特許第5753762号(P5753762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753762
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】可変動弁機構
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20150702BHJP
   F01L 1/34 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   F01L1/356 C
   F01L1/34 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-234263(P2011-234263)
(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公開番号】特開2013-92094(P2013-92094A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 憲
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】木戸岡 昭夫
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−141018(JP,A)
【文献】 特開平03−088907(JP,A)
【文献】 特開2003−129812(JP,A)
【文献】 特開平10−196323(JP,A)
【文献】 特開平10−196322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/356
F01L 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一気筒に対して設けられた第一バルブ(3)及び第二バルブ(4)の一対のバルブを駆動する可変動弁機構(9b)において、
内燃機関の回転に従い回転する駆動シャフト(10)と、該駆動シャフト(10)に一方の軸線方向(L)に進むに従い一方の周方向(P)にずれる一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで連結されたカムシャフト(20)と、該カムシャフト(20)に一方の軸線方向(L)に進むに従い他方の周方向(Q)にずれる他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して前記第一バルブ(3)を駆動するカムピース(30)とを備え、
前記駆動シャフト(10)側のヘリカルスプライン(14)及び前記カムピース(30)側のヘリカルスプライン(33)に対して、それらと噛み合う前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプライン(24,23)を軸線方向(L,R)に駆動した際には、前記駆動シャフト(10)に対する前記カムシャフト(20)の回動と、該カムシャフト(20)に対する前記カムピース(30)の同方向への回動との和により、前記カムピース(30)の回転位相が変化し、
前記第二バルブ(4)に対しては、前記駆動シャフト(10)に相対回動不能に設けられて該第二バルブ(4)を駆動する固定カムロブ(11)を備えたことを特徴とする可変動弁機構。
【請求項2】
一列に並ぶ各気筒に対して第一バルブ(3)及び第二バルブ(4)の一対ずつ設けられた複数対のバルブを駆動する可変動弁機構(9, 9’)において、
内燃機関の回転に従い回転する駆動シャフト(10)と、該駆動シャフト(10)に一方の軸線方向(L)に進むに従い一方の周方向(P)にずれる一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで連結されたカムシャフト(20)とを備えるとともに、各気筒の第一バルブ(3)に対しては、前記カムシャフト(20)に一方の軸線方向(L)に進むに従い他方の周方向(Q)にずれる他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して該第一バルブ(3)を駆動する第一カムピース(30)を備え、一端の気筒の第二バルブ(4)に対しては、前記駆動シャフト(10)に相対回動不能に設けられて該第二バルブ(4)を駆動する固定カムロブ(11)を備え、前記一端の気筒以外の各気筒の第二バルブ(4)に対しては、前記カムシャフト(20)に一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して該第二バルブ(4)を駆動する第二カムピース(40)を備え、
前記駆動シャフト(10)側のヘリカルスプライン(14)並びに前記第一カムピース(30)側のヘリカルスプライン(33)及び前記第二カムピース(40)側のヘリカルスプライン(44)に対して、それらと噛み合う前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプライン(24,23,24)を軸線方向(L,R)に駆動した際には、前記駆動シャフト(10)に対する前記カムシャフト(20)の回動と、該カムシャフト(20)に対する各第一カムピースの同方向への回動との和により、各第一カムピース(30)の回転位相が変化し、前記駆動シャフト(10)に対する前記カムシャフト(20)の回動と、該カムシャフト(20)に対する各第二カムピース(40)の逆方向への回動との相殺により、各第二カムピース(40)の回転位相の変化が抑えられることを特徴とする可変動弁機構。
【請求項3】
前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプライン(23,24)は、前記カムシャフト(20)に周方向(P,Q)に相対変位不能かつ軸線方向(L,R)に相対変位不能に外嵌されたスライダギア(22)の外周面に設けられ、
前記カムシャフト(20)及び前記スライダギア(22)が軸線方向(L,R)に駆動されることにより、前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプラインが軸線方向(L,R)に駆動される請求項1又は2記載の可変動弁機構。
【請求項4】
前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプライン(23,24)は、前記カムシャフト(20)に周方向(P,Q)に相対変位不能かつ軸線方向(L,R)に相対変位可能に外嵌されたスライダギア(22)の外周面に設けられ、
前記カムシャフト(20)に対して前記スライダギア(22)が軸線方向(L,R)に駆動されることにより、前記カムシャフト(20)側のヘリカルスプラインが軸線方向(L,R)に駆動される請求項1又は2記載の可変動弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブを駆動するとともにその駆動タイミングを変更する可変動弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図8(a)に示す従来例(特許文献1)の可変動弁機構90は、内燃機関の回転に従い回転するカムシャフト92と、該カムシャフト92にヘリカルスプライン93hの噛み合いで係合して第一バルブ3を駆動する第一カムロブ93と、カムシャフト92に一体的に設けられて第二バルブ4を駆動する第二カムロブ94とを含み構成されている。そして、カムシャフト92を軸線方向L,Rに駆動することにより、ヘリカルスプライン93hの噛み合いで第一カムロブ93の回転位相を変更する。
【0003】
【特許文献1】特開平6−346711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来例では、図8(b)に示すように、第二バルブ4の駆動タイミングを保ったまま第一バルブ3の駆動タイミングを変更することができるが、本発明者は、該従来例よりも更に大きく第二バルブ4の駆動タイミングに対する第一バルブ3の駆動タイミングを変更できれば好ましいと考えた。そこで、本発明者は、まず、ヘリカルスプライン93hの角度を急にして第一カムロブ93の回転位相変化を大きくすることを考えた。しかし、ヘリカルスプライン93hの角度を急にしたのでは、第一カムロブ93で第一バルブ3を駆動した際にヘリカルスプライン93hを介してカムシャフト92に加わる軸線方向L,Rへの反力が大きくなったり、カムシャフト92を軸線方向L,Rに駆動する際の抵抗が大きくなるため好ましくない。
【0005】
そこで、本発明者は、次に、図9(a)に示す改良例(未公開)の可変動弁機構90’のように、第二カムロブ94をカムシャフト92に一体的に設けるのではなく、別体的に設けてカムシャフト92に第一カムロブ93とは逆方向のヘリカルスプライン94hの噛み合いで係合させることを考えた。この改良例によれば、カムシャフト92を軸線方向L,Rに駆動した際には、第一カムロブ93と第二カムロブ94とが互いに反対方向に回動するため、第二バルブ4の駆動タイミングに対する第一バルブ3の駆動タイミングを十分大きく変更することができる。しかし、図9(b)に示すように、第二バルブ4の駆動タイミングまでも変更されるため、一旦、第二バルブ4の駆動タイミングをカムシャフト92に設けたVVT(バルブタイミング可変装置)で所望のタイミングに合わせても、第一バルブ3の駆動タイミングを変更しようとすれば、第二バルブ4の駆動タイミングも所望のタイミングからずれてしまう。そのため、そのずれをなくすためには、そのずれを相殺する方向にカムシャフト92をVVTで回転させなければならず、VVTによる駆動幅が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、ヘリカルスプラインの角度を急にすることなく、バルブ(第一バルブ)の駆動タイミングを十分大きく変更できるようにすることを第一の目的とし、それに加えて、第二バルブの駆動タイミングの変化を抑えることを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の第一及び第二の目的を達成するため、本発明の[1]の可変動弁機構は、同一気筒に対して設けられた第一バルブ及び第二バルブの一対のバルブを駆動する可変動弁機構において、内燃機関の回転に従い回転する駆動シャフトと、該駆動シャフトに一方の軸線方向に進むに従い一方の周方向にずれる一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで連結されたカムシャフトと、該カムシャフトに一方の軸線方向に進むに従い他方の周方向にずれる他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して前記第一バルブを駆動するカムピースとを備え、前記駆動シャフト側のヘリカルスプライン及び前記カムピース側のヘリカルスプラインに対して、それらと噛み合う前記カムシャフト側のヘリカルスプラインを軸線方向に駆動した際には、前記駆動シャフトに対する前記カムシャフトの回動と、該カムシャフトに対する前記カムピースの同方向への回動との和により、前記カムピースの回転位相が変化し、前記第二バルブに対しては、前記駆動シャフトに相対回動不能に設けられて該第二バルブを駆動する固定カムロブを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記第一及び第二の目的を達成するため、本発明の[4]の可変動弁機構は、一列に並ぶ各気筒に対して第一バルブ及び第二バルブの一対ずつ設けられた複数対のバルブを駆動する可変動弁機構において、内燃機関の回転に従い回転する駆動シャフトと、該駆動シャフトに一方の軸線方向に進むに従い一方の周方向にずれる一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで連結されたカムシャフトとを備えるとともに、各気筒の第一バルブに対しては、前記カムシャフトに一方の軸線方向に進むに従い他方の周方向にずれる他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して該第一バルブを駆動する第一カムピースを備え、一端の気筒の第二バルブに対しては、前記駆動シャフトに相対回動不能に設けられて該第二バルブを駆動する固定カムロブを備え、前記一端の気筒以外の各気筒の第二バルブに対しては、前記カムシャフトに一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで係合して該第二バルブを駆動する第二カムピースを備え、前記駆動シャフト側のヘリカルスプライン並びに前記第一カムピース側のヘリカルスプライン及び前記第二カムピース側のヘリカルスプラインに対して、それらと噛み合う前記カムシャフト側のヘリカルスプラインを軸線方向に駆動した際には、前記駆動シャフトに対する前記カムシャフトの回動と、該カムシャフトに対する各第一カムピースの同方向への回動との和により、各第一カムピースの回転位相が変化し、前記駆動シャフトに対する前記カムシャフトの回動と、該カムシャフトに対する各第二カムピースの逆方向への回動との相殺により、各第二カムピースの回転位相の変化が抑えられることを特徴とする。
【0010】
前記カムシャフト側のヘリカルスプラインの態様は、特に限定されないが、次の[5][6]の態様を例示する。
[5]前記カムシャフト側のヘリカルスプラインは、前記カムシャフトに周方向に相対変位不能かつ軸線方向に相対変位不能に外嵌されたスライダギアの外周面に設けられ、前記カムシャフト及び前記スライダギアが軸線方向に駆動されることにより、前記カムシャフト側のヘリカルスプラインが軸線方向に駆動される態様。
[6]前記カムシャフト側のヘリカルスプラインは、前記カムシャフトに周方向に相対変位不能かつ軸線方向に相対変位可能に外嵌されたスライダギアの外周面に設けられ、前記カムシャフトに対して前記スライダギアが軸線方向に駆動されることにより、前記カムシャフト側のヘリカルスプラインが軸線方向に駆動される態様。
【発明の効果】
【0011】
発明によれば、ヘリカルスプラインの角度を急にしなくても、バルブ(第一バルブ)の駆動タイミングを十分大きく変更できるようにすることができる。また、本発明によれば、第二バルブの駆動タイミングの変化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の可変動弁機構を示す斜視図である。
図2】(a)は、実施例1においてカムシャフトを右方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す斜視図、及び(b)は、実施例1においてカムシャフトを左方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す斜視図である。
図3】(a)は、実施例1においてカムシャフトを右方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す正面断面図、及び(b)は、実施例1においてカムシャフトを左方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す正面断面図である。
図4】(a)は、実施例1においてカムシャフトを右方に駆動した際の第一カムピースの状態を示す側面断面図、及び(b)は、実施例1においてカムシャフトを左方に駆動した際の第一カムピースの状態を示す側面断面図である。
図5】(a)は、実施例1においてカムシャフトを右方に駆動した際の第二カムピースの状態を示す側面断面図、及び(b)は、実施例1において、カムシャフトを左方に駆動した際の第二カムピースの状態を示す側面断面図である。
図6】(a)は、実施例1においてカムシャフトを右方に駆動した際のバルブリフト曲線を示すグラフ、及び(b)は、カムシャフトを左方に駆動した際のバルブリフト曲線を示すグラフである。
図7】(a)は、実施例2においてカムシャフトを右方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す正面断面図、及び(b)は、実施例2においてカムシャフトを左方に駆動した際の可変動弁機構の状態を示す正面断面図である。
図8】(a)は、従来例の可変動弁機構を示す正面図、及び(b)は、そのバルブリフト曲線を示すグラフである。
図9】(a)は、改良例の可変動弁機構を示す正面図、及び(b)は、そのバルブリフト曲線を示すグラフである。
【実施例1】
【0013】
図1図6に示す本実施例1の可変動弁機構9は、左右方向L,Rに一列に並ぶ複数の気筒の全ての吸気バルブ又は全ての排気バルブを駆動するための機構であって、左端の気筒以外の全ての各気筒に対して設けられた複数の第一可変動弁機構9a,9a・・と、左端の気筒に対して設けられた一の第二可変動弁機構9bとを含み構成されている。なお、実施例1,2では、便宜上、図(正面図)に合わせて、カムシャフト20の軸線方向の一方を左方Lといい、他方を右方Rという。
【0014】
[第一可変動弁機構9a,9a・・]
各第一可変動弁機構9aは、同一気筒に対して設けられた一対のバルブ3,4を、ロッカアーム3r,4rを介してバルブスプリング3s,4sの復元力に抗して押圧して駆動する機構である。各第一可変動弁機構9aは、次に示す、全ての第一可変動弁機構9a,9a・・及び第二可変動弁機構9bに共通の駆動シャフト10及びカムシャフト20と、各第一可変動弁機構9a毎に一つずつ設けられた第一カムピース30及び第二カムピース40とを含み構成されている。
【0015】
駆動シャフト10は、内燃機関が2回転する毎に1回転するシャフトであって、左右方向L,Rには変位不能に構成されている。詳しくは、この駆動シャフト10は、左端にプーリ(図示略)が相対変位不能に固定されており、そのプーリに架けられたタイミングベルト(図示略)によって駆動される。また、この駆動シャフト10は、ストッパ機構(図示略)によって左右方向L,Rへの変位が規制されている。また、この駆動シャフト10の右端の端面には、該右端の端面から左方Lに凹む側面視で円形の凹部が形成されており、該凹部の内周面には一方向側(左方Lに進むに従い回転方向Pにずれる側をいう。以下同じ。)に捩れる内周側ヘリカルスプライン14が形成されている。また、この駆動シャフト10の長さ方向中間部には、該駆動シャフト10の左部に対する右部の回転位相を変更するためのVVT(バルブタイミング可変装置)が設けられている。
【0016】
カムシャフト20は、駆動シャフト10に一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで連結されて該駆動シャフト10と共に回転するシャフトであって、左右方向L,Rに変位可能に構成されている。詳しくは、このカムシャフト20は、シリンダヘッドの立壁部6,6・・に設けられた支持孔7,7・・に挿通されることによって、左右方向L,Rに変位可能に支持されている。そして、このカムシャフト20の各気筒に対応する部分には、スライダギア22,22・・が外嵌され、各スライダギア22,22・・は連結部材25,25・・で該カムシャフト20に対して左右方向L,Rにも周方向(回転方向P及び反回転方向Q)にも相対変位不能に連結されている。その各スライダギア22の右部の外周面には、他方向側(左方Lに進むに従い反回転方向Qにずれる側をいう。以下同じ。)に捩れる第一ヘリカルスプライン23が設けられ、各スライダギア22の左部の外周面には、一方向側に捩れる第二ヘリカルスプライン24が設けられている。そして、それら複数のスライダギア22,22・・のうち最も左側にあるスライダギア22の第二ヘリカルスプライン24が、駆動シャフト10の右端にある内周側ヘリカルスプライン14と噛み合うことによって、駆動シャフト10にカムシャフト20が一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで連結されている。また、このカムシャフト20の右端部には、該カムシャフト20を左右方向L,Rに駆動するスラスト駆動装置(図示略)の駆動部が係合している。
【0017】
第一カムピース30は、カムシャフト20に他方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで係合して第一バルブ3を駆動する部材であって、左右方向L,Rには変位不能に構成されている。詳しくは、この第一カムピース30は、カムシャフト20に外嵌される筒状の部材であって、外周部には、第一バルブ3を駆動する第一カムロブ31が設けられている。また、この第一カムピース30の内周面には、他方向側に捩れる内周側ヘリカルスプライン33が設けられ、その内周側ヘリカルスプライン33がスライダギア22の第一ヘリカルスプライン23と噛み合うことにより、カムシャフト20に他方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。また、この第一カムピース30は、その左端部が第二カムピース40に当接し、その右端部が立壁部6に介在部材8を介して当接することにより左右方向L,Rへの変位が規制されている。また、更に、この第一カムピース30の左端部には、第二カムピース40の右端部に外周側から当接することにより該第二カムピース40が該第一カムピース30に対して径方向にずれるのを防止する係合部35(インロー・アウトハイ部)が設けられている。
【0018】
第二カムピース40は、カムシャフト20に一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで係合して第二バルブ4を駆動する部材であって、左右方向L,Rには変位不能に構成されている。詳しくは、この第二カムピース40は、カムシャフト20に外嵌される筒状の部材であって、外周部には、第二バルブ4を駆動する第二カムロブ41が設けられている。また、この第二カムピース40の内周面には、一方向側に捩れる内周側ヘリカルスプライン44が設けられ、その内周側ヘリカルスプライン44がスライダギア22の第二ヘリカルスプライン24と噛み合うことにより、カムシャフト20に一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。また、この第二カムピース40は、その左端部が立壁部6に介在部材8を介して当接し、その右端部が第一カムピース30に当接することにより左右方向L,Rへの変位が規制されている。
【0019】
[第二可変動弁機構9b]
第二可変動弁機構9bは、左端の気筒に対して設けられた一対のバルブ3,4を、ロッカアーム3r,4rを介してバルブスプリング3s,4sの復元力に抗して押圧して駆動する機構である。この第二可変動弁機構9bは、上述した駆動シャフト10及びカムシャフト20と、第一可変動弁機構9aの第一カムピース30と同様の第一カムピース30と、第二バルブ4を駆動する固定カムロブ11とを含み構成されている。その固定カムロブ11は、駆動シャフト10の外周部に一体形成されており、該駆動シャフト10とともに回転する。
【0020】
次に、本実施例1の可変動弁機構9により第一バルブ3,3・・の駆動タイミングを変更する際の様子を{1}内燃機関の低速回転時と、{2}内燃機関の高速回転時とに分けて説明する。
【0021】
{1}内燃機関の低速回転時
内燃機関の低速回転時には、図2(a)及び図3(a)に示すように、カムシャフト20が右方Rに駆動され、これに伴い、カムシャフト20が、駆動シャフト10との間の一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該駆動シャフト10に対して反回転方向Qに角度θだけ回動する。
【0022】
このとき、各第一カムピース30,30・・は、図4(a)に示すように、カムシャフト20との間の他方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該カムシャフト20に対して反回転方向Qに角度θだけ回動する。その回動と、上記のカムシャフト20の反回転方向Qへの角度θの回動との和により、各第一カムピース30,30・・の回転位相が反回転方向Qに角度2θだけ変化する。なお、各図で示す二重の矢印(→→)は、駆動シャフト10に対するカムシャフト20の回動と、該カムシャフト20に対する第一カムピース30の回動との和を示している。
【0023】
また、このとき、各第二カムピース40,40・・は、図5(a)に示すように、カムシャフト20との間の一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該カムシャフト20に対して回転方向Pに角度θだけ回動する。その回動と、上記のカムシャフト20の反回転方向Qへの角度θの回動との相殺により、各第二カムピース40,40・・の回転位相の変化が零に抑えられる。また、このとき、固定カムロブ11の回転位相も、該固定カムロブ11は駆動シャフト10に一体形成されているため変化しない。
【0024】
これにより、各気筒では、図6(a)に示すように、第二バルブ4の駆動タイミングは変化することなく、第一バルブ3の駆動タイミングのみが遅くなる。
【0025】
{2}内燃機関の高速回転時
内燃機関の高速回転時には、図2(b)及び図3(b)に示すように、カムシャフト20が左方Lに駆動され、これに伴い、カムシャフト20が、駆動シャフト10との間の一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該駆動シャフト10に対して回転方向Pに角度φだけ回動する。
【0026】
このとき、各第一カムピース30,30・・は、図4(b)に示すように、カムシャフト20との間の他方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該カムシャフト20に対して回転方向Pに角度φだけ回動する。その回動と、上記のカムシャフト20の回転方向Pへの角度φの回動との和により、各第一カムピース30,30・・の回転位相が回転方向Pに角度2φだけ変化する。
【0027】
また、このとき、各第二カムピース40,40・・は、図5(b)に示すように、カムシャフト20との間の一方向側に捩れるヘリカルスプラインの噛み合いで該カムシャフト20に対して反回転方向Qに角度φだけ回動する。その回動と、上記のカムシャフト20の回転方向Pへの角度φの回動との相殺により、各第二カムピース40,40・・の回転位相の変化が零に抑えられる。また、このとき、固定カムロブ11の回転位相も、該固定カムロブ11は駆動シャフト10に一体形成されているため変化しない。
【0028】
これにより、各気筒では、図6(b)に示すように、第二バルブ4の駆動タイミングは変化することなく、第一バルブ3の駆動タイミングのみが早くなる。
【0029】
本実施例1によれば、上記の通りヘリカルスプラインが設けられているため、ヘリカルスプラインの角度を急にすることも、第二バルブ4の駆動タイミングを変更することもなく、第一バルブ3の駆動タイミングだけを十分大きく変更できるようにすることができる。
【実施例2】
【0030】
図7に示す本実施例2の可変動弁機構9’は、実施例1の可変動弁機構9とは、カムシャフト20が左右方向L,Rに変位不能に設けられている点、カムシャフト20にスライダギア22が、左右方向L,Rに延びる突条状のキー(図示略)とそれと嵌合する嵌合溝(図示略)とを介して、左右方向L,Rには相対変位可能かつ周方向(回転方向P及び反回転方向Q)には相対回動不能に係合している点、カムシャフト20の内側にコントロールシャフト28が左右方向L,Rに変位可能に設けられている点、スライダギア22はカムシャフト20に対してではなくコントロールシャフト28に対して連結部材25,25・・を介して相対変位不能に連結されている点、カムシャフト20には連結部材25,25・・を挿通させるための左右方向L,Rに延びる長孔26,26・・が設けられている点、及びスラスト駆動装置(図示略)の駆動部はカムシャフト20の右端部に対してではなくコントロールシャフト28の右端部に対して係合している点で相違し、その他の点においては実施例1と同様である。
【0031】
次に、本実施例2の可変動弁機構9’により第一バルブ3,3・・の駆動タイミングを変更する際の様子を{1}内燃機関の低速回転時と、{2}内燃機関の高速回転時とに分けて説明する。
【0032】
{1}内燃機関の低速回転時
内燃機関の低速回転時には、図7(a)に示すように、コントロールシャフト28によってスライダギア22が右方Rに駆動され、これに伴い、スライダギア22及びカムシャフト20が、駆動シャフト10に対して一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで反回転方向Qに角度θだけ回動する。
【0033】
このとき、各第一カムピース30,30・・は、スライダギア22及びカムシャフト20に対して他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで反回転方向Qに角度θだけ回動する。その回動と、上記のスライダギア22及びカムシャフト20の反回転方向Qへの角度θの回動との和により、各第一カムピース30,30・・の回転位相が反回転方向Qに角度2θだけ変化する。
【0034】
また、このとき、各第二カムピース40,40・・は、スライダギア22及びカムシャフト20に対して一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで回転方向Pに角度θだけ回動する。その回動と、上記のスライダギア22及びカムシャフト20の反回転方向Qへの角度θの回動との相殺により、各第二カムピース40,40・・の回転位相の変化が零に抑えられる。また、このとき、固定カムロブ11の回転位相も、該固定カムロブ11は駆動シャフト10に一体形成されているため変化しない。
【0035】
これにより、各気筒では、第二バルブ4の駆動タイミングは変化することなく、第一バルブ3の駆動タイミングのみが遅くなる。
【0036】
{2}内燃機関の高速回転時
内燃機関の高速回転時には、図7(b)に示すように、コントロールシャフト28によってスライダギア22が左方Lに駆動され、これに伴い、スライダギア22及びカムシャフト20が、駆動シャフト10に対して一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで回転方向Pに角度φだけ回動する。
【0037】
このとき、各第一カムピース30,30・・は、スライダギア22及びカムシャフト20に対して他方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで回転方向Pに角度φだけ回動する。その回動と、上記のスライダギア22及びカムシャフト20の回転方向Pへの角度φの回動との和により、各第一カムピース30,30・・の回転位相が回転方向Pに角度2φだけ変化する。
【0038】
また、このとき、各第二カムピース40,40・・は、スライダギア22及びカムシャフト20に対して一方向側のヘリカルスプラインの噛み合いで反回転方向Qに角度φだけ回動する。その回動と、上記のスライダギア22及びカムシャフト20の回転方向Pへの角度φの回動との相殺により、各第二カムピース40,40・・の回転位相の変化が零に抑えられる。また、このとき、固定カムロブ11の回転位相も、該固定カムロブ11は駆動シャフト10に一体形成されているため変化しない。
【0039】
これにより、各気筒では、第二バルブ4の駆動タイミングは変化することなく、第一バルブ3の駆動タイミングのみが早くなる。
【0040】
本実施例2によっても、実施例1と同様、ヘリカルスプラインの角度を急にすることも、第二バルブ4の駆動タイミングを変更することもなく、第一バルブ3の駆動タイミングだけを十分大きく変更できるようにすることができる。
【0041】
なお、本発明は上記の実施例1,2の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0042】
3 第一バルブ
4 第二バルブ
9 可変動弁機構
9’ 可変動弁機構
9a 第一可変動弁機構
9b 第二可変動弁機構
10 駆動シャフト
11 固定カムロブ
14 内周側ヘリカルスプライン(駆動シャフト側のヘリカルスプライン)
20 カムシャフト
22 スライダギア
23 第一ヘリカルスプライン(カムシャフト側のヘリカルスプライン)
24 第二ヘリカルスプライン(カムシャフト側のヘリカルスプライン)
30 第一カムピース
33 内周側ヘリカルスプライン(第一カムピース側のヘリカルスプライン)
40 第二カムピース
44 内周側ヘリカルスプライン(第二カムピース側のヘリカルスプライン)
L 左方向(一方の軸線方向)
R 右方向(他方の軸線方向)
P 回転方向(一方の周方向)
Q 反回転方向(他方の周方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9