(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力電力を所定の周波数の交流電圧に変換し出力する電力変換回路と、該電力変換回路から出力した交流電圧を所定の電圧まで昇圧する高電圧変圧器と、該高電圧変圧器から出力された交流電圧を整流し直流電圧に変換する整流器と、前記高電圧変圧器及び整流器を絶縁油と共にタンク内に封入してなる高電圧発生装置と、前記整流器から出力した直流電圧を用いてX線を発生するX線管と、前記絶縁油の劣化状況を測定する絶縁油劣化状況測定手段と、該絶縁油劣化状況測定手段による測定結果に基づいて前記絶縁油の交換時期を診断する絶縁油劣化状況診断手段と、を有するX線発生装置であって、
前記絶縁油劣化状況測定手段は、前記高電圧発生装置の動作シーケンス毎に予め設定した2つの異なる温度に対し、前記絶縁油が一方の温度から他方の温度に到達するまでの経過時間を計測し、
前記絶縁油劣化状況診断手段は、前記経過時間と、前記高電圧発生装置の動作シーケンス毎に予め設定した時間閾値と、に基づいて前記絶縁油の交換時期を診断することを特徴とするX線発生装置。
前記X線発生装置と、該X線発生装置が有する前記X線管と対向配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、該X線検出器で検出されたX線量をデジタルデータとして収集するデータ収集装置と、該データ収集装置から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う画像演算装置と、を有するX線CT装置であって、
前記X線発生装置は請求項1乃至3の何れか一項に記載のX線発生装置であることを特徴とするX線CT装置。
前記X線発生装置と、該X線発生装置が有する前記X線管と対向配置され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、該X線検出器で検出されたX線量をデジタルデータとして収集するデータ収集装置と、該データ収集装置から送出される計測データを演算処理してX線画像を作成する画像演算装置と、を有するX線撮影装置であって、
前記X線発生装置は請求項1乃至3の何れか一項に記載のX線発生装置であることを特徴とするX線撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面に従って本発明のX線発生装置について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明のX線発生装置の実施の構成例を示す模式図である。
【0012】
図1に示すX線発生装置101は、電力変換回路102と、高電圧変圧器103、整流器104、絶縁油105及びタンク106を有してなる高電圧発生装置107と、X線管108と、絶縁油劣化状況測定手段109と、絶縁油劣化状況診断手段110と、絶縁油劣化通知部111と、操作部112と、制御部113と、を有して構成される。
【0013】
電力変換回路102は、商用電源114から出力された電力を所定の周波数の交流電圧に変換し出力する。電力変換回路102は、インバータ回路等で構成される。
【0014】
高電圧変圧器103は、電力変換回路102から出力された前記交流電圧を所定の電圧まで昇圧する。高電圧変圧器103は、鉄心と、該鉄心の周囲をそれぞれ巻いた1次巻線及び2次巻線とから構成される(特に図示しない)。
【0015】
整流器104は、高電圧変圧器103から出力された前記昇圧した交流電圧を整流し直流電圧に変換する。整流器104は、ダイオード等で構成される。高電圧変圧器103及び整流器104は、絶縁油105と共にタンク106に封入されている。
【0016】
絶縁油105は、タンク106の高電圧変圧器103及び整流器104、さらに、高電圧変圧器103及び整流器104、を構成している各部品間の絶縁を保つ他、これら各部品の冷却効果も備える。絶縁油105の前記絶縁及び冷却効果は、X線発生装置101を使用することで絶縁油105内に不純物等が混入し劣化していく。
【0017】
X線管108は、陽極108a及びフィラメント108bとから構成され陽極108a及びフィラメント108b間に整流器104から出力された直流電圧を印加することによりX線を発生させる。
【0018】
絶縁油劣化状況測定手段109は、タンク106に封入されている絶縁油105の温度を測定することにより、絶縁油105の劣化状況を診断するためのデータを取得する手段である。
【0019】
絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油劣化状況測定手段109によって測定された値に基づいて、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なう。
【0020】
制御部113は、絶縁油劣化状況診断手段110によって診断された結果を絶縁油劣化通知部111に出力する。
【0021】
絶縁油劣化通知部111は、表示装置などでもよいし、スピーカーなどでもよい。絶縁油劣化通知部111は、制御部113により絶縁油劣化状況診断手段110の診断結果を、表示又は音声等を用いて操作者に通知する。
【0022】
操作部112は、キーボード、マウス、ジョイスティック等を備え、制御部113に対して操作者が各種指令を出すことができる。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明の実施例1について
図1乃至
図3を用いて説明する。
実施例1では、
図1で示したX線発生装置101の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油105の温度上昇速度を測定することで絶縁油105の劣化状況を診断する。以降、実施例1の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油劣化状況測定手段109a及び絶縁油劣化状況診断手段110aとして記載する。
【0024】
実施例1の絶縁油劣化状況測定手段109aは、高電圧発生装置107の動作シーケンス毎に予め設定した2つの異なる温度に対し、一方の温度から他方の温度に到達するまでの経過時間を計測する。前記動作シーケンスは、X線管108からX線を出力する際のX線出力条件により決められる。該X線出力条件にはX線管108に印加する管電圧、管電流、印加時間等がある。これらX線出力条件は制御部113によって電力変換回路102を用いて制御される。前記2つの異なる温度は、なるべく幅を持たせた方が計測制度は向上するが、幅を持たせて設定しても前記管電圧又は管電流が小さい場合など、X線出力条件によっては前記他方の温度に到達しない場合等が考えられる。そこで、上述のように動作シーケンス毎に2つの異なる温度を設定することで誤差の少ない最適な状態で経過時間を計測することができる。
図2は、実施例1を説明するための絶縁油105の温度変化を示した図である。横軸に時間Tを、縦軸に絶縁油105の温度Kをとっており、前記一方の温度をka、前記他方の温度をktとしている。また、温度特性201は交換したばかりの絶縁油の特性を、温度特性202は該絶縁油に対し使用期間を十分に経過した絶縁油の特性を、それぞれ示している。
【0025】
絶縁油劣化状況測定手段109aは、絶縁油105がkaに到達すると時間のカウントを開始し、ktに到達するまでの経過時間を計測する。温度特性201は、kaからktに到達するまでの経過時間がtnであるのに対し、温度特性202はtnより短いtdである。絶縁油105は、使用に伴い不純物等が混ざりこみ、その特性が劣化していく。温度特性202のように、使用期間を十分に経過した絶縁油105だと冷却効果が低下するため、絶縁油105の温度上昇が温度特性201の絶縁油105の温度上昇より速くなる。
【0026】
絶縁油劣化状況診断手段110aは、絶縁油劣化状況測定手段109aによって計測された前記経過時間に基づいて、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なう。該診断に際しては、前記経過時間が高電圧発生装置107の動作シーケンス毎に予め設定した時間閾値th以下か否かを診断し、前記経過時間が時間閾値th以下ならば絶縁油105は交換時期にあると診断し、前記経過時間が時間閾値thより長ければ絶縁油105は交換時期にまだ達していないと診断する。
【0027】
時間閾値thを動作シーケンス毎に設定するのは、X線出力条件によって絶縁油105の温度上昇速度が変わるためである。つまり、X線管108に印加する管電圧又は管電流をより大きくした場合は、絶縁油105の温度上昇速度が速くなり、管電圧又は管電流を小さくした場合は、絶縁油105の温度上昇速度が遅くなる。動作シーケンス毎に時間閾値thを設定することで、どのような動作シーケンスで高電圧発生装置107を動作させた場合でも、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なうことができる。
【0028】
図2の場合、経過時間tdは、時間閾値th以下であることより温度特性202の絶縁油は交換時期にあると診断される。また、経過時間tnは、時間閾値thより長いため、温度特性201の絶縁油は交換時期にまだ達していないと診断される。該診断結果は、制御部113に出力され、制御部113は該診断結果を絶縁油劣化通知部111に出力し、絶縁油劣化通知部111は、該診断結果を操作者に通知する。
【0029】
次に、
図3を用いて本実施例1のX線発生装置の動作順序を説明する。
【0030】
S301では、操作部112を用いて操作者が制御部113に対しX線出力条件を設定する。X線出力条件は予め登録されているものから選択可能としてもよい。
【0031】
S302では、設定されX線出力条件に基づいて、2つの異なる温度ka及びkt(ka<kt)と、時間閾値thが制御部113によって設定される。
【0032】
S303では、制御部113によって設定されたX線出力条件に基づいて、電力変換回路102の動作制御を開始する。
【0033】
S304では、絶縁油劣化状況測定手段109aによって、絶縁油105の温度測定が開始される。
【0034】
S305では、絶縁油劣化状況測定手段109aによって、絶縁油105の温度がkaに達したか否かを監視する。絶縁油105の温度がkaに到達した場合はS306に進む。到達するまで前記監視を継続する。
【0035】
S306では、絶縁油劣化状況測定手段109aによって、時間のカウントが開始され、絶縁油105の温度がktに到達するまで前記カウントを継続する。絶縁油105の温度がktに到達した場合はS307に進む。
【0036】
S307では、絶縁油劣化状況測定手段109aによって計測された前記経過時間と、時間閾値thから、絶縁油劣化状況診断手段110aによって、絶縁油105の交換時期を診断する。
【0037】
S308では、絶縁油劣化状況測定手段109aによって診断された絶縁油105の交換時期の結果は、絶縁油劣化通知部111から出力され操作者に通知する。
【0038】
以上より、本実施例1のX線発生装置は、熱電対などを用いることで実施可能である絶縁油劣化状況測定手段109aと、絶縁油劣化状況診断手段110aによって、絶縁油105の温度上昇速度を測定し、絶縁油105の劣化状況を診断するため、非常に簡易に構成することができる。
【0039】
本実施例はこれに限らず、例えば、絶縁油劣化状況診断手段110aによって、絶縁油105が交換時期にあると診断された場合は、X線発生装置101の動作を停止するように制御部113が制御してもよいし、X線出力条件を下げてX線発生装置101を動作させる制御部113が制御してもよい。また、その際、X線出力条件を下げてX線発生装置101を動作させることを、絶縁油劣化通知部111を用いて操作者に通知してもよい。操作者は該通知を見ることで、X線出力条件を下げてX線発生装置101を動作させるか、または、X線発生装置101の動作を停止させるかを、操作部112を用いて選択可能としてもよい。これにより、絶縁油105の劣化状況に応じたX線出力条件でX線発生装置101の動作が可能なため、X線発生装置101の安定した動作を行なうことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の実施例1について
図1と
図4を用いて説明する。
実施例2では、
図1で示したX線発生装置101の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油105の最高到達温度を測定することで絶縁油105の劣化状況を診断する。以降、実施例2の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油劣化状況測定手段109b及び絶縁油劣化状況診断手段110bとして記載する。
【0041】
実施例2の絶縁油劣化状況測定手段109bは、高電圧発生装置107が動作した際の絶縁油105の最高到達温度を測定する。
図4は、実施例2を説明するための絶縁油105の温度変化を示した図である。
図2と同様に横軸に時間Tを、縦軸に絶縁油105の温度Kをとっている。また、温度特性401は交換したばかりの絶縁油の特性を、温度特性402は該絶縁油に対し使用期間を十分に経過した絶縁油の特性を、それぞれ示している。
【0042】
絶縁油劣化状況測定手段109bは、高電圧発生装置107が動作を開始してから絶縁油105の温度の測定を始め、最高到達温度を測定する。温度特性401の最高到達温度はknmaxであるのに対し、温度特性402の最高到達温度はknmaxより高いkdmaxである。実施例1でも述べたが、絶縁油105は、使用に伴い不純物等が混ざりこみ、その特性が劣化していくため、温度特性402のように、使用期間を十分に経過した絶縁油105だと冷却効果が低下する。これにより、絶縁油105の最高到達温度は、温度特性401の絶縁油105の温度高くなる。
【0043】
絶縁油劣化状況診断手段110bは、絶縁油劣化状況測定手段109bによって測定された前記最高到達温度に基づいて、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なう。該診断に際しては、前記最高到達温度が高電圧発生装置107の動作シーケンス毎に予め設定した温度閾値kth1以上か否かを診断し、前記最高到達温度が温度閾値kth1以上ならば絶縁油105は交換時期にあると診断し、前記最高到達温度が温度閾値kth1より低ければ絶縁油105は交換時期にまだ達していないと診断する。
【0044】
温度閾値kth1を動作シーケンス毎に設定するのは、X線出力条件によって絶縁油105の最高到達温度が変わるためである。管電圧や管電流を大きくした場合は、最高到達温度は高くなる。動作シーケンス毎に温度閾値kth1を設定することで、どのような動作シーケンスで高電圧発生装置107を動作させた場合でも、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なうことができる。
【0045】
図4の場合、絶縁油劣化状況診断手段110bによって、最高到達温度kdmaxは、温度閾値kth1以上であることより温度特性402の絶縁油は交換時期にあると診断される。また、最高到達温度knmaxは、温度閾値kth1より低いため、絶縁油105は交換時期にまだ達していないと診断される。該診断結果は、制御部113に出力され、制御部113は該診断結果を絶縁油劣化通知部111に出力し、絶縁油劣化通知部111は、該診断結果を操作者に通知する。
【0046】
以上より、本実施例2のX線発生装置は、熱電対などを用いることで実施可能である絶縁油劣化状況測定手段109bと、絶縁油劣化状況診断手段110bによって、絶縁油105の最高到達温度を測定し、絶縁油105の劣化状況を診断するため、非常に簡易に構成することができる。
【0047】
本実施例はこれに限らず、絶縁油劣化状況診断手段110bによって、絶縁油105が交換時期にあると診断された場合は、制御部113によって実施例1と同様なX線発生装置101の動作制御を行なってもよい。
【実施例3】
【0048】
次に、本発明の実施例3について
図1と
図5を用いて説明する。
実施例3では、
図1で示したX線発生装置101の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、予め設定した絶縁油105の温度閾値kth2を超えた回数を計測することで絶縁油105の劣化状況を診断する。以降、実施例3の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、絶縁油劣化状況測定手段109c及び絶縁油劣化状況診断手段110cとして記載する。
【0049】
実施例3の絶縁油劣化状況測定手段109cは、高電圧発生装置107が動作した際の絶縁油105の温度を測定する。
図5は、実施例3を説明するための絶縁油105の温度サイクルを示した図である。
図2と同様に横軸に時間Tを、縦軸に絶縁油105の温度Kをとっている。また、温度特性501乃至505は同一の絶縁油105の特性でそれぞれ異なる又は同一の高電圧発生装置107の動作シーケンスで動作した際のものである。
【0050】
絶縁油劣化状況測定手段109cは、高電圧発生装置107が動作を開始してから絶縁油105の温度の測定を始める。絶縁油劣化状況診断手段110cは、絶縁油劣化状況測定手段109cによって測定された前記温度に基づいて、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なう。該診断に際しては、前記温度が予め設定した温度閾値kth2以上か否かを診断し、温度閾値kth2以上となった回数を積算していく。
【0051】
該積算値が予め設定した所定の回数nを上回った際に絶縁油105は交換時期にあると診断する。絶縁油105による絶縁及び冷却効果は、絶縁油105の温度の上昇及び下降を繰り返すヒートサイクルによってその効果が劣化する。絶縁油劣化状況測定手段109c及び絶縁油劣化状況診断手段110cにより絶縁油105が予め設定した温度閾値kth2以上となった回数を積算していくことで、絶縁油105のヒートサイクルによる劣化を検出するができる。
図5の場合、温度特性501乃至505において、予め設定した温度閾値kth2以上になったものは、温度特性502、504、505の3つとなっている。
【0052】
ここで、予め設定した所定の回数nを2回に設定しておくと、温度特性504の際に、絶縁油劣化状況診断手段110cによって絶縁油105の交換時期に達したと診断される。該診断結果は、制御部113に出力され、制御部113は該診断結果を絶縁油劣化通知部111に出力し、絶縁油劣化通知部111は、該診断結果を操作者に通知する。本実施例では説明を簡便にするため回数nを2回としたが、実際は、数百或いは数千というオーダーで設定され、その回数はX線発生装置及び設定した温度閾値kth2などによって異なる。
【0053】
以上より、本実施例3のX線発生装置は、熱電対などを用いることで実施可能である絶縁油劣化状況測定手段109cと、絶縁油劣化状況診断手段110cによって絶縁油105のヒートサイクルを測定することにより絶縁油105の劣化状況を診断するため、非常に簡易に構成することができる。
【0054】
本実施例はこれに限らず、前記ヒートサイクルを、X線出力条件を用いて絶縁油105が予め設定した温度閾値kth2以上となる回数を積算してもよい。この場合、絶縁油105が温度閾値kth2以上となるX線出力条件を予め求めておくことで実施が可能である。これにより、絶縁油105の温度を直接測定しなくてもよいため、さらに簡易にX線発生装置を構成することができる。
【実施例4】
【0055】
次に、本発明の実施例4について
図1と
図6を用いて説明する。
実施例4では、実施例1乃至3で記載した絶縁油劣化状況測定手段109a〜109cとは異なり絶縁油105の流量を測定する。本実施例の絶縁油劣化状況測定手段109及び絶縁油劣化状況診断手段110は、予め設定した絶縁油105の流量閾値Rthを超えるか否かを測定することで、絶縁油105の劣化状況を診断する。以降、実施例4の絶縁油劣化状況測定手段109d及び絶縁油劣化状況診断手段110dとして記載する。
【0056】
図6は実施例4を説明するための高電圧発生装置及び絶縁油劣化状況測定手段109dの構造を示した図である。
【0057】
高電圧変圧器103、整流器104及び絶縁油105を封入したタンク106の側壁にはタンク106内の絶縁油105が流入可能なオイルダクト601を備えている。また、オイルダクト601にはオイルダクト601内を通る絶縁油105の流量を測定する絶縁油劣化状況測定手段109dを備えている。絶縁油劣化状況測定手段109dは流量計などで構成することができる。タンク106の絶縁油105はタンク106に備えられた高電圧変圧器103、整流器104が動作することによる発生する熱によって対流が生じる。絶縁油105は、使用に伴い粘性が増すため、絶縁油105の使用に伴い絶縁油劣化状況測定手段109dによって測定する流量は小さくなる。
【0058】
絶縁油劣化状況診断手段110dは、絶縁油劣化状況測定手段109dによって測定されるオイルダクト601内を通る絶縁油105の流量に基づいて、絶縁油105が交換時期にあるか否かの診断を行なう。該診断に際しては、前記流量が高電圧発生装置107の動作シーケンス毎に予め設定した流量閾値Rth以下か否かを診断し、前記流量が流量閾値Rth以下ならば絶縁油105は交換時期にあると診断し、前記流量が流量閾値Rthより大きければ絶縁油105は交換時期にまだ達していないと診断する。
【0059】
流量閾値Rth動作シーケンス毎に設定するのは、実施例1で記載した時間閾値thや、実施例2で記載した温度閾値kth1と同様の理由である。また、本実施例の場合、高電圧発生装置107を動作させてない場合でも後述するX線CT装置に用いる場合は、タンク106を後述する回転円盤に設置するため、回転円盤の回転停止状態から回転を開始する場合、又は回転動作状態から回転を停止する場合の慣性を用いることによって絶縁油劣化状況診断手段110dは、絶縁油105の流量を測定することができる。これにより、高電圧変圧器103、整流器104が動作することによるノイズの影響を受けることなく絶縁油劣化状況診断手段110dによって絶縁油105の流量を測定することができる。
【0060】
以上より、本実施例4のX線発生装置は、流量計などを用いることで実施可能である絶縁油劣化状況測定手段109dと、絶縁油劣化状況診断手段110dによって、絶縁油105の粘性を測定し、絶縁油105の劣化状況を診断するため、非常に簡易に構成することができる。また、後述するX線CT装置に用いる場合は、高電圧変圧器103、整流器104が動作することによるノイズの影響を受けることなく絶縁油劣化状況診断手段110dによって精度よく絶縁油105の流量を測定することができる。
【実施例5】
【0061】
次に、本発明の実施例5について
図7を用いて説明する。
図7は、本発明のX線発生装置101を用いたX線CT装置の概略図である。
図7に示すように、X線CT装置701は、X線発生装置101と、スキャンガントリ702と、回転円盤703と、寝台704と、コリメータ705と、X線検出器706と、データ収集装置707と、画像演算装置708と、表示装置709と、記憶装置710と、入力装置711と、制御部712と、を備えている。
【0062】
スキャンガントリ702には、X線発生装置101の高電圧発生装置107、X線管108、絶縁油劣化状況測定手段109と、回転円盤703、寝台704、コリメータ705、X線検出器706、データ収集装置707などが設置されている。回転円盤703は、寝台704上に載置された被検体が入る開口部713を備えるとともに、X線発生装置101の高電圧発生装置107、X線管108、絶縁油劣化状況測定手段109と、X線検出器706などを搭載し、被検体の周囲を回転するものである。
【0063】
コリメータ705は、X線管108から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。X線検出器706は、X線管108と対向配置され、被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。データ収集装置707は、X線検出器706で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。画像演算装置708は、データ収集装置707から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置709は、画像演算装置708で作成されたCT画像を表示する装置である。記憶装置710は、データ収集装置707で収集したデータ及び画像演算装置708で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置である。入力装置711は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置である。制御部712は、上記各構成要素を制御する。
【0064】
本発明のX線発生装置101を用いることにより、絶縁油105の交換時期を常に管理することができるので、安定した動作が可能なX線CT装置701を得ることができる。
【実施例6】
【0065】
次に、本発明の実施例6について
図8を用いて説明する。
図8は、本発明のX線発生装置101を用いたX線撮影装置の概略図である。
図8に示すように、X線撮影装置801は、X線発生装置101と、寝台802と、コリメータ803と、X線検出器804と、データ収集装置805と、画像演算装置806と、表示装置807と、記憶装置808と、入力装置809と、制御部810と、を備えている。
【0066】
X線発生装置101のX線管108は、寝台802上に載置された被検体を挟んでX線検出器804と対向配置される。コリメータ803は、X線管108から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。X線検出器804は、X線管108から発生し被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。データ収集装置805は、X線検出器804で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。画像演算装置806は、データ収集装置805から送出される計測データを演算処理してX線画像の作成を行う装置である。表示装置807は、画像演算装置806で作成されたX線画像を表示する装置である。記憶装置808は、データ収集装置807で収集したデータ及び画像演算装置806で作成されたX線画像データを記憶する装置である。入力装置809は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置である。制御部810は、上記各構成要素を制御する。
【0067】
本発明のX線発生装置101を用いることにより、絶縁油105の交換時期を常に管理することができるので、安定した動作が可能なX線撮影装置801を得ることができる。