(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1A〜1Bを参照すると、本発明の実施形態による、フュージョンプロセスおよび改良された温度制御機器102を用いてガラスシート138を製造する例示的なガラス製造システム100の、異なった図が示されている。本書において説明するガラス製造システム100は、フュージョンプロセスを用いてガラスシート138を作製するものであるが、温度制御機器102を任意の種類のガラス製造システム内に組み込みかつ使用することも可能であることを理解されたい。例えば、温度制御機器102は、フュージョンドロー、スロットドロー、ダウンドロー、または連続的なガラスシート成形プロセスを採用している任意の他のガラスシート成形方法と、組み合わせて使用することができる。したがって本発明の温度制御機器102は、手法が限られたものであると解釈されるべきではない。
【0013】
図1Aに示されているように、例示的なガラス製造システム100は、溶解槽110、清澄槽115、混合槽120(例えば、撹拌チャンバ120)、送出槽125(例えば、ボウル125)、成形装置112(例えば、アイソパイプ112)、改良された温度制御機器102、牽引ローラアセンブリ135、およびガラスシート分離機器140を含んでいる。典型的には、清澄槽115、混合槽120、および送出槽125は、白金や、あるいは白金‐ロジウム、白金‐イリジウム、およびその混合物などの白金含有金属から作製されるが、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、またはその合金などの他の耐火性金属を含むものでもよい。成形装置112は典型的にはジルコンから作製される。
【0014】
溶解槽110では、ガラスバッチ材料が矢印109で示したように導入されて溶解され、溶融ガラス126が形成される。清澄槽115(例えば、清澄管115)は高温の処理エリアを有し、このエリアが溶解槽110から溶融ガラス126を耐火性管113を介して受け入れ(この位置では図示なし)、さらにこの中で溶融ガラス126から泡が除去される。清澄槽115は、清澄槽―撹拌チャンバ接続管122によって混合槽120(例えば、撹拌チャンバ120)に接続される。混合槽120は、撹拌チャンバ―ボウル接続管127によって送出槽125に接続される。送出槽125は下降管129を通じて注入口132に、さらに成形装置112内へと溶融ガラス126を送出する。成形装置112は溶融ガラス126を受け入れる注入口136を備え、この溶融ガラスは、トラフ137内に流入した後に両側面128’および128”から溢れ出て流れ落ち、さらに底部139として知られる位置で融合する。底部139では両側面128’および128”が合流し、ここで2つの溢れ出た溶融ガラス126の壁が互いに再結合(例えば、再融合)して、下方に移動するガラスシート138(ガラスリボン138)が成形される。
【0015】
温度制御機器102はコントローラ148およびフレーム150を含み、フレーム150は温度制御要素132(例えば、抵抗加熱型の温度制御要素132)のアレイと放射コリメータ152とを支持している(
図1B参照)。温度制御要素132と放射コリメータ152とが組み合わさって、下方に移動しているガラスシート138の異なる部分を高度な空間分解能で冷却または加熱して、ガラスシート138内の応力を低減させかつガラスシート138の厚さを制御するように、コントローラ148は各温度制御要素132と連係してその温度を制御する(
図1B参照)。フレーム150は、温度制御要素132のアレイと放射コリメータ152とが下方に移動するガラスシート138の全幅を横切って延在するように、フュージョン成形装置(図示なし)に取り付けられる。例示的な温度制御機器102についての詳細な考察は、
図2〜6を参照して後に示す。
【0016】
牽引ローラアセンブリ135は2つの圧延ローラ149aおよび149bを有し、これらが下方に移動するガラスシート138をその間で延伸する(
図1B参照)。牽引ローラアセンブリ135はさらに、下方に移動するガラスシート138の厚さの制御を助ける。その後、機械的罫書き装置142(例えば、罫書きホイール142)とノージング装置144とを含み得るガラスシート分離機器140を使用し、下方に移動しているガラスシート138に機械的に罫書きして、これを個別のガラスシート片138’に分離することができる。
【0017】
図1Bを参照すると、温度制御要素132と放射コリメータ152とを備えた図示のフレーム150は、成形装置112と牽引ローラアセンブリ135との間に位置付けられている。しかしながら、温度制御要素132と放射コリメータ152とを備えたフレーム150を、牽引ローラアセンブリ135とガラスシート分離機器140との間に位置付けることも可能である。実際には、夫々それ自体の温度制御要素132アレイと放射コリメータ152とを備えた複数のフレーム150を、ガラス製造システム100内の様々な位置に設けてもよい。所望であれば、1つの温度制御要素132アレイのみを含むフレームを1以上、ガラス製造システム100内の1以上の位置で使用し、下方に移動するガラスシート138の幅および長さに亘る温度分布の制御をさらに助けることもできる。
【0018】
図2A〜2Cを参照すると、本発明の一実施の形態による改良された温度制御機器102をより詳細に示した3つの図が示されている。温度制御機器102は、コントローラ148と、温度制御要素132および放射コリメータ152を支持しているフレーム150とを含んでいる。
図2Bに示されているように、温度制御要素132は互いに隣に並べられ、また放射コリメータ152は、温度制御要素132に隣接して、あるいは温度制御要素132から少なくともわずかな距離だけ離して位置付けられる。放射コリメータ152はセル154のアレイを含み、ここで各セル154は、温度制御要素132の面に対して実質上垂直な方向(または他の方向)に開口チャネル156を有している。さらに各セル154は、下方に移動するガラスシート138の運動に対して実質上平行な方向(または他の方向)の壁
(板状部材)158を有している(
図4参照)。さらに、1以上のセル154は、下方に移動するガラスシート138の運動に対して実質上垂直な方向(または他の方向)の壁160を有し得る。ガラスシート138の運動に対して垂直に配向されている壁160は、ガラスシート138の移動方向における空間分解能を増加させることになり、これは、ガラス基板138の移動方向における赤外冷却率または加熱率の高分解能での制御が有益である場合には望ましいものとなるであろう。所望であれば、温度制御要素132はテクスチャ面を有するものでもよい。この特定の例において、放射コリメータ152は1〜100のセル154のアレイを有し、これらのセルは1×13の温度制御要素132のアレイからわずかな距離だけ離して位置付けられる。
【0019】
動作時には、コントローラ148(例えば、プロセッサ148aおよびメモリ148b)が各温度制御要素132の温度を制御し、その結果、温度制御要素132と放射コリメータ152とが組み合わさって、下方に移動しているガラスシート138の幅に亘る温度分布を正確に制御することができる。下方に移動しているガラスシート138の幅に亘る温度分布を正確に制御することは望ましいことであり、というのもフュージョン成形プロセスでは本質的に、ガラスシート138の流れに垂直な方向において、高い頻度で温度変動が生じるためである。そしてこのような温度変動によって、完成したガラスシート138に位相差(応力)が変化した帯状部分が生じ、これがもし考慮されなければ、液晶ディスプレイ用途などのディスプレイ用途での性能に悪影響を与えることになる。すなわち、温度制御要素132と放射コリメータ152とを組み合わせると、高度な空間分解能でガラスシート138を冷却(または加熱)することによって、フュージョン成形プロセスに起因する種々の温度変動を相殺して、位相差が変化した帯状部分を本質的に含まないガラスシート138(例えば、LCD用ガラスシート138)を製造することを可能にし得る。
【0020】
改良された温度制御機器102はさらに、下方に移動するガラスシート138から放射コリメータ152を特定距離だけ離して置いても、下方に移動するガラスシート138の幅に亘る温度分布の正確な制御を依然として可能にし得るという望ましい特徴を有している。このことは重要であり、というのもフュージョン成形プロセスにおいては、開始動作の際にガラスシート138のための空間的な余裕を確保するために、そして通常の動作中にはガラスシート138が動き得るように、ガラスシート138と放射コリメータ152との間に少なくとも50mmの空間を設けるべきであるためである。この点で、各セル154の開口チャネル156の空間とその壁158の長さとのサイズが、下方に移動しているガラスシート138を所望の空間分解能に合わせて温度制御要素132で冷却または加熱するよう制御できるようなサイズとなるように、放射コリメータ152は設計される。例えば、個々に冷却または加熱され得るガラスシート138の特定部分の幅に対応する所望の空間分解能は、約75mmとなり得、あるいはより好適には約50mm、あるいはさらに好適には約20mmとなり得る。
【0021】
次に示す考察では、改良された温度制御機器102、特に温度制御要素132および放射コリメータ152を、どのように構成し得るかについて、さらにこれらをどのように使用して、移動しているガラスシート138またはさらに言うなら任意の他の基板や他の材料片の、冷却(例えば)を制御し得るかについて、より詳細に説明する。最初に、放射コリメータ152が設けられていない平面的な温度制御要素132の直線状アレイを通過して動いている、高温の平面的なガラスシート138(例えば、基板138)について検討する。各温度制御要素132を異なる温度で保持して、ガラスシート138に亘り差別的に冷却を加えることができる。以下の変数を定義する。
【0022】
W 運動方向に垂直な、ガラスシート138の幅
T
s 一定であると仮定した、ガラスシート138の温度
w
i i番目の冷却温度制御要素132の幅
T
i i番目の冷却温度制御要素132の温度
h 全て同じであると仮定した、冷却温度制御要素132の高さ
x ガラスシート138の幅を横切る方向の座標
y ガラスシート138が動く方向の座標であって、冷却温度制御要素132の中心をy=0とする
x
i i番目の冷却温度制御要素132の中心でのx座標の値
y
i i番目の冷却温度制御要素132の中心でのy座標の値
Δz ガラスシート138と冷却温度制御要素132のアレイとの間の垂直距離
【0023】
i番目の冷却温度制御要素132とガラスシート138上の位置(x,y)での差別的要素(differential element)との間の放射形状係数は、i番目の冷却温度制御要素132から出てガラスシート138の差別的要素上に注がれる放射エネルギーの分数として定義される。関数F
i(x,y)は本書において、差別的要素の面積で除算された、i番目の冷却温度制御要素132とガラスシート138上の(x,y)での差別的要素との間の放射形状係数として定義される。関数F
i(x,y)は以下の式で与えられる。
【数1】
【0024】
図3にプロットしたシミュレーションに対して、放射形状係数の関数F
i(x,y)はいくつかの実例値を有する。このとき、x
i=0、Δz=0.200m、w
i=0.025m、h=0.1mである。このプロット図において、線302はF
i(x,0)に関し、線304はF
i(x,0.1)に関し、さらに線306はF
i(x,0.2)に関する。x軸およびy軸の座標の単位はメートルである。
【0025】
ガラスシート138からi番目の冷却温度制御要素132への放射熱流束(単位面積当たりの放射パワー)は以下の式で与えられる。
【数2】
【0026】
ガラスシート138の温度が冷却用のi番目の冷却温度制御要素132よりも高いときにはいつでも、移動しているガラスシート138はこの流束により冷却される。i番目の冷却温度制御要素132の温度がガラスシート138の温度よりも高い場合には、ガラスシート138は加熱され、このときi番目の冷却温度制御要素132は加熱要素と称されるべきである。ここで、σはステファン・ボルツマン定数、ε
sはガラスシート138の放射率、ε
iはi番目の冷却温度制御要素132の放射率、そして全ての表面は放射に対して灰色体であると仮定する。ガラスシート138上の任意の点からの放射熱流束の合計は、個々の冷却要素の流束を全て足したものである。
【0027】
図3では、i番目の冷却温度制御要素132の冷却効果の幅が、i番目の冷却温度制御要素132の幅w
iよりも大幅に大きいことが分かる。したがって、冷却温度制御要素132をガラスシート138により近づけると、ガラスシート138上への冷却効果の有効幅は減少することになる。しかしながら、フュージョンプロセスなどの多くの用途においては、必要な空間分解能が得られるほど十分に冷却温度制御要素132をガラスシート138に近づけることは現実的ではない。例えば、50mmの空間分解能を必要とする場合には、冷却温度制御要素132をガラスシート138から約30mmの位置とするべきであるが、フュージョンプロセスを参照して上述したように、これほどガラスシート138に近づけることは望ましくない。
【0028】
本発明においては、放射コリメータ152を加えることによって、さらに放射コリメータ152を冷却温度制御要素132とガラスシート138との間に置くことによって、この問題を解決する。放射コリメータ152を、少なくともフュージョンプロセスにおいて使用して、ガラスシート138の運動に垂直な方向における冷却の空間分解能を増加させる。なお、本書における考察を、無限に高い温度制御要素132に基づくものとしてもよく、これは
図3のプロットにおいてh=∞とすると形態係数の値は変わるが、xに伴うその変動の形状は変わらないためである。本書では、放射コリメータ152および冷却温度制御要素132に対し、高さすなわちy方向を無限範囲のものとして分析を行うが、フュージョン成形用途において使用される放射コリメータ152および冷却温度制御要素132は、通常約50〜400mmの範囲に広がる有限の高さを有しているであろう。
図4を用いて、放射コリメータ152が冷却温度制御要素132とガラスシート138との間に設置されたときに、どのように機能するかについて示す。
【0029】
図4に示されているように、ガラスシート138から垂直方向または垂直に近い方向に出て行った熱線402は、放射コリメータ152内の開口チャネル156を直接通過した後、1以上の冷却温度制御要素132に受け止められる。これに対して、ガラスシート138から斜めの方向に出て行った熱線404は、放射コリメータ152の壁158で何度も反射された後に、最終的に冷却温度制御要素132に到達し得る。あるいは、ガラスシート138から斜めに出て行った熱線404は、プロセス条件によって、放射コリメータ152に吸収されて壁158を加熱または冷却することがある。いずれの場合でも、放射コリメータ152によって、ガラスシート138の運動に垂直な方向における冷却の空間分解能が増加し、これにより位相差(応力)のある帯状部分を含まない、あるいはほとんど含まない、ガラスシート138が生成される。
【0030】
セル154内の開口チャネル156の間隔が幅広であると、冷却温度制御要素132の空間分解能を増加させる点で有効性が減少するため、放射コリメータ152のサイズは重要である。さらに、セル154の壁158が短いと、冷却温度制御要素132の空間分解能を増加させるための放射コリメータ152の有効性が減少する。しかしながら、長くて狭いセル154は概して断熱効果を有するため、冷却を可能にするということと、冷却温度制御要素132の空間分解能を増加させるということとの間でバランスを取ることが必要である。このトレードオフを評価するために、ソフトウェアパッケージFluentを使用して例示的なシミュレーションをいくつか行った。その結果を
図5〜6に示した。
【0031】
図5を参照すると、Fluentシミュレーションの概要を説明した図が示されており、この図は、25mm幅の温度制御要素132と、温度制御要素132から401mmかつ放射コリメータ152から200mmの位置に位置付けられている1m幅のガラスシート138(シミュレーション基板138)とを使用したときの、温度分布を単位℃で示したものである。シミュレーションの中で、放射コリメータ152からガラスシート138までの距離は一定のままとし、放射コリメータ152の長さは変化させた。すなわち、ガラスシート138から温度制御要素132までの距離はさまざまなものとなった。この特定のシミュレーションにおいて、基板138は1100℃であり、一方温度制御要素132は中心の温度制御要素132’を除いて1100℃であり、中心の温度制御要素132’を1000℃となるようにシミュレーションした。このFluentシミュレーションの結果に関する詳細な考察を次に示すが、この考察は放射コリメータ152を使用することに起因する、冷却の空間分解能の強化に関連したものである。
【0032】
図6を参照すると、放射コリメータ152が存在することでシミュレーション基板138上の冷却空間分解能がどのように強化されるかについて説明したグラフが示されている。このグラフでは、いくつかの異なる形状の放射コリメータ152に対する、シミュレーション基板138からの放射流束をプロットした。特に、y軸は基板の流束(W/m
2)を表し、x軸は基板138上の空間距離(メートル)を表し、また異なる形状の放射コリメータ152に基づく、いくつかの異なる流束は次の通りである。すなわち、(1)線602は、放射コリメータ152が1mm幅の開口チャネル156と長さ50mmの壁158とを有しているときの流束を表し、(2)線604は、放射コリメータ152が5mm幅の開口チャネル156と長さ100mmの壁158とを有しているときの流束を表し、(3)線606は、放射コリメータ152が5mm幅の開口チャネル156と長さ200mmの壁158とを有しているときの流束を表し、さらに(4)線608は、放射コリメータ152が存在していないときの流束を表す。このシミュレーションにおいて、グリッド(セル154)は放射率0.4の拡散特性を有したものであり、また放射コリメータ152を温度制御要素132から1mm離して設置した。
【0033】
図6から、放射コリメータ152の、断熱効果および強化された冷却空間分解能が容易に分かるであろう。これらおよび他の結果から、放射コリメータ152のセル154内における開口チャネル156の空間と壁158の深さとの間の比率が約10〜50であるときに、過剰に断熱することなく所望の空間分解能の強化が可能になる、適した妥協点となることがわかる。さらに、深さ50mmの壁158と幅1mmのセル154とを有する放射コリメータ152を備えた冷却温度制御要素132のアレイが基板138から200mmのところに位置していると、放射コリメータ152を備えていない、基板138から30mmのところに位置した同じ冷却温度制御要素132と同様の空間分解能が得られることを、
図6のデータは示している。この場合、放射コリメータ152を使用することで、基板の空間的な余裕が30mmから200mmまで増加することになる。したがって、放射コリメータ152によれば、所与の空間冷却分解能で基板138の空間的余裕を大幅に増加させることができる。
【0034】
放射コリメータ152に使用される材料の性質も、分解能強化に対するその有効性と、その断熱特性に影響を与えるはずである。一般に、放射コリメータ152は低放射率の材料を組み込んでいたが、これが低い断熱性をもたらし、かつ分解能の強化を低下させることになる。しかし、Fluentまたは他のシミュレーションソフトウェアで設計シミュレーションを行って、放射コリメータ152用の光学材料の特性および形状を、特定の用途に応じて決定することもできる。本書で示されるシミュレーション結果によれば、放射コリメータ152を金属箔や、ガラス処理用途にも特によく適している押出セラミック材料から作製すると、平坦なガラスシート138のフュージョン成形を含む用途にとって望ましい性質が容易に得られることが示される。
【0035】
これまで述べたことから、本発明の一実施の形態が、放射コリメータ152を介して冷却または加熱されているガラスシート138から分離されている、加熱および/または冷却要素132のアレイを備えた温度制御機器102を含み、この放射コリメータ152が、加熱および/または冷却要素132の面に垂直な方向に多数の真直ぐな開口チャネル156を備えたものであることは、当業者には明らかであろう。例えば、放射コリメータ152は、押出成形された触媒コンバータ基材に類似した開口チャネル254を有するものでもよい。放射コリメータ152によれば、加熱および冷却要素132から離れているガラスシート138の幅に亘る加熱および冷却を、空間的に分解することができる。所望であれば、放射コリメータ152は種々の加熱および冷却要素132とともに使用することができ、その要素の数および間隔は、ガラスシート138での加熱または冷却流束のかなりの部分を放射が占めるものであれば、任意のものとしてもよい。
【0036】
本書における考察は、フュージョンプロセスでガラスシート138を成形する用途において、改良された温度制御機器102を使用するものに基づいている。フュージョンプロセス自体についてのより詳細な考察として、同一出願人による米国特許第3,338,696号明細書および同第3,682,609号明細書(これらの文献の内容が参照することにより本書に組み込まれる)を参照する。しかしながら、処理対象の材料に加熱および/または冷却要素を近接させることが望ましくない場合には、材料片の加熱および/または冷却を空間的に分解する必要がある任意のプロセスで、この改良された温度制御機器102を使用することも可能であることは明らかであろう。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面に示し、かつ前述の詳細な説明の中で説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限られるものではなく、以下の請求項により明記および画成される本発明から逸脱することなく、多くの再構成、改変および置換えが可能であることを理解されたい。さらに、本書において「本発明」または「発明」に言及した場合には、これは例示的な実施形態に関するものであって、必ずしも添付の請求項に包含される全ての実施形態に関するものではないことに留意されたい。
【0038】
C1.ガラス製造システムにおいて、溶融ガラスを供給するよう構成された、少なくとも1つの槽、前記溶融ガラスを受け入れかつガラスシートを成形するよう構成された、成形装置、前記ガラスシートの幅に亘って加熱率または冷却率を制御するよう構成された、温度制御機器であって、コントローラと、前記コントローラに接続されている複数の温度制御要素と、さらに、前記複数の温度制御要素と前記ガラスシートとの間に位置付けられた、放射コリメータと、を備えている温度制御機器、前記ガラスシートを受け入れかつ延伸するよう構成された、牽引ローラアセンブリ、および、前記ガラスシートを個々のガラスシートに切断するよう構成された、切断機、を備えていることを特徴とするガラス製造システム。
【0039】
C2.前記放射コリメータが複数のセルを含み、該各セルが、前記複数の温度制御要素に対して実質上垂直な方向に開口チャネルを有し、さらに該各セルが、前記ガラスシートの運動に対して実質上平行な方向の壁を有していることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0040】
C3.少なくとも1つの前記セルが、前記ガラスシートの運動に対して実質上垂直な方向の壁をさらに有していることを特徴とするC2記載のガラス製造システム。
【0041】
C4.前記コントローラが、前記放射コリメータと前記温度制御要素とが組み合わさって前記ガラスシートの異なる部分を所望の空間分解能に合わせて加熱または冷却し、該ガラスシートの応力を低減させかつ該ガラスシートの厚さを制御するように前記各温度制御要素の温度を制御するように構成されたことを特徴とするC2記載のガラス製造システム。
【0042】
C5.前記所望の空間分解能が約75mmであることを特徴とするC4記載のガラス製造システム。
【0043】
C6.前記所望の空間分解能が約50mmであることを特徴とするC4記載のガラス製造システム。
【0044】
C7.前記所望の空間分解能が約20mmであることを特徴とするC4記載のガラス製造システム。
【0045】
C8.前記各セルの、前記開口チャネルが空間を有しかつ前記壁が長さを有し、該空間および長さが夫々、約10〜50の比率に従ったサイズで形成されたものであることを特徴とするC2記載のガラス製造システム。
【0046】
C9.前記放射コリメータが、前記ガラスシートから少なくとも50mm離れて位置していることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0047】
C10.前記複数の温度制御要素および前記放射コリメータが、前記成形装置と前記牽引ローラアセンブリとの間に位置していることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0048】
C11.前記複数の温度制御要素および前記放射コリメータが、前記牽引ローラアセンブリと前記切断機との間に位置していることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0049】
C12.前記温度制御機器が、前記複数の温度制御要素と前記放射コリメータとを支持するフレームをさらに備えていることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0050】
C13.前記複数の温度制御要素と前記放射コリメータとの組を、複数備えていることを特徴とするC1記載のガラス製造システム。
【0051】
C14.ガラスシートを製造する方法であって、バッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成するステップ、前記溶融ガラスを処理して前記ガラスシートを成形するステップ、コントローラと、前記コントローラに接続されている複数の温度制御要素と、前記複数の温度制御要素と前記ガラスシートとの間に位置付けられた、放射コリメータとを備えた温度制御機器を使用して、前記ガラスシートの幅に亘り加熱率または冷却率を制御するステップ、前記ガラスシートを延伸するステップ、および、前記ガラスシートを個々のガラスシートに切断するステップ、を含んでいることを特徴とする方法。
【0052】
C15.前記放射コリメータが複数のセルを含み、該各セルが、前記複数の温度制御要素に対して実質上垂直な方向に開口チャネルを有し、さらに該各セルが、前記ガラスシートの運動に対して実質上平行な方向の壁を有していることを特徴とするC14記載の方法。
【0053】
C16.少なくとも1つの前記セルが、前記ガラスシートの運動に対して実質上垂直な方向の壁をさらに有していることを特徴とするC15記載の方法。
【0054】
C17.前記コントローラが、前記放射コリメータと前記温度制御要素とが組み合わさって前記ガラスシートの異なる部分を所望の空間分解能に合わせて加熱または冷却し、該ガラスシートの応力を低減させかつ該ガラスシートの厚さを制御するように前記各温度制御要素の温度を制御するように構成されたことを特徴とするC15記載の方法。
【0055】
C18.前記各セルの、前記開口チャネルが空間を有しかつ前記壁が長さを有し、該空間および長さが夫々、約10〜50の比率に従ったサイズで形成されたものであることを特徴とするC15記載の方法。
【0056】
C19.前記温度制御機器が、前記複数の温度制御要素と前記放射コリメータとを支持するフレームをさらに備えていることを特徴とするC15記載の方法。
【0057】
C20.移動している材料片の幅に亘って加熱率または冷却率を制御するよう構成された、温度制御機器において、コントローラと、前記コントローラに接続されている複数の温度制御要素と、さらに、前記複数の温度制御要素と前記移動している材料片との間に位置付けられた、放射コリメータであって、前記放射コリメータが複数のセルを含み、該各セルが、前記複数の温度制御要素に対して実質上垂直な方向に開口チャネルを有し、さらに該各セルが、前記移動している材料片の移動方向に対して実質上平行な方向の壁を有している放射コリメータとを備えたことを特徴とする温度制御機器。
【0058】
C21.前記コントローラが、前記放射コリメータと前記温度制御要素とが組み合わさって前記移動している材料片の異なる部分を所望の空間分解能に合わせて加熱または冷却し、該移動している材料片の応力を低減させかつ該移動している材料片の厚さを制御するように前記各温度制御要素の温度を制御するように構成されたことを特徴とするC20記載の温度制御機器。