(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754501
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】中継コネクタ用端子製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 24/60 20110101AFI20150709BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
H01R24/60
H01R43/16
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-269383(P2013-269383)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-125895(P2015-125895A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2013年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】牟田 正哉
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−158169(JP,A)
【文献】
特許第3823811(JP,B2)
【文献】
特開2003−168537(JP,A)
【文献】
特許第2724681(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/60
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板をプレス加工することにより一端側に弾性撓み可能な接触部を有し、他端側に雄タブ部形成領域を有する導電端子素材を複数並列した状態で且つ前記接触部の並列ピッチと前記雄タブ部形成領域の並列ピッチとが異なる状態に形成する工程と、前記金属板における前記導電端子素材の複数の雄タブ部形成領域の全てを当該雄タブ部の長手方向と平行な折り目にて同時に折り返し曲げ加工して全ての雄タブ部を所定の厚みに形成する工程と、を備え、隣り合う前記導電端子の雄タブ部の折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向であることを特徴とする中継コネクタ用端子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに搭載される各種機器の電気接続に使用される中継コネクタ用端子に関する。
【背景技術】
【0002】
一端側に接触部を有し、他端側に雄タブ部を有する複数の導電端子を並列させて形成される中継コネクタ用端子の製造工程においては、工程の効率化を図るため、一組の金型を用いて複数の導電端子を並列した形態で製造するという方法が採られている。
【0003】
また、圧着タイプの中継端子においては、素材として薄い金属板を使用し、雄タブ部に相当する部分は金属板を折り返して増厚した形状とすることによって当該雄タブ部を所定の厚みに確保しつつ剛性を確保するという方法が採用されている。
【0004】
一方、本発明に関連する従来技術として、特許文献1記載の「電気コネクタ」あるいは特許文献2記載の「電気接続子」などがある。
【0005】
特許文献1記載の「電気コネクタ」は、複数の端子通道が形成された絶縁性本体と、前記絶縁性本体に挿入される複数の導電端子とを備え、前記導電端子が接触部、固持部及び後端部を有し、前記後端部が傾斜部と半田接続部とを有している。そして、複数配列された前記導電端子の半田接続部における間の距離が、前記傾斜部の傾斜により前記接触部の間の距離より大きくなるように配列されている。
【0006】
特許文献2記載の「電気接続子」は、雌接続子に雄接続子を着脱自在に装着するようにしたものであって、雄接続子の導通接続部を重合して扁平にするとともに、その接合端部が導通接続部の側面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3156761号公報
【特許文献2】実開平03−116572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中継コネクタ用端子を構成する導電端子において、接触部に必要な弾力性を確保するためには接触部を構成する金属板を薄くする必要がある反面、雄タブ部を所定の厚さにし、且つ必要な剛性を確保するためには雄タブ部を構成する金属板を厚くする必要がある。
【0009】
このため、従来、導電端子の材料として異形材を使用したり、導電端子の接触部をプレス加工して板厚を薄くしたりする方法が採られているが、異形材を使用した場合は製造コストが上昇し、接触部をプレス加工して板厚を薄くする方法の場合は、プレス加工で生じる金属材料の加工硬化によって弾力性が低下するという問題があり、板厚を薄くすることで板幅の増大が発生するため、所定の板幅に調整する工程が更に必要となるという問題もある。
【0010】
また、圧着タイプの中継端子において、金属板を折り返して増厚した形状で所定の厚みの雄タブ部を形成した場合、雄タブ部の形成工程において曲げ加工が多くなるので、製造工程の効率化を阻害する要因となっている。
【0011】
このような問題は特許文献1,2に記載された技術を利用しても解決することが困難である。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、製造工程の複雑化を回避しつつ、導電端子の接触部及び雄タブ部として必要な機能を兼備した中継コネクタ用端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の中継コネクタ用端子
製造方法により製造された中継コネクタ用端子は、金属板をプレス加工することにより複数の導電端子が並列した状態で形成され、前記導電端子の一端側に弾性撓み可能な接触部を有し、他端側に雄タブ部を有し、前記接触部の並列ピッチと前記雄タブ部の並列ピッチとが異なる中継コネクタ用端子であって、前記導電端子の全ての雄タブ部が前記金属板を当該雄タブ部の長手方向と平行な折り目にて
同時に折り返し曲げ加工して形成され、隣り合う前記導電端子の雄タブ部の折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向であることを特徴とする。
【0014】
このような構成とすれば、中継コネクタ用端子を構成する複数の導電端子の接触部に弾力性を持たせ、雄タブ部を所定の厚みにすると共に剛性を高めることができるので、導電端子の接触部及び雄タブ部として必要な機能を確保することができる。また、接触部を減厚加工する必要がないので、減厚加工で生じる金属材料の加工硬化によって弾力性が低下することを防止でき、かつ、接触部の製造工程の複雑化を回避することができる。
【0015】
また、前記中継コネクタ用端子の複数の導電端子において
は、隣り合う前記導電端子の雄タブ部の折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向であ
る。
【0016】
このような構成とすれば、隣り合う雄タブ部において形成工程を共用化することができるので、製造工程の簡素化に有効である。
【0018】
本発明の中継コネクタ用端子製造方法は、金属板をプレス加工することにより一端側に弾性撓み可能な接触部を有し、他端側に雄タブ部形成領域を有する導電端子素材を複数並列した状態で且つ前記接触部の並列ピッチと前記雄タブ部形成領域の並列ピッチとが異なる状態に形成する工程と、前記金属板における前記導電端子素材の
複数の雄タブ部形成領域
の全てを当該雄タブ部の長手方向と平行な折り目にて
同時に折り返し曲げ加工して全ての雄タブ部を所定の厚みに形成する工程と、を備え、隣り合う前記導電端子の雄タブ部の折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向であることを特徴とする。
【0019】
このような構成とすれば、中継コネクタ用端子を構成する導電端子の接触部及び雄タブ部として必要な機能を確保しつつ、曲げを向かい合わせにすることにより、同一の向きに曲げ加工する方法に比べ、中継コネクタ用端子の製造工程の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、製造工程の複雑化を回避しつつ、導電端子の接触部及び雄タブ部として必要な機能を兼備した中継コネクタ用端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態である中継コネクタ用端子をキャリア付きの状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1中の矢線A方向から見たキャリア付きの中継コネクタ用端子の平面図である。
【
図3】
図2中のB−B線において切断した導電端子を折り返し曲げ加工する工程を示す断面図である。
【
図4】
図1に示すキャリア付きの中継コネクタ用端子がホルダに圧入された状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示すキャリア付きの中継コネクタ用端子からキャリアがカットされた後の状態を示す斜視図である。
【
図6】キャリアカット後の中継コネクタ用端子を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態である中継コネクタ用端子が使用された中継コネクタを示す斜視図である。
【
図10】
図7中の矢線E方向から見た平面図である。
【
図12】
参考形態である中継コネクタ用端子の雄タブ部付近を示す一部省略平面図である。
【
図13】
図12中のG−G線において切断した導電端子を折り返し曲げ加工する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1,
図2はキャリア10が付いた状態の中継コネクタ用端子100xを示しており、後述するように、この中継コネクタ用端子100xからキャリア10をカットすると、
図6に示す中継コネクタ用端子100が形成される。
【0023】
中継コネクタ用端子100xは、金属板をプレス加工することにより複数の導電端子11,12,13,14,15,16が並列した状態で形成されている。導電端子11,12,13,14,15,16の一端側に弾性撓み可能な接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aを有し、他端側に雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bを有している。接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aの並列ピッチと雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bの並列ピッチとが異なっている。
【0024】
なお、本実施形態の中継コネクタ用端子100xにおいては、接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aの並列ピッチは、雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bの並列ピッチより小となるように設定されているが、これに限定するものではない。例えば、回路体自体のサイズが大きい場合、配線上回路体の接触部のピッチが広い場合、あるいは雄タブ部のサイズが小さい場合などは、接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aの並列ピッチが、雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bの並列ピッチより大となることがある。
【0025】
また、導電端子11,12,13,14,15,16の雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bは、中継コネクタ用端子100xの材料である金属板における雄タブ部形成領域11d,12d,13d,14d,15d,16dを当該雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bの長手方向Lと平行な折り目11c,12c,13c,14c,15c,16cにて折り返し曲げ加工をして形成されている。
【0026】
また、
図2,
図3に示す様に、隣り合う導電端子11と12,13と14,15と16の雄タブ部11bと12b,13bと14b,15bと16bの折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向をなしている。
【0027】
図2に示すキャリア10が付いた状態の中継コネクタ用端子100xは、
図4に示すように、トレー状のホルダ30内に装着された後、隣り合う導電端子11と12,12と13,13と14,14と15,15と16とを繋ぐキャリア10がそれぞれカットされ、
図5,
図6に示すように、導電端子11,12,13,14,15,16がそれぞれ独立した中継コネクタ用端子100が形成される。なお、キャリアカット用のパンチとダイとが進入する貫通孔がホルダ30に設けられている。ホルダ30に装着された後の中継コネクタ用端子100(100x)は、接触部11a,12a,13a,14a,15a,16a及び雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bがホルダ30から突出した状態となっている。また、ホルダ30を接触部側に延長して接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aをホルダ30から突出させない状態とすることも可能である。
【0028】
図7〜
図11は中継コネクタ用端子100を使用した中継コネクタ50を示している。中継コネクタ50においては、絶縁性のハウジング51内に、ホルダ30内に装着された状態の中継コネクタ用端子100(
図5参照)が組み込まれている。中継コネクタ用端子100の雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bはハウジング50の正面側の開口部52内に突出した状態にあり、中継コネクタ用端子100の接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aはハウジング50の背面側の開口部53内に突出している。
【0029】
図7〜
図11に示すように、ハウジング51の背面側の開口部53には、回路体60が装着されており、正面側の開口部52には、ワイヤーハーネスなどに接続されたメスコネクタ(図示せず)が嵌合される。中継コネクタ用端子100の接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aと、開口部53に装着された回路体60に設けられた接触部61a,62a,63a,64a,65a,66aと、がそれぞれ電気的に接触している。
【0030】
図5,
図6に示す中継コネクタ用端子100は、当該中継コネクタ用端子100を構成する複数の導電端子11,12,13,14,15,16の接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aにそれぞれ弾力性を持たせるとともに、雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bを所定の厚みにして剛性を高めることができるので、導電端子11,12,13,14,15,16の接触部11a,12a,13a,14a,15a,16a及び雄タブ部11b,12b,13b,14b,15b,16bとして必要な機能を確保することができる。また、接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aを減厚加工する必要がないので、金属材料の加工硬化による弾力性の低下を防止することができ、かつ、接触部の製造工程の複雑化を回避することができる。
【0031】
また、
図2,
図3に示すように、中継コネクタ用端子100の複数の導電端子11,12,13,14,15,16においては、隣り合う導電端子11と12,13と14,15と16の雄タブ部11bと12b,13bと14b,15bと16bの折り返し曲げ加工の方向が互いに逆方向となっている。従って、
図3に示すように、隣り合う雄タブ部11bと12b,13bと14bの形成工程で使用する曲げ型Mを共用化することができるので、製造工程の簡素化に有効である。なお、図示していないが隣り合う雄タブ部15bと16bの形成工程においても曲げ型を共用化することができる。
【0032】
次に、
図12,
図13に基づいて、
参考形態である中継コネクタ用端子について説明する。
図12は
参考形態である中継コネクタ用端子の雄タブ部21b,22b,23b,24b,25b,26bを示している。
図12,
図13に示すように、本
参考形態の中継コネクタ用端子においては、雄タブ部形成領域21d,22d,23d,24d,25d,26dを当該雄タブ部21b,22b,23b,24b,25b,26bの長手方向Lと平行な折り目21c,22c,23c,24c,25c,26cにて折り返し曲げ加工をして形成されている。なお、
図13には示していないが、雄タブ部25b,26bについても同様の工程で形成されている。
【0033】
前述した工程においては、接触部11a,12a,13a,14a,15a,16aの板厚を薄くする必要がないため、プレス加工で生じる、金属材料の加工硬化に起因する弾力性の低下を回避できる。さらに、板厚を薄くした際に発生する板幅の増大を解消するための、板幅の調整が不要となり、製造工程の複雑化も回避することができる。
【0034】
図12に示す雄タブ部21b,22b,23b,24b,25b,26bにおいては、
図13に示すように、折り返し曲げ加工の方向が全て同方向であるため、雄タブ部ごとに曲げ型の調整が行いやすく、雄タブ部の折り返し曲げ精度が向上するというメリットがある。
【0035】
なお、
図1〜
図11に基づいて説明した中継コネクタ用端子100及びその製造方法などは本発明を例示するものであり、本発明の中継コネクタ用端子及び中継コネクタ用端子製造方法は前述した実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る中継コネクタ用端子は、自動車などに搭載される各種機器の電気接続部品として自動車産業の分野などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 キャリア
11,12,13,14,15,26 導電端子
11a,12a,13a,14a,15a,16a 接触部
11b,12b,13b,14b,15b,16b,21b,22b,23b,24b,25,26b 雄タブ部
11c,12c,13c,14c,15c,16c,21c,22c,23c,24c,25c,26c 折り目
11d,12d,13d,14d,15d,16d,21d,22d,23d,24d,25d,26d 雄タブ部形成領域
30 ホルダ
50 中継コネクタ
51 ハウジング
52,53 開口部
60 回路体
61a,62a,63a,64a,65a,66a 接触部
100 中継コネクタ用端子
100x キャリア付きの中継コネクタ端子
L 長手方向
M 曲げ型