特許第5754377号(P5754377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754377
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ルテニウム膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20150709BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 21/8242 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20150709BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20150709BHJP
   C07C 49/92 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C23C16/18
   H01L21/28 301R
   H01L21/285 C
   H01L21/285 301
   H01L21/288 Z
   H01L27/10 611
   H01L27/10 625
   C07F15/00 A
   C07C49/92
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-538370(P2011-538370)
(86)(22)【出願日】2010年10月20日
(86)【国際出願番号】JP2010068490
(87)【国際公開番号】WO2011052453
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-248383(P2009-248383)
(32)【優先日】2009年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-99416(P2010-99416)
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鄭 康巨
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 達也
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−124464(JP,A)
【文献】 特開2009−120916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/18
C07C 49/92
C07F 15/00
H01L 21/28
H01L 21/285
H01L 21/288
H01L 21/8242
H01L 27/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含有するルテニウム膜形成用材料を、基体上に塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程を含む、ルテニウム膜形成方法
【化1】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、または炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基であり、RとRは互いに異なる基であり、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。Lは、少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。)
【請求項2】
上記一般式(1)中、Rが、炭素数1〜4の炭化水素基であり、Rが、炭素数1〜4のアルコキシ基である、請求項1に記載のルテニウム膜形成方法
【請求項3】
上記ルテニウム膜形成用材料の塗布が、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、及び、液滴吐出法の中から選択される方法によって行われる請求項1又は2に記載のルテニウム膜形成方法。
【請求項4】
上記熱処理及び/又は光処理が、100〜800℃の温度での熱処理を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のルテニウム膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム膜形成用材料及びルテニウム膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体デバイスは、その高集積化と微細化に伴い、デバイスを構成する各金属膜及び金属酸化膜の材料変更が必要となっている。
なかでも、半導体デバイス内の多層配線用途での導電性金属膜の改良が要求されており、新たに導電性の高い銅配線への変換が進んでいる。この銅配線間の干渉を抑制する目的で多層配線の層間絶縁膜材料には低誘電率材料(Low−k材料)が用いられている。しかし、この低誘電率材料中に含まれている酸素原子が銅配線に容易に取り込まれ、その導電性を低下させるといった問題が生じている。その為、低誘電率材料からの酸素の移動を防ぐ目的で、低誘電率材料と銅配線の間にバリア膜を形成する技術が検討されている。このバリア膜の用途に用いられる、誘電体層からの酸素を取り込みにくい材料およびドライエッチングにより容易に加工できる材料として、金属ルテニウム膜が注目されている。さらには上記銅配線をメッキ法にて埋め込むダマシン成膜法において、上記バリア膜とメッキ成長膜の双方の役割を同時に満たす目的から、金属ルテニウムが注目されている。
また、半導体デバイスのキャパシタにおいても、アルミナ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、チタン酸バリウム・ストロンチウム(BST)のような高誘電率材料の電極材料として、金属ルテニウム膜はその高い耐酸化性と高い導電性から注目されている。
【0003】
上記の金属ルテニウム膜の形成には、従来、スパッタリング法が多く用いられてきたが、近年、構造の微細化や、薄膜化や、量産性の向上への対応として、化学気相成長法が検討されている。
しかし、一般に化学気相成長法で形成した金属膜は、微結晶の集合状態が疎であるなど、表面モルフォロジーが悪く、このようなモルフォロジーの問題を解決するための手段として、トリス(ジピバロイルメタナート)ルテニウムやルテノセン、ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム、(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニル等を化学気相成長材料に用いることが検討されている(特許文献1〜4参照。)。
【0004】
さらに、これらの化学気相成長材料を製造工程で用いる場合、成膜工程中での金属ルテニウム膜隣接材料の劣化防止と、その製造条件の安定の目的から、材料の良好な保存安定性が要求される。しかし、既存のルテノセンやビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム等は、成膜工程での酸素混合の影響で短時間に隣接材料の酸化及びそれに伴う性能劣化が生じ、その結果、成膜したルテニウムの導電性が低下してしまうという問題がある。一方、(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニルは、成膜工程で不活性雰囲気下での成膜工程が可能であるが、ルテニウム材料自身の保存安定性が劣るという問題がある。
また、ビス(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムを化学気相成長材料に用いた検討が行われている(特許文献5)。しかし、該化合物は、常温で固体であり、蒸気圧が低いために、化学気相成長装置の気化器の設計負荷を低減する観点から、低融点化および高蒸気圧化が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283438号公報
【特許文献2】特開平11−35589号公報
【特許文献3】特開2002−114795号公報
【特許文献4】特開2002−212112号公報
【特許文献5】特開2006−241557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は低融点化及び高蒸気圧化されており、基体上への供給が容易であるルテニウム膜形成用材料、及び該材料を用いたルテニウム膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、下記式(1)で表される化合物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 下記式(1)で表わされる化合物を含有するルテニウム膜形成用材料。
【化1】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、または炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基であり、RとRは互いに異なる基であり、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。Lは、少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。)
[2] 上記一般式(1)中、Rが、炭素数1〜4の炭化水素基であり、Rが、炭素数1〜4のアルコキシ基である、前記[1]に記載のルテニウム膜形成用材料。
[3] 化学気相成長法用である、前記[1]又は[2]に記載のルテニウム膜形成用材料。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載のルテニウム膜形成用材料を用いる、ルテニウム膜形成方法。
[5] 前記[3]に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に供給するルテニウム膜形成用材料供給工程と、該基体上に供給されたルテニウム膜形成用材料を加熱分解して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程とを含む、ルテニウム膜形成方法。
[6] 上記膜形成工程における加熱分解の温度が100℃〜800℃である、前記[5]に記載のルテニウム膜形成方法。
[7] 上記膜形成工程における加熱分解を不活性気体または還元性気体中で行う、前記[5]又は[6]に記載のルテニウム膜形成方法。
[8] 前記[1]または[2]に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程を含む、ルテニウム膜形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のルテニウム膜形成用材料は、融点が低く、蒸気圧が高いので、基体上への供給が容易であり、簡易な方法でルテニウム膜を形成することができる。
また、本発明のルテニウム膜形成用材料によれば、残留不純物量が少ない高純度の良質なルテニウム膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、下記式(1)で表される化合物を含有する。
【化2】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、または炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基であり、ハロゲン原子、炭素数1〜4の炭化水素基、または炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基であることが好ましく、熱安定性の観点から炭素数1〜4の炭化水素基であることがより好ましい。
【0010】
においてハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
また、Rにおいて炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基を挙げることができ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
また、Rにおいて炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基としては、フッ素化炭化水素基、塩素化炭化水素基、臭素化炭化水素基であることが好ましく、フッ素化炭化水素基であることがより好ましい。
具体的にはクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基を挙げることができ、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−t−ブチル基であることが好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基であることがより好ましい。
【0011】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基であり、熱安定性の観点から炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましい。
ここで、Rにおいて炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基を挙げることができ、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−t−ブチル基であることが好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基であることがより好ましい。
【0012】
また、Rにおいて炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基であることが好ましく、メトキシ基、エトキシ基であることがより好ましい。
【0013】
また、Rにおいて炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基としては、フッ素化アルコキシ基、塩素化アルコキシ基、臭素化アルコキシ基が挙げられ、フッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
具体的には、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ペルフルオロ−n−プロポキシ基、ペルフルオロイソプロポキシ基、ペルフルオロ−n−ブトキシ基、ペルフルオロイソブトキシ基、ペルフルオロ−t−ブトキシ基を挙げることができ、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ペルフルオロ−n−プロポキシ基、ペルフルオロイソプロポキシ基、ペルフルオロ−t−ブトキシ基であることが好ましく、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基であることがより好ましい。
【0014】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0015】
本発明において、一般式(1)中のRとRは、互いに異なる基である。
一般式(1)中のRとRを異なるものとすることによって、一般式(1)で表される化合物の融点を低くし、蒸気圧を高くすることができ、その結果、基体上へのルテニウム膜形成用材料の供給が容易となり、簡易な方法でルテニウム膜を形成させることができる。なお、一般式(1)で表される化合物は、常温(25℃)、常圧下(1atm)において液体であることが好ましい。
また、RとRを、炭化水素基とアルコキシ基の組み合わせにすることで、熱安定性に優れ、特には高温下における保存安定性に優れる化合物を得ることができる。
【0016】
また、一般式(1)中、Lは、少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。
具体的には、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,7−ノナジエン、1,6−ノナジエン、1,5−ノナジエン、1,4−ノナジエン、1,3−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,8−デカジエン、1,7−デカジエン、1,6−デカジエン、1,5−デカジエン、1,4−デカジエン、1,3−デカジエン等の鎖状ジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の環状ジエンを挙げることができる。
【0017】
上記式(1)で表される化合物の合成法は、例えば、三塩化ルテニウムと上記一般式(1)中のLで表わされる少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物とを反応させて下記式(2)で表される化合物を得る工程(a)と、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物を反応させる工程(b)を含む方法が挙げられる。
【化3】
【化4】
【0018】
上記工程(a)において、三塩化ルテニウムと上記一般式(1)中のLで表される少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物との反応モル比率(上記一般式(1)中のLで表される少なくとも二つの二重結合を有する、炭素数4〜10の不飽和炭素水素化合物/三塩化ルテニウム)は、1〜50であることが好ましく、2〜20であることがより好ましい。
反応を行う際の温度は、溶媒種によっても異なるが、通常40〜180℃、好ましくは60〜140℃、更に好ましくは80〜100℃であり、反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは2〜10時間である。
【0019】
上記工程(b)において、上記一般式(2)で表される化合物と、上記一般式(3)で表される化合物との反応モル比率(上記一般式(3)で表される化合物/上記一般式(2)で表される化合物)は、2〜10であることが好ましく、2.2〜4であることがより好ましい。
反応を行う際の温度は、溶媒種によっても異なるが、通常40〜180℃、好ましくは60〜140℃、更に好ましくは80〜100℃であり、反応時間は、通常0.5〜48時間、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは2〜10時間である。
【0020】
上記工程(a)及び工程(b)において、反応に用いる溶媒としては、反応性および溶解性の観点から、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素類が好ましい。具体的には、アルコール類として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、t−ブチルメチルケトン等;エーテル類として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル等;ニトリル類として、アセトニトリル、プロピオニトリル等;ハロゲン化炭化水素類として、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、塩化フェニル、臭化フェニル等が挙げられる。
上記溶媒の中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールがより好ましい。なお、反応に用いる溶媒としては、上述の溶媒を2種以上組み合わせて用いることも可能である。
反応は、良く乾燥した不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスの具体例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0021】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例が挙げられる。
【0022】
が水素原子、Rが炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基である化合物の例としては、ビス(4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1,3−ヘキサンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−1,3−ヘプタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,4−トリフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0023】
が水素原子、Rが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物の例としては、ビス(メチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0024】
が水素原子、Rが炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基である化合物の例としては、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0025】
がハロゲン原子、Rが炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基である化合物の例としては、ビス(1,4,4,4−テトラフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,4−テトラフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,4−テトラフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,4−テトラフルオロ−1,3−ブタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,4,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1,3−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0026】
がハロゲン原子、Rが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物の例としては、ビス(メチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0027】
がハロゲン原子、Rが炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基である化合物の例としては、ビス(トリフルオロメチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0028】
が炭素数1〜4の炭化水素基、Rが炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基である化合物の例としては、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,5−ヘプタンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,5−ヘプタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,5−ヘプタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7−デカフルオロ−3,5−ペンタンジオナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(5,5,6,6,6−ペンタフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,5−ヘプタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7−デカフルオロ−3,5−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0029】
が炭素数1〜4の炭化水素基、Rが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物の例としては、ビス(メチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0030】
が炭素数1〜4の炭化水素基、Rが炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基である化合物の例としては、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソプロパナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0031】
が炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、Rが炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基である化合物の例としては、ビス(1,1,1,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−2,4−ヘキサンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(1,1,1,2,2,6,6,7,7,7−デカフルオロ−3,5−ペンタンジオナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0032】
が炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、Rが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物の例としては、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(エチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(イソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0033】
が炭素数1〜4のハロゲン化炭化水素基、Rが炭素数1〜4のハロゲン化アルコキシ基である化合物の例としては、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−t−ブチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(トリフルオロメチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペンタフルオロエチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−プロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロイソプロピル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ビス(ペルフルオロ−n−ブチル−3−オキソ−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)が挙げられる。
【0034】
これらの化合物は単独でまたは2種以上を混合してルテニウム膜形成用材料として使用することができる。1種類の化合物を単独でルテニウム膜形成用材料として使用することが好ましい。
【0035】
また、本発明のルテニウム膜形成用材料は、溶媒に溶解させて用いることもできる。使用される溶媒は、上記式(1)で表される化合物を溶解するものであれば特に限定されないが、かかる溶媒としては、例えば炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒等を挙げることができる。
上記炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン等を挙げることができる。
上記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えばジメチルジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ブロモベンゼン、フルオロベンゼン等を挙げることができる。
上記エーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、ブチルグリシジルエーテル、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等を挙げることができる。
上記アルコール溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘプタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、3−クロロ−1−プロパノール等を挙げることができる。
上記エステル溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、クロロ酢酸エチル、アセト酢酸エチル、クロロ炭酸メチルエステル、クロロ炭酸エチルエステル等を挙げることができる。
上記ケトン溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジエチルケトン、メチルヘキシルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
これらの溶媒は単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
これらの溶媒のうち、溶解性と得られる組成物溶液の安定性の観点から炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒およびそれらの組み合わせによる混合溶媒を用いることが好ましい。その際、炭化水素溶媒としては、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレンを使用することが好ましい。エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール又は1,4−ジメトキシベンゼンを使用することが好ましい。エステル溶媒としては酢酸エチルを使用する事が好ましい。またケトン溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンを使用することが好ましい。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、溶媒に溶解させて用いる場合、溶媒を除いた成分の合計質量が組成物の総質量に占める割合(以下、「固形分濃度」という。)は、好ましくは0.1〜70質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、上記式(1)で表わされる化合物以外に、その他のルテニウム化合物を含むことができる。その他のルテニウム化合物としては、ルテニウムドデカカルボニル、(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,3−ブタジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,3−シクロヘキサジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,4−シクロヘキサジエン)トリカルボニルルテニウム、及び(1,5−シクロオクタジエン)トリカルボニルルテニウムなどが挙げられる。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、上記式(1)で表される化合物が、溶媒を除いた成分の合計に対して、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50質量%〜100質量%、さらに好ましくは70質量%〜100質量%、さらに好ましくは80質量%〜100質量%、特に好ましくは90質量%〜100質量%である。
【0036】
本発明のルテニウム膜形成方法は、上記のルテニウム膜形成用材料を使用するものである。
本発明のルテニウム膜形成用方法は、上記のルテニウム膜形成用材料を使用する他は、それ自体公知の方法を使用できるが、例えば次のようにして実施することができる。
【0037】
本発明のルテニウム膜形成方法の一例は、(1)本発明のルテニウム膜形成用材料を減圧及び加熱下に気化させて、その気化物(ミスト)を基体(例えば、基板)上に供給する工程と、(2)基体上に供給されたルテニウム膜形成用材料を加熱して熱分解させて、基体上にルテニウム膜を形成させる工程、とを含む。なお、上記工程(1)において、本発明のルテニウム膜形成用材料の分解を伴ったとしても、本発明の効果を弱めるものではない。
ここで使用できる基体の材料としては、例えば、ガラス、シリコン半導体、石英、金属、金属酸化物、合成樹脂等適宜の材料を使用できるが、ルテニウム化合物を熱分解する工程温度に耐えられる材料であることが好ましい。
【0038】
上記基体は、具体的にはTa、Ti、Zr、Hf、Pt、Ir、Cu、Au、Al等の金属膜、TaN、TiN、ZrN、AlN等の金属窒化膜、あるいは絶縁膜で構成される。
上記絶縁膜としては、例えば熱酸化膜、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱CVD法により得られる酸化シリコン膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、FSGと呼ばれる絶縁膜、誘電率の低い絶縁膜等が挙げられる。
上記熱酸化膜は、高温にしたシリコンを酸化性雰囲気に晒し、シリコンと酸素あるいはシリコンと水分を化学反応させることにより形成されたものである。
上記PETEOS膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料とし、促進条件としてプラズマを利用して化学気相成長で形成されたものである。
上記HDP膜は、トラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料とし、促進条件として高密度プラズマを利用して化学気相成長で形成されたものである。
上記熱CVD法により得られる酸化シリコン膜は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により形成されたものである。
上記ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により得ることができる。
また、上記FSGと呼ばれる絶縁膜は、促進条件として高密度プラズマを利用して化学気相成長で成膜することができる。
上記誘電率の低い絶縁膜を形成する材料としては、例えば有機SOG、水素含有SOG、有機高分子からなる低誘電率材料、SiOF系低誘電率材料、SiOC系低誘電率材料等を挙げることができる。ここで、「SOG」とは”Spin On Glass”の略であり、基体上に前駆体を塗布し、次いで熱処理等により成膜を行う絶縁膜材料の意味である。
上記有機SOGとしては、例えばメチル基等の有機基を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、基体上に例えばテトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより上記絶縁膜を得ることができる。
上記水素含有SOGとしては、ケイ素−水素結合を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、基体上に例えばトリエトキシシラン等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより上記絶縁膜を得ることができる。
上記有機高分子からなる低誘電率材料としては、例えばポリアリーレン、ポリイミド、ポリベンゾシクロブテン、ポリフッ化エチレン等を主成分とする低誘電率材料を挙げることができる。
上記SiOF系低誘電率材料は、フッ素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、例えば化学気相蒸着法により得た酸化ケイ素にフッ素を添加(ドープ)することにより得ることができる。
上記SiOC系低誘電率材料は、炭素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、例えば四塩化ケイ素と一酸化炭素との混合物を原料とする化学気相蒸着法により得ることができる。
上記絶縁膜のうち、有機SOG、水素含有SOG及び有機高分子からなる低誘電率材料を用いて形成された絶縁膜は、膜中に微細な空孔(ポア)を有してもよい。
【0039】
ルテニウム膜が形成される基体はトレンチを有していてもよく、トレンチは、上記のような材料からなる基体上に公知の方法、例えば、フォトリソグラフィー等によって形成される。
上記トレンチは、どのような形状、大きさのものであってもよいが、トレンチの開口幅すなわち表面開口部の最小距離が300nm以下であり、かつトレンチのアスペクト比すなわちトレンチの深さをトレンチの表面開口部の最小距離で除した値が3以上である場合に、本発明の有利な効果が最大限に発揮される。上記トレンチの開口幅は、好ましくは10〜250nmであり、より好ましくは30〜200nmである。上記トレンチのアスペクト比は、好ましくは3〜40であり、より好ましくは5〜25である。
【0040】
上記工程(1)において、ルテニウム化合物を気化させる温度は、好ましくは30〜350℃であり、より好ましくは50〜300℃である。
上記工程(2)において、ルテニウム膜形成用材料を加熱分解させる温度は、好ましくは100℃〜800℃であり、より好ましくは100℃〜600℃であり、さらに好ましくは180〜450℃であり、さらに好ましくは200〜420℃であり、特に好ましくは250〜410℃である。
【0041】
本発明のルテニウム膜形成方法は、不活性気体の存在下もしくは不存在下、又は、還元性気体の存在下もしくは不存在下のいずれの条件下でも実施することができる。また、不活性気体および還元性気体の両者が存在する条件で実施してもよい。ここで不活性気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。また、還元性気体としては、例えば水素ガス、アンモニアガス等を挙げることができる。また本発明のルテニウム膜形成方法は、酸化性気体の共存下で実施することも可能である。ここで、酸化性気体としては、例えば酸素、一酸化炭素、亜酸化窒素等を挙げることができる。
特に、成膜したルテニウム膜中の不純物の量を低減させる目的から、これら還元性気体を共存させることが好ましい。還元性気体を共存させる場合、雰囲気中の還元性気体の割合は、1〜100モル%であることが好ましく、3〜100モル%であることがより好ましい。
雰囲気中の酸化性気体の割合は、10モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の化学的気相成長方法は、加圧下、常圧下および減圧下のいずれの条件でも実施することができる。なかでも、常圧下又は減圧下で実施することが好ましく、15,000Pa以下の圧力下で実施することがさらに好ましい。
【0043】
また、本発明のルテニウム膜形成方法の別の例としては、基体上に上記ルテニウム膜形成用材料を塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、基体上に上記式(1)で表わされる化合物をルテニウム膜に変換することにより、ルテニウム膜を形成するものである。
【0044】
上記のような基体上に、上述のルテニウム膜形成用材料を塗布するに際しては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法を用いることができる。これらの塗布工程では、基体上の形状、大きさ等により、基体の隅々にまでルテニウム膜形成用材料が行き亘るような塗布条件が採用される。例えば塗布法としてスピンコート法を採用する場合において、スピナーの回転数を、300〜2,500rpm、更に500〜2,000rpmとすることができる。
上記塗布工程の後、塗布したルテニウム膜形成用材料中に含有される溶媒等の低沸点成分を除去するために、加熱処理を行ってもよい。加熱する温度及び時間は、使用する溶媒の種類、沸点(蒸気圧)により異なるが、例えば100〜350℃において、5〜90分間とすることができる。このとき、系全体を減圧にすることで、溶媒の除去をより低温で行うこともできる。好ましくは100〜250℃において、10〜60分間である。
【0045】
次いで、上記の如くして形成された塗膜を、熱処理及び/又は光処理することによって、基体上にルテニウム膜が形成される。
上記熱処理の温度は、好ましくは100〜800℃であり、より好ましくは150〜600℃であり、更に好ましくは300〜500℃である。熱処理時間は、好ましくは30秒〜120分であり、より好ましくは1〜90分、更に好ましくは10〜60分である。
上記光処理(例えば、光照射)に用いる光源としては、例えば水銀ランプ、重水素ランプ、希ガスの放電光、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、希ガスハロゲンエキシマレーザー等を挙げることができる。上記水銀ランプとしては、例えば低圧水銀ランプ又は高圧水銀ランプを挙げることができる。上記希ガスの放電光に用いる希ガスとしては、例えばアルゴン、クリプトン、キセノン等を挙げることができる。上記希ガスハロゲンエキシマレーザーに使用する希ガスハロゲンとしては、例えばXeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等を挙げることができる。
これらの光源の出力としては、好ましくは10〜5,000Wであり、より好ましくは100〜1,000Wである。これらの光源の波長は特に限定されないが、好ましくは170nm〜600nmである。また、形成されるルテニウム膜の膜質の観点から、レーザー光の使用が特に好ましい。また、より良好なルテニウム膜を形成する目的で、酸化性ガス雰囲気下でプラズマ酸化させることもできる。このときのプラズマ酸化の酸化条件としては、例えばRF電力を20〜100Wとし、導入ガスとして酸素ガスを90〜100%とし残りをアルゴンガスとし、導入ガスの導入圧を0.05〜0.2Paとし、プラズマ酸化時間を10秒から240秒とすることができる。
【0046】
この塗布工程及び熱処理及び/又は光処理工程中の雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスからなることが好ましい。さらに必要に応じて水素、アンモニアなどの還元性ガスを混入してもよい。
【0047】
上記熱処理及び光処理は、どちらか一方のみを行ってもよく、熱処理と光処理の双方を行ってもよい。熱処理と光処理の双方を行う場合には、その順番の前後は問わず、熱処理と光処理を同時に行ってもよい。これらのうち、熱処理のみを行うか、熱処理と光処理の双方を行うことが好ましい。また、より良好なルテニウム膜を形成する目的で、上記熱処理及び/又は光処理工程とは別にプラズマ酸化を実施してもよい。
【0048】
本発明のルテニウム膜形成材料は、長期間保存安定性および熱安定性に優れる。化学気相成長装置の原料容器に本材料を不活性ガス雰囲気下で封入し、100℃〜150℃にて加熱状態で保持しても、15日間程度材料の劣化は生じない。これは化学気相成長装置の長期連続運転の安定化に非常に有利である。
上記の如くして得られたルテニウム膜は、純度および電気伝導性が高く、例えば、配線電極のバリア膜、メッキ成長膜、キャパシタ電極等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
[合成例1] ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の合成
窒素置換した3つ口フラスコに三塩化ルテニウム三水和物65.36g、エタノール500mL、1,5−シクロオクタジエン250mLを入れ、85℃で5時間加熱還流した。還流終了後、溶液を室温まで冷却した後に濾過を行った。得られた固体をジエチルエーテル500mLで洗浄、真空乾燥し、(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド70.02gを茶色固体として得た。この(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド2.81gと炭酸ナトリウム6.38g、3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル2.9mL、エタノール10mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、85℃で2時間加熱還流した。還流終了後、溶液を室温まで冷却した後にアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトン)を行い、得られた溶液を減圧下で濃縮及び乾燥を行い、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)3.61gを黒赤褐色液体として得た。収率は66質量%であった。
【0051】
[合成例2] ビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の合成
3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル2.9mLの代わりに、3−フルオロ−3−オキソプロピオン酸エチル2.8mLを用いる以外は合成例1と同様にして、ビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)3.42gを黒黄褐色液体として得た。収率は72質量%であった。
【0052】
[合成例3] ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の合成
3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル2.9mLの代わりに、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン2.8mLを用いる以外は合成例1と同様にして、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)3.30gを粘性の高い黒褐色液体として得た。収率は64質量%であった。
【0053】
[合成例4] ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の合成
3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル2.9mLの代わりに、3−オキソブタン酸エチル2.8mLを用いる以外は合成例1と同様にして、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)3.87gを黒褐色液体として得た。収率は83質量%であった。
【0054】
[合成例5] ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)の合成
窒素置換した3つ口フラスコに三塩化ルテニウム三水和物65.36g、エタノール500mL、1,6−ヘプタジエン270mLを入れ、85℃で5時間加熱還流した。還流終了後、溶液を室温まで冷却した後に濾過を行った。得られた固体をジエチルエーテル500mLで洗浄、真空乾燥し、(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド63.04gを茶色固体として得た。この(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド2.52gと炭酸ナトリウム6.38g、3−オキソブタン酸エチル2.8mL、エタノール10mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、85℃で2時間加熱還流した。還流終了後、溶液を室温まで冷却した後にアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒アセトン)を行い、得られた溶液を減圧下で濃縮及び乾燥を行い、ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)2.42gを黒赤褐色液体として得た。収率は55質量%であった。
【0055】
[合成例6] ビス(2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の合成
窒素置換した3つ口フラスコに三塩化ルテニウム三水和物65.36g、エタノール500mL、1,5−シクロオクタジエン250mLを入れ、85℃で5時間加熱還流した。還流終了後、溶液を室温まで冷却した後に濾過を行った。得られた固体をジエチルエーテル500mLで洗浄、真空乾燥し、(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド70.02gを茶色固体として得た。この(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)ジクロライド31.56gと炭酸ナトリウム34.97g、2,4−ペンタンジオン28mL、N,N−ジメチルホルムアミド100mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、140℃で1時間攪拌した。反応終了後、溶液を室温まで冷却した後にアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテル)を行い、得られた溶液を濃縮し、水120mLを加え3時間静置した。析出した結晶を濾取し、水で洗浄した後に真空乾燥を行うことでビス(2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)46.53gを橙黄色固体として得た。収率は94質量%であった。
【0056】
以下の実施例において、比抵抗は、ナプソン社製の探針抵抗率測定器(形式:RT−80/RG−80)により測定した。膜厚及び膜密度は、フィリップス社製の斜入射X線分析装置(形式:X’Pert MRD)により測定した。ESCAスペクトルは、日本電子社製の測定器(形式:JPS80)にて測定した。また、密着性の評価は、JIS K−5400に準拠して碁盤目テープ法により評価し、基板とルテニウム膜との剥離が全く見られなかった場合には「○」、基板とルテニウム膜との剥離が見られた場合には「×」とした。
【0057】
[実施例1]
(1−1)ルテニウム膜の形成
合成例1にて得られたビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流方向側の近傍に熱酸化膜付きシリコンウエハを置き、室温下で反応容器内に窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を300mL/分の流量にて20分間流した。その後反応容器中に窒素ガス(水素含量3容量%)を100mL/分の流量で流し、さらに系内を13Paに減圧した後に、反応容器を80℃で5分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を200mL/分の流量で流し、反応容器の温度を400℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は0.05μmであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、48μΩcmであった。この膜の膜密度は11.7g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。結果を表1に示す。
【0058】
(1−2)ルテニウム膜の形成
窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)の代わりに水素ガス(100体積%)を用いた以外は上記(1−1)と同様にして、膜を形成した。その結果、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、上記(1−1)と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを50mL容量のステンレス製の耐圧密閉容器に入れ、窒素雰囲気下で密閉し、系内を13Paに減圧した後に容器全体を110℃に加熱して保管した。
110℃の加熱条件に2週間保持した後において、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の外観上の変化は無かった。
その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1−1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は0.05μmであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、48μΩcmであった。この膜の膜密度は11.7g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られず、加熱テストによるルテニウム金属膜質の劣化は観察されなかった。結果を表1に示す。
【0060】
更に、110℃の加熱条件に1ヶ月保持した後において、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の外観上の変化は無かった。
その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1−1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は0.04μmであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、75μΩcmであった。この膜の膜密度は10.8g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。結果を表1に示す。
【0061】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、下記の試験方法により気化量の測定を行った。乾燥窒素雰囲気の室温下のグローブボックス内にて、100mL容量のバルブ付きの耐圧ステンレス製容器内にビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)を1g収容して密栓した。その後、容器をホットプレートの上に置き、バルブを開放し、80℃で加熱しながら容器内を13Paにて5分間減圧処理した。その後バルブを閉じた後、3時間放冷にて容器を室温に戻し、上記グローブボックス内にてゆっくりとバルブを開けて容器内の圧力を常圧に戻した。その後容器を開けて残存試料量を計測することで減圧処理時の気化量を算出したところ、気化量は0.85gであった。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
(1)ルテニウム膜の形成
ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gの代わりに合成例2にて得られたビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gを用いる以外は実施例1の(1−1)および(1−2)と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例2にて得られたビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。保存安定性および得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例2にて得られたビス(エチル−3−フルオロ−3−オキソプロピオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例3]
(1)ルテニウム膜の形成
ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gの代わりに合成例3にて得られたビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gを用いる以外は実施例1の(1−1)および(1−2)と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例3にて得られたビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。保存安定性および得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例3にて得られたビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例4]
(1)ルテニウム膜の形成
ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gの代わりに合成例4にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gを用いる以外は実施例1の(1−1)および(1−2)と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを50mL容量のステンレス製耐圧密閉容器に入れ窒素雰囲気下で密閉し、系内を13Paに減圧した後に容器全体を110℃に加熱して保管した。1ヶ月後においてもビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の外観上の変化は無かった。
その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、実施例1の(1−1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例4にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
(1)ルテニウム膜の形成
ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gの代わりに合成例5にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)0.05gを用いる以外は実施例1の(1−1)および(1−2)と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。ビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)1gを50mL容量のステンレス製耐圧密閉容器に入れ窒素雰囲気下で密閉し、系内を13Paに減圧した後に容器全体を110℃に加熱して保管した。1ヶ月後においてもビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)の外観上の変化は無かった。
その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、実施例1の(1−1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに合成例5にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,6−ヘプタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例6]
以下の実験は乾燥窒素雰囲気でコントロールされたグローブボックス内にて実施した。シリコン基板をスピンコーターに装着し、合成例4にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)を2mL滴下し、回転数500rpmで10秒間スピンを行なった。この基板を150℃のホットプレート上で10分間加熱した。その後、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は金属光沢を有する膜で覆われた。この膜の膜厚は0.042μmであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、121μΩcmであった。この膜の膜密度は9.4g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例7]
合成例4にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1.00gに、乾燥したトルエンを加えて全量を3.00gとしてビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)を33質量%含有するルテニウム膜形成用材料を調製した。
合成例4にて得られたビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)の代わりに上記方法により調整したビス(エチル−3−オキソブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)を33質量%含有するルテニウム膜形成用材料を用いた以外は実施例6と同様にして、膜を形成した。その結果、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は0.015μmであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、83μΩcmであった。この膜の膜密度は10.6g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
(1)ルテニウム膜の形成
(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニル0.05gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流方向側の近傍に熱酸化膜付きシリコンウエハを置き、室温下で反応容器内に窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を300mL/分の流量にて20分間流した。その後反応容器中に窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を100mL/分の流量で流し、さらに系内を13Paに減圧した後に、反応容器を120℃で5分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を200ml/分の流量で流し、反応容器の温度を400℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、熱に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニル1gを50mL容量のステンレス製耐圧密閉容器に入れ窒素雰囲気下で密閉し、系内を13Paに減圧した後に容器全体を110℃に加熱して保管した。
1ヶ月後、本来は橙色固体である(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニルは、黒色に変化した。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に膜は得られなかった。このように、(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニルは加熱テストにより熱劣化を引き起こし、成膜は不可能となった。
【0078】
(3)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりに(シクロヘキサジエニル)ルテニウムトリカルボニル1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例2]
(1)ルテニウム膜の形成
合成例6にて得られたビス(2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)0.05gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流方向側の近傍に熱酸化膜付きシリコンウエハを置き、室温下で反応容器内に窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を300mL/分の流量にて20分間流した。その後反応容器中に窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を100mL/分の流量で流し、さらに系内を13Paに減圧した後に、反応容器を180℃で5分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガス(水素ガスの含量:3体積%)を200ml/分の流量で流し、反応容器の温度を400℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0080】
(2)気化特性の試験
気化特性の確認として、ビス(メチル−3−オキソ−4,4,4−トリフルオロブタナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gの代わりにビス(2,4−ペンタンジオナト)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)1gを用いる以外は実施例1と同様にして気化量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1より、本発明のルテニウム膜形成用材料(実施例1〜5)は、気化特性に優れており、基体上への当該ルテニウム膜形成用材料の供給が容易であるとともに、高温での保存安定性にも優れていることがわかる。一方、比較例1のルテニウム膜形成用材料は、気化特性が優れているものの、高温での保存安定性が劣る。比較例2のルテニウム膜形成用材料は、本発明で規定する式(1)の化学構造を有しないため、比較例2と類似の化学構造を有する実施例3のルテニウム膜形成用材料に比べて、気化特性が劣る。