特許第5754429号(P5754429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754429
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】空調室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20150709BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   F24F11/02 102H
   F24F1/00 401C
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-201379(P2012-201379)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55733(P2014-55733A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】仲田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】森 隆滋
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕記
(72)【発明者】
【氏名】松原 篤志
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−101128(JP,A)
【文献】 特開平02−103331(JP,A)
【文献】 特開2012−021735(JP,A)
【文献】 特開2007−303731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の姿勢を採ることで、吹出口(15)から吹き出される吹出空気の上下方向の風向を変更するフラップ(31,32)と、
前記吹出空気が室内の床面に向かって吹き出される下吹き姿勢と、前記吹出空気が前記室内の天井面に向かって吹き出される上吹き姿勢と、を前記フラップに採らせることが可能な制御部(60)と、
を備え、
前記制御部は、
房時に前記吹出空気の風向を自動的に調整する風向自動モードを実行する場合には、前記フラップに、前記下吹き姿勢を採らせた後に、一時的に前記上吹き姿勢を採らせる自動切替制御を行い、
暖房時に前記風向自動モードの実行を開始する際には、前記室内の温度に応じて前記フラップに前記下吹き姿勢又は前記上吹き姿勢のいずれかの姿勢を採らせる、
空調室内機(10)。
【請求項2】
前記フラップは、
前記吹出口近傍に配置される第1フラップ(31)と、
前記第1フラップと共同して、前記吹出空気を下面(32a)に沿ったコアンダ気流にする第2フラップ(32)と、
を有し、
前記上吹き姿勢では、前記コアンダ気流を利用して、前記吹出空気を前記室内の天井面へと向かわせる、
請求項1に記載の空調室内機。
【請求項3】
前記制御部は、前記自動切替制御において、前記室内の温度が安定した後に、前記フラップを前記下吹き姿勢から前記上吹き姿勢に切替える、
請求項1又は2に記載の空調室内機。
【請求項4】
前記制御部は、前記自動切替制御において、前記室内の温度と設定温度との差に応じて前記フラップを前記下吹き姿勢から前記上吹き姿勢に切替える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空調室内機。
【請求項5】
前記制御部は、前記自動切替制御において、圧縮機の運転周波数に応じて前記フラップを前記下吹き姿勢から前記上吹き姿勢に切替える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の空調室内機。
【請求項6】
前記制御部は、前記自動切替制御において、所定時間毎に、前記フラップを前記下吹き姿勢から前記上吹き姿勢に切替える、
請求項1又は2に記載の空調室内機。
【請求項7】
前記吹出口から吹き出される前記吹出空気の風量を変更可能なファン(14)、
を備え、
前記制御部は、前記フラップに前記上吹き姿勢を採らせる場合には、前記吹出空気が前記室内全体を循環する気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように前記風量を調整する、
請求項1からのいずれか1項に記載の空調室内機。
【請求項8】
前記自動切替制御が行われている場合には、前記フラップが前記上吹き姿勢を採っているときの前記吹出空気の温度は、前記フラップが前記下吹き姿勢を採っているときの前記吹出空気の温度よりも低い、
請求項1からのいずれか1項に記載の空調室内機。
【請求項9】
前記制御部は、前記自動切替制御において、外気温度に応じて前記フラップの姿勢を切替える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空調室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吹出空気の風向を調整することで室内の空気を攪拌し、室内の温度ムラを解消するような空調室内機がある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2009−58220号公報)に開示されている空気調和機の室内機は、壁掛け型の室内機であって、冷房時に、吹出空気(冷気)を、天井面に向かって吹き出させて、天井面、室内機の設置されている壁面に対向する壁面、床面の順に循環する気流を形成することで、室内全体の空気を攪拌して室内の温度ムラを解消している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、暖気は室内の上部に溜まるという性質がある。このため、暖房時には、吹出空気(暖気)が天井近傍に溜まってしまい、室内の温度ムラが生じやすいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、暖房時における室内の温度ムラを解消することができる空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、フラップと、制御部と、を備える。フラップは、所定の姿勢を採ることで、吹出口から吹き出される吹出空気の上下方向の風向を変更する。制御部は、フラップに、下吹き姿勢と上吹き姿勢とを採らせることが可能である。フラップが下吹き姿勢を採ることで、吹出空気が室内の床面に向かって吹き出される。フラップが上吹き姿勢を採ることで、吹出空気が室内の天井面に向かって吹き出される。また、制御部は、暖房時に風向自動モードを実行する場合には、フラップに、下吹き姿勢を採らせた後に、一時的に上吹き姿勢を採らせる自動切替制御を行う。なお、風向自動モードは、吹出空気の風向を自動的に調整するモードである。そして、制御部は、暖房時に風向自動モードの実行を開始する際には、室内の温度に応じてフラップに下吹き姿勢又は上吹き姿勢のいずれかの姿勢を採らせる。
【0007】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、暖房時に風向自動モードが実行される場合には、フラップが、下吹き姿勢を採った後に、一時的に上吹き姿勢を採るように、その姿勢が切り替えられる。このため、フラップが下吹き姿勢を採って暖気が室内の床面に向かって吹き出されることで、室内の床面近傍の空気が暖められた後に、フラップが上吹き姿勢を採って暖気が一時的に室内の天井面に向かって吹き出されることで、天井近傍に溜まった暖気を室内の下部へと導くことができる。このように、フラップが一時的に上吹き姿勢を採ることで、室内全体の空気を攪拌することができ、天井近傍に暖気が溜まりにくくなる。
【0008】
これによって、暖房時における室内の温度ムラを解消することができる。
【0009】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点の空調室内機において、フラップは、第1フラップと、第2フラップと、を有する。第1フラップは、吹出口近傍に配置される。第2フラップは、第1フラップと共同して、吹出空気を第2フラップの下面に沿ったコアンダ気流にする。また、上吹き姿勢では、コアンダ気流を利用して、吹出空気を室内の天井面へと向かわせる。この空調室内機では、第1フラップと第2フラップとを用いて、吹出空気を天井面へと向かわせることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点又は第2観点の空調室内機において、制御部は、自動切替制御において、室内の温度が安定した後に、フラップを下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替える。このため、室内の温度が安定していない状態であるにもかかわらず、フラップの姿勢が下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられて、室内の床面近傍の空気が積極的に暖められないことで、床面近傍が暖まらないおそれを低減することができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第1観点から第3観点の空調室内機において、制御部は、自動切替制御において、室内の温度と設定温度との差に応じてフラップを下吹き姿勢から上吹き姿勢に切替える。この空調室内機では、自動切替制御において、室内の温度と設定温度との差に応じてフラップが下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられる。
【0012】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、第1観点から第4観点の空調室内機において、制御部は、自動切替制御において、圧縮機の運転周波数に応じてフラップを下吹き姿勢から上吹き姿勢に切替える。この空調室内機では、自動切替制御において、圧縮機の運転周波数に応じてフラップが下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられる。
【0013】
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点又は第2観点の空調室内機において、制御部は、自動切替制御において、所定時間毎に、フラップを下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替える。この空調室内機では、フラップの姿勢が所定時間毎に下吹き姿勢から上吹き姿勢に切替られることで、定期的に室内全体の空気を攪拌することができ、室内の温度ムラを解消することができる。
【0014】
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第観点のいずれかの空調室内機において、吹出口から吹き出される吹出空気の風量を変更可能なファンを備える。また、制御部は、フラップに上吹き姿勢を採らせる場合には、吹出空気が室内全体を循環する循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように風量を調整する。
【0015】
本発明の第観点に係る空調室内機では、吹出空気が天井面に向かって吹き出される場合には、循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように風量が調整されている。このため、風量不足によって循環気流が形成できないおそれを低減することができる。
【0016】
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第観点のいずれかの空調室内機において、自動切替制御が行われている場合には、フラップが上吹き姿勢を採っているときの吹出空気の温度は、フラップが下吹き姿勢を採っているときの吹出空気の温度よりも低い。この空調室内機では、天井面に向かって吹き出される吹出空気の温度が、床面に向かって吹き出される吹出空気の温度よりも低いため、天井近傍に暖気が溜まるおそれを低減することができる。
【0017】
本発明の第観点に係る空調室内機は、第1観点から第3観点の空調室内機において、制御部は、自動切替制御において、外気温度に応じてフラップの姿勢を切り替える。このため、室内温度が外気温度の影響を受けて変動するような状況であっても、ユーザの快適性を損なうおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、暖房時における室内の温度ムラを解消することができる。
【0019】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、第1フラップと第2フラップとを用いて、吹出空気を天井面へと向かわせることができる。
【0020】
本発明の第3観点に係る空調室内機では、床面近傍が暖まらないおそれを低減することができる。
【0021】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、自動切替制御において、室内の温度と設定温度との差に応じてフラップが下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられる。
【0022】
本発明の第5観点に係る空調室内機では、自動切替制御において、圧縮機の運転周波数に応じてフラップが下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられる。
【0023】
本発明の第観点に係る空調室内機では、定期的に室内全体の空気を攪拌することができ、室内の温度ムラを解消することができる。
【0024】
本発明の第観点に係る空調室内機では、風量不足によって循環気流が形成できないおそれを低減することができる。
【0025】
本発明の第観点に係る空調室内機では、天井近傍に暖気が溜まるおそれを低減することができる。
【0026】
本発明の第観点に係る空調室内機では、ユーザの快適性を損なうおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る空調室内機の断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る空調室内機の断面図。
図3A】水平吹きモード実行時の水平フラップの姿勢及びコアンダフラップの姿勢を示す図。
図3B】上吹きモード実行時の水平フラップの姿勢及びコアンダフラップの姿勢を示す図。
図3C】前方下吹きモード実行時の水平フラップの姿勢及びコアンダフラップの姿勢を示す図。
図3D】下吹きモード実行時の水平フラップの姿勢及びコアンダフラップの姿勢を示す図。
図4】空調室内機の備える制御装置の制御ブロック図。
図5】変形例Bに係る空調室内機の備える制御装置の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
(1)空調室内機の全体構成
図1は、運転停止時の空調室内機10の断面図である。図2は、運転時の空調室内機10の断面図である。
【0030】
空調室内機10は、室内の壁面に取り付けられる壁掛け型の空調室内機であり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14及び制御装置60を備えている。
【0031】
本体ケーシング11は、内部に室内熱交換器13、室内ファン14及び制御装置60を収納している。また、本体ケーシング11には、本体ケーシング11内に室内の空気を吸い込むための吸込口19が設けられている。さらに、本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。
【0032】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。
【0033】
室内ファン14は、クロスフローファンであり、吸込口19を介して室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、吹出口15から室内へと吹き出す。なお、室内ファン14は、回転数に応じて、吹出口15から吹き出される吹出空気の風量を変更可能である。
【0034】
また、吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の上下方向の風向を変更可能な水平フラップ31が回動自在に取り付けられている。水平フラップ31は、モータ(図示せず)によって駆動して、傾斜角度の異なる複数の姿勢を採ることで、吹出空気の上下方向の流れを変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。また、吹出口15の近傍であって、水平フラップ31の上方には、水平フラップ31と共同して吹出空気の上下方向の風向を変更可能なコアンダフラップ32が設けられている。コアンダフラップ32は、モータ(図示せず)によって駆動して、傾斜角度が異なる複数の姿勢を採ることができる。
【0035】
なお、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール面に沿って形成されている。そして、吹出流路18には、吹出口15から吹き出される吹出空気の左右方向の風向を変更可能な垂直フラップ20が配置されている。垂直フラップ20は、複数枚の羽根片が連結棒で連結された構成を有しており、連結棒が本体ケーシング11の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0036】
制御装置60は、室内ファン14の回転数の制御や水平フラップ31及びコアンダフラップ32の角度の制御を行う。また、制御装置60は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の角度を制御して水平フラップ31及びコアンダフラップ32に所定の姿勢を採らせることで、吹出空気を室内の床面に向かって吹き出させたり、吹出空気を室内の天井面に向かって吹き出させたりすることができる。
【0037】
なお、空調室内機10の具体的な構成は、上記のものに限定されるものではなく、吹出口から吹き出される吹出空気を、室内の床面に吹き出させたり、室内の天井面に吹き出させたりすることができる空調室内機であれば、他の機器構成であってもよい。
【0038】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有している。天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置しており、吸込口19は、天面部11aの前部に設けられている。
【0039】
前面パネル11bは、空調室内機10の前面部を構成しており、本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前端部に向かって延びている。なお、前面パネル11bは、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bの下部には、本体ケーシング11の内側に向かって窪んだ領域がある。この領域の窪み深さはコアンダフラップ32の厚み寸法に合うように設定されており、コアンダフラップ32が収容される収容部12を構成している。なお、収容部12の表面もなだらかな円弧曲面である。
【0040】
また、本体ケーシング11の下部に形成されている吹出口15は、本体ケーシング11の長手方向を長辺とする長方形の開口である。なお、吹出口15の後端部は下部水平板11dの前端部に接しており、吹出口15の後端部と吹出口15の前端部とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0041】
(2−2)水平フラップ
水平フラップ31は、空調室内機10の長手方向に長い板状の部材であって、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。また、水平フラップ31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは、前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。そして、水平フラップ31の内側面31bは、外側面31aにほぼ平行な円弧曲面を成している。なお、本実施形態では、水平フラップ31の内側面31bが円弧曲面を成しているが、水平フラップ31の内側面が平面であってもよい。
【0042】
水平フラップ31は、後端部に回動軸37を有している。回動軸37は、吹出口15の後端部近傍で、本体ケーシング11に固定されているモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。
【0043】
また、水平フラップ31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、水平フラップ31の内側面31bに概ね沿って流れる。特に、水平フラップ31の内側面31bがスクロール面の終端Fの接線L0よりも上側にある場合には、スクロール面の終端Fの接線L0方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が、水平フラップ31によって上向きに変更される。
【0044】
なお、水平フラップ31は、図3A図3Bに示すように、水平フラップ31の内側面31bが略水平になるように回動した姿勢(以下、水平吹き姿勢という)、図3Cに示すように、さらに回動して前方下向きに傾斜した姿勢(以下、前方下吹き姿勢という)、及び、図3Dに示すように、さらに下向きに傾斜した姿勢(以下、下吹き姿勢という)を採ることができる。
【0045】
(2−3)コアンダフラップ
コアンダフラップ32は、空調室内機10の長手方向に長い板状の部材である。また、コアンダフラップ32の外側面32aは、コアンダフラップ32が収容部12に収容された状態で、前面パネル11bのなだらかな円弧曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。なお、コアンダフラップ32は、空調室内機10の運転が停止している場合には、収容部12に収納されている。
【0046】
また、コアンダフラップ32は、回動することによって収容部12から離れて、前後方向に傾斜した姿勢を採る。コアンダフラップ32の回動軸38は、収容部12の下端近傍で且つ本体ケーシング11の内側の位置(吹出流路18上壁の上方の位置)に設けられており、コアンダフラップ32の下端部と回動軸38とは所定の間隔を保って連結されている。そして、回動軸38が回動してコアンダフラップ32の上端部が前面パネル11bの収容部12から離れるほど、コアンダフラップ32の下端部の高さ位置は低くなる。また、コアンダフラップ32が回動して開いたときの傾斜は、前面パネル11bの傾斜よりも緩やかである。
【0047】
なお、コアンダフラップ32は、図3A及び図3Cに示すように、収容部12に収納された姿勢の他に、図3Bに示すように、回動して前方上向きに傾斜した姿勢(以下、上吹き姿勢という)や、図3Dに示すように、さらに回動して前方下向きに傾斜した姿勢(以下、下吹き姿勢という)などを採ることができる。
【0048】
(2−4)制御装置
制御装置60は、図4に示すように、空調室内機10の備える各種部材と接続されている。また、制御装置60は、リモートコントローラ80を介してユーザから各種設定指示を受け付けることができ、受け付けたユーザからの設定指示に基づいて各種部材の動作制御を行う。なお、本実施形態の制御装置60は、本体ケーシング11を前面パネル11b側から視た場合に、室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置している。
【0049】
また、ユーザは、リモートコントローラ80により、運転の開始/停止、目標温度となる設定温度の設定、及び、風量の設定の他に、「運転モード」の設定や「上下風向」の設定等を行うことができる。なお、「運転モード」の設定とは、空調室内機10の運転内容を設定することであり、本実施形態では、ユーザは、「運転モード」として、冷房、除湿、暖房、加湿、送風及び自動等の各種運転モードを設定可能である。そして、制御装置60は、ユーザによって設定された「運転モード」に応じて、各種運転モードを実行する。
【0050】
さらに、制御装置60は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の角度を制御して水平フラップ31及びコアンダフラップ32に所定の姿勢を採らせることで、吹出空気の風向を調整する風向制御部61を備えている。
【0051】
風向制御部61は、ユーザによるリモートコントローラ80を介した「上下風向」の設定に応じた風向となるように、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の動作制御を行う。なお、「上下風向」の設定とは、吹出空気の上下の風向を設定することであり、本実施形態では、ユーザは、「上下風向」として、通常吹きモード、上吹きモード、下吹きモード、自然風向モード、及び、風向自動モードのうちのいずれかの上下風向モードを選択し、設定することができる。
【0052】
(2−4−1)通常吹きモード
「上下風向」が通常吹きモードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31のみを回動させて吹出空気の風向を調整し、通常吹きモードを実行する。なお、通常吹きモードでは、ユーザは、さらに、水平吹きモードと前方下吹きモードとを選択可能であり、「上下風向」が水平吹きモードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31に水平吹き姿勢を採らせる。具体的には、風向制御部61は、図3Aに示すように、水平フラップ31の内側面31bが略水平になる位置まで水平フラップ31を回動させて、吹出空気を水平フラップ31の内側面31bに沿った前方に吹き出させる。また、「上下風向」が前方下吹きモードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31に前方下吹き姿勢を採らせる。具体的には、風向制御部61は、図3Cに示すように、水平フラップ31の内側面31bが水平よりも前下がりになるまで水平フラップ31を回動させることで、吹出空気を水平フラップ31の内側面31bに沿った前方下向きに吹き出させる。このように、通常吹きモードが実行されることで、吹出空気は、前方に、或いは、前方下向きに吹き出される。
【0053】
(2−4−2)上吹きモード
「上下風向」が上吹きモードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32を回動させて吹出空気の風向を調整し、上吹きモードを実行する。なお、本実施形態では、ユーザは、「運転モード」を冷房、除湿、又は、送風に設定しているときのみ、「上下風向」を上吹きモードに設定可能であるものとする。
【0054】
ここで、コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。そして、上吹きモードでは、このコアンダ効果が利用されており、吹出空気をコアンダフラップ32の外側面32aに沿ったコアンダ気流にしている。
【0055】
ところで、コアンダフラップ32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせるためには、水平フラップ31によって変更された吹出空気の風向がコアンダフラップ32に向かう必要がある。そして、水平フラップ31及びコアンダフラップ32が離れすぎていると、コアンダフラップ32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせることができない。このため、コアンダフラップ32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせるためには、水平フラップ31とコアンダフラップ32とが所定の開き角度以下になる必要がある。したがって、上吹きモードでは、水平フラップ31とコアンダフラップ32との成す角度が所定の開き角度以下の範囲内となるように、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の角度(姿勢)を設定し、上記の関係が成立するようにしている。
【0056】
そして、本実施形態の上吹きモードでは、風向制御部61は、水平フラップ31に水平吹き姿勢を採らせるとともに、コアンダフラップ32に上吹き姿勢を採らせる。具体的には、風向制御部61は、まず、水平フラップ31の内側面31bが略水平になるまで水平フラップ31を回動させる。次に、風向制御部61は、コアンダフラップ32の外側面32aが前方上向きになるまでコアンダフラップ32を回動させる(図3B参照)。これにより、水平フラップ31で略水平方向の風向に調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダフラップ32の外側面32aに付着した流れとなり、外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。したがって、水平フラップ31の前方端E1における接線L1方向が水平方向であっても、コアンダフラップ32の前方端E2における接線L2方向が斜め上方向であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダフラップ32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。そして、天井方向に吹き出された吹出空気は、コアンダ効果により、室内の天井面に沿った気流になり、天井面、空調室内機10の設置されている壁面に対向する壁面、床面の順に室内全体を循環する循環気流が形成される。
【0057】
(2−4−3)下吹きモード
「上下風向」が下吹きモードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32を回動させて吹出空気の風向を調整し、下吹きモードを実行する。なお、下吹きモードは、水平フラップ31の姿勢がスクロールの終端Fの接線L0よりも下向きになる場合に実行されるモードであって、風向制御部61は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32に下吹き姿勢を採らせる。具体的には、風向制御部61は、まず、水平フラップ31の内側面31bが下向きなるまで水平フラップ31を回動させる。次に、風向制御部61は、コアンダフラップ32の外側面32aが下向きになるまでコアンダフラップ32を回動させる(図3D参照)。これにより、吹出空気は、水平フラップ31とコアンダフラップ32との間を通過し、下向きに、すなわち、床面に向かって吹き出されて、室内の床面へと向かう。
【0058】
(2−4−4)自然風向モード
自然風向モードは、いわゆるオートルーバー機能によって風向を調整するモードであって、吹出空気を人体に当てる動作と当てない動作との繰り返し手段として利用される。
【0059】
そして、「上下風向」が自然風向モードに設定されると、風向制御部61は、水平フラップ31及びコアンダフラップ32を回動させて吹出空気の風向を調整し、自然風向モードを実行する。
【0060】
なお、本実施形態の自然風向モードでは、突然に風が人体に当たるような自然界の風の形態に近づけるために、コアンダ気流を利用している。より詳しくは、自然風向モードでは、水平フラップ31及び/又はコアンダフラップ32が、それぞれ不規則な周期でスイングし、コアンダ気流を発生させたり、コアンダ気流を発生させずに水平フラップ31の内側面31bに沿った気流にしたりする。これにより、コアンダ気流の発生と消滅とが不規則に繰り返されることで、人体に突然当たる風が作られる。なお、本実施形態では、ユーザは、「運転モード」を冷房に設定しているときのみ、「上下風向」を自然風向モードに設定可能であるものとする。
【0061】
(2−4−5)風向自動モード
風向自動モードは、吹出空気の風向を自動的に調整するモードであって、設定されている「運転モード」に応じて風向が自動的に切り替えられる。
【0062】
そして、「上下風向」が風向自動モードに設定されると、風向制御部61は、設定されている「運転モード」に応じて、上吹きモード、下吹きモード及び自然風向モードから所定の上下風向モードを選択し、選択した上下風向モードを実行する。
【0063】
なお、本実施形態では、ユーザは、「運転モード」を送風に設定しているとき以外であれば、「上下風向」を風向自動モードに設定可能であるものとする。また、本実施形態では、「運転モード」が加湿に設定されている場合には、「上下風向」が風向自動モードに設定されていても、上吹きモードのみが実行されるものとする。
【0064】
例えば、「運転モード」が冷房や除湿に設定されている場合には、風向制御部61は、上吹きモード及び自然風向モードを選択する。そして、風向制御部61は、所定の条件が満たされた場合に、上吹きモードと自然風向モードとを切り替える。したがって、「運転モード」が冷房又は除湿に設定されており、「上下風向」が風向自動モードに設定されている場合には、上吹きモードと自然風向モードとが交互に実行されることになる。
【0065】
また、例えば、「運転モード」が暖房に設定されている場合には、風向制御部61は、上吹きモード及び下吹きモードを選択する。そして、風向制御部61は、所定の条件が満たされた場合に、上吹きモードと下吹きモードとを切り替える。したがって、「運転モード」が暖房に設定されており、「上下風向」が風向自動モードに設定されている場合には、上吹きモードと下吹きモードとが交互に実行されることになる。
【0066】
なお、本実施形態では、「上下風向」が風向自動モードに設定されると、風向制御部61は、「運転モード」が冷房に設定されている場合には、上吹きモードから実行を開始し、「運転モード」が暖房に設定されている場合には、室内温度に応じて下吹きモード又は上吹きモードのいずれかを選択し、選択したモードから実行を開始するものとする。
【0067】
また、下吹きモード或いは自然風向モードと上吹きモードとが切り替えられる所定の条件としては、例えば、室内の環境に関する条件や空気調和機の動作状況に関する条件等が挙げられる。
【0068】
そして、本実施形態では、「運転モード」が冷房の場合には、サーモオフ状態が一定時間(0分以上の所定時間)以上継続しているという第1冷房時切替条件、又は、室内温度と設定温度との差が所定温度以下となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第2冷房時切替条件のいずれかの条件が満たされたときに、上吹きモードから自然風向モードに切り替えられる。また、「運転モード」が冷房の場合には、室内温度と設定温度との差が所定温度以上となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第3冷房時切替条件が満たされたときに、自然風向モードから上吹きモードに切り替えられる。
【0069】
ここで、本実施形態では、「運転モード」が冷房に設定されており、「上下風向」が風向自動モードに設定されている場合には、上吹きモードから実行されるため、冷房時には、循環気流によって室内温度を安定させた後に、ユーザに吹出空気が当たる自然風向モードに切り替えられることになる。これにより、自然風向モードの実行時に吹出空気がユーザに当たっても、ユーザに不快感を与えるおそれを低減することができる。
【0070】
また、「運転モード」が暖房の場合には、室内温度と設定温度との差が所定温度以下となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しており、かつ、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第1暖房時切替条件、又は、サーモオン状態からサーモオフ状態に切り替わってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第2暖房時切替条件のいずれかの条件が満たされたときに、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられる。そして、「運転モード」が暖房の場合には、上吹きモードに切り替えられてから所定時間(デフォルトとして1分)が経過したという第3暖房時切替条件が満たされたときに、上吹きモードから下吹きモードに切り替えられる。
【0071】
なお、第3暖房時切替条件の所定時間は0(0秒を除く)から30分の範囲内で変更可能であるが、循環気流を形成して室内の空気を攪拌するためには、所定時間が30秒以上5分以下の範囲内で設定されていることが好ましい。
【0072】
(3)暖房時における風向自動モード実行時の風向制御
制御装置60がユーザから「上下風向」の設定として風向自動モードの設定指示を受け付けたとき、風向制御部61は、「運転モード」が暖房に設定されている場合には、現在の室内温度と設定温度との差が所定温度以下であるか否かを判断し、判断結果に基づいて上吹きモード又は下吹きモードのいずれかのモードを実行する。
【0073】
現在の室内温度と設定温度との差が所定温度以下である場合には、水平フラップ31に水平吹き姿勢を採らせ、かつ、コアンダフラップ32に上吹き姿勢を採らせることで、上吹きモードを実行する。これにより、吹出空気が室内の天井面に向かって吹き出されることで、室内の天井近傍に溜まっている暖気と床面近傍の空気とを攪拌することができる。
【0074】
一方で、現在の室内温度と設定温度との差が所定温度より大きい場合には、水平フラップ31及びコアンダフラップ32に下吹き姿勢を採らせることで、下吹きモードを実行する。これにより、吹出空気が床面に向かって吹き出されるため、床面近傍の空気を積極的に暖めることができる。
【0075】
そして、風向制御部61は、第1暖房時切替条件又は第2暖房時切替条件のいずれかの条件が満たされたときに、すなわち、室内温度と設定温度との差が所定温度以下となってから一定時間以上経過し、かつ、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下となってから一定時間以上経過したか、或いは、サーモオン状態からサーモオフ状態に切り替わってから一定時間以上経過したときに、上下風向モードを下吹きモードから上吹きモードに切り替え、一時的に上吹きモードを実行する。これにより、水平フラップ31の姿勢が下吹き姿勢から水平吹き姿勢に切り替えられ、かつ、コアンダフラップ32の姿勢が下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられることで、吹出空気が一時的に室内の天井面に向かって吹き出されるため、室内の天井近傍に溜まっている暖気と床面近傍の空気とを攪拌することができる。
【0076】
また、風向制御部61は、第3暖房時切替条件が満たされたとき、すなわち、上吹きモードに切り替えられてから所定時間が経過したときに、上下風向モードを上吹きモードから下吹きモードに切り替え、一定時間以上下吹きモードを実行する。これにより、水平フラップ31の姿勢が水平吹き姿勢から下吹き姿勢に切り替えられ、かつ、コアンダフラップ32の姿勢が上吹き姿勢から下吹き姿勢に切り替えられて、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の姿勢(下吹き姿勢)が一定時間以上維持されるため、吹出空気が一定時間以上床面に向かって吹き出されて、床面近傍の空気を積極的に暖めることができる。
【0077】
このように、風向制御部61は、暖房時に風向自動モードを実行する場合には、水平フラップ31及びコアンダフラップ32に一定時間以上下吹き姿勢を採らせた後に、一時的に水平フラップ31に水平吹き姿勢を採らせ、かつ、コアンダフラップ32に上吹き姿勢を採らせる制御(自動切替制御)を行っている。
【0078】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態では、暖房時に風向自動モードが実行される場合には、一時的に、水平フラップ31の姿勢が下吹き姿勢から水平吹き姿勢に切り替えられ、かつ、コアンダフラップ32の姿勢が下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられている。このため、暖気が一時的に室内の天井面に向かって吹き出されるため、床面近傍の空気と、水平フラップ31及びコアンダフラップ32が下吹き姿勢を採っていたときに室内の天井近傍に溜また暖気とを攪拌することができる。このように、室内全体の空気を攪拌することで、暖房時における室内の温度ムラを解消することができている。
【0079】
また、本実施形態では、一定時間以上、水平フラップ31及びコアンダフラップ32が下吹き姿勢を採ることで、一定時間以上暖気が室内の床面に向かって吹き出されるため、室内の空気が攪拌される前に、室内の床面近傍の空気を積極的に暖めることができている。
【0080】
(4−2)
本実施形態では、水平フラップ31に水平吹き姿勢を採らせ、コアンダフラップ32に上吹き姿勢を採らせることで、吹出空気を、コアンダフラップ32の外側面32aに沿ったコアンダ気流にして、天井面へと誘導している。この空調室内機10では、水平フラップ31及びコアンダフラップ32を利用して、吹出空気を室内の天井面に向かって吹き出させることで、循環気流を形成することができている。
【0081】
(4−3)
暖房時に吹出空気が天井面に向かって吹き出され続けると、床面近傍の空気が積極的に暖められないために、床面近傍の空気の温度が下がってしまい、ユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0082】
そこで、本実施形態では、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられてから所定時間(設定変更されていなければ、1分)が経過すると、上吹きモードから下吹きモードに切り替えられる。言い換えると、所定時間だけ継続して、吹出空気を天井面に向かって吹き出させている。そして、所定時間は、0(0秒を除く)から30分の範囲内で変更可能である。すなわち、この空調室内機10では、暖房時に風向自動モードが実行される場合には、水平フラップ31の姿勢が水平吹き姿勢を採っており、かつ、コアンダフラップ32が上吹き姿勢を採っている時間は、0秒より長く、30分以下である。このように、吹出空気が天井面に向かって吹き出される時間が最大でも30分以下であるため、室内の床面近傍の空気が積極的に暖められないことで、床面近傍の空気の温度が下がりすぎるおそれを低減することができている。
【0083】
(4−4)
本実施形態では、室内温度と設定温度との差が所定温度以下となってから一定時間以上経過しており、かつ、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下となってから一定時間以上経過しているという第1暖房時切替条件、又は、サーモオン状態からサーモオフ状態に切り替わってから一定時間以上経過しているという第2暖房時切替条件のいずれかの条件が満たされたとき、すなわち、室内の温度が安定した後に、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられて、吹出空気が天井面に向かって吹き出されている。したがって、室内の温度が安定しなければ、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられないため、床面近傍の空気の温度が上がっていないにもかかわらず、床面近傍の空気が積極的に暖められなくなるおそれを低減することができている。
【0084】
(4−5)
吹出空気の温度が高い状態で上吹きモードを実行すると、吹出口15から吹き出された暖気がそのまま天井に溜まってしまうおそれがある。
【0085】
そこで、本実施形態では、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下となってから一定時間以上経過している場合、又は、サーモオン状態からサーモオフ状態に切り替わってから一定時間以上経過している場合に、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられる。このため、上吹きモードが実行されているときの吹出空気の温度は、下吹きモードが実行されているときの吹出空気の温度よりも低くなる。したがって、この空調室内機10では、天井面に向かって吹き出される吹出空気の温度が、床面に向かって吹き出される吹出空気の温度よりも低いため、天井近傍に暖気が溜まるおそれを低減することができている。
【0086】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態では、吹出空気の風向を循環気流が形成される風向にするために、水平フラップ31とコアンダフラップ32とが利用されている。しかしながら、吹出空気の風向を循環気流が形成される風向にすることができれば、空調室内機10の構成はこれに限定されない。例えば、水平フラップ31だけで、吹出空気の風向を循環気流が形成される風向にすることができるのであれば、空調室内機10がコアンダフラップ32を備えていなくてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、上吹きモード実行時の水平フラップ31の姿勢及びコアンダフラップ32の姿勢は、予め設定されている。これに代えて、水平フラップ31とコアンダフラップ32との成す角度が所定の開き角度以下の範囲内であれば、水平フラップ31の姿勢及びコアンダフラップ32の姿勢を変更可能であってもよい。これにより、空調室内機10が設置されている室内の形状や天井の障害物等に応じた循環気流を形成することができる。
【0088】
さらに、上吹きモード実行時の水平フラップ31の姿勢及びコアンダフラップ32の姿勢が、運転モードに応じて異なっていてもよく、例えば、リモートコントローラ80により変更可能であってもよい。
【0089】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、吹出空気を天井面に向かって吹き出させる上吹きモード実行時には、風量制御が行われていない。しかしながら、吹出空気を天井面に向かって吹き出させたとしても、吹出空気の風量が少ない場合には、吹出空気が室内の隅まで届かず、室内全体を循環する循環気流が形成できないことがある。
【0090】
そこで、上下風向モードが上吹きモードに切り替えられると、循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように風量が調整されてもよい。
【0091】
例えば、図5に示すように、制御装置60が、風向制御部61の他に、室内ファン14の回転数を制御することで吹出空気の風量を調整する風量制御部162を備えている場合について説明する。なお、本変形例に係る空調室内機10の構成は、制御装置60が風量制御部162を備えていること以外は上記実施形態と同様の構成であるため、以下では風量制御部162についてのみ説明する。
【0092】
風量制御部162は、ユーザによるリモートコントローラ80を介した「風量」の設定に応じた風量となるように、決定した風量値に応じて室内ファン14の動作制御を行う。なお、「風量」の設定とは、吹出空気の風量を設定することであり、本変形例では、ユーザは、「風量」として、風量固定及び風量自動のいずれかを選択し、設定することができる。
【0093】
「風量」が風量固定に設定されると、風量制御部162は、設定された所定風量に対応する設定値に風量値を決定し、決定した風量値に対応する回転数となるように室内ファン14を制御する。また、風量固定では、所定風量として、風量の大きい順に、風量H、風量M、風量Lを選択可能であり、風量制御部162は、選択され設定された所定風量に対応する設定値に風量値を決定する。
【0094】
また、「風量」が風量自動に設定されると、風量制御部162は、室内の環境に応じて、風量H、風量M又は風量Lのいずれかの風量に対応する設定値を選択し、選択した設定値に風量値を決定する。例えば、室内温度と設定温度との差が大きい場合には、風量制御部162は、風量Hに対応する設定値を選択し、室内温度と設定温度との差が小さくなるに従って、風量M、風量Lに対応する設定値を選択する。
【0095】
さらに、風量制御部162は、風向制御部61によって上下風向モードが上吹きモードに切り替えられると、循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように、風量値を決定する。なお、ユーザが「上下風向」を上吹きモード又は風向自動モードに設定している場合に、風向制御部61によって上下風向モードが上吹きモードに切り替えられる。また、本変形例における循環気流を形成するために必要な最低風量に対応する設定値は、風量Mに対応する設定値と等しいものとする。
【0096】
そして、「風量」が風量Lに設定されている場合に、上下風向モードが上吹きモードに切り替わると、風量制御部162は、風量Mに対応する設定値以上の値となるように、風量Lに対応する設定値に補正値を加算して、風量値を決定する。
【0097】
なお、暖房時に風向自動モードが実行される場合、すなわち、ユーザが「運転モード」を暖房に設定し、「上下風向」を風向自動モードに設定している場合であって、「風量」を風量Lに設定している場合には、上下風向モードが下吹きモードから上吹きモードに切り替わると、風量制御部162は、風量Lに対応する設定値に補正値を加算して風量値を決定し、風量を調整する。一方で、ユーザが「運転モード」を暖房に設定し、「上下風向」を風向自動モードに設定し、「風量」を風量Lに設定している場合に、上下風向モードが上吹きモードから下吹きモードに切り替わると、風量制御部162は、ユーザによって設定された「風量」である風量Lに対応する設定値を選択し、選択した設定値に風量値を決定して、風量を調整する。
【0098】
これにより、ユーザによって「風量」が風量Lに設定されても、上吹きモードが実行されている間は、風量M以上の風量に調整されるため、循環気流を形成するために必要な最低風量を確保することができるとともに、下吹きモードが実行されている間は、ユーザによって設定された風量(風量L)に調整することができる。
【0099】
また、「風量」が風量自動に設定されている場合には、風量制御部162は、上下風向モードが上吹きモードに切り替えられると、室内温度及び設定温度に応じて、風量H又は風量Mのいずれかの風量に対応する設定値を選択し、選択した設定値に風量値を決定する。
【0100】
なお、暖房時に風向自動モードが実行される場合、すなわち、ユーザが「運転モード」を暖房に設定し、「上下風向」を風向自動モードに設定している場合であって、「風量」を風量自動に設定している場合には、上下風向モードが下吹きモードから上吹きモードに切り替わると、風量制御部162は、室内温度及び設定温度に応じて、風量H又は風量Mのいずれかの風量に対応する設定値を選択し、選択した設定値に風量値を決定して、風量を調整する。一方で、ユーザが「運転モード」を暖房に設定し、「上下風向」を風向自動モードに設定し、「風量」を風量自動に設定している場合に、上下風向モードが上吹きモードから下吹きモードに切り替わると、風量制御部162は、室内温度及び設定温度に応じて、風量H、風量M又は風量Lに対応する設定値を選択し、選択した設定値に風量値を決定して、風量を調整する。
【0101】
これにより、上吹きモードが実行されている間は、風量M以上の風量に調整されるため、循環気流を形成するために必要な最低風量を確保することができるとともに、下吹きモードが実行されている間は、室内温度及び設定温度に応じた所定風量(風量H、風量M又は風量L)に調整することができる。
【0102】
このように、上下風向モードが上吹きモードに切り替えられると、循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように風量が調整されるため、風量が不足することによって循環気流が形成できないおそれを低減することができる。
【0103】
さらに、風量が大きくなると吹出空気の温度が下がるため、上吹きモードの実行時に風量が大きくなるように調整された場合には、下吹きモードの実行時よりも吹出空気の温度が下がることになる。この場合、天井面に向かって吹き出される吹出空気の温度が、床面に向かって吹き出される吹出空気の温度よりも低くなるため、天井近傍に暖気が溜まるおそれを更に低減することができる。
【0104】
なお、循環気流を形成するための最低風量が確保されるように風量が調整されるタイミングは、下吹きモードから上吹きモードに切り替わっている時、すなわち、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の回動と同時であってもよく、下吹きモードから上吹きモードに切り替わった後、すなわち、水平フラップ31及びコアンダフラップ32の回動が完了した後であってもよい。なお、下吹きモードから上吹きモードに切り替わっている時に風量が調整されると、吹出空気がユーザに吹き付ける可能性があるため、風量が調整されるタイミングは、下吹きモードから上吹きモードに切り替わった後の方が好ましい。
【0105】
また、本変形例では、サーモオン状態であるかサーモオフ状態であるかにかかわらず、上下風向モードが上吹きモードに切り替わると、循環気流を形成するために必要な最低風量が確保されるように風量が調整される。これにより、サーモオフ状態であっても循環気流を形成することができる。
【0106】
(5−3)変形例C
上記実施形態では、「運転モード」が暖房の場合には、室内温度と設定温度との差が所定温度以下となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しており、かつ、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下となってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第1暖房時切替条件、又は、サーモオン状態からサーモオフ状態に切り替わってから一定時間(0分以上の所定時間)以上経過しているという第2暖房時切替条件のいずれかの条件が満たされたときに、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられ、上吹きモードに切り替えられてから所定時間(デフォルトとして1分)が経過したという第3暖房時切替条件が満たされたときに、上吹きモードから下吹きモードに切り替えられている。
【0107】
ところで、暖房時の室内温度は、外気の影響を受けて変動することがある。例えば、外気温度が低い場合には、外気の影響で室内温度が低下しやすくなる。また、暖気は室内の天井近傍に溜まる性質があるため、外気温度が低い場合には、特に床面近傍の空気の温度が低下しやすくなる。このため、外気温度が低い場合に、室内の温度ムラを解消するために吹出空気が天井面に向けて吹き出されると、吹出空気によって室内の床面近傍の空気が積極的に暖められないことで、室内の床面近傍の空気の温度が急速に低下して、室内に居るユーザの快適性を損なうおそれがある。
【0108】
そこで、上記実施形態の暖房時切替条件に、外気温度に関する条件が更に含まれていてもよい。
【0109】
例えば、第1暖房時切替条件及び第2暖房時切替条件に外気温度が所定温度よりも高いという条件が含まれている場合には、外気温度が所定温度以下であれば、第1暖房時切替条件及び第2暖房時切替条件のいずれの条件も満たさないことになり、「上下風向」が風向自動モードに設定されていても、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられない。この結果、水平フラップ31及びコアンダフラップ32が下吹き姿勢を採り続けるため、吹出空気によって床面近傍の空気が積極的に暖められ続けることで、外気の影響で室内の床面付近の温度が急激に下がるおそれを低減することができる。
【0110】
また、例えば、第3暖房時切替条件の所定時間が外気温度に応じて段階的に異なっており、外気温度が低いほど所定時間が短くなるように設定されている場合には、下吹きモードから上吹きモードに切り替わったとしても、外気温度が低いほど上吹きモードの実行されている時間が短くなる。この結果、吹出空気によって床面近傍の空気が積極的に暖められない時間を減らすことができ、外気の影響で室内の床面付近の温度が急激に下がるおそれを低減することができる。
【0111】
このように、外気温度に応じて水平フラップ31及びコアンダフラップ32の姿勢が切り替えられることで、室内温度が外気温度の影響を受けて変動するような状況であっても、ユーザの快適性を損なうおそれを低減することができる。
【0112】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、第1暖房時切替条件、又は、第2暖房時切替条件のいずれかの条件が満たされたときに、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられている。
【0113】
これに代えて、所定時間毎に、下吹きモードから上吹きモードに切り替えられてもよい。この場合、水平フラップ31及びコアンダフラップ32が下吹き姿勢を採っている状態が所定時間継続すると、水平フラップ31の姿勢が下吹き姿勢から水平吹き姿勢に切り替えられ、コアンダフラップ32の姿勢が下吹き姿勢から上吹き姿勢に切り替えられるため、所定時間毎に、吹出空気を天井面に向かって吹き出させることができる。
【0114】
これによって、定期的に室内全体の空気を攪拌することができるため、室内の温度ムラを解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、暖房時における室内の温度ムラを解消することができる空調室内機に関する発明であり、暖房を行う空調室内機への適用が有効である。
【符号の説明】
【0116】
10 空調室内機
14 室内ファン(ファン)
15 吹出口
31 水平フラップ(フラップ/第1フラップ)
32 コアンダフラップ(フラップ/第2フラップ)
32a 外側面(下面)
60 制御装置(制御部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】特開2009−58220号公報
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5