特許第5753897号(P5753897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5753897-低透過性の可撓性燃料ホース 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753897
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】低透過性の可撓性燃料ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20150702BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20150702BHJP
   B32B 25/14 20060101ALI20150702BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   F16L11/08 A
   B32B1/08
   B32B25/14
   F02M37/00 321A
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-513201(P2013-513201)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(65)【公表番号】特表2013-533945(P2013-533945A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】US2011036981
(87)【国際公開番号】WO2011152991
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2013年1月30日
(31)【優先権主張番号】61/352,822
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/791,654
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,アール
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ランス
(72)【発明者】
【氏名】ストライプ,ダナ
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−141046(JP,A)
【文献】 特開平05−331344(JP,A)
【文献】 特開2009−154467(JP,A)
【文献】 特開2007−055219(JP,A)
【文献】 特開2010−048334(JP,A)
【文献】 特開2009−138309(JP,A)
【文献】 特表2010−505077(JP,A)
【文献】 特表2007−514818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
B32B 1/08
B32B 25/14
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HNBRゴム内部管と、
EVM/CPEブレンドゴム外部カバーと、
分枝状の分子構造と耐衝撃性改良剤を有することにより耐衝撃性改良されたポリアミド6から本質的になる中間バリア層と前記バリア層と前記外部カバーとの間に設けられたテキスタイル補強材とを備え、前記ポリアミド6が、
ISO527タイプ1Aに従う引張弾性率が1850/1000MPaであり、
ISO527タイプ1Aに従う降伏点引張強さが55/45MPaであり、
ISO527タイプ1Aに従う破断点引張歪が150/220%であり、
ISO178に従う曲げ弾性率が1750/850MPaであり、
ISO178に従う曲げ最大応力が70/45MPaであり、
ISO179/1eAに従うシャルピーノッチ付き衝撃強さが92/NB kJ/m2(NBは破断しないを意味する)であるか、
もしくは、ISO180/1Aに従うアイゾッドノッチ付き衝撃強さが90/NB kJ/m2(NBは破断しないを意味する)であり、
上記示された2つの値の最初の値は成形乾燥品、2番目の値はISO1110にしたがってコンディショニングされた材料についての値である物理的特性を示す、
ホース。
【請求項2】
前記ポリアミド6が曲げ弾性率1〜2GPaを有する請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記ポリアミド6が破断点引張伸び約100%以上を有する請求項1に記載のホース。
【請求項4】
非フルオロポリマー基材層のみを含む請求項1に記載のホース。
【請求項5】
前記バリア層が継目のない管状層である請求項1に記載のホース。
【請求項6】
前記バリア層と前記ゴム管及びゴムカバー層の少なくとも1つとの間にエラストマー結合層をさらに備える請求項1に記載のホース。
【請求項7】
前記バリア層の半径厚さが0.025mm〜0.76mmの範囲にある請求項1に記載のホース。
【請求項8】
前記バリア層が継目のない管状層である請求項7に記載のホース。
【請求項9】
前記バリア層と前記補強材との間に設けられたHNBRゴム結合層をさらに含む請求項1に記載のホース。
【請求項10】
前記バリア層と前記補強材との間にEVM/CPEブレンドゴム結合層をさらに備える請求項1に記載のホース。
【請求項11】
前記テキスタイル補強材がアラミド繊維を備える請求項1に記載のホース。
【請求項12】
前記ポリアミド6が曲げ弾性率約1〜約2GPa及び破断点引張伸び100%以上を有する請求項1に記載のホース。
【請求項13】
SAE J 1737に従って試験された場合に40℃で1g/m2/日未満のB20バイオ燃料に対する透過性及び40℃で約1g/m2/日以下のガソリンに対する透過性の少なくとも1つを有する請求項に記載のホース。
【請求項14】
少なくとも所定の長さの請求項1に記載のホースと、
少なくとも1つの付属品、クランプ、又は流体処理装置を備えるホースシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2010年6月8日出願の米国特許仮出願第61/352,822号の利益を主張するものであり、そして2010年1月20日出願の米国特許仮出願第61/296,784号の利益及び2009年6月1日出願の米国特許仮出願第61/183,030号の利益を主張する、2010年6月1日出願の米国特許出願第12/791,654号の一部継続出願でもある。
【0002】
本発明は概して、燃料に対して低い透過性を有する可撓性の燃料ホースに、そしてより詳細には、特定の種類のポリアミド6のバリア層を有するホースに関する。
【背景技術】
【0003】
燃料系成分(fuel system components)に対する厳しい排出基準に沿って、エタノールを含むアルコールを含有する自動車燃料の使用増加によって、従来の可撓性ホース構造における改良が必要となっている。従来の燃料ホース構造には、経済的で耐燃料性のゴム材料、例えば、ニトリルゴム(NBR)、ニトリル−ポリ塩化ビニルブレンド(NBR−PVC)、エピクロロヒドリン(ECO)等が用いられていた。現在、改良されたアルコール含有燃料用ホースは一般に、1種又は2種以上の様々なフルオロエラストマー及び/又はフルオロプラスチック、例えば、FKM、PVDF、ETFE、FEP、EFEP、PCTFE、THV、PTFE等と通常表示されるもの(以下、概してフルオロポリマーと称する)を用いてアルコール及び燃料透過に対するバリアを提供している。燃料ホースバリア層に対して一般的に好ましい材料は、フルオロポリマーフィルム、例えば、THV(テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのターポリマー)であり、その一例が米国特許第5,679,425号明細書に開示されている。
【0004】
フルオロポリマーバリアホースが燃料ホースの市場で優位を占めているが、他の多くの他の材料が可能性のあるバリア層として利用できる。平坦な樹脂フィルムを重ねながら円筒層に巻くことによる熱可塑性中間層を備えたゴムホースの製造方法を対象とする米国特許第6,945,279号明細書には、可能性のあるゴム材料及び熱可塑性樹脂材料の広範なリストが開示されている。リストには可能性のあるゴム材料としてNBRがそして可能性のある樹脂フィルムとしてポリアミド6(「PA6」)が挙げられているが、米国特許第6,945,279号明細書には任意の特定の用途に対して材料を選択するための特定の指針は何ら提示されておらず、またそこには実施例も何ら開示されていない。典型的な燃料ホースはさらに、フルオロポリマーを例えばポリアミドを含む他の材料と組み合わせた多層バリア構造を含んでいる。ポリアミドは燃料用の熱可塑性多層管に有用な材料として挙げられることが多い。
【0005】
燃料ホースにおいてナイロン11(すなわち、ポリアミド11)の熱可塑性フィルム層を用いた例が米国特許第6,279,615号明細書に開示されており、そこにおいてポリアミド(「PA」)は比較例のゴムホースの内部表面上の最内ベニヤ層である。それにもかかわらず、米国特許第6,279,615号明細書に記載されたホースについて得られる透過率は現行のSAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)基準を満たすほど充分には低くなかった。米国特許第2,564,602号明細書は、ナイロンを含む可撓性で樹脂性の熱可塑性材料の中間層を備えたゴムホースを開示している。米国特許公開第2007/194481A1号明細書は、内部管とゴムの外部カバーと、PA6を含む任意の種類の熱可塑性樹脂であるが好ましくは燃料ホース用のフルオロポリマーの中間バリア樹脂層とを備え、樹脂層がプラズマ処理されたゴムホースを開示している。米国特許第7,478,653号明細書は、フルオロポリマー又はポリアミド(PA6を含む)のバリア層を備えた4層ゴム燃料ホースを開示している。
【0006】
米国特許第6,855,787号明細書は、フルオロポリマーのバリア層を含み、ポリアミド樹脂、例えば、PA6などを基材とした熱可塑性の燃料移送管を開示している。米国特許第6,491,994号明細書は、PA11又はPA12樹脂の層と、PA6の層と、層状シリケートが中に分散されたPA6の層とに基づく熱可塑性燃料移送管を開示している。米国特許第7,011,114号明細書は、ポリフェニレンスルフィド(「PPS」)のバリア層を含むポリアミド樹脂に基づく熱可塑性の燃料移送管を開示している。
【0007】
主用途が硬質プラスチック管である多層バリアの使用例が、米国特許第5,038,833号明細書に開示されている。バリア層が、ビニル樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(「EVOH」)などの層及びポリオレフィン及び/又はポリアミド樹脂の外層を含んで、2層又は3層を必要とする、熱可塑性バリア層の冷媒ホースにおける使用例が米国特許第6,941,975号明細書に開示されている。樹脂層はそれぞれ厚さ0.025〜0.25mmを有する。米国特許第6,941,975号明細書において提供された唯一の例では、全体の厚さ0.15mmの3層バリアが用いられており、直径が開示されていないホースの1cm長さに基づくR134冷媒に対する透過率3.94×10−5g/cm/日を有していた。米国特許第7,504,151号明細書は、ナノフィラーが配合されたPA6/66コポリマー、PA11、PA12、PA6、又はPA6/12のバリア層を備えた冷媒ホースを開示している。米国特許第7,478,654号明細書は、層の1つとして熱可塑性樹脂、例えば、PA6又は多くの他の1種を含む2層のバリアを備えた冷媒バリアホースを開示している。
【0008】
その全体の内容が引用として本明細書中に組み込まれる、2007年11月9日に出願された同時継続の米国特許出願第11/938,139号明細書に言及する。その出願明細書は、非フッ素化ゴム内部管、非フッ素化ゴム外部カバー、エチレン含有量30モル%未満を有するEVOHから本質的になる中間バリア層、及び好ましくはバリア層と外部カバーとの間にテキスタイル補強材を備える可撓性燃料ホースを開示している。バリアと補強材との間に非フッ素化ゴム結合層が含まれていてもよい。エタノール及びメタノール含有燃料に対する透過性は非常に低い。EVOH層が未加硫ゴム内部管上に押出されそしてその上に未加硫ゴム外部カバーが押出されることができる。しかしながら、加硫前又は加硫間に得られる未加工ホースのハンドリングの間に、EVOH層の剛性はキンク、表層剥離及び他の加工上の問題を生じさせることがある。この剛性の結果としてEVOHをベースとするホースはSAE J30R14キンク試験に不合格であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、例えばアルコール含有燃料に対する用途に好適でありかつ非常に可撓性であってキンク又は表層剥離なく製造することが容易である低透過性の燃料ホースを提供するシステム及び方法を対象とする。本発明はさらに、フッ素化材料を必要としないことによる経済的な燃料ホースを提供する。具体的には、本発明は、必要に応じてテキスタイル又はワイヤーで強化された、中間PA6バリア層を備えた非フッ素化エラストマーに基づく非常に低い透過性のゴム燃料ホースを提供する。本発明は、非線状又は分枝状の分子構造及び耐衝撃性改良剤を有するPA6のバリア層を備え、さらなる熱可塑性又はフッ素化ポリマーバリア層を有しない低透過性の燃料ホースにおいて具体化されることができる。代わりに、PA6バリア層は曲げ弾性率約2GPa以下及び伸び率約100%以上を有していることができる。PA6バリア層はTechnyl(登録商標)C 548Bであることができ、それはローディア・エンジニアリング・プラスチックス社(Rhodia Engineering Plastics)による商標の下で販売されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、ゴム内部管と、分枝状分子構造及び耐衝撃性改良剤を有するPA6を含む中間バリア層と、及びゴム外部カバーとを含む燃料ホースを対象とする。バリア層はPA6層から本質的になっていることができ又はPA6層からなっていることができる。バリア層の厚さは0.025〜0.76mm(1〜30ミル)、好ましくは0.025〜0.38mm(1〜15ミル)、又は0.07〜0.18mm(3〜7ミル)の範囲内、又は10ミル厚までであることができる。内部管及び外部カバーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(HNBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、エチレン−酢酸ビニル(EVM)、又はニトリル−ポリ塩化ビニル(NBR−PVC)ブレンドされたエラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)等を含んでいることができる。内部管及び結合層は双方とも同じゴム配合物を含んでいることができる。好ましくは、内部管も、結合層も、外部カバーも、バリア層もフルオロポリマーを含んでいる必要がない。テキスタイル又はワイヤー補強材は、PA6バリア層に直接適用されるか、又は補強材の前にバリア層に適用されることができる摩擦層若しくは結合層に適用されることができる。接着系、例えば、レソルシノール、ホルムアルデヒド供与体、及びシリカ(RFS)系などを、PA6への接着を促進するために摩擦層及び/又は内部管層に用いることができる。破裂強さが増大するためPA6バリア層によって強化材の必要性を有意に低減させることができる。
【0011】
別の実施形態において、本発明のホースは本明細書中に記載のようにPA6の薄層を含む、2若しくは3以上の層、又は2〜5の層を含んでいることができる。PA6層は好ましくは0.010インチ(0.25mm)までの厚さを有していることができる。PA6は好ましくは、特定の又は所定の燃料又は燃料成分の透過が1日当たり1平方メートル当たり15g以下に低下されるのに充分な厚さ又は有効な厚さであることができる。所定の燃料成分はメタノール又はエタノールであることができる。他の層は、補強材、例えば、テキスタイル又はワイヤーなど、例えばTPEを含む異なる熱可塑性材料、熱硬化性材料、例えば、ゴムなど、又は架橋熱可塑性樹脂であるか又はそれらを含んでいることができる。
【0012】
本発明は、上記説明に係る燃料ホース及び少なくとも1つの付属品、例えば、クランプ、結合管(coupling)、コネクタ、ニップル、管類等、及び/又は燃料若しくは流体ハンドリング部品、例えば、タンク、ポンプ、キャニスター、レール、若しくはインジェクター等を用いるホースアセンブリー又は燃料システムも対象とする。
【0013】
上記内容は、以下の本発明の詳細な説明がより良く理解されることができるように本発明の特徴及び技術的利点をむしろ広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴及び利点を以下に述べる。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施するために改変し又は他の構造を設計するための基礎として容易に利用することができるということを当業者であれば理解されたい。かかる等価の構造は添付の特許請求の範囲に記載した本発明の精神及び範囲から逸脱するものではないことも当業者であれば認識されたい。その機構(organization)及び操作方法の双方に関して本発明に特有であると考えられる新規な特徴は、さらなる目的及び利点とともに、添付の図面と関連して考慮されれば以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、各図は例示及び説明の目的でのみ設けられたものであり本発明の範囲の定義として意図されたものでないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書中に組み込まれその一部を形成し同じ参照番号が同じ部分を表示する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、記載内容とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【0015】
図1】本発明に従って構成されたホースの実施形態の部分的に断片化した斜視図である。
【0016】
図2】本発明に従って構成されたホースシステムの実施形態の概略図である。
【0017】
図3】本発明に従って構成されたホースの他の実施形態の部分的に断片化した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照するに、本発明の1つの実施形態に従って構成されたホースが示されている。ホース11は内部管12、ポリアミド6(PA6)の中間熱可塑性バリア層14、及び外部カバー16を含んでいる。必要に応じて、ホース11はホース内のいずれかの場所に位置する補強層18を含んでいることができる。別の選択として、ホース11は様々な層の間に1又は2以上の結合層及び/又は接着剤コーティングを含んでいることができる。図1は、結合層20上に付与された補強層18を示す。中間層14はゴム層の1つの内部に配置されることによってゴム層を2つの分離した層に効果的に分けることができる。
【0019】
中間バリア層14は、好ましくは分枝状の分子構造を有する、すなわち、線状重合体構造ではない、PA6を含む。中間層の厚さは0.025〜0.76mm(1〜30ミル)、好ましくは0.025〜0.38mm(1〜15ミル)、又は0.05〜0.25mm(2〜10ミル)の範囲であることができる。PA6は気体に対する良好な透過バリアであると考えられているが、それはPA6が半結晶性〜高結晶性ポリマーであること及びアミド基の高い凝集エネルギーによるものである。一般に、結晶化度が高くなるほど、透過性は低下する。しかしながら、高い結晶化度はPA6を不充分な低温可撓性の脆い硬質ポリマーにする。PA6中の分岐が高くなるほど、結晶化度が低下し可撓性が高くなる。耐衝撃性改良剤の存在も可撓性を増加させる。このように、先願は硬質の構造材料として硬質PA6グレードを用い、及び/又は他のバリア材料、例えば、フルオロポリマー、ポリオレフィン、EVOH、及び/又はその他同種類のものなどのさらなる層が結合された薄い従来のPA6層を用いている。しかしながら、本発明の実施形態に従って、様々な燃料、例えば、インドレン、ガソリン、バイオディーゼル、ディーゼル、アルコール、及びアルコール含有燃料などに対して例外的に低い透過性を有する可撓性の燃料ホースは、PA6を含む又はまさにPA6から本質的になる又はPA6からなる単一のバリア層を用いて構成されることができ、好ましくはPA6は分枝状構造及び耐衝撃性改良剤を有し又は曲げ弾性率約2GPa未満及び伸び率約100%以上を有する。
【0020】
PA6は様々に、ポリカプロラクタム、ナイロン6、及びポリカプロアミドとしても特定される。本明細書中で、用語PA6又は「PA6を含む」は、PA6と他のポリマーとのポリマーブレンドも含むことができる。例えば、限定的でなく、本明細書中でPA6は、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA46等の1種又は2種以上とPA6とのブレンドを含むことができる。さらに、前記ブレンドは耐衝撃性改良剤又は他の添加剤、例えば、本明細書中で記載したものなどを含むことができる。代わりに、本明細書中でPA6は耐衝撃性改良剤以外のいかなる他のブレンドポリマーも含まず実質的にPA6であることができる。
【0021】
アミド基の前記凝集エネルギーに関して、PA6は関連する感湿性を示し、高湿度環境において増加した透過性を生じさせることがある。かかる湿度環境は、ホースの製造の間の蒸気加硫環境から湿った又は湿潤な気候における自動車の使用場所まで、ホースの寿命の間のほとんどいつも存在していることがある。本発明の実施形態に従って、適当な非フッ素化ゴム内部管及び外部カバー層の使用は湿気からPA6バリア層を充分に保護する。適当なゴム配合物は、NBR、HNBR、CSM、CR、ECO、EVM、CPE、NBR−PVC、エチレンメチルアクリレートエラストマー(EAM)、アクリル酸又はアクリレートエラストマー(ACM)、又はTPE等を基材とすることができる。アルコール含有燃料用の内部管に対して好ましいゴム配合物はNBR、NBR−PVC、ECO、及び/又はHNBRを基材とする。そうではあるが、蒸気又は湿気に対する有害な曝露を防ぐ措置、例えば、加硫の間ホースの端をシールするなどの措置を取ることができることを理解されたい。
【0022】
バリア層に対して適当なグレードのPA6は、分枝状の分子構造及び耐衝撃性改良剤を有するものを含む。分枝状の分子構造は物質を拡散させるためのより曲がりくねった分子経路を形成又は強制することによって透過に対する耐性を改善すると考えられている。耐衝撃性改良剤の存在は、PA6を加工しキンク問題を解消するために必要な可撓性を提供すると考えられており、透過に対する耐性を向上させることもできる。好ましくは、本発明の実施に対して適当なPA6は比較的高い粘度及び比較的低い溶融流量を有する。適当なPA6は好ましくは吹込成形グレードであることができ又は押出グレードであることができる。適当なPA6は200〜240℃の又は約220℃若しくは約222℃の溶融温度を有しているが、この温度は内部管及び外部カバーゴム配合物が一般に押出され、加硫され又は硬化される温度より充分に高い。適当なPA6は比較的低い曲げ弾性率を有しており、例えば、曲げ弾性率は約2GPa未満の範囲、又は約1〜約2GPaの範囲であることができ、ISO178の試験法に従って試験されることができる。適当なPA6は比較的高い破断点引張歪又は「伸び率」も有している。例えば、伸び率は、約100%以上の範囲にあることができ、ISO527の試験法に従って試験されることができる。
【0023】
好ましいグレードのPA6はTechnyl(登録商標)C 548Bであり、ローディア・エンジニアリング・プラスチックス社(Rhodia Engineering Plastics)による商標の下で販売されている。他の適当なグレードとして、ローディア社製のTechnyl(登録商標)C 536XT及びC 442を挙げることができる。限定的でない例として、以下の他の適当なグレードを挙げることができる:BASF社による商標の下で販売される、Capron(商標)8259;及びHoneywell社による商標の下で販売される、Aegis(商標)PL220HS;及びClariant社の商標名の下で販売される、Renol 6253。表1は1又は2以上の適当なグレードのPA6の幾つかの特性を一覧にしている。
【0024】
【表1】
【0025】
有用なグレードのPA6は1種又は2種以上の耐衝撃性改良剤を有していることができる。ポリアミドに対する耐衝撃性改良剤は、室温でエラストマー又はゴム状である天然及び合成ポリマー物質を含み、そしてASTM D882に従って測定された場合に500MPa未満の弾性の引張弾性率を有していることもできる。耐衝撃性改良剤は、例えば、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィンコポリマー;(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)コポリマー;イオノマーポリマー;芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物ブロックコポリマー又はポリアミドエラストマーであることができる。これらの材料は単独で又はブレンドして用いられることができる。
【0026】
上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィンコポリマーは、エチレン及び/又はプロピレンを炭素原子少なくとも3個を有するα−オレフィンと共重合させることによって得られるポリマーである。炭素原子少なくとも3個を有するα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン又は12−エチル−1−テトラデセン、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0027】
さらに、非共役ジエンのポリエン、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロブタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン又は2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどを第三のモノマーとして共重合させて例えば架橋部位を設けることができる。
【0028】
上記(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)コポリマーは、エチレン及び/又はプロピレンをα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステルモノマーと共重合させることによって得られるポリマーである。α,β−不飽和カルボン酸モノマーはアクリル酸又はメタクリル酸であることができ、そしてα,β−不飽和カルボン酸エステルモノマーは、かかる不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル又はデシルエステル、又はそれらの混合物であることができる。
【0029】
上記のイオノマーポリマーは、金属イオンを用いた中和によってイオン化されたα,β−不飽和カルボン酸とオレフィンとのコポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部を有するポリマーである。オレフィンとして、好ましくはエチレンが用いられ、そしてα,β−不飽和カルボン酸として、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸が用いられる。しかしながら、それらはここで例示されたものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステルモノマーがそこに共重合されていてもよい。さらに、金属イオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr又はBaなどに加えて、例えば、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn又はCdなどであることができる。
【0030】
さらに、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物のブロックコポリマーは、芳香族ビニル化合物ポリマーブロック及び共役ジエン化合物ポリマーブロックを含むブロックコポリマーであり、そして芳香族ビニル化合物ポリマーブロック少なくとも1つ及び共役ジエン化合物ポリマーブロック少なくとも1つを有するブロックコポリマーが用いられる。さらに、かかるブロックコポリマーにおいて、共役ジエン化合物ポリマーブロック中の不飽和結合は水素化されることができる。
【0031】
芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位から主としてなるポリマーブロックである。かかる場合に、芳香族ビニル化合物は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン又は4−(フェニルブチル)スチレンであることができる。芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、より多くの種類の上記したモノマーの1種以上からなる構造単位を有していることができる。さらに、芳香族ビニル化合物ポリマーブロックは、必要に応じて、少量の他の不飽和モノマーからなる構造単位を有していることができる。
【0032】
共役ジエン化合物ポリマーブロックは、1種又は2種以上の共役ジエン化合物、例えば、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン及び1,6−ヘキサジエンなどから形成されるポリマーブロックである。水素化芳香族ビニル化合物/共役ジエンブロックコポリマーにおいて、共役ジエン化合物ポリマーブロック中の不飽和結合部分の一部又は全ては飽和結合に水素化されている。ここで、主として共役ジエンからなるポリマーブロック中の分布はランダム、テーパー、部分的なブロック又はそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0033】
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物ブロックコポリマー又はその水素化物の分子構造は、線状、分枝状、放射状又はそれらの任意の組み合わせであることができる。それらの中で、本発明において好ましくは、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物ブロックコポリマー及び/又はその水素化物として、1の芳香族ビニル化合物ポリマーブロック及び1の共役ジエン化合物ポリマーブロックが線状に結合されたジブロックコポリマー少なくとも1種;3のポリマーブロックが芳香族ビニル化合物ポリマーブロック/共役ジエン化合物ポリマーブロック/芳香族ビニル化合物ポリマーブロックの順で線状に結合されたトリブロックコポリマー;及びそれらの水素化物、が用いられる。具体的には、例えば、非水素化若しくは水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、非水素化若しくは水素化スチレン/イソプレンコポリマー、非水素化若しくは水素化スチレン/イソプレン/スチレンコポリマー、非水素化若しくは水素化スチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー又は非水素化若しくは水素化スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンコポリマーを挙げることができる。
【0034】
上記したポリアミドエラストマーは、ハードセグメントとしてポリアミド形成単位を及びソフトセグメントとして、ポリエーテル単位又はポリエーテルのジカルボン酸との重縮合によって形成されるポリエーテルエステル単位を主として含むブロックコポリマーである。それは、例えば、ポリエーテルエステルアミドエラストマー又はポリエーテルアミドエラストマーであることができる。かかるハードセグメントとしてのポリアミド形成単位は、例えば、少なくとも3員の環のラクタム、アミノカルボン酸又はジカルボン酸とジアミンとからなるナイロン塩であることができる。少なくとも3員の環のラクタムは、例えば、ε−カプロラクタム又はラウロラクタムであることができる。アミノカルボン酸は、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸又は12−アミノドデカン酸であることができる。
【0035】
ナイロン塩を構成するジカルボン酸として、通常、C2−36ジカルボン酸が用いられる。具体的にはそれは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸又は2,2,4−トリメチルアジピン酸;脂環式ジカルボン酸、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;又は芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸又はキシレンジカルボン酸であることができる。さらに、C36ジカルボン酸として、二量体脂肪酸を挙げることができる。二量体脂肪酸は例えば、C8−24飽和、エチレン系不飽和、アセチレン系不飽和の、天然又は合成の一塩基脂肪酸を重合することによって得られる重合脂肪酸である。
【0036】
ナイロン塩を構成するジアミンとして、C2−36ジアミンが通常用いられる。具体的にはそれは、例えば、脂肪族ジアミン、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン又は2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなど;脂環式ジアミン、例えば、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン又はビス(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタンなど;又は芳香族ジアミン、例えば、キシリレンジアミンなどであることができる。さらに、C36ジアミンとして、アミノ酸に変化される二量体脂肪酸のカルボキシル基を有する二量体アミンを挙げることができる。
【0037】
さらに、ソフトセグメントとしてのポリエーテル単位は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールテトラヒドロフラン又は複数のかかるポリエーテル形成モノマーを用いて作成されるコポリマーであることができる。
【0038】
ポリエーテルエステルアミドエラストマーは、上記したジカルボン酸を導入することによって作成される末端カルボキシル基を有する上記ポリアミド形成単位と上記ポリエーテルとを含むポリアミドエラストマーである。さらに、ポリエーテルアミドエラストマーは、上記したポリエーテルの末端ヒドロキシル基をアミノ基及び/又はカルボキシル基に置換することによって得られるポリエーテル単位と、カルボキシル基及び/又はアミノ末端基を有するポリアミド形成単位とを含むポリアミドエラストマーである。
【0039】
さらに、耐衝撃性改良剤として用いられる、上記の(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィンコポリマー、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)コポリマー、イオノマーポリマー、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロックコポリマーは、好ましくは、カルボン酸及び/又はその誘導体によって変性されたポリマーの形態で用いられる。
【0040】
変性に用いられるカルボン酸及び/又はその誘導体として、例えば、カルボン酸基、無水カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基又はエポキシ基を挙げることができる。かかる官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びこれらのカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルを挙げることができる。
【0041】
耐衝撃性改良されたPA6の使用によって、得られるホースは良好な可撓性及びキンク耐性を有する。耐衝撃性改良剤の量は、ポリアミド化合物の全重量に基づき、1〜25重量%、好ましくは、3〜10重量%であることができる。耐衝撃性改良剤の量が25%を超えると、材料の強度が低下する傾向となることがある。
【0042】
このように、ポリアミドに対する耐衝撃性改良剤は、好ましくはカルボン酸及び酸無水物から選択される官能基でグラフトされた、エラストマー又はゴム状ポリマーであることができる。コポリマーの酸無水物官能基のグラフティングは一般に無水マレイン酸の存在における共重合によって達成される。
【0043】
耐衝撃性改良剤として用いることができるゴム状ポリマーは、ASTM D−638に対する引張弾性率約40,000MPa未満、一般には25,000MPa未満、そして好ましくは20,000MPa未満を有するものと交互に又は追加的に定義されることができる。それらはランダムコポリマー又はブロックコポリマーであることができる。有用なゴム状ポリマーは、ポリマーの鎖又は分枝の一部であることができるか、又はポリマー上にグラフトされることができる反応性モノマーから製造されることができる。これらの反応性モノマーはジエン又はカルボン酸又はそれらの誘導体、例えば、エステル若しくは酸無水物であることができる。これらのゴム状ポリマーの中で、ブタジエンポリマー、ブタジエン/スチレンのコポリマー、イソプレン、クロロプレン、アクリロニトリル/ブタジエンのコポリマー、イソブチレン、イソブチレン−ブタジエンのコポリマー又はエチレン/プロピレンのコポリマー(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンのコポリマー(EPDM)を挙げることができる。有用なゴム状ポリマーとして、芳香族ビニルモノマー、オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー、及びこれらの金属塩を挙げることができる。有用なゴム状ポリマーの一部が、その関連部分が引用として本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,315,086号明細書及び第4,174,358号明細書に記載されている。
【0044】
本発明の実施に好ましい耐衝撃性改良剤は、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのコポリマーであって、該エチレンコポリマー上にグラフトされた官能基、例えば、カルボン酸又は酸無水物官能基などを有するコポリマーであるグラフトコポリマーである。エチレン及びα−オレフィンは、好ましくは、エチレンと炭素原子3〜8個、好ましくは炭素原子3〜6個を含むα−オレフィンから選択されるα−オレフィンとのコポリマーである。コポリマー中の好ましいα−オレフィンモノマーはプロピレンである。他のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン及び1−ヘキセンはプロピレンの代わりに又はプロピレンに加えてコポリマー中に用いれらることができる。本発明の1つの好ましい実施形態において、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレンゴム及び無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ジエンゴムを挙げることができる。
【0045】
代わりに、耐衝撃性改良剤は、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレンゴム、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ジエンゴム、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、及び無水マレイン酸グラフトポリプロピレンからなる群から選択されることができる。
【0046】
ポリアミド6バリア層の透過性を低下するために、熱可塑性マトリックスにラメラ・ナノフィラー(lamellar nanofiller)を添加することができる。かかる透過性の低下は、ラメラ・ナノフィラーによってもたらされる「ねじれ(tortuousness)」の作用によるものと考えられる。これは、連続する層中に配されたこれらの障害のために気体又は液体がずっと長い経路を通らなければならないためである。理論モデルはバリア効果を、アスペクト比、すなわち、長さ/厚さ比が増加するにつれてより顕著になるものと考えている。現在最も広範に研究されているラメラ・ナノフィラーはスメクタイトタイプの粘土であり、主としてモンモリロナイトである。使用の困難はまず第一に、これらの個々のラメラの多少広範囲にわたる分離、すなわち剥離(exfoliation)に、及びポリマー中でのそれらの分布にある。剥離に役立てるために、ラメラの陰電荷を補償する有機カチオン、一般には、第四級アンモニウムカチオンで結晶を膨潤させることに存する「インターカレーション」技術を用いることができる。これらの結晶アルミノシリケートは、それらが熱可塑性マトリックス中で剥離される場合、個々のラメラの形態で存在し、そのアスペクト比は500以上のオーダーの値に達することができる。
【0047】
本発明のポリアミド6は、例えば、本明細書中にその関連部分が引用として組み込まれる米国特許公開第2007/00182159A1号明細書に開示されたような、非剥離性(non-exfoliated)でナノメートルサイズのラメラコンパウンドの形態のリン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸セリウム及び/又はリン酸ケイ素を基材とする粒子を用いることもできる。それらはPA6において、液体及び気体に対する良好なバリア特性及び/又は良好な機械的特性、例えば、良好なモジュラス/耐衝撃性(modulus/impact)の妥協、及び/又は高温でハンドリングされ及び使用されることを可能にする温度安定性などを示す。PA6配合物中に存在するリン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸セリウム及び/又はリン酸ケイ素を基材とする粒子は、少なくとも50数量%の粒子がアスペクト比100以下を示すナノメートルサイズのラメラコンパウンドの形態であるようにあることができる。
【0048】
用語「ナノメートルサイズのラメラコンパウンド」とは、数ナノメートルのオーダーの厚さを示す幾つかのラメラの堆積を意味するものと理解されたい。本発明に係るナノメートルサイズのラメラコンパウンドはインターカレーションされないかあるいは湿潤剤とも呼ばれるインターカレーション剤によってインターカレーションされることができる。用語「アスペクト比」とは、ナノメートルサイズのラメラコンパウンドの厚さに対する最大寸法、一般に長さ、の比を意味するものと理解されたい。好ましくは、ナノメートルサイズのラメラコンパウンドの粒子は、50以下、より好ましくは10以下、とりわけ5以下のアスペクト比を示す。好ましくは、ナノメートルサイズのラメラコンパウンドの粒子は1以上のアスペクト比を示す。
【0049】
用語「ナノメートルサイズのコンパウンド」とは、1μm未満の寸法を有するコンパウンドを意味するものと理解されたい。一般に、使用するナノメートルサイズのラメラコンパウンドの粒子は、長さ50〜900nm、好ましくは100〜600nm、幅100〜500nm及び厚さ50〜200nm(長さは最長の寸法を表す)を示す。ナノメートルサイズのラメラコンパウンドの様々な寸法は、透過電子顕微鏡法(TEM)又は走査電子顕微鏡法(SEM)によって測定することができる。一般に、ナノメートルサイズのラメラコンパウンドのラメラ間の距離は0.5〜1.5nm、好ましくは0.7〜1.0nmである。ラメラ間のこの距離は結晶学的分析技術、例えば、X線回折などによって測定することができる。
【0050】
有利には、粒子の50数量%は、アスペクト比100以下を示すナノメートルサイズのラメラコンパウンドの形態である。他の粒子は、とりわけ、例えばナノメートルサイズのラメラコンパウンドの剥離によって得られる、個々のラメラの形態であることができる。好ましくは、粒子の少なくとも80数量%は、アスペクト比100以下を示すナノメートルサイズのラメラコンパウンドの形態である。より好ましくは、粒子の約100数量%は、アスペクト比100以下を示すナノメートルサイズのラメラコンパウンドの形態である。
【0051】
粒子は場合によりPA6熱可塑性マトリックス中で凝結体及び/又は凝集物の形態で一緒に集められていることができる。これらの凝結体及び/又は凝集物はとりわけ1ミクロンより大きい寸法を示すことがある。
【0052】
本発明のPA6に対して、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸セリウム及び/又はリン酸ケイ素を基材とする水和されたナノメートルサイズのラメラコンパウンド、例えば、一水和化合物又は二水和化合物の粒子を用いることもできる。リン酸ジルコニウム、例えば、式Zr(HPOで表されるZrP又は式Zr(HPPO(HPO)で表されるγZrPなどを用いることができる。リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸セリウム及び/又はリン酸ケイ素を基材とする粒子を、熱可塑性マトリックス中に導入する前に、有機化合物で、とりわけ、アミノシラン化合物、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシランなど、又はアルキルアミン化合物、例えば、ペンチルアミンなどで処理することもできる。
【0053】
本発明に係るPA6バリア層配合物は、配合物の全量に対してナノメートルサイズのラメラ粒子0.01〜30重量%、好ましくは10重量%未満、より好ましくは0.1〜10重量%、さらにより好ましくは0.1〜5重量%、とりわけ0.3〜3重量%、非常にとりわけ1〜3重量%を含んでいることができる。
【0054】
PA6組成物は、さらに、ラメラを相互に完全に分離して個々のラメラを得るように、粒子のラメラ間にインターカレーションされるインターカレーション剤及び/又は粒子のラメラを剥離することができる剥離剤を有するナノメートルサイズのラメラコンパウンドの粒子を場合により含んでいることができる。これらの粒子は、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸セリウム及び/又はリン酸ケイ素を基材とするナノメートルサイズのラメラコンパウンド又は他の種類のコンパウンド、例えば:スメクタイトタイプの天然又は合成クレー、例えば、モンモリロナイト、ラポナイト、ルセンチル又はサポナイト、ラメラシリカ、ラメラ水酸化物、針状ホスフェート、ハイドロタルサイト、アパタイト及びゼオライトポリマーなどであることができる。インターカレーション剤及び/又は剥離剤は、以下:NaOH、KOH、LiOH、NH、モノアミン、例えば、n−ブチルアミンなど、ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミン又は2−メチルペンタメチレンジアミンなど、アミノ酸、例えば、アミノカプロン酸及びアミノウンデカン酸など、及びアミノアルコール、例えば、トリエタノールアミンなどからなる群から選択されることができる。
【0055】
一般に、管12は、1種又は2種以上の可撓性材料、例えば、エラストマー又はプラスチックの層1又は2以上を含んでいることができる。このように、管の内部表面材料は、ホース内で予想される環境的条件及び流体に耐えるように選択されることができる。本発明の実施形態によれば、内部管は単一の非フッ素化ゴム配合物からなる。内部管のゴム配合物は、ECO、NBR、NBR−PVCブレンド、HNBR、TPE等を基材とすることができ、公知のゴム配合方法に従って配合されることができる。ゴム配合物として、エラストマーのブレンド、例えば、高及び低アクリロニトリルグレードのNBRとPVCとのブレンドなどを挙げることができる。管のゴム配合物は有利には、接着促進剤、例えば、反応性樹脂系、例えば又は等しくは、通常「RFS」接着系と呼ばれるレソルシノール、ホルムアルデヒド供与体、及びシリカを含んでいることができ、本明細書に引用として組み込まれるTh. Kempermann, et al., "Manual for the Rubber Industry," 2d Ed., Bayer AG, Leverkusen, Germany, pp 372 & 512-535 (1991)にその例が開示されている。この「RFS」系の主目的は、管12とPA6バリア層14との間の密着性を高めることである。
【0056】
一般に、結合層20は、PA6とカバー層及び/又はテキスタイル又はワイヤー補強材との間の結合を促進するために用いられることができる。結合層は、ECO、NBR、NBR−PVC、HNBR、TPE等を基材とするゴム配合物を含んでいることができる。結合層の主目的は、カバーが接着促進剤、例えば、「RFS」系などを有していない場合及び/又はカバーがそのままでは充分にPA6層に密着しない場合にとりわけ重要である接着を提供又は促進することである。内部管及び結合層は双方とも同じゴム配合物を用いることができる。結合層ゴム配合物は、任意の適当な接着促進剤又は接着剤系、例えば、上記のRFS系などを含んでいることができる。結合層は摩擦層と呼ばれることもある。結合層は接着剤コーティングであることができる。
【0057】
一般に、カバー16は、遭遇する外部環境に耐えるように設計された1種又は2種以上の適当な可撓性エラストマー又はプラスチック材料から作られていることができる。本発明の実施形態によれば、外部カバーは単一の非フッ素化ゴム配合物からなる。外部カバーのゴム配合物は、HNBR、CSM、CR、ECO、EVM、ACM、EAM、NBR−PVC、又はCPE等を基材とすることができ、これらは公知のゴム配合方法に従って他の成分と一緒に配合されることができる。管12及びカバー16は同じ材料配合物又は異なる配合物から作られることができる。好ましくは、カバーはオゾン耐性である。
【0058】
内部管及び結合層に対して好ましい材料はECOを基材とするゴム配合物である。適当なECOはエピクロロヒドリンホモポリマー、又は酸化エチレンとエピクロロヒドリンとのコポリマーを含む。好ましいECOグレードは、エピクロロヒドリンの一般的な脱塩素化硬化部位に加えて硫黄−又は過酸化物−硬化性ジエン硬化部位を提供する、アリルグリシダルエーテル(「GECO」)を含むターポリマーである。第二のジエン硬化部位は透過性の低下及び酸性ガス耐性の向上に寄与することができる。
【0059】
好ましい実施形態はフルオロポリマー成分を含んでいないが、非常に過酷な用途又は非常に厳しい透過若しくは環境要件に対して、有利にはホース構造の1又は2以上の層中に又は結合層としてフルオロポリマーを含んでいることができることを理解されたい。
【0060】
図1に示し上記したように、ホース内に補強部材18が存在していることができる。補強材は中間層14上に直接付与されることができ、それによって補強材の少なくとも一部が中間層と接触していることができる。好ましくは、中間層14には最初に結合層20が付与される。次いで、結合層20上に補強材18が付与される。外部カバー16は補強部材18を実質的に囲繞し又は中に通し、また中間層の少なくとも一部と接触しているか又は結合層20と接触していることができる。外部カバーは有利には、テキスタイル又はワイヤー補強材及び/又はPA6中間層へ結合するように配合されたゴム配合物であることができる。例えば、外部カバーはRFS接着促進系としてレソルシノール−ホルムアルデヒド樹脂又はフェノール−ホルムアルデヒド樹脂及びシリカ充填剤を有するCSM又はCMエラストマーであることができる。好ましい配置は、PA6バリア層上に又は結合層上にテキスタイル又はワイヤーの螺旋状の、編まれた又はブレードの(braided)層を付与することである。螺旋状構造において、例えば、螺旋状の層は、それぞれの層がホースの長手方向軸に対して約54°のいわゆるロックアングル又はニュートラルアングルで又はそれに近い角度であるが反対の螺旋方向で付与される2つの層を含んでいることができる。しかしながら、ホースは螺旋構造に限定されない。テキスタイル又はワイヤー層は、ニット布、ブレード布、ラップ(wrapped)布、織布、又は不織布であることができる。ECO管、PA6バリア、及びCSMカバーと組み合わせて用いられる紡織繊維又は織編用糸は得られるホースについて破裂圧の等級(rating)の顕著な増加をもたらすことが見出された。それによって、本発明のホースの実施形態において補強材の必要性を低減することができる。補強に有用な多くの繊維、例えば、ナイロン、ポリエステル(PET)又はアラミドは、接着処理又は別の結合層から利益を得てホースの層間の充分な結合を達成することができる。有用な補強材料として、ポリエステル、アラミド、ポリアミド又はナイロン、レーヨン、ビニロン、ポリビニルアルコール(「PVA」)、金属ワイヤー等を挙げることができる。
【0061】
ホース11は、成形、包装、及び/又は押出などの方法によって製造されることができる。例えば、内部管は押出されることができ、次いでPA6の中間層を内部管上に押出することができる。次いで、結合層が中間層に押出されるか又は付与されることができる。好ましくは、オーバーラップ又は継目なしに連続的な方法で内部管上にPA6の管状層が押出されることによってホースにPA6のバリア層が設けられる。次いで、テキスタイル又はワイヤー補強材が中間層上で螺旋にされ、編まれ、巻き付けられ、又はブレイドされることができ、又はテキスタイル補強材の前に結合層が付与されることができる。次いで、カバー素材が付与されることができる。代わりに、層はマンドレル上で堆積されることができる。最後に、アセンブリーは、マンドレル上で、例えばオーブン又は蒸気加硫缶内で、加熱又は放射線によって、又は巻き付け(wrapped)によって、及び/又は当業者に利用することのできる他の方法に従って、硬化又は加硫されることができる。好ましくは、PA6層の溶融温度未満の温度で硬化が行われる。
【0062】
1つのホース構成を図1に示した。本発明を実施するのに多種多様の他の構成を用いることができることを理解されたい。例えば、ホースは、特定の目的、例えば、流体耐性、環境耐性、又は物理的特性などのために、プラスチック又はエラストマー配合物を含むさらなる内部層、外部層、又は中間層を有していることができる。別の例として、必要に応じて又は望ましい場合には、さらなるテキスタイル又は金属の補強材、ジャケット、カバーなどが用いられることができる。圧潰抵抗のために螺旋ワイヤーがホース壁内に構築され又はホース内部に用いられることができる。テキスタイル補強材は、接着剤、摩擦層又はスキム層などで処理されることができる。
【0063】
管としてバリア層を押出する代わりに、フィルム又はテープのバリア層が内部管の周囲に巻き付けられ、そのラップが融着又は溶融されて連続的なバリア層を形成することができる。同様にして、PA6バリア材料を用いて湾曲したホースを製造することができる。例えば、2段階プロセスで、未硬化ホースを湾曲したマンドレル上に配置し又は加硫用の型中に配置して、ホースがその後に湾曲形状を保持するようにすることができる。同様に、他の公知の成形技術を用いることができる。
【0064】
実施において、燃料ホースはホースアセンブリー又は燃料ラインアセンブリー又は流体移送システムの構成要素であることができる。流体移送システムは一般に、ホースと、及びホースの1又は2以上の端部において、1又は2以上のクランプ、結合管、コネクタ、管、ノズル、及び/又は継手と、流体ハンドリング装置などとを備える。例として、図2は、本発明のホースの実施形態を用いたホースシステムの概略図である。とりわけ、図2は一般的な自動車の燃料システムを表す。図2を参照するに、燃料タンク31、燃料ポンプ33、サージタンク又はリザーバ38及び燃料ポンプ39は、本発明の実施形態によって提供される1又は2以上の燃料ホースセクション35及び36によって接続されていることができる。燃料戻りライン34も、本発明のホースのセクションを含んでいることができる。ホースセクション35、36、及び34は、本発明の実施形態を用いた低圧構造のものであることができる。本発明の実施形態に係る中圧又は高圧ホースセクション37を用いて、インジェクターを備えた燃料レール32に及び燃料圧力調節器40に燃料ポンプ39を接続することができる。本発明のホースを用いた燃料システムは自動車車両システムに限定されるものではなく、燃料供給チェーンを通じた燃料移送システム、又は船舶用途、航空機などにおける燃料システム、又は非常に低い透過性の可撓性ホースが望ましい他のいずれの用途をも含んでいることができることを理解されたい。例えば、本発明のホースは、例えば酸素、水素、又は二酸化炭素、液化又は気体のプロパン又は天然ガスを含む気体、他の燃料、及び冷媒などを含む他の流体を、最小の透過損失によって移送するのにも有用であることができる。
【0065】
本発明の利点を説明するのに役立つフィルム及びホース試験に基づく幾つかの例を以下に示す。本発明に係る耐衝撃性改良されたPA6の2つのフィルムについてのフィルム試験、すなわち、ローディア社製のTechnyl(登録商標)C 548Bを用いた実施例1及びC 536XTを用いた実施例2;及び当技術分野の2つの他のフィルムについての比較試験:THV(Dyneon社、3M Company製のTHV 500G)を用いた比較例2及びEVOH(Kururay社及びEVAL Company of America製のEVAL M100B)を用いた比較例3を実施した。試験は、CE10(ASTM Fuel Cと10%エタノールとの混合物)を用いた60℃を含む条件下に、トウィング−アルバート(Thwing- Albert)透過カップ中で各材料の0.13mm(5ミル)フィルムを用いた。
【0066】
フィルム試験と同じ厚さで、同じフィルム材料を、ASTM Fuel C、CE10、及びCM15(Fuel Cと15%メタノールとの混合物)を含む様々な試験燃料を用いて60℃で実施されるホース透過性試験のホースに組み込んだ。60℃の昇温である以外はSAE J30セクション9のリザーバ法を用いて多くの燃料タイプの流体で、ホースの透過性を測定した。この方法は、ホースの端部をシールするために金属プラグを備えた密閉されたリザーバからの静止燃料を用いる。毎週、ホースからリザーバ中に燃料がドレンされると、それによってより新鮮な燃料がホース中に戻される。試験期間はコンディショニングの1000時間に加えて透過測定の10日間であった。この方法は、構成をスクリーニングしかつ燃料透過測定における好ましい標準であるSAE J1737の透過測定条件に近似させるための簡便な方法として用いられた。SAE J1737の方法は制御された圧力下に熱燃料又は蒸気を循環させることを含むことに留意されたい。ホースの例はまた、インドレン燃料を用いて40℃でSAE J1737の方法を用いて試験された。
【0067】
上記し、表2に示すように、好ましいPA6の溶融流量は比較的低く、すなわち、粘度は比較的高い。ホースの加工、とりわけ、バリア層の押出は、やや大きなダイ(ギャップ及び直径ともに)を用いて、ブレーカープレートなしに、最高に推奨されるバレル温度280〜315℃(550〜600°F)で、高い剪断応力のスクリューを用い、かつバリア層の厚さを低下させるために引落し(drawn down)アプローチを用いて、実施された。これらの条件は高粘度の材料の押出を問題なく可能にした。とりわけ、押出ギャップは約1.5mm(1/16インチ)であり、そして引落率はホースのサイズに依存して19〜64%であった。
【0068】
【表2】
【0069】
フィルム及びホースの双方についての透過性の結果を表3に示す。報告した試験のそれぞれで、PA6材料はTHV又はEVOHよりずっと良好な性能(低い透過率)を有していた。さらに、C 548B PA6材料はこれまで作成されたホースのすべての大きさ(内径3/16インチ、1/4インチ、5/16インチ、3/8インチ、及び1/2インチ)について加工の間キンクに関する問題を示さなかった。バリアとしてC 548B PA6材料を用いる燃料ホースは、SAE J30R7及びR14のキンク耐性試験に合格したが、EVOHバリアホースはそれらの試験に合格しなかった。C 548B PA6材料は、競合する材料の透過耐性並びに現在の政府の基準の多くの要件を上回っている。
【0070】
【表3】
【0071】
実施例のホースは内径6mm(1/4インチ)を有しかつ本発明の実施形態に従って構成されたものであり、厚さ1.0mm(40ミル)のRFS接着促進系を含むECO(GECO)ゴム内部管と;厚さ0.13mm(5ミル)の中間バリア層と;厚さ0.5mm(20ミル)以外は管と同じECOゴムである結合層と;PET螺旋巻き付け二重層糸補強材と;及び厚さ1.0mm(40ミル)のCSMゴム外部カバー層とを有することにも留意されたい。比較例3は、厚さ1mmのNBR管と、厚さ0.13mmのTHVバリアと、厚さ0.5mmのNBR結合層と、ナイロン補強材と、及び厚さ1.25mmのCSMカバーとを有する市販の燃料ホースを表す。比較例3は、燃料ホースに対するSAE J30R11又はR12の透過要件を満たすように設計された。比較例4は、バリア層としてEVOH(EVAL M100B)を用いた同時係属の米国特許出願第11/938,139号明細書に基づくが、補強材がナイロンでありかつカバーが厚さ1.25mmであることを除いて他は実施例1と同様の構成であった。
【0072】
表3に示した透過性試験の結果は、本発明の実施例のホースの比較例のホースに対する透過性の改善が劇的であることを示している。全体的な観察として、本発明のホースは最良の比較例のホースに比べて様々な燃料に対する透過性が約2〜10倍低いことがわかる。
【0073】
本発明の実施例についての透過率は、上記の背景技術の節で言及した特許文献の一部、並びに船舶用途に対する燃料ホース基準、例えば、SAE J30又はSAE J1527などと比較することもできる。例えば、SAE J30、R6、R7、R8及びR9は、密閉されたリザーバを用いかつ循環なしに室温で試験されるバリア層を備えない従来のゴムホースに適用される。R9はFuel Cに対する透過性<15g/m/日を必要とする。R6、R7、及びR8はそれぞれ、Fuel Cに対する透過性<600、<550、及び<200g/m/日を必要とする。SAE J1527クラス1〜15はFuel CE10に対して<15g/m/日を必要とする。SAE J30 R11及びR12は、それぞれ40℃及び60℃において、それぞれ14.5kPa(2.1psi)及び0.2MPa(29psi)の圧力下で、及び循環させて、SAE J1737に従って試験される低透過性のホースに適用され、カテゴリーA(最も厳しい等級)でCM 15(Fuel Cよりずっと強い侵食性の試験燃料)に対する透過性<25g/m/日を必要とする。室温から40℃まで温度を増加させるだけで、部分的には拡散速度が増加するためそして部分的には密閉されたリザーバ中で燃料の蒸気圧が高まるため、透過性を約10倍高めると考えられる。本発明の静止燃料試験は、他のすべての要因を一定にして、40℃試験よりさらに約20倍透過性を増加させると予想される60℃で実施された。R11試験条件の圧力は、高温における密閉されたリザーバ中の蒸気圧とおそらくあまり変わらない。しかしながら、R12試験における循環及び圧力の影響は、40℃での静止試験より約20倍までの倍率で透過性を増加させると見積もることができる。このようにして、60℃での静止CM15燃料に対する透過性約0.5g/m/日を有する本発明のホースは、R11基準によって必要とされるより約1000倍(25×20/0.5)良好であってR12基準を充分に満たすと見積もられる。このように、本発明のホースは、アルコール含有燃料に関連した不透過性の高まる要求を処理するのに充分に適している。
【0074】
圧力0.2MPa(29psi)でインドレンを用いた40℃におけるSAE J1737に従った実際の試験を、実施例の本発明のホース及び比較例のフルオロポリマーバリアホースについて実施した。本発明のホースは透過率0.9g/m/日を示した。比較例のフルオロポリマーバリアホースは透過率8g/m/日を示した。このように、本発明のホースはSAE J1737に従って試験された場合に40℃で2g/m/日未満又は60℃で40g/m/日未満の、又はSAE J30セクション9に従って試験された場合に60℃で20g/m/日未満のCM15又はCE10 Fuelに対する透過性を提供することができる。
【0075】
他のバリアに対する比較として、米国特許公開第2003/87053号明細書の積層バリアは室温で1.6g/m/日のCE10燃料に対する透過性を示した。上記したように、室温から60℃までの温度の増加は200倍透過性を増加させると予想される。従って、実施例の本発明のホースは米国特許公開第2003/87053号明細書の積層体より約100倍良好である。
【0076】
90℃での冷媒134Aに対する透過性3.94×10−5g/cm/日を示した、米国特許第6,941,975号明細書に開示されたホースとの比較は、ホースの直径又は1cm長さ当たりの面積についての情報がなく難しい。それにもかかわらず、本発明のホースは透過性においてそのホースと少なくとも匹敵するであろうし、一方で、本発明のホースは有利なことに多層バリアを用いないで低い透過性を達成する。このように、本発明のホースの実施形態は冷媒用途にも有用であることができる。
【0077】
実施例のホースを破裂圧力についても試験した。一般的な燃料ホース用途は概して、0.7MPa(100psi)未満の使用圧力を必要とする。一般的な螺旋状のナイロン補強材を用いた場合、ゴムホースは一般に約1.7〜2.4MPa(250〜350psi)の破裂圧力を示す。PA6の0.13mm(5ミル)層を追加することにより、PET補強材を備えた本発明の実施例1のホースは約4.1MPa(600psi)の破裂圧力を示したが、これは予想したよりやや高い。このように、本発明のホースにおいては補強材の必要性を低減することができ、又は使用圧力を有意に増加させることができる。
【0078】
低温での可撓性試験を本発明の実施例のホースについて実施した。実施例1の本発明の燃料ホースは、SAE J30R14低温可撓性基準、キンク耐性、及び透過性の要件を満たした。
【0079】
本発明の実施形態を研究する過程で、とりわけ通常のNBR又はHNBR又はECOタイプの燃料ホースにおいて、予想外にもバイオディーゼル燃料は石油ベースの又は通常のディーゼルより強い侵食性の透過体であり、外部カバー、とりわけCSM、CR、又はEPDMカバー、の破損を生じさせることが発見された。本発明のホース、例えば、上記実施例1及び実施例2などのホースは、この問題を解決することが見出された。また、比較例のバリアもバイオディーゼルに関するこの問題を解決するであろうと考えられる。このように、別の発明又は実施形態は、多層バイオディーゼル燃料ホースにおいて本明細書中に記載されたようなバリア層を用いることによってバイオディーゼル透過の問題を解決する。
【0080】
本発明の概念は有利なことに、中間PA6バリア層を組み込むことによってフルオロポリマー内部管及び/又は外部カバーを有するホースに用いられることもできることを理解されたい。コストは現在のエラストマー価格で非フルオロエラストマーホースの場合より有意に高いであろうが、その透過率は優れている。
【0081】
PA6は好ましくは、例えばSAE J1737に従って25℃、40℃又は60℃などの温度で試験された場合に、1日当たり1平方メートル当たり15グラム以下である特定の又は所定の燃料又は燃料成分の低下された透過を与えるのに充分な厚さ又は有効な厚さであることができる。PA6は好ましくは、本明細書で言及された、又は本明細書中に記載されたような一連の特性を備えた特定のグレードの1つであり、又は最も好ましくは、ローディア・エンジニアリング・プラスチックス社による商標の下で販売されるTechnyl(登録商標)C 548Bである。
【0082】
別の実施形態において、本発明のホースは、本明細書に記載されたようなPA6の薄層を含む、2又は3以上の層、又は好ましくは2〜5の層を含んでいることができる。PA6層は好ましくは、0.010インチ(0.25mm)までの厚さを有する。PA6は好ましくは、1日当たり1平方メートル当たり15グラム以下である特定の又は所定の燃料又は燃料成分の低下された透過を与えるのに充分な厚さ又は有効な厚さであることができる。所定の燃料成分は、メタノール又はエタノール又は脂肪酸誘導体、例えば、バイオ燃料又はフレックス燃料などの燃料に用いられるものであることができる。所定の燃料は、限定的でなく、例えば、インドレン、ガソリン、バイオディーゼル、ディーゼル、アルコール、及びアルコール含有燃料などの燃料から選択されることができる。他の層は、限定的でなく、補強材、例えば、テキスタイル又はワイヤーなど、例えばTPEを含む様々な熱可塑性材料、熱硬化性材料、例えば、ゴム又は架橋熱可塑性樹脂などであるか、又はこれらを含んでいることができる。このように、本発明の実施形態は、限定的でなく、例えば2層、3層又は4層以上を有する非補強ホース;又は4層、5層又は6層以上を有する補強ホースを含む。図3は、PA6の薄層142及びゴム又はプラスチックなどの他の材料の第二層144を含むホース又は管140の形態のかかる2層の実施形態を示している。図1は、前に論じた通りの5層の実施形態を示している。
【0083】
本発明の1又は2以上の実施形態に従って得られる本発明のホースは有利なことに、限定的でなく、ディーゼル、バイオディーゼル、及び他のオイル様燃料又は前記のいずれかのブレンドを含む、燃料管、燃料ホース、燃料蒸気ホース、燃料又はオイル用のベントホース、空調ホース、プロパン又はLPホース、カーブポンプホース(curb pump hose)、大きな内径のフィラーネックホース又は管、船舶燃料ホース、燃料噴射(fuel injection)ホースなどに用いられることができる。
【0084】
極限条件における侵食性燃料に対するホースの実施形態
意外なことに、或る種のバイオ燃料、とりわけ最も強い侵食性のバイオ燃料、例えば、B20と表示されるものなどに対して、上記に示された実施形態は充分でないことが見出された。「B20」はバイオディーゼル20%と石油ベースのディーゼル燃料80%との混合物を意味する。同様に「B100」はバイオディーゼル100%を意味し、その他も同様である。B20はB100より燃料ホースに対してずっと強い侵食性であるので、目標にした高温性能、例えば、目標の透過率などは、管及び/又はカバー材料にECO又はNBRゴム配合物を用いた燃料ホースによっては達成されないことが見出された。かかるホースは100℃以下の温度での使用に限定されなければならなかった。とりわけ、このことは高圧かつ高温の要件を伴う燃料噴射ホースに当てはまる。他の強い侵食性の燃料は以下を含む:
【0085】
このように、既存の燃料ラインと比べて又は低透過性燃料ラインと比べてさえ、より高温、より低いガソリン透過、バイオ燃料能力(bio-fuel capability)、及び高圧能力を取り扱うことができる燃料ラインホースが必要である。既存の燃料ライン(SAE J30R7)は低温、高ガソリン透過、低圧であり、バイオ燃料(とりわけ、高温でのB20)に対して限定された耐性を有している。しかしながら、それらの既存の燃料ラインは非常にコスト競合的である。低透過性の燃料ライン(SAE J30R14−バリアタイプ)はガソリン透過の問題に対応するものであるが、低温、低圧であり、バイオ燃料能力は限定されている(一般的にはNBR管)。それらは適度な価格である。燃料噴射ホース(SAE J30R9、SAE J30R12を満たす)は充分なバイオ燃料能力を有する高温、低透過性、高圧の構造であるが、FKM材料を使用するため非常に高価である。
【0086】
一般的なホース構造物はNBR(ニトリル)管材料を用いるが、それはこの種類の用途に対して幾つかの点で不充分である。(1)透過耐性−透過率はEPA/CARBが許す(15グラム/平方メートル/日)よりずっと高い。さらに、バイオ燃料は管層を通ってホース表面へ透過する。(2)温度耐性−NBRは〜125℃(257°F)までだけが充分であるに過ぎない。
【0087】
バイオ燃料耐性−バイオ燃料はB20ブレンドで、とりわけ高温において非常に強い侵食性であることがある。NBRは高温においてこれらの流体中で分解する。
【0088】
燃料噴射ホースは一般にFKM材料を用いるが、FKMは非常に高価である。それはガソリン及びバイオ燃料の双方に対して非常に良好な透過耐性を有する。それは、バイオ燃料ブレンドを含む、ガソリン及びディーゼル燃料に対して非常に耐性である。それは高温でB20ブレンドによって有意に分解されない。それは連続的な135℃までの、及び不連続的な150℃までの温度耐性を有する。
【0089】
本発明の実施形態によれば、5層のホース構造物は約135℃までの温度においてバイオ燃料、例えば、B20など及び他の侵食性の燃料に対して燃料噴射ホースとして優れた性能を提供することが見出された。この実施形態によれば、内部から外へホースの層は:(1)HNBRゴム配合物からなる管、(2)本明細書中に記載されたような特殊ナイロン(special nylon)のバリア層(好ましいバリアとして、Technyl C548B)、(3)同様にHNBRゴム配合物(管と同じであることができる)の摩擦層(すなわち、エラストマー結合層)、(4)補強層(好ましくは、アラミド繊維又は糸を含んでいることができる)、及び(5)EVMとCPEとのエラストマーブレンドに基づくゴム配合物(HNNRの代わりに摩擦層として用いることもできる)から形成されるカバー、である。このように基礎的な構造物は、HNBR管層、C548Bプラスチックバリア層、HNBR摩擦層、アラミド補強層、及びEVM/CPEブレンドカバー層であることができる。この組み合わせはこれらの用途に必要とされる温度に関する優れた燃料耐性及び圧力耐性を与える。
【0090】
このホース構造物はSAEJ30規格を大部分満たすが、その規格の中で一般的である現行の14分類のいずれにもきちんと適合しているというわけではない。結果として、このホースは低透過性の規格R9、R11、R12、及びR14と同じ精神にあると考えられるが、現在提案されているR13バイオディーゼルセクションの側面も包含するであろう。
【0091】
このホースの実施形態は、燃料噴射系の要求に合うように意図されており、そしてガソリン、エタノール、メタノール、エタノール混合ガソリン、ディーゼル燃料、大豆メチルエステル(SME)、菜種メチルエステル(RME)、及びパームメチルエステル(PME)を含みASTM D6751を満たすバイオディーゼル、高芳香族オイル又はパラフィン系オイル、並びに内燃機関のクランク室又は燃料系のいずれかに存在する燃料/オイル蒸気の輸送に有用である。このホースは液体燃料だけに対して好ましく、気体燃料、例えば、プロパン、メタン、又は天然ガスなどに対して意図されていない。
【0092】
HNBR管は、好ましくは、亜鉛不含のエラストマー配合物である。HNBR管層及び熱可塑性バリア層は化学的攻撃、膨潤、及び透過に対して耐性である。この構造物は、オイル、半燃料、及びオゾン耐性のEVMとCPEとのブレンドに基づく外部カバーも含んでいる。表4はこのホースの実施形態に対する一部の一般的な有用の寸法を示す。
【0093】
HNBR(水素化ニトリル)は飽和ポリマー骨格を有しており、これは優れた化学的耐性、及び高温安定性を与える。HNBRは燃料(ガソリン、ディーゼル燃料及びバイオ−ディーゼルブレンド)に対して高い耐性である。バイオ燃料は或る種のブレンド(とりわけB20)において、とりわけ高温で、強い侵食性であることがある。HNBRは、高温(135℃)においてB20ブレンド中でエージングされた場合に安定性を示した。ホース構造物がC548Bバリア層と組み合わせられた場合、ガソリン透過率は極めて低くなり(〜1グラム/平方メートル/日、40℃でSAE J1737に従って)、かつ6ヶ月相当の試験においてバイオディーゼルの透過は検出することができない。ホース構造物全体は、高温での使用(135℃連続的、150℃不連続的)に向けられている。
【0094】
この燃料ホースの実施形態及びその種々の構成要素について材料及び性能試験を行った。全ての試験は、他に断らない限りゴムホースに対する標準試験法であるASTM D380に従って行われるものである。表5はこの実施形態に有用なHNBR管コンパウンドの材料及び性能試験の規格を示す。表6はこの実施形態に有用なEVM/CPEカバーコンパウンドの材料及び性能試験の規格を示す。
【0095】
さらなる規格は、以下の通り、このホースの実施形態によって満たされることができる。12.7mm(内径1/2インチ)を通る全てのサイズに対する最小破裂圧は8.0MPa(1160psi)であることができる。12.7mm(内径1/2インチ)を通る全てのサイズに対する最大使用圧は1.55MPa(225psi)であることができる。このホースは、150℃(302°F)までの不連続使用を伴う−40〜135℃(−40〜275°F)の通常の連続運転温度での使用に適当であることができる。しかしながら、150℃(302°F)で長期間の使用はホース寿命を有意に低下させることがある。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
本発明のホースは、最小曲げ半径まで曲げられながら乾燥空気中に135℃で1000時間のエージング期間に付されることができる。エージング後6+/−2秒間以内にホースはまっすぐな位置にされることができる。ホースカバーは亀裂、チャーリング、又は分解を示さない。次いで、ホースは3分間の期間特定された最大連続使用圧力における水中気密試験(air-under-water proof test)に付されることができ、何ら漏れの徴候を示さない。
【0100】
燃料エージングされた低温可撓性は次のように試験されることができる。ホースはASTM D471 Fuel Cを充填されそして23+/−1℃で70時間コンディショニングされ、次いでホースはドレンされて−40℃で5時間まっすぐな位置でコンディショニングされ、そしてコンディショニング後10+/−2秒以内にホースは、半径がそれぞれのホースの大きさに対して特定された最小曲げ半径に等しいマンドレルの周囲で曲げられ、その結果として破れず又は亀裂を生じないことができる。次いで、ホースは3分間の期間それぞれのホースの大きさに対して特定された最大連続使用圧力における水中気密試験に付されることができ、そして漏れの徴候を示さないことができる。
【0101】
燃料透過率は以下のように試験されることができる。CE10燃料を用いた燃料透過はSAE J30で論じられたリザーバ法(23℃で8日間)を用いて実施された場合に最大率15g/m・日を超えないべきである。同様に、このホースは一般には小型のオフロードエンジンに対するCARB要件を満たしそれを超えており、このようにしてホースレイライン(hose lay line)における認証番号(certification number)を表示することができる。参照Fuel CE10は80%Fuel C(50%イソ−オクタン+50%トルエン)+10%無水変性アルコールからなる。
【0102】
真空耐性は以下のように試験されることができる。ホースはまっすぐな位置のまま15〜30秒間にわたり試験真空に付されることができる。試験真空はホースの大きさ9.52mm以下に対して81kPaそして9.52mmより大きいホースの大きさに対して34kPaであることができる。ホースの外径は試験の間どの時点でも20%を超えるまで減少されないことができる。
【0103】
接着は以下のように試験されることができる。多層構造物の25.4mm(1.0インチ)幅の任意の隣接層を分離するのに必要な荷重は35.6N(8lb)より大きくあるべきである。
【0104】
オゾン耐性は以下のように試験されることができる。ホースは、最小曲げ半径まで曲げられながら40℃で336時間の標準的雰囲気条件においてオゾン分圧100mPA(空気1億部当たりオゾン100部)の雰囲気中でコンディショニングされることができる。試験の終了時に、ホースカバーはストレス条件にまだありながら7倍の倍率下で調べられた場合に亀裂又は劣化の証拠を示さないべきである。
【0105】
抽出物は以下のように試験されることができる。SAE J30に概説されたように抽出物を測定する方法を用いると、最大の全体値は7.75g/mであるべきである。
【0106】
この実施形態に従って構成されたホースは上記した試験に合格しかつ記載した規格を満たした。
【0107】
本発明及びその利点を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって規定された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変化、置換、及び交換を行うことができることを理解されたい。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図されるものではない。当業者であれば、本発明の開示から、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を行う又は実質的に同じ結果を達成する既存の又はこれから開発される、プロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、又は工程が本発明に従って用いられることができることを容易に理解されよう。従って、添付の特許請求の範囲はその範囲内にかかるプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、又は工程を包含していることが意図される。本明細書中に開示された発明は、本明細書に明確には開示されていない任意の要素なしに適切に実施されることができる。
図1
図2
図3