特許第5753967号(P5753967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753967
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】カッターナイフ
(51)【国際特許分類】
   B26B 1/08 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   B26B1/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-215357(P2010-215357)
(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公開番号】特開2012-65999(P2012-65999A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 太一
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229076(JP,A)
【文献】 特開平11−267374(JP,A)
【文献】 特開2008−229077(JP,A)
【文献】 特開平05−305187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 1/00−11/00,23/00−29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる内側空間を有するとともに当該内側空間に連なるスリットが上端部の前後方向に設けられたケースと、このケース内に収容されるとともに、当該ケースの前端から出没可能に設けられたカッター刃と、このカッター刃を保持して前記ケース内で前後方向に移動可能に設けられたスライダと、このスライダに装着されるとともに前記ケース側に係脱可能に設けられた前部屈曲部を有する板ばねとを備え、
前記スライダは、前記ケース内に位置するスライダ本体と、このスライダ本体に対して前後方向に相対移動可能に組み合わされるとともに、前記スリットを通じて前記ケースの上部側に位置する操作部材とを含むカッターナイフにおいて、
前記スライダ本体と操作部材との間に当該操作部材の初期位置保持機構が設けられ、この初期位置保持機構は、前記板ばねに設けられた位置規制部を構成する屈曲部と、前記操作部材に設けられるとともに前記屈曲部脱落不能に受容する穴若しくは凹部とを含み、
前記屈曲部が前記穴若しくは凹部に受容された状態で操作部材がスライダ本体に対して初期位置に保持される一方、前記屈曲部穴若しくは凹部内で変位させることで前記スライダ本体と操作部材との前記相対移動が許容されることを特徴とするカッターナイフ。
【請求項2】
前記位置規制部は、略L字状の屈曲部により構成されていることを特徴とする請求項1記載のカッターナイフ。
【請求項3】
前記穴若しくは凹部は、前記屈曲部の形状に略対応する傾斜面を備えていることを特徴とする請求項2記載のカッターナイフ。
【請求項4】
前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面に沿って配置された単一の部材により構成されていることを特徴とする請求項1ないしの何れかに記載のカッターナイフ。
【請求項5】
前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面に沿って配置された単一の部材により構成され、前記操作部材は、前記スライダ本体に組み合わされたときに当該スライダ本体の他方の側面に相対する相対面を備え、
前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面から他方の側面側に曲げられたシフト領域を備え、
前記シフト領域の端部に前記位置規制部が形成されていることを特徴とする請求項1な
いし4の何れかに記載のカッターナイフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッターナイフに係り、更に詳しくは、カッター刃を出没操作させるスライダの操作部材をスライダ本体に対して初期位置に保持する機構を備えたカッターナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のカッターナイフは、前後方向に延びる略C字状のケースと、このケース内で前後方向移動可能に設けられたスライダと、当該スライダに後端側が保持されるカッター刃とを備えて構成されている。スライダとケースとの間にはロック機構が介装されており、このロック機構により、カッター刃をケースの前端から段階的に突出できる一方、カッター刃を一定の位置に保つことが可能となっている。
【0003】
このタイプのカッターナイフは、前記スライダがケースの側面側に位置しており、右手利きの人が利用する場合には、右手親指にて容易に操作することができるが、左手利きの人にとっては使い勝手が非常に悪いものとなる。
【0004】
そこで、本出願人は、例えば、特許文献1に記載されているように、ケースの上端部に操作部材を配置して利き手に影響を与えない、いわゆるユニバーサルタイプのカッターナイフを提案した。このカッターナイフは、ケース内に位置するスライダ本体及び当該スライダ本体に前後方向移動可能に組み合わされる操作部材を含むスライダと、スライダ本体とケースとの間に設けられた板ばねをケース側に係脱可能に設けることで、スライダのロック及びロック解除を行うロック機構とを備え、前記板ばねと操作部材とを部分的に係り合わせることで当該操作部材がスライダ本体に対して初期位置に保たれる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−229076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたカッターナイフは、板ばねの後端側に屈曲部を設ける一方、操作部材側に突状部を設け、屈曲部間に突状部を位置させることで操作部材の初期位置が保たれるように構成されており、操作部材に操作力を付与したときに、屈曲部の屈曲角度が拡大する方向に変形することでスライダ本体と操作部材との相対移動を一定量許容してスライダの前後移動が行われる構成となっている。
しかしながら、特許文献1に記載されたカッターナイフにあっては、板ばねの後端側に設けられた屈曲部が、その屈曲角度を変化することで前記相対移動が許容されるものであった。そのため、初期位置にある操作部材がスライダ本体に対して前後にフリーな状態となる、いわゆる「遊び」があり、操作力を付与したときに応答性や、操作力を解除したときの操作部材の初期位置復帰動作の円滑性を改善しながらロック機構の確実性を向上させる余地があることが判明した。
【0007】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、スライダ本体と操作部材とを前後方向に相対移動可能に組み合わせても、操作部材が常に初期位置を保持することができ、操作部材に操作力を付与したときに、応答性を良好に保ってスライダに操作力を伝達する一方、操作力を解除したときに、スライダ本体に対する操作部材の初期位置復帰を迅速に行うことのできるカッターナイフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、前後方向に延びる内側空間を有するとともに当該内側空間に連なるスリットが上端部の前後方向に設けられたケースと、このケース内に収容されるとともに、当該ケースの前端から出没可能に設けられたカッター刃と、このカッター刃を保持して前記ケース内で前後方向に移動可能に設けられたスライダと、このスライダに装着されるとともに前記ケース側に係脱可能に設けられた前部屈曲部を有する板ばねとを備え、
前記スライダは、前記ケース内に位置するスライダ本体と、このスライダ本体に対して前後方向に相対移動可能に組み合わされるとともに、前記スリットを通じて前記ケースの上部側に位置する操作部材とを含むカッターナイフにおいて、
前記スライダ本体と操作部材との間に当該操作部材の初期位置保持機構が設けられ、この初期位置保持機構は、前記板ばねに設けられた位置規制部を構成する屈曲部と、前記操作部材に設けられるとともに前記屈曲部脱落不能に受容する穴若しくは凹部とを含み、
前記屈曲部が前記穴若しくは凹部に受容された状態で操作部材がスライダ本体に対して初期位置に保持される一方、前記屈曲部穴若しくは凹部内で変位させることで前記スライダ本体と操作部材との前記相対移動が許容される、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記位置規制部は、略L字状の屈曲部により構成されている
【0011】
更に、前記穴は、前記屈曲部の変位動作を案内する傾斜面を備えた構成を採用することが好ましい。
【0012】
また、前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面に沿って配置された単一の部材により構成されている。
【0013】
更に、前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面に沿って配置された単一の部材により構成され、前記操作部材は、前記スライダ本体に組み合わされたときに当該スライダ本体の他方の側面に沿う相対面を備え、
前記板ばねは、前記スライダ本体の一方の側面から他方の側面側に位置するシフト領域を備え、
前記シフト領域に前記位置規制部が形成される、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、板ばねに設けられた位置規制部と、操作部材に設けられた受容部とにより初期位置保持機構が構成されているため、位置規制部が受容部に収まった状態で操作部材の初期位置が一定位置で安定して保持される。この一方、操作部材に前後方向に向かう操作力を付与したときに、位置規制部は、それ自体の形状を保有したまま受容部内で変位するだけで操作部材の操作力をスライダ本体に及ぼすことができる。従って、操作部材とスライダ本体とが前後に相対移動可能であっても、実質的に両者間に「遊び」がない状態に保たれ、操作部材に操作力を付与したときに、これに応答してスライダ本体に操作力が及ぶ一方、操作力の付与を解除したときに、スライダ本体に対して操作部材が直ちに初期位置に復帰する動作を行うことが可能となる。しかも、位置規制部は、受容部内での変位であるため、動作不良を生ずるような不都合も解消できる。
また、位置規制部を屈曲部により構成し、受容部が屈曲部を脱落不能且に受容する形状に設けられているので、初期位置復帰機構を極めて簡単に構成することができる。
更に、屈曲部を略L字状とし、受容部を穴若しくは凹部により構成した構成により、屈曲部が穴内で前後方向に容易に移動でき、且つ、屈曲部が穴に対して出没する方向への移動もスムースに行うことができる。
特に、穴に傾斜面を設けた場合、前記移動動作はより一層スムースに行うことができる。
また、板ばねを単一部材により構成することで、部品点数も少なくでき、組立作業の簡易化と、コスト負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るカッターナイフの概略斜視図。
図2】前記カッターナイフの分解斜視図。
図3】ケースにガイド部材を収容した状態を示す平面図。
図4】(A)は図3の縦断面図。(B)は図4(A)のA−A線に沿う拡大断面図。
図5】(A)はガイド部材の平面図、(B)はガイド部材の中央断面図。
図6】スライダにカッター刃を保持させた状態を示す概略斜視図。
図7】(A)はスライダ本体の正面図、(B)は同背面図、(C)は同平面図、(D)は同底面図。
図8】(A)は図7(A)のB−B線断面図、(B)は同C−C線断面図、(C)は同D−D線断面図、(D)は同E−E線断面図。
図9】(A)は押さえ部材の正面図、(B)は同平面図、(C)は同底面図、(D)は同背面図、(E)は図9(D)のF−F線断面図、の図8のB−B線に沿う拡大断面図。
図10】(A)は操作部材の正面図、(B)は同背面図、(C)は同平面図。
図11】(A)は操作部材の左側面図、(B)は図10(B)のG−G線断面図、(C)は同H−H線拡大断面図。
図12】(A)は板ばねの平面図、(B)は同正面図、(C)は図12(B)のI−I線断面図、(D)は板ばねの背面図。
図13】スライダ本体にカッター刃を装着する作用説明図。
図14】押さえ部材でカッター刃を押さえ付けた状態を示す作用説明図。
図15】スライダ本体に板ばね部材を装着した状態を示す作用説明図。
図16】(A)〜(D)は初期位置保持機構の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において、「前」とは、カッター刃の先端が位置する側について用いられる一方、「後」とは、その反対側について用いられる。
【0017】
図1及び図2において、カッターナイフ10は、前後方向に延びる内側空間S(図4(B)参照)を有するケース12と、このケース12内に収容されたガイド部材13と、当該ガイド部材13に沿って前後方向に移動可能に設けられてケース12の前端から出没可能となるカッター刃14と、このカッター刃14を保持するとともに当該カッター刃14と共にガイド部材13に沿って移動可能に設けられたスライダ15と、当該スライダ15とケース12との間に設けられるとともに、前記ケース12側に係脱可能に設けられてスライダ15のロック及びその解除を許容してロック機構としての作用を奏する板ばね17とを備えて構成されている。
【0018】
前記ケース12は前後方向に延びて手の平に握ることのできる細長い形状とされている。このケース12は、前後方向に延びる底壁20と、当該底壁20の短寸幅方向に連なる一対の側壁面21と、これら側壁面21の上部間に連なる頂壁22とを含む。ケース12の前端及び後端は開放形状とされ、前端にはキャップ23が、後端には尾栓25が着脱自在に取り付けられる。頂壁22には、図3及び図4(B)に示されるように、一方の側壁面21側に幾分シフトした位置に、前記内側空間Sに連なるスリット27が後端から前端部手前位置まで形成されている。また、キャップ23の前端面には、前記ガイド部材13の先端部領域を突出させるための縦穴28が形成されている。前記側壁面21及びキャップ23の側面間に跨る領域には、前後方向に延びる窓穴29が形成されており、当該窓穴29を通じて内部に位置するカッター刃14の残存長さを視認できるようになっている。本実施形態におけるケース12は、適宜な樹脂材料を用いて一体成形されているが、厚み方向(前記側壁面21の面に直交する方向)の中間位置を合わせ面とする二分割型として成形したり、キャップ23をケース12と一体的に形成することもできる。
【0019】
図4に示されるように、前記底壁20の後端部上面側は一段低い後部底壁20Aとされており、当該後部底壁20Aの領域内における前記側壁面21の相対面には、前後方向に延びる溝部30が形成され、当該溝部30に前記尾栓25に形成された突部31が嵌合可能となっている。尾栓25は、後端が湾曲した閉塞面となっており、上端面は、前記頂壁22に形成されたスリット27に連なるスリット32が形成されている。
【0020】
前記カッター刃14は、先端及び後端が刃縁の延出方向に対して傾斜して平面視略平行四辺形の板状をなし、後部に穴14Aを備えた公知のカッター刃と同一の構造のものが用いられている。
【0021】
前記ガイド部材13は、図5に示されるように、前記ケース12の底壁20及び側壁面21に略平行に相対するベース面34、及び、当該ベース面34の短寸幅方向両側に連なって略鉛直上方に向けられるとともに、前記カッター刃14と略平行な面を形成する一対の側壁面35とを含む。側壁面35の前端側は、相互離間幅が次第に狭くなる傾斜面部35Aと、当該傾斜面部35Aの前端に連なってカッター刃14の通過を鉛直面内で略直線上に案内する隙間に設定された平行面部35Bとされ、当該平行面部35Bが前記ケース12の前壁23に形成された縦穴28を貫通して前方に突出するようになっている。
【0022】
前記一対の側壁面35における一方の側壁面35の上端部には、前後方向に沿って定ピッチで配置された切欠部37が形成され、更に前方位置には、後方上向きに突出する舌片部38が連設されている。この舌片部38は、ガイド部材13をケース12内の後端から挿入した際の挿入限を決定するようになっている。なお、側壁面35の前部領域には、前後方向に延びて前記ケース12の窓穴29にオーバーラップする内側窓穴39が形成されている。
【0023】
前記スライダ15は、前記カッター刃14を着脱可能に保持するように構成されている。このスライダ15は、図2に示されるように、カッター刃14の後部に形成された穴14A内に収まる突部41を備えたスライダ本体42と、当該スライダ本体42と相互に作用してカッター刃14の後端部を挟み込むように設けられた押さえ部材43と、前記スライダ本体42に対して前後方向に相対移動可能に組み合わされる操作部材44とを含む。
【0024】
前記スライダ本体42は、カッター刃14の面と略平行に位置して前後方向に延びる平面視略板状をなす外形に設けられている。このスライダ本体42は、図6ないし図8に示されるように、カッター刃14の後端部における一方の面に沿って位置するとともに前記突部41が一体に設けられた保持面部46と、この保持面部46の後部に連なって操作部材44の取り付け領域を形成する取付部47とからなる。保持面部46には、その内面側に傾斜隆起部46Aが形成されている一方、上下両側には上部水平部46B及び下部水平部46C、及び上部水平部46の後端に連なる後端46Dが形成されている。傾斜隆起部46Aはカッター刃14の後端縁形状に対応して当該カッター刃14の後端位置を規制する一方、上部水平部46Bは、カッター刃14の後端上縁に係り合って当該カッター刃14を仮保持したときの回転規制部として作用するようになっている。ここで、傾斜隆起部46Aより後方位置の上下水平部46B、46Cには前記押さえ部材43を揺動自在に支持する軸受部48が形成されている。
【0025】
前記取付部47は、保持面部46の後部に連なる上面部49及び下面部50と、これら上面部49及び下面部50間の正面部51とを含む。上面部49には、その中央部の前後方向にばね装着部52が上向きに突設されているとともに後端部に立ち上がり部53が設けられている。この一方、正面部50の面内には、前後方向二箇所に前後方向に向けられたスロット穴55が設けられている。ばね装着部52は、図7(A)中手前側となる内側の面内中央部に凹陥部56が形成されているとともに、当該凹陥部56内に突起58が形成され、また、凹陥部56よりも右側(後方)位置には、前後方向に延びる爪片状の凸部59が形成されている。正面部51の図7(A)中手前側面の下部には板厚を部分的に薄くする湾曲凹部51Aが形成されている。
【0026】
前記押さえ部材43は、図6及び図9に示されるように、前記保持面部46及び取付部47に跨って位置する本体面63と、この本体面63の図9(A)中右側に細長く連なる押圧操作面64とを含む。本体面63の図9(A)中左端側は、スライダ本体42の突部41の略半分を受け入れる切欠部63Bが形成された押さえ面63Aとされ、本体面63の中央部には、図9(D)に示されるように、スライダ本体42に設けられた軸受部48に嵌合する上下一対の突軸65が設けられているとともに、その右側には、カッター刃14の後端傾斜縁に対応する隆起傾斜部66が形成されている。また、前記押圧操作面64は、本体面63の面に対して傾斜した方向に延びているとともに、先端(後端)に屈曲端部64Aを備えた形状とされている。屈曲端部64Aは、スライダ本体42の取付部47に当接し、押圧操作面64は、取付部47に設けられた湾曲凹部51Aに相対する位置で当該湾曲凹部51Aとの間に押圧代となる隙間を形成するようになっている。
前記押さえ部材43は、押圧操作面64の外面側を指先で押圧することにより、本体面63が突軸65の軸線を回転中心として揺動可能となっている。従って、本体面63の前端側すなわち切欠部63Aが形成されている押さえ面63A側がスライダ本体42の保持面部46に対して離間接近する方向に変位することで、カッター刃14の着脱が可能となる。
【0027】
前記操作部材44は、図6図10及び図11に示されるように、前記ケース12の頂壁22に沿って前後方向に延びる操作用平面72と、この操作用平面72の短寸幅方向一端側の上面に連設されるとともに、ケース12のスリット27を貫通する状態に位置する連結片73と、当該連結片73を介して略片持ち姿勢で連設された指当て部74と、前記操作用平面72の短寸幅方向他端側に連設されて前記スライダ本体42の取付部47に相対する相対面としての垂下面76と、この垂下面76の面内における前後二箇所に設けられるとともに、前記スライダ本体42のスロット穴55内に脱落不能に挿入される挿入片部77とを含む。前記垂下面76の後端は、図10(C)に示されるように、操作用平面72の後端よりも後方に位置する長さを有し、その後端に後端壁部78が設けられている。また、挿入片部77の前後方向長さは、スロット穴55の長さよりも小さい長さとされており、これにより、操作部材44がスライダ本体42に対して前後方向に沿って相対移動可能に組み合わせ可能となっている。ここで、操作片部77の長さとスロット穴55の長さとの差は、操作部材44をスライダ本体42に組み合わせて操作部材44が初期位置に保たれたときの、当該操作部材44の先端とスライダ本体42の上部水平部46Bに連なる後端46Dとの間の距離に略等しくなっている。
前記垂下面76において、前記挿入片部77間の上方位置には、前後方向に延びるスロット部80が形成され、当該スロット部80にスライダ本体42の突部59が前後方向移動可能に嵌合可能となっている。また、このスロット部80よりも後方位置には受容部としての穴81が形成され、当該穴81に、板ばね17の後述する屈曲部が受容可能となっている。この穴81は、図11(B)に示されるように、内面側(同図中上面側)の開口幅が大きく外面側(同図中下面側)の開口幅が狭くなる状態で相対する一対の傾斜面81A、81Bに設けられている。また、垂下面76の前端部内面側には、前後方向に二箇所に設けられた前部突起82A及び後部突起82Bが形成されている。
【0028】
前記板ばね17は、図2及び図12に示されるように、前後方向に延びるばね本体83と、このばね本体83の前端側(図12(A)中左端側)に設けられた前部屈曲部85と、後端側に設けられた位置規制部としての屈曲部86と、ばね本体83の中央部に設けられた折り曲げ片部87とを含む。ばね本体83は、スライダ本体42に取り付けられたときに、略鉛直面内に位置するようになっている。このばね本体83は、折り曲げ片部87が設けられている位置よりも後方が、スライダ15を組み立てたときに、操作部材44の垂下面76側に向けられる方向に屈曲するシフト領域79とされている。
前部屈曲部85は、折り曲げ長さの長い中央屈曲部85Aと、その前後両側に位置する一対の補強屈曲部85Bとを含む。また、位置規制部として作用する屈曲部86は、平面視で略L字状に折り曲げて形成され、屈曲部86の中央部となる屈曲縁86Aが前記垂下面76に形成された穴81側に位置するように形成されている。ここにおいて、屈曲部86と、前記穴81とにより、操作部材44の初期位置保持機構が構成される。
また、前記折り曲げ片部87は、図12(C)に示されるように、平面部87Aと、当該平面部87Aの先端から下方に向けられた側面部87Bとからなり、側面部87Bの面内には、角穴87Cが形成されている。この折り曲げ片部87は、スライダ本体42におけるばね装着部52の上面側を回り込むように配置され、前記角穴87C内にスライダ本体42の突起58が嵌合可能となっている。
【0029】
なお、本実施形態におけるカッターナイフ10は、前記スライダ15を除く他の構成部品が、既提案の特開2008−229076号公報(特許文献1)に開示されたカッターナイフと実質的に同様の構成となっている。
【0030】
次に本実施形態におけるカッターナイフ10の組み立て方法と使用方法について図13ないし図16をも参照して説明する。
【0031】
最初に、ガイド部材13をケース12の後部から挿入して内側空間S内に嵌合して固定しておく。この一方、スライダ15は、スライダ本体42に押さえ部材43、板ばね17及び操作部材44を順次組み合わせる。この組み合わせは、先ず、スライダ本体42に押さえ部材43を相対させた状態(図13図14参照)で重ね合わせるとともに、押さえ部材43の突軸65をスライダ本体42側の軸受部48に強制的に嵌め込む。これにより、押さえ部材43は、押圧操作面64を押圧することにより、押さえ面63A側が保持面部46に対して離間接近する方向に揺動可能となり、それらの間にカッター刃14の後端部を挟み込むことが可能となる。このカッター刃14の着脱操作は、実質的に特許文献1の着脱操作と同様である。
【0032】
次いで、スライダ本体42におけるばね装着部52の外面側に板ばね17のばね本体83を添わせるとともに、ばね装着部52の上面側を前記折り曲げ片部87が回り込むように位置させ、当該折り曲げ片部87の角穴87C内にスライダ本体42の突起58を嵌め込み、これにより、板ばね17がばね装着部52に脱落不能となる状態で装着される。板ばね17がばね装着部52に取り付けられた状態では、図15に示されるように、前部屈曲部85は、ばね装着部52の前端と、前記保持面部46の後端46Dとの間に位置し、後部の屈曲部86は、立ち上がり部53近傍の前方で、図15中紙面手前側にシフトした位置に保たれる。
【0033】
板ばね17の装着を完了した状態で、スライダ本体42に操作部材44を組み合わせる。この組み合わせは、操作部材44の垂下面76をスライダ本体42の内側面に相対させて挿入片部77をスロット穴55に挿入することによって行うことができる。この挿入が行われると、同時に、操作部材44のスロット部80内にスライダ本体42の凸部59が嵌合するとともに、板ばね17の屈曲部86が操作部材44の穴81内に完全に受容された初期位置に保持される。この初期位置では、操作部材44の前部突起82A及び後部突起82Bに、板ばね17に設けられた前後一対の補強屈曲部85Bが乗り上がった状態となり(図16(A)参照)、また、中央屈曲部85Aがガイド部材13の切欠部37に係り合い可能となる突出位置(ロック位置)に保たれる。このようにしてスライダ15の組み立てを完了した状態で、押さえ部材43の押圧操作面64を押圧して当該押さえ部材43とスライダ本体42との間にカッター刃14を挟み込んで保持させることができる。
【0034】
スライダ15にカッター刃14を保持させた状態のユニットは、カッター刃14の先端側を差し込み方向先端側として、前記ケース12内に挿入される。この際、操作部材44を片持ち姿勢で支持する連結片73は、ケース本体12のスリット27を上下に貫通する状態で位置し、頂壁22上に指当て部74が位置することとなる。そして、ケース12の後端部に尾栓25を差し込んで嵌合させ、これにより、カッターナイフ10の組み立てを完了することができる。
【0035】
カッター刃14をケース12の前端から突出させる場合には、図16(A)に概略的に示される初期位置において、前記指当て部74に指先を当てがい、操作部材44に前方(同図中左方)に向かって操作力を付与すればよい。これにより、同図(B)に示されるように、操作部材44がスライダ本体42に装着された板ばね17に対して前方に相対移動し、屈曲部86が穴81の傾斜面81Aに接しつつ図中上昇する方向に変位し始め、更に操作部材44の前進により当該操作部材44の前端が保持面部46の後端46Dに突き当たる移動限まで移動したときに、屈曲部86が穴81の図16中右側の傾斜面81Aに接しつつ当該穴81から脱落しない範囲で最大に変位する一方、補強屈曲部85Bが前部突起82A、後部突起82Bから滑り落ちることを許容して中央屈曲部85Aをガイド部材13の切欠部37から脱出させることができる。この時、ロックが解除できる状態となる。そして、この状態で操作部材44を前進させることで、カッター刃14を一体に備えたスライダ15がケース12内で前進してカッター刃14を先端から突出させることができる。なお、操作部材44への操作力を解除した時は、一方の傾斜面81Aから受ける反発力を利用して屈曲部86が元の位置に戻ろうとする力を発揮することで操作部材44はスライダ本体42に対して後退する方向に移動し、屈曲部86が穴81内に完全に受容された初期位置復帰状態となる。そして、このとき、補強屈曲部85Bが前部突起82A、後部突起82Bに乗り上がって中央突起85Aを突出させ、当該中央突起85Aが切欠部37に再び係り合うロック状態となる。
【0036】
この一方、カッター刃14をケース12内に収める場合には、前記指当て部74を後方に向かって操作すればよい。これにより、板ばね17の屈曲部86は、穴81の図16中左側の傾斜面81Bに接しつつ変位する一方、補強屈曲部85Bは、前部突起82A、後部突起82Bの左側に滑り落ちることを許容するように変位し、操作部材44を前進させたときの動作と実質的に同じ動作を行うこととなる。そして、任意の位置で指当て部74への操作力を解除することで、操作部材44がスライダ本体42に対して直ちに初期位置に復帰する。
【0037】
従って、このような実施形態によれば、板ばね17の屈曲部86が操作部材44の穴81内に受容される状態において、中央屈曲部85Aがガイド部材13の切欠部37に係り合う位置で、スライダ本体42に対する操作部材44の初期位置を安定的に保持することができる。そして、操作部材44を操作したときに、屈曲部86が穴81内で変位するのと同時に中央屈曲部85Aと切欠部37との係り合いを解除することで、応答性に優れたスライダ15の操作感を付与することができる。
また、操作部材44の操作力を解除したときに、屈曲部86が穴81内に瞬間的に落ち込むように変位して受容されるので、初期位置復帰動作を迅速且つ確実に行うことができる。
【0038】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0039】
例えば、前記実施形態では、位置規制部を構成する屈曲部86がL字状である場合を図示説明したが、実質的に同様の作用を奏する限り、その形状は限定されるものではない。また、屈曲部86を受容する穴81に替えて、凹部を操作部材44の面内に形成しても同様の作用、効果を奏することができる。
【0040】
更に、板ばね17の形状も種々変更が可能である。例えば、ガイド部材13に設けた切欠部37を特許文献1と同様に一対配置とし、一対の切欠部に係り合いとその解除を可能とする前部屈曲部85を一対設けることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 カッターナイフ
12 ケース
13 ガイド部材
14 カッター刃
14A 穴
15 スライダ
17 板ばね
22 スリット
42 スライダ本体
44 操作部材
76 垂下面(相対面)
79 シフト領域
81 穴(受容部)
81A 傾斜面
86 屈曲部(位置規制部)
S 内側空間
図1
図2
図3
図4
図5
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