(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置決め部は、前記位置ずれ量が予め定められた量を超えたときに、前記位置ずれ量に対応して位置決めする請求項1から4のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記予め定められた量は、前記複数の基板のそれぞれに設けられ前記複数の基板間で接続される端子の電気的導通が可能な量である請求項5または6に記載の基板貼り合わせ装置。
前記位置決め部は、前記位置ずれ量に基づいて、前記複数の基板の少なくとも一つを補正すべく変形させる変形部を有する請求項1から9のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記複数の接合部のそれぞれの前記位置ずれ量を示すデータを格納する格納部を備え、前記位置決め部は前記格納部から前記位置ずれ量を取得する請求項1から11のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記位置ずれ量を検出する検出部を備え、前記位置決め部は前記検出部で検出された前記位置ずれ量に基づいて位置決めする請求項1から13のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記基板を保持し、前記搬送部により前記基板と共に前記接合部に搬送される基板保持部材を備え、前記位置ずれ量は、前記接合部内での接合過程において前記基板保持部材に起因するずれ量を含む請求項1から14のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記特定部は、特定した前記接合部への搬入が可能となる前に、他の接合部の搬入が可能になった場合、前記他の接合部に対応した位置ずれ量を示すデータを出力し、前記位置決め部は、前記他の接合部の前記位置ずれ量に対応して前記複数の基板を位置決めする請求項1から16のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記位置決め部は、前記特定部により特定された前記接合部の前記位置ずれ量に対応して前記複数の基板を位置決めした後、前記他の接合部の前記位置ずれ量を取得した場合、前記複数の基板を前記位置決め部から排出し、前記他の接合部に対応した位置ずれ量に対応して他の複数の基板を位置決めする請求項17に記載の基板貼り合わせ装置。
前記位置決め部は、前記複数の基板を位置決めした後重ね合わせ、前記搬送部は、前記位置決め部によって重ね合わされた前記複数の基板を重ね合わされた状態で前記接合部に搬送し、前記位置決め部は、前記複数の基板を重ね合わせてから前記複数の接合部のいずれかに搬入されるまでの時間を予め定められた時間内とすべく、前記複数の基板の重ね合わせを開始する請求項1から18のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記位置決め部は、前記複数の基板の位置決めが終了した後、前記特定部による前記接合部の特定がなされるまでの時間が予め定められた時間を超えた場合、位置決めのキャリブレーション動作を実行する請求項1から19のいずれか1項に記載の基板貼り合わせ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、基板貼り合わせ装置100の模式的平面図である。基板貼り合わせ装置100は、共通のカバー106の内部に形成された常温部102および高温部104を含む。基板貼り合わせ装置100においては、複数の基板121を貼り合わせて積層基板123とする。
【0011】
なお、基板貼り合わせ装置100において貼り合わされる基板121は、シリコン単結晶ウエハ、化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハの他、ガラス基板等でもあり得る。また、貼り合わされる基板121の少なくとも一方は複数の素子を含む場合がある。更に、貼り合わされる基板121の一方または両方は、それ自体が既にウエハを重ね合わせて製造された積層基板123である場合がある。
【0012】
基板貼り合わせ装置100において、常温部102は、カバー106の一端面に、総合制御部110および複数のFOUP(Front Opening Unified Pod)120を備える。基板121は、複数のFOUP120のうちの少なくともひとつに収容した状態で基板貼り合わせ装置100に装填される。
【0013】
基板貼り合わせ装置100において製造された積層基板123は、他のFOUP120に収容して基板貼り合わせ装置100から搬出される。このように、FOUP120を用いることにより、複数の基板121を一括して基板貼り合わせ装置100に装填し、且つ、複数の積層基板123を一括して基板貼り合わせ装置100から搬出できる。
【0014】
常温部102には、ローダ132、134、136、プリアライナ140、待機部160、位置決め部170、修正部280およびホルダストッカ290が配される。常温部102の内部は、基板貼り合わせ装置100が設置された環境の室温と略同じ温度が維持されるように温度管理される。これにより、位置決め部170の動作精度が安定するので、基板121を重ね合わせる場合の位置決め精度が向上される。
【0015】
FOUP120に面して配されたローダ132は、貼り合わせる基板121をFOUP120から搬出する。また、ローダ132は、FOUP120に対して、製造した積層基板123を搬入する。このように、ローダ132は、基板121または積層基板123を直接に搬送する。
【0016】
ローダ132によりFOUP120から搬出された基板121は、プリアライナ140において基板ホルダ150に搭載される。基板ホルダ150は、ホルダストッカ290から、ローダ134、136によりプリアライナ140まで搬送される。
【0017】
基板ホルダ150は、剛性が高く、耐熱性を有する材料で形成され、平坦な保持面を有する。また、基板ホルダ150は、静電チャック等の基板保持機能を有し、基板121または積層基板123を保持する。これにより、基板121または積層基板123を、基板ホルダ150と一体的に取り扱うことができる。
【0018】
基板121の多くは薄く脆い材料で形成されるので、強度および剛性の高い基板ホルダ150と一体的に取り扱うことにより操作が容易になる。なお、基板ホルダ150の材料としては、アルミナ等のセラミックスを好適な材料として例示できる。
【0019】
プリアライナ140においては、基板ホルダ150に対する基板121の簡単な位置合わせも実行される。これにより、基板121の基板ホルダ150に対する搭載位置および搭載方向が一定になり、後述する位置決め部170における位置決めの負担が軽減される。
【0020】
プリアライナ140において基板ホルダ150に搭載された基板121は、位置決め部170に沿って配されたローダ134により、基板ホルダ150と共に搬送され、位置決め部170に搬入される。
【0021】
位置決め部170は、枠体210の内側に配された固定ステージ250および微動ステージ230を有する。固定ステージ250は枠体210に対して固定され、下向きに基板ホルダ150および基板121を保持する。微動ステージ230は、基板ホルダ150および基板121を搭載して、位置決め部170の内部で、固定ステージ250に対して相対移動する。
【0022】
枠体210の外面は壁材212により閉鎖され、周囲からの輻射熱が位置決め部170に及ぼす影響を絶っている。壁材212の内側には干渉計222が配され、微動ステージ230に搭載された反射鏡224を利用して、微動ステージ230の位置を高精度に測定する。これにより、微動ステージ230に搭載された基板121を、固定ステージ250に保持された基板121に対して高精度に位置決めできる。
【0023】
位置決め部170において重ね合わせされた基板121は、ローダ134により重ね合わせ装置から搬出され、ローダ136によりロードロック191に搬入される。ロードロック191に搬入された基板121は、次に説明する高温部104において処理される。
【0024】
ローダ136の近傍にはホルダストッカ290が配される。ホルダストッカ290は、複数の基板ホルダ150を収容する。また、ホルダストッカ290は、基板ホルダ150を冷却する機能を有する場合もある。
【0025】
高温部104は、断熱壁108に包囲され、高い内部温度を維持すると共に、外部への熱輻射を遮断している。高温部104は、ロードロック191、接合部190およびローダ138を備える。ロードロック191は、交互に開閉するシャッタ193、195を有し、高温部104の高温雰囲気が常温部102に漏洩することを防止する。
【0026】
ロードロック191に搬入された基板121は、複数ある接合部190のいずれかにローダ138により搬入される。接合部190は、位置決めされた基板121を加圧することにより恒久的に貼り合わせる。こうして、基板121は積層基板123となる。
【0027】
積層基板123は、基板ホルダ150と共に接合部190から搬出され、ローダ138により高温部104側からロードロック191に搬入される。更に、積層基板123および基板ホルダ150は、ローダ136によりロードロック191から搬出される。その後、積層基板123は、ローダ134、132に受け渡されてFOUP120に回収される。
【0028】
基板ホルダ150は、ホルダストッカ290に戻され、他の基板121を貼り合わせる場合に再使用される。なお、ホルダストッカ290の上部には、基板121の反り等を修正する修正部280が配される。修正部280は、貼り合わせる基板121の状態に応じて使用される場合がある。
【0029】
上記のような基板貼り合わせ装置100において、総合制御部110は、ローダ132、134、136、138、プリアライナ140、位置決め部170、接合部190、修正部280等の各部の動作を個別に制御すると共に、ある要素に関する情報に基づいて他の要素を制御することにより、基板貼り合わせ装置100全体の動作を包括的に制御する。
【0030】
また、総合制御部110は、基板貼り合わせ装置100の電源投入、各種設定、情報等を入力する場合にユーザが外部から操作する操作部、ユーザに対して情報を伝える表示部等を含む。更に、総合制御部110は、付加的に配備された他の機器と接続する接続部を含む場合もある。
【0031】
図2は、下向きの基板ホルダ150を見上げた様子を示す斜視図である。基板ホルダ150は、保持する基板121に接する円形の載置面156を有する円板状の部材であり、アルミナセラミックス等の硬い材料で形成される。また、基板ホルダ150は、埋設された電極に電圧を印加した場合に載置面156に基板121を静電吸着する静電チャック158を有する。
【0032】
更に、基板ホルダ150は、側周に沿って配された複数の永久磁石152を備える。永久磁石152は、それぞれ載置面156の外側において、基板ホルダ150の縁部に対して固定される。
【0033】
図3は、上向きの他の基板ホルダ150を見下ろした様子を示す斜視図である。この基板ホルダ150も、載置面156および静電チャック158を有する点では、
図2に示した基板ホルダ150と同じ形状および構造を有する。
【0034】
図3に示した基板ホルダ150は、永久磁石152に換えて、磁性体板154を有する。磁性体板154は、永久磁石152に対応して配される。また、磁性体板154の各々は、載置面156の法線方向に変位可能に、基板ホルダ150に対して弾性的に取り付けられる。これにより、
図2に示した基板ホルダ150と
図3に示した基板ホルダ150とを向かい合わせて重ねた場合、永久磁石152が磁性体板154を吸着して、一対の基板ホルダ150の面方向の相対位置を自律的に維持する。
【0035】
なお、上記のように、永久磁石152または磁性体板154の少なくとも一方は、基板ホルダ150の本体に対して弾性的に固定されている。よって、重ね合わせた基板ホルダ150の間にスペーサを挟むことにより、重ね合わせた一対の基板ホルダ150の間に間隙を維持したまま、基板ホルダ150相互の相対位置を固定することもできる。
【0036】
図4は、位置決め部170の模式的縦断面図である。位置決め部170は、枠体210と、枠体210の内側に配された移動ステージ部240および固定ステージ250を有する。
【0037】
固定ステージ250は、枠体210の天井面から、複数のロードセル254を介して下向きに懸架される。固定ステージ250は、静電チャック252を備える。これにより、固定ステージ250は、貼り合わせに供する基板121の一方を保持した基板ホルダ150を下面に吸着して保持する。
【0038】
図示の例では、
図2に示した、永久磁石152を装着された基板ホルダ150が固定ステージ250に保持される。ロードセル254は、固定ステージ250に対して下方から上方に向かってかかる負荷を検出する。
【0039】
枠体210の天井面には、固定ステージ250の側方に、下向きの顕微鏡251が配される。顕微鏡251は、後述する微動ステージ230に保持された基板121の表面を観察する。なお、顕微鏡251は枠体210に固定されているので、顕微鏡251と固定ステージ250の相対位置は変化しない。
【0040】
移動ステージ部240は、移動定盤242、粗動ステージ244、重力打ち消し部246、球面座248および微動ステージ230を含む。移動定盤242は、粗動ステージ244、重力打ち消し部246および微動ステージ230を搭載して、枠体210の内部底面に固定されたガイドレール241に沿って移動する。移動定盤242の移動により、移動ステージ部240は、固定ステージ250の直下と、固定ステージ250の直下からはずれた位置との間を移動する。
【0041】
粗動ステージ244は、図中に矢印で示すX方向成分およびY方向成分を含む水平方向に、移動定盤242に対して移動する。移動定盤242に対して相対移動する場合、微動ステージ230も粗動ステージ244につれ従って移動する。
【0042】
重力打ち消し部246は、微動ステージ230の微細な変位を検知しつつ伸縮して、微動ステージ230の見かけの重量を小さくする。これにより、微動ステージ230を変位させるアクチュエータの負荷を軽減して位置の制御精度を向上させる。
【0043】
微動ステージ230は、保持部220を有し、貼り合わせに供する基板121を保持した基板ホルダ150を保持する。基板121の位置決め動作において、微動ステージ230は、当初、粗動ステージ244の移動に連れ従って移動する。次の段階で、微動ステージ230は粗動ステージ244に対して変位する。微動ステージ230の粗動ステージ244に対する変位は、X、Y、Z軸の全てに対する並進および回転を含む。
【0044】
また、微動ステージ230は、側方に固定された顕微鏡231を有する。顕微鏡231は微動ステージ230に対して固定されているので、微動ステージ230および顕微鏡231の相対位置は変化しない。顕微鏡231は、固定ステージ250に保持された基板121の表面を観察する。
【0045】
図5は、位置決め部170の模式的断面図である。
図4と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0046】
図示の位置決め部170においては、移動ステージ部240がガイドレール241に沿って移動し、それぞれが基板ホルダ150および基板121を保持した微動ステージ230および固定ステージ250が互いに対向した状態になる。更に、保持した一対の基板を位置決めした上で微動ステージ230を上昇させ、一対の基板121は互いに接近する。
【0047】
接近した一対の基板121が当接した場合、少なくとも一方の基板121に形成されたはんだバンプ等を介して、基板121上のパッドが相互に電気的に結合される。このように、一対の基板121上の素子を相互に結合して、積層基板123を形成できる。換言すれば、積層基板123を形成する場合には、パッド、パンプ等の位置が一致するように、位置決め部170において一対の基板121相互の位置決めが実行される。
【0048】
ただし、一対の基板121は、最終的に、接合部190において接合される。よって、位置決め部170においては、基板121が相互に位置決めされた状態で固定される。この場合、位置決めされた基板121は、互いに当接してもよいし、当接することなく位置決めされた状態を固定されてもよい。
【0049】
図6は、互いに対向して接合に供される一対の基板121の概念的な斜視図である。基板121は、ノッチ124により一部が欠けた円板型の形状を有して、表面にそれぞれ複数の素子領域126およびアライメントマーク128を有する。
【0050】
ノッチ124は、基板121の結晶配向性等に対応して形成される。よって、基板121を取り扱う場合には、ノッチ124を指標として基板121の方向が判る。
【0051】
基板121の表面には、複数の素子領域126が周期的に配される。素子領域126の各々には、フォトリソグラフィ技術等により基板121を加工して形成された半導体装置が実装される。また、素子領域126の各々には、基板121を他の基板121に貼り合わせた場合に接続端子となるパッド等も含まれる。
【0052】
なお、複数の素子領域126相互の間には、素子、回路等の機能的要素が配されていないブランク領域がある。ブランク領域には、基板121を素子領域126毎に切り分ける場合に切断するスクライブライン122が配される。
【0053】
更に、スクライブライン122上には、基板121を位置決めする場合の指標となるアライメントマーク128が配される。スクライブライン122は、基板121を切断してダイにする過程で鋸代となって消滅するので、アライメントマーク128を設けることにより、基板121の実効的な面積が圧迫されることはない。
【0054】
なお、図中では素子領域126およびアライメントマーク128を大きく描いているが、例えば直径300mmの基板121に形成される素子領域126の数は数百以上にも及ぶ場合がある。また、素子領域126に形成された配線パターン等をアライメントマーク128として利用する場合もある。
【0055】
貼り合わせる一対の基板121を位置決め部170において位置決めする場合、顕微鏡231、251により対向する基板121のアライメントマーク128を観察して、基板121相互の相対位置を計測する。更に、計測した相対位置のずれを解消すべく微動ステージ230を移動させることにより、基板121は位置を合わせることができる。
【0056】
しかしながら、たとえ同じ装置で同じマスクを用いて作製された基板121であっても、フォトリソグラフィ過程における温度等の環境条件の相違等により、基板121上に形成された素子領域126の形成倍率が異なる場合がある。また、素子領域126の形成過程で基板121が厚さ方向に変形している場合がある。
【0057】
このような場合は、基板121の相対位置を如何様に調整しても、予め定められた位置決め精度が得られない。そこで、アライメントマーク128の位置検出等により基板121の倍率、形状等に位置決め精度を低下させる要素がある場合は、修正部280を用いて厚さ方向に変形させることにより基板121を修正する。
【0058】
なお、上記のような位置決め部170は、検査装置としても用いることができる。即ち、既に貼り合わされた積層基板123においても、基板121の材料を透過する帯域の赤外線で積層基板を照明することにより、顕微鏡231、251でアライメントマーク128のずれを観察できる。これにより、当該積層基板123における位置決め精度を評価できる。
【0059】
図7は、修正部280の模式的断面図である。修正部280は、修正制御部111、ベースプレート183および支持プレート260を備える。ベースプレート183は、可動連結部270およびアクチュエータ272並びに固定連結部274により、支持プレート260と複数箇所で結合される。
【0060】
アクチュエータ272は、個別に伸縮して、可動連結部270を昇降させる。アクチュエータ272としては、熱を生じることなく動作する圧電アクチュエータ、エアアクチュエータ等を用いることができる。固定連結部274は、ベースプレート183および支持プレート260の中央にそれぞれ直結され、ベースプレート183および支持プレート260の間隔を一定に維持する。
【0061】
なお、可動連結部270および固定連結部274のそれぞれは、アクチュエータ272の伸縮方向、即ち、鉛直方向の変位は効率よく支持プレート260に伝達する。これにより、アクチュエータ272のいずれかが動作した場合、支持プレート260の該当個所は昇降方向に変位する。
【0062】
ただし、ベースプレート183に対する支持プレート260の傾きが変化する変位については、可動連結部270および固定連結部274の首振り動作によりアクチュエータ272に伝達されない。よって、アクチュエータ272が動作して伸縮した場合、支持プレート260の各部は、ベースプレート183に対して専ら直交する方向に変位して変形する。
【0063】
また、支持プレート260は、吸引孔262、枠部264および支持突起266を含むピンチャック部268を有する。吸引孔262は、支持プレート260の上面において、枠部264の内側全体に多数分布し、支持突起266の間にそれぞれが開口する。吸引孔262のそれぞれは、バルブ181を通じて負圧源に結合される。
【0064】
支持プレート260の枠部264は、支持プレート260が支持する基板ホルダ150の周縁部に沿って環状に形成される。よって、支持プレート260上に基板ホルダ150を載置した状態でバルブ181が解放された場合、基板ホルダ150および支持プレート260の間が減圧され、基板ホルダ150は支持プレート260に吸着される。
【0065】
支持突起266は、支持プレート260の上面において、枠部264に包囲された領域の内側に配される。支持突起266の各々の頂面の高さは、枠部264の高さと等しい。よって、支持プレート260が平坦な状態で枠部264および支持突起266の上に載置された基板ホルダ150は平坦になる。
【0066】
修正制御部111は、バルブ181の開閉およびアクチュエータ272の個々の動作を制御する。即ち、修正制御部111は、バルブ181を開閉することにより、基板ホルダ150を支持プレート260に吸着または解放させることができる。また、修正制御部111は、アクチュエータ272を個々に伸縮させることにより、支持プレート260を部分的に昇降させることができる。
【0067】
基板ホルダ150は、既に説明した通り、静電チャック158を有して、基板121を吸着する。基板121を吸着した基板ホルダ150が支持プレート260の上面に載置された場合、修正制御部111は、基板ホルダ150の静電チャック158への給電をいったん停止する。これにより、基板121は、基板ホルダ150の上に吸着されることなく載せられた状態になる。
【0068】
次いで、修正制御部111は、バルブ181を解放して負圧源に連通させ、吸引孔262に負圧を生じさせる。これにより、基板ホルダ150は、平坦な状態の支持プレート260に吸着されて、支持プレート260と一体になる。
【0069】
図8は、修正部280の模式的断面図であり、アクチュエータ272の一部が動作した状態を示す。
図7と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0070】
図中に矢印dで示すように、図示の例では、左から2本目のアクチュエータ272が縮んで可動連結部270を引き下げ、支持プレート260を部分的に降下させている。また、図中に矢印uで示すように、右から2本目のアクチュエータ272が伸びて可動連結部270を押し上げ、支持プレート260を部分的に上昇させている。このような支持プレート260の部分的な昇降により、支持プレート260は変形する。
【0071】
支持プレート260は、吸引孔262に生じた負圧により基板ホルダ150を吸着して基板ホルダ150と一体化している。よって、支持プレート260が上記のように変形した場合、基板ホルダ150も支持プレート260に連れ従って共に変形する。
【0072】
ただし、この段階では、基板ホルダ150の静電チャック158は作動しておらず、基板ホルダ150は基板121を吸着していない。よって、変形した基板ホルダ150上に載置された基板121は、基板ホルダ150の上面に載っているに過ぎず、部分的に離間している場合もある。
【0073】
このように、基板121の補正におけるひとつの段階においては、基板121を吸着していない状態で、支持プレート260および基板ホルダ150を、初期状態よりも変形量が大きい状態まで変形させる。基板ホルダ150の初期状態とは、例えば、基板ホルダ150が平坦な状態を指す。
【0074】
図9は、修正部280の模式的断面図であり、
図8に示した状態の次の段階を示す。
図7および
図8と同じ要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0075】
図示の状態では、修正制御部111が静電チャック158に電圧を印加させる。これにより、基板121は、既に支持プレート260と共に変形している基板ホルダ150に吸着され、基板121、基板ホルダ150および支持プレート260が一体化する。
【0076】
この状態でアクチュエータ272を動作させることにより、支持プレート260および基板ホルダ150を通じて、基板121の変形を解消または減少させることができる。即ち、
図9に示した段階で、一体化した支持プレート260および基板ホルダ150を、基板121の変形に倣うように変形させる。次に、その状態でアクチュエータ272を動作させて支持プレート260を平坦な状態に戻すことにより、基板ホルダ150および基板121も平坦な状態になる。
【0077】
このように、基板121の補正における他のひとつの段階においては、基板121を吸着した状態で、基板ホルダ150の変形量を初期状態に近づけるべく支持プレート260を変形させる。よって、支持プレート260の変形は、基板121を保持した後に、いわば初期状態に向かって戻される。これにより、基板121は、基板ホルダ150の変形状態から初期状態への変形に従って変形することにより補正される。このように、支持プレート260は、基板121を吸着保持する基板ホルダ150を変形させることにより、基板121の様々な変形を修正する場合に用いることができる。
【0078】
上記の例では、支持プレート260が、基板ホルダ150を吸着支持し、基板ホルダ150と共に基板121を変形させる場合について例示した。しかしながら、支持プレート260は、基板121を直接に吸着支持して変形させることもできる。よって、基板ホルダ150を用いない場合でも、支持プレート260を用いることができる。
【0079】
このように、修正部280を用いることにより、基板121の各部に個別に力を作用させて部分的に変形させることができる。これにより、基板121における形成倍率を全体にまたは部分的に変化させること、基板121の変形を部分的に修正すること等ができる。よって、例えば、処理の対象となる基板121の変形に倣った変形を基板ホルダ150に与えた上で基板121を吸着させてから基板ホルダ150の変形を解放すると、基板121を平坦化できる。
【0080】
なお、上記の例では、アクチュエータ272により支持プレート260を平坦な状態に戻したが、ピンチャック部268による基板ホルダ150の保持を解除しても、基板121を平坦な状態に近づけることができる。即ち、
図9に示した段階で一体化した基板121、基板ホルダ150および支持プレート260において、ピンチャック部268による基板ホルダ150の吸着を解放すると、基板ホルダ150は、それ自体の弾性により、いわば逆変形して当初の平坦な状態に近づく。
【0081】
基板121よりも遥かに厚い基板ホルダ150は、基板121よりも高い曲げ剛性を有する。また、基板ホルダ150は、基板121の下面全体を載置面156に吸着している。よって、基板ホルダ150が逆変形する場合、基板121も基板ホルダ150の逆変形に連れ従って変形する。
【0082】
この場合、基板ホルダ150が変形を解放される段階では、静電チャック158による基板121の吸着が継続しており、基板ホルダ150は、基板121を吸着したまま共に逆変形する。逆変形する基板ホルダ150が生じる復元力は、基板ホルダ150の曲げ剛性に基板121の曲げ剛性を加味したものに対して作用する。よって、支持プレート260の曲げ剛性は、基板121および基板ホルダ150のそれぞれの曲げ剛性よりも大きく、且つ、基板121の曲げ剛性と基板ホルダ150の曲げ剛性とを合わせた曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有することが望ましい。
【0083】
このため、支持プレート260による基板ホルダ150の変形が解除されたからといって、基板ホルダ150が変形前と同じように平坦に戻るわけではない。しかしながら、基板ホルダ150から基板121に対しては平坦に戻そうとする力が不断に作用するので、基板121を平坦化する場合にかける力を軽減できる。
【0084】
このように、修正部280は、他の基板121に接合される基板121を基板ホルダ150と共に保持する支持プレート260と、保持した基板121の面方向と交差する方向に支持プレート260を変形させることにより基板121を変形させて、保持した基板121と他の基板121とのずれを補正するアクチュエータ272とを備える。
【0085】
よって、保持した基板121を上記のように面方向に交差する方向に変形させることにより、当該基板121と接合される他の基板121とのずれを補正する補正段階を実行できる。即ち、一対の基板121を位置決めした場合に、位置決め後に閾値以上の位置ずれが残る場合に、上記修正部280を用いて支持プレート260、基板ホルダ150および基板121を変形させて、残ったずれを打ち消すことができる。
【0086】
なお、支持プレート260は、予め定められた曲率で湾曲した湾曲部を有してもよい。この場合、アクチュエータ272は、支持プレート260の曲率が変化するように支持プレート260を変形させる。また、複数のアクチュエータ272により領域毎に変形させる修正部280の機能を、基板ホルダ150に設けてもよい。これにより、既存の設備において基板121の補正を実行することもできる。
【0087】
図10は、修正部280の支持プレート260における可動連結部270および固定連結部274の配置の一例を示す平面図である。支持プレート260の表面において、枠部264の内側には、多数の支持突起266が配される。支持突起266の間には、図示の縮尺では見えない微細な吸引孔262が多数配される。よって、支持プレート260上に載置した基板ホルダ150には、全体に均一な吸引力を作用させることができる。
【0088】
固定連結部274は、支持プレート260の中央に配される。既に説明した通り、固定連結部274は、ベースプレート183および支持プレート260の双方に対して固定される。よって、支持プレート260の中央は、面方向についても、面方向と直交する方向についても、ベースプレート183に対して固定される。
【0089】
可動連結部270は、上記固定連結部274を始点として、隣接する可動連結部270に対して互いに等間隔に、二次元的に配される。図示の例では、可動連結部270は、支持プレート260表面を平面充填する正三角形の頂点に配される。換言すれば、可動連結部270は、支持プレート260表面を平面充填してハニカム構造を形成する正六角形の頂点と中心に配される。
【0090】
これにより、アクチュエータ272により昇降された可動連結部270は、支持プレート260の各領域を個別に昇降させることができる。よって、支持プレート260に吸着させた基板ホルダ150の各領域も個別に変形させることができる。更に、可動連結部270の一部を、支持プレート260上の基板ホルダ150において基板121が保持される領域の外側まで配することにより、基板ホルダ150を外縁部まで変形させることができる。
【0091】
なお、支持プレート260内周側の円A上に配された可動連結部270が全周にわたって等間隔に配されているのに対して、外周側の円B上に配された可動連結部270およびアクチュエータ272では間隔が開いている箇所が周期的に存在する。しかしながら、このような配列の可動連結部270を有する支持プレート260でも、基板ホルダ150および基板121を変形させる場合の制御性は殆ど低下しなかった。
【0092】
なお、修正部280の支持プレート260を変位させる可動連結部270の配置は、上記の例に限られない。例えば、可動連結部を複数の同心円上に配置する場合に、当該複数の同心円がいずれも基板121の径の内側あるいは外側になる配置としてもよい。また、可動連結部270の数を増加または低減してもよい。
【0093】
図11は、接合部190の模式的断面図である。接合部190は、筐体192の底部から順次貼り合わされた定盤198およびヒートプレート196と、筐体192の天井面から垂下された圧下部194およびヒートプレート196とを有する。ヒートプレート196の各々はヒータを内蔵する。また、筐体192の側面のひとつには搬入口199が設けられる。
【0094】
接合部190には、既に位置決めして重ね合わされた基板121と、基板121を挟む一対の基板ホルダ150が搬入される。搬入された基板ホルダ150および基板121は、定盤198のヒートプレート196上面に載置される。
【0095】
接合部190は、まず、ヒートプレート196を昇温させると共に、圧下部194を降下させて上側のヒートプレート196を押し下げる。これにより、ヒートプレート196の間に挟まれた基板ホルダ150および基板121が加熱および加圧されて接合され、基板121は積層基板123となる。製造された積層基板123は、ローダ138により接合部190から搬出される。
【0096】
なお、上記のような用途に鑑みて、基板ホルダ150には、接合部190における加熱および加圧を繰り返し受けても劣化しない強度と耐熱性が求められる。また、ヒートプレート196による加熱温度が高い場合は、基板121の表面が雰囲気と化学的に反応する場合がある。そこで、基板121を加熱加圧する場合は、筐体192の内部を排気して真空環境とすることが好ましい。このため、搬入口199を気密に閉鎖する開閉可能な扉を設けてもよい。
【0097】
更に、接合部190には、加熱、加圧した後の積層基板123を冷却する冷却部を設けてもよい。これにより、室温までに至らなくても、ある程度冷却した積層基板123を搬出して、迅速にFOUP120に戻すことができる。
【0098】
図12、
図13、
図14および
図15は、基板貼り合わせ装置100における基板121の状態の変遷を示す図である。これらの図面を参照しつつ、基板貼り合わせ装置100の動作を説明する。
【0099】
貼り合わせに供される基板121は、FOUP120に収容された状態で基板貼り合わせ装置100に装填される。基板貼り合わせ装置100においては、まず、ローダ134、136が、ホルダストッカ290から搬出した基板ホルダ150をプリアライナ140に載置する。
【0100】
ここで、基板ホルダ150は、プリアライナ140に対する載置位置を調整される。これにより、基板ホルダ150は、予め定められた一定以上の精度で、プリアライナ140上に位置決めされる。
【0101】
次に、ローダ132は、FOUP120から1枚ずつ搬出した基板121を、プリアライナ140に搬送する。プリアライナ140において、基板121は、基板ホルダ150に対して、予め定められた一定以上の位置精度で基板ホルダ150に搭載される。
【0102】
こうして、
図12に示すように、基板121を保部持した基板ホルダ150が用意される。基板121を搭載された基板ホルダ150は、ローダ134により位置決め部170に順次搬送される。これにより、例えば、最初に搬送された基板121および基板ホルダ150は、ローダ134により反転されて固定ステージ250に保持される。
【0103】
次に搬入された基板121および基板ホルダ150は、そのままの向きで微動ステージ230に保持される。こうして、
図13に示すように、一対の基板121は、互いに対向した状態で位置決め部170に保持される。
【0104】
次に、位置決め部170は、相互に位置決めした一対の基板121を、位置決めした状態を維持するように固定する。即ち、基板ホルダ150の間にスペーサ151を挟んだ状態で永久磁石152に磁性体板154を吸着させることにより、基板121の間に間隙を残したまま、基板ホルダ150および基板121の面方向の相対位置を固定する。
【0105】
これにより、ローダ134、136、138は、相互に位置決めされた一対の基板121および基板ホルダ150を、基板121間の間隙を維持したまま一体的に搬送できる。よって、一対の基板121の対向する面を鏡面研磨等により活性化して低温で接合する場合に、基板121を相互に接触させることなく、位置決めした状態を維持したまま接合部190に搬送できる。
【0106】
換言すれば、位置決めした基板121を高温で加圧してはんだ等により接合する場合は、スペーサ151を用いずに、位置決めした一対の基板121を相互に密着させて固定してもよい。この場合も、基板121相互の位置決めを維持したまま、基板121および基板ホルダ150を一体的に搬送することができる。
【0107】
なお、この段階では、一対の基板121は、まだ当接も接合もされていない。よって、この段階であれば、基板ホルダ150の固定を解いて、基板121の位置決めを、基板121を傷めることなくやり直すことができる。
【0108】
続いて、ローダ134、136、138は、1対の基板121を挟んだ基板ホルダ150を接合部190に装入する。接合部190において加熱、加圧された1対の基板121は恒久的に接合され、
図15に示すように積層基板123となる。よって、ローダ136、138は、基板ホルダ150および積層基板123を分離して、基板ホルダ150はホルダストッカ290に、積層基板123は、FOUP120に、それぞれ搬送する。こうして、積層基板123を製造する一連の工程が完了する。
【0109】
図16は、基板貼り合わせ装置100における総合制御部110の一部を示すブロック図である。総合制御部110は、位置決め制御部112、格納部114、搬送制御部116および特定部118を有する。
【0110】
特定部118は、位置決め部170において位置決めされた基板121を、複数ある接合部190のどれを用いて接合するかを特定する。特定部118により特定された接合部190は、補正部313および搬送制御部116に通知される。
【0111】
搬送制御部116は、ローダ駆動部316を含む。ローダ駆動部316は、ローダ134、136、138を駆動して、位置決め部170において位置決めされた基板121を、特定部118により特定された接合部190に搬送させる。
【0112】
位置決め制御部112は、検出部311、算出部312、補正部313およびステージ駆動部314を含む。検出部311は、位置決め部170の顕微鏡231、251から取得した画像情報に基づいて、貼り合わせる一対の基板121の各々について、アライメントマーク128の位置を検出する。
【0113】
算出部312は、検出部311が検出したアライメントマーク128の位置情報を統計的に処理することにより、アライメントマーク128の位置から、一対の基板121の相対位置のずれを算出する。これにより、位置決め部170に搬入された一対の基板121の相対位置のずれが、検出部位置ずれ量として算出される。
【0114】
補正部313は、算出部312が検出した検出部位置ずれ量を補正する。即ち、上記した検出部位置ずれ量が解消されれば、一対の基板121のアライメントマーク128が相互に一致して、基板121は位置決めされる。しかしながら、基板貼り合わせ装置100においては、位置決め部170から接合部190までの搬送において基板121の位置ずれが生じる場合がある。また、接合部190における接合処理において、基板121の位置ずれが生じる場合がある。
【0115】
上記のような位置決め後の位置ずれは、例えば、位置決め部170から接合部190への搬送に伴う機械的な振動、衝撃等に起因する。また、ローダ134、136、138が基板121を搭載する場合、接合部190に装入する場合、ローダ134、136、138が相互に受け渡す場合に、静電チャックへの給電の途絶、機械的な振動または衝撃が、基板121の位置ずれを生じる。
【0116】
更に、接合部190において基板121を加熱する場合に、基板121相互に生じる温度差により基板121の位置ずれが生じる。また更に、接合部190において基板121を密着させる場合に、基板121、基板ホルダ150、ヒートプレート196のいずれかの厚さのばらつきにより基板121が片当たりして位置ずれが生じる。
【0117】
そこで、補正部313は、格納部114に格納された接合部190の個々の特性情報を参照して、位置決めされる基板121の搬送先の接合部190の特性に応じて補正値を生成する。ここで、特性情報とは、理想的に位置決めされた基板121を個々の接合部190において接合した場合に、それぞれの接合部190において生じる接合部位置ずれ量を含む。補正部313は、そのような特性情報を参照して、検出部位置ずれ量に、補正値としての接合部位置ずれ量を加算した位置決め用位置ずれ量を接合部190毎に生成する。
【0118】
ステージ駆動部314は、補正部313から取得した位置決め用位置ずれ量に基づいて、位置決め用位置ずれ量を打ち消すように微動ステージ230を駆動する。これにより、基板貼り合わせ装置100は、位置決め後の接合において生じる位置ずれも補正して、位置決め精度の高い積層基板123を製造できる。
【0119】
なお、格納部114に格納される特性情報は、総合制御部110の操作部を通じて外部から数値入力してもよい。また、位置決め部170を検査部として用いることにより、製造された積層基板123における位置ずれを測定して、個々の接合部190の特性情報を生成してもよい。
【0120】
図17は、総合制御部110による制御手順を示す流れ図である。
図17には、基板貼り合わせ装置100において貼り合わせる一対の基板121が位置決め部170に装入された直後の制御手順が示される。
【0121】
一対の基板121の位置決めを実行する場合、総合制御部110は、まず、一対の基板121を順次位置決め装置に装入する(ステップS101)。装入された基板121は、それぞれ、微動ステージ230および固定ステージ250に保持される。
【0122】
次に、総合制御部110は、位置決め制御部112の検出部311に、基板121の各々のアライメントマーク128の位置を検出させる(ステップS102)。次いで、総合制御部110は、算出部312に、一対の基板121に関する検出部位置ずれ量を算出させる(ステップS103)。
【0123】
ここで、総合制御部110は、算出部312が有効な検出部位置ずれ量を算出したか否かを調べる(ステップS104)。即ち、微動ステージ230および固定ステージ250の相対移動による位置決めは、検出部位置ずれ量の線形成分、即ち、微動ステージ230の面方向の位置ずれおよび同面内の回転位置ずれを補正する。
【0124】
算出部312が算出した検出部位置ずれ量が、X方向倍率、Y方向倍率、直交成分の歪みおよび非線形成分の位置ずれのいずれかを含む場合(ステップS104:YES)、総合制御部110は、ローダ134、136により、基板121の基板121のいずれかを修正部280へと搬送させる(ステップS105)。基板121が搬入された修正部280は、総合制御部110から指示を受けた修正制御部111の制御の下に基板121を厚さ方向に変形させて倍率、反り等を修正する(ステップS106)。総合制御部110は、修正部280において修正された基板121を、ローダ134、136により、位置決め部170に搬送される(ステップS107)。
【0125】
ステップS107において搬送された基板121は、再び位置決め部170に装入され(ステップS101)、ステップS102からステップS104までの処理を繰り返す。ステップS104において、検出部位置ずれ量に非線形成分が含まれないことが判った場合(ステップS104:NO)、総合制御部110は、特定部118に、位置決め後の基板121を接合する接合部190を特定させる(ステップS108)。なお、修正部280において修正しても検出部位置ずれ量の非線形成分を解消できない基板121は貼り合わせ処理から取り除いて、他の基板121を貼り合わせに供してもよい。
【0126】
図18は、特定部118が接合部190を特定する場合の処理手順を示す流れ図である。
図18に示す手順は、
図17に示した手順のステップS108の内容を詳細に示す。
【0127】
総合制御部110から接合部190の特定を要請された特定部118は、まず、複数の接合部190のうちに空いている接合部190があるか否かを調べる(ステップS201)。空いている接合部190がある場合(ステップS201:YES)、特定部118は、格納部114を参照して、空いている接合部190の個々の特性情報を取得する(ステップS202)。
【0128】
即ち、特定部118は、格納部114を参照して、接合部190の各々における加圧力の変移または加熱温度の変移に関する特性情報する。これにより、特定部118は、空いている接合部190のうち、接合処理において発生する位置ずれ量が小さいものや、直前の処理の影響が少ないもの(例えば、温度が一定温度以下になっているなど)を選択する(ステップS203)。更に、特定部118は、選択した接合部190を補正部313に通知する(ステップS204)。また、特定された接合部190は、搬送制御部116にも通知される。
【0129】
ステップS201において空いている接合部190が無かった場合、特定部118は、まず、複数の接合部190の各々が接合を完了して空く時刻を予測する(ステップS205)。時刻の予測は、例えば、接合部190の各々に対して実行すべきことが予め定められたレシピの進捗状況を検出して、残るレシピの実行に要する時間を予測する。これにより、接合部190の各々が、次に基板121を受け入れることができる時刻を予測できる。
【0130】
次いで、特定部118は、位置決め部170における位置決め処理が完了する時刻を予測する(ステップS206)。更に、特定部118は、予測した位置決め処理の完了時刻に、位置決め部170から接合部190への搬送時間を加えた時刻、即ち、接合部190への搬入時刻を予測する(ステップS207)。
【0131】
続いて、特定部118は、接合部190への搬入を待って既に待機している基板121があるか否かを調べる(ステップS208)。待機している基板121が無い場合(ステップS208:NO)、特定部118は、ステップS207において予測した搬入時間に最も近い時刻に搬入可能になる接合部190を基板121の搬送先として選択する(ステップS210)。
【0132】
また、ステップS208において接合部190への搬入を待機している基板121があった場合(ステップS208:YES)、特定部118は、待機している基板121に対して特定されている接合部190を、次に特定する対象から除く(ステップS209)。次いで、特定部118は、残った接合部190から、ステップS207において予測した搬入時間に最も近い時刻に搬入可能になる接合部190を基板121の搬送先として選択する(ステップS210)。
【0133】
次に、特定部118は、予め定められた待機時間の上限閾値を越えない範囲で搬入可能になる接合部190があるか否かを調べる(ステップS211)。ここで、全ての接合部190が閾値時間内に搬入できないことが予測された場合(ステップS211:NO)、特定部118は、選択した接合部190を通知することなく待機する。よって、位置決め部170における処理も待機して、基板121は位置決めされない。
【0134】
このように、位置決め部170において位置決めされてから、接合部190において接合されるまでの時間を予め定められた閾値時間内に制限してもよい。これにより、位置決め後の温度変化等により位置決め精度が劣化することを防止できる。
【0135】
一方、閾値時間内に搬入できる接合部190がある場合(ステップS211:YES)、特定部118は、選択した接合部を補正部313に通知する(ステップS212)。また、接合部190の特定は、搬送制御部116にも通知される。
【0136】
このように、接合部190が既に使用されている場合であっても、特定部118は、待機する基板121の待ち時間が短くなるように接合部190を特定する。これにより、基板貼り合わせ装置100における資源の利用率を向上させ、基板貼り合わせのスループットを向上させることができる。
【0137】
図19は、位置決め部170において継続される処理手順を示す流れ図である。図示の手順は、
図17および
図18に示した手順に続く処理手順である。
【0138】
位置決め部170において位置決めされる基板121を接合する接合部190が特定されると(ステップS108)、総合制御部110は、補正部313に格納部114を参照させる(ステップS109)。格納部114を参照した補正部313は、特定された接合部190の特性情報を参照して、当該接合部190の特性に起因して生じる位置ずれが、予め定めた閾値を超えていないかどうかを調べる(ステップS110)。
【0139】
即ち、補正部313は、獲得した特性情報に基づいて、接合部190において基板121に生じる位置ずれ量を予測する。この予測した位置ずれ量が、予め定めた閾値を超える場合(ステップS110:NO)、その旨を総合制御部110に通知する。
【0140】
通知を受けた総合制御部110は、補正部313に補正値を生成させ(ステップS111)、当該補正値を検出部位置ずれ量に加算することにより、位置決め用位置ずれ量を生成させる(ステップS112)。なお、ステップS110において接合部190で発生することが予測される位置ずれ量が、予め定めた閾値よりも小さいことが判った場合(ステップS110:YES)、補正部313は、検出部位置ずれ量を補正することなく出力する。
【0141】
ついで、総合制御部110は、補正部313が出力した位置決め用位置ずれ量または検出部位置ずれ量に基づいて、位置決め部170に位置決めを実行させる(ステップS113)。即ち、位置決め制御部112において、ステージ駆動部314は、補正部313から取得した位置決め用位置ずれ量または検出部位置ずれ量に基づいて、当該位置ずれ量を打ち消すように微動ステージ230を駆動する。
【0142】
これにより、基板貼り合わせ装置100においては、位置決め部170において位置決めされた後、搬送および接合において生じた位置ずれも補償できる。位置決め部170は、位置決めを実行した後、位置決めされた基板121相互の位置を固定する。
【0143】
次に、総合制御部110は、位置決めされた基板121を接合すべく特定された接合部190が既に空いていて搬入できる状態か否かを調べる(ステップS114)。特定された接合部190が既に空いている場合、総合制御部110は、基板121を特定された接合部190に搬送することを指示する(ステップS118)。接合部190は、搬入された基板121を接合する。
【0144】
また、基板121の位置決めが完了した時点で特定された接合部190が空いていない場合(ステップS114:NO)、総合制御部110は、位置決めして相対位置を固定された基板121を待機部160に搬送する(ステップS115)。これにより、位置決め部170は、次の基板121の位置決めに即座に着手できる。
【0145】
位置決めされた基板121が待機部160に搬入されると、総合制御部110は、当該基板121の待機時間を計測し始める。ここで、待機部160における基板121の待機時間が予め定められた閾値を超えた場合(ステップS116:YES)、総合制御部110は、位置決め部170に較正動作の実行を指示する(ステップS117)。待機時間が閾値時間を越える前に基板121が接合部190に搬送された場合(ステップS116:NO)、総合制御部110は、位置決め部170に較正処理の実行を指示することなく、基板121を特定された接合部190に搬送することを指示する(ステップS118)。
【0146】
こうして、基板121は、特定された接合部190に装入されて接合され積層基板123となる。接合部190における接合において生じる位置ずれは、位置決め部170における位置決めで既に補償されているので、製造された積層基板123の位置決め精度は高い。
【0147】
なお、上記の例では、相互に位置決めした一対の基板121を非接触状態で接合部190に搬入して接合する場合について説明した。しかしながら、位置決め部170において位置決めした一対の基板121を相互に密着させて仮接合し、更に、接合部190において加熱、加圧して本接合する場合にも、上記のように接合部190を特定して、本接合後の位置決め精度を向上させることができる。
【0148】
また、接合部190における接合後に製造された積層基板123を検査して、アライメントマーク128に大きな位置ずれが検出された積層基板123は、基板121を剥がして、改めて貼り合わせ処理を実行してもよい。これにより、出荷される積層基板123の品質を一層向上させることができる。
【0149】
図20は、基板貼り合わせ装置101の、模式的平面図である。
図20に示す基板貼り合わせ装置101は、下記に説明する部分を除くと、
図1に示した基板貼り合わせ装置100と同じ構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0150】
基板貼り合わせ装置101は、修正部280が、位置決め部170に組み込まれている点で基板貼り合わせ装置100と異なっている。即ち、
図1に示した基板貼り合わせ装置100ではホルダストッカ290の上に配されていた修正部280が、基板貼り合わせ装置101においては、位置決め部170の微動ステージ230に組み込まれる。
【0151】
これにより、顕微鏡231、251等を用いて修正すべきことが判明した基板121は、位置決め部170から搬出することなく修正できる。よって、ローダ134、136の負荷を低減できると共に、搬送時間を節約して、基板貼り合わせ装置101のスループットを向上させることができる。
【0152】
図21は、修正部280を含む位置決め部170に関わる位置決め制御部113のブロック図である。位置決め制御部113は、修正制御部111を有する点を除くと、
図16に示した位置決め制御部112と同じ構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0153】
上記の通り、位置決め部170は修正部280を含む。よって、位置決め制御部113は、補正部313およびステージ駆動部314の間に配された修正制御部111を含む。
【0154】
修正制御部111は、修正制御部111は、算出部312が算出した検出部位置ずれ量が、X方向倍率、Y方向倍率、直交成分の歪みおよび非線形成分の位置ずれのいずれかを含む場合に、修正部280を動作させて基板121を修正する。
【0155】
図22は、位置決め制御部113の制御の下に動作する位置決め部170の動作手順を示す流れ図である。位置決め部170には、まず、一対の基板121が順次装入される(ステップS301)。装入された基板121は、それぞれ、微動ステージ230および固定ステージ250に保持される。
【0156】
次に、位置決め制御部113の検出部311が、基板121の各々のアライメントマーク128の位置を検出する(ステップS302)。次いで、算出部312が、一対の基板121に関する検出部位置ずれ量を算出させる(ステップS303)。
【0157】
ここで、算出部312が算出した検出部位置ずれ量において、X方向倍率、Y方向倍率、直交成分の歪みおよび非線形成分の位置ずれのいずれかが予め定めた閾値を超えた場合(ステップS304:YES)、修正制御部111は、検出部位置ずれ量を補償すべく修正部280を動作させる(ステップS305)。修正部280により基板121が修正されると、位置決め制御部113は、再び検出部にアライメントマーク位置を検出させ(ステップS302)、以下、ステップS303およびステップS304を繰り返して修正による位置ずれ量の変化を算出部312に算出させる。
【0158】
修正部280による修正により、算出部312が算出する検出部位置ずれ量が、予め定めた閾値よりも低くなった場合(ステップS304:NO)、位置決め制御部113は、特定部118に、搬送先の接合部190を特定させる(ステップS306)。基板貼り合わせ装置101においては、修正部280が位置決め部170に組み込まれているので、上記ステップS302からステップS306までの一連の処理は、基板121を位置決め部170から搬出することなく実行できる。
【0159】
なお、
図19に示したステップS113において位置決めを実行した後に、改めて基板121の位置ずれ量を再計測して、基板121の位置決め状態を確認してもよい。この場合、何らかの理由で基板121の位置ずれ量が予め定めた閾値を超えることが算出された場合、位置決め制御部113は、ステップS302からステップS306を繰り返す。
【0160】
また、修正部280において修正しても検出部位置ずれ量を十分に解消できない基板121は位置決め部170から搬出して、他の基板121を貼り合わせに供してもよい。一方、修正部280による補正の精度に対する信頼性または再現性が高く、再検査あるいは再計算の必要がない場合は、上記ステップS305において基板121を修正した後、ステップS302に戻って再計測をすることなく、ステップS306を実行してもよい。
【0161】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0162】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を、後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意されたい。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。