(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の燃料濾過器は、最終的にはすべてのダストがフィルタ濾紙に捕捉されるため、燃料濾過器の寿命はフィルタ濾紙のダスト捕集最大容量で決定される。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、燃料濾過器のさらなる長寿命化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、燃料濾過器(3)にて濾過した燃料をポンプ(4)にて高圧化して内燃機関(1)に供給する燃料噴射装置において、燃料濾過器は、不織布よりなる第1フィルタ(34)と、下方に燃料流入孔(351b)が形成されて第1フィルタを収容するフィルタホルダ(35)と、第1フィルタの上流側で且つ第1フィルタの下方に配置された第2フィルタ(36)とを備え、第2フィルタは、上端側が燃料流入孔を囲んでフィルタホルダに密着された圧縮コイルばね(361)と、圧縮コイルばねの下端側を閉塞する底板(9)362とを備え、燃料は圧縮コイルばねの外周側から圧縮コイルばねの巻線間を通過して圧縮コイルばねの内周側に流入するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
これによると、燃料が圧縮コイルばねの巻線間を通過する際の流通抵抗により、圧縮コイルばねの内周側と外周側との間に差圧が発生し、その差圧によって圧縮コイルばねが縮み、圧縮コイルばねの巻線間隙間が小さくなるため、燃料に含まれるダストのうち巻線間隙間よりも粒径の大きいダストは圧縮コイルばねの外周面に捕捉される。
【0008】
そして、内燃機関の停止によりポンプが停止されると、圧縮コイルばねの内周側と外周側との間に差圧が発生しなくなり、圧縮コイルばねは自然長まで伸びるため、圧縮コイルばねの外周面に捕捉されたダストは圧縮コイルばねから分離し、そのダストは自重によって沈降して燃料濾過器の下部空間に堆積する。
【0009】
したがって、第2フィルタにて捕捉された粒径の大きいダストは燃料濾過器の下部空間に貯留され、第1フィルタは第2フィルタで捕捉しきれなかった粒径の小さなダストのみを捕捉することになるため、第1フィルタの長寿命化につながる。また、燃料濾過器全体としてのダスト捕集最大容量は第1フィルタ単体のダスト捕集最大容量よりも多くなるため、燃料濾過器の長寿命化を図ることができる。
【0010】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、内燃機関1(より詳細にはディーゼルエンジン)に燃料を供給する燃料噴射装置は、燃料を溜めておく燃料タンク2、燃料タンク2から汲み上げられた燃料を濾過する燃料濾過器3、燃料濾過器3にて濾過された燃料を高圧化して圧送するサプライポンプ4、サプライポンプ4にて高圧化された燃料を蓄えるコモンレール5、コモンレール5から供給された高圧燃料を内燃機関1の燃焼室に噴射するインジェクタ6、コモンレール5内の燃料を燃料濾過器3に戻す戻し経路7、戻し経路7を開閉する戻し経路開閉弁8、戻し経路開閉弁8等の作動を制御する電子制御装置9を備えている。
【0014】
サプライポンプ4は、燃料タンク2から燃料を汲み上げるフィードポンプ41、フィードポンプ41から供給される燃料を加圧してコモンレール5へ圧送する高圧ポンプ42、フィードポンプ41から高圧ポンプ42へ供給される燃料流量を調整する吸入調量弁43等を備えている。
【0015】
フィードポンプ41および高圧ポンプ42は、内燃機関1によって駆動される。吸入調量弁43は、印加電流に応じて弁開度を連続的に変更可能に構成されたリニアソレノイド式の電磁弁であって、電子制御装置9によって制御される。
【0016】
電子制御装置9は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶したプログラムに従って演算処理を行う。
【0017】
この電子制御装置9は、コモンレール5内の実レール圧が噴射圧力に相当する目標レール圧に追従するように高圧ポンプ42の目標吐出量を算出し、その目標吐出量となるように吸入調量弁43の開度を制御する。
【0018】
また、電子制御装置9は、各種入力信号に基づいて、内燃機関1の運転状態に応じた最適な噴射時期や噴射量等を決定してインジェクタ6を駆動する。さらに、電子制御装置9は、各種入力信号に基づいて、戻し経路開閉弁8を駆動する。
【0019】
図2、
図3に示すように、燃料濾過器3は、円柱状で、使用時に軸方向が重力方向となるように設置される。また、燃料濾過器3は、車両の車体に装着される。
【0020】
燃料濾過器3は、内部に円柱状空間を形成するケース31を備えている。ケース31の上部には、燃料タンク2からの燃料が流入する燃料入口管32と、フィードポンプ41に向けて燃料が流出する燃料出口管33が設けられている。なお、燃料入口管32は、例えばケース31の下部に設けてもよい。
【0021】
ケース31の内部には、燃料中に混入したダストを捕集する不織布よりなる第1フィルタ34と、この第1フィルタ34を収容するフィルタホルダ35と、燃料中に混入したダストを捕集する第2フィルタ36が配置されている。
【0022】
フィルタホルダ35は、ケース31の内部空間を上下に2分割する円盤状のホルダプレート351と、ホルダプレート351の上方に配置された有底円筒状のホルダカップ352とからなる。そして、ホルダプレート351とホルダカップ352とによって形成された空間に、第1フィルタ34が収容されている。
【0023】
ホルダプレート351の外周側には、ケース31の上部空間と下部空間とを連通させて燃料を通過させる燃料通過孔351aが複数形成されている。ホルダプレート351の径方向中心部には、第1フィルタ34が収容された空間に燃料を流入させる燃料流入孔351bが形成されている。
【0024】
ホルダカップ352は、開口端が燃料流入孔351bを囲んでホルダプレート351に接合され、底部に燃料出口管33が接続されている。
【0025】
第2フィルタ36は、ケース31の下部空間に配置されており、より詳細には、第1フィルタ34の上流側で且つ第1フィルタ34の下方に配置されている。
【0026】
第2フィルタ36は、圧縮コイルばね361と、圧縮コイルばね361の下端側を閉塞する底板362とを備えている。圧縮コイルばね361の上端側は、燃料流入孔351bを囲んでホルダプレート351に密着状態で接合されている。そして、燃料は、圧縮コイルばね361の巻線間を通過するようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の作動を説明する。なお、
図2、
図3中の矢印は燃料の流れを示している。
【0028】
まず、内燃機関1の運転中は、フィードポンプ41にて燃料タンク2から燃料が汲み上げられる。燃料タンク2から汲み上げられた燃料は、燃料入口管32から燃料濾過器3内に流入する。
【0029】
燃料濾過器3に流入した燃料は、第2フィルタ36における圧縮コイルばね361の外周側から圧縮コイルばね361の巻線間を通過して圧縮コイルばね361の内周側に流入する。
【0030】
この際、
図2に示すように、燃料が圧縮コイルばね361の巻線間を通過する際の流通抵抗により、圧縮コイルばね361の内周側と外周側との間に差圧が発生し、その差圧によって圧縮コイルばね361が縮み、圧縮コイルばね361の巻線間隙間が小さくなるため、燃料に含まれるダストのうち巻線間隙間よりも粒径の大きいダストは圧縮コイルばね361の外周面に捕捉される。
【0031】
圧縮コイルばね361の内周側に流入した燃料は、ホルダプレート351の燃料流入孔351bを介して第1フィルタ34が収容された空間に流入し、第2フィルタ36で捕捉しきれなかった粒径の小さなダストが第1フィルタ34にて捕捉される。
【0032】
第1フィルタ34を通過した燃料は、燃料出口管33からフィードポンプ41に向けて流出する。
【0033】
内燃機関1が停止されると、フィードポンプ41も停止するため、圧縮コイルばね361の内周側と外周側との間に差圧は発生せず、したがって、
図3に示すように、圧縮コイルばね361は自然長まで伸びる。
【0034】
そして、圧縮コイルばね361が伸びるときに圧縮コイルばね361が上下方向に振動することにより、圧縮コイルばね361の外周面に捕捉されていたダストが圧縮コイルばね361から分離し、そのダストは自重によって沈降してケース31の下部に堆積する。
【0035】
なお、第2フィルタ36の底板362の板厚を部位によって異ならせて、底板362の重心を圧縮コイルばね361の軸に対して偏芯させることにより、圧縮コイルばね361が伸びるときに圧縮コイルばね361が水平方向にも振動し、ダストの分離が促進される。
【0036】
さらに、内燃機関1が停止されると、電子制御装置9は戻し経路開閉弁8を開弁作動させる。この戻し経路開閉弁8の開弁作動により、コモンレール5内の燃料が戻し経路7を介して燃料濾過器3に戻され、その燃料は第1フィルタ34を通過して圧縮コイルばね361の内周側に流入する。また、圧縮コイルばね361の内周側に流入した燃料が、圧縮コイルばね361の巻線間を通過して圧縮コイルばね361の外周側に流入する。
【0037】
そして、圧縮コイルばね361の巻線間を通過する燃料の流れにより、圧縮コイルばね361の外周面に捕捉されていたダストの分離が促進される。また、圧縮コイルばね361の内周側から外周側に向かう燃料の流れにより、ダストの沈降過程での圧縮コイルばね361の内周側へのダストの流入が抑制される。
【0038】
本実施形態によると、第2フィルタ36にて捕捉された粒径の大きいダストは燃料濾過器3の下部に貯留され、第1フィルタ34は第2フィルタ36で捕捉しきれなかった粒径の小さなダストのみを捕捉することになるため、第1フィルタ34の長寿命化につながる。
【0039】
また、燃料濾過器全体としてのダスト捕集最大容量は第1フィルタ単体のダスト捕集最大容量よりも多くなるため、燃料濾過器3の長寿命化を図ることができる。
【0040】
因みに、差圧によって圧縮コイルばね361が縮んだ際の圧縮コイルばね361の巻線間隙間を13μmに設定した場合、燃料中のダストのうち約30%が第2フィルタ36で捕捉され、約70%が第1フィルタ34で捕捉された。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、燃料濾過器3の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図4に示すように、第2フィルタ36の底板362には、圧縮コイルばね361の内周側と圧縮コイルばね361の外部とを連通させる開口部362aが形成されている。この開口部362aは、フラップ37にて開閉されるようになっている。また、フラップ37は、開口部362aを閉じる向きにフラップ用ばね38にて付勢されている。
【0043】
フラップ用ばね38は、両端にアーム部を有するねじりばねであり、一方のアーム部が底板362に接合され、他方のアーム部がフラップ37に接合されている。
【0044】
次に、本実施形態の作動を説明する。内燃機関1(
図1参照)の運転中は、フラップ用ばね38にて付勢されてフラップ37が開口部362aを閉じている。したがって、第1実施形態と同様に、圧縮コイルばね361の内周側と外周側との間に発生する差圧によって圧縮コイルばね361が縮み、燃料に含まれるダストのうち巻線間隙間よりも粒径の大きいダストは圧縮コイルばね361の外周面に捕捉される。
【0045】
内燃機関1が停止されると、フィードポンプ41(
図1参照)も停止するため、圧縮コイルばね361の内周側と外周側との間に差圧は発生しない。したがって、第1実施形態と同様に、圧縮コイルばね361は自然長まで伸び、圧縮コイルばね361が上下方向に振動することにより、圧縮コイルばね361の外周面に捕捉されていたダストが圧縮コイルばね361から分離される。
【0046】
さらに、内燃機関1が停止されると、第1実施形態と同様に、電子制御装置9(
図1参照)は戻し経路開閉弁8(
図1参照)を開弁作動させる。この戻し経路開閉弁8の開弁作動に伴う、圧縮コイルばね361の巻線間を通過する燃料の流れにより、圧縮コイルばね361の外周面に捕捉されていたダストの分離が促進される。
【0047】
また、戻し経路開閉弁8の開弁作動により、コモンレール5(
図1参照)内の燃料が戻し経路7(
図1参照)を介して燃料濾過器3に戻され、圧縮コイルばね361の内周側の圧力が上昇する。そして、
図4に示すように、圧縮コイルばね361の内周側と圧縮コイルばね361の外部との間の差圧により、フラップ37はフラップ用ばね38の付勢力に抗して開口部362aを開く向きに作動する。これにより、底板362やフラップ37の上面に堆積していたダストは開口部362aから排出され、そのダストは自重によって沈降してケース31の下部に堆積する。
【0048】
ところで、内燃機関1を停止させた際に、圧縮コイルばね361の内周側に流入したダストや第1フィルタ34から分離されたダストが底板362の上面に堆積する虞がある。そして、その堆積したダストの重量による圧縮コイルばね361に加わる力が、内燃機関1の運転中の差圧による力より大きくなると、圧縮コイルばね361が伸張して巻線間隙間が大きくなってしまい、圧縮コイルばね361にて本来捕捉すべき粒径のダストを捕捉できなくなる。
【0049】
ここで、本実施形態では、内燃機関1が停止されるとフラップ37が開口部362aを開いて、底板362やフラップ37の上面に堆積していたダストは開口部362aから排出されるため、上記した堆積したダストの重量による不具合を回避することができる。