特許第5754538号(P5754538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5754538
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/00 20060101AFI20150709BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20150709BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20150709BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20150709BHJP
【FI】
   B62J17/00 A
   B62M7/02 A
   B62J23/00 C
   B62J99/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-157904(P2014-157904)
(22)【出願日】2014年8月1日
【審査請求日】2015年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】河田 晃一郎
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−183955(JP,A)
【文献】 特開2012−153275(JP,A)
【文献】 特開2010−274761(JP,A)
【文献】 特開2009−90893(JP,A)
【文献】 特開平7−242188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/00
B62J 23/00
B62J 99/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
車体フレームと、
前記エンジンを前記車体フレームに固定するブラケットと、
前記エンジンの冷媒を冷却するラジエータと、
前記エンジンの外側を覆うカウリングと、
を有し、
前記カウリングの側方には、前記ラジエータを通過した空気を前記カウリングの外部に排出する空気排出部が設けられ、
前記ブラケットは、前記車体フレームとは別体に形成され、側面視において前記空気排出部の少なくとも一部に重畳することを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記空気排出部は、
側面視において開口する空気排出孔と、
前記空気排出孔の後方に設けられ、車幅方向内側に窪む段差部と、
を有し、
前記段差部は、前記カウリングの内側に配置される機材の外形形状に沿った形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
側面視において、前記ブラケットの一部と前記段差部の一部とは重畳していることを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記車体フレームは、車幅方向外側に膨出する膨出部を有し、
前記ブラケットは、前記膨出部に取り付けられ、
前記ラジエータは、前面視において、前記膨出部と前記ブラケットとに囲まれた位置に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記ブラケットの車幅方向外側の面は、前記カウリングの車幅方向外側の面と連続する形状に形成されており、
前記ブラケットの車幅方向内側の面は、後方に向かうにしたがって車幅方向外側に広がるように傾斜することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関するものである。特には、自動二輪車のカウリング(カウルボディ)の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、エンジンなどの機材の外側を覆うカウリング(「カウルボディ」と称することもある)を有するタイプがある。特許文献1には、カウリングを有する自動二輪車において、エンジンの左右両側から下方にかけての部分をカウリングにより連続的に覆う構成が開示されている。そして、エンジンが水冷式であれば、冷媒(冷却水)を冷却するラジエータが設けられるため、カウリングには、ラジエータに送る空気を取り込む空気取入孔と、ラジエータを通過した空気を外方に排出するための空気排出孔が設けられる。特許文献1には、カウリングの側面に空気排出孔が設けられる構成が開示されている。
【0003】
このような空気排出孔は、ラジエータを通過した空気を後方斜め外側に向かって排出するため、後方斜め外側を臨むように開口する。このような構成であると、自動二輪車を後方斜め外側か見ると、エンジンなどの機材がこの空気排出孔を通じて露出して見えることになる。このため、自動二輪車の外観の美感を損ねるという問題がある。
【0004】
空気排出孔を通じて内側の機材が見えないようにするためには、空気排出孔にオーバーラップしてこの空気排出孔を隠すような部分を、カウリングに成形する方法が考えられる。しかしながら、カウリングを射出成形によって製造する構成では、空気排出孔にオーバーラップする部分をカウリングに形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−156348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みて、カウリングを有する自動二輪車において、外観の美感の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動二輪車は、エンジンと、車体フレームと、前記エンジンを前記車体フレームに固定するブラケットと、前記エンジンの冷媒を冷却するラジエータと、前記エンジンの外側を覆うカウリングと、を有し、前記カウリングの側方には、前記ラジエータを通過した空気を前記カウリングの外部に排出する空気排出部が設けられ、前記ブラケットは、前記車体フレームとは別体に形成され、側面視において前記空気排出部の少なくとも一部に重畳することを特徴とする。
【0008】
前記空気排出部は、側面視において開口する空気排出孔と、前記空気排出孔の後方に設けられ、車幅方向内側に窪む段差部と、を有し、前記段差部は、前記カウリングの内側に配置される機材の外形形状に沿った形状に形成される構成が適用できる。
【0009】
側面視において、前記ブラケットの一部と前記段差部の一部とは重畳している構成が適用できる。
【0010】
前記車体フレームは、車幅方向外側に膨出する膨出部を有し、前記ブラケットは、前記膨出部に取り付けられ、前記ラジエータは、前面視において、前記膨出部と前記ブラケットとに囲まれた位置に配置される構成が適用できる。
【0011】
前記ブラケットの車幅方向外側の面は、前記カウリングの車幅方向外側の面と連続する形状に形成されており、前記ブラケットの車幅方向内側の面は、後方に向かうにしたがって車幅方向外側に広がるように傾斜する構成が適用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カウリングに設けられる空気排出部の一部とブラケットとが車幅方向に重畳する。このため、空気排出部を通じてカウリングに覆われる機材が見えないように隠される。したがって、自動二輪車の外観の美感の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の構成例を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るエンジンを搭載した車体フレームの構成例を模式的に示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車体フレームの構成例を模式的に示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る車体フレーム構成例を模式的に示す前面図である。
図5】本発明の実施形態に係るカウリングの構成例を模式的に示す前面図である。
図6】本発明の実施形態に係るカウリングの構成例を模式的に示す側面図である。
図7】ボディカウルの構成例を模式的に示す断面図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るカウリングの構成例を模式的に示す図であり、(a)は車幅方向外側から見た図、(b)は車幅方向中心側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態では、ツインスパータイプの車体フレームを有する自動二輪車を示す。ただし、自動二輪車の車体フレームは、ツインスパータイプに限定されるものではない。また、各図においては、適宜、自動二輪車の前方を矢印Frで示し、後方を矢印Rrで示し、側方右側を矢印Rで示し、側方左側を矢印Lで示す。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係る自動二輪車100の構成例について、図1図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である自動二輪車100の概略構成の例を模式的に示す側面図である。図2は、本発明の実施形態に係る自動二輪車100のエンジンユニット40まわりの構成例を模式的に示す側面図である。
【0016】
自動二輪車100は、車体フレーム10を有する。車体フレーム10は、鋼材やアルミニウム合金材などにより形成される。エンジンユニット40を始めとする自動二輪車100を構成する機材や部品は、この車体フレーム10によって支持される。
【0017】
車体フレーム10の前部には、後傾する管状のステアリングヘッドパイプ101が設けられる。そして、このステアリングヘッドパイプ101によって、フロントフォーク102が左右に回動可能に支持される。フロントフォーク102の上端部には、ステアリングブラケットを介してハンドルバー103が固定される。フロントフォーク102の下部には、前輪104が回転可能に支持されるとともに、前輪104の上部を覆うようにフロントフェンダ105が取り付けられる。
【0018】
図2に示すように、車体フレーム10は、メインフレーム11とピボットフレーム12とを含む。メインフレーム11は、ステアリングヘッドパイプ101の後部に一体的に結合しており、ステアリングヘッドパイプ101から後下方に向けて左右一対で二又状に分岐し、後下方に拡幅しながら延伸する。ピボットフレーム12は、メインフレーム11に溶接されており、メインフレーム11から後下方に延伸する。このように、車体フレーム10は、いわゆるツインスパータイプが適用される。メインフレーム11とピボットフレーム12とは相互に結合しており、車体フレーム10は、全体として下方内側にスペースが形成された立体的構造を有する。そして、車体フレーム10の下方内側のスペースに、後述するエンジン121を含むエンジンユニット40が搭載される。
【0019】
車体フレーム10のピボットフレーム12の上下方向中程には、ピボット軸106が設けられる。そして車体フレーム10には、ピボット軸106を介して、スイングアーム107が上下方向に揺動可能に結合される。スイングアーム107の後端には、後輪108が回転可能に支持される。車体フレーム10とスイングアーム107の間には、リヤショックアブソーバ109が装架される。特に、リヤショックアブソーバ109の下端側は、リンク機構110を介して車体フレーム10とスイングアーム107との双方に連結される。後輪108には、ドリブンスプロケット(図略)が一体に回転するように設けられている。そして、エンジンユニット40のドライブスプロケット111と後輪108のドリブンスプロケットとに跨るように、動力伝達用のチェーン112が巻回される。このような構成によれば、エンジンユニット40が出力する動力は、ドライブスプロケット111から、このチェーン112を介してドリブンスプロケットへ伝達される。これにより後輪108が回転駆動される。後輪108の周囲直近には、その前上部付近を覆うリヤフェンダ113が設けられる。
【0020】
車体フレーム10の後部付近からは、図略のレールシートが、後輪108の上方にかけて、ある程度後上りに傾斜するように延出する。搭乗者が着座するシート114(着座シート)は、このシートレールによって支持される。シート114の前側には、タンクカバー115によって覆われる燃料タンク(図示せず)が搭載される。
【0021】
自動二輪車100の略車両中央部には、エンジン121を含むエンジンユニット40が、車体フレーム10によって搭載される。エンジン121は、本発明の実施形態では水冷式多気筒の4サイクルガソリンエンジンが適用される。エンジン121は、複数の気筒(燃焼室)が左右(車幅方向)に並設される並列多気筒エンジンである。エンジン121は、クランクケース123と、シリンダブロック124と、シリンダヘッド125と、シリンダヘッドカバー126とを含む。クランクケース123の内部には、クランクシャフト122が、その軸線が車幅方向(水平方向)に平行な向きで、回転可能に支持される。シリンダブロック124は、クランクケース123の上側に設けられ、その内部には、複数の気筒が車幅方向に並ぶように形成される。シリンダヘッド125は、シリンダブロック124の上側に設けられる。シリンダヘッド125には、シリンダブロック124の各気筒に燃焼用の空気を供給するインテークポートと、各気筒からの排気ガスを排出するエグゾーストポートとが設けられる。シリンダヘッドカバー126は、シリンダヘッド125の上側を覆うように設けられる。シリンダブロック124とシリンダヘッドカバー126には、インテークポートとエグゾーストポートを開閉する動弁機構が設けられる。なお、エンジン121の各気筒の軸線Zは、垂直方向からある程度前傾している。また、クランクケース123の下部には、オイルパン127が設けられる。このようなエンジン121を含むエンジンユニット40は、複数のエンジンマウント(エンジン懸架部)を介して、車体フレーム10に懸架される。これにより、エンジン121は、車体フレーム10の内側に一体的に結合支持される。そして、エンジン121自体も、車体フレーム10の剛性部材(強度部材)としての機能を有する。
【0022】
クランクケース123の後部には、トランスミッションケース128が一体的に設けられる。このトランスミッションケース128の内部には、図示しないカウンタシャフトや複数のトランスミッションギヤが配設される。エンジン121の動力は、クランクシャフト122からトランスミッションを経て、最終的にはその出力端であるドライブスプロケット111へ伝達される。そして、このドライブスプロケット111から、動力伝達用のチェーン112を介して、後輪108に回転動力が伝達される。
【0023】
なお、クランクケース123とトランスミッションケース128は、相互に一体的に結合している。そして、全体としてエンジン121を含むエンジンユニット40のケーシングアセンブリを構成する。このケーシングアセンブリの適所には、エンジン始動用のスタータモータやクラッチ装置等を始めとする複数の補機類が搭載もしくは結合されており、これらを含めたエンジンユニット40の全体が、車体フレーム10によって支持される。
【0024】
このほか、エンジン121には、吸気系、排気系、冷却系、潤滑系の各機能系が設けられる。吸気系は、エアクリーナ129及び燃料供給装置からそれぞれ供給される空気(吸気)及び燃料からなる混合気を、エンジン121に供給する。排気系は、燃焼後の排気ガスをエンジン121から排出する。冷却系は、冷媒(冷却水)を循環させてエンジン121を冷却する。潤滑系は、エンジン121を含むエンジンユニット40の可動部を潤滑する。さらに、エンジン121には、これらの各機能系を作動制御する制御系(ECU;Engine Control Unit)が設けられる。制御系の制御により複数の機能系が上述の補機類等と協働し、これによりエンジンユニット40全体として円滑作動が遂行される。
【0025】
ここで、各機能系について説明する。吸気系は、シリンダヘッド125の後側に形成される各気筒のインテークポート(吸気口)と、これらのインテークポートに吸気管を介して接続されるスロットルボディとを有する。スロットルボディは、エアクリーナ129に接続され、エアクリーナ129から送給される空気の流量を調整する。具体的には、スロットルボディの内部には吸気流路(通路)が形成されるとともに、この吸気流路の開度をアクセル操作量に応じて調整するスロットルバルブが設けられる。本発明の実施形態では、各気筒のスロットルバルブの軸が同軸に配置される。また、スロットルボディは、各々のスロットルバルブの軸を機械式又は電気もしくは電磁式に駆動するバルブ駆動機構を有する。
【0026】
各スロットルボディには、スロットルバルブの下流側に燃料噴射用のインジェクタが配置される。これらのインジェクタには、燃料ポンプによって燃料タンク内の燃料が供給される。各インジェクタの上側は、車幅方向に横架されたデリバリパイプと接続される。そして、燃料ポンプに接続されたデリバリパイプから燃料が配給される。各インジェクタは上述の制御系の制御により、所定タイミングでスロットルボディ内の吸気流路に燃料を噴射する。これにより、各気筒に所定空燃比の混合気が供給される。
【0027】
排気系は、シリンダヘッド125の前側に形成される各気筒のエグゾーストポート(排気口)と、各エグゾーストポートに接続される排気管と、排気管に接続される消音器(マフラー)とを有する。各気筒の排気管は、エグゾーストポートから一旦下方へ延出して、クランクケース123の下側で合流して一体化する。一体化した排気管はさらに後方へ延出する。そして、排気管の後端には、消音器が取り付けられる。
【0028】
冷却系は、シリンダブロック124などに冷媒(冷却水)を循環するように形成されるウォータジャケットと、このウォータジャケットに送給する冷媒を冷却するラジエータ130とを有する。ラジエータ130は、自動二輪車100の前面視において、横長の略矩形(長方形)の形状を有する。そして、ラジエータ130は、図2に示すように、ステアリングヘッドパイプ101の下部付近からクランクケース123の前方付近にかけて、前傾姿勢となるように配置される。このため、エンジン121のシリンダブロック124は、自動二輪車100の前面視において、ラジエータ130によって覆われる。また、ラジエータ130は、車体フレーム10などに支持される。
【0029】
潤滑系は、エンジンユニット40の可動部(摺動部など)に潤滑油を供給してそれらを潤滑する。潤滑系はオイルポンプを有し、このオイルポンプによってオイルパン127から潤滑油を吸い上げ、エンジンユニット40の可動部に供給する。例えば、潤滑系は、クランクシャフト122や、シリンダヘッド125およびシリンダヘッドカバー126に設けられる動弁装置や、動弁装置に動力を伝達するカムチェーンや、トランスミッションなどに、潤滑油を供給する。また、潤滑系は、潤滑油を冷却するためのオイルクーラ131を有する。オイルクーラ131は、図2に示すように、ラジエータ130の下方に、複数のステー132,133によって支持される。なお、これらのステー132,133は、クランクケース123に結合されている。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る車体フレーム10の構造について説明する。図2に示すように、車体フレーム10は、ステアリングヘッドパイプ101から後方に向かって延伸する左右一対のメインフレーム11と、メインフレーム11に接合され後方下方に向かって延びるピボットフレーム12とを含んで構成される。なお、メインフレーム11は、中空の筒状の構成(換言すると閉断面構造)を有する。そして、ステアリングヘッドパイプ101から分岐する左右のメインフレーム11のそれぞれは、中空の筒状の構成を維持しつつ、後方へ向けて先細りになりながら延伸し、ピボットフレーム12と接合する。
【0031】
メインフレーム11には、エンジン121を含むエンジンユニット40を保持締結するための前垂下部14と後垂下部15の前後二箇所の垂下部が設けられる。前垂下部14は、メインフレーム11の前部に設けられ、後垂下部15は、メインフレーム11の中央部に設けられる。これら前垂下部14と後垂下部15は、メインフレーム11から下方へ延設し、エンジンユニット40を垂下支持、即ち懸架する。なお、本発明の実施形態では、エンジン懸架ブラケット16が、前垂下部14として機能する構成を示す。エンジン懸架ブラケット16は、メインフレーム11とは別体で、かつ、メインフレーム11に着脱可能に取り付けられる。後垂下部15は板状の構成を有する。そして、後垂下部15は、閉断面構造の外側面と面一化する態様で、一枚板状に形成される。なお、図2においては、自動二輪車100の左側を示すが、右側においても左側と同様に前後二箇所の垂下部(前垂下部14と後垂下部15)を有する。なお、右側の後垂下部15には、車幅方向に貫通する開口を有する。
【0032】
図3は、車体フレーム10と、この車体フレーム10に着脱可能に取り付けられるエンジン懸架ブラケット16の構成を模式的に示す分解斜視図である。前述のとおり、本発明の実施形態では、エンジン懸架ブラケット16が前垂下部14として機能する。図3に示すように、メインフレーム11の前部には、車幅方向外側に膨出する膨出部13が設けられる。そして、この膨出部13に、前垂下部14の例であるエンジン懸架ブラケット16が、ボルト22によって着脱可能に取り付けられる。なお、本発明の実施形態では、エンジン懸架ブラケット16は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により製造される。
【0033】
膨出部13は、図3に示すように、一対のメインフレーム11の肩部付近(側面視でステアリングヘッドパイプ101の後側付近)に形成される。膨出部13は、車幅方向外側に延出する小翼型の形状を有し、その断面形状(自動二輪車の前後方向と上下方向に平行な平面での切断した断面形状)は飛行機の翼の断面形状に近似している。そして、膨出部13とメインフレーム11は一体に形成され、相互に滑らかな曲面で連続する。
【0034】
メインフレーム11の膨出部13は、前垂下部14と繋がる位置に設けられる。本発明の実施形態では、前垂下部14は、メインフレーム11とは別体のエンジン懸架ブラケット16で構成され、このエンジン懸架ブラケット16が膨出部13に着脱可能に取り付けられる。前垂下部14の例であるエンジン懸架ブラケット16は、自動二輪車100の側面視において、おおむね上下方向に長く、ある程度前傾する矩形状に形成される。そして、その下端には、エンジン121を含むエンジンユニット40を懸架するための前下懸架部17が設けられる。一方、後垂下部15は、自動二輪車100の側面視において、おおむね逆三角形状(底辺が上側に位置し、頂点が下側に位置する)に形成される。エンジン懸架ブラケット16の下端部には、エンジンユニット40を懸架するための前上懸架部18が設けられる。
【0035】
エンジン懸架ブラケット16の前下懸架部17は、エンジン121を含むエンジンユニット40のケーシングアセンブリの前下部に、ボルトを介して締着される。後垂下部15の前上懸架部18は、エンジンユニット40のケーシングアセンブリの前上部に、ボルトを介して締着される。このように、エンジン懸架ブラケット16(前垂下部14)と後垂下部15は、それぞれエンジンユニット40を懸架する。また、図3に示されるように、ピボットフレーム12の上部には、エンジンユニット40を懸架するための後上懸架部19が設けられる。ピボットフレーム12の下部には、後下懸架部20を有する。ピボットフレーム12の後上懸架部19は、エンジンユニット40のケーシングアセンブリの後上部に、ボルトを介して締着される。後下懸架部20は、ケーシングアセンブリの後下部に、ボルトを介して締着される。このように、後上懸架部19と後下懸架部20は、それぞれエンジンユニット40を懸架する。このように本発明の実施形態では、エンジンユニット40のエンジン121の左右それぞれに、四箇所のエンジンマウントが設けられる。
【0036】
メインフレーム11の膨出部13の先端部(車幅方向外側)には、ブラケット取付面21が、メインフレーム11に一体に設けられる。そして、エンジン懸架ブラケット16は、このブラケット取付面21に、ボルト22による締結によって、メインフレーム11へ着脱可能に取り付けられる。なお、エンジン懸架ブラケット16の上端部16aは、ブラケット取付面21と実質的に同形状の内側面を有する。そして、エンジン懸架ブラケット16の上端部16aには、複数(図3に示す例では5個)のボルト挿通孔23が、略前後方向に並ぶように形成される。一方、膨出部13には、ボルト22が螺合する複数のネジ孔24(雌ネジ)が、略前後方向に並ぶように形成される。さらに、ブラケット取付面21には、エンジン懸架ブラケット16の上端部16aを膨出部13に締着する際に、両者間の位置決めを行うためのノックピン25が打設される。これによりエンジン懸架ブラケット16を、膨出部13(即ちメインフレーム11)に対して位置精度よく取付固定できる。上記のように取り付けられたエンジン懸架ブラケット16は、上端部16a側が前方に偏倚するように前傾姿勢で配置される(図2参照)。
【0037】
図4は、ラジエータ130が取り付けられた車体フレーム10の前面図である。図4に示すように、エンジン懸架ブラケット16は、膨出部13の車幅方向外側に位置しており、メインフレーム11の左右最大幅を有する部分を構成する。このように取り付けられたエンジン懸架ブラケット16は、ボディカウル117に形成される空気排出孔302を臨むように配置され、自動二輪車100の外観の意匠の一部を構成する(後述)。
【0038】
また、メインフレーム11の膨出部13に設けられるブラケット取付面21は、図4に示されるように、自動二輪車100の前面視において、車体中心線Xに対して上拡がりとなっている。すなわち、前面視において、左右のブラケット取付面21の延長線Yは、逆ハの字形状となる。なお、このように形成されたブラケット取付面21に対応して、左右のエンジン懸架ブラケット16の上端部16aの内側面も上拡がりとなる。ただし、エンジン懸架ブラケット16の本体自体は、前面視において車体中心線Xに対して実質的に平行である。
【0039】
エンジン懸架ブラケット16が車体中心線Xに略平行で直線的に配置される構成であると、縦荷重及び捩り荷重がエンジン懸架ブラケット16の軸線方向に働くため、耐力が向上する。また、車体フレーム10の縦剛性及び捩り剛性を確保しつつ、車体フレーム10の軽量化と、エンジン懸架ブラケット16の薄肉化(車幅方向寸法の短縮)や軽量化、更にはコスト低減を図ることができる。さらに、車体フレーム10の横剛性(変形量)が低減できるので、車体フレーム10の横剛性値が調整できて、深いコーナリングでの操縦性及び安定性が向上する。
【0040】
また、側面視において、前垂下部14の例であるエンジン懸架ブラケット16の前方には、ラジエータ130が設置される(図2参照)。ラジエータ130は、その上部と下部が、メインフレーム11等に取り付けられる。具体的な取付構造は、次のとおりである。図3図4に示すように、メインフレーム11には、ラジエータ130の上部を取り付けるための上方取付部26が、膨出部13と一体的に形成される。上方取付部26は、ブラケット取付面21よりも上方で、その車幅方向内側に設けられる。そして、上方取付部26は、左側又は右側に取付端面を有し、膨出部13の表面からボス状に突出するように形成される。そして、図4に示すように、ラジエータ130の左右上端部に設けられるブラケット130aが、上方取付部26に、ボルト27によって締着される。また、ラジエータ130の左右下端部には、ブラケット130b(左側)が設けられる(図2参照)。そして、ラジエータ130の下部は、このブラケット130bを介して、オイルクーラ131の上端部またはその付近に締着される。
【0041】
ラジエータ130の全幅寸法と、膨出部13の車幅方向外側の先端のブラケット取付面21どうしの距離とは、略同じ寸法である。そして、ラジエータ130がメインフレーム11等に取り付けられた状態では、前面視において図4に示すように、ラジエータ130の左右端の位置(車幅方向全幅の位置)と、膨出部13の先端のブラケット取付面21の位置とは、略一致する。
【0042】
そして、図4に示すように、ラジエータ130は、前面視において、左右のエンジン懸架ブラケット16と、メインフレーム11に設けられる膨出部13とに囲まれた位置に配置される。すなわち、ラジエータ130は、左右のエンジン懸架ブラケット16どうしの間で、かつ、メインフレーム11に設けられる膨出部13の下側に配置される。
【0043】
また、ラジエータ130の上方取付部26は、ブラケット取付面21よりも上方に位置する。そして、上方取付部26は、ブラケット取付面21よりも車幅方向中心側に、膨出部13と一体に設けられる。このような構成であると、エンジン懸架ブラケット16は、ラジエータ130を取り外すことなく脱着できる。したがって、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0044】
以上説明したとおり、エンジン121を含むエンジンユニット40は、メインフレーム11の前垂下部14の前下懸架部17と後垂下部15の前上懸架部18、および、ピボットフレーム12の後上懸架部19と後下懸架部20との複数のエンジンマウントを介して懸架される。このため、エンジンユニット40は、車体フレーム10の内側に、極めて高い結合剛性で搭載支持される。このように、本発明の実施形態によれば、車体フレーム10に車幅方向外側に膨出する膨出部13が設けられ、この膨出部13にエンジン懸架ブラケット16の締付部及びラジエータ130の取付部を一体的に設けられる。このため、部品点数削減、軽量化及びコスト低減等を図ることができる。
【0045】
また、後垂下部15に加えて、車体フレーム10の前部に前垂下部14(エンジン懸架ブラケット16)が追加されるため、車体フレーム10全体としての剛性バランスを確保する際の設計自由度が拡大する。そして、車体フレーム10の前側にエンジン懸架ブラケット16が追加される構成であると、特に車体の縦剛性及び捩り剛性値を確保しながら、横剛性値を適正化して車体フレーム10の軽量化を図ることができる。
【0046】
また、エンジン懸架ブラケット16を取り付けるためのブラケット取付面21は、上拡がりに傾斜するように形成される。このため、締結用のボルト22にかかるせん断荷重を分担することができる。これにより、ボルト22の本数を削減することができるとともに、そのサイズを小さくすることができる。したがって、コストダウン及び軽量化を図ることができる。
【0047】
次に、カウリング(以下、単に「カウル」と記す)の構成について、図5図8を参照して説明する。図5は、本発明の実施形態に係るカウルの構成例を模式的に示す前面図である。図6は、本発明の実施形態に係るカウルの構成例を模式的に示す側面図である。図7は、ボディカウル117の構成例を模式的に示す断面図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図である。図8は、本発明の実施形態に係るカウルの構成例を模式的に示す図であり、(a)は車幅方向外側から見た図、(b)は車幅方向中心側から見た図である。
【0048】
自動二輪車100は、車両外装としてカウルを有する。本発明の実施形態においては、カウルには、アッパカウル116と、左右のボディカウル117と、アンダカウル118と、左右のサイドカウル119と、左右のシートカウル120とが含まれる(図1参照)。アッパカウル116と、左右のボディカウル117と、アンダカウル118とは、一体に結合されて自動二輪車100の前部を覆う。左右のサイドカウル119は、それぞれ、自動二輪車100の両側部を覆う。左右のシートカウル120は、車両後部のシート114の周りに設けられる。ボディカウル117を含むこれらのカウルは、合成樹脂からなり、成形型を用いた射出成形によって製造される。
【0049】
図5図8に示すように、ボディカウル117は殻状の部材である。左右のボディカウル117のそれぞれは、車体フレーム10の車幅方向左右外側のそれぞれに、ボルトなどによって着脱可能に取り付けられる。そして、ボディカウル117は、エンジンユニット40(エンジン121)とラジエータ130の左右両外側を覆う。
【0050】
図5に示すように、ボディカウル117の前部には、ラジエータ130に冷却用の空気を取り入れるための空気取入孔305が形成される。換言すると、ボディカウル117の前側は開口しており、開口である空気取入孔305から冷却用の空気を取り入れることができる。例えば、図5に示すように、前面視において、ラジエータ130の車幅方向両外側に左右のボディカウル117のそれぞれが配置され、ラジエータ130の上側にアッパカウル116が配置される。そして、前面視において、ラジエータ130およびオイルクーラ131は、ボディカウル117に形成される空気取入孔305を通じて露出して見える。
【0051】
ラジエータ130は、エンジン懸架ブラケット16の前側に設けられており、前面視において、左右のエンジン懸架ブラケット16とメインフレーム11に設けられる膨出部13に囲まれる領域に配置される。このような構成によれば、自動二輪車100の走行時において、走行風がラジエータ130を通過する際に、その通過風に対する整流効果が向上する。このため、熱風の排出効率が向上し、ラジエータ130による冷却水の冷却効果を高めることができる。
【0052】
また、車体フレーム10における膨出部13の先端であるブラケット取付面21の車幅方向位置は、前面視において、ラジエータ130の全幅の位置と略同一である。そして、エンジン懸架ブラケット16の本体自体は、車体中心線Xに対して平行(すなわち略垂直)である。このような構成によれば、ラジエータ130の通過風は、左右のエンジン懸架ブラケット16を抵抗なく通過できる。
【0053】
図6〜8に示すように、ボディカウル117の側面には、ラジエータ130を通過した空気(熱風)を外部に排出するための空気排出部30が設けられる。空気排出部30は、空気排出孔302と段差部301とで構成され、図6図7(a)(b)に示すように、ラジエータ130の後方に設けられる。空気排出孔302は、車幅方向中心側と外側とを連通する開口部(貫通孔)である。段差部301は、空気排出部30の周囲の部分よりも車幅方向中心側に向かって窪む段差面状の部分である。図6などに示すように、空気排出孔302は空気排出部30の前寄りの位置に形成され、段差部301は空気排出孔302の後側に形成される。
【0054】
空気排出部30において、エンジン懸架ブラケット16は、空気排出孔302を臨む位置に設けられる。すなわち、図6図7(a)(b)に示すように、側面視において、エンジン懸架ブラケット16の車幅方向外側の面が、ボディカウル117の空気排出部30の空気排出孔302を通じて、車幅方向外側に露出する。エンジン懸架ブラケット16の露出している部分は、ボディカウル117の空気排出部30の周囲の部分と連続した形状に形成される。本発明の実施形態では、ボディカウル117の空気排出部30の周辺部は、上面視において、車幅方向外側に向かって張り出すような曲面に形成される。この場合には、エンジン懸架ブラケット16のこの露出している部分も、ボディカウル117の曲面と連続するように、上面視において、車幅方向外側に向かって張り出すような曲面に形成される。このような構成であると、エンジン懸架ブラケット16は、ボディカウル117の一部として機能し、自動二輪車100の外観の意匠を構成する。このため、エンジン懸架ブラケット16と、ボディカウル117との見た目の一体感が向上する。このように、エンジン懸架ブラケット16の一部を、空気排出部30の空気排出孔302を通じて車幅方向外側に露出させることにより、自動二輪車100の外観に特徴を与えることができる。
【0055】
また、エンジン懸架ブラケット16が空気排出孔302を臨む位置に設けられる構成であると、自動二輪車100の外観の美感の向上を図ることができる。すなわち、エンジン懸架ブラケット16が車体フレーム10に取り付けられていない状態では、側面視において、エンジンユニット40などの機材や部品が、ボディカウル117の車幅方向外側から、空気排出孔302を通じて見えることになる。これに対して、エンジン懸架ブラケット16が空気排出孔302を臨む位置に設けられる構成であると、側面視において空気排出孔302とエンジン懸架ブラケット16とが重畳する。このため、空気排出孔302がエンジン懸架ブラケット16によって隠されることになり、エンジンユニット40などの機材や部品がボディカウル117の車幅方向外側から見えなくなる。したがって、自動二輪車100の外観の美感が向上する。
【0056】
また、エンジン懸架ブラケット16は、車体フレーム10とは別体であり、車体フレーム10にボルト22によって着脱可能に取り付けられる。このような構成であると、転倒等によってエンジン懸架ブラケット16を損傷した場合には、フレーム全体ではなく、エンジン懸架ブラケット16のみを交換すればよい。このため、フレーム全体の交換は不要になり、使用者の費用の負担を低減することができる。また、エンジン懸架ブラケット16が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で製造される構成であると、エンジン懸架ブラケット16はボディカウル117とともに車幅方向に変形できる。したがって、ボディカウル117とエンジン懸架ブラケット16は損傷しにくくなる。
【0057】
図7(a)(b)に示すように、空気排出部30の段差部301は、空気排出部30の周囲から、車幅方向中心側に窪むような段差面状の構成を有する。そして、空気排出部30の段差部301は、ラジエータ130を通過した空気をボディカウル117の外側に滑らかに導くことができるように、その車幅方向外側の面が、前側から後側に向かうにしたがって滑らかに車幅方向外側に張り出していく。換言すると、段差部301は、後側から前側に向かうにしたがって、車幅方向中心に接近していく。ラジエータ130を通過した空気をボディカウル117の外側にスムーズに導くためには、段差部301の前端部303は、できるだけ車幅方向中心に近いことが好ましい。段差部301の前端部303を車幅方向中心に近付けると、エンジンユニット40(エンジン121)などの機材や部品に接近する。そこで、本発明の実施形態では、段差部301の前端部303と、エンジンユニット40(エンジン121)などの機材や部品との干渉を避けるため、段差部301の前端部303が、エンジンユニット40などの機材や部品の外形形状(プロフィール)に応じた(倣った)形状に形成される。このような構成であると、段差部301とエンジンユニット40などの機材や部品との干渉を防止しつつ、段差部301の前端部303を車幅方向中心に近付けることができる。したがって、ラジエータ130を通過した空気を、ボディカウル117の外側に滑らかに導くことができる。なお、段差部301の前端部303の具体的な形状は、特に限定されない。前端部303の形状は、その車幅方向中心側に設けられる機材や部品等の外形形状に応じて設定される。
【0058】
また、エンジン懸架ブラケット16の車幅方向中心側の面は、後方に向かうにしたがって車幅方向外側に向かって広がるように傾斜する。すなわち、左右のエンジン懸架ブラケット16の車幅方向中心側の面どうしの距離は、後方に向かうにしたがって大きくなる。このような構成によれば、空気排出部30を通過する空気の整流の効果を高め、ラジエータ130を通過した空気を排出する効果を高めることができる。なお、図7(a)(b)においては、エンジン懸架ブラケット16が中空に形成される構成を示すが、この構成に限定されない。エンジン懸架ブラケット16は、中空であってもよく、中実であってもよい。
【0059】
以上説明したとおり、エンジン懸架ブラケット16の車幅方向外側の面は、上面視において車幅方向外側に向かって張り出すような曲面に形成される。また、車幅方向内側の面は、車幅方向外側に向かって広がるように傾斜する。このため、エンジン懸架ブラケット16の断面形状は、図7(a)(b)に示すように、飛行機の翼の断面形状に似た紡錘形に形成される。すなわち、エンジン懸架ブラケット16は、自動二輪車100の前後方向を基準として、前後方向略中央の厚さ(車幅方向寸法)が大きく、前側および後側に向かうにしたがって滑らかに薄くなる。
【0060】
そして、図8に示すように、側面視において、エンジン懸架ブラケット16と、前端部303を含む段差部301の一部が重畳する。すなわち、エンジン懸架ブラケット16は、段差部301の前端部303の車幅方向外側に、ある程度の距離を置いて離間した位置に設けられる。このため、側面視において、段差部301の前端部303、すなわち、エンジンユニット40などの機材や部品のプロフィールに応じた(倣った)形状に形成される部分は、エンジン懸架ブラケット16によって、車幅方向外側から見えないように隠される。したがって、このような構成によれば、自動二輪車100の外観の美感が損なわれない。
【0061】
また、段差部301の前端部を含む一部とエンジン懸架ブラケット16とが車幅方向にある距離をおいて重畳する構成であると、段差部301とエンジン懸架ブラケット16とにより、ラジエータ130を通過した空気(熱風)の経路が形成される。このため空気の整流の効果が向上し、ラジエータ130を通過した空気の排出の効率が向上する。
【0062】
図8(a)に示すように、空気排出部30の空気排出孔302は、側面視において車幅方向中心側と外側とを連通するように開口する。すなわち、エンジン懸架ブラケット16が取り付けられていない状態では、側面視において、ボディカウル117の車幅方向外側から、空気排出孔302を通じて、エンジンユニット40などの機材や部品が見えることになる。そして、エンジン懸架ブラケット16を、この空気排出孔302を臨むように設けることで、側面視において空気排出孔302が見えないように隠す。このような構成であると、ボディカウル117を、成形型を用いて射出成形によって製造する場合に、アンダーカット処理が不要になる。すなわち、空気排出孔302にオーバーラップするような構造をボディカウル117に一体に形成しようとすると、成形型の抜き方向に、空気排出孔302とこのような構造とをオーバーラップさせる必要がある。このため、ボディカウル117を射出成形により製造する際に、アンダーカット処理が必要になる。これに対して、本発明の実施形態は、空気排出孔302に、ボディカウル117とは別体のエンジン懸架ブラケット16をオーバーラップさせる構成である。すなわち、空気排出孔302にオーバーラップする構造を、ボディカウル117に形成しなくてもよい。このため、ボディカウル117を射出成形により製造する際に、アンダーカット処理が不要である。したがって、ボディカウル117の射出成形に用いる成形型の構造が複雑になることがない。
【0063】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10:車体フレーム、11:メインフレーム、12:ピボットフレーム、13:膨出部、14:前垂下部、15:後垂下部、16:エンジン懸架ブラケット、17:前下懸架部、18:前上懸架部、19:後上懸架部、20:後下懸架部、21:ブラケット取付面、22:ボルト、23:ボルト挿通孔、24:ネジ孔、25:ノックピン、26:上方取付部、27:ボルト、100:自動二輪車、101:ステアリングヘッドパイプ
【要約】      (修正有)
【課題】カウリングを有する自動二輪車において、外観の美感の向上を図る。
【解決手段】自動二輪車は、エンジンと、車体フレーム10と、エンジンを車体フレーム10に固定するエンジン懸架ブラケット16と、エンジンの冷媒を冷却するラジエータと、エンジンの外側を覆うボディカウル117とを有し、ボディカウル117の側方には、ラジエータを通過した空気をボディカウル117の外部に排出する空気排出部30が設けられ、エンジン懸架ブラケット16は、車体フレーム10とは別体に形成され、側面視において空気排出部30の少なくとも一部に重畳する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8