(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既知のリファレンス信号成分を含む希望波信号成分と、この希望波信号成分に対して干渉する干渉波信号成分と、を含む信号を受信して前記干渉波信号成分の電力を測定する干渉波電力測定装置(20)であって、
受信した受信波信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段(21)と、
前記受信波信号に含まれる受信リファレンス信号成分の信号値と前記既知のリファレンス信号成分の信号値との相関値を算出する相関値算出手段(22)と、
前記相関値算出手段が算出した算出結果に基づいて所定の相関値間の差分を示す第1及び第2の差分相関値を算出する差分相関値算出手段(25)と、
前記第1及び前記第2の差分相関値のそれぞれの絶対値の二乗を積算した結果に基づいて第1及び第2の干渉波信号成分の電力を算出する干渉波電力算出手段(26)と、
前記第1及び前記第2の干渉波信号成分の電力のうち真値に対する誤差の小さい方を前記干渉波信号成分の電力として選択する選択手段(28)と、
を備え、
前記差分相関値算出手段は、
第1周波数における第1時刻の相関値と前記第1時刻より遅い第2時刻の相関値との差分である第1差分と、第2周波数における前記第1時刻と前記第2時刻との間の第3時刻の相関値と前記第2時刻より遅い第4時刻の相関値との差分である第2差分との差分を前記第1の差分相関値として求め、
第3周波数における前記第1時刻の相関値と前記第2時刻の相関値との差分である第3差分と、第4周波数における前記第1時刻の相関値と前記第2時刻の相関値との差分である第4差分との差分を前記第2の差分相関値として求めるものであって、
前記第1周波数と前記第2周波数との周波数差は、前記第3周波数と前記第4周波数との周波数差よりも小さいことを特徴とする干渉波電力測定装置。
前記選択手段は、前記第1及び前記第2の干渉波信号成分の電力のうち小さい値の電力を前記干渉波信号成分の電力として選択するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の干渉波電力測定装置。
前記選択手段は、前記第1及び前記第2の干渉波信号成分の電力のうち、前記希望波信号成分の電力と前記干渉波信号成分の電力との比を示すSIRの大きい値が得られる方を前記干渉波信号成分の電力として選択するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の干渉波電力測定装置。
既知のリファレンス信号成分を含む希望波信号成分と、この希望波信号成分に対して干渉する干渉波信号成分と、を含む信号を受信して前記干渉波信号成分の電力を測定する干渉波電力測定方法であって、
受信した受信波信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換するフーリエ変換ステップ(S12)と、
前記受信波信号に含まれる受信リファレンス信号成分の信号値と前記既知のリファレンス信号成分の信号値との相関値を算出する相関値算出ステップ(S13)と、
前記相関値算出ステップで算出した算出結果に基づいて所定の相関値間の差分を示す第1及び第2の差分相関値を算出するステップ(S15、S17)と、
前記第1及び前記第2の差分相関値のそれぞれの絶対値の二乗を積算した結果に基づいて第1及び第2の干渉波信号成分の電力を算出する干渉波電力算出ステップ(S16、S18)と、
前記第1及び前記第2の干渉波信号成分の電力のうち真値に対する誤差の小さい方を前記干渉波信号成分の電力として選択する選択ステップ(S19)と、
を含み、
前記差分相関値算出ステップにおいて、
第1周波数における第1時刻の相関値と前記第1時刻より遅い第2時刻の相関値との差分である第1差分と、第2周波数における前記第1時刻と前記第2時刻との間の第3時刻の相関値と前記第2時刻より遅い第4時刻の相関値との差分である第2差分との差分を前記第1の差分相関値として求め、
第3周波数における前記第1時刻の相関値と前記第2時刻の相関値との差分である第3差分と、第4周波数における前記第1時刻の相関値と前記第2時刻の相関値との差分である第4差分との差分を前記第2の差分相関値として求め、
前記第1周波数と前記第2周波数との周波数差は、前記第3周波数と前記第4周波数との周波数差よりも小さいことを特徴とする干渉波電力測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の干渉波電力測定装置を、例えばLTE規格に従ってOFDM信号成分を含むRF(無線周波数)信号の電波を送信する基地局から、その電波を受信してSIRを測定するSIR測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、本発明に係るSIR測定装置の第1実施形態における構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態におけるSIR測定装置10は、受信アンテナ11、受信部12、干渉波電力測定装置20、平均受信電力算出部13、SIR算出部14、表示部15を備えている。
【0027】
干渉波電力測定装置20は、FFT演算部21、相関値算出部22、相関結果記憶部23、方式適用制御部24、差分相関値算出部25、干渉波電力算出部26、方式別結果記憶部27、選択部28を備えている。
【0028】
受信アンテナ11は、基地局(図示省略)から送信されたOFDM信号成分を含むRF信号(以下、単に「OFDM信号」という)の電波を受信し、受信した電波信号を受信部12に出力するようになっている。
【0029】
受信部12は、受信アンテナ11が受信したOFDM信号を予め定められた周波数のIF(中間周波数)信号に変換した後、IF信号をアナログ値からデジタル値に変換してFFT演算部21に出力するようになっている。
【0030】
FFT演算部21は、受信部12から出力される時間領域の信号を周波数領域の信号に変換して相関値算出部22に出力するようになっている。このFFT演算部21は、本発明に係るフーリエ変換手段を構成する。FFT演算部21から出力される信号は、データシンボルの信号成分と、リファレンス信号成分とを含む。なお、リファレンス信号成分は、参照信号成分、参照信号シンボル、リファレンスシンボル、パイロット信号成分、パイロットシンボル、スキャッタードパイロット等と呼ばれる場合がある。
【0031】
リファレンス信号成分(RS)は、基地局が2つの送信アンテナでOFDM信号の電波を送信している場合においては、例えば
図2に示すように、TX=0(送信アンテナ0)及びTX=1(送信アンテナ1)で示した位置に配置される。以下の説明では、基地局が1つの送信アンテナ0でOFDM信号の電波を送信するものとし、
図2にTX=0で示したリファレンス信号成分のみを対象とする。
【0032】
また、
図2に示したように、受信したリファレンス信号成分の信号値をS
nmで表す。ここで、nは、リファレンス信号成分の時間軸方向の位置を示す整数であって、nが大きいほど受信時刻が遅いことを示している。また、mは、リファレンス信号成分の周波数軸上の位置を示す整数であって、mが大きいほど周波数が高いことを示している。ここで、n=0〜N−1(ただし、Nは4以上)、m=0〜M−1(ただし、Mは2以上)である。
【0033】
相関値算出部22は、
図2に示したリファレンス信号成分S
nmの既知信号成分であるC
nmをS
nmに対応させたパターンで予め記憶しており、時間軸n、周波数軸mの位置におけるリファレンス信号成分S
nmと、既知信号成分C
nmの複素共役との相関値R
nmを[数1]により算出するようになっている。ここで、記号"*"は複素共役を示す。なお、相関値算出部22は、本発明に係る相関値算出手段を構成する。
【0035】
相関値算出部22が算出した相関結果のデータを
図3に示す。例えば、左端に示す1つのスロット(7シンボル)の中には、R
00、R
02、・・・、R
0M−2が含まれるシンボルと、R
11、R
13、・・・、R
1M−1が含まれるシンボルの2シンボルが含まれている。このスロットの右側に隣接するスロットには、R
20、R
22、・・・、R
2M−2が含まれるシンボルと、R
31、R
33、・・・、R
3M−1が含まれるシンボルの2シンボルが含まれている。
【0036】
相関結果記憶部23は、相関値算出部22が算出した相関結果のデータ(
図3参照)を記憶するようになっている。
【0037】
方式適用制御部24は、相関値算出部22が算出した相関結果のデータに対して、マルチパス特性を考慮して干渉波信号成分の電力を求めるためのマルチパス特性考慮方式の適用と、高速移動特性を考慮して干渉波信号成分の電力を求めるための高速移動特性考慮方式の適用とを切り替える制御を差分相関値算出部25に対して実行するようになっている。なお、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式については後述する。
【0038】
差分相関値算出部25は、相関結果記憶部23が記憶している相関結果のデータに基づき、方式適用制御部24の制御に従って、所定の相関値間の差分を示す差分相関値をマルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式により算出するようになっている。算出された各差分相関値は、干渉波電力算出部26に出力される。なお、差分相関値算出部25は、本発明に係る差分相関値算出手段を構成する。
【0039】
干渉波電力算出部26は、差分相関値算出部25が算出したマルチパス特性考慮方式又は高速移動特性考慮方式による差分相関値をそれぞれ所定数だけ積算し、干渉波信号成分の平均電力を示す平均干渉波電力P
Iを方式ごとに算出するようになっている。算出された方式ごとの平均干渉波電力P
Iのデータは、方式別結果記憶部27に出力される。なお、干渉波電力算出部26は、本発明に係る干渉波電力算出手段を構成する。
【0040】
方式別結果記憶部27は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式のそれぞれについて、干渉波電力算出部26が算出した平均干渉波電力P
Iを方式別に記憶するようになっている。
【0041】
選択部28は、方式別結果記憶部27が記憶している方式別の平均干渉波電力P
Iのうち、電力が小さい方の値を選択し、選択した平均干渉波電力P
IをSIR算出部14に出力するようになっている。この選択部28は、本発明に係る選択手段を構成する。
【0042】
平均受信電力算出部13は、相関結果記憶部23から所定の相関結果のデータを入力し、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式に応じた平均受信電力P
Rを算出してSIR算出部14に出力するようになっている。
【0043】
具体的には、平均受信電力算出部13は、マルチパス特性考慮方式が適用される場合には[数2]により、高速移動特性考慮方式が適用される場合には[数3]により、平均受信電力P
Rを算出してSIR算出部14に出力するようになっている。なお、[数2]、[数3]を導くための基本的な考え方は、先の出願である特開2011−193221に記載されているので、その説明は省略する(後述する平均干渉波電力P
Iの各算出式も同様)。
【0046】
ここで、TXは基地局の送信アンテナ0又は1を示す変数であり、本実施形態では送信アンテナ0のみとしているのでTX=0である。また、例えば(n+m+TX)mod2は、(n+m+TX)を2で割った余りを示す。
【0047】
SIR算出部14は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式に応じて、選択部28が選択した平均干渉波電力P
Iのデータと、平均受信電力算出部13が算出した平均受信電力P
Rのデータとを入力し、[数4]により平均希望波受信電力P
Sを算出するようになっている。
【0049】
また、SIR算出部14は、平均希望波受信電力P
Sと平均干渉波電力P
Iとから[数5]によりSIRを算出するようになっている。算出されたSIRのデータは、表示部15に出力される。このSIR算出部14は、本発明に係るSIR算出手段を構成する。
【0051】
表示部15は、例えば液晶ディスプレイを備え、SIR算出部14が算出したSIRを表示するようになっている。なお、表示部15に、平均干渉波電力P
I、平均受信電力P
R、平均希望波受信電力P
S等を表示させる構成としてもよい。
【0052】
次に、干渉波電力算出部26の機能について具体的に説明する。前述のように、干渉波電力算出部26は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式に応じた平均干渉波電力P
Iを算出するようになっている。
【0053】
まず、マルチパス特性考慮方式が適用される場合について説明する。この場合、干渉波電力算出部26は、[数6]に基づいて差分相関値を積算し、平均干渉波電力P
I(第1の干渉波信号成分の電力)を算出するようになっている。
【0055】
[数6]のΣ内の第1項から第4項までについて、
図4を参照しながら具体的に説明する。ここで、Σ内の第1項と第2項との差分、第3項と第4項との差分は、差分相関値算出部25が算出する。
【0056】
図4(a)の左側には、n=0のときに、m=0、1、2、3と変化させた場合、[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値(
図3参照)を表示している。例えば、[数6]にn=0、m=0を代入すると、第1項はR
00、第2項はR
20、第3項はR
11、第4項はR
31が得られる。
【0057】
図4(b)の左側には、n=0、m=0のとき、[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の
図3における各位置(横方向は時間軸、縦方向は周波数軸)を模式的に斜線で表している。この図より、第1項のR
00と第2項のR
20とが同一の周波数(同一のサブキャリア)であり、第3項のR
11と第4項のR
31とが同一の周波数(同一のサブキャリア)であることを示している。なお、例えば、本発明に係る第1周波数は第1項のR
00と第2項のR
20の周波数に対応し、第2周波数は第3項のR
11と第4項のR
31の周波数に対応する。
【0058】
また、第1項のR
00、第2項のR
20、第3項のR
11、第4項のR
31は、互いに異なる時刻位置にあることを示している。なお、例えば、本発明に係る第1時刻は第1項のR
00の時刻、第2時刻は第3項のR
11の時刻、第3時刻は第2項のR
20の時刻、第4時刻は第4項のR
31の時刻にそれぞれ対応する。
【0059】
また、
図3を参照すると、第1項のR
00と第3項のR
11とが同一のスロットにあり、第2項のR
20と第4項のR
31とが同一のスロットにあることを示している。ここで、第1項のR
00と第2項のR
20は互いに異なるスロットにある。
【0060】
図4(b)の左側と同様に、
図4(c)の左側にはn=0、m=1のとき、
図4(d)の左側にはn=0、m=2のときにおいて、[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の
図3における各位置を模式的に斜線で表している。これらの図は、mが増加するに従って[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の位置が変化していくのを示している。
【0061】
図4(a)〜(d)の右側には、左側の各図と同様な構成で、n=1のときに、m=0、1、2、3と変化させた場合、[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値(
図3参照)を表示している。これらの図は、[数6]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値が、
図4(a)〜(d)の左側の図に対して、時刻が進む方向に1つ移動しているのを示している。
【0062】
次に、高速移動特性考慮方式が適用される場合について説明する。この場合、干渉波電力算出部26は、[数7]に基づいて差分相関値を積算し、平均干渉波電力P
I(第2の干渉波信号成分の電力)を算出するようになっている。
【0064】
[数7]のΣ内の第1項から第4項までについて、
図5を参照しながら具体的に説明する。ここで、Σ内の第1項と第2項との差分、第3項と第4項との差分は、差分相関値算出部25が算出する。
【0065】
図5(a)の左側には、n=0のときに、m=0、1、2、3と変化させた場合、[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値(
図3参照)を表示している。例えば、[数7]にn=0、m=0を代入すると、第1項はR
00、第2項はR
20、第3項はR
02、第4項はR
22が得られる。
【0066】
図5(b)の左側には、n=0、m=0のとき、[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の
図3における各位置(横方向は時間軸、縦方向は周波数軸)を模式的に斜線で表している。この図より、第1項のR
00と第2項のR
20とが同一の周波数(同一のサブキャリア)であり、第3項のR
02と第4項のR
22とが同一の周波数(同一のサブキャリア)であることを示している。なお、例えば、本発明に係る第3周波数は第1項のR
00と第2項のR
20の周波数に対応し、第4周波数は第3項のR
02と第4項のR
22の周波数に対応する。
【0067】
また、第1項のR
00と第3項のR
02とが同一の時刻であり、第2項のR
20と第4項のR
22とが同一の時刻であることを示している。ここで、例えば、本発明に係る第1時刻は第1項のR
00と第3項のR
02の時刻に対応し、第2時刻は第2項のR
20と第4項のR
22の時刻に対応している。
【0068】
また、
図3を参照すると、第1項のR
00と第3項のR
02とが同一のスロットにあり、第2項のR
20と第4項のR
22とが同一のスロットにあることを示している。ここで、第1項のR
00と第2項のR
20は互いに異なるスロットにある。
【0069】
図5(b)の左側と同様に、
図5(c)の左側にはn=0、m=1のとき、
図5(d)の左側にはn=0、m=2のときにおいて、[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の
図3における各位置を模式的に斜線で表している。これらの図は、mが増加するに従って[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値の位置が変化していくのを示している。
【0070】
図5(a)〜(d)の右側には、左側の各図と同様な構成で、n=1のときに、m=0、1、2、3と変化させた場合、[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値(
図3参照)を表示している。これらの図は、[数7]のΣ内の第1項から第4項までが示す各相関値が、
図5(a)〜(d)の左側の図に対して、時刻が進む方向に1つ移動しているのを示している。
【0071】
次に、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式の特徴について、両者を比較しながら説明する。
【0072】
まず、マルチパス特性考慮方式の特徴について
図6を参照しながら説明する。
【0073】
図6(a)は、[数6]においてn=0、m=0のとき、Σ内の第1項と第2項との差分をとる組み合わせ31と、Σ内の第3項と第4項との差分をとる組み合わせ32とを実線で囲っている。また、Σ内の絶対値記号内の差分をとる組み合わせ33を破線で囲っている。
【0074】
ここで、[数6]を変形すると[数8]が得られる。
【0076】
図6(b)は、
図6(a)で示したものを[数8]を用いて表現し直したものであり、[数8]においてn=0、m=0のとき、Σ内の第1項と第2項との和をとる組み合わせ34と、Σ内の第3項と第4項との和をとる組み合わせ35とを実線で囲っている。また、Σ内の絶対値記号内の差分をとる組み合わせ33を破線で囲っている。
【0077】
図6(b)により、マルチパス特性考慮方式は、周波数差は3サブキャリアであるので、マルチパス環境下での周波数ごとの変動に対して、後述する高速移動特性考慮方式よりも耐性があることが示されている。一方、
図6(b)により、マルチパス特性考慮方式は、R
00とR
31との組み合わせ34は、R
11とR
20との組み合わせ35よりも時間差が大きいので、高速移動環境下で発生する時間変動が大きい場合には特性が劣化することが示されている。
【0078】
次に、高速移動特性考慮方式の特徴について
図7を参照しながら説明する。
【0079】
図7(a)は、[数7]においてn=0、m=0のとき、Σ内の第1項と第2項との差をとる組み合わせ41と、Σ内の第3項と第4項との差をとる組み合わせ42とを実線で囲っている。また、Σ内の絶対値記号内の差分をとる組み合わせ43を破線で囲っている。
【0080】
ここで、[数7]を変形すると[数9]が得られる。
【0082】
図7(b)は、
図7(a)で示したものを[数9]を用いて表現し直したものであり、[数9]においてn=0、m=0のとき、Σ内の第1項と第2項との和をとる組み合わせ44と、Σ内の第3項と第4項との和をとる組み合わせ45とを実線で囲っている。また、Σ内の絶対値記号内の差分をとる組み合わせ43を破線で囲っている。
【0083】
図7(b)により、高速移動特性考慮方式は、R
00とR
22との組み合わせ44と、R
02とR
20との組み合わせ45の時間差は同じであり、高速移動環境下で発生する時間変動に対して、前述のマルチパス特性考慮方式よりも耐性があることが示されている。一方、高速移動特性考慮方式は、周波数差は6サブキャリアであるので、マルチパス環境下での周波数ごとの変動が大きい場合には特性が劣化することが示されている。
【0084】
以上のように、マルチパス特性考慮方式は、マルチパス環境下での周波数ごとの変動に対して耐性があるので、マルチパス環境下において干渉波電力を高精度で測定することができ、高速移動特性考慮方式は、高速移動環境下で発生する時間変動に対して耐性があるので、高速移動環境下において干渉波電力を高精度で測定することができることがわかる。
【0085】
したがって、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式により別個に平均干渉波電力P
Iを算出し、小さい方の平均干渉波電力P
Iを選択すれば、選択した平均干渉波電力P
Iが真値に対する誤差の小さい平均干渉波電力P
Iに相当することとなる。
【0086】
すなわち、選択部28は、方式別結果記憶部27が記憶している方式別の平均干渉波電力P
Iのうち電力が小さい方の値を選択することにより、平均干渉波電力P
Iの真値に対する誤差の小さい方を選択するものである。
【0087】
次に、本実施形態におけるSIR測定装置10の動作について
図8に示すフローチャートを中心に説明する。
【0088】
受信部12は、受信アンテナ11を介してOFDM信号を受信し(ステップS11)、所定周波数のIF信号に変換した後、IF信号をアナログ値からデジタル値に変換してFFT演算部21に出力する。
【0089】
FFT演算部21は、受信部12から出力される時間領域の信号を周波数領域の信号に変換し(ステップS12)、相関値算出部22に出力する。
【0090】
相関値算出部22は、時間軸n、周波数軸mの位置におけるリファレンス信号成分S
nmと、既知信号成分C
nmの複素共役との相関値R
nmを[数1]により算出する(ステップS13)。
【0091】
相関結果記憶部23は、相関値算出部22が算出した相関結果のデータを記憶する(ステップS14)。
【0092】
差分相関値算出部25は、相関結果記憶部23が記憶している相関結果のデータに基づき、方式適用制御部24の制御(マルチパス特性考慮方式を指示)に従って、マルチパス特性考慮方式による差分相関値を算出する(ステップS15)。具体的には、[数6]のΣ内の第1項と第2項との差分(第1差分)、第3項と第4項との差分(第2差分)を算出する。
【0093】
干渉波電力算出部26は、マルチパス特性考慮方式で平均干渉波電力P
Iを[数6]により算出し、算出した平均干渉波電力P
Iのデータを方式別結果記憶部27が記憶する(ステップS16)。
【0094】
差分相関値算出部25は、相関結果記憶部23が記憶している相関結果のデータに基づき、方式適用制御部24の制御(高速移動特性考慮方式を指示)に従って、高速移動特性考慮方式による差分相関値を算出する(ステップS17)。具体的には、[数7]のΣ内の第1項と第2項との差分(第3差分)、第3項と第4項との差分(第4差分)を算出する。
【0095】
干渉波電力算出部26は、高速移動特性考慮方式で平均干渉波電力P
Iを[数7]により算出し、算出した平均干渉波電力P
Iのデータを方式別結果記憶部27が記憶する(ステップS18)。
【0096】
選択部28は、方式別結果記憶部27が記憶している方式別の平均干渉波電力P
Iのうち、電力が小さい方の値を選択し(ステップS19)、選択した平均干渉波電力P
IのデータをSIR算出部14に出力する。
【0097】
SIR算出部14は、平均受信電力算出部13からの平均希望波受信電力P
Sと、選択部28からの平均干渉波電力P
Iとから[数5]によりSIRを算出する(ステップS20)。
【0098】
表示部15は、SIR算出部14が算出したSIRを表示する(ステップS21)。
【0099】
なお、
図8では、マルチパス特性考慮方式の演算を先に行い、高速移動特性考慮方式の演算を後に行う例を示したが、この順序を入れ替えてもよい。すなわち、ステップS14の後に、ステップS17、S18、S15、S16、S19・・・という順序であってもよい。
【0100】
以上のように、本実施形態における干渉波電力測定装置20は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式でそれぞれ平均干渉波電力P
Iを算出し、これら2つの平均干渉波電力P
Iのうち小さい方の値を選択部28が選択する構成としたので、マルチパス環境下においてはマルチパス特性考慮方式での平均干渉波電力P
I、高速移動環境下においては高速移動特性考慮方式での平均干渉波電力P
Iを選択することとなる。
【0101】
したがって、本実施形態における干渉波電力測定装置20は、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においても干渉波電力を従来よりも高精度で測定することができる。
【0102】
また、本実施形態におけるSIR測定装置10は、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においても干渉波電力を従来よりも高精度で測定することができる干渉波電力測定装置20を備えるので、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においてもSIRを従来よりも高精度で測定することができる。
【0103】
(他の態様)
前述の実施形態では、基地局が1つの送信アンテナ0でOFDM信号の電波を送信するものとしたが、基地局が2つの送信アンテナでOFDM信号の電波を送信する場合においても、前述の実施形態と同様な考え方で平均干渉波電力P
I及びSIRを求めることができる。
【0104】
図9は、
図2おいてTX=0(送信アンテナ0)及びTX=1(送信アンテナ1)で示した位置に配置されたリファレンス信号成分に対する相関結果のデータを示す。この場合、[数2]、[数3]においてTX=0、TX=1を代入すれば、送信アンテナ0及び1での平均受信電力P
Rが方式ごとに求まる。
【0105】
また、[数6]〜[数9]に対応する数式は、それぞれ以下の各数式で示される。[数10]、[数11]でTX=0、TX=1を代入すれば、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式において送信アンテナ0及び1での平均干渉波電力P
Iが求まる。
【0106】
[数6]に対応する数式は[数10]で示される。
【0108】
[数7]に対応する数式は[数11]で示される。
【0110】
[数8]に対応する数式は[数12]で示される。
【0112】
[数9]に対応する数式は[数13]で示される。
【0114】
[数10]、[数11]を適用することにより、SIR測定装置10は、基地局が2つの送信アンテナでOFDM信号の電波を送信する場合においても、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においても干渉波電力を従来よりも高精度で測定することができる。
【0115】
(第2実施形態)
図10に示すように、本実施形態におけるSIR測定装置50は、第1実施形態の干渉波電力測定装置20(
図1参照)に代えて干渉波電力測定装置60を備え、SIR算出部14が廃止されている点が異なる。したがって、第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0116】
干渉波電力測定装置60は、第1実施形態における干渉波電力算出部26、方式別結果記憶部27及び選択部28に代えて、SIR算出部61、方式別結果記憶部62及び選択部63を備えている。
【0117】
SIR算出部61は、第1実施形態における干渉波電力算出部26及びSIR算出部14の機能を有している。すなわち、SIR算出部61は、差分相関値算出部25が算出したマルチパス特性考慮方式又は高速移動特性考慮方式による差分相関値をそれぞれ所定数だけ積算し、干渉波信号成分の平均電力を示す平均干渉波電力P
Iを方式ごとに算出するようになっている。
【0118】
また、SIR算出部61は、算出した平均干渉波電力P
Iと、平均受信電力算出部13が算出した平均受信電力P
Rとにより、[数4]及び[数5]に基づいて方式別のSIRを算出するようになっている。
【0119】
方式別結果記憶部62は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式のそれぞれについて、SIR算出部61が算出したSIRのデータを方式別に記憶するようになっている。
【0120】
選択部63は、方式別結果記憶部27が記憶している方式別のSIRのうち、SIRが大きい方の値を選択するようになっている。すなわち、選択部63は、SIRの真値に対する誤差の小さい方を選択するものである。選択されたSIRのデータは表示部15に出力される。なお、第1実施形態のように、干渉波電力測定装置60に平均干渉波電力のデータを出力させる場合は、SIRの大きい値が得られる干渉波信号成分を選択部63が選択して出力する構成とすればよい。
【0121】
次に、本実施形態におけるSIR測定装置10の動作について
図11に示すフローチャートを中心に説明する。なお、第1実施形態におけるフローチャート(
図8参照)に対して、本実施形態ではステップS31〜S33のみが異なるので、他のステップについては説明を省略する。
【0122】
ステップS15において差分相関値算出部25がマルチパス特性考慮方式による差分相関値を算出した後、SIR算出部61は、[数4]及び[数5]に基づいてマルチパス特性考慮方式によるSIRを算出し、算出したSIRのデータを方式別結果記憶部62が記憶する(ステップS31)。
【0123】
同様に、差分相関値算出部25が高速移動特性考慮方式による差分相関値を算出した後、SIR算出部61は、[数4]及び[数5]に基づいて高速移動特性考慮方式によるSIRを算出し、算出したSIRのデータを方式別結果記憶部62が記憶する(ステップS32)。
【0124】
選択部63は、方式別結果記憶部27が記憶している方式別のSIRのうち、SIRが大きい方の値を選択し(ステップS33)、選択したSIRのデータを表示部15に出力する。
【0125】
なお、
図11では、マルチパス特性考慮方式の演算を先に行い、高速移動特性考慮方式の演算を後に行う例を示したが、この順序を入れ替えてもよい。すなわち、ステップS14の後に、ステップS17、S32、S15、S31、S33・・・という順序であってもよい。
【0126】
以上のように、本実施形態における干渉波電力測定装置60は、マルチパス特性考慮方式及び高速移動特性考慮方式でそれぞれSIRを算出し、これら2つのSIRのうち大きい方のSIRを選択部63が選択する構成としたので、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においても干渉波電力を従来よりも高精度で測定することができる。
【0127】
また、本実施形態におけるSIR測定装置50は、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においても干渉波電力を従来よりも高精度で測定することができる干渉波電力測定装置60を備えるので、マルチパス環境下に加えて高速移動環境下においてもSIRを従来よりも高精度で測定することができる。
【解決手段】干渉波電力測定装置20は、受信したリファレンス信号成分とこれの既知信号成分の複素共役との相関値を算出する相関値算出部22と、相関結果のデータに基づいてマルチパス特性考慮方式による差分相関値と高速移動特性考慮方式による各差分相関値とを算出する差分相関値算出部25と、マルチパス特性考慮方式又は高速移動特性考慮方式による差分相関値をそれぞれ所定数だけ積算して平均干渉波電力を方式ごとに算出する干渉波電力算出部26と、方式ごとの平均干渉波電力のうち電力が小さい方の値を選択する選択部28と、を備える。