特許第5754409号(P5754409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754409
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20150709BHJP
   F02B 77/08 20060101ALI20150709BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   F02B67/06 Z
   F02B77/08 M
   F16H7/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-92056(P2012-92056)
(22)【出願日】2012年4月13日
(65)【公開番号】特開2013-221426(P2013-221426A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(72)【発明者】
【氏名】横山 亘
(72)【発明者】
【氏名】高田 和良
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−165022(JP,A)
【文献】 特開2003−211995(JP,A)
【文献】 特開2005−105840(JP,A)
【文献】 特開平11−294181(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0131232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06,77/08
F16H 7/00
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関と、
該内燃機関の出力軸とベルトによって動力伝達可能に連結された回転軸を有する発電電動機と、
該発電電動機によって発電された電力を充電すると共に充電された電力を該発電電動機に供給するバッテリと、
記憶部を有する制御手段と
を備え、
該制御手段は、前記内燃機関と前記発電電動機との回転数差を検出し、該回転数差が、予め設定された所定値以下であり、その状態が、予め設定された所定期間以上継続しない場合には、前記制御手段は、前記ベルトに劣化が生じる可能性があると判定し、その情報を前記記憶部に記憶する車両駆動装置。
【請求項2】
前記ベルトに劣化が生じる可能性があることを警報する警報手段を備え、
前記状態が、前記所定期間よりも短い下限期間以上継続しない場合に、前記警報手段が警報を発する、請求項1に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両駆動装置に係り、特に、内燃機関と発電電動機とがベルトにて動力伝達可能に連結された車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関であるエンジンの出力軸と発電電動機の回転軸とがベルトによって連結されて動力伝達が行われる車両では、ベルトが劣化するとベルトの滑りが発生し、発電電動機による発電機能の確保が困難となったり、発電電動機からエンジンへの動力伝達が適切に行われずに損失が発生したりする。そこで、特許文献1に記載された装置では、エンジンの回転数と、エンジンにベルトを介して連結された発電電動機の回転数とを検出し、それらの回転数の差が所定値を超えたときに、ベルトが劣化したことを警報している。また、特許文献2に記載された装置では、ベルトの張力が低下した場合に、その不具合内容をディーラー等の修理者に知らせるために、ECUのメモリーにその情報を記憶している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−211995号公報
【特許文献2】特開平11−294181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の装置では、ベルトの張力が低下してからその情報をECUに記憶しているので、ベルトの不具合を修理者に知らせるのが遅くなってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ベルトの劣化が発生する前に、ベルトに劣化が生じる可能性についての情報を修理者に早期に知らせることのできる車両駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両駆動装置は、車両に搭載された内燃機関と、内燃機関の出力軸とベルトによって動力伝達可能に連結された回転軸を有する発電電動機と、発電電動機によって発電された電力を充電すると共に充電された電力を発電電動機に供給するバッテリと、記憶部を有する制御手段とを備え、制御手段は、内燃機関と発電電動機との回転数差を検出し、回転数差が、予め設定された所定値以下であり、その状態が、予め設定された所定期間以上継続しない場合には、制御手段は、ベルトに劣化が生じる可能性があると判定し、その情報を記憶部に記憶する。
ベルトに劣化が生じる可能性があることを警報する警報手段を備え、回転数差が予め設定された所定値以下である状態が、所定期間よりも短い下限期間以上継続しない場合に、警報手段が警報を発する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、内燃機関と発電電動機との回転数差が、予め設定された所定値以下であり、その状態が、予め設定された所定期間以上継続しない場合には、制御手段は、ベルトに劣化が生じる可能性があると判定し、その情報を記憶部に記憶することにより、ベルトの劣化が発生する前に、ベルトに劣化が生じる可能性についての情報を修理者に早期に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態に係る車両駆動装置を備えた自動車の構成を示す図である。
図2】この実施の形態に係る車両駆動装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、自動車100は、ガソリン燃料を内部で燃焼させて動力を発生させるエンジン1と、電動機および発電機として動作可能な発電電動機(MG)2とを備えている。エンジン1の出力軸3の一端は、ベルト5およびプーリ6,7を介して発電電動機2の回転軸4に連結されている。また、エンジン1の出力軸3の他端は、トランスミッション8およびディファレンシャル9を介して車軸10に連結されている。また、エンジン1の回転数Neを検出する回転数センサ16と、発電電動機2の回転数Nmを検出する回転数センサ17とが設けられている。発電電動機2と、回転数センサ16及び17とはそれぞれ、制御手段であるコントロールユニット(ECU)13に電気的に接続されている。また、ECU13には、ベルト5に劣化が生じる可能性があることを警報する警報手段18、例えば、自動車100のダッシュボードに設けられる警告灯(図示せず)やブザー(図示せず)等が電気的に接続されている。
【0010】
また、自動車100は、電力コンバータ11とバッテリ12とを備えている。エンジン1の始動時等にバッテリ12から出力される直流電力が電力コンバータ11によって交流電力に変換されて発電電動機2に供給される際には、発電電動機2は電動機として動作して回転軸4を駆動させ、これにより発生する動力はベルト5およびプーリ6,7を介してエンジン1に伝達される。一方、自動車100の減速時等にエンジン1からの回生動力によって発電電動機2の回転軸4が駆動される際には、発電電動機2は発電機として動作して交流電力を発電し、この交流電力は電力コンバータ11によって直流電力に変換されてバッテリ12に充電される。
【0011】
後述するように、ECU13は、回転数センサ16及び17それぞれによる検出値である回転数Ne及びNmと、プーリ6,7のプーリ比rとから、エンジン1と発電電動機2との回転数差ΔN(=|Ne−Nm/r|)を算出する。ΔNについての所定値Nが、ECU13に内蔵された記憶部であるメモリー14に予め記憶されている。また、メモリー14には、ΔN≦Nとなる状態の継続時間についての2つの基準、すなわち下限期間t及び所定期間t(t<t)が予め記憶されている。
【0012】
次に、この発明の実施の形態に係る車両駆動装置の動作について説明する。
自動車100のドライバーがエンジン1を始動すると、図2のフローチャートに示された制御が開始される。ECU13は、エンジン1が始動したら、回転数センサ16による検出値、すなわちエンジン1の回転数Neのデータを受信し(ステップS1)、回転数センサ17による検出値、すなわち発電電動機2の回転数Nmのデータを受信する(ステップS2)。次に、ECU13は、Ne,Nm,rから回転数差ΔNを算出し、ΔN>Nか否かを判定する(ステップS3)。ΔN>Nの場合には、近いうちにベルト5に劣化が生じる可能性が高いか、あるいはすでに劣化が生じていると判断し、警報手段18を稼働して(ステップS4)、ドライバーに、ディーラーにてベルト5を点検する必要のあることを知らせ、制御を終了する。
【0013】
一方、ステップS3において、ΔN≦Nの場合には、ECU13は、ΔN≦Nの状態の継続時間tの計測を開始する(ステップS5)。続くステップS6において、継続時間tが下限期間tよりも長いか否かを判定する。t<tの場合には、近いうちにベルト5に劣化が生じる可能性が高いか、あるいはすでに劣化が生じていると判断し、ステップS4に移る。一方、ステップS6において、t≧tの場合には、続くステップS7において、継続時間tが所定期間tよりも長いか否かを判定する。t≧tの場合には、ベルト5に劣化が生じる可能性はないと判断し、制御を終了する。一方、ステップS7において、t<tの場合には、次の法定点検までの間にはベルト5に劣化が生じる可能性はないが、次の次の法定点検までの間にはそのベルト5に劣化が生じる可能性があると判断し、自動車100のディーラーにその状態を知らせるために、ECU13は、メモリー14に、ΔN≦Nの状態が時間t(t<t<t)だけ継続した旨の情報を記憶し(ステップS8)、制御を終了する。これにより、次の法定点検においてディーラーでは、ベルト5の交換の必要性を検討することができる。
【0014】
回転数差ΔNについての所定値Nと、下限期間t及び所定期間tとについて、車両駆動装置の上記動作を実現するためには、以下のような条件を満たすことが必要である。すなわち、所定値Nは、近いうちにベルト5に劣化が生じる可能性が高いか、あるいはすでに劣化が生じていると判断できるための値である。下限期間tは、ΔN≦Nの状態が最低でも下限期間tだけ継続しない限りは、近いうちにベルト5に劣化が生じる可能性が高いと判断できるための値である。所定期間tは、ΔN≦Nの状態が下限期間tよりも長く継続した場合でも、所定期間tだけ継続しない限りは、法定点検の期間である12か月間の間にベルト5に劣化が生じる可能性はないものの、その次の法定点検までの期間である24か月間の間にベルト5に劣化が生じる可能性があると判断できるための値である。これらの条件は、エンジン1の仕様やベルト5の強度等によって適宜設定するものである。
【0015】
このように、エンジン1と発電電動機2との回転数差ΔNが、予め設定された所定値N以下であり、その状態が、予め設定された所定期間t以上継続しない場合には、ECU13は、ベルト5に劣化が生じる可能性があると判定し、その情報をメモリー14に記憶することにより、ベルト5の劣化が発生する前に、ベルト5に劣化が生じる可能性についての情報をディーラーに早期に知らせることができる。
【0016】
この実施の形態では、所定値Nと、下限期間t及び所定期間tとを設定するための条件として、法定点検の期間である12か月を基準にしていたが、6か月点検を基準としてもよい。さらに、6か月よりも短いか、あるいは12か月よりも長い期間を基準にしてもよい。
【0017】
この実施の形態では、内燃機関は、ガソリン燃料を内部で燃焼させて動力を発生させるエンジン1であったが、ディーゼルエンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 エンジン(内燃機関)、2 発電電動機、3 出力軸、4 回転軸、5 ベルト、12 バッテリ、13 コントロールユニット(制御手段)、14 メモリー(記憶部)、18 警報手段、100 自動車(車両)、Ne (エンジンの)回転数、Nm (発電電動機の)回転数、N 所定値、ΔN 回転数差、t 下限期間、t 所定期間。
図1
図2