(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<感放射線性組成物>
本発明の感放射線性組成物は、[A]化合物及び[B]重合体を含有する。また、[C]溶媒を好適成分として含有する。さらに、当該感放射線性組成物は、所期の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。
【0028】
<[A]化合物>
[A]化合物は、上記式(1)で示される化合物である。[A]化合物は、露光により酸を発生する感放射線性酸発生剤である。[A]化合物は、溶媒に対する溶解度が高く、また沸点が高いため、フォトリソグラフィー工程中に揮発し難く、酸発生剤として十分にその効果を発揮することができる。さらに[A]化合物はかさ高い構造であり、かつ極性基を有しているため、レジスト膜において発生する酸の拡散が抑制される。その結果、[A]化合物を含有する感放射線性組成物によれば、解像度に優れ、ナノエッジラフネスの抑制性に優れる良好なレジストパターンを得ることができる。
【0029】
上記式(1)中、R
1は、極性基を有する基である。nは、1〜4の整数である。R
1が複数の場合、複数のR
1は、同一でも異なっていてもよく少なくとも一対のR
1が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。Aは、(n+1)価の脂環式炭化水素基である。M
+は、1価のオニウムカチオンである。
【0030】
上記Aが表す(n+1)価の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基であることが好ましく、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等の単環式炭化水素基、ノルボルナン、ノルボルネン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン等の多環式炭化水素基から(n+1)個の水素原子を除いた構造を有する基等を挙げることができる。
【0031】
上記R
1における極性基としては、例えば、エステル基、カルボキシル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基、スルフィド基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記R
1が表す極性基を有する基としては、例えば炭素数1〜10の鎖状炭化水素基又は炭素数5〜20の脂環式炭化水素基の有する水素原子の一部が上記極性基で置換された基、R−R’−X−*(*は、Aと結合する部位を示す。)等が挙げられる。このRは炭素数1〜10の鎖状炭化水素基又は炭素数5〜20の脂環式炭化水素基である。R’は、上記極性基である。Xは、単結合、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。
R
1が有する極性基の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよいが、1つであることが好ましい。また、上記式(1)で示される化合物中に含まれる極性基を有するR
1の数として好ましくは1〜4つであり、より好ましくは2〜4つである。
【0032】
また、上記M
+の1価のオニウムカチオンとしては、例えば、O、S、Se、N、P、As、Sb、Cl、Br、I等のオニウムカチオンが挙げられる。これらのなかでも、S及びIの各オニウムカチオンが好ましい。
【0033】
具体的なスルホニウムカチオン(Sのオニウムカチオン)としては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。また、具体的なヨードニウムカチオン(Iのオニウムカチオン)としては、例えば下記式(3)で表されるものが挙げられる。
【0035】
上記式(2)中、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。但し、R
10、R
11及びR
12のいずれか2つが互いに結合して、それぞれが結合する硫黄原子と共に環状構造を形成していてもよい。
【0037】
上記式(3)中、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。但し、R
13及びR
14が互いに結合して、それぞれが結合するヨウ素原子と共に環状構造を形成していてもよい。
【0038】
上記R
10〜R
12における炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、アルキルチオ基、芳香族炭化水素基、アルケニル基、アルキルカルボキシル基、アシル基、ヘテロ原子(例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等)を含むアルキル基、脂環式炭化水素基等の有機基等が挙げられる。さらに、炭化水素基の同一炭素上の2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたケト基を例示することができる。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していても良い。
【0039】
上記R
10〜R
12における炭素数6〜18の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記アルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0040】
上記式(2)で表されるオニウムカチオンのなかでも、下記式(2−1)又は(2−2)で表されるオニウムカチオンが好ましい。
【0042】
上記式(2−1)中、R
15〜R
17は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
20、又は−SO
2−R
21である。但し、R
15〜R
17のうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。また、R
15〜R
17が複数存在する場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。さらに、上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
R
20及びR
21は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数5〜25の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
q1〜q3は、それぞれ独立して、0〜5の整数である。
【0043】
上記式(2−2)中、R
18は水素原子、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜8の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。但し、R
18が複数ある場合、それぞれのR
18は同一でも異なっていてもよく、複数のR
18が互いに結合して環を形成していてもよい。
R
19は水素原子、炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜7の芳香族炭化水素基である。上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。但し、R
18が複数ある場合、それぞれのR
18は同一でも異なっていてもよく、複数のR
18が互いに結合して環を形成していてもよい。
q4は0〜7の整数であり、q5は0〜6の整数であり、q6は0〜3の整数である。
【0044】
上記R
15〜R
17で表される炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基が有してもよい置換基としては、上記R
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0045】
上記R
15〜R
17で表される炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0046】
上記R
20及びR
21で表される炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
上記R
20及びR
21で表される炭素数5〜25の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボニル基等が挙げられる。
【0048】
上記R
20及びR
21で表される炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0049】
上記R
18で表される炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
上記R
18で表される炭素数6〜8の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0051】
上記R
19で表される炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基等が挙げられる。
【0052】
上記R
19で表される炭素数6〜7の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0053】
以上例示した上記式(2−1)及び(2−2)におけるアルキル基及び芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記式(2)におけるR
10〜R
12のアルキル基が有してもよい置換基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0054】
上記式(2−1)及び(2−2)で表されるスルホニウムカチオンのなかでも、下記式(i−1)〜(i−13)で表されるものが好ましい。これらのうち、下記式(i−1)、(i−6)〜(i−13)で表されるものがより好ましい。
【0057】
上記式(3)で表されるヨードニウムカチオンにおいて、上記R
13及びR
14で表される炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0058】
上記R
13及びR
14で表される炭素数6〜18の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基等が挙げられる。
【0059】
以上例示した上記式(3)におけるアルキル基及び芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0060】
上記式(3)で表されるヨードニウムカチオンのなかでも、下記式(3−1)で表されるオニウムカチオンが好ましい。
【0062】
上記式(3−1)中、R
22及びR
23は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。q7及びq8は、それぞれ独立して、0〜5の整数である。R
22及びR
23が複数ある場合、複数のR
22及びR
23はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R
22及びR
23のうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0063】
上記R
22及びR
23で表される炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0064】
上記R
22及びR
23で表される炭素数6〜12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0065】
以上例示した上記式(3−1)におけるアルキル基及び芳香族炭化水素基は、置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のもの有していてもよい。
【0066】
上記式(3−1)で表されるヨードニウムカチオンのなかでも、下記式(ii−1)〜(ii−3)で表されるものが好ましい。これらのうち(ii−1)又は(ii−2)で表されるものがより好ましい。
【0068】
[A]化合物においてM
+で表される1価のオニウムカチオンは、例えば、Advances in Polymer Science,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
【0069】
本発明の感放射線性組成物が含有する[A]化合物は、露光又は加熱により1価のオニウムカチオン(M
+)を解離し、酸を発生する。具体的には、下記式(1a)で表されるスルホン酸を発生するものであり、好ましくは下記式(1−A−1a)又は下記式(1−B−1a)で表されるスルホン酸を発生するものである。
【0070】
【化15】
(式(1a)中、R
1及びAは上記式(1)と同義である。)
【0071】
【化16】
(式(1−A−1a)中、R
2及びR
3は上記式(1−A−1)と同義である。式(1−B−1a)中、R
4及びR
6は上記式(1−B−1)と同義である。)
【0072】
本発明において、上記式(1)で表される[A]化合物は、上記式(1−A)で表される化合物及び上記式(1−B)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0073】
式(1−A)及び式(1−B)中、R
1及びM
+は、上記式(1)と同義である。式(1−A)のM
+と式(1−B)のM
+は、同一でも異なっていてもよい。式(1−A)のR
1と式(1−B)のR
1は、同一でも異なっていてもよい。m
1は、0又は1である。m
2は、0〜2の整数である。
【0074】
上記式(1−A)及び上記式(1−B)のR
1としては、上記式(1)のR
1として例示したものと同様の基を挙げることができる。また、上記M
+としては、上記式(1)のM
+として例示したものと同様の1価のオニウムカチオンを挙げることができる。
【0075】
また、上記式(1−A)で表される化合物が下記式(1−A−1)で表される化合物であり、上記式(1−B)で表される化合物が下記式(1−B−1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0076】
式(1−A−1)及び式(1−B−1)中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は炭素数4〜30の複素環基である。上記直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基の炭素−炭素間に、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基又はスルフィド基を有していてもよい。また、上記炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び複素環基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。M
+は上記式(1)と同義である。
【0077】
上記R
2、R
3、R
4及びR
5で表される炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−エチルヘキシル基、及びn−ドデシル基等が挙げられる。
【0078】
上記炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0079】
上記置換基で置換された炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基としては、例えば、ベンジル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−フルオロプロピル基、トリフルオロアセチルメチル基、トリクロロアセチルメチル基、ペンタフルオロベンゾイルメチル基、アミノメチル基、シクロヘキシルアミノメチル基、ジフェニルホスフィノメチル基、トリメチルシリルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、2−アミノエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシカルボニルメチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、ボルニルメチル基、ノルボルニルメチル基、アダマンチルメチル基、3−ヒドロキシメチル−1−アダマンタンメチル基等が挙げられる。
【0080】
上記R
2、R
3、R
4及びR
5が表す炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ピナニル基、ツヨイル基、カルイル基、カンファニル基等が挙げられる。
【0081】
上記炭素数3〜30の脂環式炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0082】
上記置換基で置換された炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、例えば、4−フルオロシクロヘキシル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、4−メトキシカルボニルシクロヘキシル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基、3−メトキシカルボニル−1−アダマンチル基、3−ヒドロキシカルボニル−1−アダマンチル基等が挙げられる。
【0083】
また、上記直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基において炭素−炭素間にエステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基又はスルフィド基を有しているとは、上記炭化水素基に含まれる炭素−炭素結合の一部が、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基及びスルフィド基から選ばれる少なくとも1つで置換されていることを意味する。
【0084】
上記R
2、R
3、R
4及びR
5が表す炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、及び1−フェナントリル基等が挙げられる。
【0085】
上記炭素数6〜30の芳香族炭化水素基が有してもよい置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0086】
上記置換基で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、例えば、o−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、3,5−ビス(ヒドロキシ)フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、p−ブロモフェニル基、p−クロロフェニル基、及びp−ヨードフェニル基等が挙げられる。
【0087】
上記R
2、R
3、R
4及びR
5が表す炭素数4〜30の複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、単環式又は多環式ラクトンに由来する基等が挙げられる。
単環式又は多環式ラクトンとしては、γ−ブチロラクロン、γ−バレロラクトン、アンゲリカラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−ノナノラクトン、3−メチル−4−オクタノライド(ウイスキーラクトン)、γ−デカノラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカノラクトン、γ−ジャスモラクトン(7−デセノラクトン)、δ−ヘキサノラクトン、4,6,6(4,4,6)−トリメチルテトラヒドロピラン−2−オン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナノラクトン、δ−デカノラクトン、δ−2−デセノラクトン、δ−ウンデカノラクトン、δ−ドデカノラクトン、δ−トリデカノラクトン、δ−テトラデカノラクトン、ラクトスカトン、ε−デカノラクトン、ε−ドデカノラクトン、シクロヘキシルラクトン、ジャスミンラクトン、シスジャスモラクトン、メチルγ−デカノラクトン、下記式(R−1)及び(R−2)で表されるラクトン(点線は結合位置を示す。)等が挙げられる。
【0089】
また、上記複素環基が有してもよい置換基としては、上記式(2)のR
10〜R
12におけるアルキル基が有してもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0090】
上記置換基で置換された炭素数4〜30の複素環基としては、例えば、2−ブロモフリル基、3−メトキシチエニル基等が挙げられる。
【0091】
また、上記M
+としては、上記式(1)のM
+として例示したものと同様の1価のオニウムカチオンを挙げることができる。
【0092】
上記式(1−A−1)及び上記式(1−B−1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1−1)〜(1−10)で表される化合物等が挙げられる。
【0094】
なお、本発明の感放射線性組成物は、他の成分、例えば後述する[B]重合体等に合わせて、後述する[A]化合物以外のその他の感放射線性酸発生剤を併用することができる。
【0095】
また、[A]化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、下記の各反応式に示すように、下記式(X1)や(X2)で表される化合物を、所望のオニウムカチオン(M
+)のハロゲン化物(例えば、M
+Br
−)と水溶液中で反応させることにより合成することができる。
【0098】
上記反応式におけるR
1、R
2、R
3及びM
+は、それぞれ、上記式(1)及び(1−A−1)におけるR
1、R
2、R
3及びM
+と同義である。
【0099】
なお、本発明の感放射線性組成物は、上述の[A]化合物を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0100】
本発明の感放射線性組成物における[A]化合物の含有量は、後述の[B]重合体100質量部に対して、通常0.1〜50質量部であり、1〜40質量部が好ましく、さらに5〜30質量部がより好ましい。[A]化合物の含有量を上記特定の範囲とすることで、当該感放射線性組成物は解像性に優れる。
【0101】
<[B]重合体>
本発明の感放射線性組成物は、[A]化合物に加えて[B]重合体を含有する。[B]重合体は酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)を有する重合体である。当該感放射線性組成物は、酸解離性基を有する[B]重合体を含有することで、露光により[A]化合物から発生する酸を触媒として酸解離性基が解離し、現像液に対する溶解速度が変化し、レジストパターンを形成することができる。
【0102】
本発明の[B]重合体は、上記式(b−1)で表される構造単位(以下「構造単位(I)」ともいう)及び(b−2)で表される構造単位(以下「構造単位(II)」ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位をさらに有することが好ましい。またその他の構造単位(IV)を有していてもよい。
【0103】
<構造単位(I)>
上記式(b−1)中、R
6は、水素原子又はメチル基である。R
7は、単結合、−CO−O−、又は−CO−NH−である。R
8は、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、又は炭素数2〜12のアシロキシ基である。Rは、水酸基又は水酸基を含む基である。pは、0又は1である。q及びrは、それぞれ独立して0〜3の整数である。但し、pが0の場合、q+r≦5の条件を満たす。R
8が複数の場合、複数のR
8は、同一でも異なっていてもよい。
式(b−2)中、R
9は、水素原子又はメチル基である。
【0104】
上記R
7としては、ナノエッジラフネスに優れる観点から、−CO−O−が好ましい。
【0105】
上記R
8が表す炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。これらのなかでも、ナノエッジラフネスに優れる観点から、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0106】
上記R
8が表す炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。これらのなかでも、ナノエッジラフネスに優れる観点から、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0107】
上記R
8が表す炭素数2〜12のアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。これらのなかでも、ナノエッジラフネスに優れるため、アセトキシ基が好ましい。
【0108】
上記Rが表す水酸基を含む基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基等が有する水素原子の一部又は全部が水酸基で置換されている基等が挙げられる。なお、上記アルキル基及び脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部は、フッ素原子等の水酸基以外の基で置換されていてもよい。
【0109】
上記炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、上記R
8が表す炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0110】
上記炭素数3〜12の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
【0111】
上記Rが表す水酸基を含む基としては、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部が水酸基で置換されている基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部が水酸基で置換されている基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が有する水素原子の一部が水酸基で置換されており、かつ、残りの全ての水素原子がフッ素原子で置換されている基がさらに好ましい。
【0112】
上記Rとしては、水酸基、及び炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が有する水素原子の一部が水酸基で置換されており、かつ、残りの全ての水素原子がフッ素原子で置換されている基が好ましい。
【0113】
上記pとしては、0であることが好ましい。qとしては、1又は2であることが好ましい。rとしては、0〜2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0114】
上記式(b−1)で表される構造単位としては、下記式で表される構造単位等を挙げることができる。なお、上記式(b−1)で表される構造単位は、[B]重合体に1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0115】
例えば、上記式(b−1)中、R
7が単結合であり、pが0の場合として、下記式(b−1−1)〜(b−1−4)で表される構造単位等が挙げられる。
【0117】
上記式(b−1−1)〜(b−1−4)で表される構造単位は、対応するヒドロキシスチレン誘導体を単量体として用いることにより得ることができる。また、加水分解することによりヒドロキシスチレン誘導体が得られる化合物を単量体として用いることにより得ることもできる。
【0118】
また、上記式(b−1)中、R
7が−CO−O−であり、pが0の場合として、下記式(b−1−5)、(b−1−6)で表される構造単位等が挙げられる。
【0120】
上記構造単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0121】
また、上記式(b−1)中、R
7が−CO−NH−であり、pが0の場合として、下記式(b−1−7)、(b−1−8)で表される構造単位等が挙げられる。
【0123】
上記構造単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等が挙げられる。
【0124】
また、上記式(b−1)中、R
7が−CO−O−であり、pが1の場合として、下記式(b−1−9)、(b−1−10)で表される構造単位等が挙げられる。
【0126】
上記構造単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、5−ヒドロキシナフタレン−1−イルメタクリレート、5−ヒドロキシナフタレン−1−イルアクリレート等が挙げられる。
【0127】
また、上記式(b−1)中、Rが水酸基を含む基である場合として、下記式(b−1−11)、(b−1−12)で表される構造単位等が挙げられる。
【0129】
上記構造単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、対応するスチレン誘導体化合物、加水分解することにより対応するスチレン誘導体が得られる化合物等を用いることができる。
【0130】
<構造単位(II)>
当該感放射線性組成物は、[B]重合体が、上記式(b−2)で表される構造単位(II)を含有することで、ナノエッジラフネスにより優れたレジストパターンを形成することができる。
【0131】
構造単位(II)としては、例えば、下記式(b−2−1)、(b−2−2)で表される構造単位等が挙げられる。なお、構造単位(II)は、[B]重合体に1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0133】
上記式(b−2)で表される構造単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、下記式(M−2−1)、下記式(M−2−2)で表される化合物等が挙げられる。
【0135】
<構造単位(III)>
[B]重合体は、酸解離性基を含む構造単位(III)を有する。構造単位(III)としては、下記式(p−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−1)」ともいう)、及び下記式(p−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−2)」ともいう)のうちの少なくとも一方であることが好ましい。当該感放射線性組成物は、[B]重合体が構造単位(III)として、構造単位(III−1)及び(III−2)のうちの少なくとも一方を有することにより、良好な放射線感度を得ることができる。
【0137】
上記式(p−1)中、R
24は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。R
25〜R
27は、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜22の芳香族炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又はそれから誘導される基である。但し、R
25及びR
26が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基を形成していてもよい。
【0139】
上記式(p−2)において、R
28は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を示す。R
29〜R
31は、それぞれ独立して、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又はそれから誘導される基である。但し、R
29及びR
30が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基を形成していてもよい。
【0140】
上記R
25〜R
27で表される炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0141】
また、この脂環式炭化水素基から誘導される基としては、上記脂環式炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基等で置換された基等が挙げられる。
【0142】
上記R
25〜R
27で表される炭素数6〜22の芳香族炭化水素基としては、下記式(x−1)〜(x−3)等で表される構造に由来する基等が挙げられる。なお、R
25〜R
27が下記式(x−2)に由来するナフチル基である場合、上記式(p−1)の炭素原子(酸素原子に結合している炭素原子)に結合する結合位置は、1位及び2位のいずれであってもよい。また、R
25〜R
27が下記式(x−3)に由来するアントリル基である場合、上記式(p−1)の炭素原子(酸素原子に結合している炭素原子)に結合する結合位置は、1位、2位及び9位のいずれであってもよい。
【0143】
上記芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0145】
上記R
25及びR
26が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子(酸素原子に結合している炭素原子)とともに形成する2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。具体的には、例えば、ノルボルナンジイル基、トリシクロデカンジイル基、テトラシクロドデカンジイル基、アダマンタンジイル基、シクロペンタンジイル基シクロヘキサンジイル基等が挙げられる。
【0146】
上記さらにR
25及びR
26が互いに結合して形成された2価の脂環式炭化水素基から誘導される基としては、上述の2価の脂環式炭化水素基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0147】
構造単位(III−1)としては、下記式(p−1−1)〜(p−1−7)で表される構造単位が好ましく、下記式(p−1−2)、(p−1−3)又は(p−1−4)で表される構造単位がより好ましい。[B]重合体がこれらの構造単位を有すると、当該感放射線性組成物は、ナノエッジラフネスにより優れたレジストパターンを形成することができる。
【0148】
【化31】
(式(p−1−1)〜(p−1−7)中、R
24〜R
27は上記式(p−1)と同義である。)
【0149】
なお、[B]重合体は、構造単位(III−1)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0150】
上記式(p−2)中、R
29〜R
31で表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基、並びにR
29及びR
30が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成してもよい2価の脂環式炭化水素基若しくはそれから誘導される基については、それぞれ、上記式(p−1)のR
25〜R
27で表される炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはそれから誘導される基、並びにR
25及びR
26が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成してもよい2価の脂環式炭化水素基若しくはそれから誘導される基について例示した基と同様の基を挙げることができる。
【0151】
なお、[B]重合体は、構造単位(III−2)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0152】
<構造単位(IV)>
[B]重合体は、上述した構造単位(I)、(II)及び(III)以外に、その他の構造単位として非酸解離性化合物に由来する構造単位(IV)をさらに含有していてもよい。本明細書において非酸解離性化合物とは、酸の作用によって解離する基(酸解離性基)を含有しない化合物をいう。[B]重合体が、構造単位(IV)を含有することで、当該感放射線性組成物は、ナノエッジラフネスにより優れたレジストパターンを形成することができる。
【0153】
構造単位(IV)を与える非酸解離性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、イソボロニルアクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデセニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、トリシクロデカニルアクリレートが好ましい。なお、構造単位(IV)は、[B]重合体に1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0154】
[B]重合体における酸解離性基を有する構造単位(III)の含有割合(特に、構造単位(III−1)及び(III−2)の合計の含有割合)は、[B]重合体に含まれる全ての構造単位の合計を100モル%とした場合に、1モル%以上であることが好ましく、10〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%がさらに好ましい。[B]重合体における構造単位(III)の含有割合を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物は優れた感度を有する。
【0155】
[B]重合体における構造単位(I)及び(II)の含有割合の合計は、[B]重合体に含まれる全ての構造単位の合計を100モル%とした場合に、95モル%以下が好ましく、1〜95モル%がより好ましく、10〜95モル%がさらに好ましく、40〜80モル%が特に好ましい。[B]重合体における構造単位(I)及び(II)の含有割合の合計を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物は、ナノエッジラフネスにより優れたレジスト膜を形成することができる。
【0156】
[B]重合体における構造単位(I)、(II)、及び(III)の含有割合の合計は、[B]重合体に含まれる全ての構造単位の合計を100モル%とした場合に、10モル%以上が好ましく、40〜100モル%がより好ましく、50〜100モル%がさらに好ましい。[B]重合体における構造単位(I)、(II)及び(III)の含有割合の合計を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物はナノエッジラフネスにより優れたレジスト膜を形成することができる。
【0157】
[B]重合体における構造単位(IV)の含有割合は、[B]重合体に含まれる全ての構造単位の合計を100モル%とした場合に、60モル%以下が好ましく、0〜50モル%がより好ましい。[B]重合体における構造単位(IV)の含有割合を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物は、ナノエッジラフネスにより優れたレジスト膜を形成することができる。
【0158】
[B]重合体の合成方法は特に限定されないが、例えば、公知のラジカル重合又はアニオン重合により得ることができる。また、上述の構造単位(I)における側鎖のフェノール部位又はナフトール部位は、得られた[B]重合体を有機溶媒中で塩基又は酸の存在下でアセトキシ基等の加水分解を行うことにより得ることができる。
【0159】
上記ラジカル重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下において、好適成分としての構造単位(I)及び(II)の少なくとも一方を生成するための単量体、構造単位(III)を生成するための単量体、並びに必要に応じて加える上述の構造単位(IV)を生成するための単量体を、攪拌し加熱することにより行うことができる。
【0160】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2’−アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、シアノメチルエチルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルプロピオン酸メチル)、2,2’−アゾビスシアノバレリック酸等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
【0161】
また、重合時には必要に応じて、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、ヨウ素、メルカプタン、スチレンダイマー等の重合助剤を添加することもできる。
【0162】
ラジカル重合における反応温度は特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができるが、例えば、50℃〜200℃とすることができる。特に、アゾ系開始剤やパーオキサイド系開始剤を用いる場合には、開始剤の半減期が10分から30時間程度になる温度が好ましく、開始剤の半減期が30分から10時間程度になる温度であることがさらに好ましい。
【0163】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費される反応時間が好ましく、多くの場合0.5時間〜24時間程度である。
【0164】
上記アニオン重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、アニオン重合開始剤の存在下において、上述の構造単位(III)を与える単量体、上述の構造単位(I)及び(II)の少なくとも一方を与える単量体、並びに必要に応じて(IV)を与える単量体を攪拌し、所定の温度で維持することにより行うことができる。
【0165】
アニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等の有機アルカリ金属が挙げられる。
【0166】
アニオン重合における反応温度は特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができる。特に、アルキルリチウムを開始剤として用いる場合には、−100℃〜50℃であることが好ましく、より好ましくは−78℃〜30℃である。
【0167】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費される反応時間が好ましく、多くの場合0.5時間〜24時間程度である。
【0168】
なお、[B]重合体の合成においては、重合開始剤を用いずに、加熱により重合反応を行うことや、カチオン重合を採用することもできる。
【0169】
[B]重合体の側鎖を加水分解することによって、上述の構造単位(I)における側鎖のフェノール部位又はナフトール部位を導入する場合、上記加水分解反応に用いることのできる酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸及びその水和物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、マロン酸、蓚酸、1,1,1−フルオロ酢酸等の有機酸;硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;ピリジニウムp−トルエンスルホネート、アンモニウムp−トルエンスルホネート、4−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0170】
[B]重合体の側鎖を加水分解することによって、上述の構造単位(I)における側鎖のフェノール部位又はナフトール部位を導入する場合、上記加水分解反応に用いることのできる塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、N−メチル−2−ピロリドン、ピペリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基等が挙げられる。
【0171】
上記重合及び加水分解に用いることのできる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、臭化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。
これらのなかでも、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0172】
[B]重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、3,000〜100,000が好ましく、3,000〜40,000がより好ましく、3,000〜25,000がさらに好ましい。
【0173】
[B]重合体のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2.5であることがさらに好ましい。
【0174】
なお、当該感放射線性組成物は、上述の[B]重合体を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0175】
<[C]溶媒>
当該感放射線性組成物は、[C]溶媒を好適に含有する。[C]溶媒は、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類からなる群より選択される少なくとも1種を全体の70質量%以上含む。[C]溶媒を用いることで、本発明の感放射線性組成物は塗布性を向上させることができる。
【0176】
エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート及びエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0177】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0178】
[C]溶媒は、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類及びプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類以外のその他の溶媒を含んでいてもよい。
【0179】
上記その他の溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル及びプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレグリコールジ−n−プロピルエーテル及びプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0180】
さらに、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル等の乳酸エステル類;ぎ酸n−アミル、ぎ酸i−アミル等のぎ酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類;プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート等のプロピオン酸エステル類;ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類等が挙げられる。これらのその他の溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
溶媒の配合量は、当該感放射線性組成物の全固形分濃度が、1〜70質量%となる量であることが好ましく、1〜15質量%となる量がより好ましく、1〜10質量%となる量がさらに好ましい。この配合量が上記特定範囲であると、当該感放射線性組成物は塗布性に優れ、十分な厚さのレジスト膜を形成することができる。
【0182】
<その他の任意成分>
当該感放射線性組成物は、必須成分である[A]化合物及び[B]重合体、好適成分である[C]溶媒以外に、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有することができる。その他の任意成分としては、[D]酸拡散制御剤、[A]化合物以外のその他の感放射線性酸発生剤、界面活性剤、増感剤、脂肪族添加剤等の各種の添加剤をさらに含有することができる。
【0183】
[[D]酸拡散制御剤]
[D]酸拡散制御剤は、露光により[A]化合物から生じる酸の、レジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有するものである。
【0184】
このような[D]酸拡散制御剤を含有させることにより、得られる感放射線性組成物の貯蔵安定性が向上する。また、当該感放射線性組成物から形成したレジスト膜の解像度がさらに向上するとともに、露光後から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動に起因するレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れる感放射線性組成物が得られる。
【0185】
[D]酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物、感光性塩基性化合物等が挙げられる。
【0186】
上記含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」ともいう)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0187】
【化32】
(式(4)中、各R
41は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はアラルキル基である。上記アルキル基、芳香族炭化水素基及びアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。)
【0188】
上記式(4)で表される含窒素化合物(i)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0189】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。
【0190】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
【0191】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物の他、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0192】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0193】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2’’−ターピリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類の他、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0194】
上記感光性塩基性化合物としては、上述の性質を有する限り特に限定されないが、例えば、下記式(5−1)や(5−2)で表される化合物等が挙げられる。
【0195】
【化33】
(式(5−1)中、R
51〜R
53は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、脂環式炭化水素基、−OSO
2−R
56基、又は−SO
2−R
57基である。但し、R
56及びR
57は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、脂環式炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基である。また、R
51〜R
53のうちの2個以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。A
−は、OH
−、R
58O
−、又はR
58COO
−である。但し、R
58は1価の有機基である。
式(5−2)中、R
54及びR
55は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は、脂環式炭化水素基である。A
−は、OH
−、R
59O
−、又はR
59COO
−である。但し、R
59は1価の有機基である。
但し、上記アルキル基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。)
【0196】
上記式(5−1)のR
51〜R
53で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子等が挙げられる。
上記式(5−1)及び(5−2)のR
51〜R
57で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、このアルキル基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子等)、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基(t−ブトキシカルボニルメチルオキシ基等)等の置換基により置換されていてもよい。
【0197】
上記R
51〜R
57で表される脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数5〜25の脂環式炭化水素基等が挙げられる。具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。なお、この脂環式炭化水素基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、臭素原子等)、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基(t−ブトキシカルボニルメチルオキシ基等)等の置換基により置換されていてもよい。
【0198】
R
56及びR
57で表される芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。なお、この芳香族炭化水素基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アルキル基、及び、ヘテロ原子(例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等)を含む有機基等の置換基により置換されていてもよい。
【0199】
上記式(5−1)及び(5−2)のR
51〜R
55としては、それぞれ、水素原子、メチル基、又はt−ブチル基であることが好ましい。
【0200】
上記式(5−1)及び(5−2)のA
−におけるR
58及びR
59で表される1価の有機基としては、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【0201】
A
−としては、OH
−、CH
3COO
−、下記式(6−1)〜(6−5)で表される化合物が好ましい。
【0203】
上述の感光性塩基性化合物としては、具体的にはトリフェニルスルホニウム化合物(上記式(5−1)で表される化合物)であって、そのアニオン部(A
−)がOH
−、CH
3COO
−、上記式(6−2)、(6−3)又は(6−4)で表される化合物が好ましい。なお、これらの[D]酸拡散制御剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0204】
[D]酸拡散制御剤の含有量は、[B]重合体の100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部がより好ましく、0.005〜5質量部がさらに好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物は、解像性により優れる。
【0205】
[その他の感放射線性酸発生剤]
当該感放射線性組成物は、[A]化合物以外にも、その他の感放射線性酸発生剤(以下、「他の酸発生剤」ともいう。)をさらに含有することができる。他の酸発生剤としては、例えば、[A]化合物を除く、オニウム塩化合物、スルホン酸化合物等が挙げられる。
【0206】
オニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、及びピリジニウム塩等が挙げられる。
具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0207】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロオクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロベンゼンスルホート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウムノナフルオロメタンスルホネート、ビス(p−フルオロフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、(p−フルオロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0208】
トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロベンゼンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウムベンゼンスルホネート、トリス(p−メトキシフェニル)スルホニウム10−カンファースルホネート、トリス(p−フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p−フルオロフェニル)スルホニウムp−トルエンスルホネート、(p−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ブトキシ−1―ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロブタンスルホネート、及び4−ブトキシ−1―ナフチルテトラヒドロチオフェニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0209】
スルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、アルキルスルホン酸イミド、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、及びイミノスルホネート等が挙げられる。具体的には、ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、及び1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート等が挙げられる。
【0210】
これらの他の酸発生剤のなかでも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0211】
トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロブタンスルホネート、及び4−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウム−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが好ましい。なお、これらの他の酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0212】
他の酸発生剤の配合量は、当該感放射線性組成物により形成されるレジスト膜の感度及び現像性を確保する観点から、[B]重合体100質量部に対して、0〜80質量部であることが好ましく、0〜50質量部であることがより好ましい。当該感放射線性組成物における他の酸発生剤の含有量を上記特定範囲とすることで、当該感放射線性組成物は、解像性をより向上させることができる。
【0213】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を有する成分である。
【0214】
[増感剤]
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを[A]化合物に伝達して酸の生成量を増加させる作用を有するものであり、感放射線性組成物のみかけの感度を向上させる効果を有するものである。
【0215】
[脂環族添加剤]
脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を有する成分である。
【0216】
さらに、これらの添加剤以外にも、アルカリ可溶性重合体、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を配合することもできる。
【0217】
<感放射線性組成物の調製方法>
当該感放射線性組成物は、[A]化合物及び[B]重合体、必要に応じて加える[D]酸拡散制御剤、他の酸発生剤、界面活性剤等の添加剤を、前固形分濃度が上記範囲になるように[C]溶剤に均一に溶解して調製することができる。なお、このように調製した後、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することが好ましい。
【0218】
<レジストパターンの形成方法>
当該感放射線性組成物は、レジストパターン形成用に好適に用いられる。具体的には、例えば、当該感放射線性組成物からなる化学増幅型ポジ型レジスト膜においては、露光により[A]化合物から発生した酸の作用によって、[B]重合体中の酸解離性基が脱離し、[B]重合体がアルカリ可溶性となる。即ち、レジスト膜に、アルカリ可溶性部位が生じる。このアルカリ可溶性部位は、レジストの露光部であり、この露光部はアルカリ現像液によって溶解、除去することができる。このようにして所望の形状のポジ型のレジストパターンを形成することができる。以下、具体的に説明する。
【0219】
本発明の感放射線性組成物を用いてレジストパターンを形成するには、先ず、本発明の感放射線性組成物によってレジスト膜を形成する。感放射線性組成物としては、例えば、上述したように、全固形分濃度を調整した後、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過したものを用いることができる。この感放射線性組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等の基板上に塗布することにより、レジスト膜を形成する。その後、場合により、予め70℃〜160℃程度の温度で加熱処理(PB)を行ってもよい。
【0220】
次いで、所定のレジストパターンが形成されるように、このレジスト膜を露光する。この露光に使用することができる放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、EUV(極紫外線、波長13.5nm等)等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等が挙げられる。また、露光量等の露光条件は、感放射線性組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。尚、この露光においては、液浸露光とすることもできる。
【0221】
露光後には、加熱処理(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[B]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、感放射線性組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、30℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜170℃である。
【0222】
本発明においては、感放射線性組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成することもできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト膜上に保護膜を設けることもできる。なお、これらの技術は併用することができる。
【0223】
次いで、露光したレジスト膜を現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも一種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0224】
アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%を超えると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。また、現像液は、pH8〜14であることが好ましく、より好ましくはpH9〜14である。
【0225】
アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0226】
なお、アルカリ性水溶液からなる現像液で現像した後は、水で洗浄して乾燥することもできる。
【0227】
<化合物>
本発明の化合物は、上記式(1)で表される。当該化合物は上記式(1−A)又は(1−B)で表されるものであることが好ましく、上記式(1−A−1)又は(1−B−1)で表されるものであることがより好ましい。当該化合物は、溶媒への溶解性が高く、当該感放射線性組成物における[A]化合物として好適に用いることができる。当該化合物は、かさ高く極性も高いので、感放射線性組成物における酸発生剤として用いた場合には、露光により発生する酸の拡散長が適切に短く制御され、解像度及びパターン形成後のレジスト膜表面の平滑性を向上させることができる。また当該化合物は沸点が高いため、パターン形成工程中に揮発し難く、良好なパターンを形成することができる。なお、当該化合物については、当該感放射線性組成物の必須成分である[A]化合物としての説明をそのまま適用することができる。
【実施例】
【0228】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、本実施例においては、レジスト膜の露光にEB(電子線)及びArFを使用しているが、EUV等の短波長放射線を使用した場合でも、基本的なレジスト特性は類似しており、それらの間に相関性があることも知られている。
【0229】
<感放射線性酸発生剤([A]化合物)の合成>
[実施例1](A−1)の合成
ナスフラスコに下記式(I−1)で表される化合物(I−1)16.4g、下記式(I−2)で表される化合物(I−2)30.0g、パラトルエンスルホン酸1.7g、トルエン200gを混合し、トルエン還流下、8時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧留去し、塩化メチレンを加え、有機層を3wt%NaHCO
3水溶液で3回、次いで水で3回洗浄した。その後、塩化メチレンを減圧留去し、展開溶媒に酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1(体積比)の混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、目的とする下記式(I−3)で表される化合物(I−3)を得た(収率60%)。
ナスフラスコに化合物(I−3)15.0g、NaHSO
313.5g、水50g、メタノール50gを混合し、8時間反応させた。反応終了後、水/メタノールを減圧留去した。得られた固体を水100gに溶解させ、テトラヒドロフラン50gを加え、30分間室温で撹拌し、30分間静置した。二層に分かれた上層のみを回収し、上層の溶媒を減圧留去することで、下記式(I−4)で表される化合物(I−4)を得た(収率70%)。
ナスフラスコに化合物(I−4)5.0g、下記式(I−5)で表される化合物(I−5)3.3g、塩化メチレン100g、水100gを混合し、室温で10時間撹拌した。反応終了後、塩化メチレン層を回収し、水500gで4回洗浄した。その後、塩化メチレン層を回収し、塩化メチレンを減圧留去することにより、目的とする化合物である下記式(A−1)で表される化合物(A−1)を得た(収率80%)。
なお、得られた化合物の構造確認を、
1H−NMR(日本電子社製、型番「JNM−ECA−400型」)で行った。この結果を以下に示す。
1H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d
6、内部標準TMS):δ(ppm)=0.91〜2.50(26.0H)、2.50〜3.50(3.0H)、4.20〜4.70(2.0H)、7.70〜8.30(15.0H)
【0230】
【化35】
【0231】
[実施例2](A−2)の合成
上記実施例1で用いた化合物(I−5)を下記式(I−6)で表される化合物(I−6)に変更した以外は実施例1と同様の方法により下記式(A−2)で表される化合物(A−2)を得た。
【0232】
【化36】
【0233】
[実施例3](A−3)の合成
上記実施例1で用いた化合物(I−2)を下記式(I−7)で表される化合物(I−7)に変更した以外は実施例1と同様にして下記式(A−3)で表される化合物(A−3)を得た。
【0234】
【化37】
【0235】
[実施例4](A−4)の合成
上記実施例1で用いた化合物(I−2)を下記式(I−8)で表される化合物(I−8)に変更し、化合物(I−5)を化合物(I−6)に変更した以外は実施例1と同様にして下記式(A−4)で表される化合物(A−4)を得た。
【0236】
【化38】
【0237】
[実施例5](A−5)の合成
上記実施例1で用いた化合物(I−2)を下記式(I−9)で表される化合物(I−9)に変更した以外は実施例1と同様にして下記式(A−5)で表される化合物(A−5)を得た。
【0238】
【化39】
【0239】
<[B]重合体の合成>
[合成例1]重合体(B−1)の合成
下記式(M−1)で表される化合物(M−1)55g、下記式(M−2)で表される化合物(M−2)45g、アゾビスイソブチロニトリル4g、及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン34g、及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し重合体(B−1)を得た。得られた重合体(B−1)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.1であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)及び化合物(M−2)に由来する構造単位の含有割合(モル%)が65:35の共重合体であった。
【0240】
[合成例2]重合体(B−2)の合成
化合物(M−1)53g、下記式(M−3)で表される化合物(M−3)47g、アゾビスイソブチロニトリル4g、及びt−ドデシルメルカプタン0.2gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル200gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、6時間重合させた。重合後、反応溶液を2,000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。次いで、この重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン37g、及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し、重合体(B−2)を得た。得られた共重合体は、Mwが13,000、Mw/Mnが2.4であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)及び化合物(M−3)に由来する各構造単位の含有割合(モル%)が50:50の共重合体であった。
【0241】
[合成例3]重合体(B−3)の合成
下記式(M−4)で表される化合物(M−4)55g、下記式(M−5)で表される化合物(M−5)45g、及びアゾビスイソブチロニトリル3gを、メチルエチルケトン300gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を78℃に保持して、6時間重合させた。重合後、反応溶液を2,000gのメタノール中に滴下して、共重合体を凝固させた。次いで、この共重合体を300gのメタノールで2回洗浄し、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。得られた重合体(B−3)は、Mwが7,000、Mw/Mnが2.1であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−4)及び化合物(M−5)に由来する各構造単位の含有割合(モル%)が52:47の共重合体であった。
【0242】
[合成例4]重合体(B−4)の合成
下記式(M−1)で表される化合物(M−1)20g、下記式(M−3)で表される化合物(M−3)38g、下記式(M−7)で表される化合物(M−7)42g、アゾビスイソブチロニトリル5g、及びt−ドデシルメルカプタン0.2gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン14g、及び水4gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し重合体(B−4)を得た。得られた重合体(B−4)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.2であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−3)及び化合物(M−7)に由来する構造単位の含有割合(モル%)が25:55:20の共重合体であった。
【0243】
[合成例5]重合体(B−5)の合成
下記式(M−1)で表される化合物(M−1)34g、下記式(M−6)で表される化合物(M−6)40g、下記式(M−8)で表される化合物(M−8)26g、アゾビスイソブチロニトリル8g、及びt−ドデシルメルカプタン3gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン26g、及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し重合体(B−5)を得た。得られた重合体(B−5)は、Mwが5,000、Mw/Mnが2.0であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−6)及び化合物(M−8)に由来する構造単位の含有割合(モル%)が45:35:20の共重合体であった。
【0244】
[合成例6]重合体(B−6)の合成
下記式(M−1)で表される化合物(M−1)23g、下記式(M−2)で表される化合物(M−2)60g、下記式(M−9)で表される化合物(M−9)17g、アゾビスイソブチロニトリル4g、及びt−ドデシルメルカプタン0.2gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1,000gのn−ヘキサン中に滴下して、共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、さらに、メタノール150g、トリエチルアミン16g、及び水4gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2,000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥し重合体(B−6)を得た。得られた重合体(B−6)は、Mwが10,000、Mw/Mnが2.1であり、
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−2)及び化合物(M−9)に由来する構造単位の含有割合(モル%)が30:50:20の共重合体であった。
【0245】
【化40】
【0246】
なお、本実施例における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、東ソー社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量:1.0ミリリットル/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。さらに、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。また、
13C−NMR分析は、日本電子社製の型式「JNM−EX270」を用いて測定した。
【0247】
<感放射線性組成物の調製>
[実施例6]
表1に示すように、上記合成例で調製した重合体(B−1)100質量部、化合物(A−1)27質量部、溶媒(C−1/C−2)1,400質量部/3,300質量部、及び酸拡散制御剤(D−1)2質量部を混合し、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性組成物溶液を調製した。
【0248】
[実施例7〜21及び比較例1〜3]
表1に示す種類及び仕込み量の[B]重合体、[A]化合物、[C]溶媒、及び[D]酸拡散制御剤を混合し、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、実施例7〜21及び比較例1〜3の各感放射線性組成物を調製した。
【0249】
【表1】
【0250】
表1における[A]成分、[C]成分及び[D]酸拡散制御剤の詳細をまとめて以下に示す。
【0251】
<[A]成分>
下記式(A−1)〜(A−5)、(a−1)及び(a−2)で表わされる化合物
【0252】
【化41】
【0253】
<[C]成分>
(C−1):乳酸エチル
(C−2):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(C−3):シクロヘキサノン
【0254】
<[D]酸拡散制御剤>
(D−1):トリ−n−オクチルアミン
(D−2):下記式(D−2)で表される化合物
(D−3):N−tert−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール
(D−4):下記式(D−4)で表される化合物
【0255】
【化42】
【0256】
<評価(EB露光評価)>
東京エレクトロン社製の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハー上に感放射線性組成物溶液(実施例6〜14、18〜21及び比較例1〜2の各感放射線性組成物)をスピンコートした後、表2に示す条件でPB(加熱処理)を行い、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm
2)を用いてレジスト膜に電子線を照射した。電子線の照射後、表2に示す条件でPEBを行った。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。
このようにして形成されたレジストパターンについて各評価試験を行い、その評価結果を表2に示した。
【0257】
[感度(L/S)]
線幅130nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が130nmのスペース部(即ち、溝)と、からなるパターン(いわゆる、ライン・アンド・スペースパターン(1L1S))を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量により感度(μC/cm
2)を評価した。
【0258】
[ナノエッジラフネス(i)]
設計線幅130nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)のラインパターンを、半導体用走査型電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、商品名「S−9220」、日立製作所社製)にて観察した。ライン線幅(nm)を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をナノエッジラフネス(nm)とした。ナノエッジラフネスの値が低い程、パターンの直線性が優れていることを示す。
【0259】
[解像度(L/S)]
ライン・アンド・スペースパターン(1L1S)について、上記最適露光量により解像されるラインパターンの最小線幅(nm)を解像度とした。
【0260】
<評価(ArF露光評価)>
下層反射防止膜(「ARC66」、日産化学社製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、感放射線性組成物溶液(実施例15〜17及び比較例3の各感放射線性組成物)を用いて、膜厚75nmの被膜を形成し、表3に示す条件でPBを行った。次に、形成した被膜上に、WO2008/047678号の実施例1に記載の上層膜形成用組成物をスピンコートし、PB(90℃、60秒)を行うことにより膜厚90nmの塗膜を形成した。この被膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(「NSR S610C」、NIKON社製)を用い、NA=1.3、ratio=0.800、Annularの条件により、マスクパターンを介して縮小投影露光を行った。露光後、表3に示す条件でPEBを行った。その後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
このようにして形成されたレジストパターンについて各評価試験を行い、その評価結果を表3に示した。
【0261】
[MEEF(Mask Error Enhancement Factor)]
上記評価条件にてターゲットサイズが50nm1L/1Sのマスクパターンを介して露光することによって線幅が50nmのラインアンドスペース(LS)パターンが形成される露光量を最適露光量とした。次いで、最適露光量にてライン幅のターゲットサイズを46nm、48nm、50nm、52nm、54nmのとするマスクパターンをそれぞれ用い、ピッチ100nmのLSパターンを形成し、レジスト膜に形成されたライン幅を日立製測長SEM:CG4000にて測定した。
このとき、ターゲットサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEEFとして算出した。
なお、MEEFの値が低い程、マスク作成コストを低減でき、優れていると評価される。
【0262】
[ナノエッジラフネス(ii)]
上記評価条件にてターゲットサイズが50nm1L/1.8Sのマスクパターンを介して露光することによって線幅が50nmのレジストパターンが形成される露光量を最適露光量とした。最適露光量にて得られた50nm1L/1.8Sパターンの観測において、日立製測長SEM:CG4000にてパターン上部から観察する際、線幅(nm)を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をナノエッジラフネス(nm)とした。なお、ナノエッジラフネスの値が小さいほどパターンの直線性が優れていることを示す。
【0263】
[最小倒壊寸法]
上記評価条件にてターゲットサイズが50nm1L/1.8Sのマスクパターンを介して1mJずつ露光量を変化させながら露光した。ラインの倒れが発生した露光量よりも1mJ小さい露光量にて形成されたパターンのライン幅(nm)を測長SEM(日立製作所社製、型番「CG4000」)により測定し、最小倒壊寸法(nm)とした。なお、この値が小さいほどパターンの倒れに対する耐性が高いことを示す。
【0264】
【表2】
【0265】
【表3】
【0266】
表2及び表3から明らかなように、酸発生剤としての[A]化合物(A−1)〜(A−5)を含有する実施例6〜21の感放射線性組成物は、酸発生剤(A−1)〜(A−5)を含有しない比較例1〜3の感放射線性組成物に比べて、電子線又は極紫外線に有効に感応し、低ラフネスであると共に解像性にも優れており、微細パターンを高精度に且つ安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト膜を成膜することができた。