(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両の周囲には運転者の位置から視認できない死角があり、運転者は車両の運転にあたり当該車両の周囲に細心の注意を払う必要がある。特に、車両を後退して駐車させる場合には、駐車自体に苦手意識を持っているユーザも多く、精神的疲労も少なくない。そこで、従来、車両の周囲の障害物を監視する技術が利用されてきた(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載の車両の障害物警報装置は、横移動障害物検出手段と、横移動方向検出手段と、横移動情報提供手段とを備えて構成される。横移動障害物検出手段は車両前方において進行方向を横切る方向に移動する障害物を検出する。横移動方向検出手段は横移動障害物検出手段により検出された障害物の横移動方向を検出する。横移動情報提供手段は横移動方向検出手段により検出された障害物の横移動方向に関する情報をドライバーに提供する。この際、横移動情報提供手段は表示部に横移動方向検出手段により検出された横移動方向を表わす矢印をディスプレイに表示する。
【0004】
特許文献2に記載の車両周囲監視装置は、撮像手段と、障害物検出手段と、表示手段とを備えて構成される。撮像手段は自車両の一部を含む車両周囲を撮像する。障害物検出手段は車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と自車両との距離を算出する。表示手段は撮像手段によって撮像された撮像画像と障害物検出手段によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の技術のように車両の周囲の障害物を検出し、当該障害物を明示する情報(矢印等)を画面表示することで運転者に車両の周囲の障害物の存在を報知することが可能である。しかしながら、車両に搭載されるディスプレイ(表示手段)の画面サイズは大きいものではない。このため、ディスプレイに表示される車両の周囲の状況を示す画像上に矢印等を表示すると、車両の周囲の状況が見難くなったり障害物を把握できなくなったりする可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の周囲の状況を見難くすることなく、車両に接近する障害物の存在を運転者に明示することが可能な障害物警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る障害物警報装置の特徴構成は、
車両の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像の中央部分を注目撮影画像として生成する注目撮影画像生成部と、
前記注目撮影画像
の少なくとも一部
が所定の色で彩色されたマスク領域を
画面上部に設定するマスク領域設定部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体が前記注目撮影画像に対応する領域に進入した場合に前記マスク領域を強調表示させるマスク領域強調表示部と、
を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、車両に接近する物体が、車両に備えられる表示装置(例えばモニタ)の画面内に物体が映った場合に物体の視認性を低下させることなく、運転者に車両に接近する物体の存在を明示することができる。したがって、表示装置の画面サイズが小さい場合でも、車両に接近する物体を見逃すことがなくなる。また、マスク領域のみ
強調表示させるので、運転者が車両の周囲の状況が見難くなることがない。したがって、車両の周囲の状況を見難くすることなく、車両に接近する障害物(物体)の存在を運転者に明示することが可能となる。
さらに、画面の上部において強調表示することができるので、運転者が視認し易くなる。したがって、物体が接近したことを効果的に明示できる。
【0010】
また、前記強調表示は点滅表示であると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、運転者に対して視覚的に障害物の接近を明示することが可能となる。したがって、運転者が障害物の接近をより効果的に認識し易くなる。
【0012】
【0013】
【0014】
また、前記マスク領域強調表示部は、前記物体が前記注目撮影画像に対応する領域から退出した場合に前記マスク領域の強調表示を中止すると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、車両の運転者に物体が遠ざかったことを明示することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る障害物警報装置100は、車両に接近する物体がある場合に当該車両の運転者に物体が接近していることを明示する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、障害物警報装置100の構成を模式的に示したブロック図である。
図1に示されるように、障害物警報装置100は、撮影画像取得部11、注目撮影画像生成部12、外側領域生成部13、物体存在判定部14、移動方向判定部15、合成画像生成部18、マスク領域設定部19、マスク領域強調表示部20の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として車両1の運転者に物体7の接近を明示する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0019】
撮影画像取得部11は、車両1の周囲の情景を撮影した撮影画像Gを取得する。ここで、車両1にはカメラ5が備えられる。本実施形態におけるカメラ5は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラにより構成される。このようなカメラ5は、
図2(a)に示されるように、車両1の外側後部に備えられるライセンスププレートの近傍、或いは車両1の外側後部に備えられるエンブレムの近傍等に、車両1の後方に向けてやや俯角を有して配設される。また、カメラ5は広角レンズ(図示せず)を備えて構成される。これにより、車両1の後方を略180度に亘って、車両1の周囲の情景を撮影することができる。このような撮影範囲は、
図2(a)の「広視野角」として示される。このカメラ5は、リアルタイムで動画を撮影画像Gとして出力する性能を有する。このような撮影画像Gは、撮影画像取得部11に伝達される。
【0020】
このような撮影画像Gの一例が
図2(b)に示される。
図2(b)の全幅は、
図2(a)の広視野角に対応する。ここで、撮影画像Gは、
図2(a)に示されるような車両1から後方を見て左側にいる物体7が、
図2(b)に示されるように撮影画像G内の右側にいるように鏡像処理が行われる。これは、モニタ50に車両1の後方の情景を表示する際、車両1の運転者が撮影画像Gに含まれる物体7が車両1の左側にいるのか右側にいるのかを感覚的に理解し易くするためである。
【0021】
図1に戻り、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gに基づいて注目撮影画像を生成する。本実施形態では、撮影画像Gの撮影範囲は広視野角である。このため、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gの中央部分である狭視野領域Nを注目撮影画像として生成する。撮影画像Gは上述の撮影画像取得部11から伝達される。本実施形態では、注目撮影画像は、
図2(b)に示される撮影画像Gの横方向の中央部分が相当する。このような狭視野領域Nは、
図1(a)の「狭視野角」のような例えば車両1の後方120〜130度程度の領域とすると好適である。また、狭視野領域Nは車両1が後退する際の進行可能範囲に近いので、撮影画像Gのうち特に注目すべき領域であることから「注目撮影画像」と称される。このような注目撮影画像は、後述するモニタ50に表示される表示画像に対応する(
図2(c)参照)。なお、本実施形態では、「注目撮影画像」は「狭視野領域」の画像であるとして説明する。
【0022】
外側領域生成部13は、注目撮影画像の外側の外側領域Oを生成する。すなわち、撮影画像Gのうち狭視野領域Nの外側の外側領域Oを生成する。上述のように、撮影画像Gの横方向の中央部分に注目撮影画像生成部12により狭視野領域Nが生成される。外側領域生成部13はこのような狭視野領域Nの横方向の外側に、
図2(b)のような外側領域Oを生成する。外側領域生成部13により生成された外側領域Oは、後述する物体存在判定部14に伝達される。
【0023】
物体存在判定部14は、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定する。外側領域Oは、外側領域生成部13から伝達される。物体7が存在するか否かの判定は、例えばパターンマッチング等の公知の画像認識処理を用いて行うことが可能である。もちろん、パターンマッチング以外の処理により、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定することは可能である。物体存在判定部14の判定結果は、後述する移動方向判定部15に伝達される。
【0024】
移動方向判定部15は、外側領域Oの物体7の移動方向を判定する。このような移動方向の判定は、物体存在判定部14により、外側領域Oに物体7が存在すると判定された場合に行われる。特に本実施形態では、移動方向判定部15により、外側領域Oの物体7が狭視野領域Nの側に移動するか否かが判定される。狭視野領域Nの側に移動するとは、車両1の後方において、車両1の幅方向外側から、車両1の真後ろの方向に移動することを示す。このような判定は、例えば現在の撮影画像Gにおける物体7の位置と所定時間前の撮影画像Gにおける物体7の位置とを比較して行うことも可能であるし、オプティカルフローを用いるなどの公知の手法を用いて行うこともできる。このような移動方向の判定結果は、後述する明示画像出力部16に伝達される。
【0025】
マスク領域設定部19は、注目撮影画像のうち、車両1の周囲の情景の少なくとも一部を非表示にするマスク領域Mを設定する。本実施形態では、マスク領域Mは
図2(c)に示されるように、画面上部、すなわち、注目撮影画像内の上側部分に設定される。このマスク領域Mは、注目撮影画像の横方向両側に亘って形成される。マスク領域M内は、車両1の上方の情景が見えないように、例えば黒色で彩色される。もちろん、他の色で彩色しても良い。
【0026】
マスク領域強調表示部20は、外側領域Oの物体7が注目撮影画像に対応する領域、すなわち狭視野領域Nに進入した場合にマスク領域Mを強調表示させる。本実施形態では、強調表示とは、点滅表示である。外側領域Oの物体7が狭視野領域Nに進入したか否かは、移動方向判定部15により判定される。マスク領域強調表示部20は、移動方向判定部15の判定結果に応じて、マスク領域Mを点滅させる。これにより、車両1の運転者に、狭視野領域Nに物体7が存在することを視覚的に明示することができるので、運転者に注意喚起をすることが可能となる。
【0027】
また、マスク領域強調表示部20は、物体7が注目撮影画像に対応する領域、すなわち狭視野領域Nから退出した場合にマスク領域Mの強調表示を中止する。物体7が狭視野領域Nから退出したか否かも、移動方向判定部15により判定することが可能である。すなわち、移動方向判定部15は、外側領域Oの狭視野領域N側から外側領域Oに進入する物体7があれば、物体7が狭視野領域Nから退出したと判定することが可能である。このような判定結果も、マスク領域強調表示部20に伝達される。また、本実施形態では、強調表示とは点滅表示である。したがって、マスク領域強調表示部20は、このような判定結果が伝達されると、マスク領域Mの点滅を中止する。これにより、車両1の運転者に、狭視野領域Nに物体7が存在していないことを視覚的に明示することが可能となる。
【0028】
図3には、外側領域Oから狭視野領域Nに物体7(人)が移動した場合に行われるマスク領域Mの点滅に係る画像の一例が示される。
図3(a)に示されるように、物体7が外側領域O(本例では、右側の外側領域O)から狭視野領域Nに進入すると、
図3(b)−(f)に示されるように、マスク領域Mが元々の色(例えば「黒」)から他の色(例えば「赤」)に彩色される。
【0029】
その後、
図3(g)−(j)に示されるように、マスク領域Mが前記他の色(例えば「赤」)から前記元々の色(例えば「黒」)に戻される。このような元々の色と他の色との彩色は、物体7が狭視野領域Nから外側領域O(本例では左側の外側領域O)に退出するまで(
図3(k)及び(l))繰り返して行われる。これにより、狭視野領域Nに物体7がいる場合には、マスク領域Mを点滅させることができるので、車両1の運転者に車両1の周囲に物体7がいることを明示し、注意喚起することが可能となる。
【0030】
次に、障害物警報装置100が、マスク領域Mを点滅させる場合の一連の処理について、
図4の模式図を用いて説明する。まず、撮影画像取得部11が、車両1のカメラ5により撮影された撮影画像Gを取得する(ステップ#1)。
【0031】
次に、注目撮影画像生成部12が、取得された撮影画像Gの中央部分を注目撮影画像として生成する(ステップ#2)。また、注目撮影画像においてマスク領域Mが設定される(ステップ#3)。一方、外側領域生成部13が、取得された撮影画像Gの横方向両側部分を外側領域Oとして生成する(ステップ#4)。このように生成された外側領域Oに物体7が存在しているか否か、物体存在判定部14により判定される(ステップ#5)。
【0032】
外側領域Oに物体7が存在していると判定されると、移動方向判定部15により当該物体7の移動方向が判定される(ステップ#6)。物体7の移動方向が、外側領域Oから注目撮影画像に対応する狭視野領域Nの側へのものである場合、物体7が狭視野領域Nに進入したと判定される(ステップ#7)。係る場合、マスク領域強調表示部20により注目撮影画像内のマスク領域Mが強調表示される(ステップ#8)。
【0033】
このように物体7が狭視野領域Nに進入した場合に、マスク領域Mを点滅させることにより車両1の運転者に車両1の近傍を注視させることが可能となる。したがって、車両1の周囲の状況を把握させることができると共に、物体7が接近していることを明示することが可能となる。
【0034】
このように本発明に係る障害物警報装置100によれば、車両1に接近する物体7が、車両1に備えられるモニタ50の画面内に物体7が映った場合に物体7の視認性を低下させることなく、運転者に車両1に接近する物体7の存在を明示することができる。すなわち、運転者に車両1に接近する物体7の存在を注意喚起することが可能となる。したがって、モニタ50の画面サイズが小さい場合でも、車両1に接近する物体7を見逃すことがなくなる。また、マスク領域Mのみ点滅させるので、運転者が車両1の周囲の状況が見難くなることがない。したがって、車両1の周囲の状況を見難くすることなく、車両1に接近する障害物(物体7)の存在を運転者に明示することが可能となる。
【0035】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、マスク領域強調表示部20は、物体7が狭視野領域Nから退出した場合にマスク領域Mの強調表示を中止するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。マスク領域強調表示部20は、物体7が外側領域Oから狭視野領域Nに進入してから所定時間経過後にマスク領域Mの強調表示を中止するよう構成することも当然に可能である。更に、マスク領域強調表示部20は、物体7が狭視野領域Nから退出後、所定時間経過後にマスク領域Mの強調表示を中止するよう構成することも当然に可能である。
【0036】
上記実施形態では、強調表示は点滅表示であるとして説明した。しかしながら本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。強調表示として、単にマスク領域Mの彩色を変更するだけでも良い。
【0037】
上記実施形態では、物体7が存在するか否かの判定は、例えばパターンマッチング等の公知の画像認識処理を用いて行うことが可能であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ソナー等で検出することも当然に可能である。
【0038】
上記実施形態では、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gの中央部分である狭視野領域Nを注目撮影画像として生成するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、狭視野領域Nに対応した狭視野角を持つカメラ5で撮影画像Gを取得した場合には、当該撮影画像Gをそのまま注目撮影画像として用いることも当然に可能である。係る場合、外側領域Oに物体7が存在するか否かの判定は、上記のように、例えばソナー等で検出すると好適である。