(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電極表面を炭化しても、電極内部での熱伝導性が改善されず、電極先端部が過熱する。また、セラミック材料を伝熱体として構成した場合、セラミックスが絶縁性のために電極間を流れる電流量の増加に影響が生じ、電極構造が制限される。一方、熱伝導率が高く、融点の低い金属材料を電極内部に封入しても、金属の熱伝導率はそれ固有の値が上限となるので、今後ますます大電力、大電流化が図られると、電極先端部の過熱、溶融を確実に抑えることができない。したがって、本発明の課題は、大出力の放電ランプにおいて、電極の温度上昇を効果的に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放電ランプは、放電管内に対向配置される一対の電極と、電極を支持する一対の電極支持棒とを備え、少なくとも一方の電極もしくは電極支持棒が、金属よりも熱伝導率が高く、粒子状あるいは繊維状の形態を呈している炭素から成る素材によって成形される伝熱体を備えている。そして、伝熱体は、一体的構造で電極もしくは電極支持棒の少なくとも一部を構成することを特徴とする。
【0010】
ここで、伝熱体は、全体的に炭素が含まれて一体的構造が形成されるものを表す。炭素繊維または粒子状カーボン基材を素材とする伝熱体としては、炭素繊維束を使用することが可能であり、例えば、タンタルなどの筒状金属部材に炭素繊維を束ねることで炭素繊維束を伝熱体として構成することができる。また、粉末状カーボンをカーボン基材にして成形することも可能である。一方、伝熱体としては、カーボン(黒鉛)結晶構造だけの伝熱体を構成することも可能であり、あるいは、C/Cコンポジット、タングステンなどの金属を添加した金属/カーボン複合材なども適用可能である。例えば、粉末状タングステンなどの金属に混ぜて伝熱体を成形してもよい。さらに、伝熱体に対し、カーボンナノチューブなどのカーボンナノファイバを含ませても良い。
【0011】
伝熱体は、炭素をベースにした構造であるため、熱伝導性が金属よりも優れており、融点も金属と同様もしくはそれ以上高い。したがって、放電中、電極先端部の熱は伝熱体によって効率よく輸送され、電極全体の温度均一化が図られる。熱は電極本体から支持棒を経て拡散し得るので、これにより、電極の温度低下が図られ、その消耗が抑制され、ランプ寿命が延びる。また、伝熱体は導電性であるとともに、熱や外力などに対して安定した強度があるため、様々な電極構造を採用しても温度上昇を抑えることが可能となる。
【0012】
陽極先端部などは、電子衝突によって放電中最も温度上昇しやすい。電極先端部の熱を効果的に電極支持棒側へ輸送するため、少なくとも電極内部において(電極自身あるいは電極支持棒として)電極軸方向に延在するように伝熱体を構成するのが望ましい。
【0013】
伝熱体を備える電極構造は様々な態様によって構成可能であり、電極の一部として伝熱体を設け、あるいは、電極全体を伝熱体として構成してもよい。電極の一部として伝熱体を設ける場合、電極先端部、電極内部、電極側面部など如何なる電極構造部分においても適用可能である。さらに、電極の代わりに、電極支持棒を伝熱体として構成してもよい。
【0014】
炭素が放電管内に放出されると、放電管内面に炭素が付着し、炭素薄膜を管内表面に形成して発光効率を低下させる。そのため、温度上昇する電極先端部については、タングステンなどの金属で構成するのが望ましい。
【0015】
さらに、電極側面からの炭素放出を防ぐため、金属の電極先端部と伝熱体を備えた電極の構成として、内部空間を電極軸方向に沿って形成した電極本体を構成し、伝熱体を内部空間に収容するのが望ましい。例えば、筒状部材内に挿通させた炭素繊維束で伝熱体を構成する場合、炭素繊維束が筒状部材から電極軸方向に沿って突出した状態で、伝熱体を内部空間に設けるのがよい。
【0016】
ショートアーク型放電ランプなどでは、ランプが鉛直方向に設置され、電極支持棒が電極を支える。電極を確実に保持することを考慮すれば、電極支持棒および電極本体と接合し、内部空間を密閉する電極蓋を設けるのが望ましい。電極蓋と電極本体、電極支持棒との連結を確実にするため、伝熱体のサイズを内部空間サイズに調整し、隙間なく内部空間に詰め込むのがよい。
【0017】
対流によって熱輸送するため、隙間を設けるように伝熱体を内部空間に収容し、電極本体よりも融点が低い熱伝導性材料を、内部空間に封入するのがよい。放電中、熱伝導性材料の溶融によって内部空間に熱対流が生じ、電極支持棒側へ熱が輸送される。また、溶融する熱伝導性材料の熱を効果的に輸送するため、伝熱体を電極蓋と接合させ、点灯中熱伝導性材料と接するように延びているのが望ましい。特に、熱対流によって運ばれる熱を電極側面からも放出させるため、伝熱体を、内部空間を形成する電極本体の円筒部として構成してもよい。
【0018】
伝熱体と電極蓋の熱膨張率が相違するため、点灯中に結合部分から亀裂が生じやすい。伝熱体と電極蓋の一体的な結合を確実にするため、伝熱体と電極蓋との接合部分に傾斜組織を設けるのがよい。ここで、「傾斜組織」とは、その内部組織の組成成分および構造が、接合部およびその近傍において連続的、段階的に変化する組織を表し、温度変化など材料機能がそれに伴って連続的、段階的に変化する。
【0019】
一方、電極蓋を設けず、内部空間を電極支持棒側に開けるように凹部を電極本体に形成してもよい。この場合、電極支持棒が伝熱体と接合するように構成すればよい。
【0020】
あるいは、電極を確実に保持するため、電極支持棒が、内部空間の底面まで延びて電極先端部を保持するのがよい。このとき、伝熱体を、内部空間を形成する電極本体の円筒部として構成してもよい。また、電極先端部の熱を電極支持棒側に逃すため、伝熱体を筒状に形成し、内部空間の底面が外部と繋がるように、電極支持棒と間隔を設けながら同軸的に配置するのがよい。
【0021】
電極に内部空間を設けないように構成することも可能であり、電極支持棒と電極線タブと接合し、電極先端部を除いた電極胴体部を構成してもよい。この場合、伝熱体と電極先端部との接合部において傾斜組織を設け、一体的構造を強化させるのがよい。
【0022】
また、内部空間を電極内部に設けない構造として、電極に、電極先端部から電極軸方向に沿って延び、電極支持棒と結合する軸部を設け、円筒状の伝熱体を、軸部周りに同軸配置するのがよい。
【0023】
一方、電極ではなく、電極支持棒を伝熱体として構成する場合、電極先端部の熱が電極支持棒を伝わって封止管側へ輸送される。通常、封止管では冷却風、水冷などによって温度調整を行っており、電極の熱を封止管側へ輸送することによって効果的に温度調整をすることが可能となる。電極先端部の熱を外部に放出させるため、電極支持棒側に開いた内部空間を形成するのが望ましく、電極支持棒は、内部空間の底面まで延びて電極本体と接合する。例えば、電極本体と接合し、内部空間と電極外部を連通させる穴が形成された電極蓋を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、大出力の放電ランプにおいても、電極の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的平面図である。
【0028】
ショートアーク型放電ランプ10は、透明な石英ガラス製の発光管12を備え、発光管12内には陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置されている。発光管12の両側には、石英ガラス製の封止管13A、13Bが発光管12と連設し、一体的に形成されている。ここでは、電極軸が鉛直方向に沿うようにショートアーク型放電ランプ10が配置されている。
【0029】
封止管13A、13Bの内部には、陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒17A、17Bが配設され、それぞれ金属箔16A、16Bを介して導電性のリード棒15A、15Bと接続されている。封止管13A、13Bは、その両端が口金19A、19Bによって塞がれており、封止管13A、13Bは、放電管内に設けられたガラス管、ガラス棒(図示せず)と溶着することによって、発光管12内の放電空間を封止する。発光管12内には、水銀、およびアルゴンガスなどの放電ガスが封入されている。
【0030】
リード棒15A、15Bは外部の電源部(図示せず)に接続されており、リード棒15A、15Bを介して陰極20、陽極30に電力が供給される。陰極20、陽極30の間に電圧が印加されると電極間でアーク放電が生じ、発光管12から光が放射される。
【0031】
図2は、陽極30の模式的断面図である。
【0032】
陽極30は、電極先端部43を含む有底筒状の陽極本体(以下、電極本体という)42を備え、電極本体42に形成された筒状内部空間42Sに伝熱体40が収容されている。内部空間42Sは、電極先端部43から電極支持棒側に延びる円筒部44内に形成され、伝熱体40が隙間無く内部空間42Sに充填されている。伝熱体40のサイズは、内部空間42Sのスペースに合わせて定められている。
【0033】
リング状の電極蓋46は、電極本体42の円筒部44と結合して伝熱体40を密封する。電極支持棒17Bは、電極蓋46と繋がっており、電極蓋46を介して陽極30を保持している。
【0034】
電極本体42、電極蓋46、電極支持棒17Bは、タングステンによって構成される。一方、陽極30の内部で電極軸Eに沿って延在する伝熱体40は、熱伝導率が電極本体を構成する金属より高い導電性のタングステン/カーボン複合材(以下では、W/C複合材という)によって構成される。W/C複合材は、C/Cコンポジットなどのカーボン基材にタングステンをコーティングし、あるいは粉末状カーボンを粉末状タングステンとまぜて一体成形した材料である。伝熱体40は、常温あるいは放電時の温度雰囲気で電極本体42を構成するタングステンよりも熱伝導率が高く、熱、および外部からの衝撃に対する強度が大きい。さらに、伝熱体40の融点も高く、放電中熱による溶融は実質的に生じない。
【0035】
陽極30の成形方法としては、内部空間42Sをあらかじめ形成した電極本体42に対し、内部空間42Sのサイズに合った伝熱体40を封入する。そして、別途用意した電極蓋46を電極本体42の円筒部44と接合させ、一体化させる。一体化の方法としては、融接、ロウ接などの溶接が可能である。
【0036】
伝熱体40は、内部空間42Sの底面42T、すなわち電極先端部43と接している。したがって、放電中に電極先端面43Sが受ける電子衝突によって生じる熱は、熱伝導性の優れた伝熱体40によって電極支持棒側へ輸送される。これにより、電極先端部43が局所的に過熱することなく、陽極30の温度が全体的に均一化される。
【0037】
このように第1の実施形態によれば、陰極20、陽極30を発光管12内に対向配置させたショートアーク型放電ランプ10において、電極先端部43を含む電極本体に内部空間42Sを形成する。そして、陽極30の内部空間42Sには、W/C(タングステン/カーボン)複合材から成る伝熱体40が封入されており、電極支持棒17B、電極本体42と結合する電極蓋46によって密閉される。
【0038】
伝熱体40を陽極30内部に設けることによって陽極全体の温度が均一化するため、電極先端部43の溶融、蒸発によって失透し、発光効率が低下するのを防ぎ、電極消耗を抑えることができる。また、伝熱体40は導電性をもつため、電力が大きくなり電流量が増大しても、放電に影響しない。
【0039】
熱伝導率が等しい電極蓋46、電極本体42、および電極支持棒17Bが一体的に金属接合するため、結合性が優れており、電極支持棒17Bは陽極30を確実に保持することができる。また、伝熱体40が電極表面に露出しないため、放電中に炭素が発光管12内に放出され、炭素薄膜が管内に形成されて発光効率を下げることがない。また、陽極30内に内部空間42Sを形成することにより、電極軽量化が図られる。なお、伝熱体40を電極本体42と溶接などによって結合させてもよい。また、伝熱体40のサイズを調整し、隙間を設けて伝熱体40を内部空間42Sに封入してもよい。
【0040】
次に、
図3を用いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、電極内部空間に隙間を設け、放電中に溶融する熱伝導材料が封入される。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0041】
図3は、第2の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0042】
陽極130は、第1の実施形態と同様に内部空間142Sを有し、電極先端部143を含めた電極本体142と、電極蓋146、および電極支持棒17Bが一体的に結合している。柱状の伝熱体140は、内部空間142Sの径よりも小さく、電極軸方向に沿って延びている。伝熱体140の一端140Aは電極蓋146と結合する一方、他端140Bは、内部空間142Sの底面142T、すなわち電極先端部143と接していない。
【0043】
電極蓋146と伝熱体140の接合は、それぞれ別々に焼結成形した電極蓋146と伝熱体140を用意し、レーザー溶接、ロウ付け、抵抗溶接、圧入などの溶接、あるいはねじ込みなど従来公知の方法によって結合すればよい。
【0044】
内部空間142Sには、隙間を設けて熱伝導材料150が封入されており、放電中、溶融して伝熱体140と接している。熱伝導材料150は、電極本体142よりも融点の低い金属材料(例えば、金、銀、銅、インジウム、亜鉛、鉛など、あるいはそれらを組み合わせた合金)によって構成される。
【0045】
ランプ成形時には、熱伝導体150の塊に対して棒状伝熱体140が嵌るほどの穴を形成し、内部空間142Sに封入する。そして、放電によって電極先端部143の温度が上昇すると、熱伝導体150が溶融し、液状の熱伝導体が伝熱体140と接する。
【0046】
放電中、熱伝導材150が溶融することによって、内部空間142Sの隙間部分に対流が生じる。これにより、電極先端面143Sを含む電極先端部143に生じる熱が電極支持棒17の方向へ輸送され、陽極130の温度が均一化される。
【0047】
さらに、放電中に伝熱体140が熱伝導材料150と接するため、溶融する熱伝導材料150の熱を効率よく電極支持棒側へ輸送することができる。なお、伝熱体140と電極蓋146との結合をより強固にするため、電極蓋146をタングステンの代わりにモリブデンによって構成してもよい。また、電極蓋ではなく円筒部144の内面と伝熱体140を結合させてもよい。
【0048】
次に、
図4を用いて、第3の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態と異なり、電極蓋が設けられていない。それ以外の構成については第1の実施形態と実質的に同じである。
【0049】
図4は、第3の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0050】
陽極230は、電極先端面243Sを含めた電極先端部243と円筒部244から構成される電極本体242を備え、電極本体242内に形成された内部空間242Sには、伝熱体240が隙間無く埋め込まれている。
図4に示すように、伝熱体240の表面240Sが電極外部に露出し、内部空間242Sが密閉されていない。伝熱体240は、圧入、溶接等によって電極支持棒17Bの先端部17Sと結合している。
【0051】
伝熱体240が電極外部に露出しているため、電極先端部243から輸送された熱を容易に外部へ放出することができ、陽極243の温度上昇を抑えることができる。また、電極蓋を設けないため、電極を軽量化することができる。
【0052】
次に、
図5を用いて、第4の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第4の実施形態では、第1〜第3の実施形態と異なり、電極全体が伝熱体によって構成されている。
【0053】
図5は、第4の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0054】
陽極330は、熱伝導体340によって全体的に構成されており、電極支持棒17Bと接合している。電極本体342は、タングステンと粉末状炭素を混ぜ合わせて焼結させることによって生成されている。電極本体342と電極支持棒17Bの接合は、溶接、圧入等によって行われている。陽極330全体が熱伝導体で構成されるため、放電中の熱輸送効果が十分に発揮され、電極消耗を抑制することができる。
【0055】
次に、
図6を用いて、第5の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第5の実施形態では、第4の実施形態と異なり、電極先端部は金属によって構成されている。それ以外の構成については、第4の実施形態と実質的に同じである。
【0056】
図6は、第5の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0057】
陽極430は、電極胴体部を構成する伝熱体440と電極先端部443とによって構成され、一体化されている。伝熱体440と電極先端部443は、あらかじめ別々に焼結成形され、ロウ付け、圧入、ビーム溶接、ねじ込みなど従来知られた溶接方法によって一体化する。あるいは、電極先端部443を成形した後、伝熱体440を電極先端部443で覆う鋳ぐるみなどによって一体化してもよい。
【0058】
温度上昇が激しい電極先端部が、炭素を含む伝熱体ではなく金属によって構成されるため、放電中に炭素が放電空間に放出されず、電極寿命を延ばすことができる。
【0059】
次に、
図7を用いて、第6の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第6の実施形態では、第5の実施形態と異なり、電極先端部と伝熱体との接続部に傾斜組織がある。それ以外の構成については、第5の実施形態と実質的に同じである。
【0060】
図7は、第6の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0061】
陽極530は、タングステン/カーボン複合材であって電極本体を構成する伝熱体540と、タングステンから成る電極先端部543とを有し、その間に傾斜組織部545が形成されている。傾斜組織部545は、タングステン/カーボンを傾斜組織化させた組織層であり、最上層545Sのタングステン含有率がほぼ100%、最下層545Tのカーボン含有率がほぼ100%となって、最上層545Sから最下層545Tに渡ってタングステン、カーボンの含有率が互いにほぼ反比例する。カーボンの含有率が高くなるほど、タングステン含有率が減少する。
【0062】
傾斜組織部545は、公知の加熱焼結方法で形成すればよく、タングステン、カーボンの粉末の混合比をそれぞれ変えながら積層充填し、金型成形によって生成されるタングステン/カーボンの圧密体をゆっくり加熱して焼結する。そして、傾斜組織部545、伝熱体540、電極先端部543を一体成形する。
【0063】
このように、タングステン粒子とカーボン粒子との混合層を積層させた傾斜組織部545を形成することにより、電極先端部543と伝熱体540の材料成分が異なっていても、確実に一体成形することができ、熱、外力に対する強度が一層強まる。
【0064】
なお、第1、第2の実施形態において、伝熱体の電極蓋との接合部分に傾斜組織を形成させてもよい。さらには、第1〜第6の実施形態において、電極本体など金属との接合部分に傾斜組織を形成させるように構成してもよい。
【0065】
次に、
図8を用いて、第7の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第7の実施形態では、第6の実施形態と異なり、電極軸部を設け、電極先端部と電極支持棒を金属で連結する。それ以外の構成については、第6の実施形態と実質的に同じである。
【0066】
図8は、第7の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0067】
陽極630は、電極軸方向に沿って延びる円柱状の電極軸部636と電極先端部643から構成される電極本体642を備え、電極軸部636周りに円筒状の伝熱体640を同軸配置し、電極先端部643と結合させている。電極支持棒17Bは、電極軸部636の端部と結合している。
【0068】
同じ金属の電極本体642と電極支持棒17Bが連結しているため、電極支持棒17Bが確実に陽極630を保持することができる。
【0069】
次に、
図9を用いて、第8の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第8の実施形態では、第7の実施形態と異なり、電極支持棒が電極先端部と結合する。それ以外の構成については、第7の実施形態と同じである。
【0070】
図9は、第8の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0071】
陽極730は、円筒状の伝熱体740と電極先端部743から構成され、伝熱体740は陽極本体を構成する。電極支持棒17Bは、伝熱体740の穴740Nを通って電極軸方向に延び、電極先端部743と結合している。電極支持棒17Bと伝熱体740の間には隙間が設けられており、穴740Nの底面740Tが外部に露出している。
【0072】
伝熱体740の穴740Nは電極本体の内部空間として構成され、電極先端部743の熱は伝熱体740、および穴740Nを通って外部に放出される。伝熱体740と内部空間両方を利用して熱を効果的に輸送することができ、電極消耗を抑えることができる。また、電極支持棒17Bが直接電極先端部743と接合するため、陽極730が安定して保持される。
【0073】
次に、
図10を用いて、第9の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第9の実施形態では、第8の実施形態と異なり、電極本体が伝熱体を囲む。それ以外の構成については、第8の実施形態と実質的に同じである。
【0074】
図10は、第9の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0075】
図10に示すように、陽極830は、第1の実施形態と同様に内部空間842Sの形成される電極本体842を備え、内部空間842Sには円筒状の伝熱体840が挿入、配置されている。伝熱体840の外径サイズは、内部空間842Sのサイズに合わせている。電極支持棒17Bは、伝熱体840内部を通り、その先端部は電極先端部843と結合している。伝熱体840が電極側面に露出していないため、炭素放出による発光効率低下を防ぐことができる。
【0076】
次に、
図11を用いて、第10の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第10の実施形態では、第1〜9の実施形態と異なり、電極支持棒が伝熱体によって構成されている。
【0077】
図11は、第10の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0078】
陽極930は、タングステンなど金属からなる円柱状電極本体942によって構成されており、中心軸に沿って穴942Nが形成されている。電極支持棒170Bは、タングステン/カーボン複合材からなる伝熱体によって構成されている。電極支持棒170Bは、電極本体942の穴942Nに挿入固定され、電極本体942の電極先端部付近まで延びている。電極支持棒170Bは、焼結などによって電極本体942と結合している。
【0079】
このように電極支持棒170Bが熱伝導性の優れた伝熱体によって構成されるため、電極先端部943の熱が電極支持棒170Bを伝わって封止管側へ輸送される。電極内部で熱の均一化を図るのではなく、通常冷却される封止管まで熱を逃すため、電極先端部しいては電極全体の過熱を抑えることができる。また、電極支持棒からも熱が効果的に放出されることにより、封止管の温度上昇も抑えることができる。
【0080】
次に、
図12を用いて、第11の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第11の実施形態では、第10の実施形態と異なり、電極本体に内部空間が形成され、電極蓋が設けられている。それ以外の構成については、第10の実施形態と実質的に同じである。
【0081】
図12は、第11の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0082】
陽極1030は、内部空間1042Sを形成した電極本体1042に電極支持棒170Bを結合させた構成であり、電極蓋1046によって内部空間1042Sを閉じている。電極蓋1046には、電極支持棒170Bを挿通させる中心穴1046Kとともに、通気孔1046Nが形成されている。これにより、内部空間1042Sの熱が電極外部へ放出される。
【0083】
次に、
図13を用いて、第12の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。第12の実施形態では、第2の実施形態と異なり、電極本体の一部が伝熱体によって構成されている。それ以外の構成については、第2の実施形態と実質的に同じである。
【0084】
図13は、第12の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極断面図である。
【0085】
陽極1130は、金属製の電極先端部1143と有底円筒状の伝熱体1144から構成される電極本体1142を備え、電極本体1142内には内部空間1142Sが形成されている。電極支持棒17Bは、内部空間1142Sを密閉する電極蓋1146に結合している。
【0086】
内部空間1142Sには、棒状の伝熱体1140が電極軸Eに沿って延び、電極蓋1146と結合している。そして、金属よりも融点の低い熱伝導材1150が内部空間1142Sに封入されている。
【0087】
次に、
図14を用いて、第13の実施形態であるショートアーク型放電ランプについて説明する。
図14は、第13の実施形態であるショートアーク型放電ランプの陽極1230の模式的断面図である。
【0088】
陽極1230は、有底筒状の電極本体1242に形成された筒状内部空間1242Sに伝熱体1240が収容されている。内部空間1242Sは、電極先端部1243から電極支持棒17B側に延びる円筒部1244内に形成され、筒状の狭窄部材1245により囲まれた伝熱体1240が内部空間1242Sに配設されている。伝熱体1240と狭窄部材1245のサイズは、内部空間1242Sのスペースに合わせて定められている。
【0089】
リング状の電極蓋1246は、電極本体1242の円筒部1244と結合して伝熱体1240と狭窄部材1245とを密封する。電極支持棒17Bは、電極蓋1246と繋がっており、電極蓋1246を介して電極1230を保持している。
【0090】
電極本体1242、電極蓋1246、電極支持棒17Bは、タングステンによって構成される。一方、陽極1230の内部で電極軸Eに沿って延在する伝熱体1240は、炭素繊維束で構成されており、タンタル製の狭窄部材1245に収納される。
【0091】
伝熱体1240は、以下のように製造される。まず、タンタル筒に対して、炭素繊維束を同軸方向に沿って挿通させる。このとき、炭素繊維束の端面がタンタル筒の端面よりも突出するように、タンタル筒は炭素繊維束の軸方向の長さより短くする。また、炭素繊維束の端面が軸方向に垂直な平面とする。
【0092】
陽極1230の成形方法としては、内部空間1242Sをあらかじめ形成した電極本体1242に対し、内部空間1242Sのサイズに合った伝熱体1240を封入する。更に、内部空間をテーパ状として、伝熱体1240を嵌合させても良い。また、タンタル筒の外周面を高精度に切削して、伝熱体の外周面と内部空間1242Sの内周面との密着性を高めても良い。そして、別途用意した電極蓋1246を電極本体1242の円筒部44と接合させ、一体化させる。一体化の方法としては、融接、ロウ接などの溶接が可能である。
【0093】
伝熱体1240は、内部空間1242Sの底面1242T、すなわち電極先端部1243と接している。したがって、放電中に電極先端面1243Sが受ける電子衝突によって生じる熱は、熱伝導性の優れた伝熱体1240によって電極支持棒側へ輸送される。これにより、電極先端部1243が局所的に過熱することなく、陽極1230の温度が全体的に均一化される。好ましくは、伝熱体1240は、内部空間1242Sの底面1242Tに押付けられている。ここで、タンタル筒は炭素繊維束の軸方向の長さより短く切断されていることにより、炭素繊維がタンタル筒内径よりも広がることで、炭素繊維と内部空間の底面との密着性(接触本数)を高めることができる。更に、内部空間の底面1242Tと伝熱体の端面と間の熱伝導率を高めるために、内部空間の底面1242Tにカーボンナノチューブ(以下では、CNTという)を混ぜ入れることにより、ブリッジの効果を付与することもできる。
【0094】
このように第13の実施形態によれば、陰極、陽極1230を発光管内に対向配置させたショートアーク型放電ランプ10において、電極先端部43を含む電極本体に内部空間1242Sを形成する。そして、陽極1230の内部空間1242Sには、炭素繊維束から成る伝熱体1240と狭窄部材1245が封入されており、電極支持棒17B、電極本体1242と結合する電極蓋1246によって密閉される。
【0095】
伝熱体1240を陽極1230内部に設けることによって陽極全体の温度が均一化するため、電極先端部1243の溶融、蒸発によって失透し、発光効率が低下するのを防ぎ、電極消耗を抑えることができる。また、伝熱体1240は好適な導電性をもつため、入力電力が大きくなり電流量が増大しても、放電に影響しない。
【0096】
熱伝導率が等しい電極蓋1246、電極本体1242、および電極支持棒17Bが一体的に金属接合するため、結合性が優れており、電極支持棒17Bは陽極1230を確実に保持することができる。また、伝熱体1240が電極表面に露出しないため、放電中に炭素が発光管内に放出され、炭素薄膜が管内に形成されて発光効率を下げることがない。また、陽極1230内に内部空間1242Sを形成することにより、電極軽量化が図られる。また、狭窄部材1245の外径を調整し、隙間を設けて伝熱体1240を内部空間1242Sに封入してもよい。更に、この隙間にCNTを混ぜ入れることにより、熱伝導率を高めると更に好ましい。狭窄部材としてはタンタルを用いたが、その他にも、延展性を有する高融点耐熱金属(例えばNbなど)の部材を用いることができる。
【0097】
金属と伝熱体の結合方法は、上述した以外の方法で行ってもよい。電極支持棒、電極両方に伝熱体を設けてもよく、陰極にも陽極と同様の内部構造を採用してもよい。さらに、ショートアーク型以外の種類の放電ランプに適用してもよい。
【0098】
伝熱体を構成するW/C複合材は、炭素繊維以外のカーボン基材にタングステンを加えて生成してもよい。また、伝熱体を構成する成分は、W/C複合材に限定されず、タングステン以外の金属を加えた金属/カーボン(黒鉛)複合材や、金属/カーボンナノチューブ(CNT)複合材であってもよい。さらに、金属を添加せず、炭素繊維あるいは粒子状カーボンを素材として伝熱体を成形してもよい。