(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753910
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6551 20140101AFI20150702BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20150702BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20150702BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20150702BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20150702BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
H01M10/6551
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/6561
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-545877(P2013-545877)
(86)(22)【出願日】2012年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2012079195
(87)【国際公開番号】WO2013077205
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-253380(P2011-253380)
(32)【優先日】2011年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】福川 浩市
(72)【発明者】
【氏名】板垣 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】寺田 潤史
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−200580(JP,A)
【文献】
特開2009−123371(JP,A)
【文献】
特開2002−334684(JP,A)
【文献】
特開2007−035393(JP,A)
【文献】
特開2010−146774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6551
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/643
H01M 10/6561
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セル(1)と、
前記複数の電池セル(1)を収納する電池ホルダ(2)と、
前記電池ホルダ(2)を収納する樹脂製の外ケース(4)と、
を備える電池パックであって、
前記外ケース(4)は、金属製の放熱プレート(14)をインサート成形してなり、
前記放熱プレート(14)の一部を、前記外ケース(4)の外面側及び内面側に表出させてなり、
前記外ケース(4)の内面において、前記放熱プレート(14)が表出されたプレート表出面(15)を、該外ケース(4)の表面から段差状に窪ませた凹状とし、
前記電池ホルダ(2)が、前記プレート表出面(15)に対して突出する凸条(32)を設けており、
前記凸条(32)を前記プレート表出面(15)に挿入して
前記外ケース(4)の内面側において露出させた前記放熱プレート(14)を、前記電池ホルダ(2)と熱結合させてなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記外ケース(4)は、内面側において表出させた前記放熱プレート(14)の表面を、絶縁性の保護膜(16)で被覆してなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記放熱プレート(14)は、前記外ケース(4)の外面側に表出される面を凹凸状(14a)に形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記放熱プレート(14)は、前記外ケース(4)の内面側に表出される面を平面に形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記凸条(32)が、電池ホルダ(2)に形成された電池収納空間(34)から電池セル(1)の抜け落ちを阻止する突出阻止部を兼用してなることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記外ケース(4)において、前記放熱プレート(14)が表出された面が、該外ケース(4)の天面、底面、又は天面と底面のいずれかであることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の充電可能な二次電池を収納した電池パックに関し、例えば電動スクータやアシスト自転車用の電源等に利用可能な電源パックに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の二次電池を直列及び/又は並列に接続した電池パックが、電動スクータやアシスト自転車の動力源、あるいは電気自動車の電源装置などに利用されている。電池パックは、二次電池を樹脂製の電池ホルダに収納し、さらに電池ホルダを絶縁性の外ケースに収納している。
【0003】
このような電池パックは、直列接続される電池セル数を多くすることで出力電圧を高くし、また並列接続される電池セル数を多くすることで、電池容量を高めることができる。特に近年の高出力化の要求に鑑み、電池パックは電池セルの使用数が増える傾向にある。一方で各電池セルは、大電流を充放電することにより発熱する。よって電池セルを長期に渡って安定的に使用するためには、電池パックを効率よく冷却することが求められる。
【0004】
そこで、外ケースを金属製とすることで、外ケースの表面の全面から放熱させて放熱性を向上させることが考えられる。しかしながら、金属製の外ケースでは、熱伝導性のみならず導電性にも優れるため、内部に収納する電池セルとの絶縁性を図ることが容易でないという問題がある。また外ケースに水滴などが浸入して内部で短絡を生じる事態を回避するために、外ケースを防水構造とする必要があるものの、金属製の外ケースでは成形性などの点で防水性を実現することが容易でなく、コストが高騰する要因となる。さらには金属製の外ケースは重量が重くなる上、金属製としたことで原材料コストも上昇する。
【0005】
一方、樹脂製の外ケースを利用すれば安価かつ軽量とでき、防水構造も比較的容易に実現できるものの、金属製の外ケースに比べて放熱性に劣るという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−124224号公報
【特許文献2】特開2002−334684号公報
【特許文献3】特開2003−36819号公報
【特許文献4】特開2005−285456号公報
【特許文献5】特開2001−210286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、放熱性を高めつつ、金属製の外ケースを使用した場合の欠点を解消した電池パックを提供することにある。
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の側面に係る電池パックは、複数の電池セル1と、前記複数の電池セル1を収納する電池ホルダ2と、前記電池ホルダ2を収納する樹脂製の外ケース4と、を備える電池パックであって、前記外ケース4は、金属製の放熱プレート14をインサート成形してなり、前記放熱プレート14の一部を、前記外ケース4の外面側及び内面側に表出させてなり、前記外ケース4の内面側において露出させた前記放熱プレート14を、前記電池ホルダ2と熱結合させることができる。これにより、電池ホルダと外ケースとを熱結合状態に接触させることで、外部に表出された放熱プレートをヒートシンクとして利用でき、電池セルの発熱を、電池ホルダを介して効率よく外部に放熱して信頼性高く使用できる利点が得られる。
【0009】
また、第2の側面に係る電池パックは、前記外ケース4は、内面側において表出させた前記放熱プレート14の表面を、絶縁性の保護膜16で被覆することができる。これにより、放熱プレートを外ケースの内面で剥き出しにする状態を避け、絶縁性と防水性を確保して安全性及び信頼性を高めることができる。
【0010】
さらにまた、第3の側面に係る電池パックは、前記放熱プレート14に、前記外ケース4の外面側に表出される面を凹凸状14aに形成することができる。これにより、放熱プレートの表面積を増やして放熱性を向上できる。
【0011】
さらにまた、第4の側面に係る電池パックは、前記放熱プレート14は、前記外ケース4の内面側に表出される面を
平面に形成することができる。これにより、放熱プレートが電池ホルダと接触される面を密着させて熱結合を高め、放熱性を向上させることができる。
【0012】
さらにまた、
本発明の電池パックは、前記外ケース4の内面において、前記放熱プレート14が表出されたプレート表出面15を、該外ケース4の表面から段差状に窪ませた凹状とし、前記電池ホルダ2が、前記プレート表出面15に対して突出する凸条32を設けており、前記凸条32を前記プレート表出面15に挿入することができる。これにより、電池ホルダと外ケースとの絶縁性を維持しつつも熱結合を高めて放熱性を向上できる。
【0013】
さらにまた、
第5の側面に係る電池パックは、前記凸条32が、電池ホルダ2に形成された電池収納空間34から電池セル1の抜け落ちを阻止する突出阻止部を兼用することができる。これにより、電池ホルダに別途、放熱プレートとの接触面を設けることなく、既存の部材を共用して形状やサイズ、コストを大幅に変更することなく放熱性の向上を図ることができる。
【0014】
さらにまた、
第6の側面に係る電池パックは、前記外ケース4において、前記放熱プレート14が表出された面が、該外ケース4の天面、底面、又は天面と底面のいずれかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に係る電池パックを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2の電池パックをIII−III線から見た横断面図である。
【
図4】
図2の電池パックをIV−IV線から見た横断面図である。
【
図8】
図7の電池集合体を背面斜め下方から見た分解斜視図である。
【
図9】
図9Aは外ケースと電池ホルダの接合面を示す模式断面分解図、
図9Bは
図9Aの状態から外ケースを電池ホルダに接合させた状態を示す模式断面図である。
【
図10】
図10Aは実施例2に係る電池パックの外ケースと電池ホルダの接合面を示す模式断面分解図、
図10Bは
図10Aの状態から外ケースを電池ホルダに接合させた状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0017】
図1に、本発明の実施例1に係る電池パック100を示す。この図に示す電池パック100は、電動バイクに装着されて、駆動用の電源を供給する。このため電動バイクに電力を供給するための出力コネクタが設けられている。出力コネクタは、電池パック100に内蔵される二次電池を直列及び/又は並列に接続した高電圧ラインである出力端子を含んでいる。また、電池パック100と電動バイクと間で制御信号をやりとりするための信号端子も出力端子と別に設けられている。さらに出力コネクタに、内蔵される電池セル1を外部から充電するための充電端子を備えることもできる。充電端子は、出力端子と兼用してもよい。出力コネクタは、これら出力端子及び/又は充電端子、信号端子を纏めている。ただ、一の出力コネクタにこれらの端子を纏める必要なく、別個のコネクタに各端子を設けることもできる。
【0018】
この電池パック100は、電動用バイクの定位置にセットされて、出力コネクタを電動バイクに設けられたレセプタクルと接続する。なお、ここでは電池パックを電動用バイクの電源装置として利用する例を説明するが、本発明は電池パックを電動バイク用電源装置に限定せず、他の電源装置としても利用できることはいうまでもない。
【0019】
図1に示す電池パック100は、複数の充電可能な電池セル1と、複数の電池セル1を各々収納可能な電池収納空間34を個別に区画した電池ホルダ2とを備えている。図の電池パック100は、複数の電池セル1を電池ホルダ2の定位置に配置して直列と並列とに接続している電池集合体を外ケース4に収納している。
【0020】
電池パック100は、
図2の底面図及び
図3〜4の断面図に示すように、外形を構成する外ケース4の全体形状をほぼ箱形としている。外ケース4には、それぞれ、電池セル1を複数本内蔵している。
【0021】
外ケース4は、放熱ケース11と連結ケース12に二分割されて、内部に電池ホルダ2が収納される。
図5に、外ケース4の分解斜視図を示す。この図に示す外ケース4は、放熱ケース11と連結ケース12とで構成される内部空間に電池ホルダ2を収納している。電池ホルダ2には、電池セル1が収納される(詳細は後述)。また放熱ケース11と連結ケース12との接合面には、パッキン等の弾性変形するシール材13を介在させて、この接合界面での防水を図っている。
(電池集合体)
【0022】
外ケース4に含まれる電池ホルダ2で構成された電池集合体の斜視図を
図6に、その分解斜視図を
図7及び
図8の分解斜視図に、それぞれ示す。これらの図に示すように電池集合体は、複数の充電できる電池セル1と、これらの電池セル1を多段多列に配列して保持するプラスチック製の電池ホルダ2と、電池ホルダ2で定位置に保持される各々の電池セル1の端面電極1Aに溶接されて、隣接する電池セル1を接続している複数のリード板5と、電池ホルダ2の一面に設けられた回路基板6とを備えている。
【0023】
電池ホルダ2は、
図7及び
図8の分解斜視図に示すように、縦方向に7段に電池セル1を並べて、これを横方向に14列配置している。すなわち、98個の電池セル1を、7段14列にマトリクス状に並べて配置している。ただ、本発明の電池パックは、電池セルの個数や配列をこの状態に特定しない。さらに、多段多列に配列される複数の電池セルは、直列と並列に接続して電池集合体を構成する。
図7及び
図8に示す電池集合体は、同列に配置される7個の電池セルを並列に接続すると共に、互いに隣接する列に配列される7個ずつの電池セル同士を直列に接続して、14列の電池セル同士を直列に接続している。すなわち、図の電池集合体は、98個の電池セルを7並14直に接続している。この構造は、複数の電池セルを並列に接続することで電池パックの出力電流を大きくでき、また、互いに並列に接続された電池セルを直列に接続することで電池パックの出力電圧を高くできる。ただ、本発明の電池パックは、互いに並列に接続する電池セルの個数と、互いに直列に接続する電池セルの個数を以上に特定しない。
(電池セル1)
【0024】
電池セル1は、充電可能な二次電池である。図の電池パックは、電池セル1を円筒形の電池セルとしている。本実施例においては、電池セル1として円筒形のリチウムイオン二次電池を使用する。リチウムイオン二次電池は、大容量、大出力のバッテリシステムに適している。それは、リチウムイオン二次電池が容積や重量に対する容量を大きくできるからである。ただ本発明の電池パックは、電池をリチウムイオン二次電池には特定せず、リチウムポリマー電池やニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の充電可能な他の二次電池も利用できる。さらに、外形も円筒形に限らず角形電池とすることもできる。
(電池ホルダ2)
【0025】
電池ホルダ2は、複数の円筒形の電池セル1を互いに平行な姿勢で多段多列に並べて保持している。各電池ホルダ2は、
図7及び
図8の斜視図に示すように、電池セル1を収納可能な円筒状の電池収納空間34を多段多列に設けており、各々の電池収納空間34に電池セル1を挿入して定位置に配置している。電池ホルダ2は、電池セル1を収納する電池収納空間34を電池セル1の軸方向に開口して設けている。図の電池ホルダ2は、円柱状の電池収納空間34を有する形状に成形している。この電池収納空間34は、円筒形である電池セル1を挿入できる内形に成形している。図の電池ホルダ2は、98個の電池セル1を所定の配列で収納できるように、98個の電池収納空間34を7段14列のマトリックス状に設けている。さらに、電池ホルダ2は、その両面において、電池収納空間34の両端を開口している。
【0026】
電池ホルダ2は、円筒形の電池セル1の長手方向(
図7、
図8において上下方向)の中間において、第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bとに2分割している。第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、電池収納空間34の両端を開口して、円筒形の電池セル1を挿入できる形状に成形している。電池ホルダ2は、プラスチックなどの絶縁部材で成形される。電池収納空間34を設けた形状にプラスチックを成形している電池ホルダ2は、電池セル1を区画して配列することで、複数の電池セル1を正確に位置決めしながら配列できる。
【0027】
第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、互いの電池収納空間34に電池セル1の両端部を挿入する状態で互いに連結されて、各々の電池収納空間34に電池セル1を収納する。第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bは、止ネジを介して互いに連結される。図の第一サブホルダ2aは、止ネジを挿入するネジ孔(図示せず)を開口しており、第二サブホルダ2bは、この止ネジをねじ込む連結ボスを対向面に設けている。
(突出阻止部32)
【0028】
さらに、電池ホルダ2は、電池収納空間34に挿入される電池セル1の端面電極1Aが、外側端面から外側に突出するのを阻止する突出阻止部32を外側端面に一体的に成形して設けている。この突出阻止部32は、電池収納空間34に挿入される電池セル1の端面電極1Aを外側端面から表出させるが、端面電極1Aが開口端から突出しないように、電池収納空間34の開口端縁から内側に突出して、電池収納空間34の開口部に部分的に覆うようにせり出した状態で設けている。
【0029】
図6の電池ホルダ2は、電池収納空間34をマトリックス状に配置すると共に、複数の電池収納空間34に、電池収納空間34の開口部に部分的に重なるように突出阻止部32を直線状に設けている。この電池ホルダ2は、電池収納空間34に挿通される電池セル1の端面電極1Aに突出阻止部32が当接して電池セル1の端面電極1Aが外側端面から突出するのを阻止する。また突出阻止部32は、リード板5を定位置に案内するためのガイドとしても機能する。さらに突出阻止部32は、放熱プレート14と接触するための凸条32としても機能する。
【0030】
電池ホルダ2は、第一サブホルダ2aと第二サブホルダ2bを連結する状態で、電池セル1の端面電極1Aを電池収納空間34の外側開口部から外部に露出させる。外部に露出する端面電極1Aにリード板5がスポット溶接やレーザ溶接などの方法で溶接される。
図7、
図8の電池ホルダ2は、電池収納空間34の両端を開口している両面に、複数のリード板5を互いに離して定位置に配置するガイドとしても、突出阻止部32を利用している。リード板5は、突出阻止部32に案内されて、電池セル1の端面電極1Aに接続される。したがって突出阻止部32は、端面電極1Aに接続されるリード板5を配置する位置に設けている。また言い換えると、リード板そのものが配置される位置には、突出阻止部は存在しないため、突出阻止部を放熱プレートと熱結合させることで、放熱プレートとリード板との意図しない導通を回避できる。
(リード板5)
【0031】
リード板5は、
図7、
図8に示すように、電池ホルダ2の突出阻止部32に案内されて、電池セル1の端面電極1Aにスポット溶接やレーザ溶接して接続されて、隣接する電池セル1を直列と並列に接続する。リード板5は、同じ列の電池セル1を並列に接続して、隣接する列の電池セル1を直列に接続する。リード板5は、多列に接続される電池セル1の両端に位置して配置されて、1列7本の電池セル1を並列に接続する1列幅の第1リード板5Aと、各列7本の電池セル1を並列に接続し、かつ隣接する列の7本の電池セル1を直列に接続するために、14本の電池セル1の端面電極1Aを接続する2列幅の第2リード板5Bとを備えている。
【0032】
図7、
図8の電池集合体は、第二サブホルダ2bの外側面(
図7において下面側)に、2列の電池セル1を接続する7枚の第2リード板5Bを互いに平行に配列している。7枚の第2リード板5Bは、各々が7段の電池セル1を並列に接続して、隣接する2列の電池セル1を直列に接続している。また、第一サブホルダ2aの外側面(
図7において上面側)には、2列の電池セル1を接続する6枚の第2リード板5Bを中間に配置して、出力側となる両端には、1列の電池セル1を接続する2枚の第1リード板5Aを配置している。中間に配置している6枚の第2リード板5Bは、各々が7段の電池セル1を並列に接続して、隣接する2列の電池セル1を直列に接続している。両端に配置している2枚の第1リード板5Aは、7段の電池セル1を並列に接続している。以上の電池集合体は、7段の電池セル1を並列に接続しながら、14列の電池セル1をジグザグ状に直列接続して、両端部に接続される第1リード板5Aを出力として出力端子(図示せず)に接続している。
【0033】
リード板5は、電気抵抗が小さく熱伝導に優れた金属板、例えばニッケル板、鉄や鉄合金あるいは銅や銅合金等の表面をニッケル等のメッキをしている金属板が使用される。リード板5は、溶接に最適な厚さの金属板、例えば0.1mm〜0.3mmの金属板が使用される。スポット溶接やレーザ溶接されるリード板は、厚すぎても薄すぎて理想的な状態で電池セルの端面電極に溶接できない。このため、リード板は、流れる電流や用途を考慮して最適な厚さに設定される。
【0034】
さらに、リード板5は、その一端に、回路基板6に接続するための接続片5aを設けている。このリード板5は、
図7、
図8に示すように、接続片5aの先端部をさらに折曲しており、この先端部を回路基板6に直接に電気接続している。回路基板6は、接続片5aの先端部を挿入するためのスリット6aを開口しており、このスリット6aに接続片5aの先端部を挿入すると共に、接続片5aをハンダ付けして回路基板6に接続している。回路基板6は、リード板5からの電圧、電流を、接続片5aを介して入力して、電池集合体の中間電位を検出している。
(回路基板6)
【0035】
回路基板6は、電池セルの温度や電圧等を検出することで、電池セルを保護する保護回路を実装している。この回路基板6は、電池ホルダ2の端面に固定されて、複数の電池セル1に接続されるリード板5の接続片5aが接続される。リード板5の接続片5aは、回路基板6に実装された電圧検出回路に接続される。これにより、電池集合体の中間電位を回路基板6側で検出することができる。回路基板6は、各列の電池セル1の充放電電流を制御する充放電回路や保護回路等、電池パックの駆動に必要な回路及びその構成部品、素子等を実装する基板であり、ガラスエポキシ基板等が利用できる。
【0036】
さらに、電池セルを加熱する発熱体を、電池セルの表面に接触させて設けることもできる。この場合、回路基板には、発熱体の通電をON/OFFする制御回路を備える。制御回路は、温度を検出して発熱体の通電をON/OFFする。制御回路は、電池温度または外気温度を検出する温度センサを備えている。この温度センサは、例えばサーミスタである。サーミスタは、周囲の温度を抵抗値の変化として検出して、制御回路に入力する。この電池パックは、電池セルの温度を検出する温度センサを電池セルに接近して設けている。
【0037】
なお、回路基板は各電池ホルダに設ける構成の他、いずれか一方の電池ホルダにのみ設けて、他方の電池ホルダにおいては回路基板を省略し、一の回路基板で2つの電池ホルダの監視を共用することもできる。
(放熱プレート14)
【0038】
図5の例において、放熱ケース11と連結ケース12は、樹脂製としている。さらにこれらのケースは、金属製の放熱プレート14をインサート成形している。放熱プレート14の一部は、ケースの外面側及び内面側に表出させている。そしてケースの内面側において露出させた放熱プレート14を、電池ホルダ2と熱結合させている。これにより、電池ホルダ2とケースとを熱結合状態に接触させることで、外部に表出された放熱プレート14をヒートシンクとして利用でき、電池セルの発熱を、電池ホルダ2を介して効率よく外部に放熱して信頼性高く使用できる利点が得られる。このような放熱プレート14としては、熱伝導性に優れたアルミニウムや銅等の金属板が利用できる。特にアルミニウム金属製の放熱プレート14は軽量で安価に構成でき、好ましい。
【0039】
放熱ケース11と連結ケース12の内面においては、
図9Aの拡大断面図に示すように、放熱プレート14が表出されたプレート表出面15を、ケースの表面から段差状に窪ませた凹状としている。一方、電池ホルダ2は、プレート表出面15に対して突出する凸条32を設けている。凸条32は、電池ホルダ2を構成する樹脂で一体成形により形成される。樹脂製の凸条32は絶縁性であるため、
図9Bに示すように放熱プレート14と接触されても導電されることが無く、放熱プレート14と電池セルとの絶縁性が維持される。その一方で電池セルの熱を電池ホルダ2の凸条32を介して放熱プレート14に伝導させ、さらにケース表面に表出された部位から、電池パックの外部に効率よく放熱される。凸条32は、表面を
平面としている。また放熱プレート14も、ケースの内面側に表出される面を
平面に形成している。
(保護膜16)
【0040】
さらに放熱ケース11及び連結ケース12は、内面側において表出させたプレート表出面15を、絶縁性の保護膜16で被覆することもできる。このような構成を実施例2として
図10Aの断面図に示す。保護膜16は、ケース内面に表出されたプレート表出面15に貼付される。このようにして構成されたプレート表出面15に、電池ホルダ2の凸条32を挿入して、
図10Bに示すように保護膜16を介して接触させた状態で、電池ホルダ2とケースとをねじ止めなどによって固定する。これにより凸条32と放熱プレート14との熱結合状態を高められ、放熱性が向上される。加えて、接合面において絶縁性と防水性を付加でき、放熱プレート14がケース内面で剥き出しとせず、安全性及び信頼性を高めることができる。この保護膜16は、熱伝導を確保するために薄くしつつ、かつ十分な絶縁性と防水性を図ることのできる厚さに設定される。この例では1mm程度の厚さとしている。
(凹凸状14a)
【0041】
一方で放熱プレート14は、
図4の要部を拡大した
図11及び
図11をさらに拡大した
図12に示すように、外ケース4の外面側に表出される面を凹凸状14aに形成することもできる。このように放熱プレート14は、内面側においては凸条32との熱結合を高めるために平滑面としつつ、外面側においては表面積を増やして放熱性を高めることで、電池ホルダ2の熱を効率よく伝導して、外部に放出できる。
【0042】
なお
図5の例では、放熱ケース11と連結ケース12といずれも、金属板の放熱プレート14をインサートして放熱構造を実現しているが、例えば放熱ケースのみに放熱プレートを設け、連結ケースには放熱プレートを設けない構成としてもよい。
【0043】
また、以上の例では放熱プレートを電池パックの天面と底面、並びに中央の空間に設けているが、これに限らず、天面又は底面のみとしてもよいし、逆にこれら加えて電池パックの側面にも放熱プレートを設けてもよい。
【0044】
外ケース4に収納される電池ホルダ2は、出力線を出力ケーブルで接続している。そして電池パック全体を出力を、外ケース4に設けた出力コネクタの出力端子に接続している。このように、多数の電池セルを直列及び並列に接続した電池ホルダ2を並列接続して容量を倍増させている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る電池パックは、電動バイク、電動車椅子、電動三輪車、アシスト自転車、電動カート等の駆動用バッテリパック等として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
100…電池パック
1…電池セル;1A…端面電極
2…電池ホルダ;2a…第一サブホルダ;2b…第二サブホルダ
4…外ケース
5…リード板
5A…第1リード板
5B…第2リード板
5a…接続片
5b…延長タブ
6…回路基板;6a…スリット
11…放熱ケース
12…連結ケース
13…シール材
14…放熱プレート;14a…凹凸状
15…プレート表出面
16…保護膜
32…突出阻止部(凸条)
34…電池収納空間