(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753561
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20150702BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
C09K3/14 520G
C09K3/14 520C
C09K3/14 520L
F16D69/02 E
F16D69/02 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-191473(P2013-191473)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-59125(P2015-59125A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年3月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】梶 真也
(72)【発明者】
【氏名】山上 涼
(72)【発明者】
【氏名】岩井 友美
【審査官】
富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−256653(JP,A)
【文献】
特開2008−037951(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/066969(WO,A1)
【文献】
特開昭59−064687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材であって、繊維基材、結合材、摩擦調整材を含む摩擦材組成物を成型してなる摩擦材において、
前記摩擦材組成物は、無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金粒子及びアルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を、摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%含有し、
かつ、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子を摩擦材組成物全量に対し5〜20重量%含有し、
摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0.5重量%未満であることを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
前記アルミニウム粒子又はアルミニウムを主成分とする合金粒子は、平均粒子径が50〜300μmであること
を特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のディスクブレーキパッドに使用される、NAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の制動装置として、ディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として、金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
【0003】
摩擦材は、繊維基材としてスチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%以上60重量%未満含有するセミメタリック摩擦材と、繊維基材の一部にスチール繊維を含み、且つ、スチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%未満含有するロースチール摩擦材と、繊維基材としてスチール繊維およびステンレス繊維等のスチール系繊維を含まないNAO材に分類されている。
【0004】
ブレーキノイズの発生が少ない摩擦材が求められている近年においては、スチール繊維やスチール系繊維を含まず、かつ、結合材、繊維基材、潤滑材、チタン酸金属塩、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等から成る、NAO材の摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
【0005】
ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材には、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性を確保するため、銅や銅合金の繊維又は粒子等の銅成分が必須成分として摩擦材組成物全量に対し、5〜20重量%程度添加されている。
【0006】
しかし、近年このような摩擦材は制動時に摩耗粉として銅を排出し、この排出された銅が河川、湖、海洋に流入することにより水域を汚染する可能性があることが示唆されている。
【0007】
このような背景から、アメリカのカリフォルニア州やワシントン州では、2021年以降、銅成分を5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止し、その数年後に、銅成分を0.5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止する法案が可決している。
【0008】
そして、今後このような規制は世界中に波及するものと予想されることから、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することが急務となっており、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することにより低下する、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の改善が課題となっている。
【0009】
特許文献1には、金属スズ又はスズ合金を摩擦材組成物全量に対し0.5〜50重量%と、銅を摩擦材組成物全量に対し0.001〜4.999重量%含有する摩擦材組成物を成型してなる摩擦材が記載されている。
【0010】
特許文献2には、結合材、有機充填材、無機充填材及び繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として5質量%以下であり、銅及び銅合金以外の金属繊維の含有量が0.5質量%以下であり、チタン酸塩及び粒子径が30μm以下の酸化ジルコニウムを含有し、かつ、該チタン酸塩の含有量が10〜35質量%であり、粒子径が30μmを超える酸化ジルコニウムを実質的に含有しないノンアスベスト摩擦材組成物及びノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを用いて形成される摩擦部材が記載されている。
【0011】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の摩擦材は銅成分の含有量については上記の法規を満足しているが、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の要求性能を十分に確保しているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国公開特許2010/0331447号公報
【特許文献2】特開2012−255052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の要求性能を確保できる摩擦材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金粒子及びアルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上と、特定の硬質無機粒子とを特定量含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対し0.5重量%未満である摩擦材組成物を使用することにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成した。
【0015】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0016】
(1)ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材であって、繊維基材、結合材、摩擦調整材から成る摩擦材組成物を成型してなる摩擦材において、前記摩擦材組成物は、無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金粒子及びアルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%含有し、かつ、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子を摩擦材組成物全量に対し5〜20重量%含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0.5重量%未満であることを特徴とする摩擦材。
【0017】
(2)前記アルミニウム粒子又はアルミニウムを主成分とする合金粒子は、平均粒子径が50〜300μmであることを特徴とする(1)に記載の摩擦材。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性を確保できる摩擦材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明においては、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、無機摩擦調整材として、アルミニウム粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金粒子及びアルミニウムを主成分とする合金繊維から選ばれる1種または2種以上を摩擦材組成物全量に対し1〜10重量%含有し、かつ、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子を摩擦材組成物全量に対し5〜20重量%含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0.5重量%未満である摩擦材組成物を使用する。
【0020】
無機摩擦調整材として使用されている亜鉛やスズやアルミニウム等の金属及びその合金は、ディスクローターの素材である鋳鉄と親和性が高く、制動時に摩擦材の摩擦面に存在する上記金属及び合金と鋳鉄製のディスクローターとの間で凝着摩擦を発生させ摩擦係数を向上させる効果があることが知られている。
摩擦材に亜鉛やスズ、これら金属を主成分とする合金を添加すると、広い使用領域において凝着摩擦を発生させ、摩擦係数を向上させる効果を奏するが、凝着摩擦の進行により摩擦材が摩耗しやすくなるという問題がある。
【0021】
しかし、アルミニウムは、凝着摩耗が発生するのが高速高負荷制動時と限定的であるため、上記のような問題が発生することが無い。
これは、アルミニウムが持つ、表面に酸化皮膜が形成されやすいという特性に起因するものと推定される。
【0022】
アルミニウムの表面に形成された酸化皮膜は、アルミニウムと鋳鉄との凝着摩擦を阻害するため、この酸化皮膜が維持される比較的負荷の少ない使用領域において、アルミニウムは摩擦係数を向上させる摩擦調整材としては作用しない。
【0023】
しかし、高速高負荷制動時においては、アルミニウムが塑性変形または溶融し、凝着摩擦の阻害要因となる酸化皮膜が破壊される。その結果、アルミニウムと鋳鉄との凝着摩擦が発生し、ブレーキの効きが向上するのである。
なお、この作用効果は、アルミニウムを主成分とする合金においても認められる。
【0024】
アルミニウム粒子及びアルミニウムを主成分とする合金粒子は、平均粒子径が50〜300μmであることが好ましく、アルミニウム繊維及びアルミニウムを主成分とする繊維は、平均繊維径が20〜100μm、平均繊維長が0.5〜10mmの繊維を使用することが好ましい。摩擦材への均一な分散性を考慮すると、アルミニウム粒子とアルミニウムを主成分とする合金粒子を使用するのがより好ましい。
【0025】
アルミニウムを主成分とする合金としては、アルミニウムを90重量%以上含有する、アルミニウム−亜鉛系合金,アルミニウム−銅系合金,アルミニウム−マンガン系合金,アルミニウム−ケイ素系合金,アルミニウム−マグネシウム系合金,アルミニウム−マグネシウム−ケイ素系合金,アルミニウム−亜鉛−マグネシウム系合金等を使用することができる。
【0026】
アルミニウム−銅系合金を使用する場合は、銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0.5重量%未満となるようにする。
【0027】
なお、環境負荷低減の観点から摩擦材組成物には銅成分を含まないことがより好ましい。
【0028】
モース硬度が4.5以上の硬質無機粒子は、アルミニウム及びアルミニウムを主成分とする合金が作用しない比較的負荷の少ない通常の使用領域における摩擦係数を向上させる摩擦調整材として作用する。
【0029】
モース硬度が4.5以上の硬質無機粒子は、平均粒子径が1〜20μmのものを使用し、含有量を摩擦材組成物全量に対し5〜20重量%とすることにより、比較的負荷の少ない通常の使用領域のブレーキ効きとノイズ特性を確保することができる。
【0030】
モース硬度が4.5以上の硬質無機粒子としては、活性アルミナ(γ-アルミナ)、酸化マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、アルミナ(α-アルミナ)、炭化ケイ素等が挙げられるが、これらに限らず、通常摩擦材に添加されているモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子を使用することができる。
【0031】
なお、本発明においてモース硬度は、「1.滑石 2.石膏 3.方解石 4.蛍石 5.リン灰石 6.正長石 7.水晶 8.黄玉 9.鋼玉 10.ダイヤモンド」で表される旧モース硬度を適用する。
【0032】
また本発明において、平均粒径はレーザー回折粒度分布法により測定した50%粒径の数値を、平均繊維径および平均繊維長は無作為に50個選択したサンプルを光学顕微鏡で測定した数値の平均値を用いた。
【0033】
本発明の摩擦材は、上記のアルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子の他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、チタン酸塩、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等を含む摩擦材組成物から成る。
【0034】
結合材として、ストレートフェノール樹脂や、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。結合材の含有量は摩擦材組成物全量に対して4〜12重量%とするのが好ましく、5〜8重量%とするのがより好ましい。
【0035】
繊維基材としては、アラミド繊維,セルロース繊維,ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維,アクリル繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。繊維基材の含有量は摩擦材組成物全量に対して1〜7重量%とするのが好ましく、2〜4重量%とするのがより好ましい。
【0036】
チタン酸塩としては、板状の形状や、複数の凸部を有する不定形の形状をしたものが好ましく、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸カリウムマグネシウム等の摩擦材に通常使用されるチタン酸塩が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。チタン酸塩の含有量は摩擦材組成物全量に対して7〜35重量%とするのが好ましく、17〜25重量%とするのがより好ましい。
【0037】
潤滑材としては、二硫化モリブデン,硫化亜鉛,硫化スズ,硫化鉄,複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材や、人造黒鉛,天然黒鉛,石油コークス,活性炭,酸化ポリアクリロニトリル繊維粉砕粉等の炭素質系潤滑材等の摩擦材に通常使用される潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。潤滑材の含有量は摩擦材組成物全量に対して2〜21重量%とするのが好ましく、10〜16重量%とするのがより好ましい。
【0038】
無機摩擦調整材として上記アルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子の他に、タルク,マイカ,バーミキュライト等の粒子状無機摩擦調整材や、ウォラストナイト,セピオライト,バサルト繊維,ガラス繊維,生体溶解性人造鉱物繊維,ロックウール等の繊維状無機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機摩擦調整材の含有量は、上記のアルミニウム粒子、アルミニウムを主成分とする合金粒子、アルミニウム繊維、アルミニウムを主成分とする合金繊維、平均粒子径が1〜20μmでモース硬度が4.5以上の硬質無機粒子と合わせて摩擦材組成物全量に対して15〜50重量%とするのが好ましく、20〜45重量%とするのがより好ましい。
【0039】
有機摩擦調整材として、カシューダスト,タイヤトレッドゴムの粉砕粉や、ニトリルゴム,アクリルゴム,シリコーンゴム,ブチルゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機摩擦調整材の含有量は摩擦材組成物全量に対して3〜8重量%とするのが好ましく、4〜7重量%とするのがより好ましい。
【0040】
pH調整材として水酸化カルシウム等の通常摩擦材に使用されるpH調整材を使用することができる。pH調整材は、摩擦材組成物全量に対して2〜6重量%とするのが好ましく、2〜3重量%とするのがより好ましい。
【0041】
摩擦材組成物の残部としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材を使用する。
【0042】
本発明のディスクブレーキに使用される摩擦材は、所定量配合した摩擦材組成物を、混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成形型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、粉体塗料を塗装する静電粉体塗装工程、塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、回転砥石により摩擦面を形成する研磨工程を経て製造される。なお、加熱加圧成型工程の後、塗装工程、塗料焼き付けを兼ねた熱処理工程、研磨工程の順で製造する場合もある。
【0043】
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、摩擦材原料混合物を混練する混練工程、摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物、混練工程で得られた混練物を予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
[実施例1〜11・比較例1〜4の摩擦材の製造方法]
表1、表2に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーにて5分間混合し、成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して予備成型をした。この予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型した後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行い、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した(実施例1〜11、比較例1〜4)。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
得られた摩擦材において、高速高負荷時のブレーキの効き、耐摩耗性を評価した。評価結果を表3、表4に、評価基準を表5に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
評価結果(表3、4)から、実施例の摩擦材においては、銅成分を全く含まない、含まれていたとしてもごく少量(0.5重量%未満)である組成物を用いているにもかかわらず、広い使用領域におけるブレーキの効き、耐磨耗性、鳴きにおいて、十分な特性が得られていることが伺え、特に実施例2、5〜7においては、銅繊維を使用した比較例4と比べても、遜色ない効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速・高負荷制動時を含む広い使用領域におけるブレーキの効きと耐摩耗性とノイズ特性の要求性能を確保でき、きわめて実用的価値の高いものである。