得られた仕上げセラミックハニカム乾燥体を脱脂し、更に焼成して、セラミックハニカム構造体を製造した。脱脂及び焼成は、酸化雰囲気で行った。焼成時における最高温度は、1430℃とした。実施例1のセラミックハニカム構造体は、セル密度が62セル/cmであり、隔壁の厚さが150μmである。
【0075】
このような方法(実施例1の方法)により、10個のセラミックハニカム構造体を製造した。そして、得られたセラミックハニカム構造体について円筒度をそれぞれ測定し、10個のセラミックハニカム構造体の平均円筒度(mm)を求めた。平均円筒度(mm)を表1に示す。平均円筒度(mm)は、10個のセラミックハニカム構造体の円筒度の相加平均である。
【0076】
【表1】
【0077】
(実施例2〜4)
外径寸法、焼成後のセル密度、及び焼成後の隔壁の厚さが表1に示す値となるようなセラミックハニカム乾燥体を作製し、実施例1と同様の方法で、セラミックハニカム乾燥体の一方の端面及び他方の端面の仕上げ加工位置を決定してハニカム構造体を製造した。その後、得られたセラミックハニカム構造体の平均円筒度(mm)を、実施例1と同様の方法で求めた。結果を表1に示す。実施例2及び3においては、セラミックハニカム乾燥体のセルの延びる方向の長さが、表1の仕上げ寸法より50mm長いセラミックハニカム乾燥体を作製した。即ち、実施例2及び3のセラミックハニカム乾燥体の一方の端面から他方の端面までの長さは、250mmである。実施例4においては、外径寸法が200mmで、セラミックハニカム乾燥体のセルの延びる方向の長さが、表1の仕上げ寸法より50mm長いセラミックハニカム乾燥体を作製した。即ち、実施例4のセラミックハニカム乾燥体の一方の端面から他方の端面までの長さは、250mmである。また、実施例4においては、隔壁の厚さが100μmである。
【0078】
(比較例1〜4)
比較例1〜4においては、まず、実施例1と同様の方法で、外径寸法、焼成後のセル密度、及び焼成後の隔壁の厚さが表1に示す値となるようなセラミックハニカム乾燥体を作製した。次に、外周形状の測定を行わず、セラミックハニカム乾燥体の一方の端面側の端部と他方の端面側の端部の余剰部分の長さが同一になるようにして、仕上げ加工を行った。得られたセラミックハニカム構造体の平均円筒度(mm)を、実施例1と同様の方法で求めた。結果を表1に示す。
【0079】
(結果)
実施例1〜4の製造方法によれば、比較例1〜4の製造方法に比して、同一の仕上げ寸法のセラミックハニカム構造体を製造した場合に、得られるセラミックハニカム構造体の平均円筒度が優れていることがわかる。即ち、従来の製造方法のような比較例1〜4の製造方法では、セラミックハニカム構造体の円筒度が仕上げ加工により悪化してしまうことがある。実施例1〜4の製造方法においては、仕上げ寸法からの余剰部分において、より円筒度が向上する加工位置を選択して、仕上げ加工を行っているため、円筒度の優れたセラミックハニカム構造体を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のセラミックハニカム構造体の製造方法は、円筒度が優れたセラミックハニカム構造体を製造する方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
50:セラミックハニカム乾燥体、50a,50b:余剰部分、51:隔壁、52:セル、61:一方の端面、62:他方の端面、63:外壁、65:測定台、66:スペーサー、67:レーザー変位計、68a:第一受け台、68b:第二受け台、69:補助受け台、70:仕上げセラミックハニカム乾燥体、75a,75b:切断具、80:回転方向、100:セラミックハニカム構造体、A:仕上げ工程、B:焼成工程、A,A,A,A,B,B,B,B,C,C,C,C:外周形状、L:一方の端面から他方の端面に向かう方向、m,m,m,m,m:仕上げ寸法、P1,P2,P3,P4:測定開始点、R:周方向。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C