(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)合成樹脂が、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・シリコーン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる共重合体である請求項1記載の不燃吹付け断熱材。
(B)当該合成樹脂が、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・シリコーン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる共重合体である請求項3記載の不燃吹付け断熱材。
【背景技術】
【0002】
従来の産業・工業施設用、ビル建築・設備用、住宅用断熱材を大きく分類すると、予め工場などで製造されたボード状の断熱材と、現場で発泡もしくは吹付け等により施工される断熱材に分けられる。
ボード状断熱材としては、グラスウール、ロックウールなどの繊維系及びウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォームなどの発泡系が使用されている。
ボード状断熱材は、不燃性で断熱性に優れた性能を有するものもあり、扱いやすいが、複雑な形状に対して、施工現場において加工する必要があり、また加工時に発生する端材が廃棄物になり環境に好ましくない。さらに目地やインサルピン等の金物の露出による、ヒートブリッジによる熱損失が発生し、断熱性能を低下させる。
【0003】
一方、吹付け断熱材としては、吹付け硬質ウレタンフォーム、又は吹付けロックウールが一般的に広く使用されている。
吹付け断熱材は、現場施工であるため、断熱設計にあわせて自由に厚さの調整が可能である。また、複雑な形状に対しても断熱層を連続的に隙間なく形成することが出来るため、目地が発生することなく、インサルピン等の金物の露出がないため、ヒートブリッジによる熱損失が抑えられる。
さらに下地と密着した断熱層を形成できるため、界面に隙間がなく、また、ロックウール繊維系の吹付け断熱材については保水(湿)性が高いため、下地表面での結露が生じにくいなどの特徴がある。
【0004】
従前の吹付け硬質ウレタンフォームは、高い断熱性能(λ≒0.024W/m・K,ただし、λは熱伝導率)を持つ一方で、発泡剤にフロン又は代替フロンが使用されていたため、オゾン層破壊や地球温暖化に影響を与え、また、材質が可燃性であるため、溶接や溶断を行なう際の火花による建設中の火災が多く発生し、竣工後の火災においても被害の拡大を助長する大きな問題点を抱いていた。
【0005】
一方、吹付けロックウールは、耐火被覆として多く用いられているため、汎用性が高く、不燃性吹付け断熱材としてビル建築に用いられることが多い。
従来、不燃吹付けロックウール断熱材の結合材として、セメント等の無機質結合材が用いられてきており、無機質結合材では、不燃性の確保が容易であり、耐久性、耐候性に優れている。
しかし、セメント等の無機質結合材を用いた吹付けロックウール断熱材は、有機系の発泡断熱材に比べると、見かけ密度が高く(吹付けロックウールの場合:見かけ密度=0.28g/cm
3以上)、断熱性もフロン使用ウレタンフォームの1/2以下(λ≒0.05W/m・K程度)である。また、セメント等の無機質結合材を用いると、水を大量に使い乾燥が遅いために、適用部位や対象が限定され、時には、かびや部材のそり等の問題を誘発するおそれがある。さらに、無機質結合材では弾力性が低く、外力(衝撃や振動等)に対して損傷しやすく脆い、初期の粘着性が低いため下地との付着が十分に得られ難いなどの問題があり、十分な結合(接着)を得るためには、結合材の割合を増やす必要があるが、熱架橋となる部分が多くなるため、低熱伝導率を得られ難いという課題があった。
また、吹付けロックウール層の表面にセメントスラリー層を設け、その上層に石膏ボード等の貼り付け性を向上させる技術(特許文献1)、吹付けロックウール層に、下塗り材として合成樹脂エマルションを塗布し、その上層に軽量モルタルを施工する技術(特許文献2)も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの吹付けロックウール断熱材はいずれも断熱性が十分でなく、弾力性、初期粘着性が低いなどの問題は解決できていない。
また、吹付けロックウール断熱材の結合材として合成樹脂の使用が考えられるが、合成樹脂自体が可燃性である場合には断熱材を不燃性とすることは困難であった。
従って、本発明の課題は、優れた断熱性と不燃性とを両立できるロックウール系不燃吹付け断熱材及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、吹付けロックウール断熱材の結合材に合成樹脂を使用し、その不燃性と断熱性との両立を図るべく種々検討したところ、合成樹脂として特定の共重合体エマルションを採用し、断熱材中の合成樹脂量と見かけ密度を一定の範囲に調整することにより、優れた断熱性を有するとともに不燃性を有し、弾力性にも優れた吹付け断熱材が得られることを見出した。また、当該断熱材層の表面に、セメント、無機質軽量骨材及び合成樹脂を有する表面仕上げ層を形成すれば、優れた耐衝撃性、表面特性を有する不燃断熱材が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に係るものである。
[1]ロックウールを合成樹脂で結合してなる不燃吹付け断熱材であって、(a)当該合成樹脂が、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる2種以上の共重合体であり、(b)当該合成樹脂の含有量が、断熱材中固形分換算で1.5〜8質量%であり、(c)断熱材の見かけ密度が0.12〜0.30g/cm
3である不燃吹付け断熱材。
【0010】
[2]上記[1]の不燃吹付け断熱材を基材層とし、その表面に次の(A)〜(C)を有する表面仕上げ層が形成されていることを特徴とする不燃吹付け断熱材。
(A)表面仕上げ層の原料比率が、セメント20〜70質量%、無機質軽量骨材29〜73質量%、及び合成樹脂を固形分換算で1〜7質量%であり、
(B)当該合成樹脂が、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる2種以上の共重合体であり、
(C)表面仕上げ層の吹付け量が1.2kg/m
2以下。
【0011】
[3]上記[1]の不燃吹付け断熱材の施工方法であって、合成樹脂エマルションとロックウールとを別々に吹付けガンに送り、吹付けガンで両者を混合するとともに、この混合物中の固形分比率を40〜98質量%とし、吹付けガンから吐出させ、被吹付け物に吹付けることを特徴とする不燃吹付け断熱材の施工方法。
【0012】
[4]上記[2]の不燃吹付け断熱材の施工方法であって、上記[2]の表面仕上げ層用材料を混合して固形分比率を10〜35質量%に調整し、調整した材料を吹付けガンに送り、吹付け量が1.2kg/m
2以下となるように、上記[3]の施工法で形成された不燃吹付け断熱材の表面に吹付け施工することを特徴とする吹付け断熱材の施工方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のロックウール系吹付け断熱材は、合成樹脂を結合材としているにもかかわらず、不燃性である。合成樹脂を採用するため、結合材として接着性が高く、少量での吹付け施工が可能である。また、微細なミストでの吹付けができるため、繊維同士が点で結合され、その結果熱架橋となる部分が少なく低熱伝導率を得ることができるものと考えられる。
さらに、弾力性のある粘り強い断熱層が形成でき、外力(衝撃や振動等)に対しても無機質結合材を用いた吹付け断熱材より優位である。
本発明においては、合成樹脂にエマルションを使用しており、溶剤型ではないため、引火の恐れが無く安全であり、また、吹付け施工後に清掃を怠ると固結するため、入念な機材の手入が必要とされる水硬性無機質結合材と比較して、エマルションの場合は、清掃が簡易である。連続的に施工する場合、毎日の清掃を省略することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の不燃吹付け断熱材は、ロックウールを合成樹脂で結合してなるものである。ロックウールは、吹付け用に用いられるものであればよく、ロックウール粒状綿が用いられる。ロックウールを用いることにより、耐熱性が高く、発熱性試験において有害な変形等が生じない断熱材が得られる。好ましいロックウールの繊維の平均太さは直径1〜7μmであり、さらに好ましい繊維の平均太さは直径3〜7μmである。また、用いるロックウール粒状綿は、密度が40〜150kg/m
3のものが好ましく、熱伝導率が0.044W/m・K以下であることが好ましい。
なお、ロックウール粒状綿の密度、熱伝導率および繊維の平均太さは、それぞれJIS A 9504「人造鉱物繊維保温材」6.4寸法及び密度、6.5熱伝導率および6.7繊維の平均太さに規定される方法により測定できる。
断熱材中のロックウールの含有量は固形分換算で92〜98.5質量%が好ましく、特に94〜96質量%が好ましい。ここで、固形分換算の質量%とは、断熱材中の各固形分の合計に対する質量%を意味する。
【0015】
本発明に用いられる(a)合成樹脂は、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる2種以上の共重合体である。これらの共重合体を使用することにより、断熱材に不燃性を付与できる。ここで、共重合体は、前記モノマーの2種又は3種の共重合体であるのが好ましい。さらに、(a)合成樹脂は、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・シリコーン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる共重合体であるのが好ましく、特にスチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体であるのが、耐候性及び耐水性の点から好ましい。前記モノマーの誘導体としては、合成樹脂がエマルション又は再乳化形粉末樹脂として入手できるものであればよい。
【0016】
(b)合成樹脂の含有量は、断熱材中に固形分換算で1.5〜8質量%であり、より好ましくは4〜6質量%である。合成樹脂の含有量が1.5質量%未満では、ロックウール同士の結合力が低下し、断熱材の保形性及び弾力性が低下する。一方、合成樹脂の含有量が8質量%を超えると、総発熱量の増加により不燃性が得られない。ここで、固形分換算の質量%とは、断熱材中の各固形分の合計に対する質量%を意味する。
なお、本発明において不燃性であるとする判断基準は、JIS A 5430付属書JAの発熱性試験による総発熱量が8.0MJ/m
2以下である。
【0017】
(c)断熱材の見かけ密度(かさ密度)は、0.12〜0.30g/cm
3であり、より好ましくは0.14〜0.20g/cm
3である。見かけ密度が0.12g/cm
3未満では、施工面の付着力(15g/cm
2以上)、断熱材の保形性及び弾力性が低下する。一方、見かけ密度が0.30g/cm
3を超えると、熱伝導率が上昇し、断熱性が低下する。また、総発熱量の増加により不燃性が得られない。
なお、見かけ密度は、JIS A 1476「建築材料の含水率測定方法」8.4項に規定される乾燥密度の測定法により測定できる。
【0018】
本発明の断熱材の厚さは、施工対象によって異なるが、断熱性能、施工性等から、5〜200mmが好ましく、10〜150mmがより好ましい。
【0019】
本発明の断熱材には、その表面に表面仕上げ層が形成されていてもよい。すなわち、前記の不燃吹付け断熱材を基材層とし、その表面に次の(A)〜(C)を有する表面仕上げ層が形成されている不燃吹付け断熱材としてもよい。
(A)表面仕上げ層の原料比率が、セメント20〜70質量%、無機質軽量骨材29〜73質量%、及び合成樹脂を固形分換算で1〜7質量%であり、
(B)当該合成樹脂が、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる2種以上の共重合体であり、
(C)表面仕上げ層の吹付け量が1.2kg/m
2以下。
【0020】
前記断熱材からなる基材層の表面に表面仕上げ層を設けることにより、あらわし仕様における意匠性が向上し、外部からの衝撃による損傷を防ぐことができる。
本発明においては、断熱材への衝撃による損傷の防止及び、断熱材と同様に粘り強さを付与し、かつ前記の不燃吹付け断熱材と組合わせた場合においても、不燃性の性能を有する表面仕上げ層とするため、(A)〜(C)の構成とした。
【0021】
表面仕上げ層には、セメントが用いられ、その使用量は20〜70質量%が好ましく、より好ましくは31〜47質量%である。ここで、質量%とは、表面仕上げ層中の各固形分の合計に対する質量%を意味する。
表面仕上げ層にセメントを用いることで、吹付け初期の表面硬さを確保でき、外部からの衝撃による損傷を防ぐことができる。好ましくは、白色セメントを用いることにより、原料を白色系に統一でき、意匠性を向上させることができる。セメントの種類としては、白色ポルトランドセメントや普通ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント等が使用できる。
セメントが20質量%未満では、仕上げ層の硬化が不十分となり、十分な強度発現が得られない。一方、セメントが70質量%を超えると、仕上げ層が重くなり、断熱材とのはく離等が生じるおそれがある。また、セメント量が多すぎると、セメントの硬化や乾燥による収縮により、仕上げ層に亀裂が生じるおそれがある。
【0022】
表面仕上げ層には、無機質軽量骨材が用いられる。当該無機質軽量骨材としては、パーライトやシラスバルーンなどのガラス質発泡体、フライアッシュ、珪藻土、シリカパウダー及びシリカフュームなどの非晶質粉末、けい酸カルシウム水和物(トバモライト、ゾノトライト等)の多孔性凝集体等が挙げられるが、このうちガラス質発泡体が好ましく、特にパーライトが好ましい。
無機質軽量骨材の形状としては、粒径が0.5mmを上回らないことが好ましく、さらに45μm通過率が95%以上の比較的細かい粒子のものが好ましい。ここで、「粒径が0.5mmを上回らない」とはJIS A1102[骨材のふるい分け試験方法]に準じて公称目開き500μmのふるいを用いてふるい分け試験をおこない当該ふるいを通過する質量分率(通過率)が100%であることを云い、「45μm通過率が95%以上」とは公称目開き45μmのふるいを用いて前記同様にふるい分け試験をおこない当該ふるいを通過する質量分率(通過率)が95%以上であることを云う。このような細かい粒子を用いることにより、表面仕上げ層の吹付けにおいて、ポーラスな断熱材表面に対し固形分のノリがよく、仕上げ層を容易に形成することができる。
さらに、単位容積質量(JIS A 5007 パーライトに規定される測定方法による)が0.2kg/L〜0.35kg/Lのパーライト等の無機質軽量骨材粉末を使用することで表面仕上げ層の見かけ密度を低減することができ、表面仕上げ層と断熱材のはく離を抑えることができる。
【0023】
無機質軽量骨材は、表面仕上げ層中に29〜73質量%用いるのが好ましく、特に50〜65質量%用いるのが好ましい。無機質軽量骨材が29質量%未満では、表面仕上げ層の見かけ密度が高くなり、表面仕上げ層と断熱材のはく離を生じ易くなる。一方、無機質軽量骨材が73質量%を超えると、表面仕上げ層の強度が十分に得られず、衝撃性能が低下する。ここで、質量%とは、表面仕上げ層中の各固形分の合計に対する質量%を意味する。
【0024】
表面仕上げ層に用いられる合成樹脂は、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる2種以上の共重合体である。これらの共重合体を使用することにより、表面仕上げ層に粘り強さを付与できる。ここで、共重合体は、前記モノマーの2種又は3種の共重合体であるのが好ましい。さらに、合成樹脂は、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・シリコーン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる共重合体であるのが好ましく、特にアクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体であるのが、耐候性及び耐水性の点から好ましい。また前記モノマーの誘導体としては、合成樹脂がエマルション又は再乳化形粉末樹脂として入手できるものであればよい。
【0025】
合成樹脂は、表面仕上げ層中に固形分換算で1〜7質量%含有するのが好ましく、特に2〜5質量%含有するのが好ましい。ここで、質量%とは、表面仕上げ層中の各固形分の合計に対する質量%を意味する。合成樹脂(固形分)が1質量%未満では、無機質軽量骨材同士の結合力が低下し、粘り強さが低下する。一方、合成樹脂(固形分)が7質量%を超えると、総発熱量の増加により不燃性が得られない。
【0026】
また表面仕上げ層の吹付け量は、意匠性や脱落防止の点から、1.2kg/m
2以下とするのが好ましく、さらに0.1〜1.2kg/m
2が好ましく、特に0.3〜0.8kg/m
2が好ましい。吹付け量が少なすぎると意匠性が十分でなく、多すぎると、吹付け時に仕上げ層スラリーが定着せず流れ出し、脱落の可能性が高くなる。
【0027】
本発明の不燃吹付け断熱材は、合成樹脂エマルションとロックウールとを別々に吹付けガンに送り、吹付けガンで両者を混合するとともに、この混合物中の固形分比率を40〜98質量%とし、吹付けガンから吐出させ、被吹付け物に吹付けることにより施工することができる。
【0028】
本発明においては、前記合成樹脂は、共重合体エマルションを使用するのが、施工時の火災の危険性防止、取り扱い性、他の構成材料との親和性、分散性の点で好ましい。前記合成樹脂はエマルションの形態で市販されており、入手も容易である。
【0029】
本発明の施工方法においては、合成樹脂エマルションとロックウールとを別々に吹付けガンに送り、吹付けガンで両者を混合して吹付けを行う。このようにすることにより、両者が均一に混合されるとともに、均一に噴射することができる。この混合物中の固形分比率は、40〜98質量%とするのが好ましく、さらに48〜94質量%とするのがより好ましい。固形分比率が98質量%を超えると、結合に必要な合成樹脂をロックウールに十分搦めることができなくなり、断熱材の保形性及び弾力性が低下する。一方、固形分比率が40質量%未満では、吹付け後の断熱材の含水が高くなり乾燥性が低下し、吹付け初期の十分な付着力が得られにくくなる。
なお、吹付け断熱材の施工時における固形分比率は次式より求めた。
【0031】
吹付けガンのエマルション噴霧ノズルチップは、小流量に合わせた、微細ミスト噴霧用を用いるのが好ましい。噴霧に際しては、吹付けガン内に圧縮空気を導入して、エマルションと混合して吹付けることもできる。圧縮空気を使うことにより、吹付けガンからの吐出圧が低い場合でも、エマルションを微細なミストとして吹付けることが可能である。
【0032】
混合物を吹付けガンから吐出させ、被吹付け物に吹付けるが、その吹付け厚さは所定の断熱材の厚さよりも5mm〜10mm厚く吹付けし、コテ押さえ等を用いて平滑化するとともに断熱材としての所定の厚さにするのが好ましい。厚めに吹付けて、木ゴテなどのコテ押さえにより平滑にすることで、意匠性が向上し、安定した品質とすることができる。
【0033】
本発明の断熱材を吹付ける対象部位は、壁、床、屋根、柱、はり等であり、被吹付け物としては、モルタル、コンクリート、ALC、押出成形セメント板、鋼板(素地鋼板、メッキ鋼板、塗装鋼板)ステンレス鋼板、アルミニウム、繊維強化セメント板、発泡ウレタン等の可燃性断熱材等が挙げられる。
【0034】
本発明の表面仕上げ層を有する断熱材は、前記の表面仕上げ層用材料を混合して固形分比率を10〜35質量%に調整し、調整した材料を吹付けガンに送り、吹付け量が1.2kg/m
2以下となるように、前記の施工法で形成された不燃吹付け断熱材の表面に吹付けることにより施工することができる。
【0035】
表面仕上げ層に用いる合成樹脂も、前記の断熱材層と同様にエマルションを用いるのが好ましい。
【0036】
表面仕上げ層用材料は固形分比率を10〜35質量%、特に15〜30質量%に調整するのが好ましい。固形分比率が10質量%未満では、吹付け後の表面仕上げ層の含水が高くなり乾燥性が低下するため、吹付け初期の十分な付着力が得られ難くなり、脱落の可能性が高くなる。一方、固形分比率が35質量%を超えると、表面仕上げ層スラリーの流動性が低下し圧送し難くなくなるため施工性が低下する。また、断熱材との密着性が低下する。
なお、表面仕上げ層の施工時における固形分比率は次式より求めた。
【0038】
表面仕上げ層用吹付けガンは、無機質軽量骨材として、0.5mm程度の粉末も用いるため、少々粒子の粗いものも詰まらせず、ムラなく吹付けられるよう、スラリーと圧縮空気を手元で混合して吹付けるようにするのが好ましい。圧縮空気を用いることで、詰まりがなく、ムラなく均質に吹付けることができる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜7及び比較例1〜5
表1に記載の原料を用い、断熱材層を形成した。すなわち、合成樹脂エマルションとロックウールとを別々に吹付けガンに送り、吹付けガンで両者を混合し、混合物中の固形分比率を67.9〜96.4質量%とし、吹付けガンから吐出させ、繊維強化セメント板に吹付けることにより、断熱材層を形成した。得られた断熱材層の熱伝導率、不燃性(総発熱量)を測定した。施工状態も観察した。結果を表1に示す。表1中の原料比率は、断熱材中における各固形分の質量比率を意味する。
【0041】
(合成樹脂エマルション)
AS:アクリロニトリル・スチレン共重合体エマルション
ニカゾールRX-3002L(日本カーバイト工業社製、商品名)
ENA・VC:エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体エマルション
スミエリート1320(住化ケムテックス社製、商品名)
α:酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体エマルション
太平洋スプレーボンド(太平洋マテリアル社製、商品名)
EVA:スチレン・酢酸ビニル共重合体エマルション
リカボンドS-400(中央理化工業社製、商品名)
【0042】
(ロックウール)
太平洋ミネラルファイバー粒状綿(太平洋マテリアル社製、商品名)国土交通大臣認定 NM−8600繊維の平均太さが4〜6μmのものを用いた。また、用いたロックウール(粒状綿)は、密度108kg/m
3且つ熱伝導率0.044W/m・Kのものを用いた。
【0043】
(セメント)
白色ポルトランドセメント:ホワイトセメント(太平洋セメント社製、商品名)
【0044】
(無機質軽量骨材)
パーライト:目開き45μm篩通過95%以上、単位容積質量が0.2kg/L〜0.35kg/L、(太平洋パーライト社製)
【0045】
(見かけ密度の測定法)
JIS A 1476 建築材料の含水率測定方法 8.4項に規定される乾燥密度の測定法
【0046】
(熱伝導率の測定法)
JIS A 1412−2 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)
【0047】
(弾力性の判定方法)
試験方法は0.05kgの鉄鋼製の球形錘を断熱層表面から0.3m離れた高さから自然落下させ、断熱材表面のへこみ具合を目視により判定評価した。
弾力性:○(断熱層表面が凹まない、若しくは、凹むが元に戻る)、×(断熱層表面が凹んだまま元に戻らない)
【0048】
(総発熱量の測定法)
JIS A 5430 付属書JAの発熱性試験、総発熱量8.0MJ/m
2以下を不燃性と判定した。
【0049】
(施工状況)
吹付け施工性及び施工後の形状を目視にて評価した。
施工状況:○(問題なく施工出来る)、×(施工不良・出来ない)
【0050】
【表1】
【0051】
表1より、本発明の構成(a)、(b)及び(c)を採用することにより、優れた断熱性と不燃性を両立できることがわかる。
【0052】
実施例8〜12及び比較例6〜10
表2に記載の原料を用い、断熱材層を実施例1〜7と同様にして形成し、その表面に、表面仕上げ層を形成した。得られた断熱材層及び表面仕上げ層の評価結果を表2に示す。表2中の断熱材(基材層)欄における原料比率は、断熱材中における各固形分の質量比率を意味し、表2中の表面仕上げ層欄における原料比率は、表面仕上げ層中における各固形分の質量比率を意味する。
【0053】
【表2】
【0054】
表2より、本発明の構成(A)、(B)及び(C)を採用することにより、優れた断熱性と不燃性を有する表面仕上げされた断熱材が得られることがわかる。
【0055】
実施例13〜18及び比較例11〜14
表1中の実施例1〜7及び表2中の実施例8〜12の断熱材及び表面仕上げ層材料を用いて、固形分比率を変更する以外は、前記実施例と同様にして施工した。その施工状況の評価結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3より断熱材及び表面仕上げ層材料の固形分比率を調整することにより、良好な施工性が得られることがわかる。