特許第5754151号(P5754151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754151
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ウォームギヤ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   F16H1/16 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-20496(P2011-20496)
(22)【出願日】2011年2月2日
(65)【公開番号】特開2012-159163(P2012-159163A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】辻本 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊行
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201381(JP,A)
【文献】 特開平06−058375(JP,A)
【文献】 特開平10−285870(JP,A)
【文献】 特開2005−121124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付穴を有するハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に組み付けられる樹脂製のウォームホイールと、該ウォームホイールに噛合する樹脂製のウォームと、前記取付穴に組付けられ前記ウォームを回転自在に支承する軸受部材とを有するウォームギヤ装置において、
前記軸受部材は、樹脂材より形成され、前記ウォームの基端軸部を支承する基端支承部と、前記ウォームの先端軸部を支承する先端支承部と、前記基端支承部と前記先端支承部とを一体に連結するとともに、前記ウォームの軸線に対して前記ウォームホイールの反対側に、前記ウォームの歯先円との間に隙間を設けて形成された規制壁と、を備え、
前記ウォームは、前記歯先円および歯底円の径が夫々一定に形成され、
前記ウォームと前記ウォームホイールとは、前記ウォームの前記歯先円と前記ウォームホイールの歯底円との間の頂げき、および前記ウォームホイールの歯先円と前記ウォームの前記歯底円との間の頂げきが、夫々零となるように形成され、
前記ウォームの前記基端軸部には、前記軸受部材の基端に先端側端面を当接させる鍔部材が形成され、
前記ウォームおよび前記軸受部材が前記取付穴に挿入された際に、前記鍔部材の基端側端面に当接するとともに前記ハウジングに固定される樹脂製の抜け止め部材を、さらに備えるウォームギヤ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ウォームが形成する歯先円は、前記ウォームの基端軸部外径より小さく、かつ、前記ウォームの先端軸部外径より大きいものであり、
前記軸受部材の前記規制壁は、前記ウォームと同軸心の円筒状曲面を有し、該円筒状曲面の内径は、前記基端支承部の内径がより小さく、かつ、前記先端支承部の内径より大きいものであるウォームギヤ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ウォームと前記ウォームホイールとの軸間距離は、25〜40mmであり、減速比は、50〜80であるウォームギヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置による回転を減速して伝達するウォームギヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置により出力される回転は、その回転速度が減速されて最終的に作動する装置に伝達される。このように減速することで、トルクを増加させるとともに必要な作動速度を得るものである。このような減速に使用される減速装置としてウォームとウォームホイールとからなるウォームギヤ装置が知られている。これは、ねじ歯車(ウォーム)とそれに合うはす歯歯車(ウォームホイール)とを90度の角度で交差させて組み合わせた機構であり、一段で比較的高い減速比が得られるものである。
【0003】
例えば、特許文献1のウォームギヤは、ウォームの噛合するウォームホイールとは反対側に設けられた第1規制面と、ウォームホイールの軸線方向に対向する位置に設けられた第2規制面とを備えている。ウォームホイールとの噛合による押圧力によってウォームが撓んだ場合には、これらの第1及び第2規制面によりウォームの変形移動を規制し、ウォームがウォームホイールから離脱するのを防止するというものが記載されている。
【0004】
特許文献2のウォームギヤは、鼓形ウォームの端部においてピッチ円半径が拡径するテーパウォーム部を設け、圧力角が小さく設定されたウォーム歯であってもウォームホイールとの有効かみ合数を多く確保するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131111号公報
【特許文献2】特開2009−47267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術では、ウォームの撓みを規制する第1及び第2規制面は、ウォームの先端側端部の移動を規制する位置に軸受部を支持するように設けられている。ウォームが撓むのはウォームホイールとのかみ合う歯の中心付近である。そのため、ウォームの剛性が低い場合には噛み合いの中心付近の撓みが大きくなって噛合いが外れる可能性があるという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された技術では、鼓形で形状が複雑なウォームであるため、樹脂成型が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、ウォームの撓みによるギヤ歯の噛み合い外れを防止し、樹脂により容易に製造可能なウォームギヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る発明の構成上の特徴は、取付穴を有するハウジングと、前記ハウジングに回転可能に組み付けられる樹脂製のウォームホイールと、該ウォームホイールに噛合する樹脂製のウォームと、前記取付穴に組付けられ前記ウォームを回転自在に支承する軸受部材とを有するウォームギヤ装置において、前記軸受部材は、樹脂材より形成され、前記ウォームの基端軸部を支承する基端支承部と、前記ウォームの先端軸部を支承する先端支承部と、前記基端支承部と前記先端支承部とを一体に連結するとともに、前記ウォームの軸線に対して前記ウォームホイールの反対側に、前記ウォームの歯先円との間に隙間を設けて形成された規制壁と、を備え、前記ウォームは、前記歯先円および歯底円の径が夫々一定に形成され、前記ウォームと前記ウォームホイールとは、前記ウォームの前記歯先円と前記ウォームホイールの歯底円との間の頂げき、および前記ウォームホイールの歯先円と前記ウォームの前記歯底円との間の頂げきが、夫々零となるように形成され、前記ウォームの前記基端軸部には、前記軸受部材の基端に先端側端面を当接させる鍔部材が形成され、前記ウォームおよび前記軸受部材が前記取付穴に挿入された際に、前記鍔部材の基端側端面に当接するとともに前記ハウジングに固定される樹脂製の抜け止め部材を、さらに備えることである。
【0011】
請求項に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記ウォームが形成する歯先円は、前記ウォームの基端軸部外径より小さく、かつ、前記ウォームの先端軸部外径より大きいものであり、前記軸受部材の前記規制壁は、前記ウォームと同軸心の円筒状曲面を有し、該円筒状曲面の内径は、前記基端支承部の内径がより小さく、かつ、前記先端支承部の内径より大きいことである。
【0012】
請求項に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2において、前記ウォームと前記ウォームホイールとの軸間距離は、25〜40mmであり、減速比は、50〜80であることである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、ウォームを支承する軸受部材の基端支承部と先端支承部とが規制壁に連結されて一体に形成されているので、部品点数を減少させ、別々に部品を製作した場合の累積的誤差の発生を防止する。そのため、基端支承部及び先端支承部を同軸心に容易に製作することやウォームの歯先円と規制壁との間に設ける隙間の製作誤差を小さくすることができ、軸受部材により高い精度でウォームを支承することができる。また、ウォームがウォームホイールによって撓んだときには、ウォームホイールの反対側に配置された規制壁にウォームの歯先が接触してウォームの撓みによる変形を押し止めるので、大きく撓むことが防止されてウォームホイールとウォームとの噛合が外れるのを防止することができる。ウォームは鼓形の複雑な形状にする必要がないので、樹脂により容易に製造することができる。
また、頂げきが零となるようにウォーム及びウォームホイールにおいて夫々の歯たけ(歯先円と歯底円との差)が形成されているため、従来のように頂げきのために短く形成されていた歯たけを、頂げきが無い分だけ長く伸ばすことができる。これによりウォームが撓んだ場合にもウォームホイールとウォームとの噛合いが外れるのを防止することができる。また、ウォームおよびウォームホイールは樹脂製であるため、頂げきが設定されていなくとも、ウォームホイールの押圧力によってウォームが弾性変形して撓むため、ウォームホイールの歯先とウォームの歯底との間に頂げきが自然形成され、滑らかにウォームからウォームホイールへトルクを伝達して回転することができる。
【0015】
請求項に係る発明では、前記軸受部材の前記規制壁の円筒状曲面の内径は、前記基端支承部の内径より小さく、かつ、前記先端支承部の内径より大きいことから、先端軸部へ行く程径が小さく形成されたウォームを容易に挿入できる。そのため、ウォームの先端を軸受部材の基端支承部から挿入するだけで、軸受部材にウォームを迅速かつきわめて容易に組み付けることができる。また、規制壁は支承するウォームと同軸心の円筒状曲面を有しているので、ウォームの多方向の撓み変形を適切に規制することができる。
【0016】
請求項に係る発明では、前記ウォームと前記ウォームホイールとの軸間距離は、25〜40mmであり、減速比は、高い減速比である50〜80であるため、ウォームに対してウォームホイールの径が大きくなる。このようにウォームホイールの径が大きくなることに合わせてウォームの軸受け間距離が長くなるためウォームの曲げ剛性が低くなり、噛合の際にウォームホイールの押圧力によって撓んで、ウォームとウォームホイールとの噛合いが外れ易くなる。しかし、本件発明によると頂げきを無くした分だけ歯たけを長く伸ばすことで、噛み合いにおけるウォームの歯及びウォームホイールの歯の各歯相互の重なりを大きく取ることが可能であり、ウォームホイールとウォームとの噛合いが外れるのを防止することができる。ウォームが撓んだ場合にも、ウォームホイールの反対側の規制壁にウォームの歯先が接触してウォームの撓みによる変形を押し止めるので、ウォームホイールとウォームとの噛合が外れるのを防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態におけるウォームギヤ装置の概要を示す図である。
図2】軸受部材を示す斜視図。
図3】軸受部材の断面図。
図4】軸受部材の内壁部の一部を拡大して示す説明図。
図5】軸受部材を先端部側から示す図。
図6】軸受部材を基端部側から示す図。
図7】ウォームを示す正面図。
図8】軸受部材にウォームを組み付けた状態を示す図。
図9】軸受部材にウォームを組み付けた状態を軸受部材の断面で示す図。
図10】ウォームとウォームホイールとの噛合を示す図。
図11】ウォームとウォームホイールとの噛合において加わる力の状態を示す図。
図12】第2実施形態における軸受部材の斜視図。
図13】同軸受部材を異なる方向から見て示す斜視図。
図14】軸受部材に組み付けられたウォームにウォームホイールが噛合している状態を示す図。
図15】軸受部材に組み付けられたウォームにウォームホイールが噛合している状態を軸受部材の断面で示す図。
図16】軸受部材の内壁部の一部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
本発明の第1実施形態のウォームギヤ装置2と電動モータ4と出力軸6との関係を、図に基づいて以下に説明する。図1に示すように、電動モータ4のモータ軸8はハウジング10の一端部に形成された取付け穴12に傾斜させた状態で挿入され、電動モータ4は取付穴12の外側端部にボルト14により組み付けられている。ウォームギヤ装置2は、例えば夫々ナイロン樹脂製のウォーム16とウォームホイール18とを主に備える。電動モータ4のモータ軸8にはカップリング20を介してウォーム16の基端軸部22が連結され、ウォーム16はハウジング10に設けられた取付穴12に組付けられた軸受部材24に軸線回りに回転自在に支承されている。軸受部材24は、図2及び図3に示すように、片側の側壁を開放して窓部26が形成された略円筒形に形成されている。軸受部材24の基端の外周には図2図3及び図6に示すように、フランジ部28が形成され、先端側の外周には図2図3及び図5に示すように、小径の段部30が形成されている。フランジ部28及び段部30には、図2及び図5に示すように、夫々一対の面取り部32,34が設けられ、これらの面取り部32,34によって軸受部材24がハウジング10の取付穴12に嵌着された状態で軸心回りに回転不能に固定される。軸受部材24の内壁部には、図3に示すように、ウォーム16の先端軸部36を支承する先端支承部38と、ウォーム16の基端軸部22を支承する基端支承部40と、先端支承部38および基端支承部40間に連続して一体に設けられた規制壁42と、を有している。規制壁42の円筒状曲面の内径は、内壁部の段差を拡大したモデルで示す図4のように、基端支承部40の内径より小さく、かつ、先端支承部38の内径より大きく設けられている。基端支承部40と先端支承部38の製作公差は厳密に管理され、例えば1000分の1mmの単位で管理される。また、ウォーム16が形成する歯先円r1の径は、図4に示すように、ウォーム16の基端軸部22の外径より小さく、かつ、ウォーム16の先端軸部36の外径より大きく形成されている。
【0019】
ウォーム16の基端軸部22及び先端軸部36も軸受部材24と同様に、製作公差が1000分の1mmの単位で管理される。ウォーム16を軸受部材24に挿入した場合、ウォーム16の先端軸部36は軸受部材24の先端支承部38に、ウォーム16の基端軸部22は軸受部材24の基端支承部40に夫々回転自在に支承され、ウォーム16の歯先(歯先円r1)と規制壁42との間には所定の隙間tとして例えば0.2mmが設けられる。
【0020】
本実施形態では、歯先円がR1であり歯底円がR2であるウォームホイール18と、歯先円がr1であり歯底円がr2であるウォーム16との噛み合いにおいて、図10に示すように、ウォームホイール18の歯先円R1とウォーム16の歯底円r2との間の頂げき、及びウォーム16の歯先円r1とウォームホイール18の歯底円R2との間の頂げきが設けられていない。ウォーム16における歯先円r1と歯底円r2との差(又はウォームホイール18における歯先円R1と歯底円R2との差)である「歯たけ」は、頂げきが設けられない分だけ長く伸ばして形成されている。
【0021】
出力軸6を有するウォームホイール18のウォーム16に対する減速比を例えば60、ウォームホイール18とウォーム16との軸間距離を例えば35mm、モジュールm=1とすると、ウォームホイール18は、ピッチ円の直径は60mmで歯数60、ウォーム16は、平均円直径が10mmで歯形係数10となる。このように減速比が高い場合には、ウォーム16に対するウォームホイール18の直径が大きくなるところからウォーム16の両端を支持する軸間距離が長くなる。そのため、ウォーム16が低剛性の樹脂で製作されている場合、ウォーム16がウォームホイール18の押圧力で撓み易く、ウォームホイール18とウォーム16との噛合が外れるおそれがある。また、モジュールm=1の場合、ウォーム16の歯たけ=m×2.25で一般には形成されることから、歯たけは2.25mmとなる。また、頂げきは、歯たけの25%とするのが一般的である。本件実施形態では、頂げきをなくし、その分だけ歯たけを伸ばすところから、2.25×0.25=0.5625mmだけ歯たけを伸ばすことができる。この歯たけの伸び分は、噛合するウォームホイール18の歯たけについても適用されるため、併せて1.125mmだけ歯が噛合う長さが伸ばされる。
【0022】
次に、上記のように構成されたウォームギヤ装置2をハウジング10に組み付ける場合について説明する。まず、軸受部材24にウォーム16を挿入する。軸受部材24の規制壁42の円筒状曲面の内径は、基端支承部40の内径より小さく、かつ、先端支承部38の内径より大きいことから、軸受部材24の内径は基端側から先端側に行く程小さくなっている。一方、ウォーム16が形成する歯先円r1は、ウォーム16の基端軸部22の外径より小さく、かつ、ウォーム16の先端軸部36の外径より大きいものであり、軸受部材24の内径と同様に基端軸部22より先端軸部36に向かって外径が小さくなっている。そのため、軸受部材24とウォーム16との組み立てにおいて、ウォーム16の先端軸部22を軸受部材24の基端支承部40から挿入するだけで、迅速かつきわめて容易に組み付けることができる。ウォームの基端軸部22には鍔部材25が相対移動不能に周設され、鍔部材25の先端側端面は軸受部材24のフランジ部28の端面に接触可能になっている。
【0023】
次に、ウォーム16が組み付けられた軸受部材24をハウジング10の取付穴12に挿入する。その際に、軸受部材24の窓部26がウォームホイール18が組み付けられる側となるように配置する。取付穴12には軸受部材24の段部30の面取り部34と、フランジ部28の面取り部32とに夫々嵌合する図略の嵌合穴が形成され、これらの嵌合穴によって軸受部材24はハウジング10に対して軸線回りの相対回転が規制される。次に、
取付穴12に樹脂製の抜け止め部材35を嵌入し、抜け止め部材35の外縁部をボルトによりハウジング10に固定する。抜け止め部材35の先端部は鍔部材25の基端側端面に当接させる。この抜け止め部材35と軸受部材24のフランジ部28とによりウォーム16に固定された鍔部材25を挟持することで、ウォーム16がスラスト方向に移動することを規制するスラスト軸受として機能する。
【0024】
次に、ウォームホイール18の出力軸6の一端部がハウジング10の図略の軸受穴に嵌入され、かつウォーム16の歯車とウォームホイール18の歯車とが90度傾斜させて噛合させることでウォームホイール18が、ハウジング10及びウォーム16に組み付けられる。そして、前記出力軸6の他端部が挿入される軸受穴を有する図略の蓋体でハウジング10に蓋をし、ボルト等で前記蓋体をハウジング10に固定する。
【0025】
次に、電動モータ4を組み付ける。電動モータ4のモータ軸8をウォーム16の基端軸部22の基端部にカップリング20によって連結する。そして、ボルト14でハウジング10に形成された図略の雌ねじ穴に螺合させることで電動モータ4のケーシングをハウジング10に組み付ける。
【0026】
次に、本実施形態のウォームギヤ装置2の作動について、図に基づいて以下に説明する。まず、電源を入れることで、電動モータ4を駆動させる。電動モータ4はモータ軸8を回転させ、モータ軸8は連結されたウォーム16に回転トルクを伝達する。これによってウォーム16は軸線回りに回転するが、本実施形態では、前述のように歯先円がR1であり歯底円がR2であるウォームホイール18と、歯先円がr1であり歯底円がr2であるウォーム16との噛み合いにおいて、図10に示すように、ウォームホイール18の歯先円R1とウォーム16の歯底円r2との間の頂げき、及びウォーム16の歯先円r1とウォームホイール18の歯底円R2との間の頂げきが設けられていない。そして、頂げきの長さ分ウォームホイール18及びウォーム16の夫々の歯たけが長く伸ばされて形成されている。
【0027】
一般の歯車において噛合する歯車間に頂げきがないと、一方の歯車の歯先が他方の歯車の歯底を干渉するため円滑な回転ができない。しかし、本件実施形態ではウォーム16及びウォームホイール18がナイロン製樹脂で形成されているため、ウォーム16とウォームホイール18の歯が噛み合ったときに、図11に示すように、夫々の歯には接触する歯面に垂直な方向に押圧力F,fが働き、この押圧力F,fは夫々軸間方向に向かう力F1,f1の成分と水平に向かう力F2,f2の成分とに分けることができる。このうち軸間方向に向かう力F1,f1の成分によって、樹脂製のウォーム16が撓んで弾性変形することで、頂げきが自然に生じてウォームホイール18を円滑に回転させる。そして、歯たけが、前述のように0.5625mm伸ばされ、ウォーム16の歯先円r1と軸受部材24の規制壁42の隙間tは0.2mmであるため、ナイロン樹脂製のウォーム16がウォームホイール18の押圧力で撓んだとしても、0.2mmまでで規制されるため、ウォーム16とウォームホイール18との噛合が外れることが防止される。
【0028】
上記のように構成されたウォームギヤ装置2によると、ウォーム16を支承する軸受部材24の基端支承部40と先端支承部38とが規制壁42に連結されて一体に形成されているので、部品点数を減少させるとともに、別々に製作した場合に生じる累積的誤差の発生を防止する。そのため、基端支承部40及び先端支承部38を同軸心に製作する場合や規制壁42及びウォーム16の歯先円r1との間に設けられる隙間tの製作誤差を小さくすることができ、軸受部材24によって高い精度でウォーム16を支承することができる。また、ウォーム16がウォームホイール18によって撓んだときには、規制壁42にウォーム16の歯先が接触してウォーム16の撓みによる変形を押し止めるので、大きく撓むことが防止されてウォームホイール18とウォーム16との噛合が外れるのを防止することができる。ウォーム16は、ストレート型であるため、樹脂により型製造した場合の離型も容易に行うことができる。
【0029】
また、頂げきが零となるように夫々の歯たけが形成されているため、従来のように頂げきのために短く形成されていた歯たけを、頂げきが無い分だけ長くすることができる。これによりウォーム16が撓んだ場合にもウォームホイール18とウォーム16との噛合が外れるのを防止することができる。また、ウォーム16は樹脂製であるため、頂げきが設定されていなくとも、ウォームホイール18の押圧力によってウォーム16が弾性変形されて撓むため、ウォームホイール18の歯先とウォーム16の歯底との間に頂げきが自然形成され、滑らかにウォーム16からウォームホイール1へトルクを伝達して回転することができる。
【0030】
また、軸受部材24の規制壁42の円筒状曲面の内径は、基端支承部40の内径がより小さく、かつ、先端支承部38の内径より大きいものことから、軸受部材24とウォーム16との組み立てにおいて、ウォーム16の先端を軸受部材24の基端支承部40から挿入するだけで、迅速かつきわめて容易に組み付けることができる。
【0031】
また、ウォーム16とウォームホイール18との軸間距離は、35mmであり、減速比は、高い減速比である60であるところから、ウォームホイール18の径が大きくなり、それに合わせてウォーム16の軸受け間距離が長くなるところからウォーム16が、噛合の際にウォームホイール18の押圧力によって撓んで、ウォーム16とウォームホイール18との噛合いが外れやすくなる。しかし、本実施形態のウォームギヤ装置2では、頂げきをなくした分だけ歯たけを長くとることが可能となり、ウォーム16の歯とウォームホイール18の歯との噛合いにおける重なりを大きく取ることができるので、ウォームホイール18とウォーム16との噛合が外れるのを防止することができる。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明の第2実施形態のウォームギヤ装置52について、図に基づいて以下に説明する。本実施形態における軸受部材54は、図12及び図13に示すように、窓部56が設けられた略円筒形状という点で第1実施形態と共通するが、第1実施形態におけるフランジ部や段部が設けられておらず、面取りがなされていない点について、第1実施形態と相違する。また、図14及び図15で示すように、ウォーム16が組み付けられた時には、第1実施形態では軸受部材54の内壁の規制壁に該当する部分において、ウォーム16の歯先に常時接する中央支承部58が設けられている点において第1実施形態と相違する。そして、本実施形態では、中央支承部58の製作公差は1000分の1mm単位まで厳しく管理される。図16に示すように、主に中央支承部58においてウォーム16を支承するが、先端支承部60及び基端支承部62においてウォーム16を支承してもよい。
【0033】
本実施形態においても、中央支承部58、先端支承部60及び基端支承部62がナイロン製樹脂により一体に形成されていることから、第1実施形態の軸受部材24と同様に、基端支承部62及び先端支承部60を同軸心に製作する場合やウォーム16の歯先に接触させて支承する中央支承部58を製作する場合の製作誤差を小さくすることができ、軸受部材54によって高い精度でウォーム16を支承することができる。また、ウォームホイール18による押圧力が主に作用する中央部において、中央支承部58がウォーム16の撓みを規制するので、ウォーム16が撓むことでウォーム16とウォームホイール18との噛合が外れることが防止される。その他の構成及び作用は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
なお、上記実施形態において、ウォーム16及びウォームホイール18が形成された樹脂をナイロン製樹脂としたが、これに限定されず、例えば、ジュラコン等の樹脂でもよい。また、ウォームホイールは樹脂製に限定されず、例えば鋼鉄製でもよい。
【0035】
また、軸受部材の規制壁は、円筒状曲面を有するものとしたが、これに限定されず、例えば平面板状であってもよい。
【0036】
また、ウォームとウォームホイールとは、軸間距離が35mm、減速比が60、モジュールが1としたが、これに限定されず、例えば軸間距離40mm、減速比が80、モジュールが1.25でもよい。
【0037】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【符号の説明】
【0038】
2…ウォームギヤ装置、16…ウォーム、18…ウォームホイール、22…基端軸部、24…軸受部材、36…先端軸部、38…先端支承部、40…基端支承部、42…規制壁、52…ウォームギヤ装置、54…軸受部材、R1…歯先円(ウォームホイール)、R2…歯底円(ウォームホイール)、r1…歯先円(ウォーム)、r2…歯底円(ウォーム)。
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