(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1に開示の技術においては、金型温度によって、樹脂の離型状態をコントロールして、意匠面に発生するヒケを防止する。
しかし、金型温度の調整による離型状態のコントロールには、限界があり、意匠面側金型は製品取り出し後樹脂が変形するような高温にまでは加熱できないが、ガラス転移点温度以上の金型温度では成形品の変形が問題となることがあった。また、反意匠面側の樹脂と金型との離型が遅い場合には、反意匠面側のスキン層が発達して意匠面側の樹脂が、樹脂の収縮の影響を強く受けてしまうのでヒケ低減の効果が低減することがあった。同様に非意匠面側の金型温度を意匠面側の金型温度より大きく下げすぎると、やはりスキン層の発達を促進してヒケ低減効果が減少することがあった。
【0011】
従って、前述した従来技術においては、金型内での樹脂の離型状態を十分に制御できないケースが発生し、そのような場合には、結果として、意匠面に発生するヒケを防止できない可能性がある。本発明は、以上、説明したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、従来技術に比較して、より効果的にヒケを防止する射出成形方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明による射出成形方法は、
(1) 固定型と可動型で形成された金型装置の金型キャビティ内に、溶融した熱可塑性樹脂を射出充填して成形する樹脂の射出成形方法において、該金型キャビティについて、意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度が反意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度より
3℃以上30℃以内の範囲で高くなるように設定
するとともに、非晶性樹脂を成形する場合に、該意匠面側を形成する側の金型キャビティ面の温度について、成形する樹脂のガラス転移温度からガラス転移温度より20℃低い温度までの範囲内で設定し、溶融した樹脂を金型キャビティ内へ射出充填完了後、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力が
1秒から7秒までの時間範囲内で0Paになるようにした。
【0013】
(2)
固定型と可動型で形成された金型装置の金型キャビティ内に、溶融した熱可塑性樹脂を射出充填して成形する樹脂の射出成形方法において、該金型キャビティについて、意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度が反意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度より3℃以上30℃以内の範囲で高くなるように設定するとともに、結晶性樹脂を成形する場合に、該意匠面側を形成する側の金型キャビティ面の温度について、成形する樹脂のガラス転移温度より20℃低い温度より高く、且つ、成形する樹脂の融点より低い温度の範囲内で設定し、溶融した樹脂を金型キャビティ内へ射出充填完了後、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力が1秒から7秒までの時間範囲内で0Paになるようにした。
【0015】
(3) (1)又は(2)に記載の射出成形方法において、前記射出充填完了後、1秒から7秒までの時間範囲内で、金型装置の型締力を低下させた。
【0018】
(
4) (1)から(
3)までのいずれか1つに記載の射出成形方法において、前記意匠面側を形成する側の金型キャビティ面に断熱材を配した。
【0019】
(
5) (1)から(
4)までのいずれか1つに記載の射出成形方法において、前記射出充填完了後から、樹脂圧力が0Paになって5秒以内までに、反意匠面側の金型キャビティ面積1cm
2に対して、0.1Ncm
3から10Ncm
3の比率でガスを注入する。
【0020】
(
6) (
5)に記載の射出成形方法において、前記ガスの供給圧力が、0.1MPa以上10MPa以内の範囲とした。
【0021】
(
7)(
5)又は(
6)に記載の射出成形方法において、前記射出充填完了後、金型キャビティ内へガスを供給する、及び型締力を低下させる、の2つの動作を行い、わずかに型開きした。
【0024】
(
8) (1)から(
7)までのいずれか1つに記載の射出成形方法において、前記意匠面を形成する金型キャビティ面の外周部にシール部を配して、成形した樹脂の間に空気が流入することを防止する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による射出成形方法は、意匠面側の金型キャビティ温度を、反意匠面側の金型キャビティ温度より適正な範囲内で高くすることによって、製品の意匠面を形成する部分の離型を遅くしてヒケを抑制するという効果のみならず、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力について、射出完了後、所定時間範囲内で、0Paになるように樹脂を射出充填することによって、反意匠面側の樹脂を短時間で離型させることにで、意匠面側の樹脂について、樹脂収縮の影響を受けにくくして、ヒケの発生を抑制する。
【0026】
意匠面と反意匠面の金型キャビティ面の温度差については、その差が3℃未満であると局部的に温度の逆転領域が現れる可能性があり、30℃を超えると反意匠面側の樹脂の冷却速度が速くなりすぎてヒケ低減効果が低下する可能性がある。従って、意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度について、反意匠面側を形成する金型キャビティ面の温度より、3℃以上30℃以内の範囲で高くなるように設定すれば、意匠面側の金型キャビティ面の全体にヒケの低減効果を期待できる。
【0027】
また、仮に、樹脂圧力が0Paとなる時間が1秒間より短い場合は、スキン層が薄過ぎて形状保持性が劣る等の問題が発生する可能性があり、逆に7秒間より長いと金型キャビティと接触している間にスキン層が厚くなり過ぎて改善効果が薄れる可能性がある。従って、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御すれば、高いヒケの低減効果を期待できる。
【0028】
また、非晶性樹脂を成形する場合には、意匠面側を形成する側の金型キャビティ面の温度が、成形する樹脂のガラス転移温度より20℃低い温度(ガラス転移温度の−20℃)より高く、ガラス転移温度より低い範囲で設定できれば、樹脂の金型との密着性が更に高くなる。このとき金型キャビティ面の温度が樹脂のガラス転移点より20℃以上低いと、射出された樹脂の熱を受けても金型キャビティ面の表面温度がガラス転移点温度を超えることが難しく、ヒケ低減効果が低下する。逆に金型キャビティ面の温度がガラス転移点より高い場合は成形品の変形が問題となる。
【0029】
なお、結晶性樹脂を成形する場合において、前記意匠面側を形成する側の金型キャビティ面の温度について、成形する樹脂のガラス転移温度より20℃低い温度より高く、且つ、成形する樹脂の融点より低い温度の範囲内で設定することが好ましい。仮に、金型キャビティ面の温度が樹脂のガラス転移点より20℃以上低いと、射出された樹脂の熱を受けても金型キャビティ面の表面温度がガラス転移点温度を超えることが難しく、ヒケ低減効果が低下する。逆に金型キャビティ面の温度が融点より高い場合は成形品の形状が保持できずに問題となる可能性がある。
【0030】
なお、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力について、1秒から7秒までの時間範囲内で0Paにする方法としては、時間的制御が可能等という点で、型締め力を低下させる方法が好ましい。
【0031】
また、本発明において、樹脂の射出完了後から、金型内での樹脂圧力が0Paになって5秒以内までに、反意匠面側の金型キャビティ面積1cm
2に対して、0.1Ncm
3(ノルマル立方センチメートル)から10Ncm
3(ノルマル立方センチ)の比率でガスを注入すれば、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂との間を、確実に離間させて隙間を作ることができるので、ヒケの抑制がさらに強く期待できる。
なお、本発明において、通常のガスアシスト成形のように、金型キャビティ内にガスを大量に吹き込んだ場合は、樹脂の部分的な冷却固化を誘引するので、却って意匠面側のヒケ発生の要因となる。従って、余分な空気の使用は極力さけて、少量の空気を使用することが好ましい。
【0032】
そして、ガスを注入する際の圧力は、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂との間を離間させて離型させる程度の圧力が好ましく、範囲としては、0.1MPa以上10MPa以内である。
【0033】
また、本発明の射出成形方法において、溶融した樹脂を金型キャビティ内へ射出充填完了後、ガス供給及び金型装置の型締力低下の2つの動作を完了させてから、わずかに型開きすれば、より確実に、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御でき、さらに、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂を短時間で確実に離型させることができるので、ヒケの防止効果が高い。
【0034】
さらに、本発明によれば、反意匠面側の金型に孔部を形成してエジェクタピンを配し、該孔部とエジェクタピンの隙間から、金型キャビティ内にガスを導入すれば、反意匠面側の金型キャビティと製品の間に確実に隙間を作ることができ、離型を促進してヒケの改善を期待できる。
【0035】
また、意匠面を形成する金型キャビティ面の外周部にシール部を配して、成形した樹脂の間に空気が流入することを防止すれば、意匠面を形成する金型キャビティ面と製品との密着性を損いにくくなるので、ヒケの改善が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面等に基づいて本発明の実施形態の好ましい1例について、詳細に説明する。
図1から
図7は本発明の実施形態に係わり、
図1は本実施形態に使用した射出成形装置の全体図である。
図2は本実施形態に使用した第1の金型の断面図であり、
図3は本実施形態による射出成形方法を実施した場合の樹脂の挙動を説明するための概念図である。
図4は第2の金型の断面図であり、
図5は第3の金型の断面図である。
図6は第3の金型について、エジェクタ部分の構造を説明するための概念図である。
図7は本実施形態による第4の金型の断面図である。
【0038】
本実施形態に使用した射出成形装置100は、
図1に示すように、金型装置10、型締装置20、射出ユニット30、及び、型締装置20と射出ユニット30を制御する制御装置60とを備えている。そして、型締装置20に取り付けられた金型装置10は、固定型3と可動型4を備えて、両金型が組み合わされた状態で、その内部に金型キャビティ15を形成する構造となっている。
【0039】
図1に示すように固定型3は固定盤1に取り付けられ、可動型4は可動盤2に取り付けられている。従って、後述する型締装置20を作動させることにより、可動型4を固定型3に対して自在に前後進させることができる。
【0040】
次に本実施形態に用いた型締装置20について説明する。
図1に示した型締装置20は、可動盤2、固定盤1、エンドプレート5、型締シリンダ22、型締シリンダ22に駆動によって作動するトグル式型締機構8(トグル機構8と称することもある)、並びに、型締シリンダ22に所望の油圧を供給する図示しない油圧源等を備えて、可動盤2は、固定盤1とエンドプレート5との間に架設した4本のタイバー7に案内されて、型締シリンダ22で駆動されたトグル機構8により、可動型4とともに前後進できるよう構成されている。
【0041】
図1に示す型締装置20においては、タイバー7に図示しない型締力センサLを取り付けており、型締装置20によって金型10を型締めした際に、タイバー7の伸量を検出することにより、型締装置20による金型10の型締力を測定することができる。
【0042】
ここで、
図1に示した射出成形装置100の制御装置60は、型締制御装置61によって、型締シリンダ22に油圧を供給する型締制御バルブを制御し、金型装置10を自在に開閉し、また型締できるよう構成されている。
なお、
図1に示した実施形態においては、型締装置20の駆動装置として、油圧式でトグルタイプの型締機構を使用したが、本実施形態に使用できる型締機構はこれに限るものではなく、例えば、ボールネジとサーボモータを使用する電動式の型締装置等を使用しても良い。
【0043】
次に、射出ユニット30は、
図1に示すように、バレル32、バレル32に内装されたスクリュ34、バレル32内に樹脂を供給するホッパ38、スクリュ34を前後進させる射出シリンダ40、スクリュ34を回転させる油圧モータ42、並びに、射出シリンダ40と油圧モータ42に所望の油圧を供給する図示しない油圧源等を備え、さらに、バレル32外周面には図示しないヒータ等が取付けられている。
【0044】
射出ユニット30は、油圧モータ42によってスクリュ34が回転することにより、ホッパ38からペレット形状の樹脂をバレル32内に供給する構造となっており、該供給したペレット形状の樹脂は、バレル32に取付けられたヒータによって加熱され、また、スクリュ34の回転によって混練圧縮作用を受けることによって溶融し、スクリュ34の前方に送られる。スクリュ34の前方に送られ、溶融した樹脂(溶融樹脂と称することもある)は、射出シリンダ40により前進するスクリュ34によって、バレル32の先端部にあるノズル39から射出することができる。
【0045】
なお、制御装置60は、型締装置を制御する型締制御部61と該型締制御部に型締条件を設定する型締条件設定器、及び射出ユニット30を制御する射出制御装置63と該射出制御部に射出条件を設定する射出条件設定器等を備えている。
【0046】
ここで、
図1に示した射出成形装置100においては、
図2に示すように金型装置10内に樹脂通路として、ホットランナーを配しており、該ホットランナーの金型キャビティ15に向かう方向の先端部側にバルブゲート31を配した構成となっている。
【0047】
図1に示した射出成形装置100においては、前述の構成によって、バルブゲート31を開とした状態で射出ユニット30と金型キャビティ15の間の樹脂の流通を可能とし、バルブゲート31を閉とした状態で射出ユニット30と金型キャビティ15の間の樹脂の流れを遮断する。
【0048】
なお、前述の実施形態においては、金型装置10内にバルブゲート31を配する構成としたが、その配置に限るものではないことは勿論であって、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【0049】
以下、
図2を用いて本実施形態に使用した第1の金型10(第1金型10と称することもある)を説明する。本実施形態による第1金型10は、固定型3と可動型4を備えて、両金型が組み合わされた状態で、その内部に金型キャビティ15を形成する構造となっており、第1金型10において成形される樹脂の成形品は、長方形の平板に2本の大きな厚肉のリブが配された所謂、下駄型形状の製品である。
【0050】
ここで、第1金型10で成形される製品は、リブが配されていない側の方の面が、製品の使用の際に最終ユーザから見える可視面であり、外観に美観が要求される意匠面である。従って、
図2においては、固定型3が形成する金型キャビティ面が製品の意匠面を形成する意匠面側の金型キャビティ面であり、可動型4が形成する金型キャビティ面が反意匠側の金型キャビティ面となる。
【0051】
反意匠側の金型キャビティ面を形成する可動型4には、エジェクタプレート52とエジェクタピン54等が配されている。従って、
図1に示すような形で、射出成形装置100に取り付けられた際に、型締装置20に備えられたエジェクタ機構を作動させることによって、エジェクタプレート52が前後進して、エジェクタピン54を前後に駆動する構成となっている。
【0052】
また、第1金型10は、固定型3と可動型4の金型キャビティ面について、それぞれ独立して個別に温度の制御できる温度調整機構を備えており、固定型3には固定型温度調整ラインT1(温調ラインT1と称することもある)、可動型4には可動型温度調整ラインT2(温調ラインT2と称することもある)が、それぞれ別ラインとして配されている。
従って、第1金型10は、意匠側の金型キャビティ面を形成する固定型3と、反意匠側の金型キャビティ面を形成する可動型4について、それぞれ異なる温度に設定又昇温可能であって、所望する温度で温度管理可能である。
【0053】
更に、第1金型10は、固定型3と可動型4の金型キャビティ面について、それぞれ独立して個別に温度と圧力を測定できるセンサを備えており、固定型3については固定型温度測定センサTS1(温度センサTS1と称することもある)及び固定型圧力測定センサPS1(圧力センサPS1と称することもある)を備え、可動型4については可動型温度測定センサTS2(温度センサTS2と称することもある)及び可動型圧力測定センサPS2(圧力センサPS2と称することもある)を備えている。
【0054】
以下、本実施形態による射出成形方法について、その実施形態の好ましい1例を、第1実施形態として、
図2及び
図3を用いて説明する。
なお、成形にはABS樹脂(3元共重合体各々のガラス転移温度はアクリロニトリル:104℃、ブタジエン:−90℃、スチレン:100℃であるがアクリロニトリルの104℃が共重合体のガラス転移温度を支配する)を使用した。
第1実施形態においては、成形サイクルをスタートさせる前に、固定型3と可動型4の金型温度を事前に設定して金型10を所望する温度まで昇温してから、その温度を保持するように温度管理する。
【0055】
第1実施形態においては、固定型3について温調ラインT1の温度を90℃と設定し、可動型4について温調ラインT2の温度を80℃と設定して、昇温開始した。昇温開始してから1時間後には、固定型3の温度センサTS1が89℃であり、ABS中のアクリロニトリルのガラス転移温度104℃より15℃低く、可動型4の温度センサTS2が80℃で、温度差が9℃の状態で、良好な温度管理状態となった。
【0056】
なお、第1実施形態においては、固定型3と可動型4に取り付けた温度センサTS1及びTS2により温度管理を実施したが、温度管理はこの方法に限るものでないことは勿論であって、例えば、携帯式の接触式温度センサにより、運転者が測定しながら温調ラインT1或いはT2を調整して温度管理しても良く、できるかぎり、金型キャビティ面の表面部分近くを直に測定しながら金型温度管理することが好ましく、製品の連続運転中に金型キャビティ面温度を測定するタイミングとしては、製品取り出し直後の金型キャビティ温度が好ましい。
【0057】
第1の金型10が温度管理された状態になってから、
図3(1)の工程に進み、射出成形方法の成形サイクルをスタートさせる。第1実施形態では、最初の工程として、型締装置20に備えた型締シリンダ22によりトグル機構8を延伸させて、可動盤2を固定盤1の方向に移動させることによって、
図3(2)に示すように金型10を型閉動作して、型締力を負荷した状態で型締めする。この際に使用する型締力は、樹脂を成形するに十分な型締力である3000KNである。
【0058】
金型10が十分な型締力で型締めされた状態において、
図3(3)の工程に進み、射出ユニット30を作動させて樹脂の射出動作を行うと同時に、ホットランナーの先端部側に配したバルブゲート31を開として、金型キャビティ15内に溶融樹脂(本実施形態ではABS樹脂)を射出する。
なお、本発明に適応できる樹脂は、第1実施形態で使用する樹脂に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド、ポリスチレン、PC/ABS、AES等で適応可能である。
【0059】
第1実施形態では、溶融樹脂を金型キャビティ15内に射出し充填完了した後、すぐに、
図3(4)の工程に進み、トグル機構8を屈曲させて型締力を低下させる。この際に重要なポイントは、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように型締力を低下させる点にある。
なお、第1実施形態においては、この工程の際に、射出ユニット30で樹脂圧力を負荷する保圧工程を使用せずに、すぐにバルブゲート31を閉じる。
【0060】
そして、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について、金型キャビティ15内に配した圧力センサPS2で測定し、該PS2で測定した金型キャビティ内の樹脂圧力が0Paになるまで、型締力を低下させる。第1実施形態において、その際の型締力は、ほぼ0N(零)であった。
なお、第1実施形態においては、好ましい形態として、圧力センサを使用し、樹脂圧力を測定しながら型締力を低下させたが、センサで測定しなくても、型締力をほぼ0N(零)にすれば、金型キャビティ内の樹脂圧力が0Paになる。
【0061】
ここで、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について、1秒から7秒までの時間範囲内で0Paになるようにするためには、射出の際の樹脂量を減らす、射出完了後に型締力を低下させる、或いは、射出完了後に射出ユニットのスクリュを強制的にバックさせてからバルブゲートを閉じる等、の方法が考えられる。樹脂量を減少させる方法と、型締力を低下させる方法については、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力を迅速に0Paにすることができるという点で両方法とも効果があり、本発明の適応の範囲である。しかしながら、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力を0Paとする手段としては、キャビティ内全体を均等に0Paにできる、又時間的制御が簡単等、効果の点で、型締め力を低下させる方法が好ましい。そのため、第1実施形態では、型締力を低下させて、金型キャビティ内に射出充填した樹脂の圧力を迅速に0Paにする方法を採用した。特に薄肉化が求められる成形品においては、ショートショットを回避しながら、所定時間内に射出充填した樹脂の圧力を0Paにするには、型締め力を低下させることが効果的である。
【0062】
なお、第1実施形態においては、溶融した樹脂を金型キャビティ内へ射出充填完了後、型締装置20の型締力を低下させたが、そのままトグル機構8を屈曲させてわずかに型開きすれば、より確実に、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御できるという点で、さらに好ましい形態である。
【0063】
本実施形態においては、意匠面側の金型キャビティ温度を、反意匠面側の金型キャビティ温度より高くすることにより、製品の意匠面を形成する部分の離型を遅くすることのみならず、更に、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御することによって、
図3(5)に示すように、意匠面側の樹脂が金型キャビティ面から離型せずに密着した状態で、反意匠面側の樹脂を短時間で離型させることにより、意匠面側の樹脂が、樹脂収縮の影響を受けにくいようにして、ヒケの発生を抑制する。
【0064】
なお、樹脂圧力が0Paとなる時間が1秒間より短い場合は、充填した樹脂の溶融比率が高いので形状賦形性が劣る、スキン層が薄過ぎて形状保持性が劣る、又製品意匠面側のキャビティ面への張り付き性が悪い、等の問題が発生する可能性があり、7秒間より長いと金型キャビティと接触している間にスキン層が成長して厚くなり過ぎて改善効果が薄れる可能性があるので、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御することが好ましい。
【0065】
そして、
図3(5)の工程が完了後、樹脂が冷却されて固化した後、
図3(6)にように、金型10を完全に開いてから、エジェクタ機構を駆動して、エジェクタピン54により、製品を突き出して金型10から、製品を取り出す。
【0066】
なお、この際において、最終的に製品が、固定型3に残るか、可動型4に残るか、製品形状などによって決定するが、本実施形態においては、リブの収縮効果によって、可動型4に製品が留まるように構成した。
【0067】
ここで、第1金型については、固定型3と可動型4の金型キャビティ面について、それぞれ独立して個別に温度の制御できる温度調整機構を備えているので、成形の状況を見ながら、温度が適正範囲に入るように、自由に調整することができる。しかし、意匠面と反意匠面の金型キャビティ面の温度差については、その差が3℃未満であると局部的に温度の逆転領域が現れる可能性があり、30℃を超えると反意匠面側の樹脂の冷却速度が速くなりすぎてヒケ低減効果が低下する。従って、意匠面を形成する側の金型キャビティ面の温度が、反意匠面側を形成する金型キャビティ面の温度より、3℃以上30℃以内の範囲で高くなるように設定することが好ましい。
【0068】
また、前述した第1実施形態と同様の方法にて、金型10の温度設定を検討した結果、意匠面側を形成する側の金型キャビティ面を、成形する樹脂のガラス転移温度より20℃低い温度より高く、且つ、ガラス転移温度以下の範囲で、設定して成形することにより樹脂の金型キャビティ面との密着が高くなるという好ましい効果があることが知見できたが、ガラス転移温度より高すぎると製品が変形する。従って、ガラス転移温度より20℃低い温度より高く、ガラス転移温度以下の範囲に設定することが、特に好ましい。
【0069】
ここで、第1実施形態においては、第1金型10を用いて、金型温度管理を温調ラインT1及びT2のみで行った。しかし、本発明に適応できる金型10の温度管理はこれに限らないことは勿論であって、例えば、
図4に示す第2の金型10A(第2金型10A)のように、金型10Aの内部にセラミック等の断熱材Dを配する方式であっても良い。
第2金型10Aは、第1金型10の意匠側の金型キャビティ面(固定型3の金型キャビティ面)に、断熱効果のある発泡セラミックを埋め込んだものであるが、第2金型10Aにおいては、断熱材Dの効果により、意匠側の金型キャビティ面で成形される製品部分の冷却を遅延させて、ヒケ防止の効果が高まるという点で好ましい形態である。
【0070】
なお、他の金型10として、例えば、金型を加熱冷却することのできる温調機構を有した温調金型を使用し、ヒケを改善する時に所定の加熱をして、冷却中は金型の温度を低下させるということも可能である。この場合には、製品取出後の製品変形が小さくできる可能性があり、さらに、成形サイクルが短くなるという効果も期待できる。
但し、前述の温調金型を使用した場合には、冷却条件を強めたこと等に起因して、意匠面側の樹脂が金型キャビティ面から早々に離型しまうような状況にならないように注意する必要がある。
【0071】
以下、本発明による射出成形方法について、その実施形態の好ましい1例を、第2実施形態として説明する。
【0072】
第2実施形態の特徴は、第1実施形態で前述した成形方法に加えて、成形途中に反意匠面側の金型キャビティ面(可動型4の金型キャビティ面)からガスを注入することにより、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂を、確実に離型させるという点にある。
【0073】
以下、第1実施形態と異なる点を中心に第2実施形態を説明する。なお、説明を簡略化するため、第1実施形態と同様な機能を有する構成要件については、第1実施形態で使用したと同一の符号を使用する場合がある。
【0074】
第2実施形態においては、
図5に示す第3の金型10B(第3金型10B)を使用した。第3金型10Bについて、製品の形状、温度調整機構、センサ配置等の基本的な構成は第1金型10と同様である。
【0075】
第3金型10Bの特徴は、ガス(本実施形態においては空気)を注入するための定量ガスシリンダ80を備えて、エジェクタピン54とエジェクタピン54を配する孔部との隙間(ガス導入隙間57と称する)から、金型キャビティ内にガスを導入する構成になっている点にある。
【0076】
図6に第3金型10Bの構成を示す。可動型4に取り付けられた定量ガスシリンダ80から、ガス導入隙間57までガスの流れる連絡孔59を流路として形成し、導入口56でガス導入隙間57と接続する。また、定量ガスシリンダ80から供給されたガスが、金型キャビティ以外から逃げ出さないようにするために、ガス導入隙間57の反金型キャビティ側に孔部とエジェクタピン54との間の隙間をシールするガスシール55を形成する。
第3金型10Bは以上の構成によって、定量ガスシリンダから金型キャビティ内にガスを導入することができる。
【0077】
以下、第2実施形態による射出成形方法を簡略に説明する。
第1の金型10が温度がキャビティ側が85℃、コア側が70℃で管理された状態になってから、射出成形方法の成形サイクルをスタートさせ、金型10を型閉動作して、型締力を負荷した状態で型締めする。この際に使用する型締力は、樹脂を成形するに十分な型締力である3000KNとした。
【0078】
金型10が十分な型締力で型締めされた状態において、射出ユニット30を作動させて樹脂の射出動作を行うと同時に、ホットランナーの先端部側に配したバルブゲート31を開として、金型キャビティ15内に溶融樹脂(本実施形態では、ポリスチレン、ガラス転移点は100℃)を射出する。
【0079】
ここで、本発明による第2実施形態は、溶融樹脂を金型キャビティ15内に充填完了した後、トグル機構8を屈曲させて型締力を200KNまで低下させる。この際に重要なポイントは、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように型締力を低下させる点である。
第2実施形態は、金型キャビティ15内に射出充填した樹脂の圧力について金型キャビティ15内に配した圧力センサPS2で測定し、該PS2で測定した金型キャビティ内の樹脂圧力が0Paになるまで、型締力を低下させると同時に、定量ガスシリンダ80を作動させる。
【0080】
図6(1)に示すように、定量ガスシリンダ80から供給されたガスは、連絡孔59から導入口56を介して、ガス導入隙間57に流れて、金型キャビティ15内に流れ込む。
従って、第2実施形態においては、反意匠面側の金型キャビティと製品の間に確実にガスを供給することができ、第1実施形態で得られる作用効果以上に、離型を促進することができる。
【0081】
なお、ガス供給と型締力低下の2つの動作について、前述の第2実施形態においては、ほぼ同時に行うように説明したが、本発明に適応できる動作はこれに限らず、例えば、ガス供給して型締力を低下させても良いし、型締力を低下させてからガス供給しても良く、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、順番の変更などは可能である。
【0082】
第2実施形態においては、以上の操作によって、意匠面側の樹脂が金型キャビティ面から離型せずに密着した状態で、反意匠面側の樹脂を短時間で離型させることにより、意匠面側の樹脂について、樹脂収縮の影響を受けにくくして、ヒケの発生を抑制する。
【0083】
ここで、第2実施形態において、通常のガスアシスト成形のように、ガスを大量に吹き込んだ場合には、樹脂の部分的な冷却固化を誘引し、樹脂で成形した成形品(樹脂製品と称することもある)の意匠面側にヒケを生じさせる要因となる可能性がある。
従って、余分な空気の使用は極力さけて、少量の空気を使用することが好ましく、効果を際出させるためには、射出完了後から金型内での樹脂の圧力が0Paになって5秒以内までに、反意匠面側の金型キャビティ面積1cm
2に対して、0.1Ncm
3から10Ncm
3の比率でガスを注入することが好ましい。このことによって、反意匠面側から樹脂製品を確実に離型させることができ、ヒケの抑制がさらに強く期待できる。
【0084】
重要な点は、前述のガス供給が、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂を離型することを主たる目的として行われる行為である点にある。従って、実成形の際には、前記数値範囲の上限よりも極めて少ない量で、効果が生ずる場合がほとんどである。
なお、定量的にガスを送るためには、構造が簡単で繰り返し制度に優れた定量ガスシリンダ80の使用が適している。
【0085】
また、使用する圧力は、反意匠面側の金型キャビティ面と樹脂製品の間を離間させて離型させる程度の圧力であり、0.1MPaより小さいと実質的な効果が見られないので1MPa以上であることが好ましい。なお、圧力を大きくするに比例して効果が高くなっていくというものではないので、10MPaを超えて大きくしたとしても効果の改善は見られない。従って、本実施形態に適応する好ましい範囲としては、0.1MPa以上10MPa以内である。
【0086】
更に、ガス導入隙間57からガスを導入する方法として、例えば、
図6(2)に示すようにエジェクタピン54に溝部を加工する、或いは、
図6(3)に示すように隙間を段つきとして流路を拡大することが、ガス圧力の損失が少ないという点で好ましい。
【0087】
また、第2実施形態において、溶融した樹脂を金型キャビティ内へ射出充填完了後、ガスを供給しながら、金型装置の型締力を低下させてわずかに型開きすれば、より確実に、1秒から7秒までの時間範囲内で、0Paになるように制御でき、さらに、反意匠面側の樹脂も短時間で確実に離型させることができるので、ヒケの防止効果が高い。
【0088】
なお、この際において、意匠面を形成する金型キャビティ面の外周部にシール部を配して、成形した樹脂の間に空気が流入することを防止すれば、意匠面を形成する金型キャビティ面と樹脂との離型を抑制することができる。
図7に第4の金型10C(第4金型10C)を示す。第4金型10Cの固定型3の金型キャビティ面には、金型キャビティの外周部を囲むようにして突起部85が形成されている。樹脂を成形した際には、突起部85の周りの樹脂が収縮して、突起部85を挟みこむ形になるため、空気の流れを遮断するシール部として機能する。従って、より意匠面側の樹脂が金型キャビティ面から離型せずに密着した状態になるので、ヒケの発生について抑止効果が向上する。
【0089】
前述した意匠面のシール方法などについては、定量ガスシリンダ80を使用してガスを吹き込まない第1実施形態に適応しても良いことは勿論である。また、積極的にガスを吹き込まないという点で効果は劣るが、離型の際に、反意匠面側の金型キャビティについて、自然に空気が流入することは好ましい形態である。従って、第1実施形態において、ガス定量シリンダ80を使用せずとも、エジェクタピン54を加工するなどして空気の流路を形成する第2実施形態の手法は適応可能であり好ましい形態である。
【0090】
また、前述した第1実施形態及び第2実施形態では、好ましい形態として、樹脂を射出充填する際において、金型10を十分な型締力で型締めした。しかし、例えば、型締力を低下させて射出充填する射出圧縮、或いはわずかに開いた金型に樹脂を充填してから型締めする射出プレスについても、本発明の適応が可能である。
【0091】
以上、本発明の実施形態として、いくつかの好ましい例を説明したが、本発明を適応できる実施の形態がこれに限らないことは勿論であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、適宜、変更可能である。