(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ボートなどの船艇にはオールやパドルが設置されており、人がオールやパドルを使って漕ぐことにより船艇は水の抵抗に逆らって推進する。そのオールやパドルに対する力の入れ具合やそれらの水掻きの部分であるブレードの水に対する挿入の仕方によって、水の抵抗に逆らうことができる場合に船艇は推進し、さらにその水の抵抗に大きく逆らうことができれば、その推進する速度を増すことができる。従って、例えば、子供やお年寄りでは、オールやパドルを使って漕ぐことができないという場合や、たとえ漕ぐことができた場合でも、推進速度が小さくて思うように進めることができないという場合がある。
【0003】
そこで、従来、子供やお年寄りでも漕ぎやすいようにとのことから、足を使って漕ぐ装置やそれを備えた船艇が開発されており、例えば、特開平8−301189号公報には、ハンドル、ペダル装置および船体の下面部に2個以上のフロートを備えた船体、フロートに挟まれて前後に設けられ少なくとも一方がペダル装置により回転される一対の滑車、ならびにこれら滑車に掛け渡され外面部に多数の推進翼を有するベルトを備えた足漕ぎ式ボートが(特許文献1)、特開平11−291984号公報には、足でペダルを動かすことによって水中に向けて上下方向に作動する上下動杆を船体のほぼ中央に設けて、その上下動杆の先端部分に自由端を後方に向けたフィンをその面がほぼ水平方向に向くように取り付け、そのフィンを上下方向に動くようにした足漕ぎボートが(特許文献2)、特開2002−205690号公報には、パドルやプロペラを推進装置とした二人乗り足漕ぎボートであって、左右一対のペダルを設け、左のペダルは左のパドルを、右のペダルは右のパドルを、それぞれ駆動させる足漕ぎボートが(特許文献3)、特開2007−196727号公報には、足でペダルを踏むことにより一定の範囲で上下に摺動するロッドに取り付けられたフィンと、右ロッドが下降すれば左ロッドが上昇し、左ロッドが下降すれば右ロッドが上昇する機構とを備える足漕ぎボートが(特許文献4)、それぞれ開示されている。
【0004】
また、比較的漕ぎやすく設計されたオールやパドルも開発されており、例えば、特開平9−240587号公報には、後方に向けて湾曲したオールの先端に推進ヒレを取付けて、その往復運動により水を後方に押し下げて進む手漕ぎ推進器が(特許文献5)、特開平10−338195号公報には、弾性材製の一対の水掻き、この水掻きを操作する一対の操作アーム、水掻きと操作アームとを連動せしめるシャフト、およびシャフトをボートの外側部に連結する軸受を備え、ボートの外側部に位置するシャフトからボートの底部下方に向けて連結される水掻きの連結部を上下揺動自在に止着したボートの手漕ぎ推進装置が(特許文献6)、特開2009−132369号公報には、6枚の水かき板を六角形に組み合わせて円形のバランスホイール板で両側面から挟むことにより、6枚の水かき板全体を歪まないようにするとともに水ポケット部を構成した前速回転式オールが(特許文献7)、それぞれ開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている船艇は、足を使って漕ぐものであることから、漕ぎやすくかつ力を入れやすいが、いずれの船艇も加える力を軽減することができるというものではないうえ、オールやパドルを使って船艇を漕ぐという感覚からかけ離れてしまっている。また、特許文献1〜4に開示されている船艇では、足を使って漕ぐという点から、船体を低くして喫水を浅くしたいという場合には適応することが困難である。
【0007】
一方、特許文献5〜7に開示されている、比較的漕ぎやすく設計されたオールやパドルであっても、上述と同様、漕ぎやすさという観点によるものであって、加える力が軽減されるというものではない。また、オールやパドルを使って漕ぐような感覚は体験できるとしても、ブレードなどの水掻き手段が船体からはみ出してしまうため、人の多い海水浴場や狭い水路で用いることが困難となる場合がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、オールやパドルなどと同様に身体全身を使う漕艇装置であるものの、オールやパドルと比較して腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制することができてスムーズに体重移動をすることができ、水を掻くストロークは動滑車と定滑車へのワイヤの掛け方を変更するなどにより調整することができることから水を掻くストロークを長く取ることができ、そのため楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができ、水掻き手段はオールやパドルのそれと比較して確実に水を捉えることができる漕艇装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究の結果、ハンドルスライド機構と水掻きスライド機構とワイヤ手段とを備えて水掻きスライド機構をハンドルスライド機構の下方に配設するとともに、ワイヤ手段をハンドルスライド機構と水掻きスライド機構に接続または連結してハンドルスライド機構により付与される移動力を水掻きスライド機構へ付勢して進退動作させること、また、ハンドルスライド機構はハンドルスライド手段と第1ガイドレール手段とを備え、ハンドルスライド手段は動滑車部とハンドル手段とを備えてハンドル手段を動滑車部の天井部に形成し、第1ガイドレール手段は1対のハンドルスライドレールと第1定滑車部と第2定滑車部とを備えて、第1定滑車部をハンドルスライドレールの前端部に形成するとともに第2定滑車部をハンドルスライドレールの後端部に形成すること、また、水掻きスライド機構は水掻きスライド手段と第2ガイドレール手段とを備え、水掻きスライド手段は移動台部と水掻き手段とを備えて水掻きスライド手段を移動台部の底部に形成し、第2ガイドレール手段は1対の水掻きスライドレールと第3定滑車部と第4定滑車部とを備えて、水掻きスライドレールをハンドルスライドレールと比較して長尺に形成して、第3定滑車部を水掻きスライドレールの前端部に形成するとともに第4定滑車部を水掻きスライドレールの後端部に形成すること、さらに、動滑車部には第1進退動作手段が形成されてハンドルスライド手段が第1定滑車部と第2定滑車部との間をハンドルスライドレールに沿って進退動作するように第1進退動作手段はハンドルスライドレールに進退可能に嵌挿され、移動台部には第2進退動作手段が形成されてワイヤ手段によって付勢された移動力により水掻きスライド手段がハンドルスライド手段の進退動作と連動して第3定滑車部と第4定滑車部との間を水掻きスライドレールに沿って進退動作するように第2進退動作手段は水掻きスライドレールに進退可能に嵌挿される漕艇装置をボートなどの船艇の両舷側に設置することにより、オールやパドルと比較して腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制することができてスムーズに体重移動をすることができ、水を掻くストロークは動滑車と定滑車へのワイヤの掛け方を変更するなどにより調整することができることから水を掻くストロークを長く取ることができ、そのため楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができ、オールやパドルの水掻き手段と比較して、上述のような水掻き手段であれば確実に水を捉えることができることを見出し、下記の各発明を完成した。
【0010】
(1)ボートなどの船艇の両舷側に設置される漕艇装置であって、ハンドルスライド機構と、前記ハンドルスライド機構の下方に配設された水掻きスライド機構と、前記ハンドルスライド機構および前記水掻きスライド機構と接続または連結して前記ハンドルスライド機構により付与される移動力を前記水掻きスライド機構へ付勢して進退動作させるワイヤ手段とを備えており、前記ハンドルスライド機構は、動滑車部と前記動滑車部の天井部に形成されたハンドル手段とを備えるハンドルスライド手段と、1対のハンドルスライドレールと前記1対のハンドルスライドレールの前端部に形成された第1定滑車部と前記1対のハンドルスライドレールの後端部に形成された第2定滑車部とを備える第1ガイドレール手段とを備え、前記水掻きスライド機構は、移動台部と前記移動台部の底部に形成された水掻き手段とを備える水掻きスライド手段と、前記1対のハンドルスライドレールと比較して長尺である1対の水掻きスライドレールと前記1対の水掻きスライドレールの前端部に形成された第3定滑車部と前記1対の水掻きスライドレールの後端部に形成された第4定滑車部とを備える第2ガイドレール手段とを備え、前記動滑車部には第1進退動作手段が形成されて、前記ハンドルスライド手段が前記第1定滑車部と前記第2定滑車部との間を前記1対のハンドルスライドレールに沿って進退動作するように前記第1進退動作手段は前記1対のハンドルスライドレールに進退可能に嵌挿され、前記移動台部には第2進退動作手段が形成されて、前記ワイヤ手段によって付勢された移動力により前記水掻きスライド手段が前記ハンドルスライド手段の進退動作と連動して前記第3定滑車部と前記第4定滑車部との間を前記1対の水掻きスライドレールに沿って進退動作するように前記第2進退動作手段は前記1対の水掻きスライドレールに進退可能に嵌挿されることを特徴とする前記漕艇装置。
【0011】
(2)前記水掻き手段が、下記(i)または(ii)水掻き手段である、(1)に記載の漕艇装置;(i)前記移動台部の底部に固着する1の固着板部と、1の正面水受け板部と、1の側面水受け板部とを備え、前記1の固着板部と前記1の正面水受け板部と前記1の側面水受け板部とは互いに接合あるいは連接し、前記1の固着板部と前記1の正面水受け板部とが接合あるいは連接した境界部分(固着−正面境界部分)および前記1の正面水受け板部と前記1の側面水受け板部とが接合あるいは連接した境界部分(正面−側面境界部分)に沿って外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成された水掻き手段、(ii)前記移動台部の底部に固着する1の固着板部と、1の正面水受け板部と、2の側面水受け板部とを備え、少なくとも前記1の固着板部と前記1の正面水受け板部と前記2の側面水受け板部のいずれか一方とは互いに接合あるいは連接し、前記2の側面水受け板部にはそれぞれ、外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成された水掻き手段。
【0012】
(3)主船体の両舷側に形成した側翼に配設される、(1)または(2)に記載の漕艇装置。
【0013】
(4)(1)から(3)のいずれか一項に記載の漕艇装置を備えた船艇。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る漕艇装置によれば、オールやパドルなどと同様に身体全身を使う漕艇装置であるものの、オールやパドルと比較して腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制することができてスムーズに体重移動をすることができ、水を掻くストロークは動滑車と定滑車へのワイヤの掛け方を変更するなどにより調整することができることから水を掻くストロークを長く取ることができ、そのため楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができ、水掻き手段はオールやパドルのそれと比較して確実に水を捉えることができる。それらの結果、水掻き手段が船体からはみ出ずに済むため、人口の多い海水浴場や狭い水路でも使用することができ、水掻き手段を略水平に移動できるため、オールやパドルと比較して喫水の浅い場所でも常時可動させることができ、進行方向を見ながら漕ぐことが可能になるため、進行方向の安全確認を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る漕艇装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る漕艇装置の一実施形態を示す上方斜視図である。
【
図3】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるワイヤ手段を示す上方斜視透過図である。
【
図4】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるハンドルスライド機構を示す上方斜視図である。
【
図5】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるハンドルスライド手段を示す上方斜視図である。
【
図6】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における水掻きスライド機構を示す上方斜視図である。
【
図7】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における水掻きスライド手段の一実施形態(左舷側設置用)の開いた状態を示す下方斜視図である。
【
図8】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における水掻きスライド手段の異なる一実施形態(右舷側設置用)の開いた状態を示す下方斜視図である。
【
図9】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における水掻き手段の一実施形態(左舷側設置用)の開いた状態を示す下方斜視図である。
【
図10】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における水掻き手段の一実施形態(右舷側設置用)において、1の固着板部と1の正面水受け板部とが接合した境界部分(固着−正面境界部分)および1の正面水受け板部と1の側面水受け板部とが接合した境界部分(正面−側面境界部分)に沿って外側へ山折りに折り畳まれて閉じた状態を示す下方斜視図である。
【
図11】本発明に係る漕艇装置の一実施形態における異なる水掻き手段の一実施形態を示す斜視図である。図中、(a)は1の正面水受け板部にスリットが形成されていない水掻き手段の一実施形態(スリットなし)を、(b)は1の正面水受け板部にスリットが形成されている水掻き手段の一実施形態(スリットあり)を、それぞれ示す。
【
図12】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるワイヤ手段と移動台部との接続、前記ワイヤ手段と第3定滑車部との接続をそれぞれ示す上方斜視透過拡大図である。
【
図13】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるワイヤ手段と動滑車部との接続、前記ワイヤ手段と第1定滑車部との接続をそれぞれ示す上方斜視透過拡大図である。
【
図14】本発明に係る漕艇装置の一実施形態におけるワイヤ手段と動滑車部との接続、前記ワイヤ手段と第2定滑車部との接続をそれぞれ示す上方斜視透過拡大図である。
【
図15】本発明に係る漕艇装置の一実施形態において、ハンドルスライド機構をスライドさせた場合に水掻き手段が水を掴んだままスライドする状態を示す上方斜視図である。
【
図16】本発明に係る漕艇装置の一実施形態において、ハンドルスライド機構をスライドさせた場合に水掻き手段が水を放して折り畳まれたままスライドする状態を示す上方斜視図である。
【
図17】本発明に係る漕艇装置の一実施形態を側翼に配設した船艇の主船体を示す上方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る漕艇装置の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態における漕艇装置1は、
図1〜3に示すように、ハンドルスライド機構2と水掻きスライド機構3とワイヤ手段4とを備えている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0017】
図1〜3に示すように、本実施形態における漕艇装置1では、水掻きスライド機構3はハンドルスライド機構2の底面と水掻きスライド機構3の上面が面接するようにして、ハンドルスライド機構2の下方に配設されているが、本発明の特徴を損なわない範囲において水掻きスライド機構3をハンドルスライド機構2の下方に配設すればよく、これに限定されることはない。また、
図3に示すように、本実施形態におけるワイヤ手段4はハンドルスライド機構2および水掻きスライド機構3と接続または連結している。
【0018】
本実施形態におけるハンドルスライド機構2は、
図4に示すように、ハンドルスライド手段5と第1ガイドレール手段6とを備え、
図4及び
図5に示すように、本実施形態におけるハンドルスライド手段5は動滑車部51とハンドル手段52とから構成されており(動滑車部51とハンドル手段52とを備えており)、ハンドル手段52は動滑車部51の天井部(上部)に形成・配設されている。なお、本実施形態におけるハンドル手段52は特に限定されず、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0019】
また、
図4に示すように、本実施形態における第1ガイドレール手段6は1対のハンドルスライドレール61と第1定滑車部62と第2定滑車部63とから構成されていて(1対のハンドルスライドレール61と第1定滑車部62と第2定滑車部63とを備えていて)、第1定滑車部62はハンドルスライドレールの前端部64に嵌合して固設されることによりハンドルスライドレールの前端部64に形成されており、第2定滑車部63はハンドルスライドレールの後端部65に嵌合して固設されることによりハンドルスライドレールの後端部65に形成されている。
【0020】
さらに、本実施形態における動滑車部51には、
図5に示すように、第1進退動作手段53が形成されており、
図4に示すように、ハンドルスライド手段5が第1定滑車部62と第2定滑車部63との間をハンドルスライドレール61に沿って進退動作するように、本実施形態における第1進退動作手段53はハンドルスライドレール61に進退可能に嵌挿されている。
【0021】
なお、本実施形態におけるハンドルスライドレール61は特に限定されず、第1進退動作手段53がハンドルスライドレール61に嵌挿され、ハンドルスライドレール61に沿って進退可能であり、ハンドルスライドレールの前端部64とハンドルスライドレールの後端部65にそれぞれ第1定滑車部62および第2定滑車部63が形成・配設可能となるようなハンドルスライドレール61であればよい。
【0022】
また、本実施形態における第1定滑車部62および第2定滑車部63も特に限定されず、ハンドルスライドレールの前端部64とハンドルスライドレールの後端部65に形成・配設が可能であればよく、例えば、備える滑車の数や縦横の配置(並列・積み重ねなど)についても本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0023】
また、本実施形態における動滑車部51も特に限定されず、第1定滑車部62および第2定滑車部63と同様に、備える滑車の数や縦横の配置(並列・積み重ねなど)についても本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0024】
さらに、本実施形態における第1進退動作手段53は、ハンドルスライドレール61に嵌挿され、ハンドルスライドレール61に沿って進退可能なものであれば特に限定されず、例えば、シャフト(車軸・軸)を設けて枢動可能なタイヤ状のものの他、枢動せずとも滑動可能なものなど、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0025】
一方、本実施形態における水掻きスライド機構3は、
図6に示すように、水掻きスライド手段7と第2ガイドレール手段8とを備え、
図6〜8に示すように、本実施形態における水掻きスライド手段7は移動台部71と水掻き手段72とから構成されており(移動台部71と水掻き手段72とを備えおり)、水掻き手段72は移動台部71の底部(下部)に形成・配設されている。
【0026】
また、
図6に示すように、本実施形態における第2ガイドレール手段8は1対の水掻きスライドレール81と第3定滑車部82と第4定滑車部83とから構成されていて(1対の水掻きスライドレール81と第3定滑車部82と第4定滑車部83とを備えていて)、第3定滑車部82は水掻きスライドレールの前端部84に嵌合して固設されることにより水掻きスライドレールの前端部84に形成されており、第4定滑車部83は水掻きスライドレールの後端部85に嵌合して固設されることにより水掻きスライドレールの後端部85に形成されている。
【0027】
また、本実施形態における移動台部71には、
図7および
図8に示すように、第2進退動作手段73が形成されており、
図6、
図15および
図16に示すように、ハンドルスライド手段5の進退動作によって生じた移動力がワイヤ手段4を通じて水掻きスライド手段7へ付勢され、ハンドルスライド手段5の進退動作と連動して、水掻きスライド手段7が第3定滑車部82と第4定滑車部83との間を水掻きスライドレール81に沿って進退動作するように、本実施形態における第2進退動作手段73は水掻きスライドレール81に進退可能に嵌挿されている。
【0028】
なお、本実施形態における第2進退動作手段73は、水掻きスライドレール81に嵌挿され、水掻きスライドレール81に沿って進退可能なものであれば特に限定されず、第1進退動作手段53と同様に、シャフト(車軸・軸)を設けて枢動可能なタイヤ状のものの他、枢動せずとも滑動可能なものなど、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0029】
また、本実施形態における水掻きスライドレール81は特に限定されず、第2進退動作手段73が水掻きスライドレール81に嵌挿され、水掻きスライドレール81に沿って進退可能であり、水掻きスライドレールの前端部84と水掻きスライドレールの後端部85にそれぞれ第3定滑車部82および第4定滑車部83が形成・配設可能となるような水掻きスライドレール81であればよい。
【0030】
さらに、本実施形態における第3定滑車部82および第4定滑車部83も特に限定されず、水掻きスライドレールの前端部84と水掻きスライドレールの後端部85に形成・配設が可能であればよく、第1定滑車部62、第2定滑車部63および動滑車部51と同様に、備える滑車の数や縦横の配置(並列・積み重ねなど)についても本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。
【0031】
次に、本実施形態における水掻き手段72の一実施形態は、
図7〜9に示すように、1の固着板部721と、1の正面水受け板部722と、1の側面水受け板部723とを備え、1の固着板部721と1の正面水受け板部722と1の側面水受け板部723とは互いに接合あるいは連接し、1の固着板部721は移動台部71の底部に固着されている。また、
図7〜9に示すように、1の固着板部721と1の正面水受け板部722とが接合あるいは連接した境界部分である固着−正面境界部分724および1の正面水受け板部722と1の側面水受け板部723とが接合あるいは連接した境界部分である正面−側面境界部分725に沿って外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成されていて、
図10に示すように折り畳むことができる。
【0032】
なお、本実施形態における1の正面水受け板部722、1の固着板部721および1の側面水受け板部723は、互いに接合あるいは連接し、かつ固着−正面境界部分724および正面−側面境界部分725に沿って外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成されていれば特に限定されず、例えば、
図7および
図9に示すように、水を掴みやすいようにスリットが形成されてもよく、
図8に示すように、折れ曲がりが可能な中折り手段が形成されてもよい。また、本実施形態における1の固着板部721、1の正面水受け板部722および1の側面水受け板部723の材質も特に限定されず、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択される。そのような材質としては、例えばゴムメタルや厚みのないステンレスなどの弾性のある金属の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリエステルなどの合成樹脂を挙げることができる。
【0033】
また、本実施形態における異なる水掻き手段72の一実施形態としては、
図11に示すように、1の固着板部721と、1の正面水受け板部722と、2の側面水受け板部723とを備え、少なくとも1の固着板部721と1の正面水受け板部722と2の側面水受け板部723のいずれか一方とは互いに接合あるいは連接し、1の固着板部721は移動台部71の底部に固着されている。また、
図11に示すように、2の側面水受け板部723にはそれぞれ、外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成されていて、1の固着板部721と1の正面水受け板部722とが合わさるように折り畳むことができる。
【0034】
この場合の水掻き手段72の実施形態における1の正面水受け板部722、1の固着板部721および2の側面水受け板部723は、少なくとも1の固着板部721と1の正面水受け板部722と2の側面水受け板部723のいずれか一方とは互いに接合あるいは連接し、かつ2の側面水受け板部723それぞれにおいて外側へ山折りに折り畳み可能な中折り手段が形成されていれば特に限定されず、例えば、
図11(b)に示すように、正面水受け板部722において水を掴みやすいようにスリットが形成されてもよい。また、この場合の水掻き手段72の実施形態における1の固着板部721、1の正面水受け板部722および2の側面水受け板部723の材質も特に限定されず、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者によって適宜選択され、そのような材質として上述した材質を適用することができる。
【0035】
次に、本実施形態におけるワイヤ手段4はハンドルスライド機構2および水掻きスライド機構3と接続または連結しているが、本実施形態において、より具体的には、
図3および
図12〜14に示すように、動滑車部51、第1定滑車部62および第2定滑車部63、ならびに移動台部71、第3定滑車部82および第4定滑車部83と接続または連結することにより、ハンドルスライド機構2および水掻きスライド機構3と接続または連結している。
【0036】
ここで本実施形態におけるワイヤ手段4の、動滑車部51、第1定滑車部62および第2定滑車部63、ならびに移動台部71、第3定滑車部82および第4定滑車部83との接続または連結の態様は特に限定されず、所望のストロークの長さや力のいれ具合に応じて、本発明の特徴を損なわない範囲において当業者により適宜選択される。そのような接続または連結の態様としては、例えば、
図3および
図12〜16を参考にして、順に第1定滑車部62の固定具→動滑車部51におけるハンドルスライドレールの前端部64側の上段にある滑車→第1定滑車部62の上段にある滑車→動滑車部51におけるハンドルスライドレールの前端部64側の下段にある滑車→第1定滑車部62の下段にある滑車→第4定滑車部83の滑車→移動台部71における水掻きスライドレールの後端部85側の固定具との接続または連結、および第2定滑車部63の固定具→動滑車部51におけるハンドルスライドレールの後端部65側の上段にある滑車→第2定滑車部63の上段にある滑車→動滑車部51におけるハンドルスライドレールの後端部65側の下段にある滑車→第2定滑車部63の下段にある滑車→第3定滑車部82の滑車→移動台部71における水掻きスライドレールの前端部84側の固定具との接続または連結の組み合わせによる態様などを挙げることができる。また、本実施形態におけるワイヤ手段4の本数も、上述した接続または連結の態様に応じて、当業者により適宜選択される。
【0037】
本実施形態における漕艇装置1は、
図17に示すように、主船体9の両舷側に形成した側翼91に嵌め込むような態様で配設することができる。
【0038】
本実施形態における漕艇装置1は、上述した各構成の他、本発明の特徴を損なわない範囲において適宜構成を加えることができる。そのような構成としては、例えば、ワイヤ手段4を連結するための連結具(固定具)や水掻き手段72を補強する部材を挙げることができる。また、そのような漕艇装置1を備えた船艇も本発明の範囲にある。
【0039】
次に、本実施形態における漕艇装置1の作用について、図面を用いて詳細に説明する。
【0040】
上述した構成を備える漕艇装置1において、所望のストロークの長さや力のいれ具合に応じて、本実施形態におけるワイヤ手段4を、ハンドルスライド機構2の動滑車部51、第1定滑車部62および第2定滑車部63、ならびに水掻きスライド機構3の移動台部71、第3定滑車部82および第4定滑車部83へ接続または連結する。例えば、漕ぎ手の向いている方向、すなわち
図15に示す矢印AおよびBと反対の方向が進行方向となるように当該接続または連結した場合、
図15に示すように、漕ぎ手はハンドルスライド機構2のハンドル手段52を握り、Aの方向、すなわち漕ぎ手の後方へ向けてハンドル手段52を引くことになる。すると、ハンドルスライドレールの前端部64に位置していたハンドルスライド手段5は、Aの方向、すなわちハンドルスライドレールの後端部65の方向へスライドし、少なくとも第2定滑車部63の付近で止まる。
【0041】
ハンドルスライド手段5がハンドルスライドレールの後端部65の方向へスライドすることによりハンドルスライド機構2から移動力が付与され、ワイヤ手段4を介して水掻きスライド機構3へ付勢される。具体的には、ハンドルスライド機構2のハンドルスライド手段5がハンドルスライドレールの後端部65の方向へスライドすることにより移動力が付与され、その移動力がワイヤ手段4を介して水掻きスライド機構3の水掻きスライド手段7へ付勢される。この付勢された移動力を利用して、水掻きスライド手段7は水掻きスライドレール81に沿って、矢印Bの方向、すなわち水掻きスライドレールの前端部84から水掻きスライドレールの後端部85へ向かって進行し、少なくとも第4定滑車部83の付近で止まる。
【0042】
水掻きスライド手段7が水掻きスライドレール81に沿って矢印Bの方向へ進行することにより、水掻き手段72が開いて水を掴みながら矢印Bの方向へ進行する。それにより水掻き手段72は水を掻くことができ、漕艇装置1を備えた船艇は矢印AおよびBと反対の方向へ進行する。
【0043】
続いて、
図16に示すように、漕ぎ手はCの方向、すなわち漕ぎ手の前方へ向けてハンドル手段52を押すことになる。すると、少なくとも第2定滑車部63の付近で止まっていたハンドルスライド手段5はCの方向、すなわちハンドルスライドレールの前端部64の方向へスライドし、少なくとも第1定滑車62の付近で止まる。
【0044】
ハンドルスライド手段5がハンドルスライドレールの前端部64の方向へスライドすることによりハンドルスライド機構2から再び移動力が付与され、ワイヤ手段4を介して水掻きスライド機構3へ付勢される。具体的には、ハンドルスライド機構2のハンドルスライド手段5がハンドルスライドレールの前端部64の方向へスライドすることにより再び移動力が付与され、その移動力がワイヤ手段4を介して水掻きスライド機構3の水掻きスライド手段7へ付勢される。この付勢された移動力を利用して、水掻きスライド手段7は水掻きスライドレール81に沿って、矢印Dの方向、すなわち水掻きスライドレールの後端部85から水掻きスライドレールの前端部84へ向かって進行し、少なくとも第3定滑車部82の付近で止まる。
【0045】
水掻きスライド手段7が水掻きスライドレール81に沿って矢印Dの方向へ進行することにより、水掻き手段72は
図10に示すように折り畳まれ、水中から抜け出して水面上を矢印Dの方向へ進行するか、あるいは水を切るようにして矢印Dの方向へ進行する。それにより水掻き手段72は水の抵抗を受けることなく、あるいはほとんど水の抵抗を受けることなく、再びハンドルスライドレールの前端部64に位置することができる。
【0046】
上述した動作を繰り返すことにより、漕ぎ手は進行方向の安全を確認しながら、腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制しながらスムーズに体重移動をして水を掻くことができ、水を掻くストロークもまた、漕ぎ手の所望に合わせて適宜設定することができる。そのため楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができる。
【0047】
以上のような本実施形態における漕艇装置1によれば、以下のような効果を奏する。
1.腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制しながらスムーズに体重移動をして水を掻くことができる。
2.水を掻くストロークを漕ぎ手の所望に合わせて適宜設定することができる。
3.楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができる。
4.確実に水を捉えることができる
5.水掻き手段が船体からはみ出ずに済むため、人口の多い海水浴場や狭い水路でも使用することができる。
6.水掻き手段を略水平に移動できるため、オールやパドルと比較して喫水の浅い場所でも常時可動させることができる。
7.進行方向を見ながら漕ぐことが可能となるため、進行方向の安全確認を容易にすることができる。
【課題】オールやパドルと比較して腕を折り畳む動作や腕を回す動作を抑制することができてスムーズに体重移動をすることができ、水を掻くストロークは動滑車と定滑車へのワイヤの掛け方を変更することにより調整することができることから水を掻くストロークを長く取ることができ、そのため楽に力強く漕ぐことができるとともに船艇の推進する速度を上げることができ、確実に水を捉えることができる漕艇装置を提供する。
【解決手段】ボートなどの船艇の両舷側に設置される漕艇装置1であって、ハンドルスライド機構2と水掻きスライド機構3とワイヤ手段4とを備えて、水掻きスライド機構3をハンドルスライド機構2の下方に配設するとともに、ワイヤ手段4をハンドルスライド機構2と水掻きスライド機構3に接続または連結して、ハンドルスライド機構2により付与される移動力を、水掻きスライド機構3へ付勢して進退動作させる。