【0013】
最初に
図1を用いて本発明の原理について、詳細に説明する。
図1において、符号1は比較的高電位の電極(表面電位1.5V)であり、2は原子力プラントの使用済み燃料からの再処理工程溶液である。
図1は、電極1によって電解酸化されたRuO
4が、比較的低電位の箇所で硝酸に溶解し、溶存状態のまま他のRuイオンと反応しRuO
2・2H
2Oなどが生成し、沈殿が起こる様子を示している。この現象から、電解酸化を行うに当たって、比較的低電位となる箇所を少なくするように電極の構造を設計することで、Ruを四酸化物(RuO
4)として揮発分離させる際に、還元反応によってRuO
2の微粒子として沈殿することを防止できることがわかる。
【実施例】
【0014】
図2に、上述の原理に基づいて作製された、本発明に係る電解セル装置の一実施例の全体構成図を示す。
図1において、符号10が本発明に係る電解セル装置である。11と12は、それぞれ作用極とその対極である。作用極11には約1.0V、対極12には約‐1.0Vの電位が与えられる。図ではこれらの電極へ電位を与える電源装置は省略されている。また、13は、内部に電極11、12を収納し、溶液の電解酸化を行うための電解容器、14は電解酸化を行う再処理溶液を模擬した電解液(ルテニウムと硝酸の試薬)である。
本実施例の電解セル装置は、実機の模擬装置であり、具体的には以下の仕様を有する。
【0015】
1) 装置・器具
○電解電源装置
ポテンショスタット 北斗電工 HAL-3001
電源ブースター 北斗電工 HAL3011B10
作用極としては、次の2種類を準備し、それぞれ別個に試験を行った。
作用極 円筒型電極(20mmφ×20mmH) 白金製
円筒型電極(60mmφ×60mmH) Ti(白金メッキ)電極
対極 白金線 (1mmφ)
基準電極 銀塩化銀標準電極(飽和KCl)
○電解容器
パイレックス(登録商標)製容器 (内径23mmφ×高さ100mm)
ガラスボールフィルター(ガラスフリット付きガラス棒)
フリット部(10mmφ)、ガラス管部 (内径3.5mmφ、外径6.0mmφ)
○メンブランフィルター(ろ過)
Nucle pore filter (47mmφ、Pore Size 0.4μm)
2) 試薬
○ルテニウム フルヤ金属 3000ppm 硝酸濃度 2.5M,5M, 10M
○硝酸 和光純薬 試薬特級
【0016】
図3は、
図2に示された電極の横断面を示している。
図3の電極は、円筒状作用電極11と、その中心に配置された棒状対極12から構成されている。この実施例では、作用極11は円筒状をしているが、正方形や多角形などのように作用極の中心線に関して線対称の構造であれば良い。
【0017】
図3の電極による電位分布をシミュレーションした結果を
図4に示す。
図4において、黒色領域が比較的電位が高く、ハッチング部分がややプラス電位にある部分を示している。また、白色部分は、マイナス電位にある部分を示している。
図4からわかるように、作用極11付近に還元反応を起こすような電位領域がないので、Ruは効率的にRuO
4として回収される。
【0018】
図3の電極構造では、棒状の対極12が円筒状の作用極11の中心軸に配置されているが、作用極11の大きさに応じて、複数本の対極12を儲けても良い。このような例を
図5と
図6に示す。
図5は本発明の実施例であり、
図6はその比較例である。
図5の電極構造では、4本の対極12a、12b、12c、12dが、作用極11の中心軸よりも作用極11の側面に近い位置に配置されているが、
図6の電極構造では、逆に、4本の対極が、作用極11の側面よりも作用極の中心軸に近い位置に配置されている。
【0019】
図5及び
図6は、電極構造とともに電位分布のシミュレーション結果を示している。これらの図において、黒色、灰色、白色の各部分の電位は
図2と同様の値を示す。これらの図から明らかなように、装置が大型となり複数本の対極が必要になった場合には、
図5の電極構造のような配置を取ることにより、マイナス電位となる領域を狭めることができ、電解酸化されたRuO
4を効率的に回収できる。
【0020】
前に戻って
図2を参照し、本発明の電解セル装置の動作について説明する。ルテニウム硝酸溶液を、作用極11、対極12が配置された電解容器13に適宜採取する。また、作用極11の表面付近の溶液と、同じ溶液を入れた外部ビーカ17とをルギン管15により液絡する。外部ビーカ17には参照電極16が設置され、液位は基本的に電極の上端面とほぼ同じ位置に来るように調整される。
【0021】
このような電解セル装置において一定時間電解を行い、得られた電解液をすぐにNuclepore filterにてろ過した。ろ過後のフィルターは減圧デシケータ内で3日間以上乾燥させて、重量を測定した。試験のためのパラメータとしては電解液の硝酸濃度、電極上端面から液表面までの高さ(液厚)、モデレータであるCeの影響について、30分間の電解試験を行った。電位は1.7〜1.8V(vs.Ag/AgCl)とした。(ただし、液厚が57mmの際には、電流値が低かったため、電位を約1.9V(vs.Ag/AgCl)まで上昇させた。また温度の影響については円筒状の作用極11を大きくし、液量を増やすことにより、一定温度を確保した。温度は室温(25℃)、50℃、95℃の3段階で行った。
【0022】
上述の試験の結果及び考察は次の通りである。
【0023】
結果:
1)硝酸濃度の影響
硝酸濃度の影響について、表1に示した。これまでの電解試験の条件での沈殿量についても参考として記した。この表の沈殿化率は、電解液から除去されたRuの量がすべてRuO
2となった場合を1としたときの比率(%)とした。この表から酸濃度を上昇させることにより、沈殿の生成量は低下することがわかった。特に、硝酸濃度2.5Mから5Mに硝酸濃度が上昇した時では沈殿率は4.3%から2.6%以下となり、1/2以下となった。
【0024】
【表1】
【0025】
2)温度の影響
温度の影響について表2に示した。温度の上昇に伴い、沈殿化率が上昇した。特に95℃の時の沈殿化率が高く、10%を越える結果となった。
【0026】
【表2】
【0027】
3)モデレータの影響
モデレータの存在の影響について表3に示した。硝酸濃度が2.5M の場合において、Ceが共存する場合、沈殿化率は4.3%から2.1%と約2分の1となった。また、硝酸5Mにおいても、沈殿化率は1.4%以下であったことから、少なくとも、Ceの存在により沈殿の生成が促進されることがないことを確認できた。以上のこのことから、Ceが共存することにより沈殿の生成が抑制される事がわかった。
【0028】
【表3】