(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定部材(50)が前記貫通孔に配置されているときに、前記第1押圧部(52)が前記2つの突起部(16)の一方を押し圧しかつ前記第2押圧部(54)が前記2つの突起部(16)の他方を押し圧することで、該2つの突起部(16)は、該固定部材(50)から引き込み力を受けるように形作られている、請求項1から3のいずれか一項に記載の連結装置。
前記第1押圧部(52)および前記第2押圧部(54)は、前記固定部材が前記第2部材の前記貫通孔に配置されているとき、前記第1部材の前記突起部が前記受容穴へ挿入されたり該受容穴から取り除かれたりすることを可能にする第1解放状態と、前記突起部に固定力を及ぼす第2固定状態とに選択的に位置付けられる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の連結装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0017】
まず、本発明の第1実施形態について
図2から
図12に基づいて説明する。以下に説明される第1実施形態に係る連結装置(つまり連結機構)は、第1部材10と第2部材30とを連結するように適用されている。なお、ここでは、第1部材10と第2部材30とを組み立てた完成品を組立体と称する。
【0018】
第1部材10は、ドリル先端部材(工具先端部材)としてのスローアウェイチップを模した部材(モデル部材)であり、
図1のドリル1のスローアウェイチップ2の切れ刃3を模したまたはそれに相当する部分12を直接的に有する。第1部材10は、さらに、切りくず排出溝を模した凹部14を有する。なお、第1部材10は、スローアウェイチップとして構成されるように形状変更されてもよく、例えば、その部分12は切れ刃形状を有するように変更され得る。
【0019】
第2部材30は、工具本体としてのドリル本体を、特にその先端部を模した部材(モデル部材)であり、ドリル本体の形状により近い形状を有してもよく、ドリル本体そのものとされてもよい。第2部材30は、
図1のドリル本体4のうち、スローアウェイチップ2がねじ5で取り付けられる部分に対応する。第2部材30は、切りくず排出溝を模した凹部32を有する。第2部材30は、
図1のドリル本体と同様に、柄部6および細長いシャンク部7を模した構成をさらに有することができ、らせん状の切りくず排出溝8や油穴9に相当する構成をさらに有することができる。なお、以下の説明から明らかになるように、本実施形態の連結装置は、
図1のドリル1のように2本のねじを用いるものではない。
【0020】
第1部材10および第2部材30はそれぞれドリルの部材を模した部材であるので、中心軸線A周りの回転で略円柱形状の回転輪郭を有する。しかし、第1部材10は、そのような形状に限定されず、単なる円筒や角柱等の形状を実質的に有してもよく、軸線周りに回転して用いられるものでなくてもよい。第2部材30においても、同様である。
【0021】
本実施形態の連結装置70は、概略的に、第1部材10を第2部材30に連結するとき、第1部材10の2つの突起部16を第2部材30に形成された2つの受容穴34にそれぞれ挿入し、第2部材30の貫通孔36に配置された固定部材50の一端部に力を付与することで固定部材50の第1押圧部52および第2押圧部54を移動させ、それにより受容穴34に挿入された第1部材10の突起部16に第1部材10を第2部材30に固定するための力つまり固定力を及ぼすように構成されている。
【0022】
第1部材10と第2部材30とを連結するように適用された連結装置70は、第1部材10に設けられた2つの突起部16と、これら突起部16を受け容れることができるように第2部材30に形成された2つの受容穴34と、第2部材30に貫通するように設けられた貫通孔36と、そして、固定部材50とを備える。固定部材50は、ネジ式で連結される第1固定要素56と第2固定要素58とからなる。第1固定要素56は第1押圧部52を一体的に有し、第2固定要素58は第2押圧部54を一体的に有する。
【0023】
第1部材10の端面(連結面)15からは2つの突起部16が延びている。2つの突起部16は、同じ形状を有するように形成され、組立体の軸線Aに一致する第1部材10の軸線A1の周りに180度回転対称に配置されている(例えば
図5参照)。各突起部16は、第1部材10の軸線A1の方向に実質的に延びている。これら突起部16が設けられた端面15は平面になるように構成されているが、特有の他の形状を有してもよい。
【0024】
突起部16は、その先端部18で太くなるように形成されている(
図6参照)。突起部16には、先端部18から基端部つまり端面15側に延びる、第1部材10を第2部材30に固定するときに固定部材50に当接するための面部分つまり当接可能面が定められる。
図4において斜線を施した部分つまり面部分19の全体または一部分が、当接可能面を構成することができる。
図6に示すように、突起部の根本側から先端側に延びる部分(
図4の面部分19を含む)が凹んだ形状を有する。特に、第1部材10の突起部16のこの面部分19は、固定部材50の押圧部52、54のテーパ形状に対応する凹形状を有する。このような突起部16の形状は、固定部材50の押圧部52、54がしっかりと嵌まるようにまたはしっかりと係合するように定められ、固定部材50との係合を良好にする。特に、面部分19のうち、法線が第1部材10側つまり端面15側を向く成分を含む部分が、後述する引き込み力を受ける部分として機能し得る(
図6参照)。なお、引き込み力とは、軸線A方向において第1部材から第2部材の方向の成分を含む力である。加えて、突起部はこのように構成されるので、第1部材10が第2部材30に連結されたつまり固定されたとき、固定部材50の軸線よりも実質的に穴34の奥側に位置する突起部16の部分つまり先端部18は固定部材50の下側に向けて突出する。したがって、
図4および
図6からよりよく理解できるように、突起部16の先端は、略L字形状を有する。
【0025】
第2部材30には、その端面(連結面)33に各々が開く2つの受容穴34が形成されていて、その各々は第1部材10の対応する1つの突起部16を受容するように形成されている。第1部材10に2つの突起部16があるので、第2部材30には2つの受容穴34がある。2つの受容穴34は、同一形状を有し、組立体の軸線Aに一致する第2部材30の軸線A2周りに180度回転対称に配置されている。各受容穴34は、第2部材30の軸線A2の方向に実質的に延びている。なお、これら受容穴34が設けられた端面33は平面になるように構成されているが、第1部材10の端面15に対応する他の形状を有してもよい。
【0026】
第2部材30は、第2部材30を貫通するように延びる貫通孔36を有している。貫通孔36は、真っ直ぐに延び、真っ直ぐな軸線36Aを定められることができる。本実施形態では、貫通孔36は、第2部材30の軸線A2に直交する面上に延びる軸線36Aを有するように形成されている。この貫通孔36の軸線36Aに直交する断面での貫通孔36の外郭形状または輪郭は切断箇所に応じて変化する。
図8に表されるように、貫通孔36は、中央部で細く、その両端部で中央部よりも太くなるように形成されている。貫通孔36は第2部材30の軸線A2周りに対称な形状に形成され、その両端部の各々は固定部材50の第1押圧部52または第2押圧部54が貫通孔36の軸線36A方向に移動できるように形成されている。貫通孔36の中央部は、第1押圧部52や第2押圧部54が進入および通過できないように形成されている。
【0027】
貫通孔36は、後述する固定部材50をそこに実質的に収容することができるように形成されているので、収容横孔とも称され得る。この貫通孔36は2つの受容穴34にその中途でつながっている(
図8参照)。第1部材10の突起部16が受容穴34に受け入れられたとき、その突起部16は貫通孔36と受容穴34との交差領域に到達する。特に、第1部材10の端面15と第2部材の端面33とが突き合わされるつまり当接するまで突起部16が受容穴34に挿入されたとき、突起部16の先端部18は、貫通孔36の軸線36Aを概ね越える位置(固定可能位置)に達する。このとき、突起部16の面部分19のうちの上述の法線が第1部材10の端面15を向く成分を含む部分の過半が、貫通孔36の軸線36Aよりも第2部材20の端面33から離れたところに位置する。これは、第1部材10を第2部材30に固定するとき、固定部材50からの第2部材30内への引き込み力をより好適に第1部材10に伝えることを可能にする。
【0028】
ここで、固定部材50に関して説明する。固定部材50は、第1固定要素56と第2固定要素58とが螺合して連結するように構成されている。
【0029】
第1固定要素56は長細い棒状の部材であり、その軸線56A方向に延びている。第1固定要素56は、
図9に示すように、一方の端部(第1端部)59の周囲にネジ山が形成され雄ネジ部が形成され、もう一方の端部(第2端部)60の端面にはドライバ穴(工具被係合部)が形成されている。第1固定要素56の第2端部60には第1押圧部52が形成されている。押圧部52は、テーパ状に形成され、第2端部60から第1端部59側に向けて先細りするように形付けられている。
【0030】
第2固定要素58は、第1固定要素56の雄ネジ部61が螺合する雌ネジ部62を備える中空の部材である。第2固定要素58の外周面の一部にはテーパ状の第2押圧部54が形成されている。第2固定要素58の押圧部54のテーパの傾斜角度は第1固定要素56の押圧部52の傾斜角度と同じである。第2固定要素58の押圧部54が第1固定要素56の押圧部52と対向するように配置された状態に、第2固定要素58は第1固定要素56と螺合する。このように連結された第1固定要素56と第2固定要素58とが互いに対して相対回転運度することで、それら対向する押圧部52、54の間隔は変化する。
【0031】
第2固定要素58の側面には、回転防止部としての平坦な面63を有する面部分64が形成されている。したがって、第2固定要素58は、その軸線58Aに直交する断面において、略D形状を有する。これに対して、第2部材の貫通孔36には、回転防止部としての面部分64が当接可能な被当接面38が形成されていて、貫通孔36内での第2固定要素58のその軸線58A周りの回転は実質的に防止される。第2部材30の被当接面38は、第1固定要素の回転に伴って第2固定要素が回転することを防ぐように第2固定要素58の回転防止部である面63または面部分64と協働する部分に相当し、一方で第2固定要素58の貫通孔36でのガイド機能を担う。
【0032】
第1固定要素56と第2固定要素58とは、連結された状態で、貫通孔36に配置される。第2固定要素58は一方の受容穴34に挿入されて貫通孔36の一方の端部に配置され、第1固定要素56は貫通孔36のもう一方の端部から挿入される。これら第1および第2固定要素56、58は貫通孔36で互いに螺合する、つまりねじ形式で連結される。上述のごとく、第2部材30の貫通孔36に配置されているとき、第2固定要素58はその軸線周りの回転ができないように拘束されているので、第1固定要素56の回動により、第1固定要素56と容易に螺合することができる。
【0033】
第1固定要素56はテーパ形状の押圧部52を有し、第2固定要素58はテーパ形状の押圧部54を有し、これら押圧部52、54は第1固定要素56の中央部分56cに比して部分的に大径を有する。一方、この第1固定要素56の押圧部52が出入りできるように貫通孔36の両端部36d、36eは貫通孔36の中央部36cよりも太く形成されているが、貫通孔36の中央部36cは第1固定要素56の押圧部52が通れないように形成されている。したがって、第1固定要素56は、貫通孔36を通過することができない。第2固定要素は、回転防止部である面63または面部分64が形成されていて、その肩部64aが張り出すように形成されている(
図10参照)。この肩部64aの存在により、第2固定要素58は、所定の範囲内で貫通孔の軸線方向に移動可能であるが、貫通孔の軸線方向から貫通孔36に出入りできない(
図8および10参照)。また、第2固定要素58の第2押圧部54は、貫通孔36の中央部36cを通れないように形成されている。したがって、受容穴34から貫通孔36に挿入された第2固定要素58は、貫通孔36を通過することができない。よって、連結された第1固定要素56と第2固定要素58とは、貫通孔36から脱落することがない。なお、貫通孔36の両端部は、固定部材50の第1固定要素56の第2端部60に適した円形形状を有する。
【0034】
また、貫通孔36は、いずれの端部に第1押圧部52または第2押圧部54が配置されてもよいように、いずれの端部にも回転防止部としての面部分64が当接可能な部分つまり被当接面38が形成され、いずれの端部も同形状に形成されている。なお、第1固定要素56の中央部分56cの一部はそれの第1端部59の雄ネジ部よりも太く形成されているが、中央部分56cはこのように太く形成されなくてもよい。
【0035】
第1固定要素56と第2固定要素58とが連結された固定部材50は、貫通孔36に配置されているとき、第1固定要素56をレンチ等の工具で回転させることで、2つの押圧部52、54間の間隔が変えられる。互いに連結された第1固定要素56と第2固定要素58とが、貫通孔36で、第1固定要素56の押圧部52と第2固定要素58の押圧部54との間隔が所定距離以上である、第1解放状態にあるとき、第1部材10の突起部16の第2部材30の受容穴34への挿入、および、該突起部16の該受容穴34からの取り除きが可能になる。一方、互いに連結された第1固定要素56と第2固定要素58とが、貫通孔36において、第1固定要素56の押圧部52と第2固定要素58の押圧部54との間隔が狭い、つまり、第1解放状態にあるときの間隔よりも狭い第2固定状態にあるとき(
図12参照)、突起部16は固定力を及ぼされ得、それにより第1部材10の第2部材30への固定が可能になる。よって、貫通孔36において第1固定要素56と第2固定要素58とを連結した状態で、第1部材10の突起部16の第2部材30の受容穴34への挿入、該突起部16の該受容穴34からの取り除き、および、突起部16の固定を行うことが可能になる。第1押圧部52と第2押圧部54とが第2固定状態にあるとき、それらは所定固定距離、離れている。なお、
図12は、
図3の連結された組立体における、組立体の軸線Aに直交すると共に第2部材の貫通孔の軸線を含む面での部分断面図であり、第1部材側から第2部材側の方向における図である。ただし、
図12には、第1固定要素56および第2固定要素58が第1解放状態にあるときの一例が仮想線で表され、第2固定状態にあるときが実線で表されている。
【0036】
以下、第1部材10と第2部材30との連結作業を説明する。
【0037】
先ず、第2固定要素58を2つの受容穴のうちの一方の受容穴34に挿入し、貫通孔36の一方の端部に配置する。そして、第1固定要素56を貫通孔36のもう一方の端部から挿入する。これにより第1固定要素56の雄ネジ部61が形成された第1端部59は貫通孔36の中央部36cを通り抜けて、第2固定要素58に螺合される。これにより、第2固定要素58を第1固定要素56に螺合させた状態で、固定部材50が貫通孔36に配置される。
【0038】
第1部材10の突起部16を第2部材30の受容穴34に差し込むために、必要に応じて、貫通孔36に配置されている固定部材の第1固定要素の第2端部60を、第1固定要素56の第1押圧部52と第2固定要素58の第2押圧部54との間隔を広げるように回す。これにより、第1固定要素56の押圧部52と第2固定要素58の押圧部54とは、第1解放状態になる。このとき、第1固定要素56と第2固定要素58とからなる固定部材50は、
図12に仮想線で示すように、貫通孔36から部分的にはみ出した状態にあり得る。なお、第1解放状態とは、第1固定要素56と第2固定要素58とが連結されていて、第1部材10の突起部16の第2部材30の受容穴34への挿入および突起部16の受容穴34からの取り出しが可能である状態である。
【0039】
次に、突起部16を受容穴34に挿入し、第1部材10の端面15と第2部材30の端面33とを当接させる。このとき、貫通孔36の固定部材50と、第2部材30と、第1部材10の突起部16との間には、ある程度の隙間があり、貫通孔36の軸線および固定部材50の軸線を穴34の奥側に越えて、第1部材10の突起部16の先端部18は実質的に位置付けられる。
【0040】
そして、第1部材10と第2部材30とをそれらの連結面15、33で当接させた状態で、第1固定要素56のドライバ穴にレンチ等を差し込み、第1固定要素56を回転させる(つまり、固定部材50の一端部に力を付与する)。第1固定要素56の回動に伴い、第1固定要素56の押圧部52と第2固定要素58の押圧部54との間隔が徐々に狭くなり、第1固定要素56の押圧部52と第2固定要素58の押圧部54とは第1解放状態から第2固定状態に移る。固定部材50の押圧部52、54間の間隔がある程度まで狭くなり固定位置に至ることで、各押圧部52、54が突起部16を第2部材の受容穴34の内壁に向かって押し付ける。さらに、第1部材10の突起部16の当接面つまり面部分19は、
図6に表すように法線が第1部材10の端面15を向いた成分を含む傾斜面も含んでいるため、各突起部16は固定部材の対応する押圧部から第2部材30側に引き込む力を同時に受ける。なお、
図6では、固定部材が仮想円ICで理解を容易にするように表されていて、その円ICの位置および大きさは固定部材50の位置および大きさに必ずしも合致するものではない。このように、突起部16が異なる2つの力、つまり(軸線Aに直交する面上の力成分を含む)押し付け力および(軸線Aに平行な力成分を含む)引き込み力を受けるため、第1部材10と第2部材30とが強固に連結される。また、そのような傾斜面が突起部16にあるので、第1部材10の突起部16の先端が固定部材50の下に潜り込んだ状態になるため、突起部16が第1固定要素56および第2固定要素58に引っ掛かり、第1部材10の突起部16は第2固定要素30の受容穴34から抜けなくなる。
【0041】
また、固定部材50の押圧部52、54間の間隔は固定部材50の一端部の回動作業で変化するので、第1固定要素56の押圧部52および第2固定要素58の押圧部54がそれぞれ対応する突起部16に実質的に同時に実質的に同じ大きさの力を加えることができる。したがって、第1部材10に不要な曲げ応力が加わることを防ぐまたは抑制することができる。
【0042】
また、
図12に示すように、第1部材の一方の突起部(第1突起部)16Aと第1固定要素56との接触部と、第1部材の別の突起部(第2突起部)16Bと第2固定要素58との接触部とが、組立体の軸線Aの方向から見て、固定部材50の回転軸線50Aを基準として互いに異なる側にある。言い換えると、
図12に示す方向から見るとき、2つの突起部16A、16Bが固定部材50を挟むように配置される。このことにより、2つの突起部16に均等に力が加わりやすくなる。
【0043】
なお、第1部材10が第2部材30にしっかり連結された状態つまり固定状態から、それらを分離するためには、固定部材50の一端部が、押圧部52、54間の間隔が広がるように回動される。これにより、固定部材の押圧部52、54は、第2固定状態から第1解放状態に移る。したがって、第2部材30の受容穴34から第1部材10の突起部16を抜くことが可能になる。
【0044】
以上述べたように、固定部材を構成する第1固定要素と第2固定要素とのうちの一方の要素の一端部にのみ力を加えることで、つまり1回の操作で、均等な固定力を第1部材と第2部材との間に与えることができる。これにより、第1部材を、簡単に、第2部材に取り付けたり、それを取り外したりすることができる。
【0045】
また、連結装置を共通化または規格化することで、単一の第2部材に、異なる種類の第1部材を取り付けることができる。例えば、第1部材をスローアウェイチップとして構成すると共に第2部材を工具本体として構成したヘッドまたは刃先交換式ドリルでは、異なる外径の複数の第1部材つまり刃部の中から、加工予定の穴の径に応じて1つの第1部材を選択し、共通の第2部材に取り付けることができる。したがって、異なる大きさの穴を、最少の部品数で加工できる。よって、工具の管理コストも低減される。
【0046】
なお、本第1実施形態では、固定部材の第2固定要素は第2部材の貫通孔の軸線方向において貫通孔へ出入りできない。しかし、第2固定要素が貫通孔の軸線方向において貫通孔を出入りできるように、貫通孔および第2固定要素のうちの両方または一方が設計変更されてもよい。
【0047】
次に、本発明に係る第2実施形態について
図13から
図20に基づいて説明する。本第2実施形態の切削工具100では、上記第1実施形態の連結装置70と概ね同じ構成を有する連結装置が適用され、それを用いて第1部材としての工具先端部が、第2部材としての工具本体に連結される。したがって、上で説明した構成要素に対応する構成要素に同じ符号を用いることで、第2実施形態の連結装置は以下では簡単に説明される。
【0048】
本第2実施形態の第1部材110は、工具先端部材として構成されていて、特にドリル先端部材として構成されている。第1部材110は、2つのインサート取付座181、182を備える。各インサート取付座には、切れ刃を備える部材である切削インサート183が取り付けられる。なお、第2実施形態では、第1部材110に、同じタイプの2つの切削インサート183がそれぞれネジで着脱自在に取り付けられる。しかし、それは異なるタイプの切削インサートが取り付けられるように構成されてもよい。
【0049】
2つのインサート取付座181、182は、工具軸線(または工具回転軸線)A近傍に設けられた中央側インサート取付座181と、外周側に設けられた外周側インサート取付座182とを有する(特に
図14、16参照)。中央側インサート取付座181に取り付けられた切削インサート183の使用切れ刃の軸線A周りの回転軌跡が、外周側インサート取付座182に取り付けられた切削インサート183の使用切れ刃の軸線A周りの回転軌跡に部分的に重なるように、第1部材110は設計されている。
【0050】
さらに、第1部材110は、その外周面に、各々にガイドパッド184が着脱自在に取り付けられる2つの取付座185、186を有する。なお、ガイドパッド184は、穴側面を加工する機能を有する部材に置き換えられてもよい。加えて、第1部材110には、切りくず排出溝187と、油穴188が形成されている。
【0051】
本第2実施形態の第2部材130は、工具本体として構成されていて、特にドリル本体として構成されている。第2部材130は、らせん状の切りくず排出溝189と、油穴190を有している。なお、
図20は第2部材130の一部分の図であり、第1部材110に連結される先端部の図であり、その他の部分を省略した図である。
【0052】
第1部材110と第2部材130との連結に、第1実施形態における連結装置と概ね同じ構成を有する連結装置が適用されている。なお、本第2実施形態の連結装置は上記第1実施形態の連結装置70と第1固定要素の形状の点で明らかに相違するが、他の構成の点ではそれと概ね同じである。第2実施形態における連結装置を簡単に以下に説明する。
【0053】
第1部材110の端面(連結面)15には、工具軸線Aに一致する第1部材110の軸線A1に関して回転対称に形成された2つの同一の突起部16が形成されている。突起部16の先端部18は、太くなるように形成されている。第1部材の突起部16は、固定部材のテーパ形状の押圧部に対応する形状を有する。
【0054】
第2部材130の端面(連結面)33には、工具軸線Aに一致する第2部材130の軸線A2に関して回転対称に形成された2つの同一の受容穴34が形成されている。2つの受容穴34とつながるように貫通孔36が第2部材130には形成されている。貫通孔36の軸線が第2部材の軸線に直交する面上に延びるように貫通孔36は形成されている。貫通孔36には、固定部材50が配置されるように形成されていて、そのために、上述の被当接面38が貫通孔36の両端部に形成されている。
【0055】
固定部材50はテーパ形状の第1押圧部52を有する第1固定要素56と、テーパ形状の第2押圧部54を有する第2固定要素58とからなっている。第1固定要素56の一端部には雄ネジ部が形成され、他端部60にはドライバ穴が形成されると共に第1押圧部52が形成されている。なお、第1固定要素56の中央部分は、第1実施形態の第1固定要素の中央部分とは異なり、ストレート形状に形成され、ネジ部よりも特に太くされていない(
図13参照)。しかし、第1固定要素56の中央部分は、第1実施形態の第1固定要素56の中央部分と同じように、太くされてもよい。第2固定要素58には第1固定要素56の雄ネジ部が螺合する雌ネジ部が形成されている。貫通孔36に配置されているとき、第1押圧部52が第2押圧部54に対向するように、第1固定要素56は第2固定要素58に螺合する。貫通孔36において互いに螺合した状態で、第1固定要素56のドライバ穴にレンチを係合させて第1固定要素を回転させることで、第1固定要素56は第2固定要素58に対して相対運動し、それにより、第1押圧部52と第2押圧部54との間隔は変化する。
【0056】
第1押圧部52と第2押圧部54とが第1解放状態にあるとき、第1部材110の各突起部16は対応する第2部材130の受容穴34に挿入可能であり、また、受容穴34から抜かれることができる。第1押圧部52と第2押圧部54とが第2固定状態にあるとき、第2部材130の受容穴34に挿入されている第1部材110の突起部16は押付力と引き込み力とを受け、第1部材は第2部材にしっかりと固定される。
【0057】
次に、本発明に係る第3実施形態を
図21に基づいて説明する。本第3実施形態の切削工具200は、上記第1実施形態と同じ連結装置が用いられ、第1部材としての工具先端部材が、第2部材としての工具本体に連結される。したがって、ここでは、第3実施形態の連結装置の説明は省略される。
【0058】
第3実施形態における第1部材210としての工具先端部は、第2実施形態における第1部材110から、その外周面にガイドパッドを取り付けるための取付座を省いた構成を有する。外周面の取付座を有さないことを除いて、第3実施形態における第1部材210は、第2実施形態の第1部材110と概ね同じ構成を有する。
【0059】
本第3実施形態の第2部材230は、工具本体として構成されていて、特にドリル本体として構成されている。
図21では、第2部材230の先端部のみ表されている。第3実施形態の第2部材230は、第2実施形態の第2部材130と実質的に同じ構成を有する。
【0060】
次に、本発明に係る第4実施形態を
図22および
図23に基づいて説明する。本第4実施形態の切削工具300は、上記第1実施形態と同じ連結装置が用いられ、第1部材310としての工具先端部材が、第2部材330としての工具本体に連結される。したがって、ここでは、第4実施形態の連結装置の説明は省略される。
【0061】
第4実施形態における第1部材310としての工具先端部は、その軸線A1に沿って、ドリルインサート391が着脱自在に配置されるように構成されている。ドリルインサート391は、下穴をあけるために用いられることができる。
【0062】
さらに、第1部材310は、2つのインサート取付座381、382を有する。これらインサート取付座の各々には、所定のカートリッジ383、384を介して、切削インサート385が着脱自在に取り付けられる。2つのインサート取付座は、工具軸線(または工具回転軸線)Aに相対的に近いところに切削インサートを配置するように構成された中間インサート取付座381と、外周側に切削インサートを配置するように構成された外周側インサート取付座382とを有する(特に
図23参照)。中間インサート取付座381に取り付けられた切削インサート385の使用切れ刃の軸線A周りの回転軌跡が、外周側インサート取付座382に取り付けられた切削インサート385の使用切れ刃の軸線A周りの回転軌跡に部分的に重なるように、第1部材310は設計されている。さらに、中間インサート取付座に取り付けられた切削インサートの使用切れ刃の軸線A周りの回転軌跡が、上記ドリルインサート391の回転軌跡と部分的に重なるように、第1部材310は設計されている。
【0063】
第4実施形態における第1部材310では、このようにカードリッジを介して切削インサートが取り付けられる。したがって、第1部材310をカートリッジで保護することが可能になり、また、異なるタイプのカートリッジを用いることで切削インサートの位置を変更することが可能である。
【0064】
上記第1から第4実施形態では、第2部材の貫通孔において、複数の要素が螺合して一体化されている固定部材は、第1部材の突起部が受容穴に出入り可能である第1解放状態と、第1部材を第2部材に固定する第2固定状態とを選択的にとり得た。しかし、固定部材は、貫通孔において、そのような第1解放状態を取りえないように構成されてもよい。つまり、複数の要素が一体化された固定部材が貫通孔に配置されているとき、第1部材の突起部は第2部材の受容穴に出入り可能でなくてもよい。この場合、固定部材が一体化されていない状態で、受容穴に突起部が挿入された後、固定部材の複数の要素が貫通孔に差し込まれて螺合され、これにより第1部材が第2部材に固定される。第1部材を第2部材から取り外すときには、固定部材の複数の要素の係合が解除されて、固定部材は部分的にまたは全体的に貫通孔から取り除かれ得る。
【0065】
次に、本発明に係る第5実施形態を
図24に基づいて説明する。第5実施形態の組立体は、上記第1から第4実施形態に対して連結装置に関して相違し、連結装置に関する構成を除いて第1部材と第2部材に関しては第1実施形態と概ね同じである。よって、ここでは、連結装置に関してのみ説明する。ただし、以下では、上で説明した構成要素に対応する構成要素に同じ符号を用いて、各構成要素の詳細な説明は省略される。
【0066】
第5実施形態の連結装置では、固定部材50は、第1押圧部52が第2押圧部54に対して反対側を向くように構成されている。
図24は、第2部材の貫通孔36に固定部材50が配置されていて、第1押圧部52および第2押圧部54が第2固定状態にあるときを表している。
図24では、第2部材の受容穴34に挿入された第1部材の2つの突起部16は第1押圧部52および第2押圧部54によってしっかりと押し圧されて固定されている。なお、第1部材の突起部16は、固定部材のテーパ形状の押圧部に対応する形状を有するので、これにより、上記の第1から第4実施形態と同様に、第1部材は、押圧力および引き込み力を受けて第2部材に固定される。
【0067】
第5実施形態では、固定部材50は、3つの部材、つまり、第1、第2および第3固定要素から構成されている。第1固定要素56は、2つの雄ネジ部を有する部材であり、その一端部にドライバ穴を有している。第2固定要素58は、第1固定要素56の先端側の第1雄ネジ部391に螺合されるように雌ネジ部を有し、一体化された第2押圧部54を有する。第3固定要素392は、第1固定要素56の第1雄ネジ部とドライバ穴との間に形成された第2雄ネジ部393に螺合されるように雌ネジ部を有し、一体化された第1押圧部52を有する。
【0068】
第2部材の貫通孔36は、その軸線方向に、その一端部から他端部に通じるつまり両端部に開くガイド溝394が形成されている。このガイド溝394は、上記被当接面38に相当し、第2固定要素58の回転防止部としての平坦な面を有する面部分、および、第3固定要素392の回転防止部としての平坦な面を有する面部分と協働し、それらの貫通孔での回転運動を防ぐ機能を担う。
【0069】
これら第1から第3固定要素56、58、392は、貫通孔に配置されているとき、第1固定要素の回動により、第2固定要素58と第3固定要素392とが互いに対して逆方向に動き、第1押圧部52と第2押圧部54との間隔が変化するように形成されている。なお、第5実施形態では、固定部材は、これらの固定要素が互いに螺合して一体化された状態で、貫通孔に挿入されて配置される。
【0070】
図24に表される固定状態から、第1部材および第2部材を分離させるためには、第1固定要素56を回動し、それにより、第2固定要素と第3固定要素との間隔を狭め、第1押圧部52と第2押圧部54との間隔を狭める。したがって、第1押圧部52と第2押圧部54とは第1解放状態になる。これにより、第1部材の突起部16の周りに隙間ができ、突起部16を受容穴34から抜くことが可能になる。
【0071】
以上説明した第5実施形態でも、固定部材の一端部に対する回動作業で、第1部材の突起部が第2部材の受容穴に出入り可能な状態と、第1部材を第2部材にしっかりと固定する状態とを選択的に実現することができる。
【0072】
次に、本発明に係る第6実施形態を
図25に基づいて説明する。第6実施形態の組立体は、上記第5実施形態に対して連結装置に関して一部相違し、その他の構成に関しては第5実施形態と同じである。よって、ここでは、第6実施形態の第5実施形態との相違点のみ説明する。ただし、以下では、上で説明した構成要素に対応する構成要素に同じ符号を用いて、各構成要素の詳細な説明は省略される。
【0073】
第6実施形態における連結装置は、固定部材50の第2部材58側の端部に、貫通孔36内に切りくず等が入りにくいように配置された、封止部材495を有する。封止部材495は、第1固定要素56の周囲に配置される円筒状部材496と、止め具497とを有する。円筒状部材496は内部に位置付けられる第1固定要素の部分の外径よりも大きな内径を有するので、第1固定要素の回転を妨げることはない。止め具497は、嵌め込み式の部材であり、第1固定要素の先端部に取り付けられる。止め具497は、円筒状部材496が貫通孔36から抜けること、および、円筒状部材496と第1固定要素56との間に切りくず等が入ることを防止する。なお、円筒状部材は、第1固定要素の周囲にしっかりと嵌る軸受部材として構成されてもよい。
【0074】
なお、第5実施形態または第6実施形態の連結装置は、第2から第4実施形態の第1部材と第2部材との連結に適用されることができる。
【0075】
以上、本発明を第1から第6実施形態に基づいて説明したが、種々の変更が許容される。例えば、上述したいくつかの実施形態では本発明の連結装置は回転切削工具の一つとしての刃先交換式ドリルに適用されていたが、本発明は旋削工具や転削工具等の、他の形態の切削工具にも適用可能である。なお、本発明に係る連結装置は、切削工具および切削器具のみならず、種々の機械系部材、電気系部材および化学系部材など、種々の部材を連結するために用いられることができる。
【0076】
第1部材の突起部の先端形状に関しても、L字状の形状ではなく、円柱形や角形の底面を有する多角柱形状も採用可能である。また、上記第1から第6実施形態では、概ね、第1部材を工具先端部材またはそれを模した部材とし、第2部材を工具本体またはそれを模した部材とした。しかし、第1部材を工具本体とし、第2部材を工具先端部材としてもよい。つまり、工具本体に突起部を設け、工具先端部材に受容穴および貫通孔を設けてもよい。また、工具本体に、直接的にまたは間接的に切れ刃が備えられてもよい。
【0077】
なお、前述した実施形態およびその変形例等では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明については、請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。