(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記製造方法においては、前処理として浸漬工程を設け、原料である米粒を充分に浸漬し、水分含量を調整する必要があった。このため、浸漬工程を行うための大量の浸漬水が必要となり、その上、浸漬後の浸漬水を処理するための排水処理設備を設ける必要も生じ、ランニングコストだけでなくイニシャルコストをも押し上げることになる。
【0005】
また、浸漬による吸水を行うと、白米表面に亀裂が生じ、該亀裂から白米の旨み成分や澱粉が溶出してしまい、さらに、α化後の乾燥時に前記亀裂が原因となって米粒が割れ、外観と粒感を損なうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点にかんがみ、浸漬工程を設けることなく、かつ、乾燥工程時に米粒が割れにくいα化米の製造方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、原料である米粒を加圧蒸気で蒸煮する加圧蒸煮工程と、該加圧蒸煮工程後の米粒をα化する炊飯工程と、該α化工程後の米粒を高温で乾燥する高温乾燥工程と、該高温乾燥工程よりも低温で乾燥する低温乾燥工程と、を順次設ける、という技術的手段を講じたものである。上記のように、加圧蒸煮処理して原料米粒の表面にα化層を形成した後に炊飯処理を行うようにしたので、米粒表面がα化層によって強靭性が備わっているため、該α化層により前記加圧蒸煮工程の後工程における米粒の割れ発生を防ぐことができるようになった。
【0008】
また、前記加圧蒸煮工程において、0.05MPa〜0.3MPaの加圧状態で60秒〜180秒の間行う、という技術的手段を講じたものである。
【0009】
さらに、前記高温乾燥工程では、110℃〜250℃の熱風で、含水率が20%〜25%の範囲となるように米粒を乾燥することを特徴とする。
【0010】
その上、前記乾燥工程を、高温で乾燥する高温乾燥工程と、低温で乾燥する低温乾燥工程との2工程で行う、という技術的手段を講じたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のα化米の製造方法によると、原料米粒を加圧蒸煮処理して当該原料米粒の表面にα化層を形成した状態で炊飯を行うようにしたので、炊飯時の吸水が早くなり、従来必要とされた浸漬工程を必要としない。このため、浸漬用の大量の水が不必要となり、さらに浸漬に使用した水を処理するための排水処理設備も不必要となるので、ランニングコスト及びイニシャルコストの削減が可能となる。
【0012】
また、原料米粒の表面にα化層を形成し、該α化層によって強靱性が備わった状態で炊飯(α化工程)を行うので、炊飯における米粒の吸水時に亀裂が生じることがない。さらに、原料米粒の表面のα化層の形成を常圧蒸煮ではなく、加圧蒸煮によって処理しているので、米粒表面を全周方向から加わる圧力蒸煮によって米粒表面全体に亀裂を生じることなく均一なα化が行えるものである。よって、この工程を経て完成したα化米は外観的にも良好な製品となる。
【0013】
その上、前記α化層の効果によって急速な吸水(高速加水)を行っても亀裂が発生することがないので、緩慢的な加水又は吸水を行わなくて済み、このため、加水処理時間を短縮することができ、α化米の製造時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1に示した本発明におけるα化米の製造フローを参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
原料は白米とし、短粒種の他、中粒種、長粒種でもよく、品種の制限もない。また、加圧蒸煮工程で米粒中心部がポーラス化しやすいように、水分は14%未満とするのが好ましい。
【0017】
ステップ
S1(加圧蒸煮工程):
この工程は、原料白米を次工程に備えて加圧状態で蒸煮して米粒表面をα化させる加圧蒸煮工程である。
図2に、該加圧蒸煮工程において使用する加圧蒸煮装置14を示す。該加圧蒸煮装置14は、密閉状の機壁15の内部に、ベルトコンベヤー16が横設してある。該ベルトコンベヤー16は、ネット状の搬送無端ベルト16aと、該搬送無端ベルト16aを掛け渡す駆動ローラー16b及び従動ローラー16cとから構成されている。前記機壁15の底部には、機壁15によって形成された密閉空間内に、加圧した加熱蒸気を供給する加圧加熱蒸気供給部17が配設してある。該加圧加熱蒸気供給部17は、加圧加熱蒸気供給源(図示せず)と、該加圧加熱蒸気供給源が生成した加圧加熱蒸気を前記機壁15の底部に設けた供給口(図示せず)に供給する蒸気管17aとから構成され、該蒸気管17aの途中には開閉弁17bが配設されている。
【0018】
前記ベルトコンベヤー16の搬送始端側には、米粒(原料)を当該ベルトコンベヤー16上に供給するための傾斜シュート管15aが配設してある。また、前記傾斜シュート管15aの上流側端部は、投入管7の排出側と連通して、米粒を当該ステップ
S1(加圧蒸煮工程)に受け入れられるようになっている。
【0019】
前記投入管7の内部には、前記機壁15内の加圧加熱蒸気が外部に抜け出ないようにするために複数の弁が内蔵されている。該複数の弁は、前記投入管7の内部に、上部から順に、原料の落下衝撃を吸収するための衝撃吸収ダンパー7a、上方バタフライ弁7b、下方バタフライ弁7c、供給された原料の塊をほぐすほぐし板7dが任意間隔をおいて配設してある。また、前記投入管7における前記上方バタフライ弁7bと下方バタフライ弁7cとの間の間隙7fには、エア抜きバルブ7eが設けてある。
【0020】
前記投入管7における前記複数の弁の作動について説明する。原料を前記投入管7を介して加圧蒸煮装置14に供給する際には、まず、前記上方バタフライ弁7b及び下方バタフライ弁7cを共に閉状態にして前記エア抜きバルブ7eから前記隙間7fにおける圧力(加圧加熱蒸気)を抜く。次いで、前記上方バタフライ弁7bを開状態にし、原料を上部供給側から前記衝撃吸収ダンパー7aの開度によって流量調整しながら前記隙間7f内に供給する。そして、該隙間7f内に原料が所定量堆積した時点で、前記エア抜きバルブ7eを閉状態にするとともに前記上方バタフライ弁7bを閉状態にし、この後に、下方バタフライ弁7cを開状態にすることで、原料は、自重によって落下して前記ほぐし板7bを介して前記加圧蒸煮装置14(傾斜シュート管15a内)に供給される。上記順序が繰り返されることで、1ロット分の原料が加圧蒸煮装置14内に順次供給される。
【0021】
前記ベルトコンベヤー16の搬送終端側には、加圧蒸煮装置14内で米粒表層がα化処理された米粒を機壁15の外部に排出するための下方移送管18が配設してある。該下方移送管18の内部にも、前記投入管7と同様に、α化処理を終えた米粒を機壁15の外部に排出する際に、前記加圧蒸煮装置14内の加圧加熱蒸気が外部に抜け出して機壁15内の圧力が低下しないように、複数の弁が配設してある。この複数の弁は、下方移送管18の内部に、当該加圧蒸煮装置14内での処理を終えた原料を排出落下した際、この落下衝撃を吸収するための衝撃吸収ダンパー18a、上方バタフライ弁18b、下方バタフライ弁18c、が上部から下部に向けて順次、任意間隔をおいて配設してある。また、前記下方移送管18における前記上方バタフライ弁18bと下方バタフライ弁18cとの間の間隙18eには、エア抜きバルブ18dが設けてある。なお、前記機壁15の底部には、加圧蒸煮装置14内において蒸気が水滴となって溜まった水を排水するための排水部19が設けてある。
【0022】
前記下方移送管18における前記複数の弁の作動について説明する。前記下方移送管18を介してα化処理を終えた米粒を加圧蒸煮装置14から排出する際には、まず、前記上方バタフライ弁18bと下方バタフライ弁18cとを共に閉状態にし、前記隙間18eにおける圧力(加圧加熱蒸気)を前記エア抜きバルブ18dから抜く。次いで、前記上方バタフライ弁18bを開状態にし、排出する米粒を前記衝撃吸収ダンパー18aの開度を調整して前記隙間18e内に供給する流量が調整される。そして、該隙間18e内に前記米粒が所定量堆積した時点で、前記エア抜きバルブ18dを閉状態にするとともに前記上方バタフライ弁18bを閉状態にし、この後、下方バタフライ弁18cを開状態にすることによって米粒が自重によって外部に落下排出される。上記順序が繰り返されることで、処理済みの1ロット分の玄米は、順次、加圧蒸煮装置14外に排出される。
【0023】
ステップ
S1(加圧蒸煮工程)の作用を説明する。
まず、前記加圧蒸煮装置14の機壁15内部に前記加圧加熱蒸気供給部17から加圧した飽和蒸気を供給し、前記機壁15内部の圧力が0.05MPa〜0.3MPaの範囲内の任意設定値となるように調節する。このように、前記機壁15内部の圧力が0.05MPa〜0.3MPaとなったときの前記機壁15内部の温度は、約110℃から145℃前後の状態となっている。次に、原料となる米粒を前記ベルトコンベヤー16の搬送始端側に供給する。供給された米粒に加圧蒸煮処理する時間は、60秒から180秒の範囲とするのがよく、当該時間範囲内の任意設定値となるように前記ベルトコンベヤー16の搬送速度を調整する。このような条件で、米粒は0.05MPa〜0.3MPaの加圧状態(温度:約110℃から145℃前後)で60秒から180秒の間、加圧蒸煮処理がなされることによって表層(0.1〜0.5mm)がα化(約10%〜20%)されるとともに、該米粒の中心部はポーラス状となり、吸水能力が高まる。この後、前記下方移送管18から排出される。米粒表層のα化度は、上記加圧状態及び加圧蒸煮処理時間の範囲内の設定値によって異なる。前記範囲内において、高圧で長時間の設定処理の場合はα化度が大きく(多く)、逆に低圧で短時間の設定処理の場合はα化度が小さい(少ない)。なお、加圧蒸煮工程では蒸気を使用するので、水の使用量が少なく前記排出部19からの排水量も少量で済む。
【0024】
このように、米粒を加圧蒸煮処理するメリットは、米粒の粒と粒とが接触した状態であっても前記圧力によって粒間にスムーズに充満した飽和蒸気により、各米粒を全周方向から均一に加圧蒸煮することができるので、各米粒の表層のα化状態が均一となってバラツキが少なくなる点にある。この点は、この後工程となる炊飯工程(ステップ
S3)において、白米の粒ごとの加水ムラや白米一粒における加水(含水)ムラが生じない作用を奏し、より高品質のα化米を製造する点で有効である。
【0025】
ステップ
S2(単粒化工程):
この工程では、前工程の加圧蒸煮工程(加圧蒸煮装置14)から排出された、表層をα化した白米表面の粗熱(あらねつ)を除去し、米粒の結着を弱めて単粒化する。
図3に、該単粒化工程で用いる単粒化装置32を示す。
【0026】
前記単粒化装置32は、機枠33で囲まれた内部にベルトコンベヤー34を横設する。前記機枠33の一端上部には、前工程から排出された米粒(表面α化済み)をベルトコンベヤー34上に供給するための供給部35が配設してある。また、前記機枠33の他方下端部には、ベルトコンベヤー34上の搬送終端部から、粗解し(あらほぐし)した米粒を排出する排出部36が配設してあり、該排出部36の下方には解砕機42が設けられている。
【0027】
前記ベルトコンベヤー34は、ネット状の搬送無端ベルト34aと、該搬送無端ベルト34aを掛け渡す駆動ローラー34b及び従動ローラー34cとから構成されている。また、ベルトコンベヤー34上の搬送終端部には、粗熱(あらねつ)をとり結着力を弱めた米粒を粗解しするためのほぐし手段31を配置している。該ほぐし手段31には、例えば特開平10−151071号に記載されているような、公知の手段を用いることができる。前記解砕機42は、ほぐし手段31によって粗解しされた米粒を単粒化するために設けられている。
【0028】
前記単粒化装置32における側面の機枠33には、前記ベルトコンベヤー34の長手方向に沿って横長形状に形成した外気取入口37を形成する。また、上面の前記機枠33には、ベルトコンベヤー34の搬送面の略全面積に相当する大きさの吸引排風口38が設けてある。前記吸引排風口38は吸引管39と排風ファン40とを介して排気管41に接続してしる。
【0029】
ステップ
S2(単粒化工程)の作用を説明する。
本ステップ
S2は、前工程で蒸煮処理(表面α化処理)した米粒を、順次、前記供給部35から搬送無端ベルト34aの搬送始端側に供給する。該搬送無端ベルト34a上に供給された米粒は、ベルトコンベヤー34によって搬送される間に、前記排風ファン40の吸引作用で外気により通風され、表面の熱(粗熱)が奪われて表面温度が低下した状態でほぐし手段31によりほぐされ、順次、前記排出部36から排出され、排出部36の下端に接続された解砕機42で単粒化される。単粒化され排出口43から排出された米粒は、含水率が約15%〜30%の範囲内のものとなっている。なお、前記通風は、排風ファン40の吸引作用によって外気取入口37から取り入れられる外気が上側に位置する搬送無端ベルト34aを通過することにより生じるものである。
【0030】
ところで、米粒の釜への投入時に、釜内で炊飯水によって充分に撹拌される場合等は、ステップ
S2は省略することが可能な工程である。
【0031】
ステップ
S3(炊飯工程):
この工程では、単粒化装置32の解砕機42の排出口43から排出された米粒を炊飯し、該米粒を完全にα化する。
図4に、誘導加熱式炊飯設備1の全体を示す概略側面図を示す。該誘導加熱式炊飯設備1は釜式の炊飯設備である。なお、本工程では米粒を完全にα化することが目的であるので、炊飯設備の熱源は誘導加熱に限定されるわけではなく、蒸気やガス等のその他の熱源を使用してもよい。また、炊飯設備には公知のものを使用することができる。
【0032】
前行程で単粒化された米粒は、投入ホッパ4に搬送される。投入ホッパ4は、フレーム5の上方に配置されている。投入ホッパ4の下端は、バルブ27を介して配米装置6と接続しており、投入ホッパ4内の米粒は順次配米装置6に送られる。配米装置6では、釜8に投入する米の量を計量し、配米装置6の下方に搬入されている釜8に適量を配米する。
【0033】
前記釜8は、配米装置6の下部に配設したローラーコンベア28の一端である搬送口10から投入され、配米装置6の下部に搬送される。配米後、釜8に適量の水を加水装置13により加え、加水後、釜8に蓋を装着し、釜8をローラーコンベア28上の釜受取部12まで搬送する。この位置に搬送された釜8は、移送機11によって炊飯装置9の炊飯部3に搬送される。
【0034】
移送機11は、一般的な移送装置を用いることができる。本発明の誘導加熱式炊飯設備1に用いた移送機11は、フレーム25の上部を、フレーム25上部に配設したレール26に沿って直線方向に移動できる構造となっている。移送機11は、図示しない制御装置で制御されており、釜受取部12に搬送されている釜8を複数設けられた炊飯部3の何れかに搬入する。
【0035】
ここで、炊飯装置9について説明する。本実施形態の誘導加熱式炊飯設備1では、3台の炊飯装置9を配設しているが、各炊飯装置9は同一の構造をしており、1つの炊飯装置には、2つの炊飯部3が設けられている。また、炊飯装置9は図示しない制御部によって制御されている。なお、製造設備の規模に応じて配設する炊飯装置9の台数を増減することが可能であり、炊飯条件によっては、配設する炊飯装置9の構造を同一とする必要はない。
【0036】
釜8が搬送された炊飯装置9の炊飯部3では、炊飯が行われる(ステップS3)。炊飯工程終了後、釜8は、ローラーコンベア20の一端である釜搬出部21まで移送機11にて炊飯部3より搬出される。
【0037】
釜搬出部21に搬出された釜は、ローラーコンベア上の反転部22の方向に順次搬送され、その間に蒸らし工程が行われる。反転部22に搬送された釜は、反転機23に装着され、反転機23によって反転され、釜内部のご飯が取出部24に取り出される。
【0038】
次に炊飯工程(ステップS3)について説明する。単粒化工程が終了した米粒は、誘導加熱式炊飯設備1の投入ホッパ4に供給される。該投入ホッパ4に供給された米粒は、バルブ27を通過し、配米装置6に送られる。配米装置6に送られた米粒は、該配米装置6から適量の米粒が釜8に投入される。米粒が投入された釜8には加水装置13から適量の炊飯水が釜8に供給される。そして、炊飯水が供給された釜8は蓋をされてローラーコンベア28上を釜受取部12まで搬送される。なお、釜8は、自動又は手動のどちらの方法で蓋をしてもよい。
【0039】
前記釜搬送部12に搬送された釜8は、移送機11によって複数設けられた炊飯部3のいずれかに搬入される。搬入後、搬入された炊飯部3にて炊飯が行われる。なお、本炊飯工程では、米粒を完全にα化することを目的としており、通常の炊飯に比べ、炊飯における細かい加熱制御を省略することが可能である。
【0040】
炊飯部3での炊飯完了後、釜8は移送機11により炊飯部3から搬出され、ローラーコンベア20上の釜搬出部21まで運ばれる。そして、ローラーコンベア20上の反転部22まで搬送され、反転部22に設置された反転機23により反転され、釜8内の米粒(完全にα化した米飯)
が取り出される。取り出された米粒は次工程である乾燥工程に送られる。
【0041】
ところで、前記炊飯工程で完全にα化された米粒を次工程の乾燥工程に搬送する際、既存のコンベア等で搬送することが可能であるが、例えば、特許第4000678号に記載されているような水輸送を用いて搬送することが望ましい。
【0042】
ステップ
S4(乾燥工程):
本乾燥工程は、前工程から排出された、含水率が55%〜65%の米飯(α化された炊飯後の米粒)に対して乾燥処理を行う工程である。該乾燥処理では、米粒の水分活性値が0.5以下となるように、米粒の含水率が10%以下となるまで乾燥する必要がある。その際、前記含水率20%程度までは高温(110℃〜200℃)で急速に乾燥を行えばよいが、製造されるα化米の食味を考慮して、前記含水率が20%〜25%の範囲となった時点で、低温(70℃〜100℃)での乾燥に切り換えることが望ましい。このため、本発明では、乾燥工程(ステップ
S4)を高温乾燥工程(ステップ
S4A)と低温乾燥工程(ステップ
S4B)の2工程に分けて行っている。
【0043】
高温乾燥工程(ステップ
S4A)では、前工程から排出された米粒を、含水率が20%〜25%の範囲となるまで高温で乾燥処理する。該乾燥処理を行う高温乾燥処理装置61の
一例を
図5に示す。高温乾燥処理装置61は移送有孔板62を備える。該移送有孔板62は、米粒を乾燥しながら移送するための多数の通風孔を備え、かつ、上部機枠63aと下部機枠63bとの間に挟まれて水平状態に配設してなる。前記移送有孔板62の上方には、該移送有孔板62と同様な有孔板64を対設し、米粒を移送可能な高さの米粒移送路65が形成される。該米粒移送路65の一端側には、米粒供給口66を配設し、他方側には米粒排出口67が配設される。前記移送有孔板62(米粒移送路65)は、前記下部機枠63bに配設した振動モータ60の振動作用により、米粒を米粒供給口66側から米粒排出口67側に振動移送が可能なように構成してある。前記下部機枠63bは複数のスプリング68を介してベース台69により保持してある。
【0044】
一方、熱風発生供給装置70を配設する。該熱風発生供給装置70は、灯油バーナー等から構成するバーナー部70aと送風ファン70bとを有する。該送風ファン70bは熱風移送管70c及び熱風供給口70dを介して前記下部機枠63bと連通し、熱風が前記移送有孔板62の下方に供給されるように構成される。前記送風ファン70bとバーナー部70aとの間も熱風移送管70cによって連通されている。前記熱風移送管70cには適宜風量調節弁を設けるとよい。前記上部機枠63aには排風口71を備え、前記移送有孔板62の下方から通風した熱風を排風可能にしてある。該排風口71には、図示しない吸引装置を接続するとよい。なお、本ステップ
S4Aは、高温乾燥処理装置61を一例に説明したが、高温乾燥処理装置61以外に、過熱蒸気、マイクロ波照射乾燥装置などでもよく、約110℃〜250℃の高温で米粒を乾燥することが目的である。
【0045】
高温乾燥工程の作用を説明する。高温乾燥処理装置61において、米粒供給口66から移送有孔板62(米粒移送路65)に供給された、前記ステップ
S3(炊飯工程)から排出された含水率55%〜65%の米粒(α化された炊飯後の米飯)は、振動モータ60による振動作用を受けながら下流方向に移送され、その間、下方からの高温熱風の通風作用を受け、炊飯膨化形状を維持したまま急速に乾燥される。前記高温熱風の温度は、約110℃〜200℃の温度が好ましく、120℃〜150℃がより望ましい。前記高温熱風を通風させる時間は5分〜15分が好ましい。また、米粒の含水率は約20%〜25%になるようにするのが好ましい。
【0046】
本高温乾燥工程においては、高温熱風の通風作用によって、炊飯時に膨化した米粒形状を維持した処理(乾燥)がなされるが、米粒表面が裂けて米粒形状が崩れたりすることがない。これは、これまでの処理工程において、特に、ステップ
S1の加圧蒸煮工程を行ったことにより、米粒表面をα化して強靭にし、亀裂を生じることなく加水できる状態としていることに起因する。さらに、表面に強靭性をもった米粒をステップ
S3の炊飯工程に供給するので、当該米粒を略100%までα化する際においても煮崩れすることなく米粒形状を保持したままα化処理を終えることができる。そして、本ステップ
S4Aの高温乾燥工程において、高温熱風の通風作用によって急速乾燥がなされるが、当該米粒は前記略完全α化によって全体的に強靭性を有しているので、炊飯時に膨化した米粒形状を崩すことなく維持した状態で乾燥処理がなされることになるのである。
【0047】
ステップ
S4B(低温乾燥工程):
低温乾燥工程では、前工程である高温乾燥工程から排出された米粒を、含水率10%以下まで仕上げ乾燥するものである。本低温乾燥工程は、使用する乾燥装置は周知のものでよく、例えば、
図6に示したネット乾燥装置72を使用することができる。該ネット乾燥装置72は、
図3に示した単粒化装置32を改良し、前記ネット状の搬送無端ベルト34aの下方から熱風を供給できる構成のものである。すなわち、熱風発生供給装置73をネット乾燥装置72の本体の下部に接続した構成となっている。熱風発生供給装置73は、バーナー部73aと送風ファン73b、熱風移送管73cを有し、熱風移送管73cを介して熱風が搬送無端ベルト34aの下方から供給・通風できる構成となっている。なお、前記単粒化装置32と同じ構成の部分については前述のため説明を省略する。
【0048】
低温乾燥工程の作用を説明する。低温乾燥工程は、前記ネット乾燥装置72を使用し、前ステップ
S4Aの高温乾燥工程を経た米粒(含水率:約20%〜25%)を、供給部35から搬送無端ベルト34aの搬送始端側に供給する。搬送始端側に供給された米粒は、搬送無端ベルト34aによって搬送されながら、熱風発生供給装置73からの70℃〜100℃の熱風の通風を受けて含水率10%以下まで低温乾燥を行い、水分活性値(AW)を0.5以下の状態にして排出部36から排出される。なお、前記熱風の通風時間は60分〜90分以内であることが好ましい。
【0049】
上記実施例においては、白米を例に説明したが、前述のように本発明において適用できる米粒はこのほか玄米、分搗き米又は胚芽米でもよい。
【0050】
また、上記実施例で示したように、本発明は、前記ステップ
S1〜ステップ
S4Bの各装置を連続使用することにより、製品α化米を原料米粒から連続処理で効率よく生産することができる製法である。
【0051】
なお、上記実施の形態において完成したアルファー化米は、前述のように、食するときには、煮炊きする必要がなく、お湯を注ぐだけで米飯に復元するものとなる。また、煮炊きすることで、通常より短時間で調理できるというメリットもある。