(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2次側コイルと、前記2次側コイルが接続されていると共に、蓄電部に接続可能に構成されている2次側回路とを備えた被充電装置の前記蓄電部を充電する充電制御装置であって、
制御信号によって出力電圧を制御する電圧制御回路と、
前記電圧制御回路の出力電圧が印加されると共に、前記2次側コイルを電磁誘導可能な1次側コイルを備えている1次側回路と、
前記1次側回路の1次側信号をサンプリングする手段と、前記2次側回路の2次側信号とをサンプリングする手段とを備えると共に、前記電圧制御回路に接続されて前記制御信号を出力する制御部と、
を備えており、
前記制御部は、
前記2次側信号を第2の周期でサンプリングし、
前記1次側信号を、前記第2の周期よりも短い第1の周期でサンプリングし、
前記2次側信号、前記2次側信号をサンプリングしたときの前記1次側信号、および、今回サンプリングした前記1次側信号に基いて、今回サンプリングした前記1次側信号のタイミングに於ける前記2次側信号を推定して、前記2次側回路の所定の信号が一定になるように前記制御信号をフィードバック制御する、
ことを特徴とする充電制御装置。
2次側コイルと、前記2次側コイルが接続されていると共に、蓄電部に接続可能に構成されている2次側回路とを備えた被充電装置の前記蓄電部を充電する充電制御装置が実行する充電制御方法であって、
当該充電制御装置は、
制御信号によって出力電圧を制御する電圧制御回路と、
前記電圧制御回路の出力電圧が印加されると共に、前記2次側コイルを電磁誘導可能な1次側コイルを備えている1次側回路と、
前記1次側回路の1次側信号をサンプリングする手段と、前記2次側回路の2次側信号とをサンプリングする手段とを備えると共に、前記電圧制御回路に接続されて前記制御信号を出力する制御部と、
を備えており、
前記制御部は、
前記2次側信号を第2の周期でサンプリングし、
前記1次側信号を、前記第2の周期よりも短い第1の周期でサンプリングし、
前記2次側信号、前記2次側信号をサンプリングしたときの前記1次側信号、および、今回サンプリングした前記1次側信号に基いて、今回サンプリングした前記1次側信号のタイミングに於ける前記2次側信号を推定して、前記2次側回路の所定の信号が一定になるように前記制御信号をフィードバック制御する、
ことを特徴とする充電制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態に於ける充電制御装置と被充電装置を示す概略の構成図である。
充電制御装置10は、1次側に、チョッパ回路12(電圧制御回路)と、電圧測定部13と、1次側インバータ回路20(1次側回路)と、1次側コイル15と、制御部30と、無線通信部31(第1のワイヤレス通信部)と、PWM(Pulse Width Modulation)部32とを有し、直流電源11に接続されている。更に、この充電制御装置10によって充電される2次側の被充電装置100は、2次側コイル60と、2次側整流回路40(2次側回路)と、電圧測定部51と、電流測定部52と、無線通信部54(第2のワイヤレス通信部)とを有し、蓄電池53(蓄電装置)に接続されている。
【0012】
直流電源11の正極端子と負極端子とは、それぞれチョッパ回路12の入力側の正極端子と負極端子とに接続されている。チョッパ回路12の出力側の正極端子と負極端子とは、それぞれ1次側インバータ回路20の入力側の正極端子と負極端子と、電圧測定部13とに並列に接続されている。1次側インバータ回路20の出力側の正極端子と負極端子とは、1次側コイル15に接続されている。
【0013】
第1の実施形態では、1次側コイル15と2次側コイル60とは分離可能であると共に、1次側コイル15と2次側コイル60とを近傍に位置させることによって、1次側コイル15から2次側コイル60にワイヤレスで給電することができる。
【0014】
2次側コイル60は、2次側整流回路40の入力側の正極端子と負極端子とに接続されている。2次側整流回路40の出力側の正極端子と負極端子とは、電流測定部52と蓄電池53とが直列に接続されている回路と、電圧測定部51とに並列に接続されている。
【0015】
2次側である被充電装置100の電圧測定部51の出力側と、電流測定部52の出力側とは、無線通信部54に接続されている。電圧測定部51の出力側の信号は、この電圧測定部51が接続されている蓄電池53に印加される2次側電圧VDC2を示している。電流測定部52の出力側の信号は、この電流測定部52が接続されている蓄電池53に流す2次側電流IDC2を示している。2次側である被充電装置100の無線通信部54は、1次側である充電制御装置10の無線通信部31に、無線(ワイヤレス)で信号を伝達可能に構成されている。
【0016】
1次側である充電制御装置の制御部30には、無線通信部31の出力側と、電圧測定部13の出力側と、1次側インバータ回路20の出力側とが接続されている。無線通信部31の出力側の信号は、2次側電圧VDC2の情報または/および2次側電流IDC2の情報を含んでいる。電圧測定部13の出力側の信号は、この電圧測定部13に印加されている1次側電圧VDC1の情報を含んでいる。すなわち、電圧測定部13の出力側の信号は、この電圧測定部13と並列に接続されている1次側インバータ回路20の入力側の電圧の情報を含んでいる。1次側インバータ回路20の出力側の信号は、1次側コイル15に流れる1次側電流IL1の情報を含んでいる。
制御部30の出力信号は、PWM部32に入力されている。PWM部32の出力信号はチョッパ回路12に入力されている。
【0017】
図2は、第1の実施形態に於けるインバータ回路と2次側整流回路を示す概略の構成図である。
1次側インバータ回路20は、インバータ部21と、共振部25と、電流測定部26とを有している。
インバータ部21は、この1次側インバータ回路20の入力側の正極端子と負極端子とが接続されている。インバータ部21の出力側は、一方の端子が電流測定部26を介して共振部25の一方の端子に接続されていると共に、他方の端子が共振部25の他方の端子に接続されている。この共振部25の出力側の2つの端子は、それぞれ1次側コイル15に接続されている。
【0018】
インバータ部21は、平滑コンデンサ22と、第1のスイッチングレッグと、第2のスイッチングレッグとを備えている。第1のスイッチングレッグは、第1上アーム抵抗R23Hと、第1上アームスイッチング素子T23Hと、保護ダイオードD23Hと、第1上アーム制御部S23Hと、第1下アーム抵抗R23Lと、第1下アームスイッチング素子T23Lと、保護ダイオードD23Lと、第1下アーム制御部S23Lを備えている。第2のスイッチングレッグは、第2上アーム抵抗R24Hと、第2上アームスイッチング素子T24Hと、保護ダイオードD24Hと、第2上アーム制御部S24Hと、第2下アーム抵抗R24Lと、第2下アームスイッチング素子T24Lと、保護ダイオードD24Lと、第2下アーム制御部S24Lとを備えている。
【0019】
インバータ部21の入力側の正極端子と負極端子とは、平滑コンデンサ22と、第1のスイッチングレッグと、第2のスイッチングレッグとに並列接続されている。
【0020】
第1のスイッチングレッグは、第1上アーム抵抗R23Hと、第1上アームスイッチング素子T23Hと、第1下アーム抵抗R23Lと、第1下アームスイッチング素子T23Lとに直列に接続されている。第1上アームスイッチング素子T23Hの制御端子には、第1上アーム制御部S23Hが接続されている。第1上アームスイッチング素子T23Hには、保護ダイオードD23Hが逆方向に接続されている。第1下アームスイッチング素子T23Lの制御端子には、第1下アーム制御部S23Lが接続されている。第1下アームスイッチング素子T23Lには、保護ダイオードD23Lが逆方向に接続されている。
【0021】
第2のスイッチングレッグは、第2上アーム抵抗R24Hと、第2上アームスイッチング素子T24Hと、第2下アーム抵抗R24Lと、第2下アームスイッチング素子T24Lとに直列に接続されている。第2上アームスイッチング素子T24Hの制御端子には、第2上アーム制御部S24Hが接続されている。第2上アームスイッチング素子T24Hには、保護ダイオードD24Hが逆方向に接続されている。第2下アームスイッチング素子T24Lの制御端子には、第2下アーム制御部S24Lが接続されている。第2下アームスイッチング素子T24Lには、保護ダイオードD24Lが逆方向に接続されている。
【0022】
第1のスイッチングレッグの第1上アームスイッチング素子T23Hと、第1下アーム抵抗R23Lとが接続されているノードは、このインバータ部21の一方の出力端子である。第2のスイッチングレッグの第2上アームスイッチング素子T24Hと、第2下アーム抵抗R24Lとが接続されているノードは、このインバータ部21の一方の出力端子である。
【0023】
インバータ部21は、第1上アーム制御部S23H、第1下アーム制御部S23L、第2上アーム制御部S24H、および、第2下アーム制御部S24Lから所定のパターンのパルスを出力することにより、共振部25に所定の交流電流を流すことができる。
【0024】
2次側には、2次側コイル60と、2次側整流回路40とを備えている。この2次側コイル60は、1次側コイル15とは分離可能に構成されていると共に、1次側コイル15の近傍に配置されたときに、この1次側コイル15によって電磁誘導され、所定の交流電流が流れるようになっている。
【0025】
2次側整流回路40は、共振部41と、ブリッジ部42とを備えている。ブリッジ部42は、ブリッジダイオードD42H,D42L,D43H,D43Lと、平滑コンデンサC44と、整流ダイオードD45とを備えている。
共振部41の出力は、ブリッジ部42の2つの入力側ノードに接続されている。一方の入力側ノードには、ブリッジダイオードD42Hのアノード端子と、ブリッジダイオードD42Lのカソード端子とが接続されている。他方の入力側ノードには、ブリッジダイオードD43Hのアノード端子と、ブリッジダイオードD43Lのカソード端子とが接続されている。
ブリッジダイオードD42Hのカソード端子とブリッジダイオードD43Hのカソード端子とは、平滑コンデンサC44の正極端子に接続され、更に順方向に接続された整流ダイオードD45を介して、この2次側整流回路40の出力側の正極端子に接続されている。
ブリッジダイオードD42Lのアノード端子と、ブリッジダイオードD43Lのアノード端子とは、平滑コンデンサC44の負極端子に接続されて、この2次側整流回路40の出力側の負極端子(グランド)に接続されている。
この2次側整流回路40は、2次側コイル60を介して流れる交流電流をブリッジ部42で整流することにより、直流に変換する整流回路である。
【0026】
(第1の実施形態の動作)
図1を基に、充電制御装置10の動作を説明する。
制御部30は、2次側電圧VDC2の情報または/および2次側電流IDC2の情報を、例えば100mSEC(第2の周期)でサンプリングする。制御部30は、1次側電圧VDC1または/および1次側電流IL1を、5mSEC(第1の周期)でサンプリングする。本実施形態に於いて、1次側電圧VDC1または/および1次側電流IL1のサンプリング周期と、チョッパ回路12を制御する制御信号を出力する制御周期とは、同一の5mSEC周期である。
【0027】
定電圧制御の場合には、2次側電圧VDC2と、2次側電圧VDC2をサンプリングしたときの1次側電圧VDC1、および、今回サンプリングした1次側電圧VDC1に基いて、今回サンプリングしたタイミングに於ける2次側電圧VDC2を推定して、2次側整流回路40の2次側電圧VDC2が一定になるように、PWM部32に出力する制御信号をフィードバック制御する。
【0028】
定電流制御の場合には、2次側電流IDC2と、2次側電流IDC2をサンプリングしたときの1次側電流IL1、および、今回サンプリングした1次側電流IL1に基いて、今回サンプリングしたタイミングに於ける2次側電流IDC2を推定して、2次側整流回路40の2次側電流IDC2が一定になるように、PWM部32に出力する制御信号をフィードバック制御する。
【0029】
定電力制御の場合には、2次側電圧VDC2と、2次側電圧VDC2をサンプリングしたときの1次側電圧VDC1、および、今回サンプリングした1次側電圧VDC1に基いて、今回サンプリングしたタイミングに於ける2次側電圧VDC2を推定する。更に、2次側電流IDC2と、2次側電流IDC2をサンプリングしたときの1次側電流IL1、および、今回サンプリングした1次側電流IL1に基いて、今回サンプリングしたタイミングに於ける2次側電流IDC2を推定する。そして、2次側整流回路40が供給する電力(2次側電圧VDC2と2次側電流IDC2との積)が一定になるように、PWM部32に出力する制御信号をフィードバック制御する。
【0030】
図3(a),(b)は、1次側と2次側との関係の測定結果を示す図である。
図3(a)は、1次側電圧VDC1と2次側電圧VDC2との関係の測定結果を示す図である。横軸には1次側電圧VDC1[V]が示され、縦軸には2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率が示されている。左端にプロットされた点は、測定開始タイミングを示している。以降、約10分ごとに測定した1次側電圧VDC1と、2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率とをプロットしている。測定開始時の38分後に測定を終了している。このとき、2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率の変化は0.07である。2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率は、連続で緩やかに変化している。この時間的な変化に対して、2次側電圧VDC2のサンプリング間隔の100mSECは、非常に小さい。これにより、2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率を時間的な変化によって補正し、この補正した比率と5mSEC周期でサンプリングした1次側電圧VDC1の値とによって、このサンプリング間隔中の2次側電圧VDC2を推定することができる。
【0031】
図3(b)は、1次側電流IL1と2次側電流IDC2との関係の測定結果を示す図である。横軸には1次側電流IL1のアンペア単位のピーク値[Apeak]が示され、縦軸には2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率が示されている。左端にプロットされた点は、測定開始タイミングを示している。以降、約10分ごとに測定した1次側電流IL1と、2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率とをプロットしている。測定開始時の38分後に測定を終了している。このとき、2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率の変化は0.02である。2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率は、連続で緩やかに変化している。この時間的な変化に対して、2次側電流IDC2のサンプリング間隔の100mSECは、非常に小さい。これにより、2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率を時間的な変化によって補正し、この補正した比率と5mSEC周期でサンプリングした2次側電流IDC2の値とによって、このサンプリング間隔中の2次側電流IDC2を推定することができる。
【0032】
図4(a),(b)は、第1の実施形態に於ける2次側の推定方法を示す図である。
図4(a)は、第1の実施形態に於ける2次側電圧の推定方法を示す図である。
この図に於いて、時刻t、1次側電圧VDC1、2次側電圧VDC2、2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率f(t)との間には、式1の関係が成立する。
【数1】
【0033】
関数fをt+Δtでテイラー展開して1次近似すると、式2の関係が成立する。
【数2】
【0034】
式1に式2を代入して変形すると、以下の式3となり、2次側電圧VDC2の推定値を得ることができる。
【数3】
【0035】
実際の制御に於いて、f(t)は以下の式4−1,4−2の値をとるものとする。
【数4】
【0036】
式4−1,4−2によって、以下の式5が導かれる。但し、Tnは、2次側電圧VDC2をサンプリングした時刻それぞれを示している。Δtは、制御タイミングtと、直近に2次側電圧VDC2をサンプリングした時刻Tnとの時間差を示している。
【数5】
【0037】
上記の式1〜5により、時刻t=Tn+Δtに於ける2次側電圧VDC2の推定値は、以下の式6によって導かれる。但し、2次側電圧VDC2のサンプリング周期をΔTとする。
【数6】
【0038】
上述した数式により、2次側電圧VDC2と、この2次側電圧VDC2をサンプリングしたときの1次側電圧VDC1との関係を示す関数fと、直近に2次側電圧VDC2をサンプリングしたのちの経過時間Δtとによって、現在の時刻tに於ける2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率を示す関数f(t)を算出することができる。
【0039】
図4(b)は、第1の実施形態に於ける2次側電流の推定方法を示す図である。
この図に於いて、時刻t、1次側電流IL1、2次側電流IDC2、時刻tに於ける2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率を示す関数g(t)との間には、式7の関係が成立する。
【数7】
【0040】
関数gをt+Δtでテイラー展開して1次近似すると、式8の関係が成立する。
【数8】
【0041】
式7に式8を代入して変形すると、以下の式9となり、2次側電流IDC2の推定値を得ることができる。
【数9】
【0042】
実際の制御に於いて、g(t)は以下の式10−1,10−2の値をとるものとする。
【数10】
【0043】
式10−1,10−2によって以下の式11が導かれる。但し、Tnは、2次側電流IDC2をサンプリングした時刻を示している。Δtは制御タイミングtと、直近に2次側電流IDC2をサンプリングした時刻Tnとの時間差を示している。
【数11】
【0044】
上記の式7〜11により、時刻t=Tn+Δtの2次側電流IDC2の推定値は、以下の式12によって導かれる。但し、2次側電流IDC2のサンプリング周期をΔTとする。
【数12】
【0045】
上述した数式により、2次側電流IDC2と、この2次側電流IDC2をサンプリングしたときの1次側電流IL1との関係を示す関数gと、直近に2次側電流IDC2をサンプリングしたのちの経過時間Δtとによって、現在の時刻tに於ける2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率を示す関数g(t)を算出することができる。
【0046】
図5は、第1の実施形態に於ける制御処理を示すフローチャートである。
処理が開始すると、ステップS10に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側電流IDC2と2次側電圧VDC2とを、無線通信部31および無線通信部54を介して測定する。以降、2次側電流IDC2と2次側電圧VDC2とは、100mSEC毎(第2の周期)でサンプリングされる。
【0047】
ステップS11に於いて、充電制御装置10の制御部30は、1次側電流IL1と1次側電圧VDC1とを測定する。以降、1次側電流IL1と1次側電圧VDC1とは、5mSEC毎(第1の周期)でサンプリングされる。
ステップS12に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定回数を判断する。
【0048】
2次側の測定が初回であったならば、ステップS13の処理を行う。2次側の測定が2回目であったならば、ステップS14の処理を行う。2次側の測定が3回目以降であったならば、ステップS15の処理を行う。
【0049】
ステップS13に於いて、充電制御装置10の制御部30は、シミュレーションによる初期値に基くf(0),g(0)を設定し、ステップS16の処理を行う。f(0)は、2次側電圧VDC2と1次側電圧VDC1との比率を、シミュレーションなどで求めた初期値(定数)である。g(0)は、2次側電流IDC2と1次側電流IL1との比率を、シミュレーションなどで求めた初期値(定数)である。
ステップS14に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定に基き、f(T),g(T)を設定し、ステップS16の処理を行う。ステップS14に於ける算出方法を、以下の式13−1,13−2に示す。
【数13】
【0050】
ステップS15に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定に基き、f(t),g(t)を設定し、ステップS16の処理を行う。ステップS15に於ける算出方法を、以下の式14−1,14−2に示す。
【数14】
【0051】
ステップS16に於いて、充電制御装置10の制御部30は、設定した関数fと1次側電圧VDC1に基いて2次側電圧VDC2の予測値を算出し、設定した関数gと1次側電流IL1に基いて2次側電流IDC2の予測値を算出する。
ステップS13から当該ステップS16に遷移したときの、2次側電圧VDC2の予測値と、2次側電流IDC2の予測値とを求める数式を、以下の式15に示す。
【数15】
【0052】
ステップS14から当該ステップS16に遷移したときの、2次側電圧VDC2の予測値と、2次側電流IDC2の予測値とを求める数式を、以下の式16に示す。
【数16】
【0053】
ステップS15から当該ステップS16に遷移したときの、2次側電圧VDC2の予測値と、2次側電流IDC2の予測値とを求める数式を、以下の式17に示す。
【数17】
【0054】
ステップS17に於いて、充電制御装置10の制御部30は、制御方法がいずれであるかを判断する。制御方法が定電流制御であったならば、充電制御装置10の制御部30は、ステップS18の処理を行い、制御方法が定電圧制御であったならば、ステップS19の処理を行い、制御方法が定電力制御であったならば、ステップS20の処理を行う。
【0055】
ステップS18に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側電流IDC2の予測値に基き、この予測値と目標値との差を打ち消すようチョッパ回路12への指令値を算出する。ステップS18の処理が終了すると、充電制御装置10の制御部30は、ステップS22の処理を行う。
【0056】
ステップS19に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側電圧VDC2の予測値に基き、この予測値と目標値との差を打ち消すようチョッパ回路12への指令値を算出する。ステップS19の処理が終了すると、充電制御装置10の制御部30は、ステップS22の処理を行う。
ステップS20に於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側電圧VDC2の予測値と2次側電流IDC2の予測値とを乗算し、電力予測値を算出する。
ステップS21に於いて、充電制御装置10の制御部30は、この予測値と目標値との差を打ち消すようチョッパ回路12への指令値を算出する。
【0057】
ステップS22に於いて、充電制御装置10の制御部30は、チョッパ回路12への指令値をPWM部32に出力し、チョッパ回路12のPWMデューティを制御する。
【0058】
ステップS23に於いて、充電制御装置10の制御部30は、ステップS11で1次側を測定したのちの経過時間と、ステップS10で2次側を測定したのちの経過時間とを判断する。充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定後、100mSECが経過していたならば、ステップS10の処理に戻り、1次側の測定後、5mSECが経過していたならば、ステップS11の処理に戻る。以降、充電制御装置10の制御部30は、電源がオフされるまで、上述した処理を繰り返す。
【0059】
(第1の実施形態と比較例との対比)
図8は、比較例に於ける充電制御装置と被充電装置を示す概略の構成図である。
【0060】
比較例の充電制御装置10Aは、第1の実施形態の充電制御装置10とは異なり、電圧測定部13を有しておらず、1次側インバータ回路20Aが電流測定部26を有していない他は、第1の実施形態の充電制御装置10と同様の構成を有している。
【0061】
図9は、比較例に於ける制御処理を示すフローチャートである。
処理を開始したときの、ステップS10に於ける処理は、第1の実施形態のステップS10に於ける処理と同様である。ステップS10の処理が終了したならば、充電制御装置10Aは、第1の実施形態のステップS11〜S16の処理を行わずに、ステップS17の処理を行う。
ステップS17〜S23の処理は、第1の実施形態のステップS17〜S23の処理と同様である。
【0062】
図10(a−1)〜(a−3),(b−1)〜(b−3)は、比較例と第1の実施形態とのシミュレーション結果を示す図である。
図10(a−1)〜(a−3)は、比較例のシミュレーション結果を示している。
図10(b−1)〜(b−3)は、第1の実施形態のシミュレーション結果を示している。
図10全てに於いて、横軸は時間tを示している。
【0063】
図10(a−1)の縦軸は、比較例に於ける充電電圧を示している。
図10(a−2)の縦軸は、比較例に於ける充電電流を示している。
図10(a−3)の縦軸は、比較例に於ける充電電力を示している。
【0064】
図10(b−1)の縦軸は、第1の実施形態に於ける充電電圧を示している。
図10(b−2)の縦軸は、第1の実施形態に於ける充電電流を示している。
図10(b−3)の縦軸は、第1の実施形態に於ける充電電力を示している。
【0065】
比較例と第1の実施形態は共通して、所定の期間に亘って定電流制御、定電力制御、および、定電圧制御を順に行っている。
図10(a―2)と
図10(a−3)に示すように、比較例に於ける定電流制御と定電力制御では、所定値に収束せずに振動している。それに対して、
図10(b―2)と
図10(b−3)に示すように、第1の実施形態に於ける定電流制御と定電力制御では、所定値に収束している。
【0066】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A),(B)のような効果がある。
【0067】
(A) ワイヤレス給電システムに於いても、蓄電池に対して理想的な充電制御を行うことができる。これにより、充電制御装置10は、蓄電池の電池寿命を延ばすことができる。
【0068】
(B) 充電制御装置10は、2次側のサンプリング毎に1次側と2次側との関係を更新している。これにより、充電制御装置10は、環境の変化による1次側と2次側との関係の変化、例えば素子の劣化、ワイヤレス充電中のコイルの位置ずれなどに対応することができる。
【0069】
(第2の実施形態の構成)
第2の実施形態の充電制御装置10と被充電装置100の構成は、第1の実施形態の充電制御装置10と被充電装置100(
図1)と同様の構成を有している。
第2の実施形態の充電制御装置10の特徴は、第1の実施形態の充電制御装置10の特徴に加えて、初期状態に於ける関数fの時間tによる傾きと、関数gの時間tによる傾きとを記憶しており、2次側の初回の測定から、その傾きを考慮した電流予測値と電圧予測値とを算出していることである。
【0070】
(第2の実施形態の動作)
図6は、第2の実施形態に於ける制御処理を示すフローチャートである。
図5に示す第1の実施形態に於ける制御処理を示すフローチャートと同一の要素には、同一の符号を付与している。
処理を開始したのち、ステップS10〜S12の処理は、第1の実施形態のステップS10〜S12の処理と同様である。
ステップS13Aに於いて、充電制御装置10の制御部30は、予め設定した傾きと初期値に基き、以下の式18−1に従ってf(t)を設定し、以下の式18−2に従ってg(t)を設定し、ステップS16の処理を行う。なお、ステップS13Aに於いて、Δt=tである。
【数18】
【0071】
ステップS14Aに於いて、充電制御装置10の制御部30は、予め設定した傾きと2次側の測定に基き、以下の式19−1に従ってf(t)を設定し、以下の式19−2に従ってg(t)を設定し、ステップS16の処理を行う。なお、ステップS14Aに於いて、Δt=T−tである。
【数19】
【0072】
ステップS16〜S23の処理は、第1の実施形態のステップS16〜S23の処理と同様である。
これにより、充電制御装置10の制御部30は、2次側の初回の測定後すぐに、時間tによる2次側の傾きを反映した精密な電流予測値/電圧予測値を算出することができる。
【0073】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(C)のような効果がある。
【0074】
(C) 充電制御装置10の制御部30は、2次側の初回の測定後すぐに、時間tによる2次側の傾きを反映した精密な電流予測値/電圧予測値を算出することができる。
【0075】
(第3の実施形態の構成)
第3の実施形態の充電制御装置10と被充電装置100の構成は、第1の実施形態の充電制御装置10と被充電装置100(
図1)と同様の構成を有している。
第3の実施形態の充電制御装置10の特徴は、1次側と2次側との信号(電流または電圧)測定から、1次側と2次側との信号の比率を算出し、その比率に基いて信号予測値(電流予測値または/および電圧予測値)を算出していることである。これはテイラー展開の0次近似に相当する。1次側と2次側との比率の時間変化が極めて少ないか、または、1次側信号のサンプリング周期と制御周期とが極めて早いならば、テイラー展開の0次近似であっても、適切に制御することができる。
【0076】
(第3の実施形態の動作)
図7は、第3の実施形態に於ける制御処理を示すフローチャートである。
図5に示す第1の実施形態に於ける制御処理を示すフローチャートと同一の要素には、同一の符号を付与している。
処理を開始したのち、ステップS10〜S11の処理は、第1の実施形態のステップS10〜S11の処理と同様である。
ステップS12Aに於いて、充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定回数を判断する。
充電制御装置10の制御部30は、2次側の測定が初回であったならば、ステップS13の処理を行い、2次側の測定が2回目以降であったならば、ステップS14の処理を行う。
ステップS13〜S23の処理は、第1の実施形態のステップS13〜S23の処理と同様である。
【0077】
(第3の実施形態の効果)
以上説明した第3の実施形態では、次の(D)のような効果がある。
【0078】
(D) 充電制御装置10の制御部30は、同時にサンプリングした1次側信号と2次側信号の比率に基いて制御している。これにより、充電制御装置10の制御部30は、演算量が少なくなり、高速にフィードバックすることができ、よって、目標値に安定に収束させることができる。
【0079】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0080】
(a) 第1の実施形態の充電制御装置10の制御部30は、テイラー展開の1次近似によって2次側信号を推定している。第3の実施形態の充電制御装置10の制御部30は、テイラー展開の0次近似によって2次側信号を推定している。しかし、これに限られず、充電制御装置10の制御部30は、テイラー展開の2次以上の近似によって、2次側信号を推定してもよい。これにより、充電制御装置10は、更に精密な近似を行うことができる。
【0081】
(b) 第1〜第3の実施形態の被充電装置100は、無線路を介して充電制御装置10に、2次側の信号を送信している。しかし、これに限られず、被充電装置100は、ワイヤレスで情報を送信する手段、例えば、赤外線、可視光、紫外線、可聴音、超音波、磁界などによって、充電制御装置10に2次側電圧VDC2または/および2次側電流IDC2を送信してもよい。
【0082】
(c) 第1〜第3の実施形態では、ワイヤレスで被充電装置100から充電制御装置10に、2次側の信号を送信している。しかし、これに限られず、2次側から1次側への信号送信に大きな遅延が発生するシステムに、本発明を適用してもよい。