【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の技術構成により、上記の技術課題を解決する。
【0011】
(1)車両制御システムVMSが、現在の車両運行状態パラメータを測定するステップ、
(2)車両制御システムVMSが、空調システム制御装置ASCに、現在の空調システム最大許容パワー値PACeを送信するステップ、
(3)空調システム制御装置ASCが、空調システムの稼動状態パラメータを測定し、空調システムを起動させる必要があるかを判断するステップ、
(4)ステップ(3)において、空調システムを起動させる必要がないと判断した場合、空調システムを停止する、または、
ステップ(3)において、空調システムを起動させる必要があると判断した場合、
空調システム制御装置ASCが、車両制御システムが送信した現在の現在の空調システム最大許容パワー値PACeと、空調システム最小稼動パワー閾値PACtとを比較するステップ、
(5)ステップ
(4)においてPACe<PACtと判断した場合、空調システムを停止す、または、
ステップ
(4)においてPACe=PACtと判断した場合、空調システムを最小稼動パワー閾値PACtに対応する条件にて稼動させ、または、
ステップ
(4)においてPACe>PACtと判断した場合、空調システムを空調システム制御装置ASCが定める制御ルールに従って稼動させるステップ、
を含む、電気自動車空調システムの自己適応式制御方法。
【0012】
このうち、本発明の上記車両制御システムVMSと空調システム制御装置ASCとは、それぞれ制御機能を担うモジュールであり、二つの独立するハードウェアでも、一つのハードウェア内部の二つのソフトウェアモジュールでもよい。
【0013】
このうち、前記ステップ(1)において、車両制御システムVMSが、現在の車両運行状態を測定するには、定時スキャンの方式で行うものであり、前記ステップ(2)において車両制御システムVMSが、空調システム制御装置ASCに、現在の空調システム最大許容パワー値PACeを送信するのは、割り込み要求方式で行う。
【0014】
このうち、前記ステップ(1)において、車両制御システムVMSが測定する現在の車両運行状態パラメータは、電源システム中のバッテリの接続状態及び/またはバッテリの充電状態及び/またはバッテリの最大許容放電パワーPa、並びに、動力システムの稼動パワー値Pe及びその他のシステムの稼動パワーPsを含む。
【0015】
このうち、前記ステップ(2)において、車両制御システムVMSが、空調システム制御装置ASCに送信する現在の空調システム最大許容パワー値PACeは、現在のバッテリの最大許容放電パワー値と、動力システム及びその他のシステムの稼動パワーとの差より大きくない、即ち、
PACe≦Pa−Pe−Psである。
【0016】
このうち、上記ステップ(5)において、PACe>PACtの場合、空調システム制御装置ASCが定める制御ルールは、
(1)空調システムが停止状態から稼動状態に切り替わる際、まず、最小パワーに対応する稼動条件で、一定時間tsの間空調システムを稼動させる。これによりコンプレッサの起動負荷を低減させる。典型的には、tsは1〜30秒となる。
(2)車両が点火始動し且つ空調を起動する要求がある場合、空調システムは、空調システム最大稼動パワー値PAChになるまで、徐々に入力パワー値PACを増大し、ただし現在の空調システム最大許容パワー値PACeより高くならないようにする。これにより、システムの冷却量/発熱量を増大させ、車内温度がなるべく速く設定値になるようにする。
(3)車内温度と設定温度との温度差dTによって、空調システムの入力パワー値PACを調整する。温度差dTが大きくなる時、空調システムの入力パワーを上げるが、ただし現在の空調システム最大許容パワー値PACeより高くならないようにする。温度差dTが小さくなる時に、空調システムの入力パワーを下げる。
(4)車内温度と設定温度との温度差dTが設定値dTsより小さい場合、空調システムを停止させるか、または最小パワーに対応する稼動条件で稼動させること、典型的には、dTsは0.5〜3℃となる。
以上のいずれか一つまたは複数の制御ルールの組み合わせを含む。
【0017】
上記空調システムの入力パワーを調整する方法は以下である。空調システムのコンプレッサは出力能力調整可能式コンプレッサであり、コンプレッサの出力能力を調整することによって、空調システムの入力パワーを調整することが可能となる。具体的には、出力能力調整可能式コンプレッサは、回転速度調整可能式コンプレッサであり、周波数変換制御装置またはその他の速度調整装置によりコンプレッサの回転速度を調整し、コンプレッサの出力能力を調整する。これにより、空調システムの入力パワーを調整する。もう一種類の出力能力調整可能式コンプレッサは容量調整可能式コンプレッサであり、例えば、アンロード装置のあるコンプレッサ、デジタルスクロールコンプレッサが挙げられ、負荷比を調整することによって、コンプレッサの出力能力を調整し、空調システムの入力パワーを調整する。
【0018】
前記空調システムの入力パワーを調整する方法は、さらに以下を含む。空調システムのコンデンサーとエバポレータファンモーターは回転速度調整可能式モーターである。周波数変換制御装置でモーター回転数を調整し、若しくはモーターに複数の回転速度モードがあって、モーターの回転速度を調整し、これにより空調システムの入力パワーを調整する。
【0019】
前記空調システムの入力パワーを調整する方法は、さらに以下を含む。空調システムのスロットル装置は、電子エキスパンションバルブである。電子エキスパンションバルブの開度を調整することにより、空調システムの圧力低下を変え、これにより空調システムの入力パワーを調整する。
【0020】
前記ルール(3)の具体的な調整方法は、
(1)コンプレッサは少なくても3段階の調整可能な回転速度を有し、ファンモーターは少なくても2段階の調整可能な回転速度を有すること、
(2)車内温度と設定温度との温度差dT<dTsである場合、空調システムを最小パワーPACt条件において稼動させ、周波数変換制御装置により、コンプレッサを低速モードで稼動させ、コンデンサーとエバポレータファンモーターを低速モードで稼動させ、ただし現在の空調システム最大許容パワー値PACeより高くならないこと、でなければは空調システムを停止させること、
(3)車内温度と設定温度との温度差dT>dTs且つdT<T1の場合、空調システムを中速モードで稼動させる。周波数変換制御装置により、コンプレッサを中速モードで稼動させ、コンデンサーとエバポレータファンモーターを高速モードで稼動させ、ただし現在の空調システム最大許容パワー値PACeより高くならないこと、でなければ条件(2)で稼動させる、
(4)車内温度と設定温度との温度差dT>T1である場合、空調システムを最大パワーPACh条件において稼動させ、周波数変換制御装置により、コンプレッサを高速モードで稼動させ、コンデンサーとエバポレータファンモーターを高速モードで稼動させ、ただし現在の空調システム最大許容パワー値PACeより高くならないこと、でなければ条件(3)で稼動させる、
以上のいずれか一つまたは複数の制御ルールの組み合わせを含む。
【0021】
典型的に、dTsは0.5〜3℃、T1は5〜10℃となる。
【0022】
このうち、前記空調システムの最小パワー閾値PACtに対応する稼動条件は、
(1)回転速度調整可能式コンプレッサを最低回転速度で稼動させ、または能力調整可能式コンプレッサを最小負荷条件でアンロード稼動させること、
(2)コンデンサーとエバポレータファンモーターを最低回転速度で稼動させるか、または低速モードで稼動させること、
(3)電子エキスパンションバルブを最大開度に設定すること、
以上のいずれか一つまたは複数の制御ルールの組み合わせを含む。