特許第5754533号(P5754533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5754533
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】コネクタ端子およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20150709BHJP
   H01R 12/72 20110101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01R13/11 C
   H01R12/72
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-133015(P2014-133015)
(22)【出願日】2014年6月27日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】大菅 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】牟田 正哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠治
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−062972(JP,U)
【文献】 特許第5201253(JP,B2)
【文献】 特開平08−162230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 12/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室と、前記端子収容室への端子挿入口と、前記端子収容室に隣接して形成され、端部表面に端子部を有する基板が嵌合される嵌合部とを有するコネクタハウジングに対し、前記端子挿入口から前記端子収容室内に挿入されて収容されるコネクタ端子であって、
前記コネクタ端子の挿入方向の前方が開口した端子本体と、
前記端子本体に一端部が固定されて前記コネクタ端子の挿入方向の後方に向かって延び、前記コネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返され、前記コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる略U字形状であり、前記折り返された部分が前記コネクタ端子の挿入方向の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部であり、前記曲面部から前記コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる部分の途中に前記端子収容室から前記嵌合部に突出する接点部を有し、前記開口部が前記端子本体の開口に臨んで前記端子本体内に収容されるばね片とを備え、
前記コネクタハウジングは、前記端子収容室内の前記コネクタ端子の挿入方向の前方に、前記端子収容室内に挿入される前記端子本体内の前記ばね片の前記開口部に向かって突出した突起部と、前記ばね片の一部が前記嵌合部に突出可能な突出用開口とを有し、
前記ばね片は、前記端子本体に固定される一端部と前記曲面部との間に前記端子本体から離れるように形成された屈曲部と、前記端子本体に固定される一端部と反対側の端部に形成され、前記端子収容室内に前記コネクタ端子が挿入される際に前記突起部を滑る状態で接触する摺接部を有し、前記接点部は、前記突起部が前記摺接部に接触することにより前記端子収容室から前記突出用開口を通じて前記嵌合部に押し出されて突出し、前記嵌合部に嵌合される前記基板の前記端子部に接触可能となるものである
ことを特徴とするコネクタ端子。
【請求項2】
前記ばね片または前記端子本体のうち、いずれかの固定される部分に、前記端子本体または前記ばね片に臨む突出部を有する請求項1記載のコネクタ端子。
【請求項3】
前記端子本体が、前記コネクタ端子の挿入方向の後方側に、前記ばね片の折り返された部分の後退を規制する受け部を有する請求項1または2に記載のコネクタ端子。
【請求項4】
端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタであって、
端子収容室と、前記端子収容室への端子挿入口と、前記端子収容室に隣接して形成され、前記基板が嵌合される嵌合部とを有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに対し、前記端子挿入口から前記端子収容室内に挿入されて収容されるコネクタ端子とを有し、
前記コネクタ端子は、
前記コネクタ端子の挿入方向の前方が開口した端子本体と、
前記端子本体に一端部が固定されて前記コネクタ端子の挿入方向の後方に向かって延び、前記コネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返され、前記コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる略U字形状であり、前記折り返された部分が前記コネクタ端子の挿入方向の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部であり、前記曲面部から前記コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる部分の途中に前記端子収容室から前記嵌合部に突出する接点部を有し、前記開口部が前記端子本体の開口に臨んで前記端子本体内に収容されるばね片とを備え、
前記コネクタハウジングは、前記端子収容室内の前記コネクタ端子の挿入方向の前方に、前記端子収容室内に挿入される前記端子本体内の前記ばね片の前記開口部に向かって突出した突起部と、前記ばね片の一部が前記嵌合部に突出可能な突出用開口とを有し、
前記ばね片は、前記端子本体に固定される一端部と前記曲面部との間に前記端子本体から離れるように形成された屈曲部と、前記端子本体に固定される一端部と反対側の端部に形成され、前記端子収容室内に前記コネクタ端子が挿入される際に前記突起部を滑る状態で接触する摺接部を有し、前記接点部は、前記突起部が前記摺接部に接触することにより前記端子収容室から前記突出用開口を通じて前記嵌合部に押し出されて突出し、前記嵌合部に嵌合される前記基板の前記端子部に接触可能となるものである
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される各種機器の電気接続に使用されるコネクタ端子に係り、より詳しくは、端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタ用のコネクタ端子およびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタとして、例えば特許文献1に記載のコネクタが知られている。図18に示すように、このコネクタ100は、互いに嵌合可能に形成された基板側ハウジング101と電線側ハウジング102とから構成されている。基板側ハウジング101には、端部表面に端子部104を有する基板103が設けられている。電線側ハウジング102には、端子部104に接触可能な端子金具105が設けられている。
【0003】
端子金具105は、導電性板材を折り曲げて形成されており、その後端部には電線Wを接続可能な電線接続部111が設けられている。この電線接続部111の前方には、中空状の接続部116が形成されており、その接続部116の内側に、全体として回曲するように折り曲げられた弾性接触片109が設けられている。基板側ハウジング101の奥壁部106には、前方に向かって押圧部107が突設されている。押圧部107の先端内側には、端子金具105の弾性接触片109を押圧する案内面108が設けられている。
【0004】
このコネクタ100では、基板側ハウジング101の内側に、電線側ハウジング102を挿入するようにして嵌合操作を開始すると、図19に示すように、基板103が基板挿入口112から電線側ハウジング102の内側に進入し、次に押圧部107が押圧部挿入口113から押圧部挿入空間114内に挿入される。そして、基板103が基板挿入口112の奥側に進入するとともに、図20に示すように、案内面108が押圧受部115を押圧することで、弾性接触片109を基板103側に弾性変形させ、所定の位置まで嵌合操作が進行するとコネクタ100の組み付けが完了する。このとき、押圧部107が弾性接触片109の第1屈曲部117を基板103側に押圧することで、弾性接触片109が接触位置に至り、接点部118が端子部104に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3669268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のコネクタ100では、基板側ハウジング101の内側に電線側ハウジング102を嵌合した際、押圧部107が弾性接触片109の第1屈曲部117を基板103側に押圧することで、弾性接触片109の全体を基板103へ弾性変形させている。そのため、このコネクタ100では、端子金具105の内部に、弾性接触片109を格納する空間と押圧部107を挿入する空間との両方を確保する必要がある。その結果、端子金具105のサイズが大きくなり、これを収容するコネクタ100のサイズも大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタ用のコネクタ端子のサイズを小さくし、ひいてはこれを収容するコネクタのサイズを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタ端子は、端子収容室と、端子収容室への端子挿入口と、端子収容室に隣接して形成され、端部表面に端子部を有する基板が嵌合される嵌合部とを有するコネクタハウジングに対し、端子挿入口から端子収容室内に挿入されて収容されるコネクタ端子であって、コネクタ端子の挿入方向の前方が開口した端子本体と、端子本体に一端部が固定されてコネクタ端子の挿入方向の後方に向かって延び、コネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返され、コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる略U字形状であり、折り返された部分がコネクタ端子の挿入方向の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部であり、曲面部からコネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる部分の途中に端子収容室から嵌合部に突出する接点部を有し、開口部が端子本体の開口に臨んで端子本体内に収容されるばね片とを備え、コネクタハウジングは、端子収容室内のコネクタ端子の挿入方向の前方に、端子収容室内に挿入される端子本体内のばね片の開口部に向かって突出した突起部と、ばね片の一部が嵌合部に突出可能な突出用開口とを有し、ばね片は、端子本体に固定される一端部と曲面部との間に端子本体から離れるように形成された屈曲部と、端子本体に固定される一端部と反対側の端部に形成され、端子収容室内にコネクタ端子が挿入される際に突起部を滑る状態で接触する摺接部を有し、接点部は、突起部が摺接部に接触することにより端子収容室から突出用開口を通じて嵌合部に押し出されて突出し、嵌合部に嵌合される基板の端子部に接触可能となるものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコネクタは、端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタであって、端子収容室と、端子収容室への端子挿入口と、端子収容室に隣接して形成され、基板が嵌合される嵌合部とを有するコネクタハウジングと、コネクタハウジングに対し、端子挿入口から端子収容室内に挿入されて収容されるコネクタ端子とを有し、コネクタ端子は、コネクタ端子の挿入方向の前方が開口した端子本体と、端子本体に一端部が固定されてコネクタ端子の挿入方向の後方に向かって延び、コネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返され、コネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる略U字形状であり、折り返された部分がコネクタ端子の挿入方向の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部であり、曲面部からコネクタ端子の挿入方向の前方に向かって延びる部分の途中に端子収容室から嵌合部に突出する接点部を有し、開口部が端子本体の開口に臨んで端子本体内に収容されるばね片とを備え、コネクタハウジングは、端子収容室内のコネクタ端子の挿入方向の前方に、端子収容室内に挿入される端子本体内のばね片の開口部に向かって突出した突起部と、ばね片の一部が嵌合部に突出可能な突出用開口とを有し、ばね片は、端子本体に固定される一端部と曲面部との間に端子本体から離れるように形成された屈曲部と、端子本体に固定される一端部と反対側の端部に形成され、端子収容室内にコネクタ端子が挿入される際に突起部を滑る状態で接触する摺接部を有し、接点部は、突起部が摺接部に接触することにより端子収容室から突出用開口を通じて嵌合部に押し出されて突出し、嵌合部に嵌合される基板の端子部に接触可能となるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコネクタ端子では、コネクタハウジングの端子挿入口から端子収容室内に挿入した際、コネクタハウジングの突起部が、コネクタ端子の挿入方向の前方の開口部からコネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返された形状のばね片の内側に進入し、ばね片の摺接部に接触して滑りながら奥側に進入する。これにより、ばね片の接点部が、端子収容室から突出用開口を通じて嵌合部に押し出されて突出し、嵌合部に嵌合される基板の端子部に接触可能となり、嵌合部に基板が嵌合された際には基板の端子部に接触するようになる。
【0011】
ここで、ばね片は、さらに、端子本体に固定される一端部と折り返された部分との間に形成された屈曲部を有するので、ばね片が撓んだときに、ばね片内部に発生する応力を分散することが可能となり、嵌合部に基板が嵌合された際のばね片の塑性変形を防止することができる。
【0012】
また、ばね片または端子本体のうち、いずれかの固定される部分に、端子本体またはばね片に臨む突出部を有することが望ましい。これにより、ばね片と端子本体との接触部が、ばね片の表面と端子本体の表面との面接触ではなく、突出部による点接触となる。
【0013】
また、端子本体は、コネクタ端子の挿入方向の後方側に、ばね片の折り返された部分の後退を規制する受け部を有することが望ましい。この受け部により、嵌合部に基板が嵌合された際にばね片の折り返された部分の後退が規制され、ばね片の座屈変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
(1)本発明によれば、コネクタハウジングの端子挿入口から端子収容室内に挿入した際、コネクタハウジングの突起部が、コネクタ端子の挿入方向の前方の開口部からコネクタ端子の挿入方向の前方を開口部として折り返された形状のばね片の内側に進入することにより、ばね片の接点部が、端子収容室から突出用開口を通じて嵌合部に押し出されて突出し、嵌合部に嵌合される基板の端子部に接触可能となり、嵌合部に基板が嵌合された際には基板の端子部に接触するようになるため、端子本体内にばね片を格納する空間のみを確保すれば、コネクタハウジングの突起部を挿入する空間がその内側に確保されることになり、コネクタ端子およびこれを収容するコネクタのサイズを小さくすることが可能となる。
【0015】
(2)ばね片が、さらに、端子本体に固定される一端部と折り返された部分との間に形成された屈曲部を有することにより、嵌合部に基板が嵌合された際のばね片の塑性変形を防止することができ、コネクタ端子の耐久性が向上する。
【0016】
(3)ばね片または端子本体のうち、いずれかの固定される部分に、端子本体またはばね片に臨む突出部を有することにより、ばね片と端子本体との接触部が、ばね片の表面と端子本体の表面との面接触ではなく、突出部による点接触となるため、接触の信頼性が向上する。
【0017】
(4)端子本体が、コネクタ端子の挿入方向の後方側に、ばね片の折り返された部分の後退を規制する受け部を有することにより、嵌合部に基板が嵌合された際にばね片の折り返された部分の後退が規制され、ばね片の座屈変形を防止することができ、コネクタ端子の接続信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態におけるコネクタの組み立て斜視図である。
図2図1の側断面図である。
図3図1のコネクタを分解した状態の側断面図である。
図4図3の電線側コネクタハウジングを示す側断面図である。
図5図3のA部拡大図である。
図6図3の端子本体を示す斜視図である。
図7図3の端子本体の鞘状部を示す側断面図である。
図8図7の突出部の拡大断面図である。
図9図3のばね片を示す斜視図である。
図10図6の端子本体を形成する金属板を示す斜視図である。
図11図10のB部拡大図である。
図12】端子本体への組み込み前のばね片の状態を示す斜視図である。
図13】金属板の上にばね片を重ねて配置した状態を示す斜視図である。
図14】コネクタ端子の組み立ての様子を示す斜視図である。
図15図14の状態からキャリアをカットした状態を示す斜視図である。
図16A】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作開始の様子を示す側断面図である。
図16B】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作途中の様子を示す側断面図である。
図16C】コネクタ端子のコネクタハウジングへの組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
図17A】コネクタへの基板の組み付け操作開始の様子を示す側断面図である。
図17B】コネクタへの基板の組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
図18】従来のコネクタの両ハウジングを嵌合する前の側断面図である。
図19図18の両ハウジングの嵌合操作の様子を示す側断面図である。
図20図18の両ハウジングの嵌合操作を完了したときの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態におけるコネクタの組み立て斜視図、図2図1の側断面図、図3図1のコネクタを分解した状態の側断面図、図4図3の電線側コネクタハウジングを示す側断面図、図5図3のA部拡大図、図6図3の端子本体を示す斜視図、図7図3の端子本体の鞘状部を示す断面図、図8図7の突出部の拡大断面図、図9図3のばね片を示す斜視図、図10図6の端子本体を形成する金属板を示す斜視図、図11図10のB部拡大図である。
【0020】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態におけるコネクタ1は、端部表面に端子部Tを有する基板Bが嵌合される、いわゆるカードエッジコネクタである。基板Bは、ハウジングHに保持されている。コネクタ1は、コネクタハウジング2内に、基板Bの端子部Tが接触するコネクタ端子3が収容されたものである。コネクタ端子3には、電線Cが接続される。
【0021】
図3図5に示すように、コネクタハウジング2は、基板Bの嵌合側が開口されてハウジングHが嵌合されるフード部20と、フード部20に接続され、ハウジングHに保持された基板Bが嵌合される嵌合部21と、コネクタ端子3が収容される端子収容室22とを有する。嵌合部21は、端子収容室22に隣接して形成されている。また、嵌合部21を挟んでコネクタハウジング2のフード部20の反対側には、端子収容室22へコネクタ端子3を挿入するための端子挿入口23が形成されている。
【0022】
コネクタ端子3は、図6に示す第1端子部品としての端子本体4と、図9に示す第2端子部品としてのばね片5とから構成される。端子本体4は、コネクタ端子3の挿入方向の前方(ハウジングH側)が開口(図6に示す開口部40)されている。ばね片5は、コネクタ端子3の挿入方向の前方を開口部50として折り返された形状である。ばね片5は、この開口部50が端子本体4の開口(開口部40)に臨んで端子本体4内に収容される。なお、以下の説明において、コネクタハウジング2の端子収容室22に対するコネクタ端子3の挿入方向(図3に示す矢線X方向)を「前」とし、その反対方向を「後」として表現する。
【0023】
コネクタ端子3は、端子挿入口23から端子収容室22内に挿入されて収容される。なお、複数のコネクタ端子3は、嵌合部21を上下に挟んで対向するように収容されており、かつ、コネクタハウジング2に上下2段に分かれて千鳥状となるよう収容されている。コネクタハウジング2における端子収容室22内には、このコネクタ端子3の前方に、端子収容室22内に挿入される端子本体4のばね片5の開口部50に向かって突出した突起部24を有する。突起部24の先端は、嵌合部21から遠い側が端子挿入口23に近くなるように斜めに形成された斜面24aとなっている。また、端子収容室22と嵌合部21との間には、ばね片5の一部が嵌合部21に突出可能な突出用開口25が形成されている。
【0024】
端子本体4は、図10に示すように打ち抜かれた導電性の良好な金属板4aを曲げ加工することにより形成されたものである。なお、図10には1つの端子本体4を構成する部分のみ示しているが、実際には複数の端子本体4を構成する部分が、その両端部のキャリア6a,6bによって繋げられた状態となっている。図6に示すように、端子本体4は、ばね片5が収容される鞘状部41と、電線Cを圧着固定するための結束部42とを有する。結束部42は、電線Cの外部絶縁体の外周を保持する外被かしめ部42aと、電線Cを保持して鞘状部41と導通接続する導体かしめ部42bとにより構成されている。
【0025】
また、鞘状部41の前方には、ばね片5を鞘状部41内に固定して鞘状部41と導通接続する通電接続部43を有する。通電接続部43は、ばね片5に臨む突出部44aと、端子本体4の側面を切り欠いて形成されたかしめ片44bとから構成されている。ばね片5は、突出部44aとかしめ片44bとの間に、かしめにより固定される。一方、鞘状部41の後方には、ばね片5の折り返された部分の後退を規制する受け部45を有する。受け部45は、端子本体4の側面を切り欠いて、内側へ90°折り曲げることにより形成されている。また、鞘状部41の通電接続部43の対面側には、ばね片5が突出用開口25を通じて嵌合部21に突出可能な位置に開口部46が形成されている。
【0026】
なお、本実施形態における突出部44aは、金属板4aに打ち出し加工することにより形成している。また、突出部44aは、端子本体4ではなく、ばね片5に備えた構成としても良い。要するに、ばね片5または端子本体4のうち、いずれかの固定される部分に、端子本体4、または、ばね片5に臨む突出部44aを有する構成とすれば良い。なお、端子本体4とばね片5との固定は、かしめ以外の方法、例えば溶接等の方法により行うことも可能である。
【0027】
図9に示すように、ばね片5は、コネクタ端子3の前方を開口部50として折り返された形状であり、この折り返された部分はコネクタ端子3の後方に向かって凸曲面状に形成された曲面部51となっている。また、通電接続部43によって端子本体4に固定される一端部5aと反対側の端部5bには、摺接部52が形成されている。摺接部52は、端子収容室22内にコネクタ端子3が挿入される際に突起部24を滑る状態で接触するように、ばね片5の内側に向かって凸曲面状に形成されている。
【0028】
また、ばね片5は、通電接続部43によって端子本体4に固定される部分は、端子本体4に沿うように直線部53となっているが、端子本体4に固定される一端部5aと折り返された部分である曲面部51との間には、端子本体4から離れるように屈曲部54が形成されている。さらに、曲面部51と摺接部52との間には、ばね片5の外側に向かって凸曲面状の接点部55が形成されている。
【0029】
上記コネクタ端子3は、以下の手順により形成される。図12は端子本体4への組み込み前のばね片5の状態を示す斜視図、図13は金属板4aの上にばね片5を重ねて配置した状態を示す斜視図、図14はコネクタ端子3の組み立ての様子を示す斜視図、図15図14の状態からキャリアをカットした状態を示す斜視図である。
【0030】
ばね片5は、導電性の良好な金属板を打ち抜いて、事前に図12に示す状態に曲げ加工される。なお、前述の端子本体4と同様、図12には1つのばね片5を構成する部分のみ示しているが、実際には複数のばね片5を構成する部分が、キャリア7によって繋げられた状態となっている。そして、この図12に示す状態のばね片5を図10に示す金属板4a上に重ねた後(図13参照。)、端子本体4の各部を折り曲げて、キャリア6a,6b,7に繋がったままのコネクタ端子3を形成する(図14参照。)。その後、キャリア6a,6b,7をカットする。
【0031】
これにより、図15に示すように、ばね片5と端子本体4とが一体化されたコネクタ端子3が得られる。このコネクタ端子3では、ばね片5のかしめ位置が端子本体4の開口部40の近くにあるので、ばね片5の組み付け作業性が良く、ばね片5を組み込んだ後にばね片5のキャリアをカットすることが可能である。また、このコネクタ端子3では、ばね片5と端子本体4との接触部が、ばね片5の表面と端子本体4の表面との面接触ではなく、突出部44aの先端部による点接触となるため、接触の信頼性が向上している。
【0032】
次に、上記構成のコネクタ端子3のコネクタハウジング2の組み付けについて説明する。図16Aはコネクタ端子3のコネクタハウジング2への組み付け操作開始の様子を示す側断面図、図16Bは組み付け操作途中の様子を示す側断面図、図16Cは組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【0033】
コネクタ端子3を、コネクタハウジング2の端子挿入口23から端子収容室22内に挿入すると、図16Aに示すように、コネクタハウジング2の突起部24が、コネクタ端子3の挿入方向の前方の開口部40からコネクタ端子3内に進入し、突起部24の先端がコネクタ端子3内のばね片5の開口部50に対峙する。この状態からコネクタ端子3を押し進めると、図16Bに示すように、ばね片5の摺接部52がコネクタハウジング2の突起部24の先端の斜面24aに接触し、この斜面24aに沿って嵌合部21側へ押されていく。
【0034】
これにより、ばね片5の接点部55が、端子収容室22から突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されていく。そして、図16Cに示すように、ばね片5の摺接部52が突起部24の先端の斜面24aの下端を超えて、突起部24の下面24bに達すると、突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出したばね片5の接点部55が、嵌合部21に嵌合される基板Bの端子部Tに接触可能となる。
【0035】
次に、上記のように構成されたコネクタ1への基板Bの組み付けについて説明する。図17Aはコネクタ1への基板Bの組み付け操作開始の様子を示す側断面図、図17Bは組み付け操作完了の様子を示す側断面図である。
【0036】
上記のようにコネクタ端子3が収容されたコネクタ1のフード部20に対し、基板Bが保持されたハウジングHを嵌合すると、図17Aに示すように、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に進入し、突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出したばね片5の接点部55が、図17Bに示すように、基板Bの端子部Tに接触する。
【0037】
すなわち、本実施形態におけるコネクタ端子3は、コネクタハウジング2の端子挿入口23から端子収容室22内に挿入した際、ばね片5の接点部55が、端子収容室22から突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出し、嵌合部21に嵌合される基板Bの端子部Tに接触可能となり、嵌合部21に基板Bが嵌合された際には基板Bの端子部Tに接触するようになるため、端子本体4内にばね片5を格納する空間のみを確保すれば、コネクタハウジング2の突起部24を挿入する空間がその内側に確保されることになり、コネクタ端子3およびこれを収容するコネクタ1のサイズを小さくすることができる。
【0038】
上記のように、本実施形態におけるコネクタ1では、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に嵌合されると、突出用開口25を通じて嵌合部21に突出したばね片5の接点部55が突出用開口25側に押されることにより、ばね片5の曲面部51が弾性変形するため、その復元力によりばね片5の接点部55と基板Bの端子部Tとの高い接触荷重を得ることができる。このとき、ばね片5の内部応力は、接点部55と曲面部51と屈曲部54との3箇所に分散されるので、ばね片5の塑性変形が抑制され、コネクタ端子3の耐久性が向上する。なお、屈曲部54がない場合、端子本体4の内面に直線部53が密着するため、ばね片5の内部応力が接点部55と曲面部51との2箇所に集中することになり、屈曲部54がある場合と比べて最大応力値が大きくなる。
【0039】
また、基板Bがコネクタハウジング2の嵌合部21内に嵌合される際、ばね片5は図17Aに示す状態から図17Bに示す状態へ接点部55が嵌合部21から端子収容室22側へ、すなわち突出用開口25側に押される。これにより、ばね片5の折り返された部分である曲面部51は端子挿入口23側へ後退しようとするが、本実施形態におけるコネクタ端子3では鞘状部41の後方に有する受け部45によって、このばね片5の曲面部51の後退が規制されている。そのため、基板Bの嵌合により、ばね片5の端部5bと摺接部52とが嵌合部21内に引きずり込まれて座屈変形することが防止され、コネクタ端子3の接続信頼性が向上している。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、自動車等に搭載される各種機器の電気接続に使用されるコネクタ端子およびコネクタとして有用である。
【符号の説明】
【0041】
B 基板
T 端子部
H ハウジング
C 電線
1 コネクタ
2 コネクタハウジング
3 コネクタ端子
4 端子本体
4a 金属板
5 ばね片
6a,6b,7 キャリア
20 フード部
21 嵌合部
22 端子収容室
23 端子挿入口
24 突起部
25 突出用開口
40 開口部
41 鞘状部
42 結束部
42a 外被かしめ部
42b 導体かしめ部
43 通電接続部
44a 突出部
44b かしめ片
45 受け部
46 開口部
50 開口部
51 曲面部
52 摺接部
53 直線部
54 屈曲部
55 接点部
【要約】
【課題】端部表面に端子部を有する基板が嵌合されるコネクタ用のコネクタ端子のサイズを小さくし、ひいてはこれを収容するコネクタのサイズを小さくすること。
【解決手段】コネクタ端子3をコネクタハウジング2の端子挿入口から端子収容室22内に挿入した際、コネクタハウジング2の突起部24が、コネクタ端子3の挿入方向の前方の開口部40からコネクタ端子3の挿入方向の前方を開口部50として折り返された形状のばね片5の内側に進入し、ばね片5の摺接部52に接触して滑りながら奥側に進入する。これにより、ばね片5の接点部55が、端子収容室22から突出用開口25を通じて嵌合部21に押し出されて突出し、嵌合部21に嵌合される基板Bの端子部Tに接触可能となり、嵌合部21に基板Bが嵌合された際には基板Bの端子部Tに接触する。
【選択図】図17A
図1
図2
図3
図4
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図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18
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図20