特許第5754666号(P5754666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5754666森林土壌による水の浄化・保水実験方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754666
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】森林土壌による水の浄化・保水実験方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20150709BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20150709BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20150709BHJP
   C02F 3/32 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   A01G7/00 603
   A01G7/00 602Z
   C02F1/00 G
   C02F3/00 C
   C02F3/32
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-264137(P2010-264137)
(22)【出願日】2010年11月26日
(65)【公開番号】特開2012-110300(P2012-110300A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2010年11月30日
【審判番号】不服2014-13655(P2014-13655/J1)
【審判請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】594024545
【氏名又は名称】横浜市
(74)【代理人】
【識別番号】100166224
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 成夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087860
【弁理士】
【氏名又は名称】長内 行雄
(72)【発明者】
【氏名】池谷 三男
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘
【合議体】
【審判長】 黒瀬 雅一
【審判官】 畑井 順一
【審判官】 藤本 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 応用地質株式会社,実験20 森林が水を吸収するはたらきを調べてみよう,水防災教育用資料 実験素材集 国土交通省北海道開発局,2009年6月24日,URL,http://www.hkd.mlit.go.jp/zigyoka/z jigyou/gijyutu/PDF/jikken/sozai20.pdf(検索日2013年5月29日,著作・掲載日についてhttp://www.oyo.co.jp/release/topics/2009/20090624.を参照)
【文献】 第1章基礎・基本を確実に身に付ける理科学習,佐賀県教育センター,2003年,2014年9月21日検索,URL,http://www.saga−ed.jp/kenkyu/kenkyu chousa/h15/02rika/1kisokihon.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/38
G09B 23/40
G09B 25/00
G09B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林を模した樹木が植えられた土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた容器と、樹木が植えられていない土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた他の容器にそれぞれ疑似降雨としての水を散布し、
土壌を介して各容器の各流出口からそれぞれ流出する水の濁質、流出量、流出の時間差を比較する
ことを特徴とする森林土壌による水の浄化・保水実験方法。
【請求項2】
前記各容器の土壌層として、黒土、赤土、腐葉土のうちの何れか一種類からなる土壌または二種類以上を混合若しくは積層してなる土壌を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の森林土壌による水の浄化・保水実験方法。
【請求項3】
前記樹木が植えられた土壌として、表面側にコケ類からなる表面層を設けた土壌を用いる
ことを特徴とする請求項1または2記載の森林土壌による水の浄化・保水実験方法。
【請求項4】
森林を模した樹木が植えられた土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた容器と、
樹木が植えられていない土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた他の容器とを備えた
ことを特徴とする森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項5】
前記各容器を、木製の外箱と、外箱内に配置された合成樹脂製の内箱とから形成した
ことを特徴とする請求項4記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項6】
前記各容器を互いに幅方向に隣接するように配置し、
各容器の流出口をそれぞれ容器の前面に設けた
ことを特徴とする請求項4または5記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項7】
前記各容器をそれぞれ前方に向かって下り傾斜をなすように設けた
ことを特徴とする請求項6記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項8】
前記各容器の各流出口を互いに幅方向に位置がずれるように配置した
ことを特徴とする請求項4、5、6または7記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項9】
前記各容器の各流出口を互いに前後方向に位置がずれるように配置した
ことを特徴とする請求項4、5、6または7記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【請求項10】
前記各容器を載置する載置台を備えた
ことを特徴とする請求項4、5、6、7、8または9記載の森林土壌による水の浄化・保水実験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林への降雨が土壌で滞留し、浄化される様子を、模擬的な森林土壌を用いて実験及び観察するための森林土壌による水の浄化・保水実験方法その装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、山間部の森林土壌は、雨水を滞留させ、河川への水の流出量や流出時間を調整する保水機能を有しており、特に水源林として整備された森林を流域に持つ河川では、大雨による洪水の発生を抑制し、雨が降らない時期が続いても川の水を涸れにくくする働きがあることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、森林土壌は、雨水が浸透する間に汚れを取り除き、河川へ流出する水の汚泥を防止する浄化機能も有している。更に、人工的なダムと比べると、魚の遡上を妨げないことや、集落の水没問題も起こらないといった利点もある。即ち、このような森林及びその土壌は、洪水の抑制、川の枯渇防止、河川の浄化等に役立つものとして期待されており、地形が急峻で多雨である日本においては、いわゆる「緑のダム」として近年注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「水源林」、ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典、[2010年11月8日検索]、インターネット<URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%BA%90%E6%9E%97>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のような森林土壌の機能は、文献や口頭による説明のみでは実感することが困難であり、一般に広く理解されていないのが現状である。また、洪水による災害の報道においても、森林土壌の保水機能の重要性は報じられないのが通常であり、森林土壌の果たす役割が周知される機会が少ないという実情もある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、森林への降雨が土壌で滞留し、浄化される様子を、模擬的な森林土壌を用いた実験により視覚的に観察することのできる森林土壌による水の浄化・保水実験方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、森林を模した樹木が植えられた土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた容器と、樹木が植えられていない土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた他の容器にそれぞれ疑似降雨としての水を散布し、土壌を介して各容器の各流出口からそれぞれ流出する水の濁質、流出量、流出の時間差を比較するようにしている。
【0007】
また、本発明は前記目的を達成するために、森林を模した樹木が植えられた土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた容器と、樹木が植えられていない土壌を収容するとともに、土壌を介して水を流出する複数の流出口が少なくとも土壌の上部と下部に位置するように互いに上下方向の異なる位置に設けられた他の容器とを備えている。
【0008】
これにより、各容器内に疑似降雨としての水を同時に散水し、各容器の流出口からそれぞれ流出する水の濁質、流出量、流出の時間差を比較することにより、樹木が植えられた土壌が樹木が植えられていない土壌よりも水の浄化機能及び保水機能が高いことを視覚的に理解することができる。この場合、各容器には、互いに上下方向の位置が異なる流出口が少なくとも二つずつ設けられていることから、土壌の地表付近と地中との水の浸透状態の違いを観察することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹木が植えられた土壌が樹木が植えられていない土壌よりも水の浄化機能及び保水機能が高いことを視覚的に理解することができるので、森林への降雨が土壌で滞留し浄化される様子を模擬的に観察することができる。これにより、文献や口頭による説明とは異なり、森林土壌の機能を実験によって容易に理解することができるので、例えば本実施形態の実験装置を展示館、公園、学校等の各種施設に設置して実験を行うことにより、森林土壌による水の浄化・保水機能を見学者が容易に学習することができ、森林土壌の重要性の周知を図る上で極めて効果的である。この場合、土壌の地表付近と地中との水の浸透状態の違いを観察することができるので、より高度な実験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す実験装置の斜視図
図2】実験装置の正面図
図3】実験装置の側面図
図4】第1及び第2の容器の側面断面図
図5】土壌を収容した第1の容器の側面断面図
図6】土壌を収容した第2の容器の側面断面図
図7】実験方法を示す斜視図
図8】実験結果を示す図
図9】変形例を示す実験装置の側面図
図10】変形例を示す実験装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図10は本発明の一実施形態を示すもので、森林への降雨が土壌で滞留し、浄化される様子を、模擬的な森林土壌を用いて実験及び観察するための実験方法その装置に関するものである。
【0012】
本実施形態の実験装置は、森林を模した樹木が植えられた第1の土壌1を収容する第1の容器10と、樹木が植えられていない第2の土壌2を収容する第2の容器20と、各容器10,20を載置する木製の載置台30とから構成されている。また、この実験装置を用いた実験では、各容器10,20に水を散布する散水具40と、各容器10,20から流出する水を受容する透明容器50が用いられる。
【0013】
第1の土壌1は、図5に示すようにコケ類からなる表面層1aと、黒土、赤土及び腐葉土の混合土からなる土壌層1bと、砂利を敷設してなる底面層1cとからなる。第1の土壌1には、針葉樹や広葉樹の苗木からなる樹木1dが植えられており、針葉樹としては、例えばヒノキ、スギ、モミツガ等が用いられ、広葉樹としては、例えばケヤキ、ナラ、カエデ等が用いられる。
【0014】
第2の土壌2は、図6に示すように黒土、赤土及び腐葉土の混合土からなる土壌層2aと、砂利を敷設してなる底面層2bとからなる。
【0015】
第1の容器10は、上面を開口した木製の外箱11と、上面を開口した合成樹脂製の内箱12からなり、その前面、背面及び両側面はそれぞれ上面側から底面側に向かって幅が狭くなるように傾斜している。内箱12は外箱11内に配置され、その上端の周縁部を除く外面を外箱11によって覆われている。第1の容器10の前面には、水を流出するための流出口としての第1及び第2の流出パイプ13,14が設けられ、各流出パイプ13,14は第1の容器10から前方に延出するように設けられている。各流出パイプ13,14は、一端の開口面が上方を臨むように斜めに形成され、他端側は外箱11及び内箱12の前面を貫通して内箱12内に連通している。各流出パイプ13,14は、他端の開口面をメッシュ15によって覆われており、メッシュ15は、例えば5mm程度の網目に形成されている。また、各流出パイプ13,14は互いに上下方向に間隔をおいて設けられ、第1の流出パイプ13は上方、第2の流出パイプ14は下方に配置されている。この場合、各流出パイプ13,14は、その外径Dよりも大きい距離Wをおいて互いに第1の容器10の幅方向に位置がずれるように配置されている。
【0016】
第2の容器20は、第1の容器10と同等の構成からなる外箱21、内箱22、第1の流出パイプ23、第2の流出パイプ24及びメッシュ25を有し、第1の容器10の一側方に配置されている。
【0017】
載置台30は、各容器10,20を載置する第1の載置部31と、第1の載置部31の四隅から下方に延びる4本の脚部32と、透明容器50を載置する第2の載置部33とから構成され、第1の載置部31には各容器10,20が互いに幅方向に隣接するように配置される。第1の載置部31は平面状に形成され、前方に向かって下り傾斜をなすように設けられている。また、第1の載置部31の前端及び幅方向両端には枠部31aが設けられ、各枠部31aは上端が第1の載置部31の上面よりも上方に位置するように形成されている。これにより、第1の載置部31上の各容器10,20が各枠部31aの上端側に係止することにより、第1の載置部31の前方または側方への各容器10,20の移動が規制されるようになっている。各脚部32は上下方向に延びる角材からなり、その上端に第1の載置部31が固定されている。この場合、後側の脚部32は、第1の載置部31が前下りに傾斜するように前側の脚部32よりも上方に長く形成されている。また、前側の脚部32と後側の脚部32との間と、後側の一方の脚部32と他方の脚部32との間には、それぞれ前後方向及び幅方向に延びる補強部材32aが設けられている。第2の載置部33は載置台30幅方向に延びる平板状の部材からなり、前側の脚部32に前方に突出するように取り付けられている。
【0018】
散水具40は、例えば園芸用の如雨露が用いられ、第1の容器10用と第2の容器20用にそれぞれ二つ用意されている。尚、散水具としては、如雨露の散水口を先端に取り付けたホースを用いることも可能である。
【0019】
透明容器50は、例えばビーカー等、上面を開口した円筒状の容器が用いられ、第1の容器10用と第2の容器20用にそれぞれ二つ用意されている。
【0020】
以上のように構成された実験装置においては、第1の容器10に第1の土壌1を収容し、第2の容器20に第2の土壌2を収容することにより、以下の実験が行われる。この場合、第1の容器10では、第1の流出パイプ13が土壌層1bの上部側に位置し、第2の流出パイプ14が底面層1cに位置するように第1の土壌1を形成する。また、第2の容器20では、第1の流出パイプ23が土壌層2aの上部側に位置し、第2の流出パイプ24が底面層2bに位置するように第2の土壌2を形成する。更に、各透明容器50を載置台30の第2の載置部33に載置するとともに、一方の透明容器50を第1の容器10の各流出パイプ13,14の下方に配置し、他方の透明容器50を第2の容器20の各流出パイプ23,24の下方に配置する。
【0021】
前記実験装置を用いた実験では、一方の散水具40から第1の容器10に水を散布するとともに、他方の散水具40から第2の容器20に水を散布することにより、各容器10,20内に疑似降雨としての水を同時に散水する。この後、第1の容器10の各流出パイプ13,14及び第2の容器20の各流出パイプ23,24からそれぞれ流出して透明容器50に受容される水の濁質、流出量、流出の時間差を比較することにより、森林への降雨が土壌で滞留し、浄化される様子を模擬的に観察することができる。
【0022】
例えば、図8の実験結果に示すように、第1の容器10においては、疑似降雨を散水すると、水が土中深く浸透し、上方の第1の流出パイプ13から時間をおいて透明度の高い水が流出した後、更に時間差を伴い下方の第2の流出パイプ14から透明度の高い水が徐々に流出する。また、第2の容器20においては、疑似降雨を散水すると、まず土壌の表面付近に水が浸透し、すぐに上方の第1の流出パイプ23と下方の第2の流出パイプ24からそれぞれ濁った水が流出する。
【0023】
以上の実験より、樹木1d及びコケ類の表面層1cを有する第1の土壌1は、樹木及びコケ類の表面層を有しない第2の土壌2に比べ、水の浄化機能及び保水機能が高いことが分かり、その様子を視覚的に理解することができる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、森林を模した樹木1dが植えられた第1の土壌1を収容した第1の容器10と、樹木が植えられていない第2の土壌2を収容した第2の容器20にそれぞれ疑似降雨としての水を散布し、第1の土壌1を介して第1の容器10の各流出パイプ13,14から流出する水の濁質、流出量、流出の時間差と、第2の土壌2を介して第2の容器20の各流出パイプ23,24から流出する水の濁質、流出量、流出の時間差とを比較するようにしたので、第1の土壌1が第2の土壌2よりも水の浄化機能及び保水機能が高いことを視覚的に理解することができ、森林への降雨が土壌で滞留し浄化される様子を模擬的に観察することができる。これにより、文献や口頭による説明とは異なり、森林土壌の機能を実験によって容易に理解することができるので、例えば本実施形態の実験装置を展示館、公園、学校等の各種施設に設置して実験を行うことにより、森林土壌による水の浄化・保水機能を見学者が容易に学習することができ、森林土壌の重要性の周知を図る上で極めて効果的である。
【0025】
この場合、各容器10,20を、木製の外箱11,21と、外箱11,21内に配置された合成樹脂製の内箱12,22とから形成したので、合成樹脂製の内箱12,22によって水漏れを防止することができるとともに、公園等の林間に設置した場合に、木製の外箱11,21の外観によって周囲との調和を保つことができ、自然環境の下に設置する場合に極めて有利である。
【0026】
また、第1の土壌1の表面側にコケ類からなる表面層1aを設けたので、より実際の森林に近い土壌を形成することができ、実験の効果を高めることができる。
【0027】
更に、第1及び第2の容器10,20を互いに幅方向に隣接するように配置し、各容器10,20の各流出パイプ13,14,23,24をそれぞれ容器10,20の前面に設けたので、各容器10,20から水が流出する様子を容易に比較することができ、各土壌1,2の機能の違いを観察する上で極めて有利である。
【0028】
この場合、各容器10,20をそれぞれ前方に向かって下り傾斜をなすように設けたので、例えば山の斜面を想定した実験を行うことができ、より現実性の高い実験を行うことができる。
【0029】
また、各容器10,20に、互いに上下方向の位置が異なる第1の流出パイプ13,23及び第2の流出パイプ14,24を設けたので、土壌の地表付近と地中との水の浸透状態の違いを観察することができ、より高度な実験が可能となる。
【0030】
この場合、各容器10,20の第1の流出パイプ13,23と第2の流出パイプ14,24とを互いに幅方向に位置がずれるように配置したので、上方の第1の流出パイプ13,23から流出する水が下方の第2の流出パイプ14,24から流出する水と混合することがなく、各流出パイプ13,14,23,24から流出する水を的確に観察することができる。
【0031】
また、各容器10,20を載置する載置台30を備えているので、各容器10,20を任意の場所に容易に設置することができ、各種施設に設置する場合に極めて有利である。この場合、載置台30も木製であることから、各容器10,20と同様、自然環境の下に設置する場合に極めて有利である。
【0032】
尚、前記実施形態では、各容器10,20の第1の流出パイプ13,23と第2の流出パイプ14,24とを互いに幅方向に位置がずれるように配置したものを示したが、図9に示すように第1の流出パイプ13,23を第2の流出パイプ14,24よりも所定長さLだけ長く形成することにより、上方の流出口と下方の流出口が互いに前後方向に位置がずれるようにすれば、第1の流出パイプ13,23と第2の流出パイプ14,24とを、図10に示すように互いに幅方向の同一位置に配置した場合でも、上方の第1の流出パイプ13,23から流出する水と下方の第2の流出パイプ14,24から流出する水との混合を防止することができる。
【0033】
また、前記実施形態で示した第1及び第2の土壌は一例であり、黒土、赤土、腐葉土のうちの何れか一種類からなる土壌を土壌層1b,2aとして用いたり、或いは二種類以上を積層してなる土壌を土壌層1b,2aとして用いるようにしてもよく、土の種類や樹木の種類も前記実施形態には限られない。
【0034】
更に、各容器10,20の数は前記実施形態で示したものに限定されず、3つ以上の容器を用いるようにしてもよい。また、各容器10,20の流出口の数も前記実施形態で示したものに限られず、例えば各容器10,20に流出口を3つ以上ずつ設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…第1の土壌、1a…表面層、1b…土壌層、2…第2の土壌、2a…土壌層、10…第1の容器、11…外箱、12…内箱、13…第1の流出パイプ、14…第2の流出パイプ、20…第2の容器、21…外箱、22…内箱、23…第1の流出パイプ、24…第2の流出パイプ、30…載置台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10