(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コイル及び前記第2コイルの各々は、前記複数の導体層にそれぞれ設けられた複数のループ状のコイル導体と、上層のコイル導体と下層のコイル導体とを層間接続するビアとを含み、
前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサを構成するすべての電極は、前記積層断面において前記コイル導体が形成された導体層と異なる導体層に配置される請求項1に記載の積層構造型バラン。
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの少なくとも一方は、前記積層方向から見た場合に、前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置される請求項1から4のいずれか1項に記載の積層構造型バラン。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る積層構造型バランの等価回路を示す回路図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るバランの構造を示す断面図である。
【
図3-1】
図3−1は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
【
図3-2】
図3−2は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
【
図3-3】
図3−3は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
【
図3-4】
図3−4は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
【
図3-5】
図3−5は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
【
図4-1】
図4−1は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-2】
図4−2は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-3】
図4−3は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-4】
図4−4は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-5】
図4−5は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-6】
図4−6は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-7】
図4−7は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-8】
図4−8は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-9】
図4−9は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-10】
図4−10は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-11】
図4−11は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-12】
図4−12は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図4-13】
図4−13は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るバランの積層構造の第1変形例を示す断面図である。
【
図6-1】
図6−1は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-2】
図6−2は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-3】
図6−3は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-4】
図6−4は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-5】
図6−5は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-6】
図6−6は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-7】
図6−7は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-8】
図6−8は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-9】
図6−9は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-10】
図6−10は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-11】
図6−11は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図6-12】
図6−12は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るバランの積層構造の第2変形例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係るバランの積層構造の第3変形例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係るバランの積層構造の第4変形例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、比較例1に係るバランの構造を示す断面図である。
【
図16-1】
図16−1は、実施例1、比較例1及び比較例2の評価結果を示す図である。
【
図16-2】
図16−2は、実施例1、比較例1及び比較例2の評価結果を示す図である。
【
図16-3】
図16−3は、実施例1、比較例1及び比較例2の評価結果を示す図である。
【
図16-4】
図16−4は、実施例1、比較例1及び比較例2の評価結果を示す図である。
【
図17-1】
図17−1は、実施例2と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図17-2】
図17−2は、実施例2と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図17-3】
図17−3は、実施例2と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図17-4】
図17−4は、実施例2と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図18-1】
図18−1は、実施例3と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図18-2】
図18−2は、実施例3と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図18-3】
図18−3は、実施例3と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図18-4】
図18−4は、実施例3と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図19-1】
図19−1は、実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図19-2】
図19−2は、実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図19-3】
図19−3は、実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図19-4】
図19−4は、実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図20-1】
図20−1は、実施例1から実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図20-2】
図20−2は、実施例1から実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図20-3】
図20−3は、実施例1から実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【
図20-4】
図20−4は、実施例1から実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る積層構造型バランの等価回路を示す回路図である。積層構造型バラン(以下、必要に応じてバランという)1は、LC型バランである。LC型バランは、L(コイル)とC(コンデンサ)とで構成されるローパスフィルタ(LPF)とハイパスフィルタ(HPF)とを組み合わせることにより、平衡信号と不平衡信号とを相互に変換する素子である。不平衡信号とは、接地電位を基準電位とした信号である。平衡信号とは、互いに位相がほぼ180度(π)異なり、振幅がほぼ等しい2つの信号からなる信号である。
【0017】
本実施形態において、バラン1は、不平衡端子2と、第1平衡端子3Aと、第2平衡端子3Bと、第1コイル4A及び第1コンデンサ5Aを有するローパスフィルタ6と、第2コイル4B及び第2コンデンサ5Bを有するハイパスフィルタ7と、を含む。バラン1は、さらに接地端子8を含む。接地端子8は、グランドGNDに接続される。不平衡端子2は、不平衡信号を入出力する。第1平衡端子3A及び第2平衡端子3Bは、いずれも平衡信号を入出力する。ローパスフィルタ6は、不平衡端子2と第1平衡端子3Aとの間に設けられる。ハイパスフィルタ7は、不平衡端子2と第2平衡端子3Bとの間に設けられる。
【0018】
ローパスフィルタ6は、不平衡端子2と第1平衡端子3Aとの間に第1コイル4Aが接続され、第1平衡端子3Aと接地端子8との間に第1コンデンサ5Aが接続される。すなわち、第1コイル4Aは、不平衡端子2と第1平衡端子3Aとを流れる第1信号に対しては直列であり、第1コンデンサ5Aは、第1信号に対して並列である。ハイパスフィルタ7は、不平衡端子2と第2平衡端子3Bとの間に第2コンデンサ5Bが接続され、第2平衡端子3Bと接地端子8との間に第2コイル4Bが接続される。すなわち、第2コイル4Bは、不平衡端子2と第2平衡端子3Bとを流れる第2信号に対しては並列であり、第2コンデンサ5Bは、第2信号に対して直列である。
【0019】
ローパスフィルタ6及びハイパスフィルタ7は、それぞれコイルとコンデンサを一つずつ備えた回路構成である。ローパスフィルタ6が有する第1コイル4A及び第1コンデンサ5A、ハイパスフィルタ7が有する第2コイル4B及び第2コンデンサ5Bの定数は、バラン1の仕様に応じて異なり、目的の周波数にインピーダンスマッチングが得られるように設定される。また、第1コイル4A及び第2コイル4Bの形状は、バラン1が目的とする電磁結合が形成されれば特定の形態に限定されるものではなく、例えば、渦巻状(コイル状)、蛇行状、直線状又は曲線状等の任意の形状とすることができる。
【0020】
図2は、実施形態1に係るバランの構造を示す断面図である。バラン1は、積層体10を含んでいる。積層体10は、導体パターンを有する複数の導体層及び複数の絶縁層を含む複数の層が基板の表面に積層されるとともに、上述したローパスフィルタ6及びハイパスフィルタ7を有する。本実施形態において、積層体10の積層方向は、基板11の導体層及び絶縁層が形成される側の表面11Sを基準として、表面11Sから離れる方向である(
図2の矢印Sで示す方向)。
【0021】
基板11は、例えば、フェライト等の絶縁性基板である。基板11は、導体層及び絶縁層が形成される側の表面11Sに、表面11Sの凹凸を埋めて平滑にするための平滑層12を有する。平滑層12の表面には、第1導体層13と、誘電体層14と、中間導体層15と、第1絶縁層16と、第2導体層17と、第2絶縁層18と、第3導体層19と、第3絶縁層(オーバーコート層)20と、第4導体層21と、端子めっき層22とがこの順番で積層されている。
【0022】
第1導体層13と、中間導体層15と、第2導体層17と、第3導体層19と、第4導体層21とが複数の導体層に相当する。これらの導体層は、銅又は銀等の導電体であり、配線パターン又は端子パターン等のパターン(導体パターン)を形成している。第1導体層13は、第1コイル4Aとなる第1コイル導体13LAと、第2コイル4Bとなる第2コイル導体13LBと、第1コンデンサ5Aの一方の電極となる第1コンデンサ基板側電極13CAと、第2コンデンサ5Bの一方の電極となる第2コンデンサ基板側電極13CBと、
図1に示す不平衡端子2又は接地端子8等になる端子用導体13Tと、を有する。中間導体層15は、第1コンデンサ5Aの他方の電極となる第1コンデンサ対向電極15CAと、第2コンデンサ5Bの他方の電極となる第2コンデンサ対向電極15CBとを有する。
【0023】
第2導体層17は、第1コイル4Aとなる第1コイル導体17LAと、第2コイル4Bとなる第2コイル導体17LBと、第1コンデンサ対向電極15CAと接続する第1コンデンサ電極17CAと、第2コンデンサ対向電極15CBと接続する第2コンデンサ電極17CBと、
図1に示す不平衡端子2又は接地端子8等になる端子用導体17Tとを有する。第3導体層19は、第1コイル4Aとなる第1コイル導体19LAと、第2コイル4Bとなる第2コイル導体19LBと、第1コンデンサ電極17CAと接続する第1コンデンサ電極19CAと、第2コンデンサ電極17CBと接続する第2コンデンサ電極19CBと、
図1に示す不平衡端子2又は接地端子8等になる端子用導体19Tとを有する。第4導体層21は、積層体10の表面に
図1に示す不平衡端子2又は接地端子8を取り出すための端子用導体21Tを有する。端子用導体21Tの表面は、端子めっき層22が被覆している。端子用導体21Tは、積層体10の表面から突出して、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8となる。
【0024】
第1導体層13の第1コイル導体13LAと第2導体層17の第1コイル導体17LAとは、ビア23Aで接続される。同様に、第1導体層13の第2コイル導体13LBと第2導体層17の第2コイル導体17LBとは、ビア23Bで接続される。また、第2導体層17の第1コイル導体17LAと第3導体層19の第1コイル導体19LAとは、ビア24Aで接続される。同様に、第2導体層17の第2コイル導体17LBと第2導体層19の第2コイル導体19LBとは、ビア24Bで接続される。第2導体層17の第1コンデンサ電極17CAと第3導体層19の第1コンデンサ電極19CAとはビア25Aで接続され、第2導体層17の第2コンデンサ電極17CBと第3導体層19の第2コンデンサ電極19CBとはビア25Bで接続される。端子用導体17T、19T、21Tは、それぞれの第1導体層17、第2導体層19、第3導体層21の間で接続されている。
【0025】
第1絶縁層16、誘電体層14、第2絶縁層18及び第3絶縁層20は、絶縁層に相当する。第1絶縁層16、第2絶縁層18及び第3絶縁層20は、絶縁材料で作られる。例えば、絶縁材料としては、例えば、ポリイミド又はエポキシ樹脂等が用いられる。誘電体層14の材料は、窒化シリコン(SiN)等が用いられる。誘電体層14は、第1導体層13と中間導体層15との間に介在して、両者を電気的に絶縁する。また、誘電体層14は、第1コンデンサ基板側電極13CA、第1コンデンサ対向電極15CAとの間及び第2コンデンサ基板側電極13CB、第2コンデンサ対向電極15CBの間に介在して、これらとともに第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを構成する。第1絶縁層16は、誘電体層14と第2導体層17との間に介在し、両者を電気的に絶縁する。また、第1絶縁層16は、ビア23A、23B、を介して第1導体層13と第2導体層17とを、また、中間導体層15と第2導体層17とを電気的に接続するための開口部を有する。第2絶縁層18は、第2導体層17と第3導体層19との間に介在して、両者を電気的に絶縁する。また、第2絶縁層18は、ビア24A、25A、24B、25Bを介して第3導体層19と第2導体層17とを電気的に接続するための開口部を有する。第3絶縁層20は、第3導体層19の表面を被覆してこれを製品外からの物理的ダメージから保護する。バラン1が有する積層体10は、上述したような構造である。次に、バラン1が有するそれぞれの導体層の平面構造を詳細に説明する。
【0026】
図3−1から
図3−5は、実施形態1に係るバランが有するそれぞれの導体層を示す平面図である。
図3−1に示すように、第1導体層13は、第1コイル導体13LAと、第2コイル導体13LBと、第1コンデンサ基板側電極13CAと、第2コンデンサ基板側電極13CBと、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8となる端子用導体13Tとを有している。第1コイル導体13LA及び第1コンデンサ基板側電極13CAはローパスフィルタ6の一部となり、第2コイル導体13LB及び第2コンデンサ基板側電極13CBはハイパスフィルタ7の一部となる。第1導体層13における第1コイル導体13LAと第2コイル導体13LBとは、幅又は巻回数に限定はなく、両者の間で幅又は巻回数を同じにしてもよいし異ならせてもよい。第1導体層13において、第1コンデンサ基板側電極13CA及び第2コンデンサ基板側電極13CBは、第1コイル導体13LA及び第2コイル導体13LBとは異なる領域に配置される。
【0027】
ローパスフィルタ6側の第1コイル導体13LAは、不平衡端子2とビア23Aとに接続されている。ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体13LBは、接地端子8とビア23Bとに接続されている。また、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ基板側電極13CAは接地端子8と接続されており、ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ基板側電極13CBは不平衡端子2と接続されている。不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8は、
図3−2から
図3−5に示す端子用導体13T、17T、19T、21Tで接続されているので、それぞれの導体層において同じ配置である。
【0028】
図3−2に示すように、中間導体層15は、不平衡端子2と接地端子8との間に、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ対向電極15CA及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ対向電極15CBと、端子用導体17Tとを有している。
図3−3に示すように、第2導体層17は、第1コイル導体17LAと、第2コイル導体17LBと、第1コンデンサ電極17CAと、第2コンデンサ電極17CBと、端子用導体17Tとを有している。第1コイル導体17LAは、第1導体層13の第1コイル導体13LAとビア23Aを介して接続されている。第2コイル導体17LBは、第1導体層13の第2コイル導体13LBとビア23Bを介して接続されている。また、第1コイル導体17LAにはビア24Aが接続され、第2コイル導体17LBには、ビア24Bが接続されている。第2導体層17においても、第1コイル導体17LAと第2コイル導体17LBとは、幅又は巻回数に限定はなく、両者の間で幅又は巻回数を同じにしてもよいし異ならせてもよい。第2導体層17において、第1コンデンサ電極17CA及び第2コンデンサ電極17CBは、第1コイル導体17LA及び第2コイル導体17LBとは異なる領域に配置される。
【0029】
図3−4に示すように、第3導体層19は、第1コイル導体19LAと、第2コイル導体19LBと、第1コンデンサ電極19CAと、第2コンデンサ電極19CBと、端子用導体19Tとを有している。第1コイル導体19LAは、第2導体層17の第1コイル導体17LAとビア24Aを介して接続されている。第2コイル導体19LBは、第2導体層17の第2コイル導体17LBとビア24Bを介して接続されている。第1コンデンサ電極19CAは、第2導体層17の第1コンデンサ電極17CAと
図2に示すビア25Aを介して接続され、第2コンデンサ電極19CBは、第2導体層17の第2コンデンサ電極17CBと
図2に示すビア25Bを介して接続される。
【0030】
また、第1平衡端子3Aとなる端子用導体19Tとローパスフィルタ6側の第1コンデンサ電極19CAとは、配線19PAが接続する。ローパスフィルタ6側の第1コイル導体19LAは、配線19PAと接続する。第2平衡端子3Bとなる端子用導体19Tとハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ電極19CBとは、配線19PBが接続する。ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体19LBは、配線19PBと接続する。第3導体層19においても、第1コイル導体19LAと第2コイル導体19LBとは、幅又は巻回数に限定はなく、両者の間で幅又は巻回数を同じにしてもよいし異ならせてもよい。第3導体層19で、ローパスフィルタ6の第1コイル4A及びハイパスフィルタ7の第2コイル4Bが完成する。そして、
図3−5に示すように、第4導体層21で端子用導体21Tが外部接続端子となり、
図1に示す等価回路を構成するバラン1が完成する。
【0031】
このような構造により、バラン1は、積層方向から見た場合に、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bは、第1コイル4A及び第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。このため、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bによって、第1コイル4A及び第2コイル4Bによって生成される磁場へ及ぼす影響が低減される。また、バラン1は、積層方向において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを、第1コイル4A及び第2コイル4Bと同一の領域に配置している。このため、バラン1は、低背化(積層方向における寸法を小さくすること)を実現できる。その結果、バラン1の電気特性が改善される。次に、バラン1の製造方法の一例を説明する。
【0032】
図4−1から
図4−13は、実施形態1に係るバランの製造方法の一例を示す図である。まず、
図4−1に示すように、基板11を用意する。次に、
図4−2に示すように、基板11の表面に平滑層12を形成する。次に、
図4−3に示すように、基板11の表面、より具体的には、平滑層12の表面に、第1導体層13を形成する。第1導体層13は、例えば、Cu(銅)めっきで形成することができる。次に、
図4−4に示すように、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bの容量を決定する誘電体層14を形成する。誘電体層14は、例えば、窒化シリコン(SiN)をCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜することにより形成される。
【0033】
次に、
図4−5に示すように、誘電体層14の表面であって、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを形成する部分の第1導体層13に対応する位置に中間導体層15を形成する。中間導体層15は、例えば、Cu(銅)めっきで形成することができる。このようにして、第1導体層13と誘電体層14と中間導体層15とで、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを形成する。次に、
図4−6に示すように、第1絶縁層16を誘電体層14の表面に形成する。第1絶縁層16は、例えば、フォトリソグラフィーにより、ポリイミドを誘電体層14の表面の必要な箇所に配置することにより形成される。
【0034】
次に、
図4−7に示すように、第1導体層13と第2導体層17との間で接続されることにより形成される第1コイル4A及び第2コイル4Bの接続部分と、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8となる部分との誘電体層14(SiN膜)を、スルーホール工程で除去する。次に、
図4−8に示すように、第1絶縁層16の表面に、第2導体層17を形成する。第2導体層17は、例えば、Cu(銅)めっきで形成することができる。
【0035】
次に、
図4−9に示すように、第2絶縁層18を第2導体層17の表面に形成する。第2絶縁層18は、例えば、フォトリソグラフィーにより、ポリイミドを第2導体層17の表面の必要な箇所に配置する。次に、
図4−10に示すように、第2絶縁層18の表面に、第3導体層19を形成する。第3導体層19は、例えば、Cu(銅)めっきで形成することができる。次に、
図4−11に示すように、第3絶縁層(オーバーコート)20を第3導体層19の表面に形成する。第3絶縁層20は、例えば、ポリイミドである。次に、
図4−12に示すように、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8となる第4導体層21を形成する。第4導体層21は、例えば、Cu(銅)めっきで形成することができる。最後に、
図4−13に示すように、第4導体層21の表面を端子めっき層22で被覆して、バラン1が完成する。端子めっき層22は、Ni(ニッケル)Au(金)無電解めっきにより形成することができる。なお、バラン1の製造方法及び材料はこれに限定されるものではない(以下の例でも同様)。
【0036】
(積層構造の第1変形例)
図5は、実施形態1に係るバランの積層構造の第1変形例を示す断面図である。
図5に示されるバラン1aは、実施形態1のバラン1が有する中間導体層15(
図2参照)を有さず、バラン1の第1コンデンサ対向電極15CA及び第1コンデンサ電極17CAを、第1コンデンサ共用電極17Aで、バラン1の第2コンデンサ対向電極15CB及び第2コンデンサ電極17CBを、第2コンデンサ共用電極17Bで構成した点が異なる。バラン1は、第1コンデンサ対向電極15CA及び第2コンデンサ対向電極15CBを形成した後に、それぞれの表面に第1コンデンサ電極17CA及び第2コンデンサ電極17CBを形成している。バラン1aは、後述するように、第1コンデンサ共用電極17Aと第2コンデンサ共用電極17Bとが1つのプロセスで形成される。そして、第1コンデンサ共用電極17Aと第2コンデンサ共用電極17Bとは、それぞれバラン1の第1コンデンサ対向電極15CA及び第1コンデンサ電極17CAと第2コンデンサ対向電極15CB及び第2コンデンサ電極17CBとの機能を有する。
【0037】
ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aは、ローパスフィルタ6側の第1コイル導体13LAと、第2コイル導体17LAと、第3コイル導体19LAと、ビア23Aと、ビア24Aと、第1絶縁層16と、第2絶縁層18と、第3絶縁層20とで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bは、ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体13LBと、第2コイル導体17LBと、第3コイル導体19LBと、ビア23Bと、ビア24Bと、第1絶縁層16と、第2絶縁層18と、第3絶縁層20とで構成される。ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aは、第1コンデンサ基板側電極13CAと、誘電体層14と、第1コンデンサ共用電極17Aとを有する。ハイパスフィルタ7側のコンデンサ5Bは、第2コンデンサ基板側電極13CBと、誘電体層14と、第2コンデンサ共用電極17Bとを有する。端子部分は、端子用導体13T、17T、19T、21Tと端子めっき層22とで構成される。次に、バラン1の製造方法の一例を説明する。
【0038】
図6−1から
図6−12は、第1変形例に係るバランの製造方法の一例を示す図である。
図6−4に示す、誘電体層14を形成するまでの手順は、実施形態1に係るバランの製造方法と同様なので説明を省略する。誘電体層14が形成されたら、
図6−5に示すように、誘電体層14の表面であって、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを形成する部分の第1導体層13に対応する位置と、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8を形成する第1導体層13に対応する位置と、を空けて、第1絶縁層16を形成する。第1絶縁層16は、例えば、フォトリソグラフィーにより、ポリイミドを誘電体層14の表面の必要な箇所に配置することにより形成される。
【0039】
次に、
図6−6に示すように、第1導体層13と第2導体層17との間で接続されることにより形成される第1コイル4A及び第2コイル4Bの接続部分と、不平衡端子2、第1平衡端子3A、第2平衡端子3B及び接地端子8となる部分との誘電体層14を、スルーホール工程で除去する。次に、
図6−7に示すように、第1絶縁層16の表面及び誘電体層14に開口した第1導体層13の表面に、第2導体層17を形成する。第2導体層17は、
図5に示す第1コンデンサ共用電極17A及び第2コンデンサ共用電極17Bとなる。この後、
図6−8に示すように、第2絶縁層18を第2導体層17の表面に形成する。その後、
図6−9から
図6−12に示す各手順を実行するが、これらの各手順は、上述した
図4−10から
図4−13に示す各手順と同様である。
【0040】
第1変形例に係るバランの製造方法は、
図6−6に示した第2導体層17を形成する一回のプロセスで、実施形態1のバラン1が有する第1コンデンサ対向電極15CA及び第1コンデンサ電極17CAに相当する第1コンデンサ共用電極17Aを形成する。バラン1の第2コンデンサ対向電極15CB及び第2コンデンサ電極17CBに相当する第2コンデンサ共用電極17Bも同様である。このように、第1変形例に係るバランの製造方法は、実施形態1に係るバランの製造方法における中間導体層15を形成するプロセスが不要になるので、その分バラン1の製造工程を短縮することができる。
【0041】
(積層構造の第2変形例)
図7は、実施形態1に係るバランの積層構造の第2変形例を示す断面図である。
図7に示されるバラン1bは、ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aと、ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bと、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5A及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bとが、積層方向において異なる領域に配置される。そして、バラン1bは、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5A及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bが、積層方向において同じ領域に配置される。さらに、バラン1bは、積層方向から見た場合において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aとハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bとの間、かつこれらとは異なる領域に配置されている。
【0042】
ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aは、ローパスフィルタ6側の第1コイル導体13LAと、第2コイル導体17LAと、第3コイル導体19LAと、ビア23Aと、ビア24Aと、ローパスフィルタ6側の第1絶縁層16Aと、第2絶縁層18Aと、第3絶縁層20Aとで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bは、ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体13LBと、第2コイル導体17LBと、第3コイル導体19LBと、ビア23Bと、ビア24Bと、ハイパスフィルタ7側の第1絶縁層16Bと、第2絶縁層18Bと、第3絶縁層20Bとで構成される。ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aは、第1コンデンサ基板側電極13CA、第1コンデンサ対向電極15CAと、誘電体層14とで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bは、第2コンデンサ基板側電極13CB、第2コンデンサ対向電極15CBと、誘電体層14とで構成される。端子部分は、端子用導体13TA、17TA、19TA、13TC、15TC、13TB、17TB、19TB、21Tと端子めっき層22とで構成される。
【0043】
バラン1bの積層順序は、基板11の表面11Sの凹凸を埋めて平滑にするための平滑層12の表面に、ローパスフィルタ6側の第1コイル4A、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5A及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5B、ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bとなる。このようにして、第2変形例の積層構造が形成される。
【0044】
バラン1bは、積層方向から見た場合に、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。このような配置にすることにより、積層方向から見た場合にコイルとコンデンサの形成領域が重なる従来技術のような構造に比べて、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bによって生成される磁場へ及ぼす影響を低減させることができる。その結果、バラン1bも、実施形態1のバラン1と同様に電気特性を改善することができる。また、バラン1bは、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが積層方向において同じ領域に配置されるとともに、これらは、積層方向において、第1コイル4Aと第2コイル4Bとの間、かつこれらとは異なる領域に配置される。
【0045】
(積層構造の第3変形例)
図8は、実施形態1に係るバランの積層構造の第3変形例を示す断面図である。バラン1cは、第1コンデンサ5Aの第1コンデンサ基板側電極13CA及び第2コンデンサ5Bの第2コンデンサ基板側電極13CBが、第1コイル導体13LA及び第2コイル導体13LBとは異なる層に形成される。このように、バラン1cは、積層方向において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bの内部、かつ異なる領域に配置されている。すなわち、バラン1cは、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、積層方向において、第1コイル4Aと第2コイル4Bとの間に配置されている。また、バラン1cは、積層方向において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが同じ領域に配置される。さらに、バラン1cは、積層方向から見た場合に、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bは、第1コイル4Aと第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。また、バラン1cは、ローパスフィルタ6側の第1コイル4A及びハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bが、積層方向において同一の領域に配置されている。
【0046】
ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aは、ローパスフィルタ6側の第1コイル導体13LAと、第2コイル導体17LAと、第3コイル導体19LAと、ビア23Aと、ビア24Aと、ローパスフィルタ6側の第1絶縁層16と、誘電体層側第2絶縁層18aと、コンデンサーコイル間第2絶縁層18bと、コイル側第2絶縁層18cと、第3絶縁層20とで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bが、ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体13LBと、第2コイル導体17LBと、第3コイル導体19LBと、ビア23Bと、ビア24Bと、ハイパスフィルタ7側の第1絶縁層16と、誘電体層側第2絶縁層18aと、コンデンサーコイル間第2絶縁層18bと、コイル側第2絶縁層18cと、第3絶縁層20とで構成される。
【0047】
ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aは、第1コンデンサ基板側電極13CA、第1コンデンサ対向電極15CAと、誘電体層14とで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bは、第2コンデンサ基板側電極13CB、第2コンデンサ対向電極15CBと、誘電体層14とで構成される。端子部分は、端子用導体13T、13CT、15T、17TA、19T、21Tと端子めっき層22とで構成される。実施形態1の積層方法と特に違う点は、ビア23Aとビア23Bとの積層寸法を大きくして、ローパスフィルタ6側の第1コイル4A及びハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bが積層方向に大きく形成されている点である。このような構造は、通常のフォトリソグラフィーとめっき工法とによって形成することができる。このようにして、第3変形例の積層構造が形成される。
【0048】
バラン1cは、積層方向から見た場合に、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。このような配置にすることにより、積層方向から見た場合にコイルとコンデンサの形成領域が重なる従来技術のような構造に比べて、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bによって生成される磁場へ及ぼす影響を低減させることができる。その結果、バラン1cも、実施形態1のバラン1と同様に電気特性を改善することができる。また、バラン1cは、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが積層方向において同じ領域に配置されるとともに、これらは、積層方向において、第1コイル4A及び第2コイル4Bの内部、かつこれらとは異なる領域に配置される。
【0049】
(積層構造の第4変形例)
図9は、実施形態1に係るバランの積層構造の第4変形例を示す断面図である。バラン1dは、積層方向から見た場合において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bは、第1コイル4A及び第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。また、バラン1dは、ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aとローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5A及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bが、積層方向において同一の領域に配置される。そして、ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bのみ、積層方向において第1コイル4A、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bとは異なる領域に配置される。このように、バラン1dにおいて、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bは、積層方向において第1コイル4Aと第2コイル4Bとの間に配置される。
【0050】
バラン1dは、ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aが、ローパスフィルタ6側の第1コイル導体13LAと、第2コイル導体17LAと、第3コイル導体19LAと、ビア23Aと、ビア24Aと、ローパスフィルタ6側の第1絶縁層16Aと、第2絶縁層18Aと、第3絶縁層20Aとで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bは、ハイパスフィルタ7側の第2コイル導体13LBと、第2コイル導体17LBと、第3コイル導体19LBと、ビア23Bと、ビア24Bと、ハイパスフィルタ7側の第1絶縁層16Bと、第2絶縁層18Bと、第3絶縁層20Bとで構成される。ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aは、第1コンデンサ基板側電極13CA、第1コンデンサ対向電極15CAと、第1コンデンサ電極17CAと、誘電体層14とで構成される。ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bは、第2コンデンサ基板側電極13CB、第2コンデンサ対向電極15CBと、第2コンデンサ電極17CBと、誘電体層14とで構成される。端子用導体13TA、15TA、17TA、19TA、13TB、17TB、19TB、21Tと端子めっき層22とで構成される。このようにして、第4変形例の積層構造が形成される。
【0051】
バラン1dは、積層方向から見た場合に、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。このような配置にすることにより、積層方向から見た場合にコイルとコンデンサの形成領域が重なる従来技術のような構造に比べて、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが、第1コイル4A及び第2コイル4Bによって生成される磁場へ及ぼす影響を低減させることができる。その結果、バラン1dも、実施形態1のバラン1と同様に電気特性を改善することができる。また、バラン1dは、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bが積層方向において第1コイル4Aと同じ領域に配置されるとともに、これらは、積層方向において、第2コイル4Bとは異なる領域に配置される。
【0052】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係るバランの平面図である。実施形態2のバラン1Aは、実施形態1及びその変形例に係るバラン1、1a等に対して、平面視、すなわち積層方向から見た場合における第1コイル4A、第2コイル4B、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bの配置が異なる。
図10に示す第1コイル4A、第2コイル4B、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bは、平面上のそれぞれの位置関係を示すことを意図しているため、
図3−1から
図3−5に示されるような積層構造の詳細を省略し簡略的に示すに留めている。
【0053】
バラン1Aは、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aを、ローパスフィルタ6側の第1コイル4Aとハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bとの間に配置し、かつ、ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bを不平衡端子2と接地端子8との間に配置している。
【0054】
(実施形態3)
図11は、実施形態3に係るバランの平面図である。積層構造を省略している点は、実施形態2と同様である。バラン1Bは、ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bを、ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bとローパスフィルタ6側の第1コイル4Aとの間に配置し、かつ、ローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aを不平衡端子2と接地端子8との間に配置している。
【0055】
(実施形態4)
図12は、実施形態4に係るバランの平面図である。積層構造を省略している点は、実施形態2、3と同様である。バラン1Cは、ハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5B及びローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aを、ハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bとローパスフィルタ6側の第1コイル4Aとの間に配置している。
【0056】
(評価)
ローパスフィルタ6側のコンデンサ5Aとハイパスフィルタ7側のコンデンサ5Bの、ローパスフィルタ6側の第1コイル4A及びハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bに対する位置関係が電気的特性に与える影響を評価した。評価対象は、上述した実施形態1から実施形態4に係るバラン1、1A、1B、1Cと、後述する比較例1及び比較例2である。実施形態1のバランが実施例1、実施形態2のバランが実施例2、実施形態3のバランが実施例3、実施形態4のバランが実施例4に相当する。
【0057】
評価には、コンピュータシミュレーションを利用した。シミュレーションソフトは、2.5次元シミュレータSONNETを用いた。実施例1から実施例4と後述する比較例1及び比較例2は、いずれもローパスフィルタ6側の第1コイル4A及びハイパスフィルタ7側の第2コイル4Bに対するローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5Aとハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bとの位置関係を変更することで、電気的特性を比較した。このため、実施例1から実施例4と比較例1及び比較例2との各コイルと、各導体層の各端子とは、位置、配置及び形状を全く同じに設定してある。
【0058】
評価項目は、バランを評価するために必要な電気的特性である、挿入損失特性、位相差特性、振幅差特性、反射損失特性の4項目とした。対象とした周波数帯は、Wireless‐LAN(Local Area Network)及びBluetooth等で用いられている2400MHzから2500MHzとした。挿入損失特性は伝送効率を示しているため、損失の値が0dBにより近い方が良好である。位相差特性は、2つの平衡信号の位相差が180deg.であることが理想的なので、位相差が180deg.により近い方が良好な特性となる。振幅差特性は、2つの平衡信号の振幅が全く同じであることが理想的であるため、0dBにより近い方が良好な振幅差特性となる。反射損失特性は、反射効率を示すため、dBの値が大きければ大きいほど良好な反射損失特性となる。特に、挿入損失が小さければ小さいほど形態電子機器に求められる省電力化へ貢献できることから、挿入損失が最も重要視される電気的特性である。
【0059】
(比較例1)
図13は、比較例1に係るバランの構造を示す断面図である。バラン101は、ローパスフィルタ106側の第1コンデンサ105A及びハイパスフィルタ107側の第2コンデンサ105Bが、積層方向から見た場合に、ローパスフィルタ106側の第1コイル104A及びハイパスフィルタ107側のコイル104Bが配置される領域に重なるように、より詳細にはコイル開口内に重なるように配置されている。これは、先行技術の内容を擬似的に構造化したものである。
【0060】
バラン101は、第1コイル104Aと第1コンデンサ105Aとでローパスフィルタ106が構成され、第2コイル104Bと第2コンデンサ105Bとでハイパスフィルタ107が構成される。また、バラン101の製造方法は、第1コンデンサ105A及び第2コンデンサ105Bが、積層方向において、第1コイル104A及び第2コイル104Bが形成される領域とは異なる領域で形成されること以外、実施形態1に係る製造方法と同様である。第1コンデンサ105A及び第2コンデンサ105Bは、導体層B1と、導体層B2と、B1層とB2層の間に介在するSiN膜のI1層とによって形成され、第1コイル104A及び第2コイル105Bは、導体層M1と、導体層M2と、導体層M3と、それら間に介在する絶縁層I2、I3と、導体層M3を製品外からの物理的ダメージから保護するI4とによって形成される。
【0061】
図14は、比較例1に係るバランの平面図である。バラン101は、不平衡端子102、第1平衡端子103A、第2平衡端子103B及び接地端子108の各端子と、第1コイル104A及び第1コンデンサ105Aを有するローパスフィルタ106と、第2コイル104B及び第2コンデンサ105Bを有するハイパスフィルタ107とを有する。なお、
図14は、第1コイル104Aと、第2コイル104Bと、第1コンデンサ105Aと、第2コンデンサ105Bとの平面上におけるそれぞれの位置関係を示すことを意図している。このため、上述した
図3−1から
図3−5に示されるような積層構造の詳細を省略し、簡略的に示すに留めている。また、第1コンデンサ105A及び第2コンデンサ105Bの容量値は、実施例1から実施例4と同じ値に設定してある。さらに、導体層B2と導体層M1とを絶縁するために設けられる絶縁層I2の厚みは、実施例1から実施例4の第1コイル4Aと第1コンデンサ5Aとの平面方向の距離及び第2コイルと第2コンデンサとの平面方向の距離と同じ大きさに設定して比較する必要があることから、積層方向において、第1コイル4Aと第1コンデンサ5Aとの平面方向の距離と同じ値の厚みに設定してある。
【0062】
(比較例2)
図15は、比較例2に係るバランの平面図である。バラン101aは、不平衡端子102、第1平衡端子103A、第2平衡端子103B、接地端子108の各端子と、第1コイル104A及び第1コンデンサ105Aaを有するローパスフィルタ106と、第2コイル104B及び第2コンデンサ105Baを有するハイパスフィルタ107とを有する。また、
図15は、
図14と同様に、第1コイル104Aと、第2コイル104Bと、第1コンデンサ105Aaと、第2コンデンサ105Baとの平面上における位置関係を示すことを意図している。このため、上述した
図3−1から
図3−5に示されるような積層構造の詳細を省略し簡略的に示すに留めている。
【0063】
なお、バラン101aの断面構造は、比較例1の第1コンデンサ105Aと第2コンデンサ105Bの寸法を大きくしただけ、つまり、
図13に示すバラン101のB1とB2との平面方向での面積が変わるだけで、比較例1と他の構造は同じである。バラン101aは、第1コンデンサ105Aa及び第2コンデンサ105Baのコンデンサを、比較例1のように第1コイル104A及び第2コイル104Bの開口内に収まるようにはしていない。しかし、第1コンデンサ105Aa及び第2コンデンサ105Ba容量値は、実施例1から実施例4及び比較例1と同じに設定してある。また、導体層B2と導体層M1とを絶縁するために設けられる絶縁層I2の厚みも、比較例1と同様に、積層方向において、第1コイル4Aと第1コンデンサ5Aとの平面方向の距離と同じ値の厚みで設定してある。
【0064】
(実施例1の評価)
図16−1から
図16−4は、実施例1、比較例1及び比較例2の評価結果を示す図である。
図16−1から
図16−4では、実線が実施例1の電気的特性を示し、点線が比較例1の電気的特性を示し、破線が比較例2の電気的特性を示している。
図16−1から
図16−4より、位相差特性にはそれほど有意な相違は見られないが、挿入損失特性、振幅差特性及び反射損失特性全てにおいて、比較例1及び比較例2よりも実施例1の方が良好であることがわかる。また、比較例2の方が比較例1よりも電気的特性が全体的に悪い。これは、比較例2の第1コンデンサ105Aa及び第2コンデンサ105Baの寸法が、比較例1の第1コンデンサ105A及び第2コンデンサ105Bよりも大きいためであると考えられる。すなわち、LC型の積層構造型バランでは、比較例1及び比較例2のような構造において、コンデンサの寸法が電気的特性へ影響を及ぼすことを示唆している。
【0065】
以下では、実施例2から実施例4と比較例1との評価結果を示す。比較例1の方が比較例2よりも電気的特性が幾分良好であること、比較例1は、ローパスフィルタ106側の第1コンデンサ105A及びハイパスフィルタ107側の第2コンデンサ105Bの電極面積を、実施例2から実施例4のローパスフィルタ6側の第1コンデンサ5A及びハイパスフィルタ7側の第2コンデンサ5Bの電極面積と同じ大きさに設定してあることから、実施例2から実施例4と比較することに、より意味があるからである。
【0066】
(実施例2の評価)
図17−1から
図17−4は、実施例2と比較例1との評価結果を示す図である。
図17−1から
図17−4では、実線が実施例2の電気的特性を、点線が比較例1の電気的特性を示している。
図17−1から
図17−4より、比較例1よりも実施例2の方が若干位相差特性において劣るものの、最も重視する電気的特性である挿入損失が改善されていることから、総合的な電気的特性において、実施例2の方が優れていることがわかる。
【0067】
(実施例3の評価)
図18−1から
図18−4は、実施例3と比較例1との評価結果を示す図である。
図18−1から
図18−4は、実線が実施例3の電気的特性を、点線が比較例1の電気的特性を示している。
図18−1から
図18−4より、全ての電気的特性において、比較例1よりも実施例3の方が優れていることがわかる。
【0068】
(実施例4の評価)
図19−1から
図19−4は、実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
図19−1から
図19−4は、実線が実施形態4の電気的特性を、点線が比較例1の電気的特性を示している。
図19−1から
図19−4より、全ての電気的特性において、比較例1よりも実施例4の方が優れていることがわかる。
【0069】
(実施例1から実施例4の対比)
図20−1から
図20−4は、実施例1から実施例4と比較例1との評価結果を示す図である。
図20−1から
図20−4では、それぞれの電気的特性を、実施例1は実線で、実施例2は破線で、実施例3は点線で、実施例4は一点鎖線で、比較例1では太い点線で示している。最も電気的特性が良好なのは、実施例3であることがわかる。
【0070】
以上の結果から、積層方向から見た場合に、比較例1、比較例2のような第1コイル104Aと第2コイル104Bが形成される領域に第1コンデンサ105Aと第2コンデンサ105Bとが形成される構造よりも、第1コイル4Aと第2コイル4Bとが形成される領域と異なる領域に第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bとが形成されている実施例1から実施例4の構造の方が、電気的特性の改善にも効果があることがわかる。また、実施例1から実施例4は、積層方向において、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bを、第1コイル4A及び第2コイル4Bと同一の領域に配置している。このため、実施例1から実施例4は、第1コンデンサ105A及び第2コンデンサ105Bを、第1コイル104A及び第2コイル104Bに積層した比較例1及び比較例2よりも低背化(積層方向における寸法を小さくすること)を実現できる。
【0071】
比較例1、2は、積層方向から見た場合に、第1コイル104Aと第2コイル104Bの配置される領域に重なるように第1コンデンサ105Aと第2コンデンサ105Bが配置されているため、第1コイル104Aと第2コイル104Bとの上下左右導体全てから発生する磁場へ及ぼす影響が大きいことが予想される。第1コンデンサ105Aと第2コンデンサ105Bの電極寸法が大きい比較例2の方が、電気的特性がさらに低下することも、この現象を裏付けている。
【0072】
実施例1から実施例4においては、第1コイル4Aと第2コイル4Bとが形成される領域と異なる領域に第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bが形成されており、かつ、積層方向において第1コイル4Aと第2コイル4Bが形成される積層体の同一の領域で第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bとが配置されている。このため、実施例1から実施例4は、第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bとの配置が、第1コイル4Aと第2コイル4Bとに最も近接した導体から発生する磁場にしか大きく影響を与えないため、電気的特性の改善に効果が現れることが予想される。ただし、実施例1から実施例4の作用はこれに限定されない。
【0073】
本発明は、上記の各実施形態及びその変形例並びに上記の各実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、不平衡端子、第1平衡端子、第2平衡端子及び接地端子の配置は、上述した位置に限定されない。また、バランを構成する多層配線構造は、上述した層数未満であっても多くてもよい。さらに、第1コイル4Aと第2コイル4Bとは、それぞれ別の導体層に形成されていてもよいし、一部のみ同一の導体層で形成されていてもよい。さらに、第1コイル4A又は第2コイル4Bと同一の導体層に、第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bとの少なくとも一方の電極を設けてもよいし、第1コイル4A及び第2コイル4Bを形成する導体層と別の導体層に第1コンデンサ5Aと第2コンデンサ5Bとの電極を設けてもよい。さらに、第1コンデンサ5A及び第2コンデンサ5Bの電極を形成する導体層は、第1導体層と中間導体層とに限る必要はなく、第1コイル4A及び第2コイル4Bの導体と同一の第1導体層と第2導体層で形成してもよいし、第2導体層と第3導体層とで形成してもよい。さらに、絶縁性基板上の導体層の順序が逆になった構造であってももちろんよい。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々のコイル配置又はコイル形状を採用することができる。例えば、第1コイル4Aと第2コイル4Bとの両方又はいずれか一方のコイル形状は、円形状でも楕円形状でも、六角形のような多角形状でもよいし、角の部分のみを丸くした形状でも、ミアンダ形状、スパイラル形状でもよい。