特許第5753773号(P5753773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リケンテクノス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753773
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ラップフィルム収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/72 20060101AFI20150702BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B65D5/72 ABRJ
   B65D65/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-272812(P2011-272812)
(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-124111(P2013-124111A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英将
(72)【発明者】
【氏名】堀井 貴央
【審査官】 村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−020223(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00108990(EP,A2)
【文献】 特開2009−035301(JP,A)
【文献】 実開昭58−113651(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたラップフィルムを収納する箱であって、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)の各壁面で形成される、上部が開口した高さHの直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有するラップフィルム収納箱において、掩蓋片(1)の先端部が、その長手方向の両端部に切り欠きまたは切込みを有して、一方の切り欠きまたは切込みと他方の切り欠きまたは切込みとの間にフラップを形成しており、かつ前面板(5)の上端縁の全部または該上端縁の両端部もしくは一方の端部を除く全部が上記直方体の高さHよりも低い位置にあるように、前面板(5)の上端部が切り取られており、掩蓋片(1)の該フラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じたときに、該切り取りによって生じた、上記直方体の高さよりも低い位置にある前面板(5)の上端縁の端における角と該切り欠きまたは該切込みとが互いにかみ合うことを特徴とする収納箱。
【請求項2】
巻回されたラップフィルムを請求項1に記載の収納箱に収納した製品。
【請求項3】
ラップフィルムの横方向の端部の少なくとも一方に幅0.1〜10mmのローレット加工および/またはレーザー加工が施されていることを特徴とする、請求項2に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭、食料品販売業、飲食物提供役務等において、主として食品の包装用に汎用されているラップフィルムを巻回したものを収納する箱に関する。更に詳しくは、鋸歯等の切断具の無い収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルムは例えば図7に示すような直方体の箱に納められた巻回フィルムとして提供されており、ここから必要分量を引出し、何らかの方法で長さ方向に対して横に切断し、使用に供される。横に切断する方法としては、箱の掩蓋片等に配備された長尺の金属製鋸歯によるものが最も一般的である。
【0003】
しかし、金属製鋸歯は、手を怪我する等の安全性の問題や紙製の箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分別しなくてはいけないという問題があり、これらの問題を解決するために、鋸歯に替えて、異形の金属粉を接着したシートを切断具に用いたり(特許文献1)、巻回フィルムがその長さ方向に連続した加工傷を有し、その加工傷域と接触する箱の局部に金属片やバルカナイズド紙片等の切断補助具を設けたり(特許文献2)することが提案されている。しかし、上述した安全性の問題や分別の問題は依然として残っている。
【0004】
また、巻回フィルムの横方向の端部に一定間隔で切れ目を設けることにより、鋸歯等の切断具がない箱でも切れ目に沿ってフィルムを切断できる方法が提案されている(特許文献3)。しかし、従来の箱から単に鋸歯を無くしただけの箱では、フィルムのカット性が不十分である。また、箱の一部が切断具の役目を果たすため、巻回フィルムを使い切る前に上記箱の一部が傷んでしまい、フィルムの切断ができなくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−217345号公報
【特許文献2】特開平11−124133号公報
【特許文献3】特開2001−322636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、巻回フィルムを収納した箱に鋸歯等の切断具が無くても、実用上満足のできるカット性を発現し、かつその効果を、収納したフィルムを使い切るまで維持することのできるラップフィルム収納箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、従来のラップフィルム収納箱において、掩蓋片(1)の先端部が、その長手方向の両端部に切り欠きを有し、該切り欠きが前面板(5)の上端縁とかみ合うように、前面板(5)の上端部を切り取ると、収納箱から引き出したラップフィルムの幅方向の端部を上記かみ合いによって挟むことにより、箱に鋸歯等の切断具が無くてもフィルムを良好に切断することができ、上記目的を達成することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、巻回されたラップフィルムを収納する箱であって、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)の各壁面で形成される、上部が開口した高さHの直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有するラップフィルム収納箱において、掩蓋片(1)の先端部が、その長手方向の両端部に切り欠きまたは切込みを有して、一方の切り欠きまたは切込みと他方の切り欠きまたは切込みとの間にフラップを形成しており、かつ前面板(5)の上端縁の全部または該上端縁の両端部もしくは一方の端部を除く全部が上記直方体の高さHよりも低い位置にあるように、前面板(5)の上端部が切り取られており、掩蓋片(1)の該フラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じたときに、該切り取りによって生じた、上記直方体の高さよりも低い位置にある前面板(5)の上端縁の端における角と該切り欠きまたは該切込みとが互いにかみ合うことを特徴とする収納箱である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の収納箱は、鋸歯等の切断具を何ら有していなくてもフィルムを良好に切断することができるので、手を怪我する等の安全性の問題や、紙製の箱と金属製の鋸歯とを廃棄時に分別しなくてはいけないという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の収納箱の一例を示す斜視図である。
図2図1の収納箱において、掩蓋片(1)の先端部に形成されたフラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じた状態の斜視図である。
図3-1】掩蓋片(1)の形状の例を示す正面図である。
図3-2】掩蓋片(1)の形状の例を示す正面図である。
図3-3】掩蓋片(1)の形状の例を示す正面図である。
図3-4】掩蓋片(1)の形状の例を示す正面図である。
図4-1】前面板(5)の形状の例を示す正面図である。
図4-2】前面板(5)の形状の例を示す正面図である。
図5図1の収納箱の展開図である。
図6】ローレット加工が施されたフィルムの表面を写真撮影した図である。
図7】従来の収納箱を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のラップフィルム収納箱を、図を参照して説明する。図1は、本発明の収納箱の一例を示す斜視図である。本発明の収納箱は、前面板(5)、底面板(4)、後面板(6)および側面板(3)の各壁面で形成される、上部が開口した高さHの直方体の収納室と、後面板(6)の上端縁から収納室の開口部を覆う方向に連接した開閉可能な蓋面板(2)と、蓋面板(2)の前端縁から前面板(5)を覆う方向に延出した掩蓋片(1)とを有し、掩蓋片(1)の先端部が、その長手方向の両端部に切り欠きまたは切込みを有して、一方の切り欠きまたは切込みと他方の切り欠きまたは切込みとの間にフラップを形成しており、かつ掩蓋片(1)の上記フラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じたときに該切り欠きまたは切込みが前面板(5)の上端縁の角Cとかみ合うように、前面板(5)の上端部が切り取られている。
【0012】
図2は、図1の収納箱において、掩蓋片(1)の先端部に形成されたフラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じた状態の斜視図である。図2に示されるように、本発明の収納箱は、蓋面板(2)をこのように閉じたときに掩蓋片(1)の切り欠き(または切込み)が前面板(5)の上端縁の角Cとかみ合うように構成されている。したがって、収納箱に収納されているラップフィルムを引き出しそして図2のように蓋面板(2)を閉じたときに、ラップフィルムの幅方向の端部を上記かみ合い部分に挟むことができる。その結果、ラップフィルムの上記端部に力が集中して切断のきっかけを生じ、箱に鋸歯等の切断具が無くても、掩蓋片(1)の、前面板(5)の上端縁との接触部分あるいは前面板(5)の上端縁に沿ってフィルムを良好に切断することができる。本発明の収納箱は、長手方向の両方の端部に上記かみ合い部分があるので、ラップフィルムを幅方向の左右どちらの端部からでも切断することができる。
【0013】
以下に、切り欠きまたは切込みを有する掩蓋片(1)および上端縁が切り取られている前面板(5)について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、掩蓋片(1)の先端部に形成されたフラップの先端縁が蓋面板(2)の前端縁と平行である場合について説明するが、本発明は上記フラップの先端縁がそのように平行である場合に限定されない。
【0014】
図3は、掩蓋片(1)に形成され得る切り欠きおよび切込みの例を示す図である。切り欠きは、例えば、図3の(イ)〜(ヘ)に示されるように形成され、切込みは、例えば、図2の(ト)に示されるように形成される。図3におけるWbは、掩蓋片(1)の切り欠きを有する部分の先端縁または切込みにおける、蓋面板(2)の前端縁との距離が最も小さい点をBとしたとき、点Bと掩蓋片(1)の長手方向の先端縁との最短距離である。図3(ロ)は、Wb=0の場合である。Wbは、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは5〜15mmである。Wbが30mmより大きいと、良好なフィルムカット性が得られない場合がある。図3におけるWaは、掩蓋片(1)の先端縁における、切り欠き部分と非切り欠き部分との境界点をAとしたとき、点Aと掩蓋片(1)の長手方向の先端縁との最短距離である。なお、図3(イ)のように、上記境界点が2つ(AとA’)ある場合には、掩蓋片(1)の長手方向の先端縁からより遠い方を点Aとする。また、図3(ト)のように、掩蓋片(1)が切込みを有する場合には、掩蓋片(1)の先端縁上の切込みの位置が点Aである。Waの大きさは、下記で述べる角Cとのかみ合わせの容易さを考慮して適宜決めることができ、Wbの大きさより大きくてもよく、小さくてもよく、あるいは同じであってもよい。さらに、図3(ホ)および(ヘ)のように、掩蓋片(1)の先端縁の、切り欠きによって形成される部分の少なくとも一部が曲線であってもよい。
【0015】
図4は、前面板(5)の上端縁の切り取りの例を示す図である。前面板(5)の上端縁は、その全部が、収納室を構成する直方体の高さHよりも低くなるように切り取られ(図示せず)、あるいは、上記上端縁の両端部または一方の端部を除く全部が、収納室を構成する直方体の高さHよりも低くなるように切り取られており、かつ、掩蓋片(1)の先端部に形成されたフラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じたときに、上記低くされた前面板(5)の上端縁の端における角Cが掩蓋片(1)の切り欠き部分または切込みとかみ合うようになっている。切り欠きの場合には、切り欠きによって生じた掩蓋片(1)の先端縁の点A、点Bまたはそれらの間の任意の点のいずれか、特に点B、が角Cとかみ合うことにより、良好なフィルムカット性が得られる。切込みの場合には、切込みにおける点Bが角Cとかみ合うことにより、良好なフィルムカット性が得られる。前面板(5)と側面板(3)との境界線と角Cとの最短距離Wcは、上記かみ合いが得られるように適宜調整することができる。好ましくは、Wb=Wcである。
【0016】
上記切り取りによって生じる前面板(5)の上端縁によって構成される角Cの角度αは、掩蓋片(1)の切り欠きまたは切込みとのかみ合いを形成することが出来れば特に制限はないが、収納箱の作製の容易さやかみ合わせのし易さを考慮すれば、通常30°以上が好ましく、かみ合わせにおいてフィルムを確実に保持するという観点から、通常150°以下が好ましい。
【0017】
前面板(5)において、角Cよりも側面板(3)側の上端縁については、掩蓋片(1)における切り欠きまたは切込みとかみ合うことができる角Cが形成される限り、任意の形状であり得、例えば図4(ハ)および(ニ)に示される形状であってもよい。また、図4では、上記切り取り部分の上端縁が前面板(5)の下端縁と平行であるが、上記角Cが形成される限り、平行でなくてもよい。
【0018】
また、掩蓋片(1)における切り欠きまたは切込みの角Cとのかみ合い点と蓋面板(2)の前端縁との間の最短距離をHxとし、前面板(5)の下端縁と角Cとの最短距離をHcとしたとき、角Cと掩蓋片(1)における切り欠きまたは切込みとがかみ合うためには、Hx+Hc≧Hである必要がある。上記かみ合い点が点Bである場合には、Hb+Hc≧Hである。ここで、Hbは、蓋面板(2)の前端縁と点Bとの間の最短距離である。Hx+Hcの上限は特に制限されないが、掩蓋片(1)の先端部が収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じて切り欠きまたは切込みと角Cとをかみ合わせたときの収納箱の形状が直方体に近い方が、収納箱の耐久性の点で好ましい。上記上限は、収納箱の側面板の大きさに依存し、側面板が大きいほど、Hとの差が大きくあり得る。例えば、側面板の大きさが44mm×44mmである収納箱の場合には、上記上限が好ましくはH+10mmである。
【0019】
掩蓋片(1)および前面板(5)の長手方向の両端の形状はそれぞれ、互いに対称であってもなくてもよい。また、掩蓋片(1)および前面板(5)は、上記かみ合いが得られる限り、図3および4に例示した形状に限られない。
【0020】
本発明の収納箱は、ラップフィルムの収納のために通常用いられる紙、例えば坪量400〜500g/mのコートボール紙等を使用して作ることができる。紙の坪量は、小さいと耐久性に問題が生じ易くなり、大きいとコスト高になる。従って、紙の坪量は、収納するフィルムロールの尺長から必要となる耐久性を勘案して適宜選択される。
【0021】
さらに、本発明の収納箱は、耐久性の点から、掩蓋片(1)や前面板(5)および蓋面板(2)に、好ましくは美感の点からそれらの裏面に、紙製の補強板を貼合してそれらを補強することが好ましい。掩蓋片(1)および前面板(5)の補強は、それらの耐久性を直接向上させる。蓋面板(2)の補強は、箱全体の捻り剛性を高くし、したがって箱全体の耐久性を向上させる。紙製の補強板としては、収納箱を構成するものと同じ紙を使用することができる。補強板は、収納箱とは別に用意して上記裏面に貼付することができる。あるいは、例えば例えば掩蓋片(1)の先端縁や前面板(5)の上端縁に補強板を一体的に取り付け(図5参照)、上記先端縁や上端縁のところで裏側に折り返して貼り付けることにより補強を行うこともできる。この場合には、上記折り返しにより補強を行った後、掩蓋片(1)に切り欠きや切込みを入れたり前面板(5)の上端部を切り取ったりして目的の収納箱にすることができる。なお、図5は、図1の収納箱の展開図である。
【0022】
本発明の収納箱はラップフィルム用である。収納されるラップフィルムは、ラップフィルムとして有用な機械的強度を有するものであれば何でもよく、例えばポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテン−1およびポリアミド等から選ばれる樹脂からなる単層又は多層のフィルムで全厚みが3〜30μm、典型的には8〜15μm程度のもの、が挙げられる。上記機械的強度として、ラップフィルムの長さ方向および横方向の引張破断力がいずれもが1〜15N、より好ましくは1〜10Nであるのが好ましい。なお、本明細書において、引張破断力は、JISK−7127に従い、試験速度500mm/分および試験片タイプ2を用いて測定された値である。
【0023】
また、本発明の収納箱は、横切性に優れるラップフィルムの収納に特に有用である。そのようなフィルムとしては、例えば特願2010−275113号明細書に記載された方法によって得られるフィルムが挙げられる。このフィルムは、(A)ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部、および(B)ポリブテン−1系樹脂0.5〜60質量部、好ましくは1〜25質量部および/または流動パラフィン0.1〜20質量部、好ましくは1〜12質量部、ただし成分(B)の総量が75質量部を超えず、好ましくは0.6〜75質量部、より好ましくは2〜35質量部、さらに好ましくは3〜25質量部である、を含むポリメチルペンテン−1系樹脂組成物を、Tダイを使用して3〜30μmのフィルム肉厚に押出すことにより製造することができる。このとき、上記押出を、Tダイのリップ開度R(単位μm)、フィルム肉厚t(単位μm)、ダイスから押し出される樹脂組成物のダイス幅1cm当たりの吐出速度E(単位cm/hr)およびエアギャップA(単位cm)が下記式:
15≦(1/t − 1/R)・(E/At )×100≦900 ・・・式
を満たすような条件で行うのが好ましい。好ましくは、tが5〜20μm、より好ましくは8〜15μmであり、Aが0.5〜2cmであり、Eが100cm/hr以上であり、Rが300〜900μm程度である。
【0024】
なお、上記式は、Tダイを使用する押出製膜において、ダイスを出る溶融状態のフィルムがチルロールに到達して最終的な大きさのフィルムになるまでのフィルムの変形速度が大きい条件で行われることを意味し、これは、ダイスからチルロールまでのエアギャップにおいて、溶融状態のフィルムを大きくかつ速く引落とすことを意味する。
【0025】
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂(A)は、4−メチルペンテン−1又は3−メチルペンテン−1の単独重合体の他に、4−メチルペンテン−1及び/又は3−メチルペンテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0026】
成分(B)としての上記ポリブテン−1系樹脂は、ブテン−1の単独重合体のほかに、ブテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。α−オレフィンは1種単独でも、2種以上の組合せでもよい。α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。上記流動パライフィンは、鎖式飽和炭化水素を主体とする常温で液体の化学的に安定な物質であり、市販例(商品名)としては、出光興産株式会社のダフニーオイルCP、株式会社MORESCOのモレスコホワイト、カネダ株式会社のハイコールKなどを挙げることができる。
【0027】
上記ポリメチルペンテン−1系樹脂組成物には、さらに、ポリメチルペンテン−1系樹脂以外の熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレン)、液状ポリブテン(水添ポリイソブチレン)等の液状加工助剤、酸化防止剤、中和剤、防曇剤、スリップ剤等の添加剤を配合することができる。上記熱可塑性樹脂および液状加工助剤の配合量は、合計で、ポリメチルペンテン−1系樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。
【0028】
また、本発明の収納箱に収納したラップフィルムがより小さい力で切断できるならば、収納箱に与える負荷をより小さくすることができ、その結果、収納したフィルムを使い切るまでより良好なカット性を維持することができる。より小さい力での切断を可能にするために、フィルムに切断のための何らかのきっかけを設けることができる。具体的には、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に、例えば0.1〜10mmの幅で、ローレット加工やレーザー加工を施すことができる。
【0029】
ローレット加工は、フィルムを金属製等の彫刻ロールと金属製や高硬度のゴム等の彫刻ロール又は平滑ロールとで挟み込むことにより、あるいはフィルムの巻に該彫刻ロールを押し当てることにより微細なエンボスや傷を入れる加工である。加工条件はフィルムの材質により適宜選択されるべきであるが、通常、押圧は10〜50N/m程度である。ローレット加工が施されたフィルム表面を写真撮影したものを図6に示す。ローレット加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。ローレット加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0030】
レーザー加工はレーザーの照射熱により、フィルムを極めて微細な領域において溶融し、そこに凹形状や孔を設ける加工である。使用するレーザーは、特に制限されない。例えば、炭酸ガスレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザーおよびエキシマレーザーなどのガスレーザーや、クロム添加ルビー結晶を媒質に使用したルビーレーザー、チタン添加サファイア結晶を媒質に使用したチタンサファイアレーザー、YAG結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザーおよびネオジム添加YAGを用いたNd:YAGレーザーなどの固体レーザーが挙げられる。また、液体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー、金属蒸気レーザー、化学レーザー等の公知のレーザーを使用することができる。照射出力は、0.5〜20W程度であり、フィルムの肉厚や加工速度を勘案して適宜調節する。レーザー加工は、原反製膜時に、スリット加工時に、またはスリット加工後に独立の工程を設けて施すことができる。レーザー加工は、フィルムの横方向の端部の少なくとも一方に施されるが、どちらの側からでも切断出来るように、両方の端部に施すことがより好ましい。加工幅は通常0.1〜10mmであり、好ましくは0.3〜6mmである。
【0031】
また、ローレット加工やレーザー加工を施すと、巻回フィルムの引出端が巻き本体に強く密着して引き出せなくなるというトラブルの防止効果を得ることもできる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1〜6
片面コートされたコートボール紙(厚紙の坪量450g/m)を使用し、掩蓋片(1)が図3(イ)の形状を有し、前面板(5)が図4(イ)の形状を有し、Haが24mmであり、Hb、Wa、Wb、HcおよびWcが表1に示す通りである、図1に示す形状の高さ(H)44mmx横44mmx長さ310mmの収納箱を製作した。この収納箱は、掩蓋片(1)の点Bが前面板(5)の角Cとかみ合うように作った。
【0034】
比較例1
片面コートされたコートボール紙(厚紙の坪量450g/m)を使用し、図7に示す形状の高さ(H)44mmx横44mmx長さ310mmの収納箱を製作した。なお、掩蓋片(1)の長手方向に対して垂直方向の長さは24mmである。
【0035】
試験
上記のようにして得た化粧箱に、巻回されたラップフィルム(幅300mm、長さ50mのフィルムを、幅305mm、内径27mm、肉厚1.5mmの紙管に巻いたもの)を収納し、下記の試験を行った。結果を表1に示す。なお、収納したラップフィルムとしては、4−メチルペンテン−1(三井化学株式会社製のMX−0020(商品名)、MFR(260℃、5.00kg)21g/10分)100質量部、ポリブテン−1(LYONDELLBASELL社製のPB8640M(商品名)、MFR(190℃、21.18N)28g/10分)3質量部および流動パラフィン(カネダ株式会社製のハイコールK−350(商品名))5質量部からなる樹脂組成物を、株式会社日本製鋼所製のTダイ製膜装置を用いて製膜した肉厚12μmのフィルムの横方向の両端にロートレット加工を施したものを使用した。上記製膜は、リップ開度400μm、エアギャップ1.5cm、吐出速度712cm/hr、チルロール温度25℃およびダイス出口樹脂温度290℃の条件で行い、バキュームチャンバーおよび耳ジェットを使用した。ローレット加工は、押え量0.2mm、加工幅0.6mm、加工速度400m/分の加工条件で行った。このフィルムの長さ方向および横方向の引張破断力はそれぞれ5.4Nおよび2.9Nであった。
【0036】
(1)カット性試験
収納されたラップフィルムを収納箱から約40cm引出し、掩蓋片(1)のフラップが収納室の中に入るように蓋面板(2)を閉じた状態で、掩蓋片(1)と前面板(5)を利用してフィルムを切断する試験を10回試み、切断できた回数を切断率(%)として表記した。なお、比較例1では、掩蓋片(1)の先端縁を利用して切断を試みた。
【0037】
(2)耐久性
試験(1)と同様の切断を100回試みた後、さらに10回の切断を試み、この10回の試行において切断できた回数を切断率(%)として表記した。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1:掩蓋片
2:蓋面板
3:側面版
4:底面板
5:前面板
6:後面板
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図5
図7
図6