特許第5753885号(P5753885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753885
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】印鑑製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 49/00 20060101AFI20150702BHJP
   B41K 1/00 20060101ALI20150702BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20150702BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B23B49/00 A
   B41K1/00 C
   B23Q17/22 A
   B23B35/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-218454(P2013-218454)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80821(P2015-80821A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2014年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597163784
【氏名又は名称】東阪電子機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原慎次
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−156033(JP,A)
【文献】 特開2008−221680(JP,A)
【文献】 特開昭63−188083(JP,A)
【文献】 特開平11−077491(JP,A)
【文献】 特開2010−274337(JP,A)
【文献】 米国特許第04854568(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 49/00
B23B 35/00
B23Q 17/22
B41K 1/00
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印材を溝に載せて保持する印材ホルダと、回転軸がZ軸方向になるように設けたドリルと、前記印材ホルダと前記ドリルとをZ軸方向に相対位置決めするZ軸位置決め手段と、当該Z軸位置決め手段により印材ホルダとドリルとを相対移動させることで、前記印材ホルダ上の印材をその表面に前記ドリルを当てて所定距離だけ押し込み、その際のドリル先端の位置を基準点として前記印材の表面を切削するように制御する制御手段と、を有することを特徴とする印鑑製造装置。
【請求項2】
更に、Z軸方向に軸が延出しその先端に十字形状に4個のアームを有する検出プレートが設けられ且つ当該検出プレートはX軸方向及びY軸方向に平行な直線の検出辺を前記各アームに有するプローブと、
当該プローブの動きを検出するセンサーと、
前記印材ホルダと前記プローブとをXYZ軸方向に相対移動させる相対移動手段と、
当該相対移動手段により前記プローブのX軸方向及びY軸方向の検出辺を前記印材ホルダに保持した印材の側面に接触させ、前記センサーの出力信号に基づいて前記印材の中心位置を取得する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の印鑑製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に印鑑を製造する印鑑製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に記載されているような印材自動彫刻機が知られている。この印材自動彫刻機は、印材を固定するチャックと、予め設定された彫刻形状に応じて粗加工するための、第一主軸に装着した粗加工用印刻カッタと、仕上加工を行うための第二主軸に装着された仕上加工用印刻カッタとを備えている。
【0003】
この印材自動彫刻機では、チャックに固定した印材の表面を、所定の彫刻形状に応じて制御した前記粗加工用印刻カッタで粗削りし、その後、仕上加工用印刻カッタにより仕上げを行う。これにより、加工時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−4497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の印材自動彫刻機では、印章を適切に彫るためには印材をZ方向及びXY方向の正確な位置にセットしなければならず、印鑑を大量に彫る場合には面倒な作業となるという問題点があった。そこで、この発明は、印鑑を彫る場合に簡単に位置決めを可能ならしめることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印鑑製造装置は、印材を溝に載せて保持する印材ホルダと、回転軸がZ軸方向になるように設けたドリルと、前記印材ホルダと前記ドリルとをZ軸方向に相対位置決めするZ軸位置決め手段と、当該Z軸位置決め手段により印材ホルダとドリルとを相対移動させることで、前記印材ホルダ上の印材をその表面に前記ドリルを当てて所定距離だけ押し込み、その際のドリル先端の位置を基準点として前記印材の表面を切削するように制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の印鑑製造装置は、印材を溝に載せて保持する印材ホルダと、Z軸方向に軸が延出しその先端に十字形状に4個のアームを有する検出プレートが設けられ且つ当該検出プレートはX軸方向及びY軸方向に平行な直線の検出辺を前記各アームに有するプローブと、当該プローブの動きを検出するセンサーと、前記印材ホルダと前記プローブとをXYZ軸方向に相対移動させる相対移動手段と、当該相対移動手段により前記プローブのX軸方向及びY軸方向の検出辺を前記印材ホルダに保持した印材の側面に接触させ、前記センサーの出力信号に基づいて前記印材の中心位置を取得する制御手段とを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態に係る印鑑製造装置を示す構成図である。
図2図1に示した印鑑製造装置のストッカを示す背面斜視図である。
図3】印鑑製造装置の位置決め装置を示す平面図である。
図4】印鑑製造装置の位置決め装置を示す正面図である。
図5】印鑑製造装置の軸位置検出装置を示す構成図である。
図6】印鑑製造装置の動作を示す説明図である。
図7】印鑑製造装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、この発明の実施の形態に係る印鑑製造装置を示す構成図である。図2は、図1に示した印鑑製造装置のストッカを示す背面斜視図である。この印鑑製造装置100は、ドリル1により印材2を切削する切削装置3と、多数の印材2をストックするストッカ装置4と、ストッカ装置4から供給した印材2を保持する印材ホルダ5と、印材ホルダ5上の印材2の中心軸を検出する軸位置検出装置6と、装置全体の動作を制御する制御装置7とから構成される。
【0010】
切削装置3は、回転軸がZ軸方向になるドリル1と、ドリル1を保持するチャック11を有するスピンドル12と、スピンドル12を回転させるスピンドルモータ(図示省略)と、スピンドル12を内設する筐体13とから構成される。
【0011】
前記印材ホルダ5は、ブロック状の本体51と、本体51の上から印材2を抑える押付部材52と、XYZ方向で位置決め制御する位置決め装置53とから構成される。なお、印材2の表面に対する水平方向をX軸、上下方向をY軸、印材2の軸方向をZ軸とする。前記本体51には、Z軸方向であり且つ印材2の前記ストッカ装置4の区画の長手方向に形成されたV溝54が設けられる。V溝54の大きさは、印材2がこのV溝54に嵌ったときに斜面中腹辺りで支持するようなものとする。V溝54の長さは、印材2の長さと略同じで良い。前記押付部材52は、ブロック形状であり、印材2の押圧面にはゴム等の柔軟性がある素材が貼り付けられる。押付部材52はエアシリンダー等のアクチュエータ55によりY軸方向に上下動する。アクチュエータ55は、前記制御装置7により動作が制御される。
【0012】
図3は、印鑑製造装置の位置決め装置を示す平面図である。図4は、当該位置決め装置を示す正面図である。この位置決め装置53x〜53zは、レールに設けたサーボモータ56及びボールネジ57を備える。各軸のサーボモータ53は前記制御装置7により制御される。X軸の位置決め装置53xは、X方向に移動制御されるコラム58を備え、このコラム58の上にY軸の位置決め装置53yが設けられる。Y軸の位置決め装置53yのスライダ59には、前記本体51が取り付けられる。Z軸の位置決め装置53zは前記切削装置3に設けられる。切削装置3は、Z軸の位置決め装置53zのコラム60上に設けられる。
【0013】
ストッカ装置4は、箱状の筐体41と、筐体41内を横方向に複数の区画に区切る仕切板42とを有する。筐体41の下部は開口しており、前記仕切板42の下端が露出する。仕切板42の間隔は、印材2の直径より若干大きい程度である。筐体41の奥行は、印材2の長さよりも若干大きい程度とする。筐体41の上部は開口している。これにより、筐体41内に印材2をストックする複数の区画43が形成される。仕切板42の下端42aは内側に傾斜しており内部の印材2が垂直方向に落下しないようにしている。当該仕切板42の下端は、一部が印材2の直径より若干大きい程度突出しており、印材2は仕切板42による区画43から軸方向に移動して取り出し可能な状態とする。
【0014】
筐体41の背面には、エアシリンダー等のアクチュエータ44が配置される。アクチュエータ44には、印材2の区画43の長手方向に平行移動すると共に区画43内に挿通可能な大きさの短冊状のプッシャ45が設けられる。アクチュエータ44は、前記制御装置7により動作が制御される。
【0015】
軸位置検出装置6は、図5に示すように、Z軸の位置決め装置53zのコラム60に設けられる。この軸位置検出装置6は、Z軸方向に軸が延出したプローブ61と、当該プローブ61に接続したセンサー62とから構成される。プローブ61の先端には、平板状で十字形状に4個のアームを有する検出プレート63が設けられる。検出プレート63は、X方向及びY方向に平行な直線の検出辺64を各アームに備える。センサー62は、プローブ61に接続され筐体64内に収納される。センサー62は、プローブ61の回転を増幅するように設けた回転プレート67と、回転プレート67の先端を検出するフォトセンサー68とから構成される。印材2にアームが接触するとプローブ61が回転し、この回転が前記回転プレート67で増幅されてその動きをフォトセンサー68が検出する。センサー62の出力信号は、前記制御装置7に送信される。
【0016】
次に、この発明の印鑑製造装置100の動作を説明する。
[印材の供給動作]
ユーザは、ストッカ装置4の区画43に上部の開口から多数の印材2を投入し、当該区画43内に印材2をストックする。この状態で筐体41の下部に、区画43内の一番下の印材2が露出する。制御装置7によりプッシャ45を動かすと、プッシャ45が筐体41の下部から区画43内に挿入され、印材2が押される。プッシャ45を完全に挿通すると、印材2が区画43内から押し出される。押し出された印材2は、印材ホルダ5のV溝54に落ちて嵌り込む。このとき、印材2がV溝54(本体51)の先端から所定距離だけ突出するように調整しておく。
【0017】
当該印材2が押し出され、プッシャ45が区画43内から元の位置に戻ると、当該押し出された印材2の上に位置していた印材2が下に一つ落ちて、再び区画43の下部に位置し、露出する。この手順で印材2を印材ホルダ5に供給するが、区画43の一列にストックされた印材2がなくなると、本体51がX軸及びY軸の位置決め装置53により移動し、隣の区画43とZ軸方向で同じ位置に移動し、印材2が供給可能な状態とする。この手順でX方向に本体51を移動することで、ストッカ装置4の区画43にストックした印材2の全てを印材ホルダ5に供給できる。
【0018】
[印材のZ軸位置決め動作]
一つの印材2を印材ホルダ5に供給した後、印材ホルダ5では押付部材52により印材2を固定する前に、XY方向の位置決め装置53により本体51を移動させ、図6(a)に示すように、切削装置3のドリル1を印材2の表面に対向させる。そして、図6(b)に示すように、Z方向の位置決め装置53zによりドリル1の先端が印材2の表面に接触するまでゆっくり移動させる。そして、図6(c)に示すように、ドリル1の先端が印材2表面に接触した状態で印材2をZ方向に所定距離だけ押し込む。制御装置7は、当該位置を切削におけるZ軸の基準点として記憶する。この状態で、制御装置7は、アクチュエータ55を駆動して押付部材52を下降させ、印材2をV溝54に押し付けて固定する。
【0019】
これにより、印材2はV溝54の斜面と押付部材52の押圧面の3点で安定的に保持される。このように、ドリル1の先端で印材2の表面を押し、印材2とドリル1とが接触した状態を基準点とするので、V溝54に印材2をラフに載せても位置決めが可能であるので、印材2のセットがきわめて簡単である。また、ドリル1の先端で印材2を少し押し込むので基準点を確実に出すことができる。
【0020】
[印材の軸の位置決め動作]
次に、印材2の軸を検出する。位置決め装置53によりプローブ61に対して印材2をXY方向に所定軌跡で移動させ(所定軌跡の例は図中にて一点鎖線で示す)、まず、図7(a)に示すように、印材2のX方向右側面(円形のX方向の右頂部)をX方向の検出辺64x(図中下方向の足の片側辺)に接触させる。続いて、印材2のX方向左側面(円形のX方向の左頂部)をX方向の検出辺64x(図中上方向の足の片側辺)に接触させる。これにより、印材2の左右側面の位置を取得し、この位置データから印材2のX方向の径を取得すると共に当該X方向の印材2の中心軸位置を取得する。
【0021】
次に、図7(b)に示すように、印材2のY方向上側面(円形のY方向の上頂部)をY方向の検出辺64y(図中右方向の足の片側辺)に接触させる。続いて、印材2のY方向左側面(円形のY方向の下頂部)をY方向の検出辺64y(図中左方向の足の片側辺)に接触させる。これにより、印材2の上下側面の位置を取得し、この位置データから印材2のY方向の径を取得すると共に当該Y方向の印材2の中心軸位置を取得する。そして、XY方向の原点に対する当該中心軸位置を基準点としてセットする。XY方向の検出が終了したら、位置決め装置53により印材2を所定位置まで退避させる。
【0022】
このようにして、当該印材2の中心位置を特定すると共に実際の径を取得する。印材2は天然素材であることが多く、その場合、印材2の径又は形状にばらつきが生じるが、係る軸位置検出装置6により印材2の実際の径や形状を検出することで、位置決め不良時の印影周囲の円形状に生じる幅のばらつきを軽減できる。また、径が異なる複数種類の印鑑を製造する場合、V溝54に異なる径の印材2を載ると中心位置が異なる結果になるので、上記プローブ61により中心位置を取得することで、このような異なる径の印材2でも軸位置の位置決めが可能となる。
【0023】
[切削動作]
印材2のZ方向及びXY方向での位置決めが完了したら、前記ドリル1を回転させて所定の制御軌跡により印材2の表面を切削して印章を彫る。このようにして彫った印象は、周囲の円環状部分の幅が一定となり、Z方向の位置決めも正確になされているので、印章の切削深さも適切なものとなる。
【0024】
なお、XYZ方向の位置決め装置は上記実施の形態のものに限定されず、上記切削装置3、ストッカ装置4、印材ホルダ5、軸位置検出装置6等が相対位置制御可能であれば、公知の別の構成を採用できる。
【符号の説明】
【0025】
100 印鑑製造装置
1 ドリル
2 印材
3 切削装置
4 ストッカ装置
5 印材ホルダ
6 軸位置検出装置
7 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7