【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト ハルシュタット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記ホルダ(10)が、ウィンドウリフタ装置の他の構成品(2,3,4o,4u)が組み付けられた集積キャリア(1)に設けられていることを特徴とする、自動車のウィンドウリフタ装置。
請求項1から3のいずれか一項において、前記キャリア(5)を前記ウィンドウガラス(F)に固定する固定手段(9)が、前記キャリア(5)および/または前記ウィンドウガラス(F)に設けられていることを特徴とする、自動車のウィンドウリフタ装置。
請求項4または5において、前記固定手段(9)が、ウィンドウリフタ装置の組付用開口部(15)を介して作動することを特徴とする、自動車のウィンドウリフタ装置。
【背景技術】
【0002】
このようなウィンドウリフタ装置は、ウィンドウリフタ駆動部によって生成される駆動トルクを調節対象である自動車のウィンドウガラスに伝達させる可撓性の牽引手段と、前記可撓性の牽引手段が一方に取り付けられてウィンドウガラスが他方に固定される少なくとも1つのキャリアとを備えている。つまり、ウィンドウガラスは、前記キャリアを介して前記可撓性の牽引手段に接続される。
【0003】
このようなウィンドウリフタは、ケーブル式ウィンドウリフタ、あるいは、牽引手段式ウィンドウリフタと呼ばれる。このタイプでは、可撓性の牽引手段の調節部が、例えば、デフレクターを用いることによりウィンドウガラスの調節方向に沿ってガイドされており、ウィンドウリフタ駆動部が駆動すると、その延在方向に沿って移動する。このとき、可撓性の牽引手段、より正確には、前記調節部に取り付けられたキャリアが前記調節方向に沿って移動する。ウィンドウガラスを前記キャリアに所望どおり固定すると、ウィンドウガラスは、キャリアと共に調節方向に沿って調節可能となる、すなわち、駆動方向に応じて昇降させて、自動車のウィンドウガラスの開閉を行うことができる。
【0004】
現在、キャリアとは別体かつ非接触で離間したガイド手段がウィンドウリフタ装置に設けられ、このガイド手段によって形成された(規則的に湾曲した)調節路に沿ってウィンドウガラスをガイドしている。駆動力が可撓性の牽引手段およびキャリアを介してウィンドウガラスに伝達されると、ウィンドウガラスは、前記調節路に沿ってキャリアと共に移動する。
【0005】
詳細には、前記ガイド手段は、ウィンドウガラスがその側縁で係合する1つあるいは複数の側方のフレーム部であってもよい。前記ガイド手段の他の変形例も可能である。ただし、重要なのは、ガイド手段が、ウィンドウガラスとウィンドウリフタ装置の可撓性の牽引手段とを接続するキャリアとは別体であり、そのキャリアは当該ガイド手段と係合しない、すなわち、キャリアと前記ガイド手段とは非接触かつ離間しているということである。つまり、調節運動時にウィンドウガラスが移動する調節路は、少なくとも1つのキャリアとは別体かつ非接触で離間しているガイド手段によって決められる。すなわち、キャリアは、ガイド装置には係合しないで、調節路に沿って延設された可撓性の牽引手段に接続されて、調節路に沿って移動する。
【0006】
そのようなウィンドウリフタは、トラック型ウィンドウリフタに対して、「トラックレス型ウィンドウリフタ」と呼ばれている。トラック型ウィンドウリフタでは、各キャリア用ガイドトラックが設けられ、キャリアは、このガイドトラックにより、ウィンドウガラスの調節路に沿ってガイドされる。トラックでガイドされるキャリアを備えたウィンドウリフタの場合、キャリア用ガイドトラックの軌道によって決まる調節路に沿って、キャリアが移動することで、キャリアに固定されたウィンドウガラスも移動する。このとき、ウィンドウガラスは、その側縁がガイドされて、キャリア用ガイドトラックおよびこのガイドトラックにガイドされるキャリアによって決まる調節路に沿って移動する。
【0007】
これとは対照的に、(トラックレス型)ウィンドウリフタ装置の少なくとも1つのキャリアは、非拘束的にガイドされる。すなわち、キャリアが係合して調節路に沿った運動を
させるキャリア用ガイド装置(例えば、ガイドトラック)が設けられていない。つまり、ウィンドウリフタが駆動すると、その駆動トルクが可撓性の牽引手段およびキャリアを介してウィンドウガラスに伝達されて、ウィンドウガラスが調節方向にガイド手段に沿って移動する。このウィンドウガラス自体の移動により、キャリアも、調節路に沿った調節運動を行う。例えば、様々なウィンドウリフタの概念を図示・説明した特許文献1を参照されたい。
【0008】
キャリアをトラックを介さずに(非拘束的に)ガイドするウィンドウリフタの場合、キャリアにウィンドウガラスを固定して、ウィンドウガラスとウィンドウリフタの可撓性の牽引手段との接続を達成するため、キャリアとウィンドウガラスとの組立(取付)を行う際に、障害が頻繁に発生する。通常、組立は、例えばウィンドウフレームの側部に設けられたガイドチャンネル(案内溝)のようなガイド手段によってウィンドウガラスをガイドし、このウィンドウガラスを調節路に沿って移動(降下)させて、対応するキャリアに係合させることによって達成される。
【0009】
これとは対照的に、トラックによってガイドされるキャリアの場合、ウィンドウガラスを調節路に沿って降下させて所定のタイミングでウィンドウガラスの下縁をキャリアに強制係合させた後、当該ウィンドウガラスを適切な固定手段によってキャリアに固定することにより、キャリアをウィンドウガラスの調節路(すなわち、調節トラック)の所定の箇所に簡単に位置決めすることができる。ウィンドウリフタの可撓性の牽引手段に既に接続されたキャリアの場合、ウィンドウガラスの対応するガイドトラックの特定の箇所、すなわち、ウィンドウガラスの調節路の特定の箇所に固定するために、例えば、自己ロック型のウィンドウリフタ駆動部を用いることができる。
【0010】
トラックを介さずにガイドされるキャリアの場合、可撓性の牽引手段におけるキャリアを支持する部分である調節部が、キャリアをウィンドウガラスに結び付ける前では、ほぼ真っ直ぐ延びており、ウィンドウガラスの湾曲した調節路に沿っていないので、ウィンドウガラスの調節路/調節トラックに対するキャリアの位置決めは簡単ではない。すなわち、ウィンドウガラスとキャリアとの組立を行うために、ウィンドウガラスを湾曲した調節路に沿って降下する間に、ウィンドウガラスはキャリアを通り過ぎてしまう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1Aは、ドアの外皮TAHとドアの内皮TIHとを備える自動車ドアの概略図である。ドアの外皮TAHと内皮TIHとの間には、ドアケーシングの形態のウェットエリアが形成されている。自動車ドアのいわゆるドライエリアTは、ドアの内皮TIHからみてドアの外皮TAHとは反対の側、すなわち、車両内側に位置する。
【0034】
ドアの内皮TIHは、(耐水性の)ドアモジュールキャリア1によって覆われる拡張部を有している。自動車ドアの様々な機能構成品、例えば、ドアロック、ラウドスピーカー、および/またはウィンドウリフタ装置などをこのようなドアモジュールキャリアに組み付けた後で、ドアモジュールキャリアを該構成品とともに自動車ドアに挿入することで、ドアモジュールキャリアが、ドアの内皮に設けられた対応する凹所を覆う。
【0035】
種々の実施形態を用いて説明するウィンドウリフタ装置の以下の変形例は、ウィンドウリフタ装置がドアモジュールキャリアに予め組み付けられた状態で自動車ドアに設置されるか、自動車ドアの一部としてドアの内皮もしくは外皮に直接一体化されるかに関係なく実施することができる。以下の説明では、ウィンドウリフタ装置のキャリアを集積キャリア(aggregate carrier)としている。この定義は、予め組み付けられた機能構成品と一
緒に自動車ドアに組み付けられるドアモジュールキャリア、ならびにウィンドウリフタ装置のような機能構成品を備えた、自動車ドアの一部としてのドアの内皮または外皮を含む。
【0036】
図面には、ドアモジュールキャリアである集積キャリア1に組み付けられる機能構成品の一つとして、ウィンドウリフタ装置のみを示している。この集積キャリア1は可撓性の牽引手段3を有し、この可撓性の牽引手段3は、車両鉛直軸zに沿って互いに離間した2つのデフレクタ体4o,4u(例えば、偏向ローラ)によって公知の方法でガイドされ、可撓性の牽引手段3の調節部30が車両鉛直軸zにほぼ沿って延びている。この車両鉛直軸zは、ウィンドウリフタ装置によって調節される自動車ドアのウィンドウガラスFの調節方向とほぼ一致する。
【0037】
キャリア5は、例えばロープのような可撓性の牽引手段3、より正確には、可撓性の牽引手段3の調節部30に取り付けられており、このキャリアに、ウィンドウガラスFが固定されている。
【0038】
ウィンドウリフタ装置を動作させると、ウィンドウリフタ駆動部によって可撓性の牽引手段3が移動するので、可撓性の牽引手段3は、その延在方向に沿って移動する。詳細には、可撓性の牽引手段3の調節部30が、ウィンドウガラスFの調節方向(車両鉛直軸z)に沿って移動する。このとき、可撓性の牽引手段3に取り付けられたキャリア5も移動するので、キャリア5は、ウィンドウリフタ駆動部の駆動方向に応じて、調節方向zに沿って上下移動する。
【0039】
ウィンドウガラスFをキャリア5に固定すると、ウィンドウガラスFも、可撓性の牽引手段3の調節部30の移動時に、キャリア5を介して調節方向zに沿って移動し、ウィンドウガラスFは、調節駆動部の駆動方向に応じて、ウィンドウを閉めるように上昇したり、ウィンドウを開くように降下したりする。
【0040】
ここで、ウィンドウガラスFは、主な調節方向である車両鉛直軸zに沿って真っ直ぐ規則的に移動するのではなく、むしろ、車両鉛直軸zから外れて湾曲しながら延びる調節路Vに沿って移動する。調節路Vは、上側の調節位置Voと下側の調節位置Vuとの間で延
びている。調節路Vの上側の調節位置Voと下側の調節位置Vu(それぞれ、ウィンドウガラスFの下縁Uに関する位置)とは、車両鉛直軸z、すなわち、ウィンドウガラスFの主な調節方向に沿って互いに離間している。しかしながら、ウィンドウガラスFが調節運動(上昇または下降)時に実際に移動する調節路Vは、前記2つの調節位置Vo,Vu間の最短の接続線と合致しない。実際の調節路Vは、ウィンドウガラスFが設置される車両側方のボディー部または車両側方のドアの構造に合うように規則的に湾曲している。
【0041】
キャリアがトラックを介してガイドされる従来のウィンドウリフタの場合、ウィンドウガラスは湾曲したガイド路に沿って移動し、ウィンドウリフタのキャリア(形状を固定すると同時に長手方向に変位自在)がガイドトラックに係合し、ガイドトラックは、キャリアと、キャリアに固定されたウィンドウガラスとを所定の(湾曲した)調節路に沿ってガイドしている。したがって、ガイドトラックは、湾曲したガイド路に沿って延びている。
【0042】
これに対し、本発明のウィンドウリフタは、いわゆるトラックレス型のウィンドウリフタで、キャリア5に対するガイド装置がなく、キャリア5はガイド装置に案内されて所定の調節路に沿った移動をすることはない。実際、キャリア5は、可撓性の牽引手段3またはその調節部30によって、ウィンドウリフタ装置2の2つのデフレクタ体4o,4uの間をガイドされる。すなわち、
図1Aのように、キャリア5をウィンドウガラスFに取り付けていない場合、ウィンドウリフタ駆動部の動作中、キャリア5は2つのデフレクタ体4o,4uの間を真っ直ぐ移動する。
【0043】
一方、トラックレス型のキャリア5をウィンドウガラスFに連結した場合、ウィンドウリフタ駆動部が駆動すると、キャリア5は、ウィンドウガラスFと共に、ウィンドウガラスFの調節方向にほぼ沿って移動し、所定の調節路Vに沿った調節運動を行う。この調節路Vは、ウィンドウガラスFの側方に設けられたガイド手段によって形成される
【0044】
ウィンドウガラスFの側方にガイド手段を設ける場合、例えば、ウィンドウフレームのフレーム部を使用することができ、その場合、ウィンドウガラスFはその側縁でガイドされる。この目的のために、フレーム部は、ウィンドウラスがその側縁で係合するガイドチャンネルを有していてもよい。いわゆるオープンカーのフレームレスドアの場合、そのようなフレーム部は、ドアトリムよりも下のドアケーシング(ウェットルームN)の中に延設することができる。
【0045】
このようなトラックレス型のキャリアを備えたウィンドウリフタの場合、通例どおりにウィンドウガラスFを調節路Vに沿って降下させると、ウィンドウガラスFとキャリア5とを互いに固定して組み立てることができない。その理由は、ウィンドウガラスFに連結される前のキャリア5は、
図1Aの距離dだけ、調節路Vから横方向に外れた位置で、2つのデフレクタ体4o,4uの間を非拘束的にガイドされるからである。つまり、
図1Aから明らかなように、点線で示されたウィンドウガラスFの調節路Vがキャリア5から横方向に距離dだけ離れているから、降下中のウィンドウガラスFは、2つのデフレクタ体4o,4uの間に配置されたキャリア5を通り過ぎてしまう。
【0046】
キャリア5の位置が、車両鉛直軸zに沿った方向からみて、下側のデフレクタ体4uの領域、つまり下側の調節位置Vuの領域ではなく、
図1Aに示すように、上側のデフレクタ体4oと下側のデフレクタ体4uの間、つまり、ウィンドウガラスFの上側の調節位置Voと下側の調節位置Vuとの間の調節路における中央部にあるときに、上記組立が特に困難となる。その理由は、一般に、2つのデフレクタ体4o,4uの間を非拘束的にガイドされるキャリア5と調節路Vとの間の(水平方向)距離は、調節路の中央領域で特に大きくなるからである。
【0047】
図1Bは、ウィンドウガラスFの下縁Uの領域にキャリア5を連結した後の、
図1Aのウィンドウリフタを示す概略平面図である。
【0048】
図1Aに示したようにウィンドウリフタ装置は、この例ではモジュールキャリアの形態である集積キャリア1に配置され、駆動トルクを生成する、例えば、駆動モータ、クランク駆動部のような駆動ユニット20を搭載したウィンドウリフタ駆動部2と、駆動モータ20の下流に配置されて駆動モータ20(駆動ユニット20)と可撓性の牽引手段3とを接続する伝動部(調節伝動部25)とを備えている。伝動部は、例えば、公知のロープドラムであり、ロープドラムに可撓性の牽引手段3が巻き付けられ、ウィンドウリフタ駆動部2の駆動時に、ロープドラムが回転することで、可撓性の牽引手段3が移動する。
【0049】
駆動モータ20の駆動方向に応じて、すなわち、調節伝動部25のロープドラムの回転方向に応じて、可撓性の牽引手段3は移動し、これにより、可撓性の牽引手段3の調節部30に取り付けられたキャリア5が主な調節方向zに沿って上下に移動し、それに伴い、キャリア5に固定されたウィンドウガラスFが移動することで、自動車のウィンドウガラスFに対応するウィンドウ開口部を開閉する。
【0050】
このとき、ウィンドウガラスFは、その側縁で、対応するガイド手段によってガイドされる。この例では、ガイド手段はウィンドウフレームのフレーム部R1,R2であり、フレーム部R1,R2には、それぞれ、ウィンドウガラスFがその側縁で係合するガイドチャンネルが設けられている。
【0051】
例えば、フレーム部のようなガイド手段R1,R2は、ウィンドウガラスFがキャリア5を介して主な調節方向zに沿って移動する際に、
図1Aに示すようなウィンドウガラスFの所定の調節路Vを形成するように(湾曲して)延びている。換言すれば、ウィンドウガラスFは、車両鉛直軸zに対応した直線に沿って真っ直ぐ移動するのではなく、むしろ、(前記直線に対して湾曲した)調節路に沿って移動する。この調節路は、側方のガイド手段R1,R2の軌道、詳細には、側方のガイド手段R1,R2の湾曲によって形成される。
【0052】
図1Aおよび
図1Bを用いて、トラックレス型キャリアを備えたウィンドウリフタについて、いわゆる単一ストランド型のウィンドウリフタを例として説明している。単一ストランド型のウィンドウリフタでは、可撓性の牽引手段が主な調節方向zに沿って延びる調節部30を一つだけ有している。しかしながら、これまでの説明は、複数ストランド型のウィンドウリフタ、特に、二重ストランド型のウィンドウリフタにも同様に当てはまる。二重(複数)ストランド型のウィンドウリフタでは、可撓性の牽引手段3の調節部がウィンドウガラスFの主な調節方向zに沿って2つ(それ以上)設けられている。その場合、調節部30に結び付けられる上側のデフレクタ体、下側のデフレクタ体、およびキャリアが、可撓性の牽引手段3の対応する調節部30に対して配置され、可撓性の牽引手段3の各調節部は、対応するキャリアを介して、ウィンドウガラスFに接続されている。
【0053】
図1Bに示すガイド手段によって形成される調節路Vに沿って降下中のウィンドウガラスFが、組立時にキャリア5を通り過ぎることなく(その下縁Uの領域で)キャリア5によって捕捉されるように、キャリア5は、
図2に示す延設部6(傾斜端部65を含む)を有している。延設部6は、キャリア5を調節路の側に配置したとき、すなわち、キャリア5を調節路Vから横方向に(いわゆる車両水平横断軸yに沿って)離れた位置に配置したときに、ウィンドウガラスFの調節路Vにまで突出している。
【0054】
具体的には、キャリア5は、(集積キャリア1に設けられた)ホルダ10に配置されている。ホルダ10は、少なくとも1つの空間的方向に沿ってキャリアを支持できるように
キャリア5を収容し、特に、調節路Vに沿った降下中のウィンドウガラスF(の下縁U)がキャリア5から突出した延設部6に衝突するときにキャリア5を支持できるように収容している。キャリア5のホルダ10は、キャリア5を支持する少なくとも1つのストッパ部/支持部を形成し、ウィンドウガラスFが組立時に降下する間キャリア5を所定の位置に保持すると共に、ウィンドウガラスFが(その下縁Uで)キャリア5の延設部6に衝突した際にもキャリア5をその位置に保持する。キャリア5はデフレクタ体4o,4uの間を堅く引っ張られた状態で延びる可撓性の牽引手段3に取り付けられているので、キャリア5の位置がさらに安定する。
【0055】
最も簡単な構成では、ホルダは、例えば、集積キャリア1、車両ドアの他の構成品のようなドア部材の表面により形成することができる。
【0056】
ここで、車両鉛直軸z、すなわちウィンドウガラスFの主な調節方向に沿ってみて、ホルダ10およびキャリア5は、調節路Vの両端部Vo,Vu(および2つのデフレクタ体4o,4u)から大きく離間しており、この実施形態では、調節路Vの2つの端部Vo,Vuの間またはデフレクタ体4o,4uの間のほぼ中央に位置している。
【0057】
キャリア5の延設部6は、キャリア5がホルダ10に配置された状態で、調節路Vに沿って降下中のウィンドウガラスFを捕捉する機能を有する。延設部6は、キャリア5に形成され、ウィンドウガラスFを捕捉する際は、ウィンドウガラスFに対する組立位置にある。組立位置は、ウィンドウガラスFとキャリア5とが所望どおりに互いに固定される機能位置からウィンドウガラスFの調節路Vの横方向に(すなわち、車両水平横断軸yに沿って)離れるように形成されている。
図2に示すように、集積キャリア1に、最終組付工程を行うための組立用開口部15が設けられている。
【0058】
キャリアが組立位置でウィンドウガラスを捕捉する構成、およびそこからキャリアがウィンドウガラスに対して機能位置に移動する構成について、
図3Aの詳細図を参照しながら、さらに詳細に説明する。ここで、機能位置とは、ウィンドウガラスFとキャリア5とが所望どおりに互いに固定される位置である。
【0059】
図3Aの詳細図は、ホルダ10に配置されたキャリア5の領域を
図2から単に抜粋したものではなく、キャリア5をウィンドウガラスF、特に、その下縁Uの領域に所望どおりに固定する固定手段についても詳細を示したものである。
【0060】
図3Aでは、キャリア5に対するホルダ10の役割を担う凹所が集積キャリア1に設けられており、この凹所は、キャリア5がホルダ10に配置されたときに、キャリア5を支持可能なストッパ部または支持部11a,11b,12a,12bを形成している。
【0061】
2つのストッパ部または支持部11a,11bは、集積キャリア1の組付用開口部15の下方に設けられた第1のストッパ群を形成し、別のストッパ部または支持部12a,12bは、前記組付用開口部15の上方に設けられた上側のストッパ群12を形成している。
【0062】
これらのストッパ部または支持部により、キャリア5は、少なくとも車両鉛直軸zに沿って上方および下方から支持されると共に、車両水平横断軸yに沿って調節路Vとは反対側の方向からも支持される。
【0063】
キャリア5がストッパ部11a,11b,12a,12bによってホルダ10に支持される方向の数は、その時々の要件に応じて決まる。これらによる支持により、ウィンドウガラスFが組立目的でキャリア5に向かって調節路に沿って降下する間、
図2に示すよう
に、キャリア5はホルダ10によって所定の位置に保持され、かつ、降下中のウィンドウガラスFがキャリア5から突出した延設部6に最終的に係合するときに生じる力をストッパ部または支持部によって吸収できる。この支持には、例えば、いわゆるケーブルエンドボトム31,32、およびキャリア自体に設けられたエンドボトムチャンバを介して、可撓性の牽引手段3も貢献している。また、キャリア5をホルダ10の所定の位置にさらに安定化させるために、さらなる組立ツールを用いてもよい。
【0064】
ウィンドウガラスFが延設部6に衝突した際にキャリア5をホルダ10の所定位置に位置決めし、かつ、その際に生じる力を効果的に吸収するために、例えば、
図3Aに示すように、車両鉛直軸z方向下方のキャリア5の支持は、ホルダ10の下方のストッパ部11aによって確保されるのが好ましいが、これは、後述するように、必ずしも必要ではない。
【0065】
キャリア5の延設部6はキャリア5から突出しており、
図2に示す調節路に沿って降下中のウィンドウガラスFがキャリア5に対して(車両鉛直軸zに沿って)垂直な位置に到達した際に(その下縁Uで)この延設部6に衝突する。このとき、ウィンドウガラスFに対するキャリア5の位置は、ウィンドウガラスFから調節路Vの横方向に(車両水平横断軸yに沿って)離れた組立位置にあり、その位置ではキャリア5をウィンドウガラスFに所望どおりに固定することはできない。
【0066】
キャリア5をウィンドウガラスFに所望どおりに固定するには、キャリアを、ウィンドウガラスFに対する機能位置に達するまで、調節路の横方向に沿って(つまり、車両水平断面軸yに沿って)ウィンドウガラスFに、すなわちキャリア5に面するガラス面に近付けなければならない。このとき、牽引手段3は、まだ完全には伸びきっていない状態なので、その可撓性により、キャリア5はウィンドウガラスFに対してある程度移動をすることができる。これに必要な力は、集積キャリア1の組付用開口部15を介して、キャリア5に与えることができる。
【0067】
ウィンドウガラスFに対するキャリアの組立位置は、キャリア5をホルダ10に配置した状態で、調節路Vに沿って移動中のウィンドウガラスがキャリア5の延設部6と係合することによって組立が達成された際に、キャリア5がウィンドウガラスFに対して取る位置である。
【0068】
これに対して、ウィンドウガラスFに対するキャリア5の機能位置とは、キャリア5がウィンドウガラスFに所望どおりに固定された位置と定義される。
【0069】
図3Aの実施形態の固定手段9は、ホルダに設けられた膨張部材90(膨縮プラグ)およびこれに対応する挿入部材91(ボルトまたはねじ)で構成され、膨張部材90は、前記挿入部材を挿入することによって膨張する。これにより、キャリア5をウィンドウガラスFに固定することができる。ウィンドウガラスFに、前記固定手段9に対応するウィンドウ孔Lが設けられており、キャリアがウィンドウガラスに対して所望どおりに組立位置に配置されると、このウィンドウ孔に膨張部材90が係合される。この目的のために、キャリアは、前述のように牽引手段3の可撓性によってウィンドウガラスFに近付けられるようになっている(この実施形態では、ウィンドウガラスFは、
図1Bに示すように、ガイド手段であるフレーム部R1,R2を用いて所定の調節路に沿ってガイドされる)。
【0070】
図3Aには示されていないが、機能位置に到達した後で、キャリア5は、ウィンドウガラスFと共に調節路Vに位置している。このとき、ウィンドウガラスFの下縁Uは、キャリア5の底部50に対向している。機能位置に達する前、この底部50は、ウィンドウガラスFの調節路Vに位置していない。
【0071】
図3Aに示す組立位置から機能位置にキャリア5を移動させて、ウィンドウガラスFに所望どおりに固定する際、ウィンドウガラスF(下縁)を、キャリア5の延設部6に設けた移動領域に沿って移動させる。
【0072】
キャリア5の機能位置に到達すると、ウィンドウガラスFは、キャリア5に面する表面をキャリア5のアーム部51に対面させた状態で、その下縁がキャリア5の底部50によって(直接的、あるいは、後述するアダプターを介して間接的に)支持されている。底部50は、調節路Vの横方向で車両水平横断軸yに平行な方向からみて、延設部6または移動領域60に隣接している。ウィンドウガラスFに対向してその下縁Uに接するキャリア
5の底部50は、ホルダ10に配置されている限り、
図2に示すように、調節路Vに沿って降下されるウィンドウガラスFの調節トラック上には位置せず、(車両水平横断軸に沿って)ホルダ10から離れている。
【0073】
それゆえ、まず、組立目的で調節路Vに沿って移動しているウィンドウガラスFが、キャリア5の延設部6によって捕捉される。延設部6は、組立目的で移動中のウィンドウガラスFの下縁Uに対するストッパと、そこに設けられるアダプターとで構成されるが、キャリア5が機能位置に移動した後は、延設部6はウィンドウガラスの下縁Uに対向しない。その時点で、ウィンドウガラス下縁Uは、延設部6に隣接するキャリア5の底部50に対向する。
図3Aに、延設部6とキャリア5の本体部との境界、詳細には、延設部6と底部50との境界を、一点鎖線Gで概略的に示している。
【0074】
図3Aに点線で示すように、キャリア5の底部50に、緩衝目的の緩衝部材を配置するための凹部を追加してもよい。
【0075】
図3Bから
図3Eに、キャリア5をウィンドウガラスFに対する機能位置に固定するための
図3Aの固定手段の4つの変形例を示す。
図3Aおよび
図3B〜
図3Eには、キャリア5と、キャリア5が組立位置にあるときのウィンドウガラスFとが示されており、いずれの図にも、調節路Vに沿って降下したウィンドウガラスFがキャリア5によって捕捉された様子が示されている。キャリア5の機能位置、および組立位置から機能位置への移動の様子の詳細については、
図5A〜
図5Dで後述する。
【0076】
図3Bでは、スナップ部材92の形態、より詳細には、固定フックの形態の固定手段9がキャリア5から突出して設けられており、キャリア5がウィンドウガラスFに対する機能位置に所望どおりに配置されると、スナップ部材が、ウィンドウガラスFのウィンドウ孔Lと係合する。このとき、ウィンドウガラスFはキャリア5の横側のアーム部51に対向し、アーム部51から固定手段9が突出している。
【0077】
図3Cおよび
図3Dの各実施形態では、固定手段9が歯状体の形式のスナップ部材93として形成され、ウィンドウガラスFの下縁Uの領域にはアダプター100が固定されている。このスナップ部材93が、アダプター100における対応歯部102(
図3C)または単一歯部101(
図3D)が設けられた開口部Oに挿入される。いずれの場合にしろ、キャリア側の固定手段9は、ウィンドウガラスFとは直接的に作用せず、ウィンドウガラスFの下縁Uの領域に、例えば、接着剤のような適切な接続手段によって固定された、アダプター100の形態の追加部材を介して間接的に作用する。
【0078】
この場合、組立目的で調節路Vに沿って移動(降下)中のウィンドウガラスFが、キャリア5の延設部6によって直接的に捕捉されるのではなく、アダプター100によって間接的に捕捉される。その後、組付けを行うにあたって、キャリア5は、ウィンドウガラスFに対して車両水平横断軸yに沿って調節路Vの横方向に移動する。このとき、スナップ
部材93の形態の固定手段9およびアダプター100のスナップ開口部Oを介して、キャリア5がウィンドウガラスFに固定されるまで、ウィンドウガラスFは、その下縁Uの領域において、アダプター100を介して延設部6の移動領域である摺動領域60に沿って摺動し、当該ウィンドウガラスFがアダプター100を介してキャリア5の横側のアーム部51に当接する。
【0079】
図3Eの実施形態では、キャリア側の固定手段9は、アダプター100のスナップ取付用開口部Oにスナップ取付可能な、弾性のクリップ部材94として形成されている。
【0080】
図4A〜
図4Iには、
図3Aの構造のさらなる他の変形例が示されており、これらを以下で詳細に説明する。
【0081】
図4A〜
図4Fは、
図3Aの構造の第1の変形例に関する。
図4Aは、
図3Aに対応する断面図であり、
図4Bは、キャリア5の組立位置を示す斜視図で、ウィンドウガラスFがキャリア5の延設部6にまで降下した状態を示している。
図4Cは、機能位置に移動後のキャリア5を示している。
図4D〜
図4Fには、
図4Aおよび
図4Bに示す組立位置にキャリア5が配置される前に、ウィンドウガラスFが降下する様子が示されており、
図4Dは分解図で、
図4E〜
図4Fには、集積キャリア1におけるキャリア5用のホルダ10を含む部分を示している。
【0082】
図4A〜
図4Fの構造では、キャリア5が、
図4Aおよび
図4Bに示す組立位置において、ホルダ10、すなわちホルダ10に形成されたストッパ部/支持部11b、12bにより、車両水平横断軸yに沿った方向のみから支持されている。しかしながら、キャリア5は組立位置において可撓性の牽引手段3に取り付けられているので、これを介して機能位置への位置決めを十分に安定して行うことができる。キャリア5がホルダ10により車両水平横断軸yに沿って支持されるから、特に、ウィンドウガラスFまたはこれに設けられたアダプター100がキャリア5の延設部6に衝突したとき、その衝撃力によりキャリア5が(車両長手方向軸z周りに)傾動するのを防ぐことができる。
【0083】
図4Aおよび
図4Bに示すように、ホルダ10は、(集積キャリア1の)単純な支持面で形成されている。この支持面は、キャリア5のストッパ部/支持部11b、12bを形成されおり、一方のストッパ部/支持部11bは組付用開口部15のほぼ下方に位置し、他方のストッパ部/支持部12bは組付用開口部15のほぼ上方に位置している。この実施形態では、ホルダ10を形成する支持面は、集積キャリア1の他の領域よりもウィンドウガラスF方向に(車両水平横断軸yに沿って)やや突出している。
【0084】
ウィンドウガラスFに取り付けられたアダプター100はL字形状であり、このアダプター100の(車両鉛直軸zからみて)折り曲げられたアーム部105は、
図4D〜
図4Fに示すウィンドウガラスFの組立目的の降下時に、
図4Aおよび
図4Bに示すように、キャリア5の延設部6と係合する。
【0085】
このようなアダプター100の折曲アーム部105は、
図4Aの図面平面に対して垂直に(すなわち、車両長手軸xに沿って)アダプター100で位置決めされ、キャリア5をウィンドウガラスの機能位置に移動させるときに、
図4Cに示すように、折曲アーム部105がキャリア5のアーム部51と衝突しないようになっている。この目的のために、
図4Bに示すように、折曲アーム部105は、互いに離間した2つのアーム部分105a,105bによって画定された凹部105cを有している。
【0086】
図4Aから明らかなように、アダプター100は、ケーシング107によってウィンドウ孔Lに到達しており、このケーシング107に、キャリア側のねじの形態の挿入部材、
つまり固定部材91を螺合させることにより、キャリア5が機能位置でウィンドウガラスFに固定される。この固定部材91は、例えば、ケーシング107に螺合されるときに自身のねじ山によってケーシング107にそれに合致するねじ山を切り込む、タッピングスクリューであってもよい。これに代えて、ケーシング107に、キャリア側のねじの形態の固定部材91が螺合する雌ねじが予め設けてもよい。
【0087】
図4Aおよび
図4Bに示す組立位置から
図4Cに示すウィンドウガラスとの機能位置にキャリア5を移動させる際、可撓性の牽引手段3は、本来の位置の平面Eから偏向され、さらに緊張した状態となる。これにより、可撓性の牽引手段3は、ウィンドウリフタの作動中に所望される緊張状態を得ることができる。
【0088】
図4Gに示す実施形態は、アダプター100に設けられてウィンドウ孔Lに係合する膨張プラグ108に、キャリア側のねじの形態の固定部材91を螺合させることで膨張プラグ108を膨張させる点で、
図4A〜
図4Fの構成と異なる。この実施形態においては、膨張プラグ108は、さらに、ウィンドウガラスFのウィンドウ孔Lの縁部にスナップ取付するためのクリップ要素を有している。このクリップ要素は、膨張プラグ108だけでなく、アダプター100をウィンドウガラスFに保持(形状係合)させることもできる。
【0089】
図4Hには、
図4Gの実施形態の変形例が示されており、この変形例では、略T字形状のアダプター100が、キャリア5側のウィンドウガラスFの表面の前方に配置されている。これに対して、
図4A〜
図4Fのアダプター100および
図4Gのアダプター100は、キャリア5とは反対側のウィンドウガラスFの表面の前方に配置されている。
【0090】
また、この実施形態では、さらなる構成品100aが、キャリア5の反対側のウィンドウガラスFの表面に配置されている。この構成品100aは、アダプター100の一部のようにみえるが、キャリア側のねじの形態の固定部材91およびウィンドウガラス側のケーシング108によってキャリア5とウィンドウガラスFとを互いに固定した後に、キャリア5の第1のアーム部51との間で当該ウィンドウガラスFを収容する、キャリアの第2のアーム部100aとして機能する。
【0091】
また、
図4Hでは、
図4A〜
図4Fの構造および
図4Gの構造と異なり、ホルダ10に追加の支持部11aが設けられ、この支持部11aによりキャリア5が車両鉛直軸zに対向する方向から支持されている。
【0092】
図4Iの実施形態では、アダプター100は、ウィンドウガラスFの下縁Uの領域を覆うようにウィンドウガラスFに配置され、詳細には、ウィンドウガラスFの下縁Uに接着によって連結される。
【0093】
アダプター100は、ウィンドウガラスFの下縁Uの下方に雌ねじのねじ孔109を有しており、このねじ孔109に、キャリア側のねじの形態の固定部材91を螺合させることでキャリア5をウィンドウガラスFに固定することができる。
【0094】
図5Aは、キャリア5用のホルダ10を備えたドアモジュールキャリア1の一部と、キャリア5と、下縁Uの領域にアダプター100が設けられたウィンドウガラスFとを示す分解図である。
【0095】
ホルダ10の形状(この実施形態では直方形状)は、キャリア5の外形、特に、キャリア5のアーム部51の外形に合致するように形成されており、これにより、キャリア5がそのアーム部51を介してホルダ10に形状固定(form-locked)される。このとき、キ
ャリア5は、ホルダ10に形成されたストッパ部11a,11b,11c,11d,12
a,12b,12c,12dにより5つの空間的方向に沿って、すなわち、車両鉛直軸zの上方、車両鉛直軸zの下方、車両長手軸xの前方、車両長手軸の後方、ならびに車両水平横断軸yにおいてウィンドウガラスFとは反対側の方向から支持されている。
【0096】
キャリア5をウィンドウガラスFに固定するために、キャリア5に、固定手段9として2つの歯状領域の形態のスナップ取付部96が設けられている。各スナップ取付部96は、車両長手軸xに沿って互いに離間しており、キャリア5から、より正確には、そのアーム部51から突出している。
図5Bに示すように、ウィンドウガラスFの下縁の領域に、の対応歯状領域106を有するアダプター100が設けられ、歯状領域の形態のスナップ取付部96がこの対応歯状領域106に係合する。
【0097】
図5Cおよび
図5Dには、
図5Aおよび
図5Bの構造において、組立目的で調節路に沿って降下中のウィンドウガラスFがキャリア5の延設部6によって捕捉された後に、キャリア5をウィンドウガラスFに対して機能位置に移動させる様子が示されている。さらに、
図5Cおよび
図5Dには、ウィンドウガラスFに対するキャリア5の機能位置における、キャリア5の構成およびアダプター100の構成が示されている。この位置では、キャリア側のスナップ取付用の歯状領域96の形態の固定手段9が、アダプター100に設けられた対応する歯状領域106と係合している。
【0098】
ウィンドウガラスFは、アダプター100を介してキャリア5のアーム部51に当接しており、ウィンドウガラスの下縁Uは、
図2に示すように、ウィンドウガラスFの調節路Vの横方向に(すなわち、車両水平横断軸yに沿って)延設部6と隣接するキャリア5の底部50に対向している。このとき、ウィンドウガラスFは、その下縁Uで直接的に底部50に当接しているのではなく、アダプター100を介して間接的に底部50に当接している。スナップ取付用の歯状領域96が設けられたキャリア5の突部が、ウィンドウガラスの下縁Uと対応歯状領域106が設けられたアダプター100の突部との間に収容されているので、キャリア側のスナップ取付用の歯状領域96とウィンドウガラス側の対応歯状領域106とは互いに係合する。
【0099】
図2〜
図5Dを参照しながら説明した前述の実施形態では、特に、
図2に示すように、キャリア5の延設部6が、ウィンドウガラスFの調節路Vに対してほぼ垂直に且つ当該キャリア5からリジッドに突出している。つぎに、延設部7がキャリア5に対して可動自在に設けられた各種実施形態を、
図6A〜
図8Bを参照しながら説明する。
【0100】
図6Aでは、キャリア5は、その本体部としてアーム部51を有しており、このアーム部51に、延設部7が(ヒンジの形態の支承部57を介して)回動可能にヒンジ接続されている。さらに、キャリア5と延設部7とは、例えば弾性リングのような弾性保持部材58を介して、
図6Aに示す回動位置に互いに保持されている。このとき、延設部7は、組立目的で降下中のウィンドウガラスの調節トラックに突出している。キャリア5と延設部7とは、それぞれ、降下するウィンドウガラスFに面した上端部の領域で、トリガ部材8、この実施形態ではロープ80を介して互いに接続されている。トリガ部材8は、延設部7に第1の固定位置81で固定されており、キャリア5に第2の固定位置82で固定されている。トリガ部材8は、
図6Aに示すように、延設部7をキャリア5に対して傾斜する位置に保持するように、弾性保持要素58を支持する。この位置で、延設部7は、降下するウィンドウガラスFの調節路Vにまで突出している。このようにして、延設部7は、調節路V、すなわち調節路Vに位置するウィンドウガラスFに対して鋭角に傾いた状態で延びている。
【0101】
さらに、キャリア5、より正確には、キャリア5のアーム部51と延設部7とは、各々の内表面に、緩衝用挿入部材55(例えば、ゴムなど)が設けられている。この緩衝用挿
入部材55を介して、キャリア5と延設部7、すなわち、キャリア5のアーム部51と延設部7とが、
図6Bに示すように、最終的にウィンドウガラスFの側面に当接する。
【0102】
図6Aに示す位置からウィンドウガラスFを調節路に沿って降下させると、ウィンドウガラスFは、延設部7に衝突する。より正確には、ウィンドウガラスFは、延設部7の内側の摺動面、すなわち、延設部7に連設されたキャリア5の内側のゴム製挿入部材55の一部に衝突する。
【0103】
降下中のウィンドウガラスFは、(その下縁Uを介して)延設部7、すなわち挿入部材55の一部分に衝突する前に、ロープ80の形態のトリガ部材8にまず作用し、トリガ部材8の中央部分を押圧する。これにより、支承部57を中心として延設部7をこれに対向するキャリア5のアーム部51の方向に徐々に折り畳む回動運動が引き起こされると同時に、キャリア5およびウィンドウガラスFを、延設部7の移動領域70に沿って、
図6Aに示す組立位置から
図6Bに示す機能位置まで移動させる。
【0104】
図6Aに示すウィンドウガラスFに対するキャリア5の組立位置の特徴は、調節路Vに位置するウィンドウガラスFが、調節路に沿ってみて、キャリア5の回動可能あるいは折り畳み可能な延設部7と対向している点である。一方、
図6Bに示す機能位置におけるキャリア5では、組立前まで調節路の外部に位置していたアーム部51が、ウィンドウガラスFの表面に当接している。
【0105】
これまでの実施形態でも説明したとおり、本実施形態のキャリア5は、まず、
図6Aに示す組立位置のときにホルダに配置されており、そこからウィンドウガラスFの方向に移動することにより、
図6Bに示す機能位置へと移動する。
【0106】
図6Aおよび
図6Bの実施形態では、ウィンドウガラスFが延設部7の移動領域70に沿って摺動する際に、延設部7がこれに対向するキャリア5のアーム部51の方向に回動することにより、自動的にウィンドウガラスFに向かってキャリア5が前進する。
【0107】
図6Bから分かるように、最終的な機能位置におけるウィンドウガラスFは、キャリア5のアーム部51とこれに向かって折り畳まれる延設部7との間で狭持されるようにして収容される。この状態で延設部7は、挿入部材55を介して第1のアーム部51と協働してウィンドウガラスFを収容する、キャリア5の第2のアーム部として機能する。
【0108】
また、この実施形態では、例えば、組立前に接着手段を挿入部材55に適用することにより、キャリア5とウィンドウガラスFとを互いに強固に連結することができる。
【0109】
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、
図6Aの構造の変形例の概略断面図、その斜視図である。
図6Aの構造と本質的に異なる点は、トリガ部材8が、(弾性または塑性)変形可能な部材80’で形成されている点である。この変形可能な部材80’は、一方が延設部7の位置81に固定され、他方がキャリア5の位置82に固定されている。この実施形態において、トリガ部材8は、上述したようなトリガ機能に加えて、キャリア5のアーム部51と延設部7とがウィンドウガラスFの表面に当接するのを仲介するインサートとしても機能する。
【0110】
さらに、ナットが付いたねじの形態の締結付勢部材85が設けられている。これにより、キャリア5がウィンドウガラスFに対する機能位置(
図7A、
図7Bのいずれにも示されていない)を取った際に、キャリア5、より正確にはキャリア5のアーム部51と延設部7とを互いに緊張付勢させて、
図6Bを用いて上述したように、ウィンドウガラスFをキャリア5のアーム部51と延設部7との間に挟持するように収容する。
【0111】
図8Aおよび
図8Bには、トリガ部材8がトリガ機能に加えて機能位置(
図8A、
図8Bのいずれにも示されていない)におけるウィンドウガラスFのインサートとしても機能する、
図6Aの構造のさらなる変形例が示されている。トリガ部材8は、フィルムヒンジの形態のヒンジ83を有しており、これにより、ウィンドウガラスFが衝突した際に、延設部7をこれに対向するキャリア5のアーム部51に折り畳む運動を引き起こすことができる。
【0112】
この実施形態では、トリガ部材8は、ヒンジが設けられた、一方向に長い部材80’’である。この実施形態のトリガ部材8は、前述のトリガ機能を有すると同時に、延設部7の延設部用ピン75側が固定領域81によって移動自在に案内される。これにより、ウィンドウガラスFがトリガ部材8に作用する際、トリガ部材8は、延設部7の移動領域70に結合した状態となる。
【0113】
図9に、キャリア5の一実施形態を示す。このキャリア5の延設部7の一方はウィンドウガラスFおよびその調節路Vに向かって傾斜しており、他方はキャリア5に実質的にリジッドに連結されている。すなわち、この実施形態の延設部7は、ウィンドウガラスが挿入されても、ウィンドウガラスに向かって折り畳まれない。
【0114】
この実施形態において、キャリア5は、互いに対向する2つのアーム部51,52を有しており、一方のアーム部51は延設部7に対向し、他方のアーム部52は車両鉛直軸zに沿って延設部7の下方に隣接する。キャリア5の第2のアーム部52にはスナップ取付部材95が設けられており、このスナップ取付部材95は、ウィンドウガラスFに対するキャリア5の機能位置において、ウィンドウガラスFの下縁Uの領域に設けられたウィンドウ孔と係合可能な固定手段9として機能する。
【0115】
さらに、キャリア5の底部50には、キャリア5の機能位置においてウィンドウガラスFの下縁Uに対向する緩衝部材が設けられている。
【0116】
図10Aに、延設部7が回動可能に支承されたキャリア5のさらなる他の実施形態を示す。この実施形態において、キャリア5は、ウィンドウガラスFを収容する領域が略U字形状に形成されている。
【0117】
図10Aに示す組立位置におけるキャリア5は、第1のアーム部51を介してホルダ10に当接している。この実施形態では、ホルダ10は、集積キャリア1の支持領域によって形成されており、キャリア5を(第1のアーム部51を介して)車両水平横断軸yに沿って支持する。
【0118】
キャリア5の第2のアーム部52は、キャリアの第1のアーム部51に対向し、かつ、第1のアーム部51から車両水平横断軸yに沿って離間している。キャリア5に所望どおりに配置された状態のウィンドウガラスFは、その下縁Uの領域が、キャリア5の2つのアーム部51,52の間で当該2つのアーム部51,52を連結するキャリア5の底部50に対向するようにして収容される。
【0119】
この実施形態の延設部7は、キャリア5、より正確には、キャリア5の第2のアーム部52に取り付けられており、支承部57を中心として回動可能で、且つ支承部57の両側にレバーアーム部分7a,7bを形成している。
【0120】
図10Aに示す開始位置では、キャリア5は組立位置にあってウィンドウガラスFには固定されていない。また、延設部7は車両鉛直軸zに対して傾いた状態で延びており、延
設部7の一方のレバーアーム部分7aが、組立目的で降下するウィンドウガラスFの調節路に向かって突出している。他方のレバーアーム部分7bはキャリア側のストッパ部58と相互作用することにより、延設部7を傾斜させた状態で所定の回動位置に維持する。
【0121】
図10Aに示すように、ウィンドウガラスFが組立目的で降下して延設部7の第1のレバーアーム部分7aに衝突する。このとき、延設部7は、第2のレバーアーム部分7bとキャリア側のストッパ部58との相互作用によって所定の回動位置に維持される。その状態を保持したまま、ウィンドウガラスFとキャリア5との相対運動が延設部7の移動領域70に沿って行われる。キャリア5は、ホルダ10における組立位置から車両水平横断軸yに沿ってウィンドウガラスFに向かって移動する(可撓性の牽引手段3がさらに緊締する)。このようにして、
図10Aから
図10Bの状態に移行する。
【0122】
キャリア5とウィンドウガラスFとが延設部7の移動領域70に沿って相対運動するとき、ウィンドウガラスFが、延設部7のキャリア5に対する回動を可能にする支承部57に重なると、
図10Bに示すように、ウィンドウガラスFは、(その下縁Uまたは下縁Uの領域に設けられたウィンドウ用アダプターを介して)延設部7の第2のレバーアーム部分7bに作用し始める。これにより、延設部7に作用するトルクの方向が逆転し、延設部7は支承部57を中心として集積キャリア1とは反対側のウィンドウガラスFの表面に向かって折り畳まれ、ウィンドウガラスFがキャリア5の2つのアーム部51,52の間の収容部に移動する。このようにして、
図10Bから
図10Cの状態に移行する。
【0123】
2つのレバーアーム部分7a,7bを有する延設部7の変形例では、第1のレバーアーム部分7aは、ウィンドウガラスFが(その下縁またはウィンドウ用のアダプターを介して)衝突することでキャリア5を組立位置からウィンドウガラスFに向かって自動的に摺動させる移動領域70を形成している。キャリア5が移動するにつれて、可撓性の牽引手段3の緊張状態は徐々に強まる。
【0124】
キャリア5がウィンドウガラスFに対する機能位置に到達するのに先立って、ウィンドウガラスFは、延設部7の第2のレバーアーム部分7bに(下縁Uまたはアダプターを介して)当接する。これにより、延設部7の回動運動が自動的に引き起こされ、延設部7がウィンドウガラスFに向かって折り畳まれることにより、ウィンドウガラスFはキャリア5の(2つのアーム部51,52の間の)収容部内に非拘束的に滑り込む。これらの組立て過程は、終了するまで自動的に進行する。つまり、この組立過程は、ウィンドウガラスFが延設部7に(直接的にまたはアダプターを介して間接的に)衝突することで作用する力によって自動的に開始されて進行し続ける。
【0126】
延設部7の第1のレバーアーム部分7aは、開始位置において、組立目的で調節路に沿って移動可能なウィンドウガラスFを補足できるように、キャリア5から車両鉛直軸z、すなわちウィンドウガラスFの調節路にほぼ垂直に突出している。つまり、第1のレバーアーム部分7aは、その開始位置において、車両水平横断軸yにほぼ沿って延びている。
【0127】
また、この例のホルダ10には、集積キャリア1の表面によって形成された支持領域に加えて、ストッパ部/支持部11aが設けられており、このストッパ部/支持部11aは、組立位置におけるキャリア5を、車両鉛直軸zに沿って下方から支持している。
図1ないし図11Cに示したこの発明の実施形態は、次の1)から10)の態様を含む。
[態様1](出願当初の請求項2)
前記調節路(V)は第1および第2の端部(Vo,Vu)間を延びており、前記ウィンドウガラス(F)を調節する前記キャリア(5)は、前記可撓性の牽引手段(3)を介して前記調節路(V)に沿って移動し、
前記キャリア(5)は、前記ホルダ(10)に配置されている間、前記調節路(V)の前記第1および第2の端部(Vo,Vu)間を結ぶ接続線からみて、これら両端部(Vo,Vu)の間で、且つ前記接続線に沿って前記両端部(Vo,Vu)から離間した位置に配置されている。
[態様2](出願当初の請求項3)
前記キャリア(5)の、前記ホルダ(10)に配置される際の位置は、前記調節路(V)の両端部(Vo,Vu)の各々から、両端部(Vo,Vu)間の前記接続線の全長の少なくとも20%に相当する長さで離間している。
[態様3](出願当初の請求項4)
前記キャリア(5)は、前記ウィンドウガラス(F)に対するキャリア(5)の前記組立位置とは異なる機能位置において前記ウィンドウガラス(F)に所望どおりに固定され、
前記組立位置では、前記キャリア(5)が前記ホルダ(10)に配置された状態で、前記調節路(V)に沿って組立目的で移動中の前記ウィンドウガラス(F)が、前記キャリア(5)から突出している前記延設部(6,7)に係合する。
[態様4](出願当初の請求項5)
前記キャリア(5)が、前記ウィンドウガラス(F)に所望どおりに固定される前記機能位置よりも、前記ウィンドウガラス(F)から大きく離れている状態で、前記ホルダ(10)に配置されているとき、前記キャリア(5)の前記延設部(6,7)は、組立目的で前記調節路(V)に沿って移動中の前記ウィンドウガラス(F)を捕捉するのに十分な長さで前記キャリア(5)から突出している。
[態様5](出願当初の請求項6)
前記延設部(6,7)は、前記キャリア(5)と前記ウィンドウガラス(F)とが、互いに相対移動可能な移動領域(60.70)を含み、この相対移動により、前記キャリア(5)が前記ウィンドウガラス(F)に対する前記組立位置から前記ウィンドウガラス(F)の前記機能位置に移動する。
[態様6](出願当初の請求項7)
前記ウィンドウガラス(F)に対する前記キャリア(5)の前記組立位置と、前記ウィンドウガラス(F)に対する前記キャリア(5)の前記機能位置とが、前記調節路(V)の横方向に互いに離れている。
[態様7](出願当初の請求項8)
前記遷移領域(60)が、前記調節路(V)のほぼ横方向に延びている。
[態様8](出願当初の請求項15)
前記ウィンドウガラス(F)が前記調節路(V)に沿って組立目的で移動時に、前記ウィンドウガラス(F)がその下縁(U)または下縁(U)の領域に設けられたアダプター(100)を介して前記キャリア(5)に設けられた前記延設部(6,7)に係合する。
[態様9](出願当初の請求項16)
前記キャリア(5)が前記組立位置から前記機能位置に移動するとき、前記ウィンドウガラス(F)は、その下縁(U)または当該下縁(U)の領域に設けられたアダプター(100)を介して前記移動領域(60,70)に当接している。
[態様10](出願当初の請求項17)
前記キャリア(5)用の前記ホルダ(10)が、前記ウィンドウガラス(F)の組立時に前記キャリア(5)を支持可能な少なくとも1つのストッパ部(11a,11b,11c,11d;12a,12b,12c,12d)を有している。