【実施例】
【0024】
a)まず、本実施例の燃料電池システムについて説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施例の燃料電池システム1では、燃料ガス(例えば都市ガス)と酸化剤ガス(例えば空気)との供給を受けて発電を行う燃料電池スタック3は、例えば700℃程度の高温にて稼働されるために、断熱容器5に収納されている。なお、以下では、断熱容器5及びこの断熱容器5に収容されている構成を燃料電池モジュール7と称する。
【0025】
前記断熱容器5内には、燃料電池スタック3に加え、燃料電池スタック3から排出される排ガス(第1排ガス)を燃焼させる排ガス燃焼器9と、燃料ガスの改質を行う改質器11と、改質水を気化させる気化器13と、空気を予熱する空気予熱器15と、燃料電池システム1の始動時に加熱を行うバーナ17などを備えている。
【0026】
また、断熱容器5の外部には、空気を燃料電池スタック3に送る空気ポンプ19と、燃料ガスを(改質器11を介して)燃料電池スタック3に送る燃料ポンプ21と、改質水を気化器13側に送る改質水ポンプ23と、燃料電池スタック3からの排ガスから水分(改質水)を回収する水回収器25と、水回収器25によって回収された改質水を溜める凝縮水タンク(改質水タンク)27と、バーナ17に送る燃料ガスと空気とを混合する混合器29と、混合器29に空気を送る空気ポンプ31などを備えている。
【0027】
以下、各構成について詳細に説明する。
前記燃料電池スタック3は、
図2に一部を示す様に、発電単位である板状の燃料電池セル33が複数個積層されたものであり、この燃料電池スタック3の積層方向の一方の側(
図2下方)に前記改質器11が配置されるとともに、改質器11の下方に前記排ガス燃焼器9が配置されている。なお、以下では、燃料電池スタック3と改質器11と排ガス燃焼器9との積層体を、燃料電池複合体35と称する。
【0028】
このうち、前記燃料電池セル33は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、周知の(燃料流路37に接する様に配置された)燃料極39と、固体電解質体41と、(空気流路43に接する様に配置された)空気極45とを備えている。
【0029】
前記
図1に戻り、前記断熱容器5は、例えばステンレスからなる箱体44の内部全体に、断熱のために、例えば、二酸化ケイ素、シリコンカーバイド、酸化アルミニウム等の粉体を圧縮した断熱材(例えばPorelextherm:商品名)からなるセラミック板45を配置したものである。
【0030】
前記改質器11は、燃料電池スタック3に供給される燃料ガスを水素リッチの燃料ガス(改質ガス)に改質する板状の装置である。この改質器11の上流側は、気化器13内を通って、外部から燃料ガスが供給される燃料ガス導入流路47に接続されるとともに、気化器13を通って、改質水流路51に接続されている。なお、改質水流路51には、改質水ポンプ25の下流側に、改質水から不純物を除去するフィルタ49が配置されている。
一方、改質器11の下流側は、各燃料電池セル33内の前記燃料流路37(
図2参照)に接続されている。
【0031】
前記排ガス燃焼器9は、発電後に排出される燃料ガスと酸素とを反応させて燃焼させる板状の装置である。この排ガス燃焼器9の上流側は、各燃料電池セル33内の燃料流路37及び空気流路43(
図2参照)に接続されている。
【0032】
一方、その下流側は、気化器13及び空気予熱器15を構成する(後述する)流路部材53内の内部排ガス流路54を通って、排ガス燃焼器9にて燃焼された排ガスを断熱容器5外に排出する第1排ガス流路55に接続されている。
【0033】
この第1排ガス流路55には、排ガスから水分を凝縮させて回収するための熱交換器である前記水回収器25が配置されており、即ち、第1排ガス流路55の排出口56は水回収器25に接続されており、この水回収器25で回収された水分(改質水)は供給流路26を介して凝縮水タンク27に蓄えられる。なお、水回収器25では、外部から供給される冷却水との熱交換によって凝縮水を発生させて回収する。また、水回収器25には、水分が回収された残余の排ガスを外部に排出するために排気流路57が接続されている。
【0034】
また、前記断熱容器5には、前記第1排ガス流路55とは別に、断熱容器5を貫通する第2排ガス流路59が設けられており、前記第1排ガス以外の断熱容器5内の他のガス(バーナ17で燃焼された排ガス:第2排ガス)等は、この第2排ガス流路59を介して外部に排出される。
【0035】
前記空気ポンプ19には、外部の空気を各燃料電池セル33内の空気流路43に供給するために、空気導入流路61が接続されている。この空気導入流路61は、断熱容器5内にて空気予熱器15内を通す様に配置されており、この空気予熱器15にて空気が予熱される。
【0036】
前記燃料ポンプ21には、外部から燃料ガスを(改質器11を介して)に各燃料電池セル33内の燃料流路37に供給するために、前記燃料ガス導入流路47が接続されている。この燃料ガス導入流路47は、断熱容器5内にて気化器13内を通す様に配置されており、この気化器13にて改質水の気化が行われるとともに、(気化した水蒸気)と燃料ガスとの混合が行われる。
【0037】
特に本実施例では、流路部材53の内部排ガス流路54及びこの内部排ガス流路54と連通する第1排ガス流路55は、バーナ17が配置されている空間でバーナ17の燃焼後の排ガス(第2排ガス)が排出される空間(即ち断熱容器5の内部空間)65とは分離されている。
【0038】
つまり、排ガス燃焼器9から排出される排ガス(第1排ガス)は、断熱容器5の内部空間65に排出されない様に、流路部材53の内部排ガス流路54のみに排出され、この内部排ガス流路54から第1排ガス流路55を介して断熱容器5外に排出される様に構成されている。
【0039】
なお、空気導入流路61や燃料ガス導入流路47や改質水流路51は、流路部材53の内部に連通するように接続されるが、それらは空気や燃料ガスや改質水と排ガス(第1排ガス)との熱交換のために配置されるものであるので、後述するように、空気導入流路61や燃料ガス導入流路47や改質水流路51(従って各流路61、47、51が接続される気化器13及び空気予熱器15の内部)と、流路部材53の内部排ガス流路54とは分離されている。
【0040】
また、前記バーナ17は、前記燃料電池複合体35の下方に配置されて、燃料電池システム1の始動時に、燃料電池スタック3を運転温度に加熱する加熱装置であり、このバーナ17には、燃料ガスと空気を混合する混合器29を介して、空気を混合器29に送る前記空気ポンプ31が接続されている。
【0041】
ここで、前記バーナ17の配置と、前記気化器13と空気予熱器15との構造について、更に詳しく説明する。
図3(a)、(b)に具体的に示す様に、前記流路部材53は、前記バーナ17の側方の周囲をコの字形に囲むように、前記燃料電池複合体35の下方に配置されている。
【0042】
また、
図3(c)に示す様に、流路部材53の一方(同図左側)のL字状の部分は、空気予熱器15として構成されている。つまり、同図の上側の流路に空気を流し、下側の流路に排ガスを流すことにより、空気と排ガスとの間で熱交換を行うことにより空気を予熱している。なお、前記下方のコ字状の流路が、前記内部排ガス流路54である。
【0043】
同様に、
図3(c)に示す様に、流路部材53の他方(同図右側)のL字状の部分は、気化器13として構成されている。つまり、同図の上側の流路に水と燃料ガスを流し、下側の流路に排ガスを流すことにより、水と排ガスとの間で熱交換を行うことにより水を気化している。
【0044】
b)次に、本実施例の燃料電池システム1の動作ついて説明する。
前記
図1に示す様に、燃料電池システム1の始動時には、空気ポンプ31を作動させる。これにより、空気が混合器29に送られ、この混合器29にて燃料ガスと空気とが混合され、この混合ガスがバーナ17に供給される。
【0045】
バーナ17では、この混合ガスが燃焼することにより、燃料電池スタック3等の加熱が行われる。
このバーナ17で燃焼した排ガス(第2排ガス)は、断熱容器5の内部空間65に排出されるとともに、内部空間65から、第2排ガス流路59を介して断熱容器5外に排出される。
【0046】
また、空気ポンプ19を作動させることにより、空気が(燃料電池スタック3の)各燃料電池セル33の空気流路45に供給される。このとき、空気予熱器15によって、空気の予熱が行われる。
【0047】
同時に、燃料ポンプ21を作動させることにより、(例えば都市ガスである)燃料ガスが気化器13に送られるとともに、改質水ポンプ23を作動させることにより、改質水がフィルタ49を介して気化器13に送られる。
【0048】
この気化器13では、改質水が加熱されて気化して水蒸気となり、この水蒸気と燃料ガスとが混合され、この混合ガスが改質器11に送られる。
改質器11では、(吸熱反応である)水蒸気改質によって燃料ガスが改質されて水素リッチの燃料ガス(改質ガス)となり、この改質ガスが各燃料電池セル3の燃料流路37に送られる。
【0049】
従って、各燃料電池セル3では、上述の様にして供給された空気(即ち酸素)と改質ガス(即ち水素)とにより発電が行われる。
そして、発電後の空気と改質ガスとは、排ガス燃焼器9に送られて燃焼する(水蒸気となる)ことにより、隣接した改質器11や燃料電池スタック3の加熱が行われる。
【0050】
また、排ガス燃焼器9で燃焼された排ガス(第1排ガス)は、流路部材53に送られて、空気予熱器15にて空気を加熱するとともに、気化器13にて改質水を気化するため(即ち熱交換のため)に利用される。
【0051】
そして、上述した熱交換の後に、流路部材53から排出された排ガス(第1排ガス)は、断熱容器5の内部空間65に排出されることなく、第1排ガス流路55を介して、断熱容器5の外部の水回収器25に排出される。
【0052】
この水回収器25では、冷却水との熱交換によって排ガスが冷却され、排ガス中に含まれる水分が凝縮水として取り出されて、凝縮水タンク27に貯溜される。なお、凝縮水が取り出された残りの排ガスは、排気流路57を介して外部に排出される。
【0053】
また、凝縮水タンク27に貯溜された凝縮水は、上述した様に、改質水ポンプ23によって汲み上げられて、改質水として気化器13に供給され、改質器11における燃料ガスの改質に利用される。
【0054】
そして、この様な動作が繰り返されることによって、発電が継続される。
c)次に、本実施例の作用効果について説明する。
本実施例では、燃料電池スタック3から排出される発電後の第1排ガスを(断熱容器5内に排出すること無く)断熱容器5外に排出する第1排ガス流路55と、バーナ17の加熱によって生じる第2排ガスを断熱容器5外に排出する第2排ガス流路59とを分離し、断熱容器5内にて第1排ガスと第2排ガスとが混ざらないようにしている。
【0055】
これにより、断熱容器5が水分によって劣化して脱落するセラミック材料で形成されている場合でも、第1排ガスにはセラミック材料が混入することがない。よって、第1排ガスから水分を回収する場合に、セラミック材料によってフィルタ49や改質水流路51に目詰まりが生ずることが無い。これにより、燃料電池モジュール1の機能を損なうことなく、容易に且つ有効に排ガスに含まれる資源(水)を有効利用することができる。
【0056】
また、本実施例では、第1排ガスに水分が含まれていても、その水分は、断熱容器5内に排出されないので、断熱容器5の材料の選択範囲が広がるという利点がある。つまり、水分に対しては弱いが、高温耐熱性や断熱性に優れた材料を使用することができる。
【0057】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
(1)例えば改質器の上側のみ、もしくは上側及び下側の両方に排ガス燃焼器を配置してもよい。
【0058】
(2)また、例えば空気予熱器を省略することもできる。
(3)更に、フィルタの位置は、改質水ポンプの下流側のみ、上流側のみ、もしくは上流側と下流側の両方であってもよい。
【0059】
(4)改質水によって改質される燃料ガスとしては、例えば都市ガスが挙げられる。