【実施例1】
【0028】
実施例1は、心臓の短軸像を例に挙げ、心筋の内部を空間的及び時間的に連続的に計測し、さらに、心筋内部の局所毎に計測値を算出する例である。ここでは対象を2次元の超音波信号及び2次元の超音波画像として説明する。
【0029】
図2は本実施形態の超音波診断装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、検者は最初に、生体組織(心筋)の超音波画像を撮像して表示する(S101)。超音波探触子3の超音波送受信面を被検体1に接触させ、計測対象を含む領域を撮像する。追跡を行うため、ある程度の期間の画像を取得する。生体信号(例えば心電図)が入力されていれば、これに同期するようにしてもよい。例えば、心電図のR波から次のR波までの1心拍を自動的に取得するようにしてもよいし、画像を取得した後で、ある区間のフレーム群について、開始フレームと終了フレームを指定するようにしてもよい。なお、指定されたフレーム群が記憶部9に記憶されるが、超音波信号を利用した追跡演算を行う場合には、超音波画像と同じく超音波信号も記憶部9に記憶されて、読み出し可能な状態にしておく。
【0030】
図3は超音波診断装置の表示画面の一例を示す図である。超音波診断装置の表示画面201には、画面左側に超音波画像203が表示されており、ここでは、心臓の短軸像が表示されている例を示している。すなわち、超音波画像203には、被検体の心臓の心腔205と心腔205の周囲をドーナツ状に囲む心筋207とを含む心臓短軸像が含まれている。なお、心筋207と心腔205との境界には周方向に沿って心内膜209が存在し、心筋207と心筋207の外周側の他の組織との境界には周方向に沿って心外膜211が存在する。
【0031】
次に検者は、計測位置設定部17により関心領域の設定を行う(S102)。S101で表示した超音波画像上で、入力機器を用いて設定する。
図3は関心領域を設定する画面の例を示している。画面上に短軸像が描出されており、この画像上に、帯状の関心領域213,215を設定している。設定方法は、既存の領域分割法に基づいた自動設定方法を用いてもよいし、手動的に心筋の輪郭をなぞって設定してもよい。ここでは、心筋を囲むような帯状としているが限定されない。心筋の境界で囲む必要はなく、検者が本来対象としたい場所、例えば、腫瘍や心筋内部の一部分のみなどに設定すればよい。また、関心領域の個数は、1乃至複数設定できる。例えば、心臓短軸像のドーナツ状の心筋のうち、複数の心筋の部分領域に関心領域を分離して設定することができる。これにより、複数の関心領域における心筋の特定の物理量を対比観察することができる。
図3の例では、心腔205を挟んで超音波探触子3の送受信面に近い側の第1の関心領域213と、遠い側の第2の関心領域215が分離して設定されている。
【0032】
一方、
図5は超音波診断装置の表示画面の他の例を示す図である。
図5に示すように、ドーナツ状の心筋全体を囲うドーナツ状の関心領域217を設定し、これをASE(American Society of Echocardiography)が推奨する17分割法に基づき6分割するようにしてもよい。
【0033】
次に検者は、計測位置設定部17によりメッシュ分割の方法を設定する(S103)。
メッシュ分割方法は、対象とする組織の計測項目に合わせればよい。ここでは、心筋を対象としているため、
図3に示すように、メッシュを区切る方向を円周方向と半径方向にしている。すなわち、心筋の円周方向の伸縮と半径方向への伸縮を計測することを目的としている。言い換えれば、関心領域は、心筋の心外膜211及び心内膜209に沿った複数の第1分割線221と、複数の第1分割線221に直交する複数の第2分割線223によりメッシュ状に分割され、第1分割線221と第2分割線223の複数の交点がそれぞれ計測点として設定されている。メッシュの密度つまりある領域に対する第1分割線221と第2分割線223の本数は任意に調整可能である。
【0034】
メッシュの分割数は多いほど詳細に計測でき、疑似カラー化したときに滑らかな輝度変化の表示が行える。また、全く分割せずに、従来法と同様に内膜面と外膜面の距離に基づく計測を行ってもよい。分割数の設定は、検者が自由に選択できるようにしてもよく、入力機器を用いて設定する。設定値は、メッシュ設定表示225に表示される。
【0035】
ここでは、心筋を半径方向に分割する第1分割線221に7本、心筋を円周方向に分割する第2分割線223に6本で分割していることを示している。これらの分割線は互いに交差し、この交差する点が計測点227となる。
図6は関心領域を拡大して示した図である。
図6右下は、関心領域の一つの区画を取り出したものである。区画の接点、すなわち、メッシュの交点上に計測点227が設定される。したがって、この例の場合は、7×6=42点の計測点が設定されることになる。
【0036】
次に検者は、計測位置設定部17により関心領域分離線231を設定する(S104)。関心領域分離線231は、関心領域の内部をさらに幾つかの群に分けて計測したい場合に設定する(この例では関心領域を2つに分離している)。
図3〜6のように、心筋の心内膜側と心外膜側で性状が異なることが予想されるので、心内膜と心外膜のほぼ中間に関心領域分離線231を設定しているが、対象とする計測によって自由に設定できるようにする。例えば、腫瘍を取り囲むように設定してもよい。
【0037】
なお、本実施例では、関心領域に設定された複数の第1分割線221のうちの1本を関心領域分離線231として設定する例を挙げたが、これには限られない。例えば複数の第2分割線223のいずれかを、関心領域分離線231として設定することができる。また、第1分割線221若しくは第2分割線223とは別に、関心領域分離線231を設定するようにしてもよい。
【0038】
次に超音波診断装置は、追跡演算部19により計測点群の動きを計測する(S105)。追跡演算部は、第1分割線221と第2分割線によって複数計測点を追跡する。つまり、第1分割線221と第2分割線に基づいて設定された複数計測点を追跡する。例えば上述のように第1分割線221と第2分割線との交点をそれぞれ計測点としてもよいし、第1分割線221と第2分割線により形成される格子の中の所定の位置を計測点とすることもできる。追跡方法には、相関法やオプティカルフロー法など一般的な追跡方法が適用される。対象とする信号は、記憶部9に記憶されている超音波信号又は超音波画像である。
【0039】
高密度に計測点を設定していることから、分解能向上のための手法を取り入れてもよい。
【0040】
例えば、対象画像の分解能を疑似的に向上させて追跡演算を適用する。また、マッチングをとるためのブロックサイズを変化させながら再帰的に追跡演算を適用する。また、相互相関法とオプティカルフロー法を組み合わせた追跡演算を適用するなどの解決方法がある。計測する時相は、S101で取得、設定された超音波画像のフレーム群である。追跡結果として、各フレームにおける各計測点の位置座標のデータが得られる。
【0041】
次に超音波診断装置は、物理量演算部21により、物理量の算出を行う(S106)。
図6右下に示すように、計測点227の群に対して、隣接する計測点どうしで、その2点間距離に基づく物理量を算出する。例えば、2点間の距離や、初期距離からの変化率(strain)を算出する。半径方向には、radial strain、円周方向には、circumferential strainとなる。また4点で囲まれる面積の変化に基づいてarea strainを算出してもよい。これによりメッシュの各小領域の物理量が算出される。さらに、メッシュ全体についてこれらの物理量の平均値をとることで、関心領域の計測値とする。また、関心領域分離線231で分割した心外膜側と心内膜側で分けて平均値をとり、それぞれの計測値とする。
【0042】
次に検者又は装置は、結果表示領域を選択(S107)する。選択基準は、追跡の精度である。ここで、追跡の精度を自己評価するための評価値を算出しておく。一般に、分解能を高めるほど追跡の精度は低下しやすくなる。特に超音波画像の場合には、アーチファクトの存在やパルス分解能の低さのため、追跡演算に対して悪条件になりやすい。したがって、条件によっては必ずしも精度よく追跡できるとは限らない。評価値としては、誤ベクトル検出に基づく方法が用いられる。
【0043】
例えば、多数の計測点があるので、ある計測点の変位ベクトルが周囲の変位ベクトルと異なっている(誤っている)ことを判定する方法を用い、誤ベクトルの量を数値化する。
各計測点において評価値が得られるので、これもまた、関心領域全体や、関心領域分離線231を挟んで心内膜側、心外膜側に分けて算出してもよい。検者は、評価値の大小を見ながら、計測精度が低い関心領域については、非表示するように結果表示領域を選択する。また、装置が、予め設定されたしきい値に基づいて自動選択するようにしてもよい。
【0044】
次に装置は、表示部13により計測結果を表示する(S108)。
図4は計測結果の表示画面の一例を示す図である。物理量は、疑似カラー表示するために、輝度値に変換される。これらの輝度値を、関心領域のメッシュ上に重畳し、輝度変化を滑らかに補完することにより、関心領域全体に色づけする。
図4では、関心領域213,215の全体に色づけしている。追跡の自己評価値は追跡自己評価結果235の表で示される。
【0045】
検者は、この数値の大小を見て、計測結果を採用するか判断できるようにする。
図4右側にはグラフを表示する。グラフは、関心領域のそれぞれの局所領域毎に表示し、例えば、関心領域全体のストレイン値241、心内膜側領域のストレイン値243、心外膜側のストレイン値245として表示する。また、生体信号247も表示する。さらに、現在表示している画像の時相に時相バー249を設けて動画表示する。
図5のように、6つの関心領域を設定した場合には、関心領域毎に疑似カラー表示されるとともに、グラフ250も関心領域の数だけ表示される。ここでは、第1の関心領域213のグラフを実線で、第2の関心領域215のグラフを点線で示している。また、追跡自己評価結果235を見て、計測結果を採用しない場合には、その関心領域だけカラー表示をしないように操作してもよい。
【0046】
次に検者は、計測位置設定部17により関心領域分離線231を微調整する(S109)。動き追跡した結果のグラフを見ながら、関心領域分離線の位置を調整する。関心領域分離線を調整すると、局所領域における計測結果が変化するので、これをグラフに反映させて、反映された結果を見ながら所望の計測位置の計測結果が得られるように調整する。
【0047】
以上、本実施例によれば、生体組織の形状に合致した関心領域の設定が可能であり、メッシュ状に計測点を設定することにより、生体組織内部の動き追跡を行うことが可能になる。関心領域を関心領域分離線231で分離して局所領域としたり、計測値を疑似カラー表示したりすることによって、生体組織内部の局所的な性状の違いを簡便に判別できるようになる。また、関心領域を第1、第2のように分離して複数設定することによって、被検者の病変に応じた計測箇所に設定したり、画質が計測に十分な箇所に設定したりして計測精度を向上させることができる。また、関心領域を分離して必要な分だけ設定することにより、心筋全体を追跡するよりも計算量を低減できるため、検査の効率が向上することになる。
【0048】
すなわち、心臓短軸像においては、ドーナツ状の心筋のうち、心腔を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋以外の心筋部位(例えば
図4における心筋部位251)はノイズの影響等により超音波画像の画質が十分ではなく、動き追跡の精度が低くなるおそれがある。したがって、この心筋部位については物理量を算出したとしても信頼性に欠ける場合がある。それにも関わらず、関心領域がドーナツ状に設定されている場合、信頼性に欠ける部位に対しても計測が行われることになるから、演算処理の効率上好ましくない。この点、
図3に示すように、心臓短軸像のドーナツ状の心筋のうち、心腔を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋に関心領域を分離して設定することにより、演算処理の効率を高めることができ、かつ心筋を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋とを対比観察することができる。
【0049】
また、本実施例では、心筋の形状や伸縮方向などに応じて計測点を適切に設定している。すなわち、複数の計測点が、心筋の主な伸縮方向(心臓短軸像における心筋の円周方向及び放射方向(半径方向))に沿って設定される。本実施例によれば、このように心筋の伸縮方向に沿って計測点が設定されるので、例えば第1分割線221上の隣接計測点間若しくは第2分割線223上の隣接計測点間の距離の変化などを計測した場合、各計測値が心筋の各部位の性状を適切に反映しているので、診断に有用である。また、複数の第1分割線221上にそれぞれ設定された複数の計測点については、心内膜209及び心外膜211からの距離が全て一定となる。したがって、例えばある第1分割線221上の各計測点から心内膜209や心外膜211までの距離の変化を計測した場合、各計測値を対比することにより、心筋の各部位の性状を適切に対比することができるので、診断に有用である。したがって、本実施例によれば、心筋の伸縮を精度よく反映し各計測値が診断に適した比較対象となる心筋の伸縮計測ができる。
【実施例2】
【0050】
実施例2は、心臓の短軸像を例に挙げ、心筋の内部を空間的及び時間的に連続的に計測し、さらに、心筋内部の局所毎に計測値を算出する方法である。本実施例は、対象を3次元信号及び3次元画像としている部分が第1実施例と異なる。したがって、装置構成、処理手順など実施例1と同様の部分の説明は省略し、実施例1と異なる部分を主として説明する。
【0051】
最初に、被検体の複数の断層面の生体組織の超音波信号に基づいて3次元の超音波画像を表示(S101)して、関心領域の設定を行う(S102)。ここでは、入力機器を用いて3次元超音波画像上で手動設定するか、既存の自動領域分割法を利用して自動的に設定されるようにしてもよい。これにより3次元関心領域が設定される。
図7は3次元超音波像における計測方法の例を示す図であり、
図7左は、左心室全体の心内膜輪郭301、心外膜輪郭303を抽出したところである。
図7右は、3次元超音波画像上で設定されたある3次元関心領域305を抜き出したものである。このように心筋は、例えば厚さ10mm程度の釣鐘状の形状をしている。
【0052】
メッシュの設定(S103)では、半径方向と短軸方向と長軸方向の3方向で分割する。すなわち、radial、circumferential、longitudinalの各方向の計測を行うことを目的とした分割方法とする。言い換えれば、長軸方向に直交するある断面において、関心領域が心筋の心外膜211及び心内膜209に沿った複数の第1分割線221と、複数の第1分割線221に直交する複数の第2分割線223によりメッシュ状に分割される。さらに第1分割線221と第2分割線223を長軸方向の心外膜及び心内膜に沿って延在させ、長軸方向の所定の間隔で長軸方向に直交する断面を切ることにより、3次元のメッシュ状に分割される。これらの分割線の交点が計測点227として設定される。
【0053】
また、関心領域分離線231の設定(S104)により3次元関心領域を局所領域に分離する。例えば、
図7右のように、心内膜側と心外膜側に分割する関心領域分離線231を設定する。ここでは、関心領域分離線231が設定された後、関心領域分離線231が長軸方向の心内膜及び心外膜に沿って延在した面により、3次元関心領域が心内膜側の3次元領域と心外膜側の3次元領域に分離される。
【0054】
次に装置は、3次元超音波信号又は3次元超音波像において、各計測点227に対する動き計測(S105)を行い、物理量を算出する(S106)。物理量は、radial、circumferential、longitudinalの各方向の距離、距離の変化に基づくストレイン、3次元関心領域のある断面の面積、3次元関心領域の容積などである。検者又は装置は、動き追跡の自己評価に基づいて、結果表示領域の選択を行う(S107)。計測結果の表示(S108)では、計測値を輝度値に変換し、関心領域の面に色づけする。そして、動き追跡した結果のグラフを見ながら、関心領域分離線の位置を調整する(S109)。
【0055】
以上、本実施例によれば、心筋の3次元形状や伸縮方向などに応じて計測点を適切に設定しているから、第1実施例と同様に、心筋の伸縮を精度よく反映し各計測値が診断に適した比較対象となる心筋の伸縮計測ができる。また、3次元空間において、生体組織の形状に合致した関心領域の設定が可能であり、生体組織内部の動き追跡を行うことが可能になる。また、2次元での解析に比べて、奥行き方向の次元が加わるので、計測精度が向上するとともに、3方向を同時に計測可能になる。
【0056】
また、関心領域を関心領域分離線で分離して局所領域としたり、計測値を疑似カラー表示したりすることによって、生体組織内部の局所的な性状の違いを簡便に判別できるようになる。
【0057】
本実施形態の超音波診断装置は、被検体との間で超音波を送受信する超音波探触子と、超音波探触子で受信された被検体の心臓の心筋を含む組織の断層面の反射エコー信号に基づいて超音波信号を生成する超音波信号生成部と、超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成部と、超音波画像を表示する表示部と、表示部に表示された超音波画像上の心筋に関心領域を設定する計測位置設定部と、関心領域の複数計測点における心筋の動きを追跡する追跡演算部と、追跡結果に基づいて特定の物理量を算出する物理量演算部とを基本的な構成として備えており、算出された特定の物理量を表示部に表示するものである。なお、特定の物理量としては、関心領域の複数計測点の心筋の速度、関心領域の複数計測点の心筋のストレイン、関心領域により囲まれる心筋の面積、及び3次元超音波画像を生成した場合に3次元関心領域により囲まれる心筋の容積の少なくとも1つが挙げられる。
【0058】
そして、上記課題を解決するため、追跡演算部は、心筋の心外膜及び心内膜に沿った複数の第1分割線と、この複数の第1分割線に直交する複数の第2分割線によって複数計測点を追跡することを特徴としている。例えば複数の第1分割線と複数の第2分割線に基づいて複数計測点を設定して、この複数計測点を追跡するよう構成することができる。より具体的な例では、関心領域は、複数の第1分割線と複数の第2分割線によりメッシュ状に分割され、第1分割線と第2分割線の交点を複数計測点として設定するよう構成することができる。
【0059】
すなわち、心筋の特定の物理量の診断に対する精度を向上させるためには、心筋の形状や伸縮方向などに応じて計測点を適切に設定する必要がある。この点、本発明によれば、複数の計測点は心筋の主な伸縮方向(例えば超音波画像が被検体の心臓の心腔と心腔の周囲をドーナツ状に囲む心筋とを含む心臓短軸像であれば心筋の円周方向及び放射方向(半径方向))に沿って設定される。このように心筋の伸縮方向に沿って計測点が設定されるので、例えば第1分割線上の隣接計測点間若しくは第2分割線上の隣接計測点間の距離の変化などを計測した場合、各計測値が心筋の各部位の性状を適切に反映しているので、診断に有用である。また、複数の第1分割線上にそれぞれ設定された複数の計測点については、心内膜及び心外膜からの距離が全て一定となる。したがって、例えばある第1分割線上の各計測点から心内膜や心外膜までの距離の変化を計測した場合、各計測値を対比することにより、心筋の各部位の性状を適切に対比することができるので、診断に有用である。
【0060】
また、表示部に表示される超音波画像が心臓短軸像である場合、計測位置設定部は、心臓短軸像のドーナツ状の心筋の形状に合わせてドーナツ状に関心領域を設定するよう構成することができる。一方、計測位置設定部は、心臓短軸像のドーナツ状の心筋のうち、複数の心筋の部分領域に関心領域を分離して設定するよう構成することができる。このように複数の関心領域を分離して設定することにより、各関心領域における特定の物理量を対比観察することができるので好ましい。また、計測位置設定部は、心臓短軸像のドーナツ状の心筋のうち、心腔を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋に関心領域を分離して設定するよう構成することもできる。
【0061】
すなわち、心臓短軸像であっては、ドーナツ状の心筋のうち、心腔を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋以外の心筋部位はノイズの影響等により超音波画像の画質が十分ではなく動き追跡の精度が低くなるおそれがあるから、物理量を算出したとしても信頼性に欠ける場合がある。それにも関わらず、関心領域がドーナツ状に設定されている場合、信頼性に欠ける部位に対しても計測が行われることになるから、演算処理の効率上好ましくない。この点、心臓短軸像のドーナツ状の心筋のうち、心腔を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋に関心領域を分離して設定することにより、演算処理の効率を高めることができ、かつ心筋を挟んで超音波探触子の送受信面に近い側の心筋と遠い側の心筋とを対比観察することができる。
【0062】
また、計測位置設定部は、関心領域に設定された複数の第1分割線若しくは複数の第2分割線のいずれかを、この関心領域を2つに分離する関心領域分離線として設定するか、又は複数の第1分割線若しくは複数の第2分割線とは別に、超音波画像上に関心領域分離線を設定するよう構成することができる。これによれば、一旦設定された関心領域を簡便な操作で分離することができるので、例えば心筋の心内膜側と心外膜側を分けて評価したり、心筋の正常部位と異常部位を分けて評価したりする場合に使い勝手がよい。