特許第5754560号(P5754560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754560
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】プライマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 143/04 20060101AFI20150709BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20150709BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20150709BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20150709BHJP
   C08F 120/10 20060101ALI20150709BHJP
   C08F 120/04 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C09D143/04
   C09D5/00 D
   C09D133/14
   C09K3/10 D
   C08F120/10
   C08F120/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-548804(P2014-548804)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2014057542
(87)【国際公開番号】WO2014148552
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-58562(P2013-58562)
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松田 揚子
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−079930(JP,A)
【文献】 特開昭61−296075(JP,A)
【文献】 特開平05−068932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無溶媒のプライマーであり、
モノマーを使用して製造されるアクリル系オリゴマーのみを使用するプライマーであり、
前記モノマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(メタ)アクリル酸と、
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとであり、
前記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度が−25℃以下であり、
前記アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が350以上2,000以下であり、
前記アクリル系オリゴマーの分子量分布が1.6以下であり、
建築用ポリウレタンシーラントに使用される、プライマー。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、
前記(メタ)アクリル酸が3〜5質量部であり、
前記アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが1〜4質量部であり、
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが7〜11質量部である請求項に記載のプライマー。
【請求項3】
重合残渣としてのモノマー量が、2,500ppm以下である請求項1又は2に記載のプライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築用シーリング材をアルミニウム、モルタル等の被着体と接着させるためにプライマーが使用される。
現在、建築用シーリング材のためのプライマーとして、有機溶剤を含有するプライマーや水系プライマーがある。本願出願人はこれまでにシーリング材用水系プライマー組成物を提案している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−046920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境汚染をできるだけ少なくし、作業者への安全衛生をより一層向上させるために揮発性有機化合物(VOC)を含まず、乾燥工程が不要なプライマーが求められている。
そこで、本発明は、揮発性有機化合物(VOC)及び水を含まず無溶剤で、乾燥工程が不要であり、接着性に優れるプライマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ガラス転移温度が−25℃以下であり、重量平均分子量が350以上2,000以下であり、分子量分布が1.6以下であるアクリル系オリゴマーが、無溶剤のプライマーとなることができ、よって、当該プライマーは環境汚染がなく、安全性が高く、乾燥が不要であり、接着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜6を提供する。
1. ガラス転移温度が−25℃以下であり、重量平均分子量が350以上2,000以下であり、分子量分布が1.6以下であるアクリル系オリゴマーを使用する、無溶剤のプライマー。
2. 前記アクリル系オリゴマーが、更に、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する上記1に記載のプライマー。
3. 前記アクリル系オリゴマーを製造する際に使用されるモノマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1又は2に記載のプライマー。
4. 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、
前記(メタ)アクリル酸が3〜5質量部であり、
前記アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが1〜4質量部であり、
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが7〜11質量部である上記3に記載のプライマー。
5. 重合残渣としてのモノマー量が、2,500ppm以下である上記1〜4のいずれかに記載のプライマー。
6. 建築用ポリウレタンシーラントに使用される上記1〜5のいずれかに記載のプライマー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプライマーは、環境汚染がなく、安全性が高く、乾燥が不要であり、接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のプライマーは、ガラス転移温度が−25℃以下であり、重量平均分子量が350以上2,000以下であり、分子量分布が1.6以下であるアクリル系オリゴマーを使用する、無溶剤のプライマーである。
本発明のプライマーは、常温(25℃)において液体であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明のプライマーは、使用されるアクリル系オリゴマーのガラス転移温度が−25℃以下であり、重量平均分子量が350以上2,000以下であり、分子量分布が1.6以下であることによって、アクリル系オリゴマーが常温(25℃)で液体となり、よって、本発明のプライマーが常温(25℃)で液体であることを実現することができる。
また、本発明のプライマーは、アクリル系オリゴマーであることによって接着性(例えばモルタルのような被着体とウレタンシーラントとの接着性;接着性として具体的には例えば初期接着性、耐水接着性)に優れる。
【0009】
アクリル系オリゴマーについて以下に説明する。本発明のプライマーに使用されるアクリル系オリゴマーは、側鎖及び/又は末端にエステルを有し、主鎖がポリ(メタ)アクリルである。エステルは直接主鎖と結合することができる。
アクリル系オリゴマーは、接着性により優れ、接着耐久性に優れるという観点から、更に、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するのが好ましく、アルコキシシリル基と、ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基とを有するのがより好ましい。
置換基と主鎖は、直接又は有機基を介して結合することができる。有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は、鎖状、分岐状のいずれでもよく、不飽和結合を有してもよい。
【0010】
本発明において、アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、−25℃以下であり、アクリル系オリゴマーが常温で液体となり、接着性により優れ、被着体への濡れ性に優れるという観点から、−50〜−25℃であるのが好ましい。
また、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、350以上2,000以下であり、アクリル系オリゴマーが常温で液体となり、接着性により優れ、被着体への濡れ性に優れるという観点から、350〜1800であるのが好ましく、350〜1700であるのがより好ましく、500〜1700であるのがさらに好ましい。
また、アクリル系オリゴマーの分子量分布(Mw/Mn)は、1.6以下であり、アクリル系オリゴマーが常温で液体となり、接着性により優れ、接着耐久性に優れるという観点から、1.0〜1.55であるのが好ましく、1.0〜1.5であるのがより好ましく、1.0〜1.3であるのがさらに好ましい。
【0011】
本発明のプライマーの製造方法としては、例えば、モノマーとして、(メタ)アクリル酸系モノマー(エステルを含む。)を少なくとも使用して、モノマーを例えばラジカル重合させることによってバルクでアクリル系オリゴマーを製造し、得られたアクリル系オリゴマーを使用して本発明のプライマーを製造する方法が挙げられる。
【0012】
アクリル系オリゴマーを製造する際に使用されるモノマーは、ビニル重合性基とエステル又はカルボキシル基とを有する化合物を少なくとも含むものであれば特に制限されない。
ビニル重合性基としては、例えば、CH2=CR−(Rは水素原子又はメチル基)が挙げられる。エステルは特に制限されない。エステルが有する炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基は無置換のものでも置換基を有するものであってもよい。炭化水素基としては例えば、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、これらの組合わせを有するエステルが挙げられる。
エステルが有する炭化水素基が無置換である場合のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0013】
エステルが有する炭化水素基が有することができる置換基としては、例えば、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
置換基とエステルが有する炭化水素基とは直接又は有機基を介して結合することができる。有機基は上記と同義である。
エステルが有する炭化水素基が置換基を有する場合のモノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジアルコキシシランのようなアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートのようなヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0014】
ビニル重合性基とカルボキシル基とを有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル酸の量は、接着性により優れ、耐久性に優れるという観点から、無置換の(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、3〜5質量部であるのが好ましい。
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの量は、接着性により優れ、耐水接着性に優れるという観点から、無置換の(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、1〜4質量部であるのが好ましい。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、接着性により優れ、耐水接着性に優れるという観点から、無置換の(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、8〜14質量部であるのが好ましく、8〜11質量部であるのがより好ましい。
【0016】
アクリル系オリゴマーを製造する際に使用されるモノマーの量比としては、例えば、
1) (メタ)アクリレート100%の場合;
2) (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル1〜4質量部を少なくとも使用する場合;
3) (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル7〜11質量部、及び/又は、
(メタ)アクリル酸3〜5質量部を使用する場合;
4) (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、
(メタ)アクリル酸が3〜5質量部であり、
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが1〜4質量部であり、
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが7〜11質量部である場合が挙げられる。
【0017】
接着性により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記2)、4)が好ましく、上記4)がより好ましい。
【0018】
アクリル系オリゴマーの製造に際しては、必要に応じて、例えば、エチルブロモイソブチレート、メチル−2−クロロプロピオネートのような重合開始剤;臭化銅、塩化銅のような重合触媒;2,2′−ビピリジル、スパルテインのような、重合触媒に配位して錯体を形成することが可能な配位子を使用することができる。重合開始剤、重合触媒、配位子はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、これらの使用量は適宜選択することができる。
【0019】
アクリル系オリゴマーの製造としては例えば、モノマー、重合触媒、配位子を混合して、重合触媒が溶解した後、ここに重合開始剤を加え、70〜120℃の条件下で重合させ、その後メタノール添加をして反応を停止し、アクリル系オリゴマーを製造する方法が挙げられる。
また、本発明において、アクリル系オリゴマーの製造の際には、溶剤を使用しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。溶剤を使用した場合は乾燥させて使用する。
【0020】
得られたアクリル系オリゴマーをそのまま使用して、本発明のプライマー(無溶剤)とすることができる。
【0021】
本発明のプライマーは、アクリル系オリゴマー以外に、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、タッキファイヤー、充填剤、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、難燃剤、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、レオロジー調整剤が挙げられる。添加剤の量は、特に制限されない。添加剤を使用する場合はアクリル系オリゴマーに添加し混合すればよい。
【0022】
本発明のプライマーは、接着性により優れ、環境汚染がより少なく、安全性に優れるという観点から、アクリル系オリゴマー中の重合残渣としてのモノマー量が、2,500ppm以下であるのが好ましく、1500ppm以下であるのがより好ましい。
【0023】
本発明のプライマーは、例えば、シーラント(例えば建築用)のプライマーとして使用することができる。シーラントとしては例えばポリウレタン系シーラント、建築用ポリウレタンシーラントが挙げられる。
ポリウレタン系シーラントを形成するために使用されるポリウレタン系シーリング材組成物は特に制限されない。例えば、ポリメリックMDI(メチレンジイソシアネート)のようなポリイソシアネートと、ポリプロピレングリコールのようなポリオールとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含むポリウレタン系シーリング材組成物が挙げられる。ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明のプライマーを適用することができる部材(被着体)としては、例えば、ガラス;アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;モルタルのような多孔質部材;フッ素電着、アクリル電着やフッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装された部材;シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系のようなシーリング材の硬化物;塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂;NBR、EPDMのようなゴム類が挙げられる。
【0025】
本発明のプライマーを被着体の適用する方法は特に制限されない。例えば、塗布、浸漬、スプレーが挙げられる。
本発明のプライマーは完全無溶剤型(完全無有機溶剤型、完全無水型)、環境対応型とすることができる。このため本発明のプライマーを適用のあと乾燥工程を設けることなく、プライマー層の上にシーラントを適用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<アクリル系オリゴマーの製造>
第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で使用した。まず、モノマーをシュレンク管に入れ、窒素で脱気し、ここに触媒と配位子を加え、80℃の条件下において撹拌し、触媒が溶解した後、ここに開始剤を加え、シュレンク管を密封した。シュレンク管を100℃の条件下において重合を開始し、6時間重合させ、その後メタノールを用いて反応を停止した。反応停止後減圧蒸留してアクリル系オリゴマーを製造した。
【0027】
<アクリル系オリゴマーの分析>
アクリル系オリゴマーについて以下の分析を行った。結果を第1表に示す。
・Mw、Mw/Mn
上記のとおり製造されたアクリル系オリゴマーについて、その重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定された。
【0028】
・ガラス転移温度
上記のとおり製造されたアクリル系オリゴマーについて、得られたアクリル系オリゴマーについて示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により測定された。転移域の中点の温度をアクリル系オリゴマーのガラス転移温度とする。
【0029】
・残存モノマー量
アクリル系オリゴマーの残存モノマー量は、上記のとおり製造されたアクリル系オリゴマーについて、ガスクロマトグラフィーを用いてガラスカラムの条件下で測定された。
【0030】
<プライマーの評価>
・試験体の作製
被着体として、縦5cm、横5cm、厚さ10mmのモルタルを用いた。上記のとおり製造されたプライマー(アクリル系オリゴマー)を塗布量50g/m2で、被着体の片面の全面に刷毛を用いて塗布し、プライマー層を得た。次いで、プライマー層の上に建築用ポリウレタンシーラントであるシーリング材組成物(商品名UH−01NB、横浜ゴム社製)を塗布量500g/m2で塗布したのち、シーリング材組成物を塗布した被着体を20℃の条件下に7日間置いて養生させて試験体(モルタル、プライマー層、シーリング材層の積層体)を作製した。
・評価方法
上記のとおり得られた試験体について、以下に示す方法で、接着性を評価した。結果を第1表に示す。
1つ目の評価(初期接着性)は、上記のとおり得られた試験体を用いて、ナイフカットによる手はく離試験(はく離の角度30°)を行い、破壊状況を評価した。
2つ目の評価(耐水接着性)は、上記のとおり得られた試験体を20℃の水中に7日間浸漬させる耐水試験を行い、耐水試験後、ナイフカットによる手はく離試験(はく離の角度30°)を行い、破壊状況を評価した。
・評価基準
接着性の評価基準について、プライマー層が被着体又はウレタンシーラントと界面剥離し、界面剥離の面積が、剥離させた全面積の10%を超える場合を「×」、界面剥離の面積が10%以下の場合を「○」、プライマー層が被着体又はウレタンシーラントと凝集破壊した場合を「◎」とした。
【0031】
【表1】
【0032】
第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・オクチルアクリレート:和光純薬社製
・メチルメタクリレート:和光純薬社製
・アクリル酸:和光純薬社製
・γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン:和光純薬社製
・ヒドロキシエチルメタクリレート:和光純薬社製
・エチルブロモイソブチレート:和光純薬社製(EBIB 分子量195)
・2,2′−ビピリジル:和光純薬社製(bpy 分子量156.18)
・臭化銅(I):和光純薬社製(CuBr 分子量143.45)
・臭化銅(II):和光純薬社製(CuBr2 分子量223.35)
【0033】
第1表に示す結果から明らかなように、ガラス転移温度が−25℃を超える比較例1〜2は、常温(25℃)で粘ちょう体又は固体となり液体とならず、接着性(耐水接着性)が悪かった。ガラス転移温度が−25℃を超え、分子量分布が1.6を超える比較例3は、常温で液体とならず、接着性(初期接着性及び耐水接着性)が悪かった。
これに対して、実施例1〜5は、常温で液体であり、接着性(初期接着性及び耐水接着性)に優れる。
このように、本発明のプライマーは、使用されるアクリル系オリゴマーが常温で液体であるので無溶剤のプライマーとなることができ、よって、当該プライマーは環境汚染がなく、安全性が高く、乾燥が不要である。