特許第5754270号(P5754270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754270
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   G03G15/20 535
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-151132(P2011-151132)
(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公開番号】特開2013-19966(P2013-19966A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】金井 研司
(72)【発明者】
【氏名】小林 康之
(72)【発明者】
【氏名】枝 正勝
【審査官】 目黒 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−249904(JP,A)
【文献】 特開2010−169815(JP,A)
【文献】 特開2006−65363(JP,A)
【文献】 特開2011−123145(JP,A)
【文献】 特開2011−123198(JP,A)
【文献】 特開2011−123414(JP,A)
【文献】 特開2008−90172(JP,A)
【文献】 特開2004−37556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によって回転し記録媒体上の現像剤像を定着させる定着部材と、
前記定着部材の外周面に接触して従動回転し、前記定着部材を加熱する外部加熱部材と、
前記外部加熱部材の表面に油を供給する油供給手段と、
前記外部加熱部材を前記定着部材の外周面から離間した離間位置と前記定着部材の外周面に接触した接触位置との間を移動させると共に、前記定着部材による定着動作の開始後に前記外部加熱部材を前記離間位置から前記接触位置に移動させる移動手段と、
前記定着部材に設けられた定着側歯車と、前記外部加熱部材に設けられた外部加熱部材側歯車と、前記定着側歯車と前記該外部加熱部材側歯車とに噛み合う複数の歯車と、を含んで構成され、前記外部加熱部材が前記接触位置と前記離間位置との間を移動しても、前記定着側歯車及び前記外部加熱部材側歯車と前記複数の歯車と、がそれぞれ噛み合うように構成された歯車機構と、
前記歯車機構に設けられ、前記外部加熱部材が前記離間位置にあるときは前記外部加熱部材が回転するように前記定着側歯車から前記外部加熱部材側歯車に駆動力を伝達し、前記外部加熱部材が前記接触位置にあるときは前記外部加熱部材が前記定着部材に従動回転するように前記定着側歯車から前記外部加熱部材側歯車への駆動力の伝達を遮断する駆動力伝達遮断手段と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記歯車機構は、前記外部加熱部材が前記接触位置にあり前記定着部材の外周面に接触して従動回転するときは、回転数差が発生するように構成された二つの噛み合った歯車を有し、
前記駆動力伝達遮断手段は、前記二つの歯車の一方に設けられ、前記回転数差によって空転するように設けられた一方の方向のみに回転力を伝達する回転力伝達手段である、
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
記録媒体上に現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、
前記現像剤像形成手段で形成された前記現像剤像を前記記録媒体に定着する請求項1又は請求項2に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の定着装置は、定着ロールの外周面にオイルを供給するオイルドナーロールと、定着ロールの外周面に接触して定着ロールに熱量を供給する外部加熱ロールと、定着ロールの外周面を清掃するクリーニングウェブとを有している。
【0003】
また、特許文献2の用紙排出装置は、正逆両方向に回転可能な単一のモータからの駆動力によって、第1の排紙トレイへの用紙の搬送処理および第2の排紙トレイへの用紙の搬送処理を行うように構成された用紙排出装置であって、前記第2の排紙トレイを支持するように構成された移動可能な扉と、前記モータからの駆動力によって前記第2の排紙トレイに排紙する排紙ローラを駆動するように構成され、かつ、前記扉の移動に伴って分断可能に構成されたギヤトレインと、を備え、前記ギヤトレインは、分断箇所において配置されるギヤであって前記扉と一体となって移動するギヤを支持する揺動アームを有しており、かつ、前記ギヤトレインと前記排紙ローラとの間に、前記排紙ローラに対して用紙を前記第2の排紙トレイに排出する方向の駆動力のみを伝達するように構成されたワンウェイクラッチが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3736240号
【特許文献2】特開2011―6249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、定着動作の開始後に定着部材に接触して定着部材の駆動力によって回転する接触部材を有する構成において、該接触部材に供給される油によって定着時に記録媒体に生じる油痕を低減することができる定着装置及び画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、駆動手段によって回転し記録媒体上の現像剤像を定着させる定着部材と、前記定着部材の外周面に接触して従動回転し、前記定着部材を加熱する外部加熱部材と、前記外部加熱部材の表面に油を供給する油供給手段と、前記外部加熱部材を前記定着部材の外周面から離間した離間位置と前記定着部材の外周面に接触した接触位置との間を移動させると共に、前記定着部材による定着動作の開始後に前記外部加熱部材を前記離間位置から前記接触位置に移動させる移動手段と、前記外部加熱部材を前記定着部材の外周面から離間した離間位置と前記定着部材の外周面に接触した接触位置との間を移動させると共に、前記定着部材による定着動作の開始後に前記外部加熱部材を前記離間位置から前記接触位置に移動させる移動手段と、前記定着部材に設けられた定着側歯車と、前記外部加熱部材に設けられた外部加熱部材側歯車と、前記定着側歯車と前記該外部加熱部材側歯車とに噛み合う複数の歯車と、を含んで構成され、前記外部加熱部材が前記接触位置と前記離間位置との間を移動しても、前記定着側歯車及び前記外部加熱部材側歯車と前記歯車列と、がそれぞれ噛み合うように構成された歯車機構と、前記歯車機構に設けられ、前記外部加熱部材が前記離間位置にあるときは前記外部加熱部材が回転するように前記定着側歯車から前記外部加熱部材側歯車に駆動力を伝達し、前記外部加熱部材が前記接触位置にあるときは前記外部加熱部材が前記定着部材に従動回転するように前記定着側歯車から前記外部加熱部材側歯車への駆動力の伝達を遮断する駆動力伝達遮断手段と、を備える定着装置。
【0007】
請求項2の発明は、前記歯車機構は、前記外部加熱部材が前記接触位置にあり前記定着部材の外周面に接触して従動回転するときは、回転数差が発生するように構成された二つの噛み合った歯車を有し、前記駆動力伝達遮断手段は、前記二つの歯車の一方に設けられ、前記回転数差によって空転するように設けられた一方の方向のみに回転力を伝達する回転力伝達手段である、請求項1に記載の定着装置。
【0008】
請求項3の発明は、記録媒体上に現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、前記現像剤像形成手段で形成された前記現像剤像を前記記録媒体に定着する請求項1又は請求項2に記載の定着装置と、を備える画像形成装置
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、定着部材を加熱する外部加熱部材が定着部材から離れているときに回転しない構成に比べて、定着部材を加熱する外部加熱部材に供給される油によって定着時に記録媒体に生じる油痕を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、電磁クラッチ等を用いて電気的に制御して、定着側歯車から外部加熱部材側歯車への駆動力の伝達を遮断する構成と比べ、機構が容易である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、定着部材を加熱する外部加熱部材が定着部材から離れているときに回転しない構成に比べて、現像剤像を定着した後の記録媒体に生じる油痕を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像形成部の構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る定着装置の構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る定着装置の外部加熱ロールのリトラクト機構を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る定着装置の歯車機構における各ギヤの噛み合い状態を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係る定着装置の歯車機構を装置内側方向から見た斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る定着装置の歯車機構を装置外側方向から見た斜視図である。
図8】(A)は本発明の実施形態に係る定着装置の外部加熱ロールが定着ロールに接触した状態を示す正面図であり、(B)は外部加熱ロールが定着ロールから離れた状態を示す正面図である。
図9図8(A)の各ギヤを模式的に示す模式図であり、(B)は図8(B)の各ギヤを模式的に示す模式図である。
図10】(A)は本発明の実施形態に係る定着装置を示す模式図であり、(B)は本発明の実施形態に係る定着装置における油痕の発生状態を説明する説明図である。
図11】(A)は本発明が適用されていない比較例の定着装置を示す模式図であり、(B)はこの比較例における油痕の発生状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。
【0014】
<全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成について説明する。
【0015】
図1には、実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(矢印V方向)の下側から上側へ向けて、記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録媒体の一例としての記録用紙Pに画像形成を行う画像形成部14と、画像形成部14の上に設けられ読取原稿Gを読み取る原稿読取部16と、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、を含んで構成されている。なお、以後の説明では、画像形成装置10の装置本体10Aの上下方向を矢印V方向、水平方向を矢印H方向と記載する。
【0016】
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙Pが収容される第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26が設けられている。第1収容部22、第2収容部24、及び第3収容部26には、収容された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路28に送り出す送り出しロール32が設けられており、搬送路28における送り出しロール32よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙Pを一旦停止させるとともに、決められたタイミングで後述する二次転写位置QB(図2参照)へ送り出す位置合せロール38が設けられている。
【0017】
搬送路28の上流側部分は、画像形成装置10の正面視において、矢印V方向に向けて用紙収容部12の左側から画像形成部14の左側下部まで直線状に設けられている。また、搬送路28の下流側部分は、画像形成部14の左側下部から画像形成部14の右側面に設けられた排紙部15まで設けられている。さらに、搬送路28には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路29が接続されている。
【0018】
両面搬送路29は、画像形成装置10の正面視において、搬送路28と両面搬送路29との切り替えを行う第1切替部材31と、画像形成部14の右側下部から用紙収容部12の右側まで矢印V方向(図示の下向きが−V、上向きが+V)に直線状に設けられた反転部33と、反転部33に搬送された記録用紙Pの後端が進入するとともに矢印H方向における図示の左側に搬送される搬送部37と、反転部33と搬送部37との切り替えを行う第2切替部材35と、を有している。そして、反転部33には、一対の搬送ロール42が間隔をあけて複数箇所に設けられており、搬送部37には、一対の搬送ロール44が間隔をあけて複数箇所に設けられている。
【0019】
第1切替部材31は、三角柱状の部材であり、駆動手段(図示省略)によって先端部が搬送路28又は両面搬送路29のいずれか一方に移動されることで、記録用紙Pの搬送方向を切り替えるようになっている。同様に、第2切替部材35は、正面視で三角柱状の部材であり、図示しない駆動手段によって先端部が反転部33又は搬送部37のいずれか一方に移動されることで、記録用紙Pの搬送方向を切り替えるようになっている。なお、搬送部37の下流側端部は、搬送路28の上流側部分にある搬送ロール36の手前側に案内部材(図示省略)により接続されている。また、画像形成部14の左側面には、折り畳み式の手差給紙部46が設けられており、手差給紙部46から送り込まれる記録用紙Pの搬送経路が、搬送路28の位置合せロール38の手前に接続されている。
【0020】
原稿読取部16は、読取原稿Gを1枚ずつ自動で搬送する原稿搬送装置52と、原稿搬送装置52の下側に配置され1枚の読取原稿Gが載せられるプラテンガラス54と、原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿G又はプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取る原稿読取装置56とが設けられている。
【0021】
原稿搬送装置52は、一対の搬送ロール53が複数配置された自動搬送路55を有しており、自動搬送路55の一部は記録用紙Pがプラテンガラス54上を通るように配置されている。また、原稿読取装置56は、プラテンガラス54の左端部に静止した状態で原稿搬送装置52によって搬送された読取原稿Gを読み取り、又は矢印H方向に移動しながらプラテンガラス54に載せられた読取原稿Gを読み取るようになっている。
【0022】
一方、画像形成部14は、記録用紙P上にトナー画像(現像剤像)を形成する現像剤像形成手段の一例としての画像形成ユニット50を有している。画像形成ユニット50は、後述する感光体62、帯電部材64、露光装置66、現像装置70、中間転写ベルト68、及びクリーニング装置73を含んで構成されている。
【0023】
画像形成部14における装置本体10Aの中央には、潜像保持体の一例としての円筒状の感光体62が設けられている。感光体62は、駆動手段(図示省略)によって矢印+R方向(図示の時計回り方向)に回転すると共に光照射によって形成される静電潜像を保持するようになっている。また、感光体62の上側で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、感光体62の表面を帯電するコロトロン方式の帯電部材64が設けられている。
【0024】
感光体62の回転方向における帯電部材64よりも下流側で且つ感光体62の外周面と対向する位置には、露光装置66が設けられている。露光装置66は、図示しない半導体レーザ、f−θレンズ、ポリゴンミラー、結像レンズ、及び複数のミラーを有しており、画像信号に基づき半導体レーザから出射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、帯電部材64により帯電された感光体62の外周面に照射(露光)して、静電潜像を形成するようになっている。なお、露光装置66は、レーザ光をポリゴンミラーで偏向走査する方式に限らず、LED(Light Emitting Diode)方式であってもよい。
【0025】
感光体62の回転方向で露光装置66の露光光が照射される部位よりも下流側には、感光体62の外周面に形成された静電潜像を決められた色のトナーで現像して可視化させる回転切り替え式の現像装置70が設けられている。
【0026】
図2に示すように、現像装置70は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナー色にそれぞれ対応する現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが、周方向に(図示の反時計回り方向にこの順番で)並んで配置されており、モータ(図示省略)によって中心角で60°ずつ回転することで、現像処理を行う現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fが切り替えられ、感光体62の外周面と対向するようになっている。
【0027】
なお、現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fは同様の構成となっているため、ここでは現像器72Yについて説明し、他の現像器72M、72C、72K、72E、72Fについては説明を省略する。また、Y、M、C、Kの4色の画像形成を行う場合は、現像器72E、72Fを使用しないため、現像器72Kから現像器72Yへの回転角度が180°となる。
【0028】
現像器72Yは、本体となるケース部材76を有しており、ケース部材76内には、トナーカートリッジ78Y(図1参照)からトナー供給路(図示省略)を経由して供給されるトナー及びキャリアから成る現像剤(図示省略)が充填されている。また、ケース部材76には、感光体62の外周面と対向して矩形状の開口部76Aが形成されており、開口部76Aには、外周面が感光体62の外周面と対向する現像ロール74が設けられている。さらに、ケース部材76内で開口部76Aに近い部位には、現像剤の層厚を規制するための板状の規制部材79が、開口部76Aの長手方向に沿って設けられている。
【0029】
現像ロール74は、回転可能に設けられた円筒状の現像スリーブ74Aと、現像スリーブ74Aの内側に固定された複数の磁極から成る磁性部材74Bとで構成されており、現像スリーブ74Aが回転することで現像剤(キャリア)の磁気ブラシが形成されると共に、規制部材79で層厚が規制されることで、現像スリーブ74Aの外周面に現像剤層を形成するようになっている。そして、現像スリーブ74Aの外周面の現像剤層は、現像スリーブ74Aの回転により感光体62に対向する位置に搬送され、感光体62の外周面に形成された潜像(静電潜像)に応じたトナーを付着させて現像を行う。
【0030】
また、ケース部材76内には、螺旋状に形成された搬送ロール77が2本回転可能に並列配置されており、この2本の搬送ロール77が回転することで、ケース部材76内に充填された現像剤が、現像ロール74の軸方向(現像器72Yの長手方向)に循環搬送されるようになっている。なお、各現像器72Y、72M、72C、72K、72E、72Fに設けられた6本の現像ロール74は、隣の現像ロール74との間隔が中心角60°となるように周方向に配置されており、現像器72の切り替えにより、次の現像ロール74が感光体62の外周面と対向するようになっている。
【0031】
図1に示すように、感光体62の回転方向で現像装置70よりも下流側であり且つ感光体62の下側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像が転写される被転写部材の一例としての中間転写ベルト68が設けられている。中間転写ベルト68は、無端状であり、制御部20により回転駆動される駆動ロール61、中間転写ベルト68に張力を付与するための張力付与ロール65、中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する複数の搬送ロール63、及び後述する二次転写位置QB(図2参照)において中間転写ベルト68の裏面に接触して従動回転する補助ロール69に巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト68は、駆動ロール61が回転することにより、矢印−R方向(図示の反時計回り方向)に周回移動するようになっている。
【0032】
また、中間転写ベルト68を挟んで感光体62の反対側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写させる一次転写手段の一例としての一次転写ロール67が設けられている。一次転写ロール67は、感光体62と中間転写ベルト68とが接触する位置(これを一次転写位置QA(図2参照)とする)から中間転写ベルト68の移動方向下流側に離れた位置で、中間転写ベルト68の裏面に接触している。そして、一次転写ロール67は、電源(図示省略)から通電されることにより、接地されている感光体62との電位差で感光体62のトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写するようになっている。
【0033】
さらに、中間転写ベルト68を挟んで補助ロール69の反対側には、中間転写ベルト68上に一次転写されたトナー画像を記録用紙Pに二次転写させる二次転写手段の一例としての二次転写ロール71が設けられており、二次転写ロール71と補助ロール69との間が記録用紙Pへトナー画像を転写する二次転写位置QB(図2参照)とされている。二次転写ロール71は、接地されると共に中間転写ベルト68の表面に接触しており、電源(図示省略)から通電された補助ロール69と二次転写ロール71との電位差で、中間転写ベルト68のトナー画像を記録用紙Pに二次転写するようになっている。
【0034】
また、中間転写ベルト68を挟んで駆動ロール61の反対側には、中間転写ベルト68の二次転写後の残留トナーを回収するクリーニングブレード59が設けられている。クリーニングブレード59は、開口部が形成された筐体(図示省略)に取り付けられており、クリーニングブレード59の先端部で掻き取られたトナーが、筐体内に回収されるようになっている。
【0035】
中間転写ベルト68の周囲で搬送ロール63と対向する位置には、中間転写ベルト68の表面に付されたマーク(図示省略)を検知することで中間転写ベルト68上の予め定めた基準位置を検出し、画像形成処理の開始タイミングの基準となる位置検出信号を出力する位置検出センサ83が設けられている。位置検出センサ83は、中間転写ベルト68に向けて光を照射すると共にマークの表面で反射された光を受光することで、中間転写ベルト68の移動位置を検出するようになっている。
【0036】
感光体62の回転方向で一次転写ロール67よりも下流側には、中間転写ベルト68に一次転写されずに感光体62の表面に残留した残留トナー等を清掃するクリーニング装置73が設けられている。クリーニング装置73は、感光体62表面に接触するクリーニングブレード及びブラシロールにより残留トナー等を回収する構成となっている。
【0037】
また、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の上流側(一次転写ロール67よりも下流側)には、感光体62の外周面に一次転写後に残留したトナーの除電を行うコロトロン81が設けられている。さらに、感光体62の回転方向でクリーニング装置73の下流側(帯電部材64よりも上流側)には、クリーニング後の感光体62の外周面に光を照射して除電を行う除電装置75が設けられている。
【0038】
そして、二次転写ロール71によるトナー画像の二次転写位置QBは、前述の搬送路28の途中に設定されており、搬送路28における記録用紙Pの搬送方向(図示の矢印A方向)で二次転写ロール71よりも下流側には、二次転写ロール71によってトナー画像が転写された記録用紙Pにトナー画像を定着させる定着装置100が設けられている。なお、定着装置100の詳細は後述する。
【0039】
搬送路28における記録用紙Pの搬送方向で定着装置100よりも下流側には、排紙部15又は反転部33へ向けて記録用紙Pを搬送する搬送ロール39が設けられている。また、原稿読取装置56の下側で現像装置70よりも上側には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、第1特別色(E)、第2特別色(F)の各トナーを収容するトナーカートリッジ78Y、78M、78C、78K、78E、78Fが矢印H方向に並んで交換可能に設けられている。第1特別色E及び第2特別色Fは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック以外の特別色(透明を含む)から選択され、または、選択されないようになっている。
【0040】
<定着装置>
次に、定着装置100について説明する。
【0041】
図3に示すように、定着装置100は、記録用紙Pが進入する開口部106Aと、記録用紙Pが排出される開口部106Bとが形成された筐体106を有している。筐体106内には、主要部として、加熱により定着を行う定着部材の一例としての定着ロール102と、定着ロール102へ向けて記録用紙Pを加圧する加圧ロール104と、定着ロール102を加熱する外部加熱部材及び接触部材の一例としての外部加熱ロール108と、外部加熱ロール108の外周面に接触すると共に外部加熱ロール108に油(潤滑剤)を供給する油供給手段の一例としてのウェブ112と、が設けられている。
【0042】
定着ロール102は、記録用紙Pの搬送経路上でトナー画像面側(上側)に配置されている。一例として、定着ロール102は、円筒状のアルミニウムからなる芯金102Bの外周にシリコンゴムからなる弾性部材102Aが被覆された構成となっており、弾性部材102Aの外周面には、フッ素系樹脂からなる離型層(図示省略)が形成されている。そして、芯金102Bの内側には、芯金102Bの内周面とは非接触状態で熱源となるハロゲンヒータ114が設けられている。ハロゲンヒータ114は、電源(図示省略)からの通電により発熱し、芯金102Bを加熱することで、定着ロール102全体を加熱するようになっている。
【0043】
定着ロール102の外周面と対向する位置には、定着ロール102の温度を検知する第1温度センサ120と、定着ロール102の外周面を均すリフレッシュロール132とが設けられている。第1温度センサ120は、非接触式の温度センサであり、定着ロール102からの熱放射を赤外フィルムで受け、このフィルムの温度上昇をサーミスタで検知することによって、定着ロール102の温度を検知するようになっている。また、リフレッシュロール132は、定着ロール102の外周面から離れて配置されており、定着枚数が予め設定された枚数になったときに定着ロール102の外周面に接触するように移動され、定着ロール102の外周面を均すようになっている。
【0044】
外部加熱ロール108は、一例として、円筒状のアルミニウムで構成されており、長手方向両端部には円筒状の軸部108Aが設けられている。また、外部加熱ロール108の内側には、内周面とは非接触状態で熱源となるハロゲンヒータ118が設けられている。ハロゲンヒータ118は、電源(図示省略)からの通電により発熱し、外部加熱ロール108全体を加熱するようになっている。
【0045】
また、外部加熱ロール108は、定着ロール102の外周面と対向する位置に設けられており、後述する移動手段の一例としてのリトラクト機構部140(図4参照)により、定着ロール102の外周面と接触した接触位置(図8(B)と図9(B)を参照)と、外周面から離れたて離間位置(図8(A)と図9(A)を参照))と、の間を移動するように構成されている。
【0046】
外部加熱ロール108の外周面と対向する位置には、外部加熱ロール108の温度を検知する接触式の第2温度センサ126が設けられている。なお、外部加熱ロール108は、一例として、定着ロール102の温度に対して50℃から70℃程度高い温度となるように加熱される。
【0047】
ウェブ112は、外部加熱ロール108の外周面を清掃するための繊維体であり、外部加熱ロール108との接触による摩擦力を低下させるための潤滑剤となる油が予め含浸されると共に、矢印+R方向に回転可能に設けられた軸部134Aの周囲に巻き取られている。そして、軸部134Aの下側には中間ロール134Bが回転可能に配置されており、中間ロール134Bの左側には、矢印+R方向に回転可能とされた軸部134Cが中間ロール134Bと間隔をあけて配置されている。
【0048】
ここで、ウェブ112は、軸部134Aから巻き出されつつ中間ロール134Bの外周面に巻き掛けられると共に、先端が軸部134Cに固定されることで、軸部134Cに巻き取られている。そして、ウェブ112は、軸部134Cがモータ(図示省略)で矢印+R方向に回転駆動されることで、矢印B方向に移動して外部加熱ロール108の外周面に接触すると共に軸部134Cに巻き取られるようになっている。
【0049】
なお、ウェブ112は、定着装置100の定着動作時に必要に応じて巻き取られるようになっており、外部加熱ロール108とは常に接触している。また、定着動作とは、定着ロール102が回転を開始してから記録用紙Pへのトナー画像の定着を終了して回転を停止するまでの動作であり、記録用紙Pが定着ロール102と加圧ロール104との接触部(ニップ部)に進入していない状態も含んでいる。
【0050】
一方、加圧ロール104は、記録用紙Pの搬送経路上で定着ロール102の下側に配置されている。一例として、加圧ロール104は、円筒状のアルミニウムからなる芯金104Bの外周にシリコンゴムからなる弾性部材104Aが被覆された構成となっており、弾性部材104Aの外周面には、フッ素系樹脂からなる離型層(図示省略)が形成されている。そして、芯金104Bの内側には、芯金104Bの内周面とは非接触状態で熱源となるハロゲンヒータ116が設けられている。ハロゲンヒータ116は、電源(図示省略)からの通電により発熱し、芯金104Bを加熱することで、加圧ロール104全体を加熱するようになっている。
【0051】
また、加圧ロール104の外周面と対向する位置には、加圧ロール104の温度を検知する第3温度センサ128が加圧ロール104と非接触状態で設けられている。第3温度センサ128は、第1温度センサ120と同様の構成となっている。ここで、第1温度センサ120、第2温度センサ126、及び第3温度センサ128は、前述の制御部20(図1参照)に接続されており、制御部20では、第1温度センサ120、第2温度センサ126、及び第3温度センサ128からの入力に基づいて、ハロゲンヒータ114、118、116へ出力を行うようになっている。
【0052】
さらに、加圧ロール104の両端部にはベアリング(図示省略)が設けられており、このベアリングは、V字状のブラケット124の中央部分に取り付けられている。そして、ブラケット124は、筐体106に取り付けられた軸部122を中心として、偏心カム(図示省略)の動作により矢印+R方向又は矢印−R方向に揺動可能に設けられている。これにより、加圧ロール104は、ブラケット124が矢印+R方向に移動することで定着ロール102と接触し、ブラケット124が矢印−R方向に移動することで定着ロール102から離れるようになっている。
【0053】
<リトラクト機構部>
次に、外部加熱ロール108のリトラクト機構部140について説明する。
【0054】
図4に示すように、リトラクト機構部140は、筐体106に取り付けられたブラケット142、144と、外部加熱ロール108を回転可能に支持するブラケット146と、ブラケット146に設けられた偏心カム148と、ブラケット146を付勢するバネ152とを含んで構成されている。
【0055】
なお、以後の説明では、外部加熱ロール108が定着ロール102に近づく方向を+X方向、外部加熱ロール108が定着ロール102から離れる方向を−X方向と記載する。+X方向、−X方向は、図示の右斜め方向となっている。
【0056】
ブラケット142、144は、外部加熱ロール108を中心にして定着ロール102とは反対側で互いに対向するように、外部加熱ロール108に近い側(+X方向)にブラケット142が設けられ、外部加熱ロール108から遠い側(−X方向)にブラケット144が設けられている。ブラケット142は、断面コ字状に形成されており、ブラケット144側に開口した状態で筐体106に取り付けられている。また、ブラケット144は、中央に凹部144Aが形成されており、この凹部144Aがブラケット142と対向するように筐体106に取り付けられている。
【0057】
ブラケット146には、外部加熱ロール108が回転可能に支持されている。なお、ブラケット146は、外部加熱ロール108の両端で一対設けられているが、ここでは一方のみを図示して説明する。また、ブラケット146は、ガイド部材(図示省略)によって移動方向が+X方向、−X方向のみに規制されている。
【0058】
ブラケット146には、ブラケット146から外部加熱ロール108の軸方向に突出した逆ハット形状のフランジ154が設けられている。フランジ154は、外部加熱ロール108の軸方向に見て中央が断面コ字状の凹部154Aとされており、凹部154Aの周縁部から外側へ向けて平坦部154Bが形成されている。そして、フランジ154は、凹部154Aの開口側がブラケット144の凹部144Aと対向し且つ平坦部154Bがブラケット142と対向するように、ブラケット142とブラケット144との間に配置されている。また、ブラケット146には、張出部146Aが形成されている。なお、この張出部146Aに後述する中間ギヤ166、172が設けられたシャフト164が回転可能に支持されている。
【0059】
偏心カム148は、回転軸148Aを有しており、この回転軸148Aがブラケット146の−X方向の端部に固定されたベアリング(図示省略)に挿通されることにより+R方向又は−R方向に回転可能となっている。また、偏心カム148は、モータ(図示省略)により+R方向又は−R方向に回転駆動されるようになっており、−R方向に回転したときに外周部がブラケット144の凹部144Aと接触し、+R方向に回転したときに外周部が凹部144Aから離れるようになっている。
【0060】
バネ152は、フランジ154の平坦部154Bとブラケット142とで挟まれるようにブラケット142側に一端が固定されている。これにより、バネ152は、ブラケット146が+X方向に移動するときに、ブラケット146を−X方向に付勢するようになっている。
【0061】
このように、リトラクト機構部140では、偏心カム148が−R方向に回転してブラケット144と接触することで、ブラケット146が+X方向に移動して、外部加熱ロール108が定着ロール102の外周面に接触する接触位置(図8(B)と図9(B)を参照)となる。また、偏心カム148が+R方向に回転してブラケット144から離れることで、バネ152の付勢力によりブラケット146が−X方向に移動して、外部加熱ロール108が定着ロール102の外周面から離れた離間位置(図8(A)と図9(A)を参照)となる。即ち、リトラクト機構部140が、定着ロール102への外部加熱ロール108の接触又は非接触を切り換えるようになっている。また、リトラクト機構140は、制御部20(図1参照)によって制御されており、制御部20は、定着ロール102による定着動作の開始後に外部加熱ロール108を離間位置(図8(A)と図9(A)を参照)から接触位置(図8(B)と図9(B)を参照)に移動させる。
【0062】
<歯車機構>
次に、定着ロール102及び外部加熱ロール108を回転させる駆動力を伝達する歯車機構200について、図4図7を用いて説明する。
【0063】
図4図7に示すように、定着ロール102の芯金102Bの一端部には、定着ロール側ギヤ158が一体回転するように設けられている。定着ロール側ギヤ158は、モータ等で構成された駆動装置250(図5参照)によって、回転駆動するようなっている。
【0064】
定着ロール側ギヤ158には、中間ギヤ162が噛み合っている。中間ギヤ162は、後述するアーム部材220に回転可能に支持されたシャフト210に設けられている。中間ギヤ162には、中間ギヤ166が噛み合っている。中間ギヤ166は、ブラケット146の張出部146A(図4参照)に回転可能に支持されたシャフト164に設けられている。更にこのシャフト164には、中間ギヤ172が設けられている。
【0065】
一方、外部加熱ロール108の軸部108A(図4参照)の一端(定着ロール側ギヤ158と同じ側)には、外部加熱ロール側ギヤ174が一体回転するように設けられている。そして、前述した中間ギヤ172が外部加熱ロール側ギヤ174と噛み合っている。
【0066】
なお、前述したように、外部加熱ロール108を支持するブラケット146の張出部146Aに、シャフト164は支持されている。よって、シャフト164に設けられている中間ギヤ166及び中間ギヤ172と、外部加熱ロール側ギヤ174とは、外部加熱ロール108の移動に伴って、外部加熱ロール108と一体となってX方向に移動する。
【0067】
定着ロール側ギヤ158に噛み合う中間ギヤ162のシャフト210は、筐体106に回転軸22を回転中心として回転するアーム部材220に支持されている。よって、中間ギヤ162は、矢印+J方向と矢印−J方向(図4参照)に揺動する。また、アーム部材220は、付勢手段の一例としてのばね226によって、−J方向に付勢されている。
【0068】
中間ギヤ162の外側にはトラッキングロール202が設けられている。また、中間ギヤ166の外側にはトラッキングロール204が設けられている。そして、トラッキングロール202とトラッキングロール204とが接触することで、中間ギヤ162と中間ギヤ166との軸間距離L2(図9参照)が維持されるようになっている。
【0069】
図9に示されている各矢印方向に、定着ロール102、外部加熱ロール108、及び各ギヤが回転する。また、中間ギヤ166にはワンウェイクラッチ168が内蔵されている。ワンウェイクラッチ168は、中間ギヤ166が図の矢印K回転方向に回転する場合には、中間ギヤ166とシャフト164(中間ギヤ172)との間で駆動力が伝達され、逆向き回転方向の場合は空転して駆動力が伝達されないように構成されている。
【0070】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0071】
図8(A)と図9(A)とに示すように、外部加熱ロール108が定着ロール102から離れている離間位置にあるときは、定着ロール102の駆動力が、定着ロール側ギヤ158、定着ロール側ギヤ158、中間ギヤ166、中間ギヤ172、外部加熱ロール側ギヤ174を介して外部加熱ロール108に伝達され、外部加熱ロール108が回転する。なお、このときは、ワンウェイクラッチ168は、中間ギヤ166とシャフト164との間で駆動力を伝達する。
【0072】
図8(B)と図9(B)とに示すように、外部加熱ロール108が定着ロール102に接触した接触位置にあるときは、外部加熱ロール108は定着ロール102に従動回転することによって回転する。
【0073】
この状態における中間ギヤ166の回転数KV1(図9(B)参照)と中間ギヤ162の回転数KV2(図9(B)参照)との関係は、「回転数KV1(rpm)>回転数KV2(rpm)」との関係になるように、各ギヤの歯数が設定されている(中間ギヤ166の方が中間ギヤ162よりも回転数(rpm)が速くなるように歯数が少なく設定されている)。なお、回転数(rpm)とは、単位時間当たりに回転する速さ(回数)とされ、回転速度ともいう。
【0074】
このように設定することで、シャフト164の回転数よりも中間ギヤ166の回転数の方が遅くなるので、相対的に矢印K方向と反対方向に回転する場合と同じ状態となり、中間ギヤ166に内蔵されているワンウェイクラッチ168は、シャフト164に駆動力を伝達せずに空転する。言い換えると、ワンウェイクラッチ166は、中間ギヤ166とシャフト164との間の駆動力の伝達を遮断する。よって、定着ロール102からの駆動力はシャフト164に伝達されない。したがって、外部加熱ロール108は定着ロール102に従動回転することができる。
【0075】
なお、中間ギヤ166に内蔵されているワンウェイクラッチ168は、シャフト164から中間ギヤ166に駆動力を伝達せずに空転するので、実際には中間ギヤ166の回転数は中間ギヤ162の回転数と同じ回転数で回転する。そして、前述したように、シャフト164の回転数よりも中間ギヤ166の回転数の方が遅くなるので、相対的に矢印Kと反対方向に回転する場合と同じ状態となり、空転する。
【0076】
また、外部加熱ロール108を支持するブラケット146の張出部146Aに、シャフト164が支持されている。よって、シャフト164に設けられている中間ギヤ166及び中間ギヤ172と、外部加熱ロール側ギヤ174と、外部加熱ロール108と、は一体となってX方向に移動する。よって、外部加熱ロール108がX方向に移動しても、外部加熱ロール側ギヤ174と中間ギヤ172との軸間距離L1(図9参照)は変化しない。
【0077】
また、外部加熱ロール108がX方向に移動すると、シャフト164の中間ギヤ166もX方向に移動する。一方、この中間ギヤ166に噛み合う中間ギヤ162は遥動するアーム部材220に支持されている。そして、前述した中間ギヤ166のトラッキングロール202と中間ギヤ162のトラッキングロール204とが接触することで中間ギヤ162と中間ギヤ166との軸間距離L2(図9参照)が維持されるようになっている。よって、中間ギヤ166が移動しても、アーム部材220が遥動し中間ギヤ162と中間ギヤ166との軸間距離L2が維持される。
【0078】
なお、アーム部材220が遥動し中間ギヤ162が移動すると、定着ロール側ギヤ158と中間ギヤ162との軸間距離L3が若干変わる。本実施形態では、図8(B)と図9(B)とに示す外部加熱ロール108が定着ロール102に接触した接触位置にあるときは、外部加熱ロール108は定着ロール102に従動回転することによって回転する。よって、この状態では、前述したように、歯車機構200がワンウェイクラッチ168が空転し駆動力が伝達されないので、定着ロール側ギヤ158と中間ギヤ162との噛み合いが設計仕様から若干ずれていても問題が生じない。よって、軸間距離L3は、図8(A)と図9(A)とに示す離間位置にあるときに定着ロール側ギヤ158と中間ギヤ162とが設計仕様となる噛み合いになるように設定されている。
【0079】
このように本実施形態では、外部加熱ロール108がX方向に移動しても、各ギヤは噛み合ったままであり、各ギヤの軸間距離L1,L2,L3が維持又は略維持されるように構成されている。
【0080】
なお、外部加熱ロール108がX方向に移動することに伴い、ギヤが離接する構成の場合は、軸間距離(噛み合い状態)を正確に出すことが困難である。
【0081】
これに対して本実施形態では、上述したように、外部加熱ロール108がX方向に移動しても、各ギヤは噛み合ったままであり、軸間距離(噛み合い状態)を正確に出すことが、ギヤが離接する構成と比較して、容易である。また、このため省スペース及び信頼性の高い設計が可能となる。
【0082】
ここで、本実施形態に対する比較例について説明する。
図11(A)には、比較例として、本実施形態のリトラクト機構部140(図8等を参照)を用いず、常に外部加熱ロール108が定着ロール102に接触している構成が示されている。この比較例では、定着動作が長期間行われないと、ウェブ112から染み出た油が外部加熱ロール108とウェブ112との間で蓄積され、油溜まりL1ができてしまう。そして、定着動作が開始され外部加熱ロール108が回転すると、外部加熱ロール108の外周面にある油溜まりL1は、定着ロール102との接触部で定着ロール102の外周面に移され、加圧ロール104(図3等を参照)との接触部で記録用紙Pに転写される。
【0083】
これにより、図11(B)に示すように、記録用紙P上には、定着ロール102の外周長に相当する間隔で油溜まりL1が油痕として残ってしまうことになる。
【0084】
これに対して本実施形態では、図10(A)に示すように、定着動作が開始される前、リトラクト機構部140(図4等を参照)により、外部加熱ロール108が定着ロール102から離れた離間位置(図8(A)と図9(A)を参照)となっている。そして、定着動作が開始され、定着ロール102が回転すると、定着ロール側ギヤ158から中間ギヤ162、166、172を介して外部加熱ロール側ギヤ174(図4等を参照)に駆動力が伝達され、外部加熱ロール108が回転する。これにより、ウェブ112と外部加熱ロール108との間にあった油溜まりは、外部加熱ロール108の外周面上で均され、油層L2となる。
【0085】
続いて、制御部20(図1参照)の指令により偏心カム148(図4参照)が回転してブラケット144(図4参照)に接触すると、外部加熱ロール108が定着ロール102に接触する接触位置(図8(B)と図9(B)を参照)となると、ワンウェイクラッチ168よって上述したように駆動力の伝達が遮断され、外部加熱ロール108は定着ロール102の回転に合わせて従動回転する。このとき、外部加熱ロール108の外周面にある油層L2は、定着ロール102との接触部で定着ロール102の外周面に移され、定着ロール102と加圧ロール104(図3参照)との接触部で記録用紙Pに転写される。
【0086】
これにより、図10(B)に示すように、記録用紙P上には、均等な量となった油層L2が転写されるため、記録用紙P上での油痕が低減され、油痕が視認されにくくなる。また、定着動作の開始後、定着ロール102が回転を開始することで外部加熱ロール108が回転し、さらに、定着ロール102に外部加熱ロール108が接触するので、定着ロール102による定着動作の開始前に定着ロール102へ外部加熱ロール108を接触させる構成に比べて、定着ロール102の無駄な回転が低減される。加えて、外部加熱ロール108が定着ロール102に接触するときに、外部加熱ロール108への駆動力の伝達が遮断されるので、外部加熱ロール108と定着ロール102とが接触した後も外部加熱ロール108に駆動力が伝達される構成に比べて、定着ロール102に作用する負荷が低減される。
【0087】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、定着ロール102から外部加熱ロール108への駆動力の伝達及び遮断は、ワンウェイクラッチ168によって行ったがこれに限定されない。例えば、電磁クラッチを用いて行ってもよい。或いは、ピン等が移動し駆動力を伝達及び遮断するようにしてもよい。なお、電磁クラッチやピン等の制御、つまり駆動力の伝達及び遮断は、制御部20によって制御される。
【0089】
また、例えば、上記実施形態では、外部加熱ロール108がX方向に移動しても各ギヤの軸間距離が維持又は略維持されるように構成されている。しかし、外部加熱ロール108が従動回転する場合は、ギヤによる駆動力の伝達は必要ないので、この場合のギヤの軸間距離は設計仕様から若干外れていても問題ない。よって、外部加熱ロール108が離間位置にある場合(ギヤによる駆動力の伝達は必要な場合)に各ギヤの軸間距離が設計仕様なるように(設計仕様の範囲に収まるように)設定されていればよい。
【0090】
また、例えば、定着ロール102は、電磁誘導方式により加熱される定着ベルトであってもよい。さらに、他の実施例として、接触部材と油供給手段とを一体としたオイル塗布ロールを定着ロール102に接触させる構成において、当該オイル塗布ロールを定着ロール102に接触させる前に回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 画像形成装置
50 画像形成ユニット(現像剤像形成手段の一例)
100 定着装置
102 定着ロール(定着部材の一例)
108 外部加熱ロール(外部加熱部材の一例)
112 ウェブ(油供給手段の一例)
140 リトラクタ機構(移動手段の一例)
158 定着ロール側ギヤ(定着側歯車の一例)
162 中間ギヤ(複数の歯車の一例)
166 中間ギア(複数の歯車の一例)
168 ワンウェイクラッチ(駆動力伝達遮断手段の一例及び回転力伝達手段の一例)
172 中間ギヤ(複数の歯車の一例)
174 外部加熱ロール側ギヤ(外部加熱部材側歯車の一例)
200 歯車機構
250 駆動装置(駆動手段の一例)
P 記録用紙(記録媒体の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11