(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料が天然黒鉛を球形化処理したものであり、ラマンR値が0.15〜0.4であり、且つ次の要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用炭素材料:
(1)該炭素材料にバインダーを加え、金属製集電体に塗布、乾燥後、電極密度が1.7g/cm3になるように作製された電極(a)において、広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R1.7=I(110)/I(004)が0.05〜0.2、
(2)該炭素材料にバインダーを加え、金属製集電体に塗布、乾燥して作製された電極(b)において、広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R0=I(110)/I(004)が0.14〜0.3、及び
(3)該電極(a)のピークの強度比(R1.7)と該電極(b)のピークの強度比(R0)の比(R1.7/R0)が0.35〜0.7。
該炭素材料が球形化黒鉛であり、該球形化黒鉛が、鱗片状の天然黒鉛が折りたたまれる、もしくは周囲エッジ部分が球形粉砕されることにより球状とされた母体粒子に微粉が付着してなるものであり、フロー式粒子像分析装置により該炭素材料粒子について測定した粒子径と粒子個数頻度が、次の要件(1−1)、(2−1)を満たす、請求項1〜5のいずれか1項記載のリチウムイオン二次電池用炭素材料:
(1−1)28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子において、粒径5μm以下の粒子個数頻度が40〜75%、及び
(2−1)28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子において、粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)が0.4〜0.7。
集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、該活物質層が、請求項1〜6のいずれか1項記載の炭素材料を含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が請求項7記載のリチウムイオン二次電池用負極である、リチウムイオン二次電池。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池に対する需要が高まってきている。特に、ニッケル・カドミウム電池や、ニッケル・水素電池に比べ、エネルギー密度がより高く、大電流充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池が注目されている。リチウムイオン二次電池の高容量化は従来から広く検討されてきたが、近年のリチウムイオン二次電池に対する高性能化の要求はますます高まっており、更なる高容量化を達成することが求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の負極材料としては、多くの場合、コストと耐久性の面で黒鉛材料や非晶質炭素に代表される炭素材料が用いられている。リチウムイオン二次電池を高容量化する方法として、電極密度を高くして限られた電池容積の中に出来るだけ多くの充放電活物質を詰め込む設計がなされている。
【0004】
負極材料に用いられる炭素材料は、充放電に伴うリチウムイオンの挿入・脱離により、体積膨張・収縮が起こる。この体積膨張は理論的にはC軸方向に約10%の膨張率を有すると算出される。
【0005】
一般的に、黒鉛粒子は面内方向の結晶子(La)やC軸方向の結晶子(Lc)が数十nm以上である結晶子の多結晶体として構成されているが、このような黒鉛粒子中では各結晶子のC軸はほぼ同一方向に配向する傾向がある。また、このような黒鉛粒子にバインダーを加えて金属製集電体に塗布、乾燥、プレスすることにより作製した電極においては、各黒鉛粒子の各結晶子のC軸が金属製集電体の面方向に配向する傾向がある。
【0006】
このような黒鉛粒子が金属製集電体の面方向に配向した電極では、リチウムイオンの挿入・脱離に伴う黒鉛粒子のC軸方向の体積膨張が金属製集電体の垂直方向の膨張に直接反映されるため、結果として負極の膨れ量が増大するという問題がある。
【0007】
特に角型タイプの電池の場合には、充放電に伴う負極膨れにより、電池ケースが厚さ方向に膨張する。そこで、電池膨れを見越してあらかじめ膨れを吸収する空隙容積を確保した電池設計を行うため、限られた電池容積を、活物質を詰め込むための容積として有効に利用することが不十分となり、結果として電池セル容量の低下が生じる。
【0008】
また、黒鉛粒子が金属製集電体の面方向に配向することにより、前述のような電池のセル容量低下が生じるばかりでなく、電極表面において黒鉛結晶のベーサル面の存在比が大きくなると同時に、リチウムイオンのインターカレーションが起こる黒鉛結晶のエッジ面の存在比が小さくなる。このため、充放電反応時に、電解液と電極との界面におけるリチウムイオンの移動がスムーズに行われず、高速充放電特性の低下が生じたり、黒鉛結晶へのリチウムの吸蔵・放出の繰り返しによって発生するC軸方向の膨張・収縮による電極の劣化に起因するサイクル特性の低下が生じるなどの問題がある。
【0009】
この充放電に伴う負極膨れを抑制するために、負極活物質自体の結晶配向性を抑えることや電極上における活物質の配向を抑えることが提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、鱗片状天然黒鉛粒子を改質処理することにより、円形度が高く、破断面の顕微鏡観察で黒鉛切片が種々の方向に向かうキャベツ状の特異な外観を有する黒鉛材料を作製し、黒鉛材料の結晶配向性をランダム化させる方法が開示されている。しかし、それらによっても上記課題は完全には改善されず、特に電極上における黒鉛粒子の配向の改善については何ら検討がされていない。
【0011】
特許文献2には、電極上における黒鉛粒子の配向を抑制させた負極を用いる方法が開示されている。しかし、電極密度を変えることによる黒鉛粒子の配向性の変化については記載がなく、特に高密度の領域において黒鉛粒子が配向することに対する改善については検討がなされておらず、高密度電極へ適用するための対応は不十分といわざるを得ない。
【0012】
特許文献3には、黒鉛粒子と有機系結着材を含んで成る活物質層を有し、電極上における黒鉛粒子の配向を抑制させた負極を用いる方法が開示されている。ここでは、活物質層密度が1.5〜1.95g/cm
3という、比較的高密度の負極を作製した場合にも、電極上における黒鉛粒子の配向を抑制させることに成功している。しかし、電極を作製する際に水系結着材よりも極板強度に劣る有機系結着材を用いるため、極板の生産性に劣るという課題が未解決である。更に、極板強度を向上させるために、水系結着材を用いる場合よりも多量の有機系結着材を添加する必要があり、このため負極に含まれる活物質量が減少し、電池容量の低下を招くおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の内容を詳細に述べる。なお、以下に記載する本発明の構成要件についての説明は、本発明の実施態様の一例、代表例であり、本発明はその要旨から逸脱しない限り、これらの実施態様に限定されるものではない。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材料は、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料が次の要件(1)〜(3)、及び更に(4)を満たす。
【0028】
(1)該炭素材料にバインダーを加え、金属製集電体に塗布、乾燥後、電極密度が1.7g/cm
3になるように作製された電極(a)において、広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R
1.7=I(110)/I(004)が0.05〜0.2である。
(2)該炭素材料にバインダーを加え、金属製集電体に塗布、乾燥して作製された電極(b)において、広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R
0=I(110)/I(004)が0.14〜0.3である。
(3)該電極(a)のピークの強度比(R
1.7)と該電極(b)のピークの強度比(R
0)の比(R
1.7/R
0)が0.35〜0.7である。
(4)該炭素材料の広角X線回折測定により得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比R
c(=I(110)/I(004))が0.14〜0.3である。
【0029】
負極シートの作製方法
本発明の炭素材料を負極材料として用い、活物質層密度1.70±0.03g/cm
3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材料20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
【0030】
このスラリーを、集電体である厚さ18μmの銅箔上に、負極材料が11.8±0.1mg/cm
2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾を行った後、110℃で30分乾燥して未加工状態の極板を得た。次に、直径20cmのローラを用いて、活物質層の密度が1.70±0.03g/cm
3になるようロールプレスして、負極シートを得た。なお、上記数値の活物質層の密度を得るために、プレス加工に代えて圧延加工であっても良い。
【0031】
負極シート作製には結着材として水系結着材を用いることが好ましい。例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体等の水系結着材が挙げられる。これは、有機系結着材を用いると極板強度が低下するおそれがあり、通常、極板強度を向上させるためには水系結着材を用いる場合よりも多量の有機系結着材を添加する必要がある。このため、負極に含まれる活物質量が減少し、電池容量の低下を招くことになりやすいからである。
【0032】
黒鉛結晶配向比(I(110)/I(004))
(イ)測定方法
・極板上黒鉛結晶配向比
上記極板作製方法により作製した極板について、X線回折により極板上の黒X線回折により極板上の黒鉛の(110)面と(004)面とのチャートを測定し、測定したチャートについて、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いて、フィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)面と(004)面のピークの積分強度を算出した。得られた積分強度から、「(110)面積分強度/(004)面積分強度」、すなわちI(110)/I(004)で表わされる比率を算出し、この比率を極板上黒鉛結晶配向比と定義した。この配向比は、未加工状態の電極(b)及び活物質層の密度を1.70±0.03g/cm
3になるようロールプレスした後の電極(a)の両方で測定し、各々をR
0、R
1.7とした。ここで、極板上黒鉛結晶配向比とは、電極の厚み方向に対する、黒鉛結晶の六角網面の配向の程度を表す指標である。配向比が大きいほど、粒子の黒鉛結晶六角網面の方向が揃っていない状態を表す。
【0033】
・炭素材料(粉体)配向比
黒鉛粉末試料0.5gを加圧セルに入れ、600Kgf/cm
2で5秒間加圧し、ペレット状に成型した試料について、上記極板上黒鉛結晶配向比の算出方法と同様にしてI(110)/I(004)を測定し、これをR
cとした。
【0034】
ここで、X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調製 :ガラス板に0.1mm厚さの両面テープで所定極板を固定
【0035】
(ロ)本発明の範囲
(1)上記の極板作製方法により、電極密度1.7g/cm
3に調整された電極(a)を作製したとき、該電極の広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比(極板上黒鉛結晶配向比)R
1.7=I(110)/I(004)は0.05〜0.20であり、好ましくは0.06以上であり、また、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。
【0036】
(2)上記極板作製方法により未加工の電極(b)を作製したとき、該電極の広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比(極板上黒鉛結晶配向比)R
0=I(110)/I(004)は0.14〜0.3であり、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.16以上であり、また、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。
【0037】
極板上黒鉛結晶配向比R
1.7、R
0が本発明の下限値0.05、0.14をそれぞれ下回ると、電池を作製したときの電池充電時の電極膨張が大きくなるので、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくすることが難しい。このため、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下しやすく、更にはリチウムイオンのインターカレーションが起こる黒鉛結晶のエッジ面の存在比が電極表面において小さくなるため、充放電反応時に電解液と電極との界面でリチウムイオンがスムーズに移動できずに高速充放電特性の低下が生じる。一方、極板上黒鉛結晶配向比R
1.7、R
0が本発明の上限値0.2、0.3をそれぞれ上回ると、黒鉛粒子の基底面が特定の方向に配向せずに等方的に存在した電極となるため、各黒鉛粒子間の接触による電子伝導が十分に得られず、高速充放電特性が低下しやすい。
【0038】
(3)上記極板作製方法により作製した、電極密度1.7g/cm
3に調整した電極(a)と未加工の電極(b)の広角X線回折測定より得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比の比(R
1.7/R
0)は0.35〜0.7であり、好ましくは0.36以上であり、また、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。R
1.7/R
0が本発明の下限値0.35を下回ると、電極をプレス(圧延)することにより電極上の黒鉛粒子の基底面が集電体の面方向に配向しやすくなる。このため、電池充電時の電極膨張が大きくなるので、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくすることが難しい。また、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下しやすく、更にはリチウムイオンのインターカレーションが起こる黒鉛結晶のエッジ面の存在比が電極表面において小さくなるため、充放電反応時に電解液と電極との界面でリチウムイオンがスムーズに移動できずに高速充放電特性の低下が生じる。一方、R
1.7/R
0が本発明の上限値0.7を上回ると、プレス(圧延)により電極の活物質充填密度を上げ難くなる場合がある。
【0039】
本発明は更に、該炭素材料自体が更に次の要件(4)を満たすリチウムイオン二次電池用炭素材料である。
(4)該炭素材料の広角X線回折測定により得られる格子面(110)と(004)に対応するピークの強度比(極板上黒鉛結晶配向比)R
c(=I(110)/I(004))は、0.14〜0.3 であることが好ましく、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.16以上であり、また、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.20以下である。炭素材料の配向比R
cが本発明の下限値0.14を下回ると、電池を作製したときの電池充電時の電極膨張が大きくなるので、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくするのが困難になる傾向がある。また、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下しやすく、更にはリチウムイオンのインターカレーションが起こる黒鉛結晶のエッジ面の存在比が電極表面において小さくなるため、充放電反応時に電解液と電極との界面でリチウムイオンがスムーズに移動できずに高速充放電特性の低下が生じる傾向がある。一方、炭素材料の配向比R
cが本発明の上限値0.3を上回ると、黒鉛粒子の基底面が特定の方向に配向せずに等方的に存在した電極となるため、各黒鉛粒子間の接触による電子伝導が十分に得られず、高速充放電特性が低下しやすく、更にプレスにより電極の活物質充填密度を上げ難くなる場合がある。
【0040】
BET比表面積(SA)
(イ)測定方法
大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定した。具体的には、試料(炭素材料)0.4gをセルに充填し、350℃に加熱して前処理を行った後、液体窒素温度まで冷却して、窒素30%、He70%のガスを飽和吸着させ、その後室温まで加熱して脱着したガス量を計測し、得られた結果から、通常のBET法により比表面積を算出した。
【0041】
(ロ)好ましい範囲
本発明の炭素材料のBET法で測定した比表面積については、4m
2/g以上11m
2/g以下を満たすことが好ましい。通常4m
2/g以上、好ましくは5m
2/g以上である。また、通常11m
2/g以下、好ましくは9m
2/g以下、より好ましくは8m
2/g以下である。比表面積が4m
2/gを下回ると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性出力特性に劣り、一方、比表面積が11m
2/gを上回ると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池の製造が困難になる傾向がある。
【0042】
平均円形度
(イ)平均円形度の定義
平均円形度は、測定対象(複合黒鉛粒子)0.2gを界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2体積%水溶液50mLに混合し、フロー式粒子像分析装置「シスメックスインダストリアル社製FPIA−2000」を用い、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径10〜40μmの範囲の粒子について測定した下記式で与えられる円形度の値の平均値として定義される。
円形度=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長
【0043】
(ロ)好ましい範囲
本発明における電極(a)において、平均円形度は0.85以上が好ましく、より好ましくは0.90以上である。平均円形度が0.85を下回ると、黒鉛粒子の基底面が電極上の特定の方向に配向することにより電池充電時の電極膨張が大きくなる。このため、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくすることが難しくなる傾向がある。また、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下しやすく、更にはリチウムイオンのインターカレーションが起こる黒鉛結晶のエッジ面の存在比が電極表面において小さくなるため、充放電反応時に電解液と電極界面でリチウムイオンがスムーズに移動できずに高速充放電特性の低下が生じる傾向がある。
【0044】
タップ密度
(イ)タップ密度の定義
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器である(株)セイシン企業社製「タップデンサーKYT−4000」を用い、直径1.6cm、体積容量20cm
3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、炭素材料を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
【0045】
(ロ)好ましい範囲
本発明の炭素材料のタップ密度は、0.95g/cm
3以上が好ましく、1.0g/cm
3以上がより好ましい。また、1.15g/cm
3以下が好ましく、1.12g/cm
3以下がより好ましい。タップ密度が低すぎると、高速充放電特性に劣る傾向があり、タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる場合がある。
【0046】
ラマンスペクトル
(イ)ラマンスペクトル測定方法
ラマン分光器:「日本分光社製ラマン分光器」で測定する。
測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させて試料を充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しつつ、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら以下の条件で測定を行なう。
・アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :25mW
・分解能 :4cm
−1
・測定範囲 :1100cm
−1〜1730cm
−1
・ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
【0047】
(ロ)好ましい範囲
得られたラマンスペクトルについて、1580cm
−1付近のピークP
Aの強度I
Aと、1360cm
−1付近のピークP
Bの強度I
Bとを測定し、その強度比R(R=I
B/I
A)を算出して、これを炭素材料のラマンR値と定義する。本発明の炭素材料のラマンR値は、0.15以上であることが好ましい。また、0.4以下であることが好ましく、0.3以下がより好ましい。ラマンR値が0.15を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く傾向がある。一方、0.4を上回ると、粒子表面の結晶が乱れ、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
【0048】
粒径
(イ)測定方法
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2質量%水溶液10mLに、炭素材料0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「HORIBA製LA−920」に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明における炭素材料粒子の体積基準平均粒径d50と定義する。
【0049】
(ロ)好ましい範囲
d50は、通常40μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。粒径が40μmを超えると極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出る場合があり、また、粒径が5μmを下回ると、表面積が大きくなりすぎ電解液との活性を抑制することが難しくなる傾向がある。
【0050】
粒子個数頻度
(イ)測定方法
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標))の0.2体積%水溶液50mLに炭素材料0.2gを混合し、フロー式粒子像分析装置「シスメックスインダストリアル社製FPIA−2000」を用い、28kHzの超音波を出力60Wで所定時間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定して、粒子個数を測定した。
【0051】
(ロ)好ましい範囲
(1
−1)28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子の粒径5μm以下の粒子個数頻度は、通常40%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上、通常85%以下、好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下である。粒子個数頻度が40%を下回ると、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性に劣る傾向がある。一方、粒子個数頻度が85%を上回るような粒子表面に付着した微粉が剥離しやすい炭素材料においては、電極を圧延した際に微粉が部分的に剥離して一方向に配列しやすくなるため、充電による電極の膨張量が増大する傾向がある。また、剥離した微粉量が多すぎると、活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池を製造できなくなる可能性がある。さらに、充放電を繰り返す際に黒鉛表面の微粉が剥離することにより材料劣化が大きくなる傾向がある。
【0052】
(2
−1)28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子において、粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比は0.4〜0.7である。上記粒子個数頻度の比がこの範囲に含まれる場合、黒鉛粒子表面に適度に細かい微粉が付着していることにより、黒鉛粒子の基底面が特定の方向に配向していない、より等方性を持った粒子となるため、電池充電時における電極の膨張を抑制することができる。このため、電極の単位体積当たりの電池容量を大きくすることが可能となり、サイクル試験中の膨張収縮に起因する活物質の脱落等によりサイクル特性が低下を抑制することが可能になる。また、上記粒子個数頻度の比が0.4を下回ると、粒子表面に付着した微粉サイズが大きくなり、Liが出入りする部位が少なく、高速充放電特性に劣る傾向がある。一方、上記粒子個数頻度の比が0.7を上回ると活物質の電解液に対する活性が過剰になり、初期不可逆容量が大きくなるため、高容量電池の製造が困難になる傾向がある。
【0053】
電極用炭素材料
本発明の炭素材料は、炭素材料に衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与えることにより、炭素材料の表面を粉砕し改質する表面処理を行う。本発明においては、あらかじめ表面処理による球形化処理を施した球状黒鉛を原料として用いると、効率良く目的の炭素材料を得ることが可能となり好ましい。また、該球状黒鉛は、複数の鱗片状又は鱗状黒鉛、及び磨砕された黒鉛微粉からなるものであることが特に好ましい。球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材料を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。好ましい装置として、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。この装置を用いて処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒にするのが好ましい。周速度は、より好ましくは、40m/秒以上であり、更に好ましくは500m/秒以上である。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0054】
本発明の炭素材料は、上記の表面処理による球形化工程を施すことにより、鱗片状の天然黒鉛が折りたたまれる、もしくは周囲エッジ部分が球形粉砕されることにより球状とされた母体粒子に、粉砕により生じた主に5μm以下の微粉が付着してなる。本発明の炭素材料を製造するためには、表面処理後の黒鉛粒子の、フロー式粒子像分析装置により測定した付着微粉の大きさが、0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)が0.4〜0.7となるまで、上記表面処理による球形化工程を続ける。また、本発明の炭素材料は、母体粒子へ微粉が強固に付着した状態が好ましい。例えば、超音波処理により剥離する微粉量を、母体粒子への微粉付着強度の指標とすることができる。本評価法の実施態様の一例としては、28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子の粒径5μm以下の粒子個数頻度をフロー式粒子像分析装置により測定する方法が挙げられる。本発明の炭素材料を製造するためには、上記処理済み炭素材料の粒径5μm以下の個数頻度が85%以下となるまで、上記表面処理による球形化工程を続けることが好ましい。
【0055】
リチウムイオン二次電池の構成
本発明の炭素材料及びそれを含む負極シートを用いて製造された本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、電解液、セパレータ、円筒形、角型、ラミネート、自動車用途や定置型電池用などの大型缶体、または筐体、PTC素子、絶縁板等の電池構成上必要な部材とともに構成される。構成部材の選択については発明の主旨を越えない限り特に制限されない。本発明のリチウムイオン二次電池は、通常少なくとも、下記の本発明の負極、正極及び電解質を有する。
【0056】
非水系二次電池用負極及び負極シート
本発明の炭素材料は、非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極活物質材料として好適に用いることができる。また、本発明の炭素材料(A)に、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長性炭素繊維、導電性カーボンブラック、非晶質被覆黒鉛、樹脂被覆黒鉛及び非晶質炭素よりなる群から選ばれる1種以上から構成され、本発明の炭素材料(A)とは形状又は物性の異なる炭素質粒子(以下、「炭素活質粒子(B)」と略記する)を更に含有させたものも、負極活物質材料として好適に用いることができる。
【0057】
炭素質粒子(B)を適宜選択して混合することによって、粒子変形による極板表面でのLi拡散パス阻害の防止、不可逆容量の低減が可能となる。炭素質粒子(B)を混合する場合の量の下限は、負極材料全体に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、上限は、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。5質量%を下回ると、初期不可逆容量の増大を招く場合があり、95質量%を上回ると、導電性の低下を招く場合がある。
【0058】
本発明の炭素材料(A)と炭素質活物質粒子(B)との混合に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、回転型混合機としては、円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬型混合機等が挙げられ、固定型混合機としては、らせん型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pugmill型混合機、流動化型混合機、シータコンポーザー、ハイブリダイザー、メカノフュージョン、等が挙げられる。
【0059】
また、負極シートを構成する活物質の一部に、Liと合金化可能な合金、珪化物、半導体電極を含んでいても良い。具体的には、Si、Al、Sn、SnSb、SnAs、SiO、SnO、SnO
2、SiC、ダイヤモンドにB、N、Pなどの不純物を含ませ半導体としたもの、これらのものからなる複合合金や不定比酸化物が考えられる。
【0060】
負極シートの構成は、本発明の炭素材料、上記の炭素質粒子のほか、極板成形用結着剤、増粘剤、並びに導電材を含有する活物質層を塗布した集電体からなる。活物質層は通常、これら集電体以外の部材から調整されるスラリーを集電体上に塗布、乾燥、所望の密度まで圧延(プレス)することにより得られる。
極板成形用結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料を使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられるが、特にスチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体等の水系結着材が好ましい。なお、有機系結着材用いると極板強度が低下するおそれがあり、更に、極板強度を向上させるために、水系結着材を用いる場合よりも多量の有機系結着材を添加する必要が生じるため、負極に含まれる活物質が減少し、電池容量の低下を招くおそれがある。極板成形用結着剤は、負極材料/極板成形用結着剤の重量比で、通常90/10以上、好ましくは95/5以上、通常99.9/0.1以下、好ましくは99.5/0.5以下の範囲で用いられる。
増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース、またはこれのNa塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、及びカゼイン等が挙げられる。これら増粘材としては、制限が無く使用できるが、塩基性側で構造変化が無いものが好ましい。
導電材としては、銅又はニッケル等の金属微粉材料、グラファイト又はカーボンブラック等の小粒径炭素材料等が挙げられる。
集電体の材質としては、銅、ニッケル又はステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工しやすいという点及びコストの点から銅箔が好ましい。
【0061】
活物質層の密度は、用途により異なるが、容量を重視する用途では、通常1.55g/cm
3以上である。充分な単位体積あたりの電池容量を得るためには、1.60g/cm
3以上が好ましい。一方、密度が高すぎると高速充放電特性が低下する傾向があるので、一般的に炭素材料のみで構成される負極シートの場合、1.90g/cm
3以下が好ましい。なお、ここで活物質層とは集電体上の活物質、極板成形用バインダー、増粘剤、導電材等よりなる合剤層をいい、その密度とは電池に組立てる時点での活物質層の嵩密度をいう。
【0062】
非水系二次電池
本発明の炭素材料を用いて製造された本発明の非水系二次電池用負極は、特にリチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の負極として極めて有用である。このような非水系二次電池を構成する正極、電解液等の電池構成上必要な部材の選択については特に制限されない。
【0063】
以下に、非水系二次電池を構成する部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。本発明の非水系二次電池は、通常少なくとも、本発明の負極、正極及び電解質を有する。
【0064】
正極は、正極集電体上に正極活物質、導電剤及び極板成形用バインダーを含有する活物質層を形成してなる。活物質層は通常正極活物質、導電材及び極板成形用バインダーを含有するスラリーを調製し、これを集電体上に塗布、乾燥することにより得られる。
正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料、フッ化黒鉛等の炭素質材料等のリチウムを吸蔵/放出可能な材料を使用することができる。具体的には、例えば、LiFePO
4、LiFeO
2、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4及びこれらの非定比化合物、MnO
2、TiS
2、FeS
2、Nb
3S
4、Mo
3S
4、CoS
2、V
2O
5、P
2O
5、CrO
3、V
3O
3、TeO
2、GeO
2、LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2等を用いることができる。
正極導電材としては、カーボンブラック、小粒径黒鉛などが挙げられる。
正極集電体としては、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する金属又はその合金を用いるのが好ましく、IIIa、IVa、Va族(3B、4B、5B族)に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、例えば、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金等を例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。
【0065】
電解質としては、電解液、固体電解質、ゲル状電解質等が挙げられるが、中でも電解液、特に非水系電解液が好ましい。非水系電解液は、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。
溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩等を用いることができる。具体的には、例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3からなる群から選択される一種以上の化合物を用いるのが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート等を用いることができる。溶質及び溶媒はそれぞれ1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも非水系溶媒が、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有するものが好ましい。またビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の化合物やジフルオロリン酸リチウムのようなジフルオロリン酸塩等が添加されていても良い。更に、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン等の過充電防止剤が添加されていても良い。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上が好ましく、特に0.5mol/L以上が好ましく、2mol/L以下が好ましく、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
【0066】
これらのなかでも本発明の負極と、金属カルコゲナイド系正極と、カーボネート系溶媒を主体とする非水電解液とを組み合わせて作成したリチウムイオン二次電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、高速充放電特性に優れる。
正極と負極の間には、通常正極と負極が物理的に接触しないようにするためにセパレータが設けられる。セパレータはイオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータの材質及び形状は、特に限定されないが、電解液に対して安定で、保液性が優れたものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
【0067】
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に制限されず、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0069】
(i)電極シートの作製方法
本発明の炭素材料を負極材料として用い、活物質層密度1.70±0.03g/cm
3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材料20.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を20.00±0.02g(固形分換算で0.200g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン0.50±0.05g(固形分換算で0.2g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。このスラリーを、集電体である厚さ18μmの銅箔上に、負極材料が14.5±0.3mg/cm
2付着するように、ドクターブレードを用いて幅5cmに塗布し、室温で風乾を行った。更に110℃で30分乾燥後、直径20cmのローラを用いてロールプレスして、活物質層の密度が1.70±0.03g/cm
3になるよう調整し電極シートを得た。
【0070】
(ii)非水系二次電池の作製方法
上記方法で作製した電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容量比=3:7)に、LiPF
6を1mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池を作製した。
【0071】
(iii)電池充電時の電極膨張率の測定方法
上記非水系二次電池を用いて、下記の測定方法で電池充電時の電極膨張率を測定した。
0.16mA/cm
2の電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.02mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cm
2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう充放電サイクルを3サイクル繰り返した。上記放電状態のコイン電池をアルゴン雰囲気下で解体して電極を取り出し、このときの電極厚みを測定し、下記式(I)に従って放電時の電極膨張率d
dc(%)を算出した。また、上記3サイクル充放電後のコイン電池を更に0.16mA/cm
2の電流密度で300mAh/g充電し、同様に電極厚みを測定し、下記式(II)に従がってd
c(%)を算出した。更に、下記式(III)に従い、Liイオンのインターカレーションによる正味の電極膨張率d(%)を算出した。
【0072】
(I)d
dc=(放電時の電極厚み−銅箔厚み)/(乾燥時の電極厚み−銅箔厚み)×100
(II)d
c =(300mAh/g充電時の電極厚み−銅箔厚み)−(乾燥時の電極厚み−銅箔厚み)/(乾燥時の電極厚み−銅箔厚み)×100
(III)d =d
c − d
dc
【0073】
実施例1
前記測定法で測定した、粒径d50、タップ密度、比表面積がそれぞれ19.8μm、1.07g/cm
3、6.7m
2/gである球状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−3型にて、ローター周速度60m/秒で4分間の機械的作用による球形化処理を更に行うことにより、28kHzの超音波を出力60Wで10分間照射した該炭素材料粒子において、フロー式粒子像分析装置により測定した粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)が0.45であるサンプルを得た。これについて、前記測定法で粒径d50、タップ密度、比表面積、XRD、RamanR値、FPIA、を測定した。結果を表1、表2に示す。また、前記測定法に従い、電極膨張率dを測定した。この結果を表3に示す。
【0074】
実施例2
前記測定法で測定した、粒径d50、タップ密度、比表面積がそれぞれ16.9μm、1.02g/cm
3、6.8m
2/gである球状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS−3型にて、ローター周速度60m/秒で4分間の球形化処理を更に行うことにより、実施例1と同様の方法にて測定した粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)が0.49であるサンプルを得た。これについて、実施例1同様の測定を行った。これらの結果を表1から表3に示す。
【0075】
比較例1
実施例1記載の原料球形化黒鉛(粒径d50、タップ密度、比表面積がそれぞれ19.8μm、1.07g/cm
3、6.7m
2/g)を用いて、実施例1と同様の測定を行った。この原料黒鉛粒子について、これらの結果を表1から表3に示す。実施例1と同様の方法にて、上記黒鉛の粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)を測定すると、0.39であった。
【0076】
比較例2
実施例1記載の原料球形化黒鉛を作製する際に用いたものと同様の原料を用い、且つ球形化度が実施例1記載の原料球形化黒鉛よりも低い天然黒鉛(粒径d50、タップ密度、比表面積がそれぞれ18.9μm、0.90g/cm
3、5.4m
2/g)を用いて、実施例1同様の測定を行った。この原料黒鉛粒子について、実施例1と同様の方法にて、上記黒鉛の粒径0.6〜0.7μmの粒子個数頻度と、粒径0.7〜5μmの粒子個数頻度の比(0.6〜0.7μmの粒子個数頻度/0.7〜5μmの粒子個数頻度)を測定すると、0.27であった。これらの結果を表1から表3に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
比較例1、及び比較例2の炭素材料では、機械的作用による表面処理、その結果の球形化工程が十分でないため、電極作成の際、特に電極のプレスにより、各黒鉛粒子の結晶子のC軸が金属製集電体の面方向へ配向する。このため、電極密度1.7g/cm
3になるように作製された電極の配向比(110)/(004)が0.04、0.02と本発明の範囲を大きく下回り、その結果としてLiイオン挿入による正味の電極膨張率(d)が増大している。
【0081】
一方で、実施例1、及び実施例2の炭素材料では、球形化処理済の天然黒鉛に更に球形化処理を施すことにより、高い球形化度が得られたため、各黒鉛粒子の結晶子のC軸が金属製集電体の面方向へ配向しにくくなり、電極密度1.7g/cm
3になるように作製された電極の配向比が0.06、0.08と規定範囲内に含まれている。その結果としてLiイオン挿入による正味の電極膨張率(d)が低減している。