(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料噴射量を調整する電子ガバナ機構と、低温時に燃料噴射時期を進角する低温時進角機構と、エンジン本体の冷却水の水温を検知する温度センサと、前記電子ガバナ機構・低温時進角機構・温度センサに接続されるコントローラとを備え、該コントローラにより、前記水温に応じて前記低温時進角機構を起動または停止するエンジンにおいて、
前記コントローラは、前記低温時進角機構を起動させる基準値となる起動基準水温と、前記低温時進角機構を停止させる基準値となる停止基準水温とを別々に設定可能な制御構成を備え、
前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温が所定の起動基準水温以下で低温時進角機構を起動させると共に、エンジン始動完了後には、前記水温が所定の停止基準水温以上に上昇しているという第一条件と、エンジン始動時に低温時進角機構が起動してから有効に作動している有効時間が、所定の停止基準時間以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合に、前記低温時進角機構を停止させ、
前記停止基準水温は、エンジン始動時の水温が低いほど高温側に移行させる
ことを特徴とするエンジン。
前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温が所定の起動基準水温以下で低温時進角機構を起動させると共に、該低温時進角機構が起動してから有効に作動している有効時間が、所定の停止基準時間以上経過していると、前記低温時進角機構を無条件に停止させることを特徴とする請求項2記載のエンジン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジン始動時にCSDを起動する際は、冷却水の水温はエンジン全体の温度と略一致しているのに対し、CSDの作動を途中で停止する際は、冷却水の水温はエンジンの温度に追従しながら上昇するため、冷却水の水温とエンジンの温度との間にはタイムラグが発生する。このため、前記技術のように、CSDの起動と停止の切り替え基準となる基準水温を同一の水温に設定していると、次のような問題が生じた。
【0006】
すなわち、前記温度センサに従来よりも熱容量が小さくて精度・応答性に優れたものを使用すると、水温が上昇してから温度センサが実際に水温を検知するまでの時間が短いため、基準水温に到達したことを前記温度センサが即座に検知し、エンジンの温度は基準水温に到達していないにもかかわらずCSDが直ぐに停止される。これにより、エンジン始動時にCSDが起動してから有効に作動している時間(以下、「有効時間」とする)が短くなり、エンジンの暖機が十分に行われないうちにCSDが停止し、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上が図れない。
【0007】
更に、エンジン始動が完了した後、エンジンの回転数が上昇して冷却水の循環速度が増加すると、水温の上昇速度も速くなり、この場合も、エンジンの温度は基準水温に到達していないにもかかわらずCSDが直ぐに停止される。これにより、CSDの有効時間が不足して、エンジンの暖機が十分に行われないうちにCSDが停止し、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上が図れない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、燃料噴射量を調整する電子ガバナ機構と、低温時に燃料噴射時期を進角する低温時進角機構と、エンジン本体の冷却水の水温を検知する温度センサと、前記電子ガバナ機構・低温時進角機構・温度センサに接続されるコントローラとを備え、該コントローラにより、前記水温に応じて前記低温時進角機構を起動または停止するエンジンにおいて、前記コントローラは、前記低温時進角機構を起動させる基準値となる起動基準水温と、前記低温時進角機構を停止させる基準値となる停止基準水温とを別々に設定可能な制御構成を備え、
前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温が所定の起動基準水温以下で低温時進角機構を起動させると共に、エンジン始動完了後には、前記水温が所定の停止基準水温以上に上昇しているという第一条件と、エンジン始動時に低温時進角機構が起動してから有効に作動している有効時間が、所定の停止基準時間以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合に、前記低温時進角機構を停止させ、前記停止基準水温は、エンジン始動時の水温が低いほど高温側に移行させるものである。
請求項2においては、
請求項1記載のエンジンにおいて、前記制御構成において、前記停止基準時間は、エンジン始動時の水温が低いほど長時間側に移行させるものである。
請求項3においては、
請求項2記載のエンジンにおいて、前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温が所定の起動基準水温以下で低温時進角機構を起動させると共に、該低温時進角機構が起動してから有効に作動している有効時間が、所定の停止基準時間以上経過していると、前記低温時進角機構を無条件に停止させるものである。
請求項4においては、前記制御構成において、前記停止基準水温は、エンジンの回転数が高いほど高温側に移行させるものである。
請求項5においては、前記制御構成において、前記停止基準時間は、エンジンの回転数が高いほど長時間側に移行させるものである。
請求項6においては、前記制御構成において、エンジン始動完了後には、前記水温の時間変化率が所定の時間変化率より小さい場合は、前記有効時間が所定の停止基準時間以上経過すると、前記低温時進角機構を停止させるものである。
請求項7においては、前記制御構成において、前記停止基準水温は、エンジンの再始動時には低温側に移行させるものである。
請求項8においては、前記制御構成において、前記停止基準時間は、エンジンの再始動時には短時間側に移行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
請求項1により、停止基準水温を起動基準水温よりも十分高温側に設定することができ、たとえ、従来よりも精度・応答性に優れた温度センサを使用して水温検知までの時間が短くなったり、エンジン始動完了後に冷却水の循環速度が増加して水温の上昇速度が速くなっても、CSDの有効時間が十分に確保される。これにより、水温センサや運転パターン等が異なっても、エンジンの暖機が十分に行われてからCSDを停止することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
また、冷却水の水温と、CSDの有効時間という二つのパラメータに基づいてCSD停止の要否を判断することにより、CSDの停止タイミングの精度を高めることができ、エンジンが十分に暖機しているにもかかわらずCSDが作動状態にあるために最高燃焼温度が高くなってNOXが増加するのを、確実に防止することができる。
また、エンジン始動時の水温が低くてエンジンの暖機に時間がかかる場合でも、CSDの停止基準水温を高くして、CSDの有効時間を長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
請求項2により、エンジン始動時の水温が低くてエンジンの暖機に時間がかかる場合でも、CSDの停止基準時間を長くして、CSDの有効時間を長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
請求項3により、前記停止基準時間を最高燃焼温度が著しく高くならない程度に長めに設定することで、エンジンの暖機を十分に行いつつ、NOXが著しく増加する前にCSDを確実に停止することができる。
請求項4により、エンジンの回転数が高くて冷却水の循環速度が増加し、水温の上昇速度の方が速くなって、検知された水温ほどはエンジンの暖機が進んでいない場合でも、CSDの停止基準水温を高くして、CSDの有効時間を長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
請求項5により、エンジンの回転数が高くて冷却水の循環速度が増加し、水温の上昇速度の方が速くなって、検知された水温ほどはエンジンの暖機が進んでいない場合でも、CSDの停止基準時間を長くして、CSDの有効時間を長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
請求項6により、冷却水の循環や温度センサのトラブルなどが原因で水温の上昇速度が小さい場合でも、有効時間のみに基づいてCSD停止の要否を迅速に判断することができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。
請求項7により、前回エンジンが停止してからの経過時間が短くて、残熱のせいでエンジンの暖機に時間がかからないため、CSDの停止基準水温を低くし、CSDの有効時間を短くすることができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。
請求項8により、前回エンジンが停止してからの経過時間が短くて、残熱のせいでエンジンの暖機に時間がかからないため、CSDの停止基準時間を短くし、CSDの有効時間を短くすることができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明に関わるエンジン51の全体構成について、
図1、
図2により説明する。該エンジン51は、ディーゼルエンジン等のエンジン本体52と、該エンジン本体52の側面に設けた燃料噴射ポンプ1と、セルモータを有するスタータ58等から構成される。
【0012】
このうちの燃料噴射ポンプ1には、電子ガバナ機構7とCSD30が設けられ、電子ガバナ機構7のラックアクチュエータ40と、前記CSD30のサブポート36の開閉を行うアクチュエータ16を有する電磁バルブ15とは、いずれもエンジン制御装置であるコントローラ53に接続されており、該コントローラ53からの信号により、前記ラックアクチュエータ40と電磁バルブ15とが動作できるようにしている。
【0013】
前記エンジン本体52において、該エンジン本体52を冷却する冷却水が流れる図示せぬウオータージャケットには温度センサ54が付設され、該温度センサ54には前記コントローラ53が接続されており、検知された水温信号が、エンジン本体52の冷却水の水温としてコントローラ53に入力される。尚、本実施例ではウオータージャケットに温度センサ54を付設する構成としたが、これに限定されず、ラジエータに温度センサ54を付設する構成としてもよい。
【0014】
更に、前記エンジン本体52のクランク軸55近傍には、該クランク軸55の回転数Nを検知する回転数センサ56が配設され、該回転数センサ56と前記コントローラ53が接続されており、検知されたクランク軸55の回転数が、エンジン51の回転数Nとしてコントローラ53に入力される。
【0015】
該コントローラ53には、キースイッチ57と前記スタータ58が接続されており、このうちのキースイッチ57を作業者が操作してONにすると、コントローラ53に始動信号が送信される。すると、該コントローラ53は、図示せぬバッテリーから前記スタータ58に電力を供給し、その結果、該スタータ58が回転駆動され、前記エンジン本体52が始動される。
【0016】
次に、前記燃料噴射ポンプ1の構成について、
図1、
図2により説明する。なお、
図2の矢印Fで示す方向を前方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等は、この前方向を基準とする。
【0017】
該燃料噴射ポンプ1においては、ポンプハウジング45とハイドロリックヘッド46が上下に接合され、このうちのポンプハウジング45の後側面に、前記電子ガバナ機構7のケーシング8が付設され、該ケーシング8の後側より、前記ラックアクチュエータ40が挿嵌固定されている。
【0018】
該ラックアクチュエータ40では、摺動軸3の先端部がリンクレバー23の中途部に枢結され、該リンクレバー23の下部は、基部ピン24を中心に回動自在に配置されている。そして、リンクレバー23の上端部には、コントロールレバー6の後端部が枢結され、該コントロールレバー6の前端部には、調量ラック50が固定され、該調量ラック50は、前記ポンプハウジング45に前後摺動可能に支持されると共に、プランジャー32を外嵌したプランジャスリーブの外周面に形成された図示せぬ歯車と噛合される。
【0019】
このような構成において、前記コントローラ53からの信号により、ラックアクチュエータ40が駆動して前記摺動軸3が前後方向に進退すると、前記リンクレバー23が基部ピン24を中心として前後回動し、コントロールレバー6を介して調量ラック50が前後摺動され、前記プランジャー32が回動する。すると、該プランジャー32の外周面に設けたプランジャーリード32aと、後述するメインポート39との間隔が変更され、燃料噴射ポンプ1による燃料噴射量の増減制御が行われる。
【0020】
また、前記ハイドロリックヘッド46には、プランジャーバレル33が挿嵌され、該プランジャーバレル33内に、前記プランジャー32が上下摺動自在に内装される。更に、該プランジャー32の下方には、上下摺動自在の下部バネ受け12がバネを介して配置され、該下部バネ受け12の下端部にはローラ状のタペット11が回転可能に軸支される。
【0021】
該タペット11の下面は、カム4に当接され、該カム4は、前記ポンプハウジング45に回転可能に軸支されたポンプカム軸2の中途部に形成されており、該ポンプカム軸2は、前記エンジン本体52に連動して回転駆動される。これにより、ポンプカム軸2が回転すると、タペット11を介して前記下部バネ受け12が上下に移動し、バネを介して前記プランジャー32も上下動する。
【0022】
ここで、プランジャーバレル33には、前記メインポート39が設けられ、該メインポート39に、図示せぬ燃料供給部から圧送されてきた燃料が供給される。そして、前述のようにしてプランジャー32が下降し、上下動範囲の下端部である下死点に達すると、プランジャー32の上方に形成される燃料圧室17と前記メインポート39とが連通し、燃料圧室17内に燃料が導入される。
【0023】
逆に、プランジャー32が上昇すると、プランジャー32の外壁によってメインポート39と燃料圧室17との間の連通口が遮断され、その後、燃料圧室17内の燃料は、プランジャー32の上昇に伴って、プランジャーバレル33を貫通する分配ポート49から、分配軸9を介してデリベリバルブ18へ圧送される。すると、該デリベリバルブ18から、前記エンジン本体52のシリンダヘッド部に設けられる燃料噴射弁等を介して、エンジン本体52のシリンダ内への燃料の噴射が開始される。
【0024】
そして、プランジャー32が更に上昇すると、前記プランジャーリード32aとメインポート39とが連通されると共に、プランジャーバレル33内とメインポート39とが連通され、プランジャーバレル33内の燃料がメインポート39の燃料供給部側へ逆流する。すると、エンジン本体52のシリンダ内への燃料噴射が終了する。
【0025】
前記ラックアクチュエータ40により調量ラック50を所定位置に設定した上で、以上のプロセスを繰り返すことにより、燃料噴射ポンプ1からエンジン本体52に所定量の燃料を圧送し、図示せぬ燃料噴射ノズルから所定の燃料噴射量を噴射することができる。
【0026】
また、更に、前記プランジャーバレル33の前側部に、本発明に関わるCSD30が設けられている。該CSD30においては、前記ハイドロリックヘッド46にピストンバレル34が挿嵌されると共に、該ピストンバレル34のピストン摺動部内には、CSD30用のピストン35が上下摺動自在に内装されている。
【0027】
ここで、前記プランジャー32を挟んでメインポート39の反対側には、前記サブポート36が設けられており、該サブポート36は、前記ピストン35の上下摺動によって開閉可能に設けられると共に、前記メインポート39よりも小径に構成されている。
【0028】
そして、低温始動時には、前述のように、青白煙発生防止とエンジン始動性向上を図るべく早期の燃料噴射時期が要求されており、前記CSD30を作動させて燃料噴射時期の進角制御が行われる。
【0029】
すなわち、常温始動時においては、CSD30は停止されたままで未作動状態にあり、前記サブポート36とピストンバレル34内とが通路37を介して連通されていることから、サブポート36と、前記ハイドロリックヘッド46に形成された低圧室47とが連通状態となる。これにより、前記プランジャー32によって圧縮される燃料の一部を、前記サブポート36から排出して前記低圧室47にオーバーフローさせることができ、燃料圧室17からの燃料圧送の開始時期が遅れて遅角制御が行われる。
【0030】
一方、低温始動時においては、前記電磁バルブ15のアクチュエータ16を作動させることによりCSD30が起動し、前記ピストン35が上下摺動して、ピストンバレル34と低圧室47との間の燃料の経路が遮断される。これにより、前記プランジャー32が上昇してメインポート39と燃料圧室17との間の連通口が遮断されると同時に、燃料圧室17から分配軸9への燃料圧送が開始されることとなり、前述した常温時に比べて燃料圧室17からの燃料圧送の開始時期が早まり、本発明に関わる低温時進角制御が行われる。
【0031】
次に、このような低温時進角制御でCSD30の起動または停止を行う場合の基準値について、
図1乃至
図3により説明する。前記CSD30の起動と停止は、前記温度センサ54により検知された冷却水の水温W、エンジン始動時にCSD30が起動してから有効に作動している時間を示す有効時間T、及び前記回転数センサ56により検知されたエンジン51の回転数Nを元にして切り替えられる。なお、前記有効時間Tは、前記コントローラ53の有する図示せぬタイマーによって計測される。
【0032】
このうちの水温Wに関する基準値には、エンジン始動中にCSD30を起動させるか否かを判断するための水温(以下、「起動基準水温」とする)Wonと、該起動基準水温Wonからヒステリシス温度を差し引いた水温であってエンジン始動中にヒステリシス温度制御を行うための水温(以下、「ヒステリシス水温」とする)Whysと、エンジン始動完了後に作動状態にあるCSD30を停止するか否かを判断するための水温(以下、「停止基準水温」とする)Woffとがある。そして、前記起動基準水温Wonとヒステリシス水温Whysには、従来の如く、それぞれ一定の水温が設定されるのに対し、前記停止基準水温Woffには、
図3(a)に示すような制御マップ59が設けられている。
【0033】
該制御マップ59は、三つの水温域59a・59b・59cから構成され、このうちの第一水温域59aでは、エンジン始動時の水温Wが前記起動基準水温Wonを越えており、その範囲では、停止基準水温Woffは全て起動基準水温Wonと同一水温に設定される。これは、エンジン始動時の水温Wが十分高温側にあるため、エンジン51の暖機のためにCSDの有効時間Tを確保する必要がなく、起動基準水温Wonと停止基準水温Woffを同一水温に設定しても構わないからである。なお、後で詳述するように、エンジン始動時に水温Wが起動基準水温Wonを越えると、CSD30が作動せずに未作動状態に保持するようにしているため、この第一水温域59aは、本実施例では基準値として使用されることはないが、温度センサ54や運転パターン等が異なるためにエンジン始動時に制御マップ59を用いる場合には、使用することができる。
【0034】
前記第二水温域59bでは、エンジン始動時の水温Wが、起動基準水温Wonから水温W1まで低下するに伴い、この低下に比例して停止基準水温Woffは、起動基準水温Wonから水温W2まで上昇する。これは、エンジン始動時の水温Wが低温側にあるほど、エンジン51の温度も低くなっており、エンジン51の暖機のために、停止基準水温Woffを上昇させて、CSDの有効時間Tを長く確保する必要があるからである。
【0035】
前記第三水温域59cでは、エンジン始動時の水温Wが前記水温W1から低下していっても、停止基準水温Woffは一定の前記水温W2に設定される。これは、エンジン始動時の水温Wが水温W1よりも低温側にあっても、停止基準水温Woffを水温W2に設定すれば、CSDの有効時間Tが十分に長く確保できるからである。なお、前記水温W1や水温W2は、温度センサ54や運転パターン等の違いに応じて適正化する必要があり、これにより、エンジン51が既に十分に暖機しているにもかかわらずCSD30が依然として作動状態にあるために、最高燃焼温度が高くなってNOXが増加するのを、十分に防止することができる。
【0036】
また、前記有効時間Tに関する基準値には、エンジン始動完了後に作動状態にあるCSD30を停止するか否かを判断するための時間(以下、「停止基準時間」とする)Toffがある。そして、該停止基準時間Toffには、
図3(b)示すような制御マップ60が設けられている。
【0037】
該制御マップ60は、二つの水温域60a・60bから構成され、このうちの第一水温域60aでは、エンジン始動時の水温Wが、起動基準水温Wonから水温W1まで低下するに伴い、この低下に比例して停止基準時間Toffは、有効時間T1から有効時間T2まで延長される。これも、エンジン始動時の水温Wが低温側にあるほど、エンジン51の温度も低くなっており、エンジン51の暖機のために、停止基準時間Toffを延長して、CSDの有効時間Tを長く確保する必要があるからである。
【0038】
前記第二水温域60bでは、エンジン始動時の水温Wが前記水温W1から低下していっても、停止基準時間Toffは一定の前記有効時間T2に設定される。これは、エンジン始動時の水温Wが水温W1よりも低温側にあっても、停止基準時間Toffを有効時間T2に設定すれば、CSDの有効時間Tが十分に長く確保できるからである。なお、前記水温W1、有効時間T1、及び有効時間T2も、前記制御マップ60と同様に、温度センサ54や運転パターン等の違いに応じて適正化する必要があり、これにより、エンジン51が既に十分に暖機しているにもかかわらずCSD30が依然として作動状態にあるために、最高燃焼温度が高くなってNOXが増加するのを、十分に防止することができる。
【0039】
また、前記回転数Nに関する基準値には、エンジン51の始動が完了したか否かを判断するための回転数(以下、「始動完了回転数」とする)Nsがあり、該始動完了回転数Nsには、一定の回転数が設定される。
【0040】
以上のような、起動基準水温Won・ヒステリシス水温Whysの設定値、停止基準水温Woffの制御マップ59、停止基準時間Toffの制御マップ60、及び始動完了回転数Nsの設定値は、いずれも前記コントローラ53に設けた記憶装置61に記憶されている。該記憶装置61には、後述する制御手順に従って低温時進角制御を行うための制御プログラム等も記憶されている。
【0041】
そして、これら起動基準水温Won・ヒステリシス水温Whysの設定値、停止基準水温Woffの制御マップ59、停止基準時間Toffの制御マップ60、及び始動完了回転数Nsの基準値が、前記コントローラ53の指示により前記記憶装置61から呼び出された後、記憶装置61から適宜読み出される制御プログラムに従って、前記温度センサ54により検知された冷却水の水温W、エンジン始動時にCSD30が起動してからの有効時間T、及び前記回転数センサ56により検知されたエンジン51の回転数Nと比較されながら処理される。
【0042】
次に、前記基準値を有する低温時進角制御の制御手順について、
図1、
図2、
図4、
図5、
図6により説明する。
図1、
図2、
図4に示すように、作業者によりキースイッチ57がONにされると(ステップS1、YES)、前述の如くコントローラ53に始動信号が送信され、前記スタータ58によってエンジン本体52が始動される。
【0043】
すると、前記温度センサ54からの水温信号が前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS2)、該水温信号に基づいて、エンジン始動中の水温Wが、前記記憶装置61に記憶された所定の起動基準水温Wonより低いか否かが判断される(ステップS3)。
【0044】
水温Wが起動基準水温Won以下の場合は(ステップS3、YES)、コントローラ53から前記電磁バルブ15にCSD起動信号が送信されてアクチュエータ16が作動し、CSD30を起動する(ステップS4)。すると、前記コントローラ53のタイマーにより、有効時間Tのタイムカウントが開始され(ステップS5)、引き続き、後述するCSD起動後処理62が開始される(ステップS6)。
【0045】
水温Wが起動基準水温Wonを越える場合は(ステップS3、NO)、コントローラ53から前記電磁バルブ15にCSD起動信号が送信されずにアクチュエータ16は作動せず、CSD30は作動されることなく未作動状態に保持される(ステップS7)。
【0046】
すると、前記回転数センサ56からの回転数信号が前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS8)、該回転数信号に基づいて、エンジン51の回転数Nが、前記記憶装置61に記憶された所定の始動完了回転数Nsより高いか否かが判断される(ステップS9)。
【0047】
回転数Nが始動完了回転数Ns以上の場合は(ステップS9、YES)、エンジン51の始動が既に完了していると判断し、CSD30を一度も起動することなく、そのまま低温時進角制御を終了する。
【0048】
回転数Nが始動完了回転数Nsを下回る場合は(ステップS9、NO)、エンジン51は依然として始動中であると判断し、前記温度センサ54からの水温信号が前記コントローラ53に再び読み込まれる(ステップS10)。そして、該水温信号に基づいて、エンジン始動中の水温Wが、前記記憶装置61に記憶された所定のヒステリシス水温Whysより低いか否かが判断される(ステップS11)。
【0049】
水温Wがヒステリシス水温Whys以下の場合は(ステップS11、YES)、CSD30を起動し(ステップS4)、その後、前述した、有効時間Tのタイムカウント(ステップS5)とCSD起動後処理62(ステップS6)とが順に開始される。
【0050】
水温Wがヒステリシス水温Whysを越える場合は(ステップS11、NO)、CSD30を起動することなく、そのまま低温時進角制御を終了する。
【0051】
また、
図5に示すように、前記CSD起動後処理62が開始されると、前記回転数センサ56からの回転数信号が前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS21)、該回転数信号に基づいて、エンジン51の回転数Nが、前記記憶装置61に記憶された所定の始動完了回転数Nsより高いか否かが判断される(ステップS22)。
【0052】
回転数Nが始動完了回転数Ns以上の場合は(ステップS22、YES)、エンジン51の始動が既に完了していると判断し、所定の条件を満たせばCSD30を停止する(ステップS25)。
【0053】
具体的には、エンジン始動完了後に、前記温度センサ54からの冷却水の水温信号と、タイマーからの有効時間Tの時間信号とが、前記コントローラ53に読み込まれる(ステップS26)。そして、このうちの水温信号に基づいて、エンジン始動完了後の水温Wが、前記記憶装置61に記憶された制御マップ59から求めた停止基準水温Woffより高いか否かが判断される(ステップS27)。同時に、前記時間信号に基づいて、エンジン始動完了後において、エンジン始動時にCSD30が起動(ステップS4)してから有効に作動している有効時間Tが、前記記憶装置61に記憶された制御マップ60から求めた停止基準時間Toffより、長いか否かも判断される(ステップS27)。
【0054】
そして、水温Wが所定の停止基準水温Woff以上に上昇しているという第一条件と、エンジン始動時にCSD30が起動してから有効に作動している有効時間Tが所定の停止基準時間Toff以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合は(ステップS27、YES)、CSD30を停止し(ステップS25)、そのまま低温時進角制御を終了する。
【0055】
前記第一条件と第二条件のいずれも満たさない場合、つまり水温Wが所定の停止基準水温Woff未満であり、かつ、有効時間Tが所定の停止基準時間Toff未満の場合は(ステップS27、NO)、再度、水温信号と時間信号を読み込んで、前記停止基準水温Woffと停止基準時間Toffとを比較し(ステップS27)、これを、CSD30が停止するまで繰り返す。このように、CSD30停止の要否を判断する際、水温Wに加えて有効時間Tというパラメータも加えることにより、エンジン51の温度をより正確に把握し、CSD30を適確なタイミングで停止できるようにしている。
【0056】
回転数Nが始動完了回転数Nsを下回る場合は(ステップS22、NO)、エンジン51は依然として始動中であると判断し、前記温度センサ54からの水温信号が前記コントローラ53に再び読み込まれる(ステップS23)。そして、該水温信号に基づいて、エンジン始動中の水温Wが、前記記憶装置61に記憶された所定の起動基準水温Wonより低いか否かが判断される(ステップS24)。
【0057】
水温Wが起動基準水温Won以下の場合は(ステップS24、YES)、CSD30は作動状態に保持されたまま、前記回転数センサ56からの回転数信号を前記コントローラ53に読み込み(ステップS21)、エンジン始動中かエンジン始動が完了したかを判断し(ステップS22)、その後は、CSD30が停止するまで上述した手順に従う。
【0058】
水温Wが起動基準水温Wonを越える場合は(ステップS24、NO)、コントローラ53から前記電磁バルブ15にCSD停止信号が送信されてアクチュエータ16が作動し、CSD30が停止する(ステップS25)。
【0059】
すなわち、燃料噴射量を調整する電子ガバナ機構7と、低温時に燃料噴射時期を進角する低温時進角機構であるCSD30と、エンジン本体52の冷却水の水温Wを検知する温度センサ54と、前記電子ガバナ機構7・CSD30・温度センサ54に接続されるコントローラ53とを備え、該コントローラ53により、前記水温Wに応じて前記CSD30を起動または停止するエンジン51において、前記コントローラ53は、前記CSD30を起動させる基準値となる起動基準水温Wonと、前記CSD30を停止させる基準値となる停止基準水温Woffとを別々に設定可能な制御構成を備えたので、停止基準水温Woffを起動基準水温Wonよりも十分高温側に設定することができ、たとえ、従来よりも精度・応答性に優れた温度センサ54を使用して水温検知までの時間が短くなったり、エンジン始動完了後に冷却水の循環速度が増加して水温Wの上昇速度が速くなっても、CSD30の有効時間Tが十分に確保される。これにより、温度センサ54や運転パターン等が異なっても、エンジン51の暖機が十分に行われてからCSD30を停止することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
【0060】
更に、前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温Wが所定の起動基準水温Won以下でCSD30を起動させると共に、エンジン始動完了後には、前記水温Wが所定の停止基準水温Woff以上に上昇しているという第一条件と、エンジン始動時にCSD30が起動してから有効に作動している有効時間Tが、所定の停止基準時間Toff以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合に、前記CSD30を停止させるので、冷却水の水温Wと、CSD30の有効時間Tという二つのパラメータに基づいてCSD30停止の要否を判断することにより、CSD30の停止タイミングの精度を高めることができ、エンジン51が十分に暖機しているにもかかわらずCSD30が作動状態にあるために最高燃焼温度が高くなってNOXが増加するのを、確実に防止することができる。
【0061】
加えて、前記制御構成において、前記停止基準水温Woffは、エンジン始動時の水温Wが低いほど高温側に移行させるので、エンジン始動時の水温Wが低くてエンジン51の暖機に時間がかかる場合でも、CSD30の停止基準水温Woffを高くして、CSD30の有効時間Tを長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
【0062】
更に、前記制御構成において、前記停止基準時間Toffは、エンジン始動時の水温Wが低いほど長時間側に移行させるので、エンジン始動時の水温Wが低くてエンジン51の暖機に時間がかかる場合でも、CSD30の停止基準時間Toffを長くして、CSD30の有効時間Tを長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
【0063】
続いて、前述したCSD起動後処理62の別形態について、以下に説明する。なお、各フローチャート中の鎖線で囲んだ範囲は、前記CSD起動後処理62の場合と異なる部分を示している。
【0064】
まず、前記CSD起動後処理62で有効時間の影響を考慮したCSD起動後処理62Aについて、
図6により説明する。該CSD起動後処理62Aでは、CSD起動後、エンジン51の暖機を確実に済ませるのに十分な有効時間(以下、「暖機有効時間」とする)Toff(e)が経過している場合、エンジン51は十分に暖機されていると判断し、無条件にCSD30を停止する。
【0065】
具体的には、CSD起動後に、有効時間Tの時間信号がタイマーから前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS31)、該時間信号に基づいて、有効時間Tが前記記憶装置61に記憶された暖機有効時間Toff(e)より長いか否かが判断される(ステップS32)。
【0066】
そして、有効時間Tが所定の暖機有効時間Toff(e)以上経過している場合は(ステップS32、YES)、無条件にCSD30を停止し(ステップS25)、そのまま低温時進角制御を終了する。有効時間Tが所定の暖機有効時間Toff(e)未満の場合は(ステップS32、NO)、前記回転数センサ56からの回転数信号が前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS21)、その後は、前記CSD起動後処理62と同じ手順に従う。
【0067】
すなわち、前記制御構成において、エンジン始動時には、前記水温Wが所定の起動基準水温Won以下でCSD30を起動させると共に、該CSD30が起動してから有効に作動している有効時間Tが、所定の停止基準時間である暖機有効時間Toff(e)以上経過していると、前記CSD30を無条件に停止させるので、前記暖機有効時間Toff(e)を最高燃焼温度が著しく高くならない程度に長めに設定することで、エンジン51の暖機を十分に行いつつ、NOXが著しく増加する前にCSDを確実に停止することができる。
【0068】
次に、前記CSD起動後処理62でエンジン51の回転数Nの影響を考慮したCSD起動後処理62Bについて、
図7、
図8により説明する。該CSD起動後処理62Bでは、エンジン51の回転数Nが高いと、検知された水温Wほどはエンジン51の暖機が進まないことから、前記停止基準水温Woffと停止基準時間Toffの値は増加方向に補正され、この補正後の補正停止基準水温Woff(c)と補正停止基準時間Toff(c)に基づいて、CSD30停止の要否を判断する。
【0069】
具体的には、
図7に示すように、停止基準水温Woffの補正量Wcには、補正マップ63を設け、停止基準時間Toffの補正量Tcには、補正マップ64を設ける。そして、前記補正停止基準水温Woff(c)は、前記停止基準水温Woffに、この補正量Wcを加算したものであり、前記補正停止基準水温Woff(c)は、前記停止基準時間Toffに、この補正量Tcを加算したものとする。
【0070】
このうちの補正マップ63は、二つの回転数域63a・63bから構成され、該第一回転数域63aでは、エンジン51の回転数Nが回転数Naまで高くなるに伴い、補正量Wcは最大補正量Wmまで増加する。これは、回転数Nの上昇と共に冷却水の循環速度が増加し、水温の上昇速度の方が速くなって、検知された水温ほどエンジン51の暖機が進まないからである。
【0071】
前記第二回転数域63bでは、エンジン51の回転数Nが回転数Naを超えても、一定の前記最大補正量Wmに設定される。これは、該最大補正量Wmで補正すると、CSDの有効時間Tを十分に長く確保することができ、それ以上の補正は不要だからである。
【0072】
前記補正マップ64も、二つの回転数域64a・64bから構成され、該第一回転数域64aでは、エンジン51の回転数Nが回転数Nbまで高くなるに伴い、補正量Tcは最大補正量Tmまで増加する。これは、回転数Nの上昇と共に冷却水の循環速度が増加し、水温の上昇速度の方が速くなって、検知された水温ほどエンジン51の暖機が進まないからである。
【0073】
前記第二回転数域64bでは、エンジン51の回転数Nが回転数Nbを超えても、一定の前記最大補正量Tmに設定される。これは、該最大補正量Tmで補正すると、CSDの有効時間Tを十分に長く確保することができ、それ以上の補正は不要だからである。
【0074】
以上の補正量Wcの補正マップ63と、補正量Tcの補正マップ64も、前記コントローラ53に設けた記憶装置61に記憶されており、これら補正マップ63・64に基づいて、前記CSD起動後処理62Bが行われる。
【0075】
図8に示すように、
図5と同じステップS22において回転数Nが始動完了回転数Ns以上と判断された後に、前記温度センサ54からの冷却水の水温信号、タイマーからの有効時間Tの時間信号、及び前記回転数センサ56からのエンジン51の回転数信号が、前記コントローラ53に読み込まれる(ステップS41)。
【0076】
続いて、このうちの水温信号に基づいて前記制御マップ59から求めた停止基準水温Woffに、回転数信号に基づいて前記補正マップ63から求めた補正量Wcを加算して、補正停止基準水温Woff(c)を算出する。同様に、水温信号に基づいて前記制御マップ60から求めた停止基準時間Toffに、回転数信号に基づいて前記補正マップ64から求めた補正量Tcを加算して、補正停止基準時間Toff(c)を算出する(ステップS42)。
【0077】
そして、水温信号に基づいて、エンジン始動完了後の水温Wが、補正停止基準水温Woff(c)より高いか否かが判断され、同時に、前記時間信号に基づいて、有効時間Tが、補正停止基準時間Toff(c)より長いか否かも判断される(ステップS43)。
【0078】
その際、水温Wが所定の補正停止基準水温Woff(c)以上に上昇しているという第一条件と、有効時間Tが所定の補正停止基準時間Toff(c)以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合は(ステップS43、YES)、CSD30を停止し(ステップS25)、そのまま低温時進角制御を終了する。
【0079】
前記第一条件と第二条件のいずれも満たさない場合、つまり水温Wが所定の補正停止基準水温Woff(c)未満であり、かつ、有効時間Tが所定の補正停止基準時間Toff(c)未満の場合は(ステップS43、NO)、再度、水温信号・時間信号・回転数信号が読み込まれる(ステップS41)。これを、CSD30が停止するまで繰り返す。
【0080】
このようにして、所定の回転数Na・Nb以上を除き、エンジン51の回転数Nが上昇するほど前記停止基準水温Woffと停止基準時間Toffとを増加させる補正を加えることにより、エンジン51を十分に暖機してからCSD30を停止することができる。
【0081】
すなわち、前記制御構成において、前記停止基準水温Woffは、エンジン51の回転数Nが高いほど高温側に移行させるので、エンジン51の回転数Nが高くて冷却水の循環速度が増加し、水温Wの上昇速度の方が速くなって、検知された水温Wほどはエンジン51の暖機が進んでいない場合でも、CSD30の停止基準水温Woffを高くして、CSD30の有効時間Tを長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
【0082】
更に、前記制御構成において、前記停止基準時間Toffは、エンジン51の回転数Nが高いほど長時間側に移行させるので、エンジン51の回転数が高くて冷却水の循環速度が増加し、水温Wの上昇速度の方が速くなって、検知された水温Wほどはエンジン51の暖機が進んでいない場合でも、CSDの停止基準時間時間Toffを長くして、CSD30の有効時間Tを長く確保することができ、青白煙発生の防止とエンジン始動性の向上を確実に図ることができる。
【0083】
次に、前記CSD起動後処理62で水温Wの時間変化率ΔWの影響を考慮したCSD起動後処理62Cについて、
図9により説明する。該CSD起動後処理62Cでは、水温Wの時間変化率ΔWが小さい場合、該水温Wを判断基準に使うと判断精度が低下するため、有効時間TのみでCSD30停止の要否を判断する。
【0084】
具体的には、
図9に示すように、
図5と同じステップS22において回転数Nが始動完了回転数Ns以上と判断された後に、前記温度センサ54からの冷却水の水温信号、タイマーからの有効時間Tの時間信号が、前記コントローラ53に読み込まれ(ステップS26)、該水温信号と時間信号とに基づいて、水温Wの時間変化率ΔWが算出される(ステップS51)。続いて、該時間変化率ΔWが、前記記憶装置61に記憶された所定の時間変化率(以下、「限界変化率」とする)ΔWaより高いか否かが判断される(ステップS52)。
【0085】
そして、時間変化率ΔWが、この限界変化率ΔWa以上の場合は(ステップS52、YES)、前述したステップS27により、水温Wと有効時間Tという二つのパラメータに基づいて、CSD30停止の要否が判断される。
【0086】
一方、前記時間変化率ΔWが限界変化率ΔWa未満の場合は(ステップS52、NO)、有効時間Tが、前記停止基準時間Toffより長いか否かのみが判断される(ステップS53)。有効時間Tが所定の停止基準時間Toff以上の場合は(ステップS53、YES)、CSD30を停止し(ステップS25)、そのまま低温時進角制御を終了する。有効時間Tが所定の停止基準時間Toff未満の場合は(ステップS53、NO)、再度、水温信号と時間信号を読み込み(ステップS26)、前記ステップ51に戻るようにしている。
【0087】
このようにして、水温Wの時間変化率ΔWが小さい場合には、有効時間Tのみに基づいて、CSD30停止の要否を判断することができる。
【0088】
すなわち、前記制御構成において、エンジン始動完了後には、前記水温Wの時間変化率ΔWが所定の時間変化率である限界変化率ΔWaより小さい場合は、前記有効時間Tが所定の停止基準時間Toff以上経過すると、前記CSD30を停止させるので、冷却水の循環や温度センサ54のトラブルなどが原因で水温Wの上昇速度が小さい場合でも、有効時間Tのみに基づいてCSD30停止の要否を迅速に判断することができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。
【0089】
次に、前記CSD起動後処理62でエンジン51の始動状況の影響を考慮したCSD起動後処理62Dについて、
図10により説明する。該CSD起動後処理62Dでは、エンジン51が再始動後の場合、ある程度暖機状態にあることから、前記停止基準水温Woffと停止基準時間Toffとの値は減少方向に補正され、この補正後の補正停止基準水温Woff(r)と補正停止基準時間Toff(r)に基づいてCSD30停止の要否を判断する。
【0090】
具体的には、
図10に示すように、
図5に示すステップS22において回転数Nが始動完了回転数Ns以上と判断された後に、前記温度センサ54からの冷却水の水温信号、タイマーからの有効時間Tの時間信号に加え、同じくタイマーより、エンジン51が前回停止してから今回始動するまでに経過した時間(以下、「エンジン停止時間」とする)trの時間信号も、前記コントローラ53に読み込まれる(ステップS61)。続いて、エンジン停止時間trが、前記記憶装置61に記憶された所定のエンジン停止時間(以下、「限界エンジン停止時間」とする)tr(a)より長いか否かが判断される(ステップS62)。
【0091】
そして、エンジン停止時間trが、この限界エンジン停止時間tr(a)以上の場合は(ステップS62、YES)、再始動とは見なさずに、前述と同じステップS27により、補正前の停止基準水温Woffと基準時間Toffに基づいて、CSD30停止の要否が判断される。
【0092】
一方、前記エンジン停止時間trが限界エンジン停止時間tr(a)未満の場合は(ステップS62、NO)、再始動と見なし、前記停止基準水温Woffから、前記記憶装置61に記憶された所定の補正量Wrを減算して、前記補正停止基準水温Woff(r)を算出する。同様に、前記停止基準時間Toffから、前記記憶装置61に記憶された所定の補正量Trを減算して、前記補正停止基準時間Toff(r)を算出する(ステップS63)。
【0093】
そして、水温信号に基づいて、エンジン始動完了後の水温Wが、補正停止基準水温Woff(r)より高いか否かが判断され、同時に、前記時間信号に基づいて、有効時間Tが、補正停止基準時間Toff(r)より長いか否かも判断される(ステップS64)。
【0094】
その際、水温Wが所定の補正停止基準水温Woff(r)以上に上昇しているという第一条件と、有効時間Tが所定の補正停止基準時間Toff(r)以上経過しているという第二条件とのうち、少なくとも一方の条件を満たす場合は(ステップS64、YES)、CSD30を停止し(ステップS25)、そのまま低温時進角制御を終了する。
【0095】
前記第一条件と第二条件のいずれも満たさない場合、つまり水温Wが所定の補正停止基準水温Woff(r)未満であり、かつ、有効時間Tが所定の補正停止基準時間Toff(r)未満の場合は(ステップS64、NO)、再度、水温信号・時間信号が読み込まれる(ステップS61)。これを、CSD30が停止するまで繰り返す。
【0096】
このようにして、エンジン51が再始動の場合には、前記停止基準水温Woffと停止基準時間Toffとを減少させる補正を加えることにより、NOXが増加する前にCSDを停止することができる。
【0097】
すなわち、前記制御構成において、前記停止基準水温Woffは、エンジン51の再始動時には低温側に移行させるので、前回エンジン51が停止してからの経過時間が短くて、残熱のせいでエンジン51の暖機に時間がかからないため、CSD30の停止基準水温Woffを低くし、CSD30の有効時間Tを短くすることができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。
【0098】
更に、前記制御構成において、前記停止基準時間Toffは、前記エンジン51の再始動時には短時間側に移行させるので、前回エンジン51が停止してからの経過時間が短くて、残熱のせいでエンジン51の暖機に時間がかからないため、CSD30の停止基準時間Toffを短くし、CSD30の有効時間Tを短くすることができ、NOXの増加を更に確実に防止することができる。