(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光を発光する発光部を有し、該光を被検体に照射する光源部と、前記被検体の測定点における通過光を計測する光計測部と、前記光計測部から出力されるヘモグロビン情報を処理し、光計測画像を作成する信号処理部と、前記光計測画像を表示する表示部と、を備えた生体光計測装置であって、
前記発光部の光出力と前記発光部に注入される電流とから前記発光部の劣化状態を計測し、前記発光部の交換要否を判定する計測判定部を備え、
前記表示部は、前記計測判定部にて判定された前記発光部の前記交換要否の情報を表示し、前記計測判定部は、前記発光部の光出力が開始される光出力開始電流が所定値よりも大きい場合、前記発光部の交換要と判定することを特徴とする生体光計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
生体光計測装置は、近赤外光を被検体22内に照射し、被検体22の表面近傍から反射或いは被検体22内を通過した光(以下、単に通過光という)を検出する装置である。この生体光計測装置は、
図1に示すように、主に、近赤外光を照射する光源部10と、通過光を計測し、電気信号に変換する光計測部12と、光源部10及び光計測部12の駆動を制御する制御部14と、表示部36等を備えている。
【0015】
光源部10は、所定波長の光を発光する複数の発光部16と、発光部16が発生する光を複数の異なる周波数で変調するための変調器を備えた複数の光モジュール18とを備え、各光モジュール18の出力光はそれぞれ照射用光ファイバ20を介して被検体22の所定の計測位置に照射される。
【0016】
プローブホルダ23は、被検体22に取り付けられており、複数の照射用光ファイバ20と検出用光ファイバ26はプローブホルダ23の各設置位置(穴部)に着脱可能に設置されている。
【0017】
光源部10は、発光部16の数に対応した数の光モジュール18を備える。光の波長は被検体22内の注目物質の分光特性によるが、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンのヘモグロビン情報から酸素飽和度や血液量を計測する場合には600nm〜1400nmの波長範囲の光の中から1あるいは複数の波長を選択して用いる。光源部10内の発光部16は、2種類の波長、例えば780nm及び830nmの光を発光するように構成され、これら2波長の光は合成され1つの照射位置から照射される。
【0018】
光計測部12は、被検体22の複数の計測位置から検出用光ファイバ26を介して誘導された通過光をそれぞれ光量に対応する電気量に変換するフォトダイオード等の光電変換素子28と、光電変換素子28からの電気信号を入力し、光照射位置に対応した変調信号を選択的に検出するロックインアンプ30と、ロックインアンプ30の出力信号をヘモグロビン情報に基づくデジタル信号に変換し、デジタル信号を出力するA/D変換器32と、検出された通過光の光量に基づいて、デジタル信号にゲイン値をかけるゲイン調整部33からなる。ロックインアンプ30は、光照射位置とこれら2波長に対応した変調信号を選択的に検出する。ゲイン調整部33は、複数の光電変換素子28によって検出された通過光の光量に基づいた電気信号に基づいて、A/D変換器32から出力されるデジタル信号にゲイン値をかける。
【0019】
また、生体光計測装置は、ヘモグロビン情報に基づくデジタル信号を処理してチャンネル毎にヘモグロビン情報のグラフを作成したり、それぞれのデジタル信号をチャンネル毎に補間したヘモグロビン情報の2次元画像若しくは3次元画像の濃淡画像等の光計測画像を作成する信号処理部34と、信号処理部34から出力される光計測画像や、頭表画像、脳表画像、計測点などを表示する表示部36と、信号処理部34の処理に必要なデータや処理結果等を記憶するための記憶部38と、発光部16の劣化状態を計測し、劣化状態に基づいて発光部16の交換要否を判定する計測判定部44と、装置の動作に必要な種々の指令を入力するための操作部40を備えている。
【実施例1】
【0020】
(電流比較)
ここで、実施例1について
図1〜
図6を用いて説明する。実施例1では、計測判定部44は、光を発光する発光素子である発光部16の光出力(mW)と、発光部16に注入される電流(mA)とから求められる発光部16の劣化状態から発光部16の交換要否を判定し、表示部36は発光部16の劣化状態及び交換要否情報を表示する。発光部16は、誘導放出を用いて光を放射する半導体レーザ、又は半導体を用いて光を放射する発光ダイオードを含む近赤外光を発光するものである。
【0021】
図2、
図3は、発光部16の光出力を計測する計測装置を示すものである。
図2は、1つの照射用光ファイバ20の光出力を計測する計測装置である。発光部16から発生する光は、光モジュール18を介して、照射用光ファイバ20に出力される。照射用光ファイバ20には、照射用光ファイバ20から出力された光を受光し、受光量に応じた電流を流す光センサ41が接続されている。照射光ファイバ20の先端部に光センサ41が当接されている。光センサ41は、光パワーメータ42に接続されている。光パワーメータ42は、光センサ41から出力される電流を変換し、光出力を演算するものである。光パワーメータ42は、制御部14に接続されており、演算された光出力は、制御部14を介して、計測判定部44と記憶部38に伝達される。
【0022】
図3は、複数の照射用光ファイバ20の光出力を計測する計測装置である。生体光計測装置の本体には、ホルダ挿入穴(図示しない。)が設けられている。ホルダ挿入穴には、平板状の検査ホルダ50が挿入されている。検査ホルダ50は、検査時には生体光計測装置本体から引き出され、非検査時には生体計測装置本体内に押し込まれ収容される。即ち、検査ホルダ50は、検査位置と収容位置との間で水平にスライド可能である。
【0023】
検査ホルダ50のファイバ挿入穴52には、照射用光ファイバ20から出力された光を受光し、受光量に応じた電流を流す光センサ41と、光センサ41から出力される電流を変換し、光出力)を演算する光パワーメータ42が複数備えられている。
図3では、8つのファイバ挿入穴52に光センサ41と光パワーメータ42をそれぞれ備えている。光パワーメータ42は、制御部14に接続されており、演算された光出力は、制御部14を介して、計測判定部44と記憶部38に伝達される。
【0024】
検査ホルダ50の上面には、照射用光ファイバ20を挿入するファイバ挿入穴52の近傍に照射用光ファイバ20の番号に対応する番号が記載されている。例えば、番号「5」の照射用光ファイバ20が番号「5」のファイバ挿入穴52に挿入され、光センサ41と光パワーメータ42によって、番号「5」の照射用光ファイバ20に対応する発光部16の光出力が演算される。演算された光出力は、当該番号とともに、制御部14を介して、計測判定部44と記憶部38に伝達される。
【0025】
制御部14は、光パワーメータ42から出力される光出力とその光出力に必要な発光部16に注入する電流を計測判定部44と記憶部38に伝達する。計測判定部44は、光出力と電流による発光部16の劣化状態を計測する。そして、計測判定部44は、発光部16の劣化状態に基づいて発光部16の交換要否を判定する。表示部36は、計測判定部44から出力される発光部16の劣化状態と交換要否情報を表示する。記憶部38は、時間情報(例えば、年月日と時刻)とともに当該光出力と電流を記憶する。
【0026】
発光部16の劣化状態の計測、交換要否の判定については、
図4〜6を用いて説明する。
図4(a)(b)、
図5は、光パワーメータ42から出力される光出力とその光出力に必要な電流の関係を示すものである。
【0027】
本発明で用いられる生体光計測装置は、High、Middle、Lowの3種の光出力を行なうことができる。Highの光出力は、通常の計測モードで用いる通常の光出力であり、一般の成人に用いる。Middle、Lowの光出力は、光出力を抑えて計測する計測モードで用いる特殊な光出力であり、主に乳幼児や光が透過しやすい人に用いる。本発明では、例えば、Highを2(mW)、Middleを1(mW)、Lowを0.5(mW)とする。
【0028】
図4におけるグラフ60は、生体光計測装置の出荷時、すなわち正常時、初期における発光部16の光出力と電流の関係を示すグラフである。生体光計測装置の出荷時における光出力と電流は、記憶部38に予め記憶されている。計測判定部44は、生体光計測装置の出荷時における光出力と電流のデータを読み出してグラフ60を作成し、表示部36にグラフ60を表示させる。生体光計測装置の出荷時のHighの光出力61、Middleの光出力62、Lowの光出力63は、グラフ60上にマークされる。
【0029】
グラフ60において、注入される電流が所定値よりも小さいとき、ここでは電流が0から所定の光出力開始電流まで発光部16から光が発光されないため、光出力が0となる。光出力開始電流以上の電流が注入されると、光出力が得られる。そして、電流を大きくすればするほど光出力は大きくなる。
【0030】
図4(a)(b)のHighの光出力64、Middleの光出力65、Lowの光出力66は、生体光計測装置の出荷時から所定の年月が経過したとき(例えば、出荷時から3年後)に得られる光出力である。
【0031】
図4(a)は、Highの光出力64を得るときに注入する電流、すなわちHighの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまう場合、警告を行なう形態を示すものある。なお、絶対定格電流は、記憶部38に予め記憶されている。
【0032】
Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまう場合、発光部16が破損する可能性があり、生体光計測装置で光計測を行なうことができなくなる恐れが生じる。Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまうときとは、例えば、絶対定格電流を180(mA)とした場合、Highの光出力64である2(mW)を得るために必要な電流Iが、電流I>180(mA)であるときである。
【0033】
Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまう場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。検者若しくはサービス員は、表示部36に表示された警告情報を見たら、発光部16を交換してもらう指示を行う。
【0034】
なお、上記では、Highの光出力64を得ようとすると電流が絶対定格電流を超えてしまうことを確認するため、絶対定格電流を超えて電流を注入する必要があり、発光部16が破損してしまう可能性がある。そこで、絶対定格電流を超えて電流を注入しないように、発光部16に絶対定格電流を注入した時にHighの光出力64に到達しない場合においても、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させてもよい。
【0035】
例えば、絶対定格電流を180(mA)とした場合、電流I=180(mA)を注入したときに、計測判定部44は、Highの光出力64である2(mW)に到達するかどうかを計測する。Highの光出力64である2(mW)に到達しない場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。
【0036】
図4(b)は、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流に近づいた場合、すなわち、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流より所定値分小さい電流値に到達した場合に注意を行なう形態を示すものある。
【0037】
Highの光出力64に対応する電流が、絶対定格電流より所定値分小さい電流値に到達した場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように勧めることを判定し、注意情報を表示部36に表示させる。Highの光出力64に対応する電流が、絶対定格電流より所定値分小さい電流値に到達したときとは、例えば、絶対定格電流を180(mA)とした場合、Highの光出力64である2(mW)を得るために必要な電流Iが、160(mA)<電流I<180(mA)であるときである。このとき、所定値は20(mA)である。
【0038】
Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流より十分小さい場合、すなわち、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流より所定値分小さい電流値に到達しない場合、計測判定部44は、発光部16を使用できると判定し、発光部16を使用できることを表示部36に表示させる。Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流より十分小さいときとは、例えば、絶対定格電流を180(mA)とした場合、Highの光出力64である2(mW)を得るために必要な電流Iが、電流I<160(mA)であるときである。
【0039】
図5は、光出力開始電流が所定値よりも大きくなる場合、警告を行なう形態を示すものである。なお、光出力開始電流は、予め記憶部38に記憶されている。
【0040】
光出力開始電流が所定値よりも大きくなると、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまう可能性がある。光出力開始電流が所定値よりも大きくなるときとは、例えば、光出力開始電流I>50(mA)であるときである。光出力開始電流Iが所定値よりも大きい場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。
【0041】
図6は、発光部(LD)16の番号に対応させて、High、Middle、Lowの光出力に対応する電流、光出力開始電流、注入電流、絶対定格電流、判定結果を表示した表示部36の表示形態である。
【0042】
例えば、発光部16の番号「1」では、光出力開始電流が所定値(50(mA))よりも小さく、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流(180(mA))より十分小さい(電流I<160(mA))ため、「十分使用可」との情報が表示される。
【0043】
発光部16の番号「3」では、光出力開始電流が所定値(50(mA))よりも大きいため「早急に交換願います」との警告情報が表示される。表示部36は、注意情報よりも警告情報を優先的に表示する。
【0044】
また、発光部16の番号「8」では、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流(180(mA))より小さく絶対定格電流より所定値分小さい電流値(160(mA))より大きいため、「交換をお勧めします」との注意情報が表示される。
【0045】
なお、上記では、絶対定格電流を180(mA)としたが、操作部40は、絶対定格電流や各種所定値を任意に変えることができる。
【0046】
上記では、Highの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えてしまう場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させた。本実施例では、Highの光出力64よりも光出力が小さいMiddleの光出力65、Lowの光出力66に対応する電流が絶対定格電流より小さい場合、計測判定部44は、発光部16をMiddleの光出力65、Lowの光出力66であれば使用できると判定し、Middleの光出力65、Lowの光出力66であれば、発光部16を使用できる情報を表示部36に表示させてもよい。Middleの光出力65に対応する電流が絶対定格電流より小さいときとは、例えば、絶対定格電流を180(mA)とした場合、Middleの光出力65である1(mW)を得るために必要な電流Iが、電流I<180(mA)であるときである。
【0047】
また、上記では、警告情報、注意情報等を表示部36に表示させたが、音声等で検者若しくはサービス員に連絡してもよい。さらに、警告情報、注意情報等が生体光計測装置の制御部14及びネットワークを通じて、発光部16の製造元のパーソナルコンピュータや携帯電話等に自動的に連絡が入るようにしてもよい。
【0048】
以上、本実施例では、検者若しくはサービス員は発光部16の劣化状態、交換要否を把握することができ、適宜、発光部16の交換の指示を行うことができる。
【実施例2】
【0049】
(グラフ比較)
ここで、実施例2について
図1〜
図7を用いて説明する。実施例1と異なる点は、計測判定部44は、発光部16の光出力(mW)と、発光部16に注入される電流(mA)とから作成されるグラフの特徴に基づいて発光部16の状態を判定する点である。
【0050】
図7(a)において、計測判定部44は、発光部16の光出力と発光部16に注入される電流とから作成されるグラフ90,92の傾きから発光部16の劣化状態を計測し、劣化状態に基づいて発光部16の交換要否を判定する。表示部36は発光部16の劣化状態及び交換要否情報を表示する。
【0051】
グラフ60は、生体光計測装置の出荷時、すなわち正常時における光出力と電流との関係を示すグラフである。グラフ90は、生体光計測装置の出荷時から、ある年月が経過したとき(例えば、出荷時から2年後)に得られる光出力と電流に基づくグラフであり、グラフ92は、生体光計測装置の出荷時から、さらに年月が経過したとき(例えば、出荷時から6年後)に得られる光出力と電流に基づくグラフである。
【0052】
発光部16は、出荷時から年月が経つにつれて、発光部16の光出力と電流に基づくグラフの傾きが徐々に小さくなる傾向がある。この特性を活用して、計測判定部44は、発光部16の光出力と電流に基づくグラフの傾きが所定値以下に達したら、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。
【0053】
図7(b)において、計測判定部44は、少なくとも2組の光出力と当該光出力に対応する電流からグラフ100を求め、求められたグラフ100から発光部16の交換要否を判定する。表示部36は発光部16の劣化状態及び交換要否情報を表示する。
【0054】
計測判定部44は、Lowの光出力94、Middleの光出力96と、当該光出力に対応する電流から2点を通る直線のグラフ100を作成する。計測判定部44は、光出力と電流に基づくグラフ100の傾きが所定値以下に達したら、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。
【0055】
また、計測判定部44は、グラフ100におけるHighの光出力98をマークする。直線100におけるHighの光出力98に対応する電流が絶対定格電流を超えていたとき、計測判定部44は、発光部16を交換するように判定し、警告情報を表示部36に表示させる。検者若しくはサービス員は、表示部36に表示された警告情報を見たら、発光部16を交換してもらう指示を行う。
【0056】
なお、上記では、計測判定部44は、2点を通る直線のグラフ100を作成したが、3以上の点を用いて直線のグラフ100を作成してもよい。また、計測判定部44は、最小2乗法等を用いて直線や曲線のグラフ100を作成してもよい。
【0057】
以上、本実施例では、検者若しくはサービス員は発光部16の劣化状態、交換要否を把握することができ、適宜、発光部16の交換の指示を行うことができる。
【実施例3】
【0058】
(寿命推定)
ここで、実施例3について
図1〜
図8を用いて説明する。実施例1、2と異なる点は、計測判定部44は、発光部16の使用可能時間を推定する点である。
【0059】
図8は、Highの光出力を得るときに注入する電流を、出荷時、時期A、時期Bにて計測した形態を示すものである。時期Aは、出荷時からある年月が経過したとき(例えば、出荷時から2年後)であり、時期Bは、時期Aからさらに年月が経過したとき(例えば、出荷時から4年後)である。
【0060】
現在の地点を時期Bとすると、計測判定部44は、出荷時におけるHighの光出力を得るときに注入した電流110を時間情報とともに記憶部38から読み出し、現在の時期BにおけるHighの光出力64を得るときに注入している電流114をパワーメータ42から得る。そして、電流110,114と時間の関係を示すグラフ116を作成する。この時、計測判定部44は、時点Aの電流112と時間情報を用いて、グラフ116を作成してもよい。
【0061】
そして、計測判定部44は、グラフ116が絶対定格電流に達する時期を時期Cとして算出する。また、計測判定部44は、時期Bにおける使用可能時間(時期C−時期B)を算出する。表示部36は、推定された使用可能時間と絶対定格電流に達する時期(例えば、年月日と時刻)を表示する。検者若しくはサービス員は、表示部36に表示された推定された使用可能時間と絶対定格電流に達する時期を見て、時期Bからどのくらい使用したら、発光部16を交換してもらう指示を出すかを決定することができる。
【0062】
上記では、通常の計測モードで用いる光出力であるHighの光出力を得るときに注入する電流を算出したが、光出力を抑えて計測する計測モードであるMiddle、Lowの光出力を得るときに注入する電流を算出してもよい。
【0063】
以上、本実施例では、検者若しくはサービス員は発光部16の劣化状態、絶対定格電流に達する時期及び使用可能時間を把握することができ、適宜、発光部16を交換の時期を決定することができる。
【0064】
ここで、本発明の実施例1〜3における動作について
図9を用いて説明する。
【0065】
(ステップ1)
生体光計測装置の出荷時に、光パワーメータ42から出力される光出力とその光出力に必要な発光部16に注入する電流を出荷時の時間情報(例えば、年月日と時刻)とともに記憶部38に記憶する。
図4における、光出力開始電流から電流を大きくすればするほど光出力は大きくなる特性を持つグラフ60の情報が記憶部38に記憶されることとなる。
【0066】
また、検者若しくはサービス員が、実施例1における絶対定格電流や光出力開始電流、実施例2におけるグラフの傾き、各種所定値等のパラメータを決定したとき、検者若しくはサービス員は操作部40にパラメータを入力する。パラメータは、制御部14を介して記憶部38に記憶される。
【0067】
(ステップ2)
計測判定部44は、通常の計測モードで用いる通常の光出力であるHighの光出力64に対応する電流が絶対定格電流を超えるかどうか判定する。つまり、実施例1を行なう。当該電流が絶対定格電流を超える場合、異常(劣化している。)と判定し、ステップ5に進む。当該電流が絶対定格電流を超えない場合、正常と判定し、ステップ3に進む。
【0068】
(ステップ3)
計測判定部44は、現在得られる光出力と電流に基づくグラフ90,92,100を作成する。計測判定部44は、グラフ90,92,100の傾きが所定値以下かどうか判定する。つまり、実施例2を行なう。当該傾きが所定値以下の場合、異常と判定し、ステップ5に進む。当該傾きが所定値以下
でないの場合、正常と判定し、ステップ4に進む。
【0069】
(ステップ4)
計測判定部44は、出荷時におけるHighの光出力を得るときに注入した電流110を時間情報とともに記憶部38から読み出し、現在におけるHighの光出力64を得るときに注入している電流114をパワーメータ42から得る。そして、電流110,114と時間の関係を示すグラフ116を作成する。そして、計測判定部44は、グラフ116が絶対定格電流に達する時期又は使用可能時間を算出し、表示部36は、算出された絶対定格電流に達する時期又は使用可能時間に達する時期を表示する。つまり、実施例3を行なう。
【0070】
(ステップ5)
ステップ2又はステップ3で異常と判定された場合、計測判定部44は、発光部16を交換するように促す警告情報又は注意情報を表示部36に表示させる。検者若しくはサービス員は、表示部36に表示された警告情報又は注意情報を見たら、発光部16を交換してもらう指示を行う。
【実施例4】
【0071】
(ゲイン値比較)
ここで、実施例4について
図1〜
図11を用いて説明する。実施例1〜3と異なる点は、計測判定部44は、ゲイン調整部33で設定されるゲイン値から発光部16の劣化状態を計測し、発光部16の交換要否を判定する点である。
【0072】
本実施例では、照射用光ファイバ20と検出用光ファイバ26は、被検体22ではなく、生体模擬試料(ファントム)の光検出検査体を有した検査ホルダ(図示しない。)に取り付けられている。これは、被検体22の計測部位によって変化するゲイン値のバラツキを抑えるためである。なお、本実施例では、断線がない光ファイバを照射用光ファイバ20と検出用光ファイバ26として用いている。
【0073】
ゲイン調整部33は、複数の光電変換素子28によって検出された通過光の光量に基づいた電気信号に基づいて、A/D変換器32から出力されるデジタル信号にゲイン値をかける。
【0074】
ゲイン値は、デジタル信号を均一化するために定められたゲイン値である。ゲイン値は、S/N比を良くし、デジタル信号の信頼性を確保するためのものである。具体的には、ゲイン調整部33は、複数の光電変換素子28の検出光量が、例えば2(mW)で均一化するように、デジタル信号にゲイン値をかける。検出光量が小さい(例えば、2(mW)以下)場合、デジタル信号にかけるゲイン値が大きくなり(例えば、1以上)、検出光量が大きい(例えば、2(mW)以上)場合、デジタル信号にかけるゲイン値が小さくなる(例えば、1以下)。ゲイン調整部33から得られたゲイン値は、記憶部38に時間情報とともに記憶される。上記は、Highの光出力における場合である。
【0075】
図10は、ゲイン調整部33にて掛けられるゲイン値を、出荷時、時期X(現在)にて計測した形態を示すものである。時期Xは、出荷時からある年月が経過したとき(例えば、出荷時から3年後)である。
図11は、本実施例の動作を示すものであり、本実施例を説明する。
【0076】
(ステップ10)
生体光計測装置の出荷時に、光パワーメータ42から出力される光出力とゲイン値を出荷時の時間情報(例えば、年月日と時刻)とともに記憶部38に記憶する。また、検者若しくはサービス員が、後述するゲイン値の閾値、比率等のパラメータを決定したとき、検者若しくはサービス員は操作部40にパラメータを入力する。パラメータは、制御部14を介して記憶部38に記憶される。
【0077】
(ステップ11)
計測判定部44は、記憶部38から出荷時に記憶されたゲイン値と発光部16の光出力を読み出して、グラフ120を作成する。表示部は、グラフ120を表示する。
【0078】
(ステップ12)
出荷時における、発光部16の光出力をHigh、Normal、Lowに調整して得られた各ゲイン値をHo、No、Loとする。また、時期Xに得られた各ゲイン値をHx、Nx、Lxとしたときの各ゲイン値の比率A
H、A
N、A
Lとすると下記式が得られる。
【0079】
【数1】
計測判定部44は、比率A
H、A
N、A
Lの3つの値が等しいかどうか判定する。もし、これらの値が等しくなければ、
図10で得られるグラフ120と同じような特性が保てなくなる。例えばグラフ124のようなグラフが得られる場合、発光部16が異常(劣化している。)であると、計測判定部44は判定する。当該比率A
H、A
N、A
Lが等しくない場合、異常と判定し、ステップ14に進む。当該比率A
H、A
N、A
Lが等しい場合、正常と判定し、ステップ13に進む。
【0080】
(ステップ13)
計測判定部44は、時期Xに得られた各ゲイン値Hx、Nx、Lxに基づいて、発光部16の劣化状態を判定する。具体的には、各ゲイン値がHx、Nx、Lxのいずれかが閾値以上(例えば、2以上)になった場合、計測判定部44は、発光部16が異常であると判定する。当該各ゲイン値がHx、Nx、Lxのいずれかが閾値以上である場合、異常と判定し、ステップ14に進む。当該各ゲイン値がHx、Nx、Lxのいずれかが閾値以下の場合、正常と判定し、生体光計測を続行させる。
【0081】
(ステップ14)
異常であると判定された発光部16が少なくとも1つある場合、警告・注意画面が表示部36に表示される。警告・注意画面には、「サービス員、発光部16の製造元に問い合わせてください。」というコメントやサービス員、発光部16の製造元の電話番担当者名等が表示される。検者若しくはサービス員は警告・注意画面80を見たら、発光部16を交換してもらう指示を行う。
【0082】
本実施例によれば、パワーメータ42などを使用せずに、生体光計測装置から得られるゲイン値のみで発光部16の交換要否の判定することが可能となる。そのため、サービス員に拠らず、検者は、発光部16の劣化状態、交換要否を把握することができる。
【0083】
なお、
図12は、発光部16にタイマー130や電流計132を取付けたオプション形態を示すものである。下記の形態を上記実施例1〜4に適用することが可能である。
【0084】
発光部16が光を発光したときタイマー130が動作すれば、タイマー130によって発光部16の駆動時間を正確に把握することができる。出荷時からの年月日、時刻を計測することが可能となる。また、タイマー130から得られる駆動時間および各発光部16の光出力の履歴を記憶部38に記憶させておくことができる。
【0085】
また、光源部10の内部にある発光部16と光モジュール18の間に電流を測定する機能、例えば電流計132を設けることもできる。パワーメータ42などを使用せずに、電流計132によって、発光部16の注入電流を直接計測することができる。そのため、照射用光ファイバ20の損失などを考慮せずに電流を計測することができる。
【0086】
発光部16に注入する電流を上げているにもかかわらず、照射光ファイバ20の先端部で満足する光出力が得られない場合、照射用光ファイバ20の断線状態を確認する必要がある。
【0087】
以上のとおり説明した実施例によれば、検者若しくはサービス員は発光部の劣化状態、交換要否を把握することができ、適宜、発光部の交換の指示を行うことができる。