(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回路部は、主電源の高電圧電位側に接続された第1素子と、前記第1素子に直列に接続され、かつ前記主電源の低電圧電位側に接続された第2素子と、から構成される出力回路の前記第1素子を駆動し、
前記第2電位は、前記第1素子と前記第2素子との接続点の電位であり、
前記第3電位は、前記主電源の低電圧電位であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
前記第1導電型領域と前記第1導電型半導体基板とのパンチスルー耐圧は、前記第1素子がオン状態で、前記第2素子がオフ状態であるときに過渡的に上昇する前記出力回路の前記第1素子と前記第2素子との前記接続点の電位よりも高く設定されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体集積回路装置。
前記回路部は、主電源の高電圧電位側に接続された第1素子と、前記第1素子に直列に接続され、かつ前記主電源の低電圧電位側に接続された第2素子と、から構成される出力回路の前記第1素子を駆動し、
前記第2電位は、前記第1素子と前記第2素子との接続点の電位であり、
前記第3電位は、前記主電源の低電圧電位であることを特徴とする請求項8に記載の半導体集積回路装置。
前記第1導電型領域と前記第1導電型半導体基板とのパンチスルー耐圧は、前記第1素子がオン状態で、前記第2素子がオフ状態であるときに過渡的に上昇する前記出力回路の前記第1素子と前記第2素子との前記接続点の電位よりも高く設定されていることを特徴とする請求項12に記載の半導体集積回路装置。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスは、モータ制御用インバータのほか、容量性負荷の大きいPDP(プラズマディスプレイパネル)や液晶パネルなどの電源用途、エアコンや照明などの家電用インバータ用途など、多くの分野で広く利用されている。近年、LSI技術の進歩により、1200Vまでの高電圧を確保した高耐圧IC(HVIC:High Voltage Integrated Circuit)が実用化されている。
【0003】
HVICとしては、上下アームのドライバ機能を一つのシリコンチップに搭載したICや、さらに制御回路やパワー半導体デバイスも一つのシリコンチップに搭載したICなどが系列化され、インバータ全体としても高効率化や部品数削減に貢献している。高耐圧ICの回路構成について、負荷としてモータを備えたモータ制御用インバータを例に説明する。
図9は、高耐圧ドライバICの要部(1相)の構成を示す回路図である。
図10は、パワーモジュール100動作時の中間電位Vsの変動を示す特性図である。
図10には、第1MOSFET101と第2MOSFET102とが相補にオン・オフ(on・off)したときの接続点105の中間電位Vs変動を示す。
【0004】
図9に示すように、駆動回路111は、パワーモジュール100を駆動する回路である。パワーモジュール100は、ハイサイド側の第1MOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)101(上アーム出力素子)と、ローサイド側の第2MOSFET102(下アーム出力素子)とを直列に接続した1相のインバータ回路であり、負荷であるモータ112を駆動する。符号103および符号104はFWD(還流ダイオード)である。
【0005】
第1MOSFET101のドレインは主電源Vdsに接続される。第1MOSFET101のソースは第2MOSFET102のドレインに接続される。第2MOSFET102のソースはグランドに接続される。第1MOSFET101のソースと第2MOSFET102のドレインとの接続点105はパワーモジュール100からなる主回路の出力点である。
【0006】
中間電位Vsは、第1MOSFET101と第2MOSFET102とが相補にオン・オフ(on・off)されることによって主電源Vdsの高電位側電位(例えば400V)と低電位側電位(例えばグランド電位GND=0V)との間で上昇(以下、第1状態121とする)および下降(以下、第2状態122とする)を繰り返し変動する(
図10)。
【0007】
駆動回路111は、図示を省略する制御ユニット、ハイサイド駆動回路、ローサイド駆動回路およびレベルシフタを有する。ハイサイド駆動回路は、Vs端子に印加される中間電位Vsを基準とするVB端子に印加されるハイサイド電源電位VBにより動作し、第1MOSFET101を駆動する。ローサイド駆動回路は、グランド電位GNDを基準とするVcc端子に印加されるローサイド電源電位Vccにより動作し、第2MOSFET102を駆動する。
【0008】
具体的には、制御ユニットから出力されるローサイドレベルのオン/オフ信号は、ローサイド駆動回路を介してローサイド出力端子LOから第2MOSFET102のゲートに入力される。また、ローサイドレベルのオン/オフ信号は、レベルシフタによりハイサイドレベルのオン/オフ信号に変換される。そのハイサイドレベルのオン/オフ信号は、ハイサイド駆動回路を介してハイサイド出力端子HOから第1MOSFET101のゲートに入力される。
【0009】
HIN端子およびLIN端子は、それぞれ、駆動回路111内でハイサイドレベルのオン/オフ信号およびローサイドレベルのオン/オフ信号が生成されるときの基準となるハイサイド制御信号入力端子およびローサイド制御信号入力端子である。駆動回路111の各入出力端子は通常マイクロコンピュータなどのコンピュータに接続され、コンピュータに予め用意されたプログラムが実行されることよって駆動回路111が制御され、高耐圧ドライバIC全体の制御がなされる。
【0010】
このようなモータ制御用インバータにおいて、主電源Vdsは、通常AC(交流)100V〜400Vと高電圧である。特に、第1MOSFET101がオン状態で、第2MOSFET102がオフ状態となる第1状態121では、第1MOSFET101のソース電位が高電位となる。第1MOSFET101を駆動するにはゲート電位をソース電位よりもさらに高くする必要があるため、駆動回路111には高電圧電源での使用が可能なフォトカプラ(PC:Photo Coupler)や高耐圧IC(HVIC)が用いられる。
【0011】
従来のハイサイド駆動回路の構造について説明する。
図11は、従来のハイサイド駆動回路の平面構造を示す平面図である。
図12は、
図11の切断線AA−AA’における断面構造を示す断面図である。
図11,12に示すように、p半導体基板(半導体チップ)131に、ハイサイド駆動回路が形成されたハイサイド駆動回路形成領域130と、ハイサイド駆動回路の耐圧を確保する高耐圧終端領域(HVJT:High Voltage Junction Termination)140とが形成されている。
【0012】
p半導体基板131の表面層には、n分離領域132が選択的に形成されている。n分離領域132の表面層には、ハイサイド駆動回路を構成する横型のpチャネルMOSFET(MV−PMOS)133および横型のnチャネルMOSFET(MV−NMOS)134が形成されている。MV−NMOS134は、n分離領域132の表面層に設けられたp分離領域135に形成される。また、p半導体基板131の表面層の、n分離領域132の外側には、HVJT140内にp領域141が形成されている。
【0013】
p領域(以下、pGND領域とする)141にはグランド電位GNDが印加される。n分離領域132には、n
++領域151などを介してハイサイド電源電位VBが印加される。p分離領域135には中間電位Vsが印加される。インバータを構成する第1MOSFET101と第2MOSFET102とが相補にオン・オフされることによって第1MOSFET101がオン状態で、第2MOSFET102がオフ状態となる第1状態121ではサージ電圧121aが生じ、中間電位Vsが過渡的に上昇する(
図10)。
【0014】
一方、第1MOSFET101がオフ状態となり、第2MOSFET102がオン状態となった第2状態122では、第1MOSFET101と第2MOSFET102との接続点105に負サージ122aが数百nsec程度発生する(
図10)。この負サージ122a発生時、中間電位Vsがグランド電位GNDよりも低くなる。これに伴い、ハイサイド電源電位VBもグランド電位GNDより低くなると、pGND領域141(グランド電位GND)とn分離領域132とからなる寄生ダイオードがターンオンし、pGND領域141からハイサイド駆動回路形成領域130へとホール(正孔)142が流れる。そのため、ハイサイド駆動回路が誤作動するという問題がある。
【0015】
この問題を解決した高耐圧ICとして、次の装置が提案されている。NMOSとPMOSとの間において、n型不純物領域の上面内には、p型ウェルに接するようにp
+型不純物領域が形成されている。p
+型不純物領域上には電極が形成されており、電極は高圧側浮遊オフセット電圧VSに接続されている。p
+型不純物領域の不純物濃度はp型ウェルの不純物濃度よりも高く、また、p
+型不純物領域はp型ウェルよりも浅く形成されている。p
+型不純物領域とPMOSとの間において、n型不純物領域の上面内には、n
+型不純物領域が形成されている。n
+型不純物領域上には電極が形成されており、電極は高圧側浮遊供給絶対電圧VBに接続されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0016】
また、別の装置として、共通接地ノード(COM)と仮想接地ノード(VS)の間に高耐圧ダイオードD3を高電圧制御回路(HVIC)内部に共通の基板領域を利用して設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0017】
また、別の装置として、第1絶縁分離トレンチにより絶縁分離されたMOSトランジスタが形成され、第2絶縁分離トレンチが、n重(n≧2)に形成され、n個の各フィールド領域に、MOSトランジスタが、それぞれ一個ずつ配置され、n個のMOSトランジスタが、グランド(GND)電位と所定の電源電位との間で、順次直列接続されてなり、第n段MOSトランジスタの電源電位側の端子と出力抵抗の間から、出力が取り出される半導体装置であって、最内周の第2絶縁分離トレンチにより囲まれたフィールド領域の電位が、電源電位に固定されてなる装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0018】
同一半導体基板上に誘電体領域によって分離された高電位部と低電位部を備えた装置として、次の装置が提案されている。同一半導体基板上に設けられた低電位ゲート駆動回路と電気的に分離するために、高電位ゲート駆動回路の周縁部に高耐圧接合終端構造部が設けられている。そして、この高耐圧接合終端構造部と、高電位ゲート駆動回路の一部に設けられたレベルシフト回路部のn
+ソース層とn
+ドレイン層の間と、にトレンチが設けられている。また、トレンチ内に酸化膜などが充填され、誘電体領域となっている(例えば、下記特許文献4参照。)。
【0019】
半導体基板に誘電体領域を設けた装置として、内部に平板状の空洞を有する半導体基板と、空洞上の半導体基板の表面に形成された受動素子とを含む装置が提案されている(例えば、下記特許文献5参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上述した
図11,12に示すハイサイド駆動回路では、第1MOSFET101と第2MOSFET102との接続点105に負サージ122aが発生したときにHVJT140からハイサイド駆動回路形成領域130へとホール142が流れ込むことを回避しハイサイド駆動回路の誤作動を防止するために、HVJT140に配置されハイサイド電源電位VBが印加されるn
++領域151とハイサイド駆動回路形成領域130内のハイサイド駆動回路(MV−PMOS133やMV−NMOS134など)との間隔xを100μm以上にする必要がある。このため、チップサイズが大きくなるという問題がある。
【0022】
また、上述した特許文献1のように負サージ発生時にハイサイド駆動回路へ流れ込むホールを引き抜く(ホールピックアップ)ためのp型不純物領域を回路周辺に設けただけでは、中間電位Vsの大きさによってはホールピックアップ用のp型不純物領域がp半導体基板とパンチスルーする虞がある。また、上述した特許文献2のようにグランド電位GNDが印加される領域と中間電位Vsが印加される領域との間に高耐圧ダイオードを配置した場合、高耐圧ダイオードの分だけチップサイズが大きくなってしまう。
【0023】
また、上述した特許文献3のようにトレンチ構造を設けた場合、トレンチの底部でのホールピックアップ効果が低減される。このため、ハイサイド駆動回路によって駆動されるパワーデバイス(例えばインバータの上アーム出力素子)の負荷電流や、パワーデバイスによって駆動される負荷(例えばモータ)に付随する浮遊インダクタンス(L成分)が大きい場合に、ハイサイド駆動回路が誤動作したりラッチアップ破壊に至るという問題がある。
【0024】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、誤動作や破壊が生じることを回避することができる半導体集積回路装置を提供することを目的とする。また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、チップサイズを縮小することができる半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体集積回路装置は、次の特徴を有する。第1導電型半導体基板の表面層に、第2導電型領域が設けられている。前記第2導電型領域には、回路部が形成され、前記回路部の電源の高電圧電位である第1電位が印加される。前記第2導電型領域の内部に、前記電源の低電圧電位である第2電位が印加される第1導電型ウェル領域が設けられている。前記第1導電型ウェル領域は、前記回路部を構成する。前記第1導電型半導体基板の表面層の、前記第2導電型領域の外側に、前記第2電位よりも低い第3電位が印加される第1導電型低電位領域が設けられている。前記回路部と前記第1導電型低電位領域との間で、かつ前記第1導電型半導体基板と前記第2導電型領域との間に、空洞が選択的に設けられている。前記第2導電型領域を貫通して前記空洞に達する第1導電型領域が設けられている。
【0026】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記第1導電型領域には、前記第2電位が印加されることを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記空洞は、前記第1導電型領域から前記第1導電型低電位領域側に向かって延びていることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記空洞は、前記第1導電型領域から前記第1導電型低電位領域にわたって設けられていることを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記回路部は、主電源の高電圧電位側に接続された第1素子と、前記第1素子に直列に接続され、かつ前記主電源の低電圧電位側に接続された第2素子と、から構成される出力回路(パワーモジュール)の前記第1素子を駆動する。そして、前記第2電位は、前記第1素子と前記第2素子との接続点の電位であり、前記第3電位は、前記主電源の低電圧電位であることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記第1導電型領域と前記第1導電型半導体基板とのパンチスルー耐圧は、前記第1素子がオン状態で、前記第2素子がオフ状態であるときに過渡的に上昇する前記出力回路の前記第1素子と前記第2素子との前記接続点の電位よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記回路部を囲み前記第2導電型領域に配置された耐圧領域と、前記耐圧領域の内側にドレイン、前記耐圧領域の外側にソースを有するレベルシフタを構成する絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、をさらに備え、前記空洞は、前記回路部と、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインとの間に配置されていることを特徴とする。
【0032】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体集積回路装置は、次の特徴を有する。第1導電型半導体基板の表面層に、第1の第2導電型領域が設けられている。前記第1の第2導電型領域には、回路部が形成され、前記回路部の電源の高電圧電位である第1電位が印加される。前記第1の第2導電型領域の内部に、前記電源の低電圧電位である第2電位が印加される第1導電型ウェル領域が設けられている。前記第1導電型ウェル領域は、前記回路部を構成する。前記第1導電型半導体基板の表面層の、前記第1の第2導電型領域の外側に、第2の第2導電型領域が設けられている。前記第1導電型半導体基板の表面層の、前記第2の第2導電型領域の外側に、前記第2電位よりも低い第3電位が印加される第1導電型低電位領域が設けられている。前記回路部と前記第1導電型低電位領域との間で、かつ前記第1導電型半導体基板と前記第2の第2導電型領域との間に、空洞が選択的に設けられている。前記第1の第2導電型領域と前記第2の第2導電型領域との間に、前記第2の第2導電型領域を貫通して前記空洞に達する第1導電型領域が設けられている。前記第2の第2導電型領域に、レベルシフタを構成する絶縁ゲート型電界効果トランジスタが配置されている。そして、前記第2の第2導電型領域の、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインと前記第1導電型領域とに挟まれた部分に、前記第1電位に接続された第2導電型高濃度領域が配置されてない。
【0033】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記第1導電型領域には、前記第2電位が印加されることを特徴とする。
【0034】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記空洞は、前記回路部と、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインとの間に配置されていることを特徴とする。
【0035】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインは、前記第2の第2導電型領域の前記回路部側に配置され、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのソースは、前記第2の第2導電型領域の前記第1導電型低電位領域側に配置されていることを特徴とする。
【0036】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記回路部は、主電源の高電圧電位側に接続された第1素子と、前記第1素子に直列に接続され、かつ前記主電源の低電圧電位側に接続された第2素子と、から構成される出力回路の前記第1素子を駆動し、前記第2電位は、前記第1素子と前記第2素子との接続点の電位であり、前記第3電位は、前記主電源の低電圧電位であることを特徴とする。
【0037】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記第1導電型領域と前記第1導電型半導体基板とのパンチスルー耐圧は、前記第1素子がオン状態で、前記第2素子がオフ状態であるときに過渡的に上昇する前記出力回路の前記第1素子と前記第2素子との前記接続点の電位よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0038】
また、この発明にかかる半導体集積回路装置は、上述した発明において、前記第1の第2導電型領域の表面上に絶縁膜を介して設けられた抵抗層をさらに備え、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのドレインは、前記第1導電型半導体基板上に配置された配線層を介して前記抵抗層に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0039】
上述した発明によれば、第1導電型低電位領域と第1導電型分離領域との間に空洞を形成し、この空洞上に空洞に達する深さで第1導電型領域を設けることにより、第1,2素子の接続点に負サージが生じたときに第1導電型低電位領域から第1導電型分離領域へ流れるホールを引き抜くことができ、ホール注入を低減(ほぼ無効化)させることができる。
【0040】
また、上述した発明によれば、第1導電型領域を空洞に達する深さよりも深くしないことで、第1素子と第2素子との接続点の電位の過渡的な上昇により第1導電型領域が第1導電型半導体基板にパンチスルーすることを防止することができる。また、上述した発明によれば、空洞に達する深さでホールピックアップ用の第1導電型領域を設けることによりホール注入を低減(ほぼ無効化)させることができるため、第1導電型低電位領域と回路部との間隔を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明にかかる半導体集積回路装置によれば、誤動作や破壊が生じることを回避することができるという効果を奏する。また、本発明にかかる半導体集積回路装置によれば、チップサイズを縮小することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体集積回路装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体集積回路装置について、上下アームのドライバ機能を一つのシリコンチップに搭載した駆動回路の上アーム出力素子を駆動するハイサイド駆動回路を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の平面構造を示す平面図である。
図2は、
図1の切断線A−A’における断面構造を示す断面図である。実施の形態1にかかる半導体集積回路装置を備えた駆動回路の回路構成は、例えば、
図9に示す駆動回路111の回路構成(1相)と同様であるため説明を省略する。
【0045】
実施の形態1にかかる半導体集積回路装置は、例えば、
図9に示すパワーモジュール(出力回路)100の上アーム出力素子(第1MOSFET101:第1素子)を駆動する駆動回路111のハイサイド駆動回路である。ハイサイド駆動回路は、高電圧電源での使用が可能な高耐圧IC(HVIC)となっている。駆動回路111のハイサイド駆動回路は、モータ112を駆動するパワーモジュール100(第1,2MOSFET101,102:第1,2素子)と同程度の、例えば600V〜1400V程度の耐圧を有するのが好ましい。
【0046】
また、
図1に示すように、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置において、p半導体基板(半導体チップ)1には、ハイサイド駆動回路(回路部)が形成されたハイサイド駆動回路形成領域10と、ハイサイド駆動回路の耐圧を確保する高耐圧終端領域(HVJT)40とが形成されている。ハイサイド駆動回路形成領域10は、p半導体基板1の表面層に配置されている。HVJT40は、ハイサイド駆動回路形成領域10を囲むように配置されている。
【0047】
p半導体基板1の内部には、ハイサイド駆動回路形成領域10とHVJT40との境界に、誘電体領域である空洞(Cavity)11が設けられている。すなわち、p半導体基板1は、選択的にSON(Silicon On Nothing)構造となっている。空洞11は、ハイサイド駆動回路形成領域10側からHVJT40側にわたる所定幅で配置される。また、空洞11は、例えば、略矩形状のハイサイド駆動回路形成領域10の3辺にわたって略コの字状の平面形状で配置されている。その理由は、次のとおりである。
【0048】
空洞11が形成されていない1辺には、ボンディングワイヤーがボンディングされる電極パッド(Pad)50が配置される。電極パッド50は、ハイサイド駆動回路形成領域10のHVJT40との境界付近に設けられている。具体的には、電極パッド50は、後述するn分離領域2上に設けられている。電極パッド50には、ハイサイド電源電位VBが印加されるパッド、中間電位Vsが印加されるパッド、上アーム出力素子の制御端子に信号を印加するための出力パッドなどが配置される。電極パッド50の下のn分離領域2には、ワイヤーをボンディングする際の衝撃がハイサイド駆動回路に影響を及ぼすことを避けるためにハイサイド駆動回路を設けない領域となっている。電極パッド50の幅が大きいため、電極パッド50を配置することによりハイサイド駆動回路とHVJT40に設けられハイサイド電源電位VBに接続されるn
++高濃度領域12aとの間隔が100μm以上となる。このため、空洞11は、略矩形状のハイサイド駆動回路形成領域10の3辺にわたって略コの字状の平面形状で配置される。
【0049】
この実施の形態1では、電極パッド50の下のn分離領域2にハイサイド駆動回路を形成しない場合について説明したが、電極パッド50の下のn分離領域2にハイサイド駆動回路を形成する場合は、空洞11は、ハイサイド駆動回路形成領域10の4辺にわたってハイサイド駆動回路形成領域10を囲むように配置されてもよい。また、空洞11は、この実施の形態1の場合であっても4辺にわたってハイサイド駆動回路形成領域10を囲むように配置されてもよい。また、他の辺すべてにおいてハイサイド駆動回路とHVJT40に設けられるn
++高濃度領域12aとの間隔が100μm以上である場合は、空洞11を、略矩形状のハイサイド駆動回路形成領域10の1辺にのみに配置してもよい。空洞11の詳細な配置については後述する。
【0050】
図2には、電極パッド50と空洞11とを横切る直線状の切断線A−A’における断面構造を示す。
図2に示すように、p半導体基板1の表面層には、n分離領域(第2導電型分離領域)2が選択的に形成されている。n分離領域2の端部は、空洞11の下側(p半導体基板1側)の領域を覆う。n分離領域2には、ハイサイド駆動回路(
図2に矢印で示す回路部)を構成する横型のpチャネルMOSFET(MV−PMOS)20および横型のnチャネルMOSFET(MV−NMOS)30が形成されている。MV−PMOS20およびMV−NMOS30は、例えば15V〜30V耐圧クラス程度のMOSFETであってもよい。
【0051】
MV−PMOS20は、p
+ソース領域21、p
+ドレイン領域22、ゲート電極23、ソース電極(不図示)およびドレイン電極(不図示)を備える。p
+ソース領域21およびp
+ドレイン領域22は、n分離領域2の内部に互いに離れて設けられる。n分離領域2には、n分離領域2の内部に設けられたn
++高濃度領域2aを介して電気的に接続されたVB電極(不図示)からハイサイド電源電位VBが印加される。
【0052】
ゲート電極23は、n分離領域2の、p
+ソース領域21とp
+ドレイン領域22とに挟まれた部分の表面にゲート絶縁膜(不図示)を介して設けられている。MV−PMOS20のソース電極およびドレイン電極は、それぞれp
+ソース領域21およびp
+ドレイン領域22に電気的に接続されている。MV−PMOS20のソース電極は、VB電極に短絡されている。
【0053】
MV−NMOS30は、n分離領域2の表面層に設けられたp分離領域(第1導電型分離領域)3に形成され、n
+ソース領域31、n
+ドレイン領域32、ゲート電極33、ソース電極(不図示)およびドレイン電極(不図示)を備える。n
+ソース領域31およびn
+ドレイン領域32は、p分離領域3の内部に互いに離れて設けられている。p分離領域3には、p分離領域3の内部に設けられたp
++高濃度領域3aを介して電気的に接続されたVs電極(不図示)から中間電位Vs(上下アーム出力素子の接続点105の電位)が印加される。
【0054】
ゲート電極33は、p分離領域3の、n
+ソース領域31とn
+ドレイン領域32とに挟まれた部分の表面にゲート絶縁膜(不図示)を介して設けられている。MV−NMOS30のソース電極およびドレイン電極は、それぞれn
+ソース領域31およびn
+ドレイン領域32に電気的に接続されている。MV−NMOS30のソース電極は、Vs電極に短絡されている。
【0055】
また、p半導体基板1の表面層の、n分離領域2の外側には、HVJT40においてnエピタキシャル領域(第2導電型分離領域)12が設けられている。nエピタキシャル領域12は、n分離領域2に接し、ハイサイド駆動回路形成領域10を囲む。nエピタキシャル領域12には、nエピタキシャル領域12内部のn
++高濃度領域12aを介して電気的に接続されたVB電極(不図示)からハイサイド電源電位VBが印加される。
【0056】
p半導体基板1の表面層の、nエピタキシャル領域12の外側には、nエピタキシャル領域12を貫通してp半導体基板1に達するp領域(第1導電型低電位領域)41が設けられている。p領域(以下、pGND領域とする)41には、pGND領域41内部のp
++高濃度領域41aを介して電気的に接続されたGND電極(不図示)からグランド電位GNDが印加される。pGND領域41は、p半導体基板1をグランド電位GNDに固定する機能を有する。
【0057】
上述した空洞11は、ハイサイド駆動回路形成領域10とpGND領域41との間において、p半導体基板1とnエピタキシャル領域12との間に設けられている。空洞11は、後述するp拡散領域13からpGND領域41側へ向かって、耐圧領域43下にまで延びていてもよい。耐圧領域43とは、pGND領域41と、nエピタキシャル領域12内のハイサイド電源電位VBが印加されるn
++高濃度領域12aとの間の領域である。空洞11は、pGND領域41に接していてもよい。また、上記特許文献4に記載のようにMOSFETからなるレベルシフタをHVJT40に配置することもできる。
【0058】
図13は、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の平面構造の別の一例を示す平面図である。
図14は、
図13の切断線Z−Z’における断面構造を示す断面図である。空洞11は、p半導体基板1のハイサイド駆動回路形成領域10に形成されたハイサイド駆動回路と、レベルシフタを構成するMOSFET(HV−NMOS)のn
+ドレイン領域91との間に配置されるのが好ましい。なお、
図13では図示省略するが、空洞11が略矩形状のハイサイド駆動回路形成領域10の4辺にわたって配置されている。
図14において、符号92,93は、それぞれレベルシフタを構成するMOSFETのn
+ソース領域およびゲート電極である。
【0059】
また、ハイサイド駆動回路形成領域10には、その表面からnエピタキシャル領域(n
-型領域)12を貫通して空洞11に達するp拡散領域13が設けられている。具体的には、p拡散領域13は、空洞11上(空洞11のnエピタキシャル領域12側)に、空洞11と同様に略コの字状の平面形状で配置されている。また、p拡散領域13は、ハイサイド駆動回路およびpGND領域41から離れて設けられている。p拡散領域13には、p拡散領域13の内部に設けられたp
++高濃度領域13aを介して電気的に接続されたVs電極から中間電位Vsが印加される。
【0060】
p拡散領域13を設けることにより、上アーム出力素子がオフ状態で、下アーム出力素子がオン状態となる第2状態122に上下アーム出力素子の接続点105に負サージ122aが発生したときに(
図10)pGND領域41からハイサイド駆動回路形成領域10へ流れるホールをp拡散領域13から引き抜く(ホールピックアップ)ことができる。また、空洞11に達する深さでp拡散領域13を設けることによりpGND領域41からハイサイド駆動回路形成領域10へのホール注入を低減(ほぼ無効化)することができる。また、p拡散領域13を空洞11の深さよりも深くしないため、上アーム出力素子がオン状態で、下アーム出力素子がオフ状態となる第1状態121に生じるサージ電圧121aによって中間電位Vsが過渡的に上昇したときにp拡散領域13がp半導体基板1にパンチスルーすることを防止することができる。
【0061】
空洞11に達する深さでp拡散領域13を設けることによりpGND領域41からハイサイド駆動回路形成領域10へのホール注入をほぼ無効化することができるため、空洞11およびp拡散領域13を形成した箇所においてハイサイド駆動回路とn
++高濃度領域12aとの第1間隔x
1は、従来のように100μm以上とする必要はなく、p拡散領域13の幅w程度あればよい。一方、空洞11およびp拡散領域13が形成されていない箇所においては、ハイサイド駆動回路形成領域10表面に電極パッド50が配置されているため、ハイサイド駆動回路とn
++高濃度領域12aとの第2間隔x
2は100μm以上となっている。
【0062】
空洞11およびp拡散領域13が形成されていない箇所においては、ハイサイド駆動回路とn
++高濃度領域12aとの第2間隔x
2は100μm以上となっているため、負サージ122a発生時にpGND領域41からハイサイド駆動回路形成領域10へ流れるホールはハイサイド駆動回路に到達しない。したがって、空洞11およびp拡散領域13が形成されていない箇所においてハイサイド駆動回路とpGND領域41との間には、空洞11およびp拡散領域13を設けてもよいし、設けなくてもよい。空洞11およびp拡散領域13が形成されていない箇所においてハイサイド駆動回路とpGND領域41との間に空洞11およびp拡散領域13を設ける場合、空洞11およびp拡散領域13はともにp半導体基板1の4辺にわたってハイサイド駆動回路形成領域10を囲むように配置される。
【0063】
空洞11の厚さは、所望のパンチスルー耐圧以上を確保することができるように設定される。一般的にリサーフ(RESURF:REduced SURface electric Field)効果を損なわないときの誘電体分離半導体装置の耐圧Vbrは、ポアソン式に基づいて下記(1)式であらわされる。ここで、臨界電圧Ecr、nエピタキシャル領域12の厚さd、誘電体層の厚さTox、シリコン(Si)の比誘電率ε
Si、誘電体の比誘電率εoxとする。
【0064】
Vbr=Ecr×(d/2+Tox×ε
Si/εox)・・・(1)
【0065】
1200V耐圧のハイサイド駆動回路を作製する場合、nエピタキシャル領域12の比抵抗ばらつき、空洞11の厚さのばらつき、さらに外付け部品のパワーモジュール100(上下アーム出力素子)の実耐圧などを加味して最低でも1500V程度の耐圧が要求される。誘電体層が空洞(Cavity)11である場合、誘電体の比誘電率εoxは1となる。例えばd=10μm、Tox=4μmとした場合、Ecr=3×10
5(V/cm)、εox=1、ε
Si=11.7であるため、上記(1)式よりVbr=1550Vとすることができる。
【0066】
上記(1)式に基づいて誘電体分離半導体装置の高耐圧化を図るためには、nエピタキシャル領域12または誘電体層(空洞11)の厚さを厚くすればよい。しかし、空洞11の厚さを厚くした場合、空洞11上に配置されたnエピタキシャル領域12の重さによって空洞11が潰れてしまう。したがって、空洞11の厚さは4μm〜6μm程度が好ましい。
【0067】
ゲート電極23,33、ソース電極、ドレイン電極、VB電極、Vs電極およびGND電極は、層間絶縁膜によって互いに電気的に絶縁されている。また、p半導体基板1の表面素子構造が形成された側の表面は、パッシベーション膜(不図示)によって保護されている。層間絶縁膜は、例えば、フィールド酸化膜であるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)や、TEOS(TetraEthOxySilane)、BPSG(Boro Phospho Silicate Glass)などによるシリコン酸化膜(SiO
2膜)であってもよい。パッシベーション膜は、シリコン窒化膜(Si
3N
4膜)またはポリイミド膜であってもよい。
【0068】
次に、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の製造方法について、600V〜1200V程度の高耐圧なハイサイド駆動回路を作製(製造)する場合を例に説明する。
図3〜8は、実施の形態1にかかる半導体集積回路装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図3に示すように、比抵抗が例えば100Ω・cm〜400Ω・cm程度のp半導体基板1を用意する。次に、熱酸化によりp半導体基板1の表面に熱酸化膜を形成し、フォトリソグラフィにより熱酸化膜をパターニングしてトレンチエッチング用のマスク酸化膜51を形成する。
【0069】
次に、マスク酸化膜51をマスクとして例えばドライエッチングを行い、p半導体基板1の空洞11の形成領域に複数のトレンチ52を形成する。次に、例えばウェットエッチングによりマスク酸化膜51を除去した後、例えば水素(H
2)ガスなどの不活性ガス雰囲気において1000℃〜1200℃程度の温度のアニール処理を行う。これにより、
図4に示すように、トレンチ52の開口部が塞がれ、かつ複数のトレンチ52が一体化され、空洞11が2μm〜6μm程度、例えば4μmの厚さで形成される(シリコン原子の表面マイグレーション)。
【0070】
p半導体基板1の表面層に空洞11を形成する方法は、これに限らず種々変更可能である。例えば、電界エッチングなどにより、p半導体基板1の表面にポーラスシリコン(多孔質シリコン)を選択的に形成する。そして、p半導体基板1上に、後述するnエピタキシャル領域12を成長させてポーラスシリコンを覆う。その後、不活性ガス雰囲気において高温度のアニール処理を行うことにより、ポーラスシリコンを周囲のp半導体基板1やnエピタキシャル領域12に吸収させて、ポーラスシリコンを形成した部分を空洞11としてもよい。
【0071】
次に、
図5に示すように、p半導体基板1上(空洞11が形成されている側の表面)に、nエピタキシャル領域12を5μm〜50μm程度、例えば10μmの厚さで成長させる。nエピタキシャル領域12の不純物濃度は、例えば1×10
14/cm
3〜1×10
16/cm
3程度であってもよい。
【0072】
次に、
図6に示すように、nエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク53を形成し、ハイサイド駆動回路形成領域10を露出させる。次に、レジストマスク53をマスクとして例えばリン(P)などのn型不純物の第1イオン注入61を行う。
図6において、nエピタキシャル領域12表面近傍の点線は、第1イオン注入61されたn型不純物をあらわしている(
図7においても同様)。第1イオン注入61におけるn型不純物のドーズ量は、例えば5×10
12/cm
2〜5×10
13/cm
2程度であってもよい。そして、レジストマスク53を除去する。
【0073】
次に、
図7に示すように、nエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク54を形成し、p拡散領域13およびpGND領域41の形成領域を露出させる。次に、レジストマスク54をマスクとして例えばボロン(B)などのp型不純物の第2イオン注入62を行う。第2イオン注入62におけるp型不純物のドーズ量は、例えば1×10
12/cm
2〜1×10
14/cm
2程度であってもよい。
図7において、nエピタキシャル領域12表面近傍の点線(n型不純物を示す点線よりも細かい点線)は、第2イオン注入62されたp型不純物をあらわしている。そして、レジストマスク54を除去する。第1,2イオン注入61,62は、順序を入れ替えて行ってもよい。
【0074】
次に、例えば1100℃〜1200℃程度の温度のアニール処理を10時間程度行い、nエピタキシャル領域12に第1,2イオン注入61,62されたn型不純物およびp型不純物を拡散させる。これにより、
図8に示すように、nエピタキシャル領域12の内部に、それぞれ所定の深さでn分離領域2、p拡散領域13およびpGND領域41が形成される。このアニール処理は、p拡散領域13の形成領域に注入されたp型不純物が空洞11にまで拡散されるように行う。
【0075】
このアニール処理において、第1イオン注入61のn型不純物が拡散されることでn分離領域2が形成されるため、n分離領域2の深さはnエピタキシャル領域12よりも深くなる。また、n分離領域2の端部は、空洞11の端部(p半導体基板1側)を覆うように拡散される。すなわち、p半導体基板1の深さ方向において、p拡散領域13とp半導体基板1との間に空洞11が配置される。
【0076】
次に、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク(不図示)を形成し、p分離領域3の形成領域を露出させる。次に、レジストマスクをマスクとして例えばボロンなどのp型不純物の第3イオン注入を行う。第3イオン注入におけるp型不純物のドーズ量は、例えば1×10
13/cm
2〜1×10
14/cm
2程度であってもよい。そして、第3イオン注入用のレジストマスクを除去する。
【0077】
次に、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク(不図示)を形成し、p
+ソース領域21、p
+ドレイン領域22の形成領域を露出させる。次に、レジストマスクをマスクとして例えばボロンなどのp型不純物の第4イオン注入を行う。第4イオン注入におけるp型不純物のドーズ量は、例えば5×10
12/cm
2〜1×10
14/cm
2程度であってもよい。そして、第4イオン注入用のレジストマスクを除去する。
【0078】
次に、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク(不図示)を形成し、n
+ソース領域31、n
+ドレイン領域32の形成領域を露出させる。次に、レジストマスクをマスクとして例えばリンなどのn型不純物の第5イオン注入を行う。第5イオン注入におけるn型不純物のドーズ量は、例えば5×10
12/cm
2〜1×10
14/cm
2程度であってもよい。そして、第5イオン注入用のレジストマスクを除去する。
【0079】
次に、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク(不図示)を形成し、p
++高濃度領域41a,3a,13aの形成領域を露出させる。次に、レジストマスクをマスクとして例えばボロンなどのp型不純物の第6イオン注入を行う。第6イオン注入におけるp型不純物のドーズ量は、例えば5×10
14/cm
2〜5×10
15/cm
2程度であってもよい。このとき、p
++高濃度領域41a,3a,13aとともに、MV−PMOS20のp
+ソース領域21およびp
+ドレイン領域22表面にも、それぞれ図示省略するp
++高濃度領域を形成する。そして、第6イオン注入用のレジストマスクを除去する。この第6イオン注入では、各電極とのオーミックコンタクト用のp
++高濃度領域を形成している。
【0080】
次に、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12の表面にレジストマスク(不図示)を形成し、n
++高濃度領域2a,12aの形成領域を露出させる。次に、レジストマスクをマスクとして例えば砒素などのn型不純物の第7イオン注入を行う。第7イオン注入におけるn型不純物のドーズ量は、例えば5×10
14/cm
2〜5×10
15/cm
2程度であってもよい。このとき、n
++高濃度領域2a,12aとともに、MV−NMOS30のn
+ソース領域31およびn
+ドレイン領域32にも、それぞれ図示省略するn
++高濃度領域を形成する。そして、第7イオン注入用のレジストマスクを除去する。この第7イオン注入では、各電極とのオーミックコンタクト用のn
++高濃度領域を形成している。第3〜7イオン注入は、順序を入れ替えて行ってもよい。
【0081】
次に、例えば900℃〜1100℃程度の温度の活性化アニール処理を4時間程度行い、n分離領域2およびnエピタキシャル領域12に第3〜7イオン注入されたn型不純物およびp型不純物を拡散させる。これにより、p分離領域3と、p
+ソース領域21およびp
+ドレイン領域22と、n
+ソース領域31およびn
+ドレイン領域32と、各電極に接続されるn
++高濃度領域2a,12aおよびp
++高濃度領域3a,13a,41aとが形成される。その後、ゲート電極23,33、ソース電極、ドレイン電極、VB電極、Vs電極およびGND電極を形成し、層間絶縁膜やパッシベーション膜などを形成することにより、
図1,2に示すハイサイド駆動回路が完成する。
【0082】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、HVJTに設けたpGND領域とハイサイド駆動回路形成領域に設けたハイサイド駆動回路との間に空洞を形成し、この空洞上に空洞に達する深さでp拡散領域を設けることにより、上下アーム出力素子の接続点に負サージが生じたときにpGND領域からp分離領域へ流れ込むホールを引き抜くことができ、ホール注入を低減(ほぼ無効化)させることができる。このため、上アーム出力素子の負荷電流や負荷に付随する浮遊インダクタンス(L成分)が大きいインバータ装置を駆動させる場合であっても、ハイサイド駆動回路が誤作動したり破壊に至ることを防止することができる。
【0083】
また、実施の形態1によれば、p拡散領域を空洞に達する深さよりも深くしないことで、中間電位の過渡的な上昇によりホールピックアップ用のp拡散領域がp半導体基板にパンチスルーすることを防止することができる。また、実施の形態1によれば、空洞に達する深さでホールピックアップ用のp拡散領域を設けることによりホール注入を低減(ほぼ無効化)させるため、ハイサイド電源電位が接続されるn
++高濃度領域とハイサイド駆動回路との間隔は、ホールピックアップ用のp拡散領域の幅15μm程度の間隔があればよく、100μm以上離す必要がなくなる。したがって、チップサイズを縮小することができ、コストを低減することができる。
【0084】
また、実施の形態1によれば、ピックアップ用のp拡散領域をpGND領域と同時にイオン注入およびアニール処理によって形成することができるため、従来のハイサイド駆動回路の製造工程に、p半導体基板内部に空洞を設ける工程を追加するだけで上記のハイサイド駆動回路を作製することができる。また、実施の形態1によれば、半導体基板内のp拡散領域が形成された領域のみに空洞を設ければよいため、ハイサイド駆動回路の製造中に半導体基板が反ることを抑制することができる。
【0085】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる半導体集積回路装置について説明する。
図15は、実施の形態2にかかる半導体集積回路装置の平面構造を示す平面図である。
図16は、
図15の切断線B−B’における断面構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体集積回路装置が実施の形態1にかかる半導体集積回路装置と異なる点は、HVJT40にレベルシフタを一体化したセルフシールディング方式のハイサイド駆動回路において、nエピタキシャル領域(n
-型領域)12に、HVJT40にハイサイド電源電位VBを印加(ピックアップ)するためのn
++高濃度領域(
図14の符号12aに相当)が設けられていない点である。
【0086】
実施の形態2においては、nエピタキシャル領域12にn
++高濃度領域を設けていない分だけチップサイズを縮小化することができる。具体的には、n
++高濃度領域の幅である10μm程度と、n
++高濃度領域とp拡散領域13との間の間隔である10μmとの計20μm分のチップサイズを縮小化させることができる。n
++高濃度領域およびp拡散領域13は、ハイサイド駆動回路形成領域10の周囲を囲むように配置されており、その1周分の長さは約2mmであるため、例えば2mm×20μm分のチップ面積を縮小化することができる。
【0087】
また、nエピタキシャル領域12にn
++高濃度領域を設けた場合、pGND領域41とp拡散領域13との間に、中間電位Vsのp拡散領域13よりも電位の高いハイサイド電源電位VBのn
++高濃度領域が配置されているため、負サージが発生し、pGND領域41とnエピタキシャル領域12とからなる寄生ダイオードがターンオンしたときに、pGND領域41からハイサイド駆動回路形成領域10へ流れるホールは、p拡散領域13から引き抜かれる以外に、nエピタキシャル領域12内部のn
++高濃度領域から内部配線を介してn分離領域2へと流れてしまうという現象が生じる。
【0088】
一方、実施の形態2においては、nエピタキシャル領域12にn
++高濃度領域を設けていないため、pGND領域41から流れるホールはすべてp拡散領域13で引き抜かれ、HVJT40を通る経路でハイサイド駆動回路形成領域10にホールが流れ込むことはない。負サージが発生し、ハイサイド電源電位VBがグランド電位GNDより低くなると、pGND領域41とnエピタキシャル領域12とからなる寄生ダイオードの他に、pGND領域41およびp半導体基板1とn分離領域2とからなる寄生ダイオードもターンオンするが、p半導体基板1が高抵抗であることから、p半導体基板1からn分離領域2へのホール注入はわずかである。
【0089】
また、nエピタキシャル領域12にn
++高濃度領域を設けた場合、レベルシフタのn
+ドレイン領域91とn
++高濃度領域とに挟まれた部分におけるnエピタキシャル領域12からなる拡散抵抗として用いていたが、実施の形態2においては、この拡散層からなる拡散抵抗に代えて、ポリシリコン層をレベルシフト抵抗94として用いればよい。この場合、例えばハイサイド駆動回路形成領域10におけるチップ上(例えばLOCOS膜上)にポリシリコン層を形成し、このポリシリコン層をレベルシフト抵抗94として用いればよい。ポリシリコン層はチップ上に形成されるため、チップサイズが大きくなることはない。また、拡散層からなる拡散抵抗をレベルシフト抵抗94として用いていないため、上下アーム出力素子のオン・オフによるnエピタキシャル領域12の空乏化の度合いによってレベルシフト抵抗94の抵抗値が変化することはない。また、ハイサイド駆動回路形成領域10のn分離領域2からなる拡散抵抗をレベルシフト抵抗94として用いてもよい。n分離領域2はnエピタキシャル領域12よりも高不純物濃度であるため、n分離領域2の空乏化によってレベルシフト抵抗94の抵抗値がばらつくことはない。したがって、ハイサイド駆動回路形成領域10にレベルシフト抵抗94を設けることにより、安定した信号伝達を実現することができる。
【0090】
レベルシフタのn
+ドレイン領域91は、p半導体基板1のおもて面側に配置された内部配線を介してレベルシフト抵抗94に接続され、レベルシフト抵抗94を介してハイサイド駆動回路形成領域10のn分離領域2の内部に設けられたn
++高濃度領域2aに接続されている。すなわち、n分離領域2の内部に設けられたn
++高濃度領域2aは、HVJT40にハイサイド電源電位VBを印加するためのピックアップコンタクトとして機能する。空洞11は、実施の形態1と同様に、p拡散領域13からpGND領域41まで延びていてもよい。空洞11に代えて、p半導体基板1とnエピタキシャル領域12との間に選択的にSiO
2膜などの絶縁体層を埋め込んでもよい(部分SOI)。この場合、絶縁体層の厚さは空洞11の厚さよりも厚くするのがよい。例えば、空洞11に代えてSiO
2膜を埋め込む場合、耐圧1500V以上を確保するためには、SiO
2膜の厚さは15μm以上であるのがよい。
【0091】
また、実施の形態2にかかる半導体集積回路装置をワイヤーボンディング方式に適用してもよい。この場合、HV−NMOS90のn
+ドレイン領域91およびn
+ソース領域92を設けない構成とすればよい。これにより、pGND領域41とp拡散領域13とに挟まれたnエピタキシャル領域12はフローティング状態になるが、nエピタキシャル領域12の電位は、pGND領域41とnエピタキシャル領域12との間のpn接合による電位障壁0.6Vだけ中間電位Vsよりも高い(=Vs+0.6V)。このため、pGND領域41とnエピタキシャル領域12との間において、1200V以上の耐圧を確保することができる。
【0092】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0093】
以上において本発明では、上述した各実施の形態に限らず、高電圧電源で使用されるさまざまな構成の回路に適用可能である。例えば、本発明は、ワイヤーボンディング方式やセルフシールディング方式のハイサイド駆動回路に適用可能である。また、高耐圧ドライバICを構成する上アーム出力素子および下アーム出力素子をそれぞれIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)としてもよい。上下アーム出力素子をIGBTとする場合、上アーム出力素子となる第1IGBTのエミッタと下アーム出力素子となる第2IGBTのコレクタとの接続点がパワーモジュールからなる主回路の出力点となる。
【0094】
また、高耐圧ドライバICの主電源の低電位側電位は、主電源の高電位側電位より低い電位であればよい。また、上述した各実施の形態では、半導体基板内部に空洞(Cavity)を設けた場合を例に説明しているが、この空洞に代えて、SiO
2膜などの絶縁体層を設けることにより部分SOI(Silicon On Insulator)基板を構成してもよい。部分SOI基板とする場合、耐圧1500V以上を実現するために、部分SOI基板内の絶縁体層の厚さを例えば15μm以上にするのが好ましい。また、各実施の形態では第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としたが、本発明は第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としても同様に成り立つ。