(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754570
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】パルス電源
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20150709BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20150709BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20150709BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20150709BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
H02J7/04 F
H02J7/34 A
H02J1/10
H02J1/00 309R
H02H9/02 H
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-34827(P2012-34827)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-172545(P2013-172545A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 博三
(72)【発明者】
【氏名】森 均
【審査官】
石川 晃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−079464(JP,A)
【文献】
特開2007−295766(JP,A)
【文献】
特開平04−127880(JP,A)
【文献】
特開昭59−178926(JP,A)
【文献】
特開平08−223791(JP,A)
【文献】
特開昭55−029259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/34
H02J 1/10
H02J 1/00
H02H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源と前記主電源とは別個に設けられた補助充電用電源とによりコンデンサを所定の充電電圧で充電するパルス電源において、
前記補助充電用電源に接続され、前記補助充電用電源から出力された電圧をスイッチングするスイッチング素子と、
前記スイッチング素子と前記コンデンサとの間に介装された、リアクトルと抵抗とを並列接続した並列回路と、
前記補助充電用電源から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、前記スイッチング素子のオン/オフ制御を行う制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする、パルス電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源と補助充電用電源とを備えたパルス電源に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ25と、コンデンサC1と、その両者を接続する給電/充電用スイッチング回路200と、1チップコンピュータからなる制御装置21とを備えた装置20が開示されている(
図3参照)。
制御装置21は、コンデンサC1の端子電圧について設定した閾値と、周囲温度について設定した閾値に基づき、前記端子電圧が第一の閾値より高いときは充電を行わず、第一の閾値と第二の閾値の間にあるときは、周辺温度が閾値を超えたときのみ充電し、第二の閾値よりも下がったときは、周辺温度に無関係に充電するよう給電/充電用スイッチング回路200を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−79464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、バッテリ(主電源)からコンデンサへの充電方式が提案されており、装置20は、充電用電源として主電源のみを備えている。
ここで、本願発明者等は、特許文献1のように充電用電源として主電源のみを備えた構成では充電電圧を高精度に制御することは困難であることに着眼し、充電電圧の高精度な制御を可能にすべく、主電源およびコンデンサのみならず、補助充電用電源をさらに備えたパルス電源を考案した。しかしながら、かかるパルス電源には、次のような問題があった。
【0005】
主電源およびコンデンサのみならず、補助充電用電源をさらに備えたパルス電源においては、コンデンサの電圧を分圧器にてモニタしてドロッパ制御することが考えられる。
しかしながら、この場合、負荷側からの伝導ノイズが補助充電用電源に直接侵入することとなる。また、コンデンサの充電電圧の精度が分圧器およびドロッパ制御の精度に左右されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、補助充電用電源に侵入するノイズを低減し、かつ、コンデンサの充電電圧の精度を安定化させることができる、パルス電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によると、主電源と前記主電源とは別個に設けられた補助充電用電源とによりコンデンサを所定の充電電圧で充電するパルス電源において、前記補助充電用電源に接続され、前記補助充電用電源から出力された電圧をスイッチングするスイッチング素子と、前記スイッチング素子と前記コンデンサとの間に介装された、リアクトルと抵抗とを並列接続した並列回路と、前記補助充電用電源から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、前記スイッチング素子のオン/オフ制御を行う制御ユニットと、を備えたことを特徴とする、パルス電源が提供される。
【0008】
上記構成によると、主電源と補助充電用電源とを備えた構成において、制御ユニットが、補助充電用電源から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、スイッチング素子のオン/オフ制御を行う。これにより、負荷側からの伝導ノイズが補助充電用電源に直接侵入することが防止され、補助充電用電源に侵入するノイズを低減することができる。
また、上記構成によると、スイッチング素子とコンデンサとの間に、リアクトルと抵抗とを並列接続した並列回路が介装されているため、負荷側からの伝導ノイズが、補助充電用電源に到達する前に、リアクトルおよび抵抗のフィルタ効果によって減衰されることになる。したがって、補助充電用電源に侵入するノイズをより低減することができる。
さらに、上記構成により、コンデンサ側のドロッパ制御が不要となり、コンデンサの充電電圧の精度が分圧器およびドロッパ制御の精度に左右されてしまうという問題が解消される。したがって、コンデンサの充電電圧の精度を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、主電源と補助充電用電源とを備えた構成において、制御ユニットが補助充電用電源から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、スイッチング素子のオン/オフ制御を行うことで、補助充電用電源に侵入するノイズを低減し、かつ、コンデンサの充電電圧の精度を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパルス電源の回路図である。
【
図2】本発明の比較例に係るパルス電源の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
先ず、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係るパルス電源1の回路構成および各部の機能等について説明する。
【0013】
パルス電源1は、主電源10、コンデンサ11、補助充電用電源12、スイッチング素子13、リアクトル14、抵抗15、および、制御ユニット20から構成されている。
【0014】
主電源10および補助充電用電源12は、ともに、パルス電流を発生させる電源であり、コンデンサ11を介して負荷16と接続される。負荷16は、例えば放電管等であり、ノイズ源ともなる。
【0015】
コンデンサ11は、大まかな制御を行う主電源10、および、細密な制御を行う補助充電用電源12の双方と接続されている。コンデンサ11は、主電源10からの電荷を蓄積するとともに、スイッチング素子13がオンのときに補助充電用電源12からの電荷を蓄積する。当該蓄積された電荷は、負荷16に供給される。
【0016】
スイッチング素子13は、補助充電用電源12とコンデンサ11との間に設けられている。スイッチング素子13は、IGBT、FET、GTO、サイリスタ、その他任意のスイッチング素子であってよい。
【0017】
リアクトル14と抵抗15とが、互いに並列接続された状態で、スイッチング素子13とコンデンサ11との間に設けられている。スイッチング素子13は、オンの場合、補助充電用電源12と、リアクトル14と抵抗15との並列回路とを接続し、オフの場合、補助充電用電源12と、リアクトル14と抵抗15との並列回路との接続を遮断する。
【0018】
制御ユニット20は、補助充電用電源12およびスイッチング素子13の双方に接続されている。制御ユニット20は、補助充電用電源12から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行う(即ち、補助充電用電源12に対して直接制御信号を送って補助充電用電源12を直接制御する)とともに、スイッチング素子13のオン/オフ制御を行う。
【0019】
ここで、抵抗15のみをスイッチング素子13とコンデンサ11との間に設けた場合、補助充電用電源12の電圧とコンデンサ11の電圧とに電位差が生じ得る。
本実施形態では、抵抗15にリアクトル14を並列接続したものを、スイッチング素子13とコンデンサ11との間に設けたことで、上記電位差の発生が抑制される。また、抵抗15の存在により、リアクトル14とコンデンサ11との共振が防止される。
【0020】
上述したように、本実施形態のパルス電源1によると、主電源10と補助充電用電源12とを備えた構成において、制御ユニット20が、補助充電用電源12から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、スイッチング素子13のオン/オフ制御を行う。これにより、負荷16側からの伝導ノイズが補助充電用電源12に直接侵入することが防止され、補助充電用電源12に侵入するノイズを低減することができる。
また、本実施形態によると、スイッチング素子13とコンデンサ11との間に、リアクトル14と抵抗15とを並列接続した並列回路が介装しているため、負荷16側からの伝導ノイズが、補助充電用電源12に到達する前に、リアクトル14および抵抗15のフィルタ効果によって減衰されることになる。したがって、補助充電用電源12に侵入するノイズをより低減することができる。
さらに、本実施形態の構成の場合、コンデンサ11側のドロッパ制御が不要となり、コンデンサ11の充電電圧の精度が分圧器およびドロッパ制御の精度に左右されてしまうという問題が解消される。したがって、コンデンサ11の充電電圧の精度を安定化させることができる。
【0021】
次いで、
図2を参照し、本発明の比較例に係るパルス電源100の回路構成および各部の機能等について説明する。
【0022】
パルス電源100は、主電源10、コンデンサ11、補助充電用電源12、スイッチング素子13、および、制御ユニット20から構成されている。即ち、本比較例に係るパルス電源100は、上述の実施形態のパルス電源1から、リアクトル14と抵抗15との並列回路を除いたものに相当する。ここで、上述の実施形態と同じ構成要素については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0023】
本比較例のパルス電源100によると、制御ユニット20が、補助充電用電源12から一定の電圧が出力されるようにローカル制御を行うとともに、スイッチング素子13のオン/オフ制御を行うことはできるが、リアクトル14と抵抗15との並列回路によるフィルタ効果を得ることはできない。そのため、本比較例では、上述の実施形態と同様の効果(補助充電用電源12に侵入するノイズを低減し、かつ、コンデンサ11の充電電圧の精度を安定化させるという効果)を十分に得ることができない。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更が可能なものである。
【0025】
なお、本発明は、電子ビームや陽子ビームを扱う加速器などに給電するためのパルス電源の他、パルス電流を発生させる任意のパルス電源に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 パルス電源
10 主電源
11 コンデンサ
12 補助充電用電源
13 スイッチング素子
14 リアクトル
15 抵抗
16 負荷
20 制御ユニット