(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753669
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】加硫促進混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20150702BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20150702BHJP
C08K 5/46 20060101ALI20150702BHJP
C08K 3/16 20060101ALI20150702BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20150702BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20150702BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20150702BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/40
C08K5/46
C08K3/16
C08K5/098
C08K3/22
C08J3/22CEQ
C08J3/24 Z
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-177451(P2010-177451)
(22)【出願日】2010年8月6日
(65)【公開番号】特開2011-38101(P2011-38101A)
(43)【公開日】2011年2月24日
【審査請求日】2013年7月3日
(31)【優先権主張番号】09167499.4
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509286422
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・セヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ディートマル・ホフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリー・グリースハーバー
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト・クラインクネヒト
【審査官】
久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04683270(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第02210129(DE,A1)
【文献】
特開昭63−142047(JP,A)
【文献】
特開昭61−225229(JP,A)
【文献】
特開昭61−225201(JP,A)
【文献】
特表2008−511689(JP,A)
【文献】
特開平10−130441(JP,A)
【文献】
特開平04−357814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−3/40
C08K 5/00−5/59
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第1成分として、3−メチルチアゾリジン−2−チオンと、
(2)チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体、およびメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドからなる群から選択される、第2成分と、
(3)第3成分として、ブチルゴムに結合した塩化第一スズ二水和物と
を含む混合物。
【請求項2】
前記チウラムポリスルフィド誘導体が次式(I)
【化1】
(式中、R
I、R
II、R
IIIまたはR
IVは、それぞれ同一であるかまたは異なり、8個以下の炭素原子を有するアリールの、脂肪族または環状アルキル基であり、n=2〜6である)
の化合物であり、前記チウラムジスルフィド誘導体が、n=2であり、そしてR
I、R
II、R
IIIまたはR
IVが上に定義された通りである式(I)に相当することを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
酸化亜鉛、および/または、アクリレートゴム(ACM)、エチレン−アクリレートゴム(AEM)、ポリウレタンゴム(PUR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、エピクロロヒドリンポリマー(CO)、クロロブタジエンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー(CSM)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、パーフルオロゴム(FFPM)、フルオロゴム(FPM)、フルオロメチルポリシロキサン(FVMQ)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリエチレン(PE−C)、エチレン−酢酸ビニルポリマー(EVA/EVM)、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のゴムをも含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
いずれの場合にも請求項3に記載のゴムを基準として、
(1)0.10〜10.00重量部の量の第1成分である、3−メチルチアゾリジン−2−チオンと;
(2)0.10〜10.00重量部の量の、チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体およびメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドからなる群から選択される、第2成分と;
(3)0.10〜10.00重量部の量の第3成分である、ブチルゴムに結合した塩化第一スズ二水和物と
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
個々の成分
(1)3−メチルチアゾリジン−2−チオンと、
(2)チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドと、
(3)ブチルゴムに結合した塩化第一スズ二水和物と
が混合物中に存在する形態が、それらのそれぞれの純粋形態かまたはマスターバッチ濃縮物の形態であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記成分(2)がテトラベンジルチウラムジスルフィドである、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
前記混合物の個々の成分が互いに混合されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物が加硫促進剤として使用されることを特徴とする、加硫物の製造方法。
【請求項9】
前記混合物が、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、エピクロロヒドリンポリマー(CO)、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー(CSM)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム(ECO)、塩素化ポリエチレンポリマー(CM)およびそれらの混合物からなる群から選択されるゴム用の加硫促進剤として使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物の成分が、純粋な形態でかまたは別個のマスターバッチ濃縮物の形態でかまたは純粋な形態と複数の成分を含むマスターバッチ濃縮物との組み合わせで、個々にまたは一緒に、加硫されるべきゴムに添加され、次に加硫されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
個別の添加の場合には、個々の成分の添加方法が、ここで、加硫プロセス中に前記個々の成分の同時加硫促進作用を確実にするようにすることであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法によって得られる、加硫物。
【請求項13】
ブチルゴムに結合した塩化第一スズ二水和物を含み、塩化第一スズの量が20〜95質量%である、マスターバッチ。
【請求項14】
ブチルゴムに結合した塩化第一スズ二水和物の、加硫促進剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫促進剤として使用することができる混合物、この混合物の製造方法およびこの混合物の使用、前記混合物を含むまたは混合物の相当する個々の成分を含む加硫物、ならびにまた前記混合物を使用して製造される加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫は、時間、熱および圧力を用いることによって、ゴムを耐久性にする化学的/工業的プロセスである。このプロセスのある例では、天然ゴム、硫黄または、テトラベンジルチウラムジスルフィドなどの、硫黄供与体物質、触媒(反応速度を高めるための)および充填剤からなるゴム混合物が混合され、加熱される。このプロセス中に、長鎖ゴム分子が硫黄架橋によって架橋される。ゴムまたはゴム混合物はこうしてその可塑性を失い、加硫プロセスは、材料を塑性状態から弾性状態へ変換させる。
【0003】
ゴムが硫黄によって加硫されるとき、加硫促進剤として知られる物質がこのプロセスを加速するために添加され、これらは一般に有機物質である。これらの例は、キサントゲン酸塩、ジチオカルバメート、メルカプトベンゾチアゾール類および、チアゾール類、グアニジン類、チオ尿素誘導体またはアミン誘導体などの、他の化合物である。
【0004】
他の頻繁に使用される加硫促進剤は、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびエチレンチオ尿素である。加硫促進剤としてのエチレンチオ尿素の役割について重要な議論が現在行われている。例として、その毒性および疑わしい発がん性に基づき(2003年1月13日の(非特許文献1))、エチレンチオ尿素に対して0.05ppmの閾値がある。エチレンチオ尿素はまた、生殖毒性を示す。
【0005】
これから推測されることは、EU REACH規制(化学物質の登録、評価、承認および制限)の条件の観点から特に、この化学物質が近い将来に完全登録の対象となるであろうことである。エチレンチオ尿素に対する承認プロセスもまた、REACH下にある可能性が極めて高い。これは、大きな追加費用を発生させる一方、承認手順の結果は現在不確かである。それ故、この加硫促進剤を代わりの促進剤システムで置き換える必要がある。
【0006】
しかしながら、同時に、クロロブタジエンゴム(CR)を加硫するためのエチレンチオ尿素と、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などの、チウラムジスルフィド誘導体とを含む促進剤システムの技術的利点は、加硫が進行するときに、それらが顕著な最低粘度、引き続き架橋の開始により急な粘度上昇を提供することである。加硫開始のスタート時のこの最低粘度は、例えば押出機におけるまたはロールミルでの、かつまた、射出成形などの、次段階の加工における、加硫混合物の良好な加工性にとって決定的な要因である。これらのシステムが使用されるときに起こる顕著なその後の粘度上昇は、システムの急速な架橋をさらに示唆し、これは、今度は大量生産における短いサイクル時間のために重要である。
【0007】
エチレンチオ尿素の毒性はそれ故、加硫促進剤システムにおいてこの化合物を代わりのシステムで置き換えることを望ましくする。従って、これらの新規の加硫化学品は同様に、加硫プロセスのスタート時に顕著な最低粘度と加硫プロセスの経過中に顕著な粘度上昇とを与えるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】BGBl Rueckstands−Hoechstmengenverordnung [German Federal Legal Gazette、Regulation relating to maximum residual quantities]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、エチレンチオ尿素を含まない混合物を提供することが本発明の目的である。エチレンチオ尿素が、より少ない毒性効果を有する化合物でここでは置き換えられるべきであるが、同時に加硫プロセスのためのプロセス条件は一定のままであるかまたは実際にさらに改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、前記目的を達成するために促進剤システムがここで提案され、そしてそれは、
(1)第1成分として、3−メチルチアゾリジン−2−チオンと、
(2)チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドからなる群から選択される、第2成分と、
(3)第3成分として、好ましくはポリマーに結合した、少なくとも1種のルイス酸と
を含む。
【0011】
図1および2は、個々の結果をグラフにより示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】時間(分単位での)の関数として130℃でのMooneyスコーチ曲線を示す図である。
【
図2】時間(分単位での)の関数として170℃での架橋曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、この混合物は、加硫促進剤として、エチレンチオ尿素を使用するシステムで得られる良好な挙動に似た加硫挙動を与える一方、本発明による混合物に使用される個々の成分は毒性学的に好ましいことが分かった。
【0014】
本発明はそれ故、(1)3−メチルチアゾリジン−2−チオンと、(2)チウラムジスルフィド誘導体またはチウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドと(3)少なくとも1種のルイス酸とを含む混合物を提供する。
【0015】
本発明による混合物は、加硫プロセスの前に加硫エラストマーに添加される。
【0016】
本発明の目的のためには、表現チウラムポリスルフィド誘導体は好ましくは次式(I)
【化1】
(式中、R
I、R
II、R
IIIまたはR
IVは、それぞれ同一であるかまたは異なり、8個以下の炭素原子を有するアリールの、脂肪族または環状アルキル基であり、n=2〜6である)
の化合物を意味する。n=2については、この式は、チウラムジスルフィド誘導体を表し、ここで、R
I、R
II、R
IIIまたはR
IVは上に定義された通りである。
【0017】
好ましく使用される、以下の化合物について特に言及されてもよい。
【0018】
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(DPTD)、ビス(ペンタメチレン)チウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ビス(ジブチルチオカルバミル)ジスルフィド(TBTD)、N,N,N’,N’−テトライソブチルチウラムジスルフィド(TiBTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)およびジメチルジフェニルチウラムジスルフィド(MPTD)。テトラベンジルチウラムジスルフィドの場合には、他のチウラムジスルフィド誘導体とは違って、いかなる種類の発がん性ニトロサミンも加硫プロセス中に全く生成できず、それ故この物質が特に好ましい。これは、N−ニトロサミンに関するTRGS[Technical Rules for Hazardous Substances]552によって裏付けられる。
【0019】
本発明の目的のために使用されるべきルイス酸(3)は、適切なエラストマーの加硫を加速する任意の所望のルイス酸であることができる。特に、本発明に従って使用されるべきルイス酸は、塩化第一スズ、塩化第一スズ二水和物、ジオクタン酸スズ、シュウ酸スズ、ジブチルスズカルボキシレート、モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチルスズジイソオクタノエート、ジブイルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、塩化アルミニウム(III)、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化亜鉛および/または塩化亜鉛二水和物からなる群から選択されたものである。適切な場合、上述のルイス酸の混合物を使用することもまた可能である。
【0020】
上述のルイス酸の中で、塩化第一スズ二水和物が特に好ましい。
【0021】
ここで使用される成分(1)、(2)および(3)の量的割合は好ましくは、純物質を基準として、次の通り:10〜70重量%の量の成分(1)、10〜60重量%の量の成分(2)、および1〜60重量%の量の成分(3)であり、20〜60重量%の量の成分(1)、20〜55重量%の量の成分(2)、および10〜40重量%の量の成分(3)の使用が好ましい。30〜50重量%の量の成分(1)、25〜50重量%の量の成分(2)、および15〜30重量%の量の成分(3)を使用することが特に好ましい。混合物中の成分(1)〜(3)の全ての全体はここでは常に100%である。
【0022】
先に述べられたように、本発明の目的のためには、ルイス酸は、ポリマーに結合したルイス酸であることが好ましい。
【0023】
ルイス酸を結合させることができる好適なポリマーは、任意の所望のポリマーシステムである。
【0024】
使用される、ルイス酸が結合させられているポリマーの例は、それ故、アクリレートゴム(ACM)、エチレン−アクリレートゴム(AEM)、ポリウレタンゴム(PUR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、エピクロロヒドリンポリマー(CO)、クロロブタジエンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー(CSM)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン−メチルアクリレートコポリマー(EMA)、パーフルオロゴム(FFPM)、フルオロゴム(FPM)、フルオロメチルポリシロキサン(FVMQ)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリエチレン(PE−C)および/またはエチレン−酢酸ビニルポリマー(EVA/EVM)および/またはこれらのポリマーのいずれかの所望の混合物からなる群から選択されたものである。本発明の目的のためには、ブチルゴム(IIR)の使用が特に好ましい。
【0025】
これらのポリマーに結合したルイス酸は、当業者によく知られている方法により、よく知られている混合装置、例えば内部ミキサーでのポリマーとルイス酸との混合によって製造される。混合温度は好ましくは100℃より下である。
【0026】
本発明の目的のためには、上述のように、ルイス酸が塩化第一スズ二水和物であることが特に好ましい。ここで使用される物質は、特にブチル−ゴムに結合した塩化第一スズ二水和物である。
【0027】
本発明はまた、ブチル−ゴムに結合した塩化第一スズ二水和物を提供する。これの好ましい特徴は、それが、好ましくは10〜80%の塩化第一スズ二水和物を含む、ブチルに結合したマスターバッチの形態をとることである。
【0028】
本発明はまた、相当するブチル−ゴムに結合した塩化第一スズ二水和物の製造方法を提供する。
【0029】
これらのブチル−ゴムに結合した塩化第一スズ二水和物システム(マスターバッチ)は、塩化第一スズ二水和物と、Lanxess製のLanxess Butyl 301などの、不飽和のイソブチレン−イソプレンコポリマーとの混合によって製造することができる。イソブチレン−イソプレンコポリマーはここでは内部ミキサーに装入され、次に塩化第一スズ二水和物と混合される。混合プロセスはここでは40℃〜90℃(吐出温度)の温度で行われる。例えば酸化亜鉛、またはシリカ(キャリヤー)である、さらなる添加剤を、適切な場合、混合段階に添加することができる。
【0030】
本発明はまた特に、好ましくはマスターバッチの形態で使用されるブチル−ゴムに結合した塩化第一スズ二水和物の、加硫促進剤としての使用を提供する。
【0031】
化合物(1)、(2)および(3)の全ては、商業的に入手可能な製品である。
【0032】
例として、3−メチルチアゾリジン−2−チオン(1)は公知であり、商業的に入手することができる。3−メチルチアゾリジン−2−チオンは、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHから、Rhenocure(登録商標)CRVとしておよびRhenogran(登録商標)MTT−80としてマスターバッチの形態で市販されている。
【0033】
テトラベンジルチウラムジスルフィドは公知であり、商業的に入手することができる。テトラベンジルチウラムジスルフィドは、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHから、Rhenogran(登録商標)TBzTD 70としてマスターバッチの形態で市販されている。
【0034】
この混合物の個々の成分の添加方法に関して特定の制限は全くなく、添加方法は、当業者によって適切に選択され得る。
【0035】
第1実施形態では、本発明による混合物の各個々の成分は、それらの純粋な形態で加硫プロセスの前に加硫エラストマーに添加される。添加はここでは、各物質について別々にか、純粋物質の単一ブレンドの形態でかのどちらかで行われる。
【0036】
第2実施形態では、本発明による混合物の個々の成分は、ポリマーに結合した形態(マスターバッチ濃縮物)で使用することができる。添加はここでは、物質(1)、(2)および(3)のそれぞれについてのマスターバッチ濃縮物で個々にか、成分(1)〜(3)の全ての単一マスターバッチブレンドの形態でかのどちらかで行われる。
【0037】
別の可能性は、混合物の個々の成分を純粋な形態で、そして混合物の他の成分をマスターバッチの形態で使用することである。
【0038】
本発明の目的のためには、添加は好ましくは、少なくともある程度はマスターバッチの形態で行われ、ここでは、本発明によるルイス酸の成分がマスターバッチの形態で使用されることが特に好ましい。本発明による残りの成分−(1)3−メチルチアゾリジン−2−チオン、(2)チウラムジスルフィド誘導体またはチウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィド−は、本発明の目的のためには、粉末または顆粒の形態をとることができ、前記形態で、あるいは別個のまたは組み合わせたマスターバッチの形態で使用することができる。
【0039】
(1)のマスターバッチ濃縮物は、いずれの場合にもマスターバッチの総量を基準として、一般に20〜95重量%、特に40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは60〜80重量%の量の(1)3−メチルチアゾリジン−2−チオンを含む。本発明の別の実施形態では、本発明による混合物は、(2)、すなわち、マスターバッチ濃縮物の形態でのチウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドを含む。マスターバッチ中のチウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドの量は、いずれの場合にもマスターバッチの総量を基準として、一般に20〜95重量%、特に40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、特に好ましくは60〜80重量%である。
【0040】
本発明の別の実施形態では、本発明による混合物は、マスターバッチ濃縮物の形態でのルイス酸(3)を含む。マスターバッチ中のルイス酸の量は、いずれの場合にもマスターバッチの総量を基準として、一般に20〜95重量%、特に25〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは35〜60重量%である。
【0041】
成分(1)〜(3)の全てがマスターバッチ中に存在するという場合には、(1)〜(3)の量は、本発明による混合物のそれらに対応する。
【0042】
本発明の別の実施形態では、本発明による混合物はまた、酸化亜鉛、および/またはアクリレートゴム(ACM)、エチレン−アクリレートゴム(AEM)、ポリウレタンゴム(PUR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、エピクロロヒドリンポリマー(CO)、クロロブタジエンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー(CSM)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、パーフルオロゴム(FFPM)、フルオロゴム(FPM)、フルオロメチルポリシロキサン(FVMQ)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリエチレン(PE−C)および/またはエチレン−酢酸ビニルポリマー(EVA/EVM)および/またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のゴムを含む。
【0043】
本発明による混合物はさらに、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤、ならびにまた強化充填剤を含むことができる。強化充填剤は、例えば、カーボンブラックおよび/またはシリカであることができる。
【0044】
本発明は、上でより詳細に記載された混合物を提供し、これは、上述の通り、別個のマスターバッチの形態でかまたは純粋化学品の形態で使用することができる。
【0045】
本発明による混合物を製造するために、混合物の個々の成分は、当業者によく知られている方法によって互いに混合される。この方法は同様に本発明によって提供される。
【0046】
本発明はまた、加硫促進剤としての、上記の混合物の使用を提供する。
【0047】
本発明はまた、混合物の成分が純粋な形態でかまたは別個のマスターバッチ濃縮物の形態でかまたは純粋な形態と複数の成分を含むマスターバッチ濃縮物との組み合わせで、個々にまたは一緒に、加硫されるべきゴムに添加され、次に加硫される加硫物製造法を提供する。
【0048】
加硫プロセスは、例えば加熱金型での射出成形中に、当業者によく知られている方法によって行われる。
【0049】
本発明による混合物の添加は、個々の成分を用いてかまたは個々の成分(1)〜(3)の混合物の形態で行うことができる。個別の添加の場合に、個々の成分の添加方法はここでは、加硫プロセス中に個々の成分の同時加硫促進作用を確実にするようにすることである。
【0050】
本発明による加硫促進剤システムは、任意の所望の種類のハロゲン含有ゴムのために使用することができる。従って、本発明によるシステムは、エラストマー特性を有する、任意の所望の未架橋であるが架橋可能なポリマーのために使用することができる。特に、本発明に従って使用されるべき加硫ゴムは、タイヤまたは他のゴム用途向けにこれまで一般に使用されてきたゴムを含むことができる。
【0051】
本発明による混合物は、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、エピクロロヒドリンポリマー(CO)、クロロスルホン化ポリエチレンポリマー(CSM)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレンオキシド−エピクロロヒドリンゴム(ECO)、塩素化ポリエチレンポリマー(CM)および他のゴムまたはそれらの混合物からなる群から選択されるゴム用の加硫促進剤として特に好適である。
【0052】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる加硫物を提供する。
【0053】
本発明はそれ故また、加硫促進剤としての、
(1)第1成分として、3−メチルチアゾリジン−2−チオンと、
(2)チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドの群から選択される、第2成分と、
(3)第3成分として、好ましくはポリマーに結合した、少なくとも1種のルイス酸と
の使用であって、個々の上述の成分が物理的混合物で使用されず、代わりに加硫ゴムに個々に添加される使用を提供する。個々の成分の添加方法はここでは一般に、加硫プロセス中に個々の成分の同時作用を確実にするようにすることである。特に、個々の成分の添加は、立て続けに行われる。
【0054】
加硫プロセスのために使用される個々の成分の量は、好ましくは次の通りである:
第1成分、3−メチルチアゾリジン−2−チオンの使用量は、いずれの場合にも加硫ポリマーの100重量部を基準として、一般に0.10〜10.00重量部、特に0.25〜5.00重量部、好ましくは0.40〜3.50重量部、特に好ましくは0.60〜2.00重量部である。
【0055】
チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体およびメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドからなる群から選択される、第2成分の使用量は、いずれの場合にも加硫ポリマーの100重量部を基準として、一般に0.10〜10.00重量部、特に0.25〜7.50重量部、好ましくは0.50〜5.00重量部、特に好ましくは0.70〜3.00重量部である。
【0056】
第3成分、ルイス酸の使用量は、いずれの場合にも加硫ポリマーの100重量部を基準として、一般に0.10〜10.00重量部、特に0.50〜8.00重量部、好ましくは0.60〜6.00重量部、特に好ましくは0.70〜4.00重量部である。
【0057】
個々の成分がマスターバッチの形態で使用される場合、マスターバッチの必要量は、加硫ポリマーに関して個々の成分の上述の量を達成するような方法で、マスターバッチ中の個々の反応性成分の濃度に応じて決定される。
【0058】
それぞれゴムを基準として、
(1)0.10〜10.00重量部の量の第1成分、3−メチルチアゾリジン−2−チオンと;
(2)0.10〜10.00重量部の量の、チウラムジスルフィド誘導体、チウラムポリスルフィド誘導体および/またはメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドからなる群から選択される、第2成分と;
(3)0.10〜10.00重量部の量の第3成分、少なくとも1種のルイス酸と
を含むゴム含有混合物が特に好ましい。
【0059】
本発明はまた、ゴム、ゴム混合物、または本発明による添加剤混合物の使用によって製造されるゴム製品を提供する。本発明による加硫促進剤を使って製造される加硫物は、例として、車両タイヤ、ガスケット、任意の種類のドライブベルト、ケーブル被覆材料、ネオプレンスーツ、スプリングベローズ、ダストキャップ、および振動機械(vibromechanical)構成部品を製造するために好適である。
【0060】
以下の実施例は、本発明のさらなる説明を提供するが、何の限定効果も持たない。
【実施例】
【0061】
加硫プロセスは、下記の実施例A、B、CおよびDに従ってBaypren(登録商標)110に関して実施した。
【0062】
実施例Aの方法は、テトラメチルチウラムジスルフィド(Rhenogran(登録商標)TMTD−70)と組み合わせたエチレンチオ尿素(Rhenogran(登録商標)ETU−80)をベースとする従来の加硫促進剤システムを使用する(比較例)。
【0063】
実施例B(比較例)の方法は、成分(2)および(3)なしの、Rhenocure(登録商標)CRV(3−メチルチアゾリジン−2−チオン)をベースとする加硫促進剤システムを使用する。
【0064】
実施例C(比較例)の方法はまた、変形例Bに加えて、Rhenogran(登録商標)TBZTD−70(テトラベンジルチウラムジスルフィド)、成分(2)を使用し、最後に実施例Dの方法は、変形例Cに加えて、Rhenogran(登録商標)GE 2012、SnCl
2二水和物(3)のブチル−ゴムに結合した混合物を使用する(本発明による実施例)。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
本発明による混合物の決定的な利点は、上の表2および3から理解できるように、架橋速度がルイス酸の適切な添加によって個々に調節できることである。実施例Bは、最初からより高い粘度を示し、これはゴム混合物の加工にとって不利である。架橋はさらに顕著により遅く、必然的に製造でのサイクル時間を引き延ばす。実施例Cは、粘度レベルの観点からはより有利な挙動を示すが、同様に加硫の完了が過度に遅い。実施例Dは、実施例Aより加硫の早期段階で有利な挙動を示し、それ故、十分なレベルの製造プロセス信頼性を提供する。実施例Dについての170℃での架橋の時間曲線は、実施例Aについてのそれと同一であり、短いサイクル時間を可能にし、材料の熱応力を長引かせることを回避し、かつまた、製造プロセスでの毒性学的副作用を回避する。本発明は、最も有利な加工挙動および架橋挙動を示し、さらに、TMTDがTBzTDで置き換えられているので、いかなる種類の発がん性ニトロサミンも発生させない。それぞれの加硫システムの架橋速度は、この添加量のルイス酸を用いてプロセスの要件にマッチさせることができる。エチレンチオ尿素とテトラメチルチウラムジスルフィドとの組み合わせを使用することによって得られる顕著な最低粘度はまた、本発明による混合物を使用することによってここでまた実現される。
【0069】
本発明によるシステムは、さらに、発がん性もしくは遺伝毒性である物質または発がん性物質を放出する物質を含まない。