(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一ツェナダイオードのカソード端子と前記スイッチ素子との接続点に、自己のカソード端子を前記第一ツェナダイオードのカソード端子側に接続して第二ツェナダイオードが挿入され、
前記第二ツェナダイオードのツェナ電圧である第二ツェナ電圧から前記起動トランジスタのゲート閾値電圧と前記第二逆流防止ダイオードの順方向電圧とを差し引いた電圧が、前記第一基準電圧から前記第一逆流防止ダイオードの順方向電圧を差し引いた電圧より低く、前記制御回路の前記停止電圧より高い請求項1記載のスイッチング電源装置。
前記主スイッチング素子がオフの期間に前記第一出力巻線に発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が前記第一出力巻線の一端に接続された第三ダイオード、及び前記第三ダイオードのカソード端子に接続された第三コンデンサで構成された第三整流平滑回路と、
前記第一基準電圧よりも高い第三基準電圧を有し、前記第三整流平滑回路が出力する第三出力電圧を観測し、前記第三出力電圧が前記第三基準電圧を超えると、前記駆動パルス出力回路が前記駆動パルスを出力する動作を停止させる過電圧検出回路とを備えた請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、工場でスイッチング電源装置を生産するとき、まず回路部品をプリント基板にマウントし、回路部品の端子を配線パターンのランドにはんだ付けし、ケーシング等を行って組み立てられ、その後、通電試験で製品の電気特性をチェックする。通電試験は、生産工程で発生した回路部品のはんだ付け不良(未はんだ等)、回路部品の初期故障等を検出するために行われ、不良製品が市場に流出するのを防止する。しかし、全ての回路部品について一つ一つチェックすると、1台当たりの通電試験に時間が掛かり過ぎるので現実的ではない。従って、例えば、「入力電圧Vi投入した時、二次側出力電圧Voutが規格を満たしているか」等、数種類の基本的な試験を行うことによって、全ての回路部品の不良を検出できることが好ましい。
【0007】
しかし、特許文献1の実施形態1のスイッチング電源装置は、例えば、三次巻線の端子に未はんだによるはんだ不良が発生し電気的に断線していた場合、通電試験で出力電圧Voutを観測していても検出することができない。このスイッチング電源装置は、入力電圧Viが投入されると、起動トランジスタを通じて電源ラインの電圧が上昇し、PWM制御回路の起動電圧に達すると、PWM制御回路が動作して主スイッチング素子がオンオフを開始する。三次巻線が断線していると、スイッチング動作を開始してもスイッチ素子がオンしないので、起動回路が電源ラインに電源電圧を供給し続け、起動回路に大きな損失が発生する危険な状態が継続する。しかし、二次側出力電圧Voutは、三次巻線の断線の有無にかかわらず、規格を満たす電圧となる。このように、三次巻線の端子のはんだ不良は、二次側出力電圧Voutを観測する試験では検出することができないので、何らかの特別な試験項目を追加しなければならず、その結果、製品1台当たりの試験時間が長くなったり、試験機が複雑になったりするという問題があった。
【0008】
また、二次側の出力電圧Voutを一定にする制御を行うため、フォトカプラ等の絶縁素子を用いてフィードバック回路を構成する必要があるので、実装スペースやコストの面で不利があった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、起動回路の定常的な損失を抑えることができ、回路部品に不良があっても通電試験で容易に検出可能なフライバック型のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、入力巻線及び1つ以上の出力巻線を有する主トランスと、前記入力巻線と直列に接続され、自己のオンオフにより前記入力巻線に入力電圧を断続した電圧を印加する主スイッチング素子と、特定の前記出力巻線である第一出力巻線の両端に接続され、前記主スイッチング素子のオフ期間に前記第一出力巻線に発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が前記第一出力巻線の一端に接続された第一ダイオード、及び前記第一ダイオードのカソード端子に接続された第一コンデンサで構成された第一整流平滑回路とを備え、
前記第一整流平滑回路の出力から第一逆流防止ダイオードを通じて電源供給を受ける電源ラインを有し、前記電源ラインの電圧が所定の起動電圧を超えると起動し、前記起動電圧よりも低い電圧である停止電圧以下に低下すると停止する制御回路と、前記制御回路内に設けられ、前記起動電圧よりも低く前記停止電圧よりも高い第一基準電圧を有し、前記第一整流平滑回路が出力する第一出力電圧を観測し、前記第一出力電圧が前記第一基準電圧に近づくように前記主スイッチング素子のオン時間及びオフ時間を定め、前記主スイッチング素子をオンオフさせる駆動パルスを出力する駆動パルス出力回路とを備え、
ドレイン端子側に前記入力電圧が入力され、ソース端子が第二逆流防止ダイオードを通じて前記電源ラインに電圧供給可能に接続された起動トランジスタ、第一ツェナ電圧を有し、カソード端子が前記起動トランジスタのゲート端子に接続され、アノード端子がグランドに接続された第一ツェナダイオード、及び前記起動トランジスタの前記ドレイン端子側から前記ゲート端子をバイアスするバイアス回路で構成され、前記入力電圧の投入時、前記電源ラインに前記起動電圧を超える電圧を出力する起動回路を備え、
前記主スイッチング素子がオフの期間に前記第一出力巻線に発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が前記第一出力巻線の一端に接続された第二ダイオード、及び前記第二ダイオードのカソード端子に接続された第二コンデンサで構成された第二整流平滑回路、前記第一ツェナダイオードの両端に接続されてオンオフするスイッチであって、前記第一基準電圧よりも低い第二基準電圧を有し、前記第二整流平滑回路が出力する第二出力電圧
が前記第二基準電圧を超えるとオンするスイッチ素子、及び前記起動トランジスタのソース端子と前記第二ダイオードのアノード端子との間に接続された断線検出抵抗で構成された動作切り替え回路を備え、
前記断線検出抵抗は、前記第一出力巻線が断線した場合に、前記起動トランジスタのソース端子から前記第二整流平滑回路に向けて電流を流し、前記第二基準電圧を超える前記第二出力電圧を発生させるスイッチング電源装置である。
【0011】
また、前記第一ツェナダイオードのカソード端子と前記スイッチ素子との接続点に、自己のカソード端子を前記第一ツェナダイオードのカソード端子側に接続して第二ツェナダイオードが挿入され、前記第二ツェナダイオードのツェナ電圧である第二ツェナ電圧から前記起動トランジスタのゲート閾値電圧と前記第
二逆流防止ダイオードの順方向電圧とを差し引いた電圧が、前記第一基準電圧から前記第
一逆流防止ダイオードの順方向電圧を差し引いた電圧より低く、前記制御回路の前記停止電圧より高い。
【0012】
さらに、前記主スイッチング素子がオフの期間に前記第一出力巻線に発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が前記第一出力巻線の一端に接続された第三ダイオード、及び前記第三ダイオードのカソード端子に接続された第三コンデンサで構成された第三整流平滑回路と、前記第一基準電圧よりも高い第三基準電圧を有し、前記第三整流平滑回路が出力する第三出力電圧を観測し、前記第三出力電圧が前記第三基準電圧を超えると、前記駆動パルス出力回路が前記駆動パルスを出力する動作を停止させる過電圧検出回路とを備えている。
【0013】
または、前記
主トランスの前記出力巻線のうちの、前記第一出力巻線と異なる特定の前記出力巻線である第二出力巻線と、前記主スイッチング素子がオフの期間に前記第二出力巻線に発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が前記第
二出力巻線の一端に接続された第三ダイオード、及び前記第三ダイオードのカソード端子に接続された第三コンデンサで構成された第三整流平滑回路と、所定の第三基準電圧を有し、前記第三整流平滑回路が出力する第三出力電圧を観測し、前記第一出力電圧が前記第一基準電圧を超えて上昇して前記第三出力電圧が前記第三基準電圧を超えると、前記駆動パルス出力回路が前記駆動パルスを出力する動作を停止させる過電圧検出回路とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
この発明のスイッチング電源装置は、スイッチング動作を開始した後、制御回路への電源電圧を主トランスの第一出力巻線から供給し、起動回路を停止させる動作を行うので、起動回路に大きな損失が定常的に発生するのを防止することができる。しかも、製品の組み立て工程において、例えば、第一出力巻線の端子にはんだ不良が発生した場合でも、一般的な通電試験を行うことで、確実に検出することができる。従って、特別な試験項目を追加する必要がなく、通電試験を効率よく短時間で行うことができる。その他、出力電圧のフィードバック制御に、フォトカプラ等の絶縁素子を使用していないので、実装スペースやコスト等の面で有利である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明のスイッチング電源装置の第一実施形態について、
図1に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、いわゆるフライバックコンバータであり、入力巻線12及び2つの出力巻線14a,14bが設けられた主トランス16を備えている。入力巻線12には主スイッチング素子18が直列接続され、主スイッチング素子18のオンオフによって、入力巻線12に入力電圧Viを断続した電圧が印加される。一方の出力巻線14a(以下、第一出力巻線14aと称する。)の両端には、主スイッチング素子18のオフ期間に第一出力巻線14aに発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が第一出力巻線14aの一端に接続された第一ダイオード20a、及び第一ダイオード20aのカソード端子に接続された第一コンデンサ20bで構成された第一整流平滑回路20が設けられている。
【0017】
第一整流平滑回路20の出力には、駆動パルス出力回路22を有した制御回路24が設けられている。制御回路24は、第一整流平滑回路20の出力から第一逆流防止ダイオード28を通じて電源供給を受ける電源ライン26を有し、電源ライン26の電圧が起動電圧V
Hを超えると起動し、起動電圧V
Hよりも低い電圧である停止電圧V
L以下に低下すると停止する。駆動パルス出力回路22は、起動電圧V
Hよりも低く停止電圧V
Lよりも高い第一基準電圧Vr1を有し、第一整流平滑回路20が出力する第一出力電圧Vo1を観測し、第一出力電圧Vo1が第一基準電圧Vr1に近づくように主スイッチング素子18のオン時間及びオフ時間を定め、主スイッチング素子18を駆動する駆動パルスV18を出力する。電源ライン26とグランドとの間には、バイパスコンデンサ26aが接続されている。第一逆流防止ダイオード28は、後述する起動回路32が電源ライン26に起動用の電圧を供給しているとき、その電圧が第一整流平滑回路20に印加されるのを防止し、駆動パルス出力回路22が検出する第一出力電圧Vo1と切り離す等の働きをする。
【0018】
入力ライン30には、入力電圧Viが投入された時、電源ライン26に向けて起動電圧V
Hより高い電圧を出力可能な起動回路32が設けられている。起動回路32は、いわゆるシリーズレギュレータであり、ドレイン端子が入力ライン30側に接続され、ソース端子が第二逆流防止ダイオード42を通じて電源ライン26に電圧供給可能に接続された起動トランジスタ34、第一ツェナ電圧Vz36を有し、カソード端子が起動トランジスタ34のゲート端子に接続され、アノード端子がグランドに接続された第一ツェナダイオード36、及び起動トランジスタ34のドレイン端子側からゲート端子のバイアス回路であるバイアス抵抗38で構成されている。また、ここでは、第一ツェナダイオード36と並列に分圧抵抗40が設けられており、入力電圧Viの投入によって入力ライン30の電圧が上昇したとき、バイアス抵抗38と分圧抵抗40の中点に発生する電圧(入力電圧Viを分圧した電圧)が第一ツェナ電圧Vz36に達したときに、第一ツェナダイオード36が導通し、起動トランジスタ34のソース端子の電圧が確立するようになっている。ここでは起動トランジスタ34はMOS型トランジスタであり、ソース端子からドレイン端子の向きに寄生ダイオード34aが存在する。第二逆流防止ダイオード42は、例えばスイッチング動作中に瞬時停電が発生し、入力ライン30の電圧が低下した場合に、電源ライン26のバイパスコンデンサ26aが寄生ダイオード34aを通じて放電されるのを防止する等の働きをする。
【0019】
起動回路32には、制御回路24が起動してスイッチング動作を開始したことを検出し、起動トランジスタ34の動作を停止させる動作切り替え回路44が接続されている。動作切り替え回路44は、第二整流平滑回路46、スイッチ素子48、第二ツェナダイオード50、断線検出抵抗52とで構成されている。第二整流平滑回路46は、第一出力巻線14aの両端に接続され、主スイッチング素子18がオフの期間に第一出力巻線14aに発生する電圧をピークホールドする回路であり、アノード端子が第一出力巻線14aの一端に接続された第二ダイオード46a、及び第二ダイオード46aのカソード端子に接続された第二コンデンサ46bで構成されている。
【0020】
スイッチ素子48は、ここではMOS型トランジスタであり、ドレイン・ソース端子が第一ツェナダイオード36の両端に接続され、ゲート・ソース端子間に第二整流平滑回路46の出力が接続され、第二整流平滑回路46が出力する第二出力電圧Vo2が第二基準電圧Vr2(=ゲート閾値電圧Vt48)以上のときにオンする。第二基準電圧Vr2は、第一基準電圧Vr1よりも低い。また、スイッチ素子48のゲート・ソース端子間にプルダウン抵抗54が設けられ、第二整流平滑回路46から電圧が出力されないときは、ゲート端子がローレベルに保持される。
【0021】
第二ツェナダイオード50は、第二ツェナ電圧VZ50を有し、第一ツェナダイオード36のカソード端子とスイッチ素子48との間に、自己のカソード端子を第一ツェナダイオード36のカソード端子に接続して挿入されている。第二ツェナ電圧Vz50から起動トランジスタ34のゲート閾値電圧Vt34と第
二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf42とを差し引いた電圧は、第一基準電圧Vr1から第
一逆流防止ダイオード28の順方向電圧Vf28を差し引いた電圧よりも低く、制御回路24の停止電圧V
Lよりも高い。
【0022】
断線検出抵抗52は、起動トランジスタ34のソース端子と第二ダイオード46のアノード端子との間に接続されている。断線検出抵抗52は、第一出力巻線14aが断線した場合に、起動トランジスタ34のソース端子から第二整流平滑回路46に向けて電流を流し、第二基準電圧Vr2を超える第二出力電圧Vo2を発生させ、スイッチ素子48をオフさせる働きをする。
【0023】
主トランス12の出力巻線14bの両端には、主スイッチング素子18のオフ期間に出力巻線14bに発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が出力巻線14bの一端に接続された二次側ダイオード56a、及び二次側ダイオード56aのカソード端子に接続された二次側コンデンサ56bで構成された二次側整流平滑回路56が接続されている。二次側整流平滑回路56は、負荷58に二次側出力電圧Vo11を出力する。出力巻線14bと二次側整流平滑回路56は二次側回路であり、それ以外の回路(一次側回路)から絶縁されている。
【0024】
上記のように、スイッチング電源装置10は、第一出力電圧Vo1を出力する第一整流平滑回路20、第二出力電圧Vo2を出力する第二整流平滑回路46、及び二次側出力電圧Vo11を出力する二次側整流平滑回路56の3つの出力を有し、スイッチング動作が開始すると、一次側の第一出力電圧Vo1が第一基準電圧Vr1と等しくなるように制御される。従って、フォトカプラ等の絶縁素子を用いたフィードバック回路は設けられていない。第二出力電圧Vo2は、第一出力電圧Vo1とほぼ等しい電圧(=第一基準電圧Vr1)になり、二次側出力電圧Vo11は、第一出力電圧Vo1に第一出力巻線14a及び出力巻線14bの巻数の比を乗じた電圧、すなわち第一出力電圧Vo1に略比例した電圧になる。
【0025】
次に、スイッチング電源装置10を組み立てた後、通電試験を行ったときの動作について説明する。ここで、通電試験の内容は「入力電圧Vi投入した時、二次側出力電圧Vo11が規格を満たしているか否か」という基本的な内容とする。
【0026】
まず、不良が発生していない正常製品を試験した場合の動作を説明する。スイッチング電源装置10に入力電圧Viが投入されると、起動トランジスタ34のソース端子電圧及び電源ライン26の電圧が上昇する。起動トランジスタ34のソース端子電圧が上昇すると断線検出抵抗52に電流が流れるが、その電流は第一出力巻線24を通じてグランドに流れるので、第二整流平滑回路46の第二出力電圧Vo2が上昇せず、スイッチ素子48はオンしない。従って、起動トランジスタ34のソース端子電圧は、第一ツェナダイオード36の第一ツェナ電圧Vz36からゲート閾値電圧Vt34を差し引いた電圧を目指して上昇する。
【0027】
その後、電源ライン26の電圧が制御回路24の起動電圧V
Hに達すると、制御回路24が起動して主スイッチング素子18がオンオフを開始する。すると、第一出力巻線14aにパルス状の電圧が発生し、第一整流平滑回路20から、第一基準電圧Vr1と等しい第一出力電圧Vo1が出力される。また、第一出力巻線14aにパルス電圧が発生すると、第二整流平滑回路46が、第一基準電圧Vr1とほぼ等しい電圧であって、第二基準電圧Vr2(=ゲート閾値電圧Vt48)よりも高い第二出力電圧Vo2を出力する。従って、スイッチ素子48がオンし、起動トランジスタ34のゲート端子電圧が第二ツェナダイオード50の第二ツェナ電圧基準Vz50まで低下し、起動トランジスタ34のソース端子電圧が第二ツェナ電圧Vz50からゲート閾値電圧Vt34を差し引いた電圧まで低下する。
【0028】
ここで、第二ツェナ電圧Vz50からゲート閾値電圧Vt34と第二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf
42とを差し引いた電圧は、第一基準電圧Vr1から第一逆流防止ダイオード
28の順方向電圧Vf2
8を差し引いた電圧よりも低いので、第一逆流防止ダイオード28がオンし、第二逆流防止ダイオード42がオフする。その結果、電源ライン26は、第一整流平滑回路20からの電圧供給を受け、電源ライン26の電圧が第一基準電圧Vr1から第一逆流防止ダイオード28の順方向電圧Vf2
8を差し引いた電圧で一定になる。起動回路32は、第二逆流防止ダイオード42のオフによって起動トランジスタ34の電流が遮断され、動作が停止する。
【0029】
二次側整流平滑回路56の第二出力電圧Vo11は、第一出力電圧Vo1に略比例した電圧、すなわち、第一基準電圧Vr1に第一出力巻線14aと出力巻線14bの巻数比を乗じた電圧が適正に出力され、試験の結果、「二次側出力電圧Vo11が規格を満たすので正常製品である」と判定される。
【0030】
次に、第一出力巻線14aの端子60にはんだ不良が発生し、第一出力巻線14aが断線している不良製品を試験した場合の動作を説明する。スイッチング電源装置10に入力電圧Viが投入されると、起動トランジスタ34のソース端子電圧及び電源ライン26の電圧が上昇する。そして、起動トランジスタ34のソース端子電圧の上昇に伴って、断線検出抵抗52に電流が流れる。このとき、第一出力巻線14aが断線しているので、
遮断検出抵抗52の電流が第二整流平滑回路46に流れ込み、第二出力電圧Vo2を発生させる。そして、第二出力電圧Vo2が第二基準電圧Vr2(=ゲート閾値電圧Vt48)を超えて、スイッチ素子48がオンする。スイッチ素子48がオンすると、起動トランジスタ32のゲート端子電圧は、第二ツェナダイオード50の第二ツェナ電圧Vz50以上に上昇することができなくなる。
【0031】
その後、起動トランジスタ34のソース端子電圧がさらに上昇し、第二ツェナ電圧Vz50からゲート閾値電圧Vt34を差し引いた電圧で一定になり、電源ライン26の電圧が、その電圧から第二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf42を差し引いた電圧で一定になる。従って、電源ライン26の電圧は制御回路24の起動電圧V
Hに達しないので、制御回路24が起動せず、主スイッチング素子18のスイッチング動作が開始しない。その結果、二次側整流平滑回路56の出力に二次側出力電圧Vo11が発生せず、試験の結果、「二次側出力電圧Vo11が規格よりも低いので不良製品である」と判定される。
【0032】
ここで、第二ツェナダイオード50の働きについて説明する。上述した通電試験で第一出力巻線14aの端子60のはんだ不良を検出する動作は、第二ツェナダイオード50を省略(短絡除去)しても同様である。さらに第二ツェナダイオード50を設けることによって、通常運転中に優れた動作を行うことができる。
【0033】
スイッチング電源装置10に入力電圧Viが投入され、主スイッチング素子18がスイッチング動作を行い、起動回路32の動作が停止している時、起動トランジスタ34のソース端子電圧は、第二ツェナ電圧Vz50から起動トランジスタ34のゲート閾値電圧Vt34を差し引いた電圧になっている。
【0034】
この通常運転中に、例えば、第一整流平滑回路の制御回路24に流れる電流や、二次側整流平滑回路56の負荷58に流れる電流が急変すると、第一出力電圧Vo1を第一基準電圧Vr1に保持するため、駆動パルス出力回路22の指令により駆動パルスV18がローレベルに保持され、しばらくの間、主スイッチング素子18のオン時間がゼロになる場合がある。この期間は、それほど長くはないが、オフが継続すると、第一出力巻線14aにパルス電圧が発生しなくなるので、第一コンデンサ20bの蓄積電圧を制御回路24に供給する結果、第一出力電圧Vo1が低下する。
【0035】
また、主スイッチング素子18のオフが継続し、第一出力巻線14aにパルス電圧が発生しなくなると、第一コンデンサ20bの蓄積電圧をスイッチ素子48のゲート端子に供給することになるが、第二コンデンサ46bから流れ出る電流が小さく、第二出力電圧Vo2の低下が緩やかなので、オフが継続するのが短時間なので、スイッチ素子48のオンが維持される。従って、起動回路32の起動トランジスタ34のソース端子電圧は、第二ツェナ電圧Vz50から起動トランジスタ34のゲート閾値電圧Vt34を差し引いた電圧であって、第一基準電圧Vr1よりも低い電圧に保持される。そして、このソース端子電圧よりも第一出力電圧Vo1の方が低くなったとき、第一及び第二逆流防止ダイオード28,42のオンとオフとが逆転し、起動回路34が動作可能になる。
【0036】
起動回路34が動作すると、電源ライン26には、第二ツェナ電圧Vz50から起動トランジスタ34のゲート閾値電圧Vt34と第
二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf42とを差し引いた電圧であって、制御回路24が動作を停止する停止電圧V
Lよりも高い電圧が供給されるので、制御回路24が停止しない。その後、主スイッチング素子18のオンオフが再開し(主スイッチング素子18のオン時間が発生し)、第一出力電圧Vo1が回復して起動回路34が停止し、当初の通常運転の状態に戻る。
【0037】
第二ツェナダイオード50を省略した場合は、通常運転中に主スイッチング素子18のオン時間がゼロになると、第一出力電圧Vo1の低下に伴って電源ライン26の電圧が制御回路24の停止電圧V
Lよりも低くなり、制御回路24の動作が停止する。制御回路24の動作が停止すると、スイッチング動作が完全に停止するので、第一出力電圧Vo1、二次側出力電圧Vo11がほぼゼロボルトまでダウンしてしまう。
【0038】
その後、しばらくすると、第二コンデンサ46bの第二出力電圧Vo2が低下してスイッチ素子48がオフし、起動トランジスタ34のゲート端子電圧が第一ツェナ電圧Vz36まで上昇し、起動回路32から電源ライン26に、第一ツェナ電圧Vz36からゲート閾値電圧Vt34と第二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf42を差し引いた電圧が供給され、改めて制御回路24が起動する。そして、スイッチング動作が再開され、当初の通常運転の状態に戻る。
【0039】
このように、第二ツェナダイオード50は、通常運転中に制御回路24の電流や負荷58の電流が急変した場合でも、制御回路24の動作用の電源電圧を確保し、第一出力電圧Vo1や二次側出力電圧Vo11がほぼゼロボルトまでダウンするのを防止する働きをする。
【0040】
以上説明したように、スイッチング電源装置10は、スイッチング動作を開始した後、制御回路24への電源電圧を主トランス16の第一出力巻線14aから供給し、動作切り替え回路44が起動回路32を停止させる動作を行うので、起動回路32に大きな損失が定常的に発生するのを防止することができる。しかも、製品の組み立て工程において、例えば、第一出力巻線14aの端子60にはんだ不良が発生した場合でも、一般的な通電試験を行う中で、確実に検出することができる。従って、特別な試験項目を追加する必要がなく、通電試験を効率よく短時間で行うことができる。
【0041】
また、出力電圧のフィードバック制御に、フォトカプラ等の絶縁素子を使用していないので、実装スペースやコスト等の面で有利である。
【0042】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第二実施形態について、
図2に基づいて説明する。ここで、第一実施形態のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
第二実施形態のスイッチング電源装置62は、第一スイッチング電源装置10の構成に加え、第一出力巻線14aの両端に、主スイッチング素子18のオフ期間に第一出力巻線14aに発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が第一出力巻線14aの一端に接続された第三ダイオード64a、及び第三ダイオード64aのカソード端子に接続された第三コンデンサ64bで構成された第三整流平滑回路64が設けられている。第三整流平滑回路64が出力する第三出力電圧Vo3は、第一出力電圧Vo1とほぼ等しい電圧(=第一基準電圧Vr1)となる。
【0044】
また、制御回路24には、第一基準電圧Vr1よりも高い第三基準電圧Vr3を有し、第三整流平滑回路64の第三出力電圧Vo3を観測し、第三出力電圧Vo3が第三基準電圧Vr3を超えると、駆動パルス出力回路22が駆動パルス
V18を出力する動作を停止させる過電圧検出回路66が設けられている。その他の構成は、第一実施形態のスイッチング電源装置10と同様である。
【0045】
次に、スイッチング電源装置62の動作について説明する。通電試験によって第一出力巻線14aの端子60のはんだ不良を検出する動作、及び、第二ツェナダイオード50の働きで制御回路24の動作用の電源電圧が確保される動作は、上記のスイッチング電源装置10と同様である。さらに、スイッチング電源装置62は、例えば、第一整流平滑回路20の第一ダイオード20aの端子にはんだ不良が発生した場合に、通電試験中にスイッチング電源装置62が故障するのを防止できるという利点がある。
【0046】
以下、第一ダイオード20aが断線している不良製品を試験した場合の動作を説明する。ここで、通電試験の内容は「入力電圧Vi投入した時、二次側出力電圧Vo11が規格を満たしているか」とする。
【0047】
スイッチング電源装置62に入力電圧Viが投入されると、上記と同様に、起動回路32から電源ライン26に起動電圧V
Hを超える電圧が供給され、制御回路24が起動して主スイッチング素子18がオンオフを開始する。すると、第一出力巻線14aにパルス状の電圧が発生し、第一整流平滑回路20に入力される。しかし、第一ダイオード20aが断線しているので第一出力電圧Vo1が発生せず、駆動パルス出力回路22は、第一出力電圧Vo1が第一基準電圧Vr1よりも低いと判断し、主スイッチング素子18のオン時間を長くするための駆動パルスV18を出力する。また、第一出力巻線14aにパルス電圧が発生すると、第二整流平滑回路46が第二基準電圧Vr2(=ゲート閾値電圧Vt48)よりも高い第二出力電圧Vo2を出力し、スイッチ素子48がオンし、起動回路32が電源ライン26に供給する電圧が、第二ツェナ電圧Vz50からゲート閾値電圧Vt34と第二逆流防止ダイオード42の順方向電圧Vf42とを差し引いた電圧に低下する。このとき、第一出力電圧Vo1が発生していないので、第二逆流防止ダイオード42がオンし、起動回路32からの電圧供給によって制御回路24が動作を継続する。
【0048】
制御回路24の駆動パルスV18を受けて主スイッチング素子18が通常よりも長いオン時間でオンオフするので、第三整流回路64の第三出力電圧Vo3が第一基準電圧Vr1を超えて上昇し、二次側整流回路56の二次側出力電圧Vo11にも相当の過電圧が発生する。そして、第三出力電圧Vo3が第三基準電圧Vr3に達すると、過電圧検出回路66が動作し、駆動パルス出力回路22が動作が停止し、二次側出力電圧Vo11がゼロボルトにダウンする。
【0049】
このように、スイッチング電源装置62は、第一ダイオード20aの端子にはんだ不良がある場合に、通電試験を行うと、二次側出力電圧Vo11が危険な電圧になる前に過電圧検出回路66が働いてスイッチング動作が停止するので、試験の結果、「二次側出力電圧Vo11が規格よりも低いので不良製品である」と判定される。
【0050】
一方、上記のスイッチング電源装置10の場合、第一ダイオード20aの端子にはんだ不良があると、スイッチング動作を継続して二次側出力電圧Vo11が過電圧となり、試験の結果、「二次側出力電圧Vo11が規格よりも高いので不良製品である」と判定される。このとき、例えば、駆動パルスV18の最大オン時間を長めに設定してあると、二次側出力電圧Vo11が危険な電圧まで上昇し、負荷58や内部の回路部品が故障してしまうおそれがある。
【0051】
以上説明したように、スイッチング電源装置62は、上記のスイッチング電源装置10と同様に、第一ダイオード20aの端子にはんだ不良が発生した場合、基本的な通電試験で確実に検出することができる。しかも、二次側出力電圧Vo11が危険な電圧になる前に過電圧検出回路66が働いて安全にスイッチング動作が停止するので、負荷58や内部の回路部品に過大な電気ストレスが加わったり、故障したりする心配がない。従って、不良製品と判断された製品については、未はんだとなっている部分をはんだ付けにより補修することによって、廃棄することなく、正常製品として出荷することが可能になる。
【0052】
次に、この発明のスイッチング電源装置の第三実施形態について、
図3に基づいて説明する。ここで、第二実施形態のスイッチング電源装置62と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
第三実施形態のスイッチング電源装置68は、第二スイッチング電源装置62の構成に加え、主トランス16に新たに第二出力巻線14cが設けられ、第二出力巻線14cの両端に第三整流平滑回路64が接続され、第三整流平滑回路64が出力する第三出力電圧Vo3を受けて動作する回路網70が設けられている。第三整流平滑回路64は、
図2のものと同様であり、主スイッチング素子18のオフ期間に第一出力巻線14aに発生する電圧をピークホールドする回路であって、アノード端子が第一出力巻線14aの一端に接続された第三ダイオード64a、及び第三ダイオード64aのカソード端子に接続された第三コンデンサ64bで構成されている。ここでは、第三出力電圧Vo3は、第一出力電圧Vo1に略比例した電圧、すなわち第一出力電圧Vo1に第一出力巻線14a及び第二出力巻線14cの巻数の比を乗じた電圧となる。
【0054】
また、制御回路24の過電圧検出回路66は、所定の第三基準電圧Vr3を有し、第三整流平滑回路64の第三出力電圧Vo3を観測し、第一出力電圧Vo1が第一基準電圧Vr1を超えて上昇して第三出力電圧Vo3が第三基準電圧Vr3を超えると、駆動パルス出力回路22の動作を停止させる。その他の構成は、第二実施形態のスイッチング電源装置62と同様である。この構成により、第二出力巻線14cを第一出力巻線14aと異なる巻数にすることによって、第一出力電圧Vo1(第一基準電圧Vr1)と異なる電圧で動作する回路網70に向けて、電源電圧を供給することができる。
【0055】
ここでは、スイッチング電源装置62の詳しい動作説明は省略するが、通電試験によって第一出力巻線14aの端子60のはんだ不良を検出する動作、及び、第二ツェナダイオード50の働きにより制御回路24の動作用の電源電圧が確保される動作は、上記のスイッチング電源装置10,62と同様である。また、第一整流平滑回路20の第一ダイオード20aの端子にはんだ不良で断線している場合に、通電試験中に内部の回路部品等が故障するのを防止する動作も、上記のスイッチング電源装置62と同様である。
【0056】
なお、この発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態の場合、一次側回路から絶縁された負荷58に電圧を供給するために二次側平滑回路56と出力巻線14bとが設けられているが、例えば、負荷58を一次側回路から絶縁する必要がない場合、二次側平滑回路56と出力巻線14bを省略し、第一又は第三整流平滑回路20,64の出力から負荷58に電圧供給する構成にすることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、起動トランジスタ34として、ドレイン端子、ソース端子及びゲート端子を備えたMOS型トランジスタが使用されているが、例えば、バイポーラトランジスタに置き換えることができる。その場合、各端子をコレクタ端子、エミッタ端子、ベース端子と読み替え、ゲート閾値電圧Vt34をベースエミッタ間飽和電圧Vt34と読み替える。同様に、上記実施形態では、スイッチ素子48として、ドレイン端子、ソース端子及びゲート端子を備えたMOS型トランジスタが使用されているが、バイポーラトランジスタに置き換えることができる。その場合も、各端子をコレクタ端子、エミッタ端子、ベース端子と読み替え、ゲート閾値電圧Vt48をベースエミッタ間飽和電圧Vt48と読み替える。
【0058】
また、本発明のスイッチング電源装置は、上述した本発明の特徴的な動作を妨げない範囲において、上記実施形態に表わしていない回路素子を追加できることは言うまでもない。例えば、第一、第二及び第三ダイオード20a,46a,64aのアノード側又はカソード側に、抵抗値の小さいサージ電流制限抵抗を挿入したり、第一、第二及び第三ダイオードや各出力巻線と並列に、高周波ノイズ吸収用のスナバコンデンサ(又はコンデンサと抵抗の直列回路)を追加することができる。また、第一及び第二逆流防止ダイオード
28,42のアノード側又はカソード側に、抵抗値の小さい抵抗やインダクタ等を挿入し、電源ライン26のパイパスコンデンサ26aとの間でローパスフィルタを形成し、電源ライン26に高周波ノイズが侵入するのを防止してもよい。また、起動トランジスタ34のドレイン端子と入力ライン30との間に抵抗やツェナダイオードを挿入し、起動時に起動トランジスタ34に集中する損失を分散させることができる。