特許第5753911号(P5753911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753911
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】バルクコンテナへのモノマー載荷方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 31/02 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   B65B31/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-554433(P2013-554433)
(86)(22)【出願日】2011年4月11日
(65)【公表番号】特表2014-505642(P2014-505642A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2011031905
(87)【国際公開番号】WO2012112175
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2013年10月22日
(31)【優先権主張番号】61/460,744
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/081,606
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン、エリック
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−234762(JP,A)
【文献】 特開平05−059074(JP,A)
【文献】 特開平02−242775(JP,A)
【文献】 特開平11−335466(JP,A)
【文献】 特表2007−503499(JP,A)
【文献】 国際公開第00/069749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/02
B65B 31/04
B65B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化変色しやすいモノマーを圧力モニタ装置が装備されているバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷されたバルク輸送コンテナを密封するステップと、を備え、
前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法。
【請求項2】
前記モノマー載荷前の、前記コンテナ内部の酸素濃度は約0.01%〜10%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記輸送コンテナ内の前記非酸化性ガス陽圧は、載荷中維持されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バルク輸送コンテナにビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを含む酸化防止剤が投入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モノマーは、変色しやすい前記モノマーの融点超の温度で前記バルク輸送コンテナに載荷されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
密封前に、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを前記非酸化性ガスで加圧して、約1〜約20psigの前記非酸化性ガス陽圧を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)バルク輸送コンテナ内部を不活性ガス陽圧にするステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して、変色しやすい空気感受性モノマーの流動性を維持するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備え
前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする変色しやすい空気感受性モノマーのバルク輸送コンテナからの除荷方法
【請求項8】
前記2,6−キシレノールは、その融点超の温度で、前記バルク輸送コンテナから前記収容コンテナに除荷されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、モノマーなどの化合物の輸送、貯蔵およびまたは熟成中の酸化変色の最小化方法に関する。「酸化変色」とは、酸化剤への暴露による化合物または他の材料の変色を指す。本特定のケースでは、該酸化剤は空気中の酸素である。貯蔵およびまたは空気への暴露による化合物および他の材料の変色が見られるが、このプロセスに対しては機械論的な説明が用いられる。また、黄変度は、APHA(米国公衆衛生協会)黄色指数によって提供されるものなどの既知の標準との目視比較を含む適用可能な方法によって定量化できる。一般に白色または無色の2,6−ジメチルフェノール(CAS登録番号第576−26−1号(「2,6−キシレノール」)モノマーは、例えば、周囲条件下(すなわち、空気中)での輸送、貯蔵およびまたは熟成時に黄変し、以降の加工にとって望ましくないものとなる。従って、モノマーの輸送、貯蔵およびまたは熟成中の変色の最小化方法が求められている。
【発明の概要】
【0002】
これらおよびその他の要求は、輸送、貯蔵およびまたは熟成中のモノマーの周囲酸素への暴露最小化方法、従って、モノマーの変色最小化方法に関する本発明によって満たされる。該方法では、モノマー運搬に適したバルク輸送コンテナは、モノマー載荷前に非酸化性ガスでフラッシュされる。その後、選択的に非酸化性ガス陽圧下、モノマーを該バルク輸送コンテナに載荷する。最後に、非酸化性ガス陽圧下、モノマーが載荷されたバルク輸送コンテナを密封する。該方法は2,6−キシレノールに対して開示されるが、変色しやすいアルキル化フェノールなどの、2,6−キシレノールの類似物または他のモノマーの輸送、貯蔵およびまたは熟成にも同様に適用可能である。2,6−キシレノールは、大気温度下では典型的に固体であるため、該方法は、2,6−キシレノールを融点超に加熱して載荷と除荷を容易にするステップをさらに備える。モノマーの加熱プロセスも、非酸化性ガス陽圧下で行なってもよい。
【0003】
このように、ある実施形態では、本発明は、
(a)酸化変色しやすいモノマーをバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷されたバルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法に関する。
【0004】
別の実施形態では、本発明は、
(a)2,6−キシレノールをバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷されたバルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールのバルク運搬方法に関する。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを非酸化性ガスでパージするステップと、
(b)酸化変色しやすいモノマーを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法を提供する。
【0006】
さらなる実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを非酸化性ガスでパージするステップと、
(b)2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを非酸化性ガスでパージするステップと、
(b)2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする有色の分解生成物の形成を最小化する2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを不活性ガスでパージするステップと、
(b)2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記不活性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とするAPHAを100APHA以下に維持する2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナ内部を非酸化性ガスの陽圧にするステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して、変色しやすい空気感受性モノマーの流動性を維持するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備えることを特徴とする変色しやすい空気感受性モノマーのバルク輸送コンテナからの除荷方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、加圧可能な内部を有するコンテナであって、前記内部が非酸化性ガス陽圧下にあり、前記コンテナは、酸化変色しやすいモノマーと選択的な酸化防止剤とを含むことを特徴とするコンテナを提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、
(a)酸化変色しやすいモノマーをバルク輸送コンテナ内部に載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、
(c)第1の場所から第2の場所へのバルク輸送コンテナ運搬の間、前記バルク輸送コンテナの内部コンパートメントにおける前記非酸化性ガス陽圧を維持しながら、前記第2の場所へ運搬するステップと、
(d)前記第2の場所において、非酸化性ガス陽圧下、酸化変色しやすい前記モノマーを収容タンクに除荷するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーの第1の場所から第2の場所へのバルク運搬方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナ内部を不活性ガス陽圧に維持するステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して、変色しやすい空気感受性モノマーを溶融するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記溶融モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備えることを特徴とする変色しやすい空気感受性のモノマーのバルク輸送コンテナからの除荷方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、2,6−キシレノールなどのモノマーを、非酸化性ガス陽圧下で輸送、貯蔵およびまたは熟成すると、載荷、運搬および除荷中の変色が最小化できることを見出した。「非酸化性ガス」とは、典型的には酸化剤として作用しないガス、例えばヘリウム、アルゴンあるいは窒素などのガスを意味する。
【0014】
従って、上記のように、ある実施形態では、本発明は、
(a)酸化変色しやすいモノマーをバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法を提供する。
【0015】
該方法において、前記モノマーは、2,6−キシレノールなどの酸化変色しやすい任意のモノマーであり得る。典型的には、該モノマーはいつでも使用されるよう準備されており、従って、最小量の不純物しか含んでいない。典型的に、2,6−キシレノールが該モノマーの場合、その純度は99.0%超であり、より典型的には99.8%超であり、水の含有量は最大0.5質量%以下であり、他のフェノールやクレゾールが含まれ得る他の芳香族成分の含有量は0.16質量%以下である。載荷前の該2,6−キシレノールのAPHA色数は典型的には100以下であり、好適には75以下である。APHA色数はより好適には50以下であり、最も好適には25以下である。
【0016】
該方法は、貯蔵タンクであっても良いある場所から、輸送コンテナであってもよい別の場所への、最終的には、生産加工施設などにおける収容タンクであってもよい別の場所への該モノマーの運搬を含む。このように、該バルク輸送コンテナは典型的には、化学物質運搬用に設計されたコンテナであり、化学物質輸送に関する国際標準化機構(ISO)規格に適合している。該コンテナには選択的に、常設または除去可能な圧力モニタ装置と酸素検出器およびまたは酸素濃度検出器が装備されている。こうした装置類は広範に市販されている。
【0017】
前述のように、該コンテナは陽圧を維持できるものでなければならず、非酸化性ガス陽圧は、載荷プロセスの間、選択的に維持される。該方法において、使用されるガスは、該モノマーの変色を促進しない非酸化性ガスである。非酸化性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンおよびこれらの混合物から構成される群から選択される。より好適には、非酸化性ガスは、窒素またはアルゴンあるいはこれらの混合物である。
【0018】
該方法において、コンテナは典型的に、モノマー載荷前に非酸化性ガスで「パージ」され、コンテナからの空気/酸素は該非酸化性ガスで置換される。フラッシングおよびまたはリンシングを含む該パージプロセスは、開閉可能なガス入口弁およびガス出口弁により、コンテナ内に非酸化性ガス流れを供給することによって実現される。このガス入口弁およびガス出口弁を開くと、非酸化性ガス流れがコンテナ内を通過し、これによって、コンテナからのいかなる大気も除去されて非酸化性ガスで置換される。コンテナには実質的に酸素が含まれないように、すなわち、コンテナ内部の酸素濃度が約0.01%〜10%になるように、このパージプロセスを十分な時間継続する。
【0019】
酸化防止剤を使用することによって、モノマーの酸化変色の最小化をさらに確実なものにすることも可能であり、本発明は、モノマー載荷前に、酸化防止剤をコンテナに添加するステップを選択的に備える。好適な酸化防止剤は有機亜リン酸エステル酸化防止剤であり、より好適にはビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Ultranox(登録商標)626)であり、この酸化防止剤は、単独で用いられても他の酸化防止剤と併用されてもよい。
【0020】
コンテナ内が十分酸素フリーになったことを確認し、選択的に酸化防止剤を添加後、モノマーをコンテナに転送する。別段の定めがない限り、モノマーのバルク輸送コンテナへの載荷プロセスは、選択的に非酸化性ガス陽圧下で行なう。モノマーは、コンテナ内への転送を容易にするために、十分に流動性を有していなければならない。2,6−キシレノールは大気温度下では典型的に固体であるため、コンテナへの転送のためには溶融していなければならず、従って、融点である約45℃超に加熱しなければならない。このモノマーは、典型的には50℃超および100℃未満の温度でバルク輸送コンテナに載荷される。このモノマーの載荷および除荷温度は、典型的には約60℃〜90℃であり、より典型的には約65℃〜85℃である。この温度は、載荷プロセスおよび除荷プロセスの間ずっと維持される。載荷プロセスが完了すると、密封前に、載荷されたコンテナを非酸化性ガスで加圧し、非酸化性ガス陽圧を約1〜約20psigとする。
【0021】
当業者であれば、モノマーの温度が低下し凝固するとともに、コンテナ内の圧力が下がることを認識するであろう。従って、コンテナを十分に加圧して、密封したコンテナ内への大気の漏入を防止することが重要である。この「十分な圧力」は、大気温度や大気圧、およびある場所から別の場所へのモノマーの運搬に要する時間などの種々の要因に依存するが、一般的には、約1〜約20psigの非酸化性ガス陽圧で十分であろう。
【0022】
一旦該非酸化性ガスで充填・加圧されると、モノマーの使用前の貯蔵あるいはある場所から別の場所へのモノマーの運搬に該密封コンテナを使用できる。その後モノマーは、例えば製造施設において、選択的には上記の温度範囲内の非酸化性ガス陽圧下で貯蔵タンクなどに除荷される。
【0023】
本発明は、
(a)2,6−キシレノールをバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、
(c)前記載荷されたコンテナを運搬するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールのバルク運搬方法も提供する。
【0024】
ある実施形態では、コンテナ内の非酸化性ガス陽圧は載荷中維持される。このように、コンテナは、窒素などの上記非酸化性ガスでパージされ、その後、Ultranoxなどの選択的な酸化防止剤がコンテナに添加される。次に、選択的に窒素のコンテナ内への陽圧流れを維持しながら、モノマーをコンテナ内に載荷する。前述のように、2,6−キシレノールがモノマーの場合には、2,6−キシレノールの融点超で載荷プロセスを行って、コンテナ内へのモノマーの流れを容易にすることが必要である。載荷プロセスが完了後、コンテナを非酸化性ガスで加圧し、その後密封する。コンテナ温度が低下し2,6−キシレノールが凝固するに伴って、コンテナの内部圧は低下するであろう。従って、前述のように、2,6−キシレノールの温度低下に伴う空気漏入を防止するために、必要に応じてコンテナを加圧することが重要である。コンテナ内への「空気漏入」防止に必要な圧力は、典型的には1〜20psigの範囲だが、大気圧と温度およびモノマー運搬に要する時間などの種々の要因によって変わる。
【0025】
別の実施形態では、本発明では、コンテナから空気を除去するための初期パージステップが必要である。この実施形態は、
(a)バルク輸送コンテナを非酸化性ガスでパージするステップと、
(b)選択的に非酸化性ガス陽圧を維持しながら、酸化変色しやすいモノマーを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法を提供する。
【0026】
前述の実施形態のように、該モノマーは、これに限定されないが、2,6−キシレノールを含む酸化変色しやすい任意のモノマーであってもよく、該非酸化性ガスは窒素またはアルゴンである。ここで、該コンテナには選択的に、圧力計測装置およびまたは酸素検出器、あるいは圧力計測装置およびまたは酸素検出器取付け手段が装備されている。パージは、コンテナ内が実質的に酸素フリー、すなわち酸素量が0.01〜10質量%となるように十分な時間継続される。Ultranox(登録商標)626などの有機亜リン酸エステル酸化防止剤を選択的にコンテナに添加してもよい。モノマーは、その流動性が十分に維持される温度でコンテナに添加されるが、2,6−キシレノールの場合、その温度は、その融点超あるいは約50℃〜約100℃である。モノマーの載荷および除荷温度は、典型的には約60℃〜約90℃の範囲である。この温度は、転送プロセスの間ずっと維持される。
【0027】
載荷プロセス完了後、密封前に、載荷されたコンテナを非酸化性ガスで加圧し、非酸化性ガス陽圧を約1〜約20psigとする。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを非酸化性ガスである窒素でパージするステップと、
(b)2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)約5〜約20psigの窒素陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0029】
別の特定の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナを窒素でパージするステップと、
(b)2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)約5〜約20psigの窒素陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、
(d)前記載荷されたコンテナを運搬するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0030】
別の特定の実施形態では、本発明は、
(a)窒素あるいは本明細書で明記されるものなどの非酸化性ガスでバルク輸送コンテナをパージするステップと、
(b)初期APHAが100以下の2,6−キシレノールを前記バルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記2,6−キシレノールが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする2,6−キシレノールの変色を最小化する2,6−キシレノールのバルク運搬方法を提供する。
【0031】
この実施形態では、2,6−キシレノールのAPHAは100APHA以下に維持される。より好適には、そのAPHAは75以下に維持される。さらにより好適には、そのAPHAは50以下に維持される。さらにより好適には、そのAPHAは25以下に維持される。2,6−キシレノールがその初期色に対して変色しても、APHA変化は好適には100APHA単位未満であり、より好適には50APHA単位未満であり、さらにより好適には25APHA単位未満である。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、
(a)Ultranox(登録商標)626などの選択的酸化防止剤と、融点超に加熱した2,6−キシレノールなどの酸化変色しやすいモノマーとを、本明細書に記載のようなバルク輸送コンテナ内部に載荷するステップと、
(b)約5〜約20psigの非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封し、その後前記バルク輸送コンテナを運搬するステップと、
(c)第1の場所から第2の場所へ運搬する間、前記輸送コンテナ内部の前記非酸化性ガス陽圧を維持するステップと、
(d)前記コンテナを前記モノマーの融点超に加熱し、非酸化性ガス陽圧下で前記モノマーを収容タンクに転送することによって、前記第2の場所における酸化変色しやすいモノマーを除荷するステップと、を備えることを特徴とする第1の場所から第2の場所への酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法を提供する。
【0033】
この実施形態では、第1の場所におけるモノマーのAPHAは100未満であり、輸送コンテナは、この場所において、非酸化性ガス圧約5〜約20psigに加圧される。該輸送コンテナは、内部の非酸化性ガス陽圧が約1〜約20psigで第2の場所に到着し、前記第1の場所および第2の場所における輸送コンテナ内部の酸素(O)濃度は約0.01%〜約10%である。第2の場所に到着時点でのモノマーのAPHAは100APHA未満である。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、
(a)バルク輸送コンテナ内部の非酸化性ガス陽圧を維持するステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して変色しやすい空気感受性モノマーを溶融するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記溶融モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備えることを特徴とする変色しやすい空気感受性モノマーの除荷方法を提供する。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、
(a)2,6−キシレノールなどの酸化変色しやすいモノマーが製品規格を満たし、APHAが100以下、好適には50以下であるであることを確認するステップと、
(b)加圧可能なコンテナ内部の汚染物質の有無を目視検査するステップと、
(c)前記コンテナを窒素でパージするステップと、
(d)前記モノマーを前記コンテナ内に載荷するステップと、
(e)窒素陽圧下、前記コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする、加圧可能なコンテナでの酸化変色しやすい2,6−キシレノールなどのモノマーの輸送方法を提供する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、空気酸化による変色リスクを最小化するバルク輸送コンテナ内への2,6−キシレノールの載荷方法を提供する。この手順には以下のステップが含まれる。
(a)前記コンテナの圧力チェックステップ:載荷前に、前記輸送コンテナを窒素で少なくとも5psigに加圧する。載荷前に前記ISOコンテナをチェックしなければならず、もし加圧されていなければ、そのコンテナは使用すべきではない。
(b)前記モノマーの品質チェックステップ:2,6−キシレノールの載荷開始前に、前記バルク輸送コンテナの容量と前記2,6−キシレノールの製品規格とを確認する。2,6−キシレノールのAPHAは25APHA未満でなければならない。また、2,6−キシレノール載荷ラインもフラッシュする。
(c)コンテナを配置するステップ:このステップはオプションである。Mortenizerゲージ、温度計および高レベル静電容量プローブが装備された空のISOコンテナを運ぶトラックを載荷および重量測定のために配置する。ISOコンテナの外部を検査する。該ISOコンテナを接地する。この時点で、ISOコンテナの温度は、ほぼ大気温度でなければならない。
(d)コンテナ内の酸素含量をチェックするステップ:ISOコンテナ連結管への供給弁が適切な位置にあることを確認する。その後、Mortenizerゲージが装備された窒素パッド組立体を該ISOコンテナに接続する。この時点で、ISOコンテナ圧力を確認する。その後、マンホールを開いてISOコンテナの圧力を0psigに下げる。少なくとも5psigまで加圧されていないISOコンテナは使用すべきではない。減圧の間、ISOコンテナ内の酸素レベルをチェックする。酸素レベルは、典型的には11〜16%でなければならない。
(e)選択的に酸化防止剤を添加するステップ:この時点で、Ultranox626R(登録商標)などの固体添加剤(約40ポンドあるいは500〜1500ppm)をマンホール開口部からコンテナに添加できる。
(f)前記コンテナを窒素でパージするステップ:その後、ISOのコンテナを目視検査して、それが清浄で乾燥しており欠陥がないことを確実なものとする。ガスケットも検査して、それが適切に配置されていることを確実なものとする。その後、マンホールカバーを取付けて密封する。酸素メータ用ポートを表向きにして通気スプールピースを取付ける。大気開放用通気管を取付ける。その後、酸素分析管を通気ピースポートに接続する。前記通気スプールピース−通気管から窒素を用いて、ISOコンテナを50psigにて45分間(最低)パージする。パージ時間は、例えば、コンテナを通過するガス流量を監視することによって調節でき、すなわち、高流量であるほど、該パージプロセスに必要な時間は短縮されるであろう。
(g)コンテナ内の酸素含量をチェックするステップ:その後、ISOコンテナの酸素蒸気空間パーセントをチェックするが、これは0でなければならない。その後、通気ホースをマンホールカバーに接続して通気弁を開く。少しの間、窒素パージを連続して行う。
(h)モノマーを載荷するステップ:その後、2,6−キシレノールをその融点超に加熱して、所望量添加する。載荷中、タンク再循環弁を閉じ、背圧制御弁を約56%に設定する。載荷終了時に、背圧制御弁を無効にする。
(i)コンテナを密閉するステップ:載荷後、ISOコンテナとタンクとの互いの温度差を約23°F(約12℃)以内にしなければならない。次に、載荷アームを窒素で約3分間膨張させる。通気ホース下点を上昇させてタンクローリの通気ホースを排水する。最終の酸素示度は0%でなければならない。アーム組立体上の通気弁と載荷弁とを閉じる。通気ラインの接続を切る。ドームを閉じて固定する。約10psigの窒素パッドを当てる。コンテナの最終圧は約5〜20psigか、あるいは、モノマーの温度低下と凝固に伴うコンテナへの空気漏入を防止するに十分な圧力でなければならない。
(j)載荷されたコンテナのリークをチェックする。マンホールと通気弁のリークをチェックし、次にコンテナの重量を量る。
2,6−キシレノールの輸送コンテナへの載荷
【0037】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法による、2,6−キシレノールの輸送コンテナへの典型的な載荷手順は以下の通りであり、2,6−キシレノールが製品規格を満たしていることの確認から始まる。2,6−キシレノールの純度は、典型的には99.0%超であり、好適には99.8%超であり、水の含有量は最大0.5質量%以下であり、他のフェノールやクレゾールが含まれ得る他の芳香族成分の含有量は0.16質量%以下である。APHA色数は典型的には100以下であり、好適には75以下である。APHA色数はより好適には50以下であり、最も好適には25以下である。
【0038】
次に、使用するタンクローリを検査し、その容量を確認する。該タンクローリを載荷のために配置し接地する。タンクローリの温度計と高レベルプローブの操作性を検査する。その後、所定の場所にしっかり収まるまで、載荷プラットホームをタンクローリまで下げる。その後、ドーム蝶ナットを緩めて、タンクローリの圧力をゆっくり解放する。タンクローリに解放される圧力がなければ、該タンクローリは、陽圧を維持できないため排斥される。タンクローリの圧力解放時にドームを開いて、ドームガスケットと洗浄口を含むタンクローリのすべての出入口とを目視検査する。この時点で、酸化防止剤などの固体添加剤をタンクローリに選択的に添加できる。例えば、Ultranox626(登録商標)(40ポンド)をマンホールからコンテナに導入する。
【0039】
その後、載荷アーム組立体をドーム上の場所内に下げて2本の蝶ナットで固定する。該ハッチシールについてパンクがないかどうか検査し、安全線を取付ける。その後、膨張式のハッチシールを窒素で5psigまで膨張させる。その後、通気アームをハッチシールに接続する。その後、通気弁と載荷弁を開く。その後、コンテナを窒素で十分な時間パージして、タンクローリ内の大気を窒素で置換する。タンクローリ内の酸素含量は、タンクローリに取付け可能な検出器でチェックできる。検出器の酸素示度が「0」であれば、いつでも載荷できる状態になっている。
【0040】
2,6−キシレノールを混合タンク内に載荷し、その後、アーム組立体によりタンクローリ内に載荷する。添加完了後、載荷アームを窒素で少なくとも1〜3分間フラッシュして、残存する2,6−キシレノールをタンクローリ内に収集する。その後、アーム組立体上の通気口と弁を閉じ、膨張式のハッチシールを収縮させて、通気ラインの接続を切る。アームをタンクローリ上に上げて固定し、窒素陽圧下、ドームを閉じて締付け、タンク内部の窒素圧を好適には少なくとも10psigとする。
【0041】
載荷および貯蔵後の2,6−キシレノールの純度は、典型的には98.0%超である。該純度は好適には99.8%超であり、より好適には99%超である。APHA色数は典型的には100以下であり、好適には75以下である。APHA色数はより好適には50以下であり、最も好適には25以下である。
【0042】
空気酸化による変色リスクを最小化するバルク輸送コンテナへの2,6−キシレノールの載荷の別の実施形態は以下のステップを備える。
【0043】
Mortenizerゲージ、温度計および高レベル静電容量プローブが装備された空のISOコンテナを運ぶトラックを、載荷および重量測定のために配置する。ISOコンテナの外部を検査し接地する。この時点で、ISOコンテナの温度は、ほぼ大気温度である。
【0044】
陽圧を維持できることを確実なものとするために、輸送コンテナの圧力をチェックする。載荷前に、圧力が少なくとも5psigになるまで、該輸送コンテナを窒素で加圧する。もし加圧できなければ、その輸送コンテナは使用すべきではない。
【0045】
次に、2,6−キシレノールの製品規格をチェックする。2,6−キシレノールのAPHAは50以下でなければならず、好適には25未満でなければならない。
【0046】
その後、ISOコンテナ連結管への供給弁が適切な位置にあることを確認する。その後、Mortenizerゲージが装備された窒素パッド組立体を該ISOコンテナに接続する。この時点で、ISOコンテナの圧力を確認する。その後、マンホールを開いてISOコンテナの圧力を0psigに下げる。少なくとも5psigまで加圧されていないISOコンテナは使用すべきではない。減圧の間、ISOコンテナ内の酸素レベルをチェックする。酸素レベルは、典型的には11〜16%でなければならない。
【0047】
この時点で、Ultranox626(登録商標)などの固体添加剤(約40ポンド、すなわちモノマーに対して500〜1500ppm)をマンホール開口部からコンテナに選択的に添加できる。
【0048】
その後、通気スプールピース−通気管から窒素を用いて、該コンテナを50psigにて45分間(最低)パージし、コンテナから酸素を追い出す。コンテナを通過するガス流量に応じて、パージ時間は前述のものより短くてもよい。ISOコンテナの酸素蒸気空間パーセントは0でなければならない。その後、通気ホースをマンホールカバーに接続して通気弁を開く。少しの間、窒素パージを連続して行う。調整弁を2〜8psigに設定し、融点超の温度の、あるいは典型的には約50℃〜85℃の温度の2,6−キシレノールを添加する。載荷中、タンク再循環弁を閉じ、背圧制御弁を約56%に設定する。載荷終了時に、背圧制御弁を無効にする。
【0049】
載荷完了後、コンテナを密封する。コンテナとタンクとの互いの温度差を約23°F(約12℃)以内にしなければならない。次に、載荷アームを窒素で約3分間膨張させる。通気ホース下点を上昇させてタンクローリの通気ラインを排水する。最終の酸素示度は0%でなければならない。アーム組立体上の通気弁と載荷弁とを閉じる。通気ラインの接続を切る。ドームを閉じて固定する。約10psigの窒素パッドを当てる。調整圧によって過加圧を防止する。
【0050】
コンテナの最終圧は5〜20psigでなければならず、好適には約8〜15psigでなければならず、より好適には約10psigでなければならない。該圧力は、モノマーの温度が低下し凝固しても、タンク内に十分な窒素陽圧が存在して空気の漏入を防止するものでなければならない。
【0051】
マンホールと通気弁のリークをチェックし、次に載荷されたコンテナの重量を量る。
【0052】
載荷および貯蔵後の2,6−キシレノールの純度は、典型的には98.0%超である。該純度は好適には99.8%超であり、より好適には99%超である。APHA色数は典型的には100以下であり、好適には75以下である。APHA色数はより好適には50以下であり、最も好適には25以下である。
(輸送コンテナからの2,6−キシレノールの除荷)
【0053】
別の実施形態は、2,6−キシレノールの輸送コンテナから収納タンクへの除荷手順を提供する。
【0054】
2,6−キシレノールが載荷され、温度計と圧力計測装置とが装備された輸送コンテナに、外部蒸気チャンネルを用いた蒸気ラインを接続する。蒸気圧約0.2Mpa(29psig)で、タンクローリを蒸気加熱する。加熱中、コンテナ上の蒸気チャンネル出口は開いたままにする。2,6−キシレノールの溶融に十分な温度、すなわち約60℃〜90℃にコンテナを加熱する。
【0055】
約30時間後に加熱を停止する。コンテナを数時間放置する。この時点で、温度降下が2時間で2℃未満であれば、コンテナ内の2,6−キシレノールは完全に溶融しているはずである。温度降下が2時間で2℃超であれば、コンテナ内の2,6−キシレノールは一部凝固している可能性があり、蒸気加熱を再開する。
【0056】
その後、収納タンクのフランジをコンテナの底部出口に接続する。収納タンクの窒素ラインをコンテナの蒸気戻りラインに接続する。
【0057】
次に、2,6−キシレノール約200kgを収納タンクに流入させ、これを収納タンク出口から取出す。2,6−キシレノールのこの200〜300gサンプルについてAPHA数を評価する。該2,6−キシレノールの純度は典型的には98.0%超である。この純度は好適には99.8%超であり、より好適には99%である。APHA色数は典型的には100以下であり、好適には75以下である。APHA色数はより好適には50以下であり、さらにより好適には25以下である。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載したような変色しやすいモノマーの運搬に適しており、加圧内部と選択的な圧力ゲージと酸素検出器とを備えたコンテナを提供する。該コンテナの内部は、本明細書に記載のように、窒素あるいは本明細書に記載のその他の非酸化性ガスで約5〜約20psigに加圧され、酸化変色しやすいモノマーと選択的な酸化防止剤とをさらに含む。該モノマーは典型的には2,6−キシレノールである。コンテナにはさらに選択的にカバーが付けられて、コンテナの内部コンパートメントが間隙によってコンテナの外部壁から分離されており、これによって該コンテナ内には容器が形成されている。コンテナのジャケット部には入口バルブおよび出口バルブが装備されており、例えば、蒸気または温水などによる加熱、あるいは冷水または塩水などによる冷却が容易に行える。
【0059】
以下の非制限的実施例を用いて本発明を例証する。
【実施例】
【0060】
実施例1:シミュレートされた2,6−キシレノールの色安定性
【0061】
2,6−キシレノールは大気温度では固体である。バルク載荷プロセスを促進するために、十分に自由流れ液体となるまで融点43〜45℃超に加熱し、バルクコンテナへの転送を確実に容易なものとする。酸素を含む大気中での輸送コンテナへの転送の間、典型的には無色の2,6−キシレノールは酸化的二量化により変色して、共に黄色の2,2,6,6−テトラメチルビスフェノールと2,2,6,6−テトラメチルジキノンとを生成しやすい。
【0062】
シミュレートされたバルク転送/運搬条件下、APHAカラースケールを用いて、2,6−キシレノールの色安定性を、APHA数が既知のストック標準溶液と比較して分析した。
ストック標準の調製
【0063】
蒸留水100mLと濃塩酸1mLを含む清浄なプラスチックボトルに、塩化白金酸カリウム(1.246g)と塩化コバルト(1.0g)を添加した。該混合物を固体が溶解するまで攪拌した。その溶液を1Lのフラスコに移して1Lの蒸留水で希釈し、ストック標準を得た。
ストック標準溶液の調製
【0064】
蒸留水(50mL)を清浄な50mLネスラー管に添加した。この管を「APHA0」(ブランク)とした。
【0065】
ストック標準(1mL)を50mLネスラー管に添加し、蒸留水で50mLに希釈した。この管を「APHA10」とした。
【0066】
ストック標準2mL、5mL、10mL,20mL,30mLおよび40mLについてこのプロセスを繰り返し、それぞれ「20APHA」、「50APHA」、「100APHA」、「200APHA」、「300APHA」および「400APHA」としたストック標準溶液を含む、50mL希釈時の6つの添加ネスラー管を得た。
【0067】
これらのストック標準溶液は次第に黄色を帯びており、「0APHA」は無色、「400APHA」は最も強い黄色を示す。
(サンプル分析)
【0068】
2,6−キシレノールのサンプルを開口したフラスコに入れ80℃に加熱した。これらのサンプルの色安定性を、サンプルとストック標準溶液の表面を見下ろしながら目視比較することによりAPHAカラースケールで測定した。色が2つの標準カラーの間にある場合は、小さいAPHA色数を割当てた。結果を表1に示すが、この結果は、空気に暴露された開口フラスコでの加熱に伴って、サンプルのAPHA色数が増加する(すなわち、黄色がより強くなる)ことを示している。
【表1】
実施例2:80℃の窒素下および選択的に酸化防止剤の存在下における2,6−キシレノールの色安定性
【0069】
以下の変更を除いて実施例1の手順を繰り返した。
a)一部の2,6−キシレノールサンプルを酸化防止剤Ultranox626(登録商標)で処理した。
b)一部の2,6−キシレノールサンプルを、溶融モノマー表面の真上に配置したブリードチューブを用いて窒素封入下に置いた(すなわち、窒素で「リンス」または「フラッシュ」した)。
c)2,6−キシレノールの液化サンプルの一部を窒素でバブリングした。
【0070】
結果を表2〜表4に要約する。表2は、酸化防止剤Ultranox626(登録商標)を添加したサンプルの色安定性を示す。表2は、Ultranox626(登録商標)で処理されたサンプルのAPHA色数は、該酸化防止剤を含まないサンプルに比べて小さい(黄色度が低い)ことを示している。これらの結果は、Ultranox626(登録商標)の存在下で加熱した2,6−キシレノールサンプルは、該酸化防止剤を含まないサンプルに比べて、色安定性を良好に維持することを示している。
【表2】
【0071】
表3および表4では、空気中で80℃に加熱した2,6−キシレノールサンプルの色安定性と、窒素でフラッシュし、さらに添加剤としてUltranox626(登録商標)を含むサンプルのそれとを比較している。各場合において、2,6−キシレノールはフラスコに入れ、80℃に加熱して溶融した。窒素タンクに取付けられたブリードチューブを用いて窒素をフラスコ内に流し、溶融した2,6−キシレノールの表面の真上に、窒素封入を形成した。窒素フラッシュだけのものと、Ultranox626(登録商標)を併用したものとについて結果を記録した。これらの結果は、窒素フラッシュだけを用いたもの、あるいはUltranox626(登録商標)と併用したもののAPHA変化は、空気中でのサンプルに比べて小さいことを示している。表3および表4は、窒素フラッシュだけのものが2,6−キシレノールの変色を最小化するであろうことを示している。
【表3】
【表4】
【0072】
表5は、選択的にUltranox626(登録商標)の存在下、2,6−キシレノールの色安定性に対する窒素バブリングと窒素リンスまたはフラッシングの効果を比較したものである。2,6−キシレノールはフラスコに添加し、80℃に加熱して溶融させた。窒素は、ブリードチューブを用いた実験の間、(リンスまたはフラッシュした)2,6−キシレノール上にパージしたか、あるいは溶融2,6−キシレノールを通してバブリングした。窒素バブリングだけを用いたサンプルと、Ultranox626を併用したサンプルについて結果を記録した。
【0073】
表5の結果は一般的に、窒素フラッシュの代わりに窒素バブリングを用いれば、APHA色数は小さいことを示している。
【0074】
表5の試験1は、溶融した2,6−キシレノールを通した窒素バブリングによって、窒素バブリングせずに酸化防止剤を添加したものより色安定性が高いことを示している。
【0075】
表5の試験2,試験3および試験4は、モノマーの変色を最小化する点において、窒素バブリングと同じようには作用しないことを示している。
【表5】
実施例3:2,6−キシレノールを載荷したISOコンテナの圧力と温度追跡
【0076】
窒素陽圧下、2,6−キシレノールを載荷したISO輸送コンテナについて、2,6−キシレノール載荷プロセス完了後の圧力と温度変化を分析した。結果を表6に要約する。これらの結果は、2,6−キシレノールの温度が低下し凝固するに伴って、圧力が低下することを示している。
【表6】
【0077】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
実施形態1:(a)酸化変色しやすいモノマーをバルク輸送コンテナに載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷されたバルク輸送コンテナを密封するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーのバルク運搬方法。
実施形態2:前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする実施形態1に記載の方法。
実施形態3:前記バルク輸送コンテナは、酸化変色しやすいモノマーの複合一貫輸送用に設計されたコンテナであることを特徴とする実施形態1または実施形態2に記載の方法。
実施形態4:前記バルク輸送コンテナには圧力モニタ装置が装備されていることを特徴とする実施形態1乃至実施形態3に記載の方法。
実施形態5:ステップ(a)の前記非酸化性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンおよびこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする実施形態1乃至実施形態4に記載の方法。
実施形態6:ステップ(a)の前記非酸化性ガスは、窒素、アルゴンまたはこれらの混合物であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態5に記載の方法。
実施形態7:前記モノマー載荷前に、前記バルク輸送コンテナを非酸化性ガスでパージするステップをさらに備えることを特徴とする実施形態1乃至実施形態6に記載の方法。
実施形態8:前記モノマー載荷前の、前記コンテナ内部の酸素濃度は約0.01%〜10%であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態7に記載の方法。
実施形態9:前記輸送コンテナ内の前記非酸化性ガス陽圧は、載荷中維持されることを特徴とする実施形態1乃至実施形態8に記載の方法。
実施形態10:前記バルク輸送コンテナに酸化防止剤が添加されることを特徴とする実施形態1乃至実施形態9に記載の方法。
実施形態11:前記酸化防止剤は有機亜リン酸エステル酸化防止剤を含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態10に記載の方法。
実施形態12:前記酸化防止剤はビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト酸化防止剤を含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態11に記載の方法。
実施形態13:前記モノマーは、変色しやすい前記モノマーの融点超の温度で前記バルク輸送コンテナに載荷されることを特徴とする実施形態1乃至実施形態12に記載の方法。
実施形態14:前記温度は約50〜100℃であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態13に記載の方法。
実施形態15:前記温度は約60〜90℃であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態14に記載の方法。
実施形態16:密封前に、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを前記非酸化性ガスで加圧して、約1〜約20psigの前記非酸化性ガス陽圧を生成することを特徴とする実施形態1乃至実施形態15に記載の方法。
実施形態17:有色の分解生成物の形成を最小化することを特徴とする実施形態1乃至実施形態16に記載の方法。
実施形態18:前記モノマーの変色を制限することを特徴とする実施形態1乃至実施形態17に記載の方法。
実施形態19:前記モノマーの初期APHAは75であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態18に記載の方法。
実施形態20:前記モノマーの初期APHAは50であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態18に記載の方法。
実施形態21:前記モノマーの初期APHAは25であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態18に記載の方法。
実施形態22:前記コンテナを載荷後のモノマーの初期APHPと除荷後の前記モノマーのそれとを比較したAPHA変化は100未満であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態21に記載の方法。
実施形態23:(a)バルク輸送コンテナ内部を不活性ガス陽圧にするステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して、変色しやすい空気感受性モノマーの流動性を維持するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備えることを特徴とする変色しやすい空気感受性モノマーのバルク輸送コンテナからの除荷方法。
実施形態24:前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする実施形態23に記載の方法。
実施形態25:前記2,6−キシレノールは、その融点超の温度で、前記バルク輸送コンテナから前記収容コンテナに除荷されることを特徴とする実施形態23または実施形態24に記載の方法。
実施形態26:前記2,6−キシレノールは、約50〜90℃の温度で除荷されることを特徴とする実施形態23乃至実施形態25に記載の方法。
実施形態27:前記輸送コンテナ内の前記非酸化性ガス陽圧は、載荷中維持されることを特徴とする実施形態23乃至実施形態26に記載の方法。
実施形態28:非酸化性ガスで加圧され、酸化変色しやすいモノマーと選択的な酸化防止剤とを含む内部を有することを特徴とするコンテナ。
実施形態29:前記非酸化性ガスは、アルゴン、ネオン、窒素およびこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする実施形態28に記載のコンテナ。
実施形態30:前記不活性ガスは窒素であることを特徴とする実施形態28または実施形態29に記載のコンテナ。
実施形態31:前記内部の前記陽圧は5〜20psigであることを特徴とする実施形態28乃至実施形態30に記載のコンテナ。
実施形態32:圧力ゲージと酸素ガス(O)検出器とをさらに備えることを特徴とする実施形態28乃至実施形態31に記載のコンテナ。
実施形態33:圧力ゲージと酸素ガス(O)検出器とをさらに備えることを特徴とする実施形態28乃至実施形態32に記載のコンテナ。
実施形態34:前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする実施形態28乃至実施形態33に記載のコンテナ。
実施形態35:(a)酸化変色しやすいモノマーをバルク輸送コンテナ内部に載荷するステップと、
(b)非酸化性ガス陽圧下、前記モノマーが載荷された前記バルク輸送コンテナを密封した後、前記バルク輸送コンテナを運搬するステップと、
(c)第1の場所から第2の場所への前記バルク輸送コンテナ運搬の間、前記バルク輸送コンテナの内部コンパートメントにおける前記非酸化性ガス陽圧を維持するステップと、
(d)前記第2の場所において、前記非酸化性ガス陽圧下、酸化変色しやすい前記モノマーを収容タンクに除荷するステップと、を備えることを特徴とする酸化変色しやすいモノマーの第1の場所から第2の場所へのバルク運搬方法。
実施形態36:前記モノマーは2,6−キシレノールを含むことを特徴とする実施形態35に記載の方法。
実施形態37:ステップ(a)およびステップ(d)の前に、前記モノマーをその融点超に加熱するステップをさらに備えることを特徴とする実施形態35または実施形態36に記載の方法。
実施形態38:前記輸送コンテナ内の前記非酸化性ガス陽圧は、載荷中維持されることを特徴とする実施形態35乃至実施形態37に記載の方法。
実施形態39:前記非酸化性ガスは、選択的にアルゴンと混合された窒素であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態38に記載の方法。
実施形態40:前記選択的酸化防止剤は有機リン酸エステル酸化防止剤であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態39に記載の方法。
実施形態41:前記選択的酸化防止剤はUltranox626(登録商標)であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態40に記載の方法。
実施形態42:前記第1の場所における前記モノマーのAPHAは100未満であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態41に記載の方法。
実施形態43:前記輸送コンテナは、前記第1の場所において、前記非酸化性ガス約5〜約20psigに加圧されることを特徴とする実施形態35乃至実施形態42に記載の方法。
実施形態44:前記輸送コンテナは、内部陽圧が約0〜約20psigで前記第2の場所に到着することを特徴とする実施形態35乃至実施形態43に記載の方法。
実施形態45:前記第1および第2の場所における前記輸送コンテナ内の酸素(O)濃度は約0.01%〜約10%であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態44に記載の方法。
実施形態46:前記第1の場所における前記モノマーのAPHAは100未満であり、前記第2の場所におけるそれは100APHA未満であることを特徴とする実施形態35乃至実施形態45に記載の方法。
実施形態47:(a)バルク輸送コンテナ内部を不活性ガス陽圧に維持するステップと、
(b)前記バルク輸送コンテナの温度を調節して、変色しやすい空気感受性モノマーを溶融するステップと、
(c)前記非酸化性ガス陽圧下、前記溶融モノマーを収容コンテナに転送するステップと、を備えることを特徴とする変色しやすい空気感受性のモノマーのバルク輸送コンテナからの除荷方法。
【0078】
明確化と理解の目的で、例証と実施例を用いて、前述の発明を少し詳細に説明した。本発明を種々の具体的な実施形態を参照して説明した。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内で、種々の変形と修正が可能であることは理解されるべきである。当業者にとっては、添付の請求項の範囲内で変更と修正が可能であることは明らかであろう。従って、上記の説明は例示であり、限定的ではないように意図されていることは理解されるべきである。従って、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきでなく、以下の請求項と、こうした請求項が権利化される範囲と均等な全範囲とを参照して決定されるべきである。本出願で引用した特許、特許出願および出版物はすべて、そのそれぞれが個々に記載されている場合にはそれと同等な程度の目的のために、そのすべてが参照により本明細書に援用される。