特許第5754717号(P5754717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754717
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/12 20120101AFI20150709BHJP
   G11B 7/125 20120101ALI20150709BHJP
   G11B 7/135 20120101ALI20150709BHJP
   G11B 7/004 20060101ALI20150709BHJP
   G11B 7/0037 20060101ALI20150709BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   G11B7/12
   G11B7/125 A
   G11B7/135 Z
   G11B7/004
   G11B7/0037
   H01S5/183
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-536092(P2013-536092)
(86)(22)【出願日】2012年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2012071592
(87)【国際公開番号】WO2013047049
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-209368(P2011-209368)
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503213291
【氏名又は名称】パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 勝美
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−163834(JP,A)
【文献】 特開2010−146655(JP,A)
【文献】 特開2009−231601(JP,A)
【文献】 特開2006−080459(JP,A)
【文献】 特開2007−272997(JP,A)
【文献】 特開2006−309904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/12
G11B 7/0037
G11B 7/004
G11B 7/125
G11B 7/135
H01S 5/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)複数の量子ドットと、前記複数の量子ドットの上層に積層された出力端と、を有する近接場光デバイスと、(ii)前記近接場光デバイスの前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するエネルギー源と、(iii)前記近接場光デバイス内の前記複数の量子ドットに生じた近接場光に起因する光を受光する受光手段と、を有するヘッドと、
前記ヘッドを制御する制御手段と、
を備え、
前記ヘッドと空間を隔てて対向配置される記録媒体への記録時に、前記制御手段は前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するように前記エネルギー源を制御して、前記供給されたエネルギーが前記複数の量子ドットにより近接場光に変換され、前記変換された近接場光が前記出力端に集中することにより、前記記録媒体の前記出力端と対向する領域を少なくとも発熱させ、
前記記録媒体の再生時に、前記制御手段は前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するように前記エネルギー源を制御して、前記供給されたエネルギーが前記複数の量子ドットにより近接場光に変換され、前記変換された近接場光が前記出力端に伝播することにより前記出力端に近接場光を発生させ、
前記再生時に、前記出力端及び前記複数の量子ドットに発生する近接場光は、前記記録媒体の前記出力端と対向する領域の記録状態により変化する
ことを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記再生時に前記エネルギー源から出力されるエネルギーが、前記記録時に比べて小さくなるように前記エネルギー源を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
前記近接場光デバイスは、前記複数の量子ドットに発生した近接場光を前記受光手段に導く、複数の量子ドットの集合として構成された導光部材を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、HAMR(熱アシスト磁気記録:Heat Assisted Magnetic Recording)、SNOM(走査型近接場光学顕微鏡:Scanning Near Field Optical Microscope)等の近接場光の微小スポットを利用する読取器、並びに、該読取器を備える再生装置及び記録再生装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近接場光を利用した、記録再生技術として、例えば、近接場光を発生させるプローブと、発光素子及び受光素子を、光導波路を介して結合して一体とすることで、ヘッド部を単純な構成とした記録装置(特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、近年の半導体微細加工技術の進歩により、量子力学的効果を利用し、単一電子を制御することにより電子の粒子性を極限まで利用するナノスケールの量子ドットが注目されている。たとえば、量子ドットのサイズを適切に制御する製造方法(特許文献2参照)、および、積層された量子ドットを利用した近接場集光器が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317259号公報
【特許文献2】特開2009−231601号公報
【特許文献3】特開2006−080459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された記録装置では光導波路を用いているためエネルギーの利用効率が悪いという技術的問題点がある。また、記録媒体に記録された磁気情報を読み取るためには磁気ヘッドを別途用意する必要がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、近接場光を用いエネルギーの利用効率が良い記録再生装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録再生装置は、上記課題を解決するために、(i)複数の量子ドットと、前記複数の量子ドットの上層に積層された出力端と、を有する近接場光デバイスと、(ii)前記近接場光デバイスの前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するエネルギー源と、(iii)前記近接場光デバイス内の前記複数の量子ドットに生じた近接場光に起因する光を受光する受光手段と、を有するヘッドと、前記ヘッドを制御する制御手段と、を備え、前記ヘッドと空間を隔てて対向配置される記録媒体への記録時に、前記制御手段は前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するように前記エネルギー源を制御して、前記供給されたエネルギーが前記複数の量子ドットにより近接場光に変換され、前記変換された近接場光が前記出力端に集中することにより、前記記録媒体の前記出力端と対向する領域を少なくとも発熱させ、前記記録媒体の再生時に、前記制御手段は前記複数の量子ドットにエネルギーを供給するように前記エネルギー源を制御して、前記供給されたエネルギーが前記複数の量子ドットにより近接場光に変換され、前記変換された近接場光が前記出力端に伝播することにより前記出力端に近接場光を発生させ、前記再生時に、前記出力端及び前記複数の量子ドットに発生する近接場光は、前記記録媒体の前記出力端と対向する領域の記録状態により変化する。
【0010】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るヘッドの要部の構造を示す図である。
図3】実施形態に係る記録再生装置の記録時の動作を説明する図である。
図4】実施形態に係る記録再生装置の再生時の動作を説明する図である。
図5】実施形態に係る近接場光デバイスに形成された導光部材の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る近接場光デバイスの第1変形例を示す図である。
図7】実施形態に係る近接場光デバイスの第2変形例を示す図である。
図8】実施形態に係るヘッドを用いた磁気記録の一例を説明する図である。
図9】実施形態に係るヘッドを用いた磁気記録の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の記録再生装置に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、以下の図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0013】
(記録再生装置の構成)
本実施形態に係る記録再生装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、本発明に係る「記録再生装置」及び「再生装置」の一例としての、記録再生装置100は、CPU(Central Processing Unit)11、ヘッド12、位置調整器13、出力調整器14及び15、信号読取器16、並びに回転調整器17を備えて構成されている。
【0015】
ヘッド12は、磁界発生器121、近接場光デバイス122、エネルギー源123、及び受光器124を備えて構成されている。
【0016】
ここで、ヘッド12の要部の具体的な構造について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係るヘッドの要部の構造を示す図である。図2では、エネルギー源123の一具体例としてVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発行レーザ)を挙げる。
【0017】
図2において、エネルギー源123は、n−GaAs(ガリウム砒素)基板30の上に積層されたn−DBR(Distributed Bragg Reflector)層と、該n−DBR層の上に積層された活性層と、該活性層の上に積層されたp−DBR層と、該p−DBR層上に形成された上部電極41と、n−GaAs基板30の下面に形成された下部電極42と、を備えてなるVCSELである。
【0018】
近接場光デバイス122は、例えばGaAs基板等の基板211と、該基板211の上に積層され、例えばInAs(インジウム砒素)量子ドット等を含んでなる量子ドット層222と、該量子ドット層222の上に積層され、例えばInAs量子ドット等を含んでなる量子ドット層223と、該量子ドット層223の上に積層された金属端224と、を備えて構成されている。
【0019】
金属端224は1種類の金属で構成されるのではなく、異なる金属からなる多層構造であってもよい。一例を挙げると、例えば、クロム(Cr)層の上に金(Au)層が構成された2層構造、或いはチタニウム(Ti)層の上に金(Au)と層が構成された2層構造であってもよい。また、量子ドット層223の上に更に金(Au)からなる20nm(ナノメートル)〜100nmの薄膜を形成し、金(Au)薄膜上に金(Au)等からなる金属端224を設けるようにしてもよい。金属膜が下層の量子ドット層222、223から供給されるエネルギーを広範囲に吸収し、該吸収されたエネルギーが金属端224に移動されることより、入射エネルギーの利用効率が向上する。
【0020】
量子ドット層222に含まれる量子ドットは、エネルギー源123から出射される光を受光し、近接場光を発生させる。量子ドット層223に含まれる量子ドットは、量子ドット層222において発生された近接場光のエネルギーを受け取り、近接場光を発生させる。尚、量子ドット層223に含まれる量子ドットはエネルギー源123から出射される光を受光し近接場光を発生することもある。
【0021】
金属端224は、量子ドット層223において発生された近接場光のエネルギーの少なくとも一部を外部に出力可能である。多層量子ドット構造にすることにより入射光のエネルギーを単層の量子ドット層よりも多く受光することができ、金属端224に集中させる効率が高くなる。例えば、3層よりは5層、8層のほうがより効率を高めることができる。
【0022】
本発明では、量子ドット層222、223で入射光のエネルギーを変換し金属端224にエネルギーを集中させる。入射光がInAsやGaAsを透過し、入射光が直接、金属端224に照射される現象とは異なる。金属端224の大きさを数十nm以下(例えば20nm以下にすることにより、入射光のエネルギーを量子ドットにより近接場光のエネルギーに変換し、そのエネルギーを数十nm以下の金属端に集中させるのであり、現行の光ディスクのように対物レンズでレーザ光を収束させることとは物理現象が異なる。
【0023】
受光器124は、近接場光デバイス122、若しくは近接場光デバイス122及び記録媒体50により形成される近接場光に起因する光を受光する。詳しくは図3を参照して述べるが(後述)、記録媒体50に形成される記録マークの有無或いは記録状態(磁気記録媒体であれば磁場の向き)によって近接場光デバイス122に生じる近接場光の状態が異なる。これにより、近接場光に起因する光に強弱が生じ、受光器124でその強弱を検出することにより記録マークの有無或いは状態の違いを読み取ることができる。
【0024】
ここで、「近接場光に起因する光」とは、例えば近接場光が何らかの部材により散乱されることによって発生する散乱光等の近接場光ではない光(つまり、ファーフィールドにおける光)を意味する。
【0025】
尚、磁界発生器121には、公知の各種態様を適用可能であるので、説明の煩雑化を回避するために、ここでは説明を割愛する。
【0026】
また、ヘッド12上の近接場デバイス122、磁界発生器121や受光器124を保護するため、近接場デバイス121が設置される側をSiO等の誘電体で覆い、金属端224の先端が誘電体の表面に現れるように平坦加工してもよい。誘電体等で覆うことにより記録媒体との接触による衝撃からヘッド12上に設置された部材を保護することができる。
【0027】
再び図1に戻り、位置調整器13は、ヘッド12と記録媒体50との位置関係を変更可能に構成されている。出力調整器14は、磁界発生器121により発生される磁界の強さを変更可能に構成されている。出力調整器15は、エネルギー源123の出力(例えば、光の強度やON/OFF)を制御可能に構成されている。
【0028】
信号読取器16は、受光器124の出力に基づいて再生信号を生成可能に構成されている。回転調整器17は、記録媒体50の回転数又は回転速度を調整可能に構成されている。CPU11は、位置調整器13、出力調整器14及び15、並びに回転調整器17を統括制御する。
【0029】
本実施形態に係る「CPU11」、「ヘッド12」、「信号読取器16」、「近接場光デバイス122」、「受光器124」及び「金属端224」は、夫々、本発明に係る「制御手段」、「読取器」、「再生手段」、「近接場光デバイス」、「受光手段」及び「出力端」の一例である。
【0030】
(記録動作)
上述の如く構成された記録再生装置100の記録時の動作について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る記録再生装置の記録時の動作を説明する図である。図3において、点線円は、近接場光を表わしている。
【0031】
記録媒体50は、磁気記録媒体であり、近接場光デバイス122で生じる近接場光と相互作用を起こしやすい、磁性体等の層構造の一部に、例えば金(Au)等の金属を含んだ構成としてもよい。
【0032】
出力調整器15から出力される信号に応じてエネルギー源123がON状態にされると、該エネルギー源123から出射された光(入力エネルギー)により、少なくとも近接場光デバイス122に含まれる、量子ドット層222、223内の複数の量子ドットに近接場光が発生する。量子ドット層222の複数の量子ドットで発生した近接場光のエネルギーは、量子ドット層223の複数の量子ドットを介し金属端224に集中し、金属端224に近接場光を発生する。量子ドット層223内の複数の量子ドットにエネルギー源123から出射された光が当たった場合は量子ドット層222内の複数の量子ドット層と同様に、量子ドット層223内の複数の量子ドットにより近接場光が発生する。量子ドット層223内の量子ドットで発生した近接場光のエネルギーは金属端224に集中し、金属端224に近接場光を発生する。つまり図3(a)に示すように、量子ドット層222、223内の複数の量子ドットによりエネルギー源から出射された光のエネルギーが金属端224に集められる。
【0033】
金属端224と記録媒体50との間の距離が所定距離(例えば、20nm)以上の場合は、金属端224と記録媒体50との間に相互作用が起こらず、図3(a)に示すように、金属端224に近接場光が発生するだけである。
【0034】
他方、金属端224と記録媒体50との間の距離が上記所定距離未満の場合は、図3(b)に示すように、金属端224と記録媒体50との間に相互作用が起こり、記録媒体50側に金属端224で発生した近接場光のエネルギーが移動し、記録媒体50の金属端224の近傍領域が発熱する。
【0035】
この場合、近接場光のエネルギーに起因する発熱により、周囲より温度が高い熱スポットが形成され、その熱スポット内の記録媒体50の一部の保磁力が低下する。CPU11は、記録すべき情報に対応する磁界を発生させるように、出力調整器14を介して、磁界発生器121(図1参照)を制御することにより記録媒体50の磁気の向きを変化させ磁気記録を行う。
【0036】
金属端224と記録媒体50との間の距離が所定距離未満である状態を維持しつつ、記録すべき記録情報に基づいて、CPU11が、出力調整器15を介してエネルギー源123を制御すると共に、出力調整器14を介して磁界発生器121を制御することによって、例えば一定速度で回転している記録媒体50に記録情報を連続して記録することができる。
【0037】
また、記録媒体50は磁気記録を用いる磁気記録媒体だけではなく、相変化を起こす相変化材料、または熱により化学変化を起こす色素などの材料、あるいはエネルギーにより非線形効果を引き起こす様々な材料を用いた記録媒体を用いることが可能である。
【0038】
(再生動作)
記録再生装置100の再生時の動作について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る記録再生装置の再生時の動作を説明する図である。図4において、点線円は、近接場光を表わしている。
【0039】
近接場光デバイス122の金属端224と記録媒体50との間の距離が所定距離未満である場合に、出力調整器15から出力される信号に応じてエネルギー源123がON状態にされると、前述した記録時と同様に、エネルギー源123からの入射光のエネルギーは量子ドット層222、223で近接場光に変換され、金属端224へ移動し金属端224に近接場光を発生させる。
【0040】
図4(a)は金属端224と記録媒体50との間の距離が所定距離未満となるように維持した状態で、金属端224の近傍に記録マークが存在しないときを示しており、図4(b)は金属端224の近傍に記録マークが存在するときを示している。
【0041】
記録マークが存在しないときは(図4(a)、金属端224で発生している近接場光は記録マークの影響を受けない。記録マークが存在するときは(図4(b))、金属端224で発生している近接場光は記録マークの影響を受けた近接場光となる。つまり、記録マークの有無により、金属端224に発生する近接場光が変化するのである。また、記録マークの有無により変化した金属端224に発生した近接場光は量子ドット層222、223に含まれる量子ドットに相互作用による伝搬する。
【0042】
受光器124は、金属端224或いは量子ドット層222、223の量子ドットに生じた、記録マークの有無により変化する近接場光に起因する光を受光し、受光された光に対応する信号を出力する。信号読取器16は、受光器124から出力される信号に基づいて再生信号を生成する。
【0043】
ここで、本願発明者の研究によれば、近接場光に起因する光の状態(例えば、偏光、強度等)も変化するため、近接場光又は該近接場光に起因する光を受光すれば、例えば記録マーク52の有無等を検出することができ、もって、記録媒体50に記録されている情報を読み取ることができることが判明している。
【0044】
尚、近接場光デバイス122には、図5に示すように、近接場光を受光器124に導くための導光部材225が形成されている。図5(a)は、本実施形態に係る導光部材225として量子ドット層222内に形成された導光部材の一例を示す図である。
【0045】
導光部材225は、図5(b)及び(c)に示すように、複数の微小な量子ドットの集合として構成されていてもよい。或いは、図5(d)に示すように、矩形の島状突起部として構成されていてもよい。また導光部材225は量子ドット層222内に設けるだけでなく、量子ドット層223内に設けるようにしてもよいし、金属端224の近傍に設けるようにし、各部で発生する近接場光の変化を検出するようにすることも可能である。
【0046】
尚、エネルギー源123の出力を、再生時は記録時より小さくし、再生時に記録マークを書き換えないようなエネルギー量に制御するようにしてもよい。また、記録時或いは再生時に、エネルギー源123の出力は常時ONとして照射し続けてもよいし、所定のデューティ―比のパルスとしてもよい。
【0047】
<第1変形例>
次に、近接場光デバイス122の第1変形例について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る近接場光デバイスの第1変形例を示す図である。
【0048】
図6において、近接場光デバイス122は、メサ構造体の中に分散配置された複数の量子ドットと、該メサ構造体の上に積層された金属端224と、を備えて構成されている。メサ構造体は、下層から上層の方向に向かって徐々に狭くなっている構成であり、量子ドットの数も下層から上層に向かって少なくなっていくように構成される。
【0049】
図6に示すように構成された近接場光デバイス122に生じる近接場光に起因する光を受光するには、例えば、図6(a)に示すように、受光器124を近接場光デバイス122の極近傍に配置すればよい、或いは、図6(b)に示すように、ニードル等の部材により近接場光を散乱光に変換すればよい、或いは、図6(c)に示すように、導光器を用いて、受光器124の極近傍まで近接場光を導けばよい。
【0050】
<第2変形例>
次に、近接場光デバイス122の第2変形例について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る近接場光デバイスの第2変形例を示す図である。尚、図中の波線矢印は、エネルギーの伝搬を表わしている。
【0051】
図7において、近接場光デバイス122は、基板211と、該基板211の上に積層され、例えばInAs量子ドットを複数含んでなるナノファウンテン層226と、該ナノファウンテン層226の上に積層された量子ドット層222と、該量子ドット層222の上に積層された量子ドット層223と、該量子ドット層223の上に積層された金属端224と、を備えて構成されている。
【0052】
ナノファウンテン層226では、図7(b)に示すように、中央付近に配置された比較的大きな量子ドットを、その周囲から囲むように複数の比較的小さな量子ドットが配置されている。尚、図7(b)は、ナノファウンテン層226を、基板211上で平面的に見た平面図である。
【0053】
このように構成すれば、基板211の下面(図7の紙面左側)から入力されるエネルギー(即ち、入力光)を受けた比較的小さな量子ドットにおいて発生する近接場光のエネルギーの少なくとも一部が、中央付近に配置された比較的大きな量子ドットに集められる。このため、近接場光デバイス122に入力されるエネルギーを効率良く金属端224に伝えることができ、実用上非常に有利である。
【0054】
<磁気記録>
次に、ヘッド12を用いた磁気記録について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、本実施形態に係るヘッドを用いた磁気記録の一例を説明する図である。図9は、本実施形態に係るヘッドを用いた磁気記録の他の例を説明する図である。ここでは、記録媒体50として、軟磁性層51の上に記録磁性層52が積層された磁気記録媒体を挙げる。尚、図8及び図9において、点線は磁力線を示している。また、エネルギー源の図示は省略している。
【0055】
磁気記録の構成の代表例を、図8に示す。磁気発生器121で発生した磁界は、磁気回路(ここでは、磁気導波部材125)によって近接場光デバイス122の下まで運ばれ、近接場光デバイス122を通して収束される。収束された磁界は、磁気記録媒体50の記録磁性層52、軟磁性層51を通り、磁気発生器121に戻る事によって、閉じた磁気回路が構成される。
【0056】
磁気記録媒体50への記録信号の書き込みは、入力信号(図示せず)によって、磁気発生器121及び/又は近接場光デバイス122の磁界方向の変調で行う。また、変調だけでなく、入力信号に基づいて磁界のON/OFFを行うことによって書き込みを行うことも可能である。磁界の変調とON/OFFとを組み合わせることにより記録を行ってもよい。
【0057】
また、記録時に磁界が磁気記録媒体50に収束するとともに、入力信号に応じて近接場光デバイス122にレーザ光を入射し、近接場光デバイス122と磁気記録媒体50の一部の領域(磁束が集中する領域に相当)とが一体となり発生する近接場光によりエネルギーを磁束が集中する領域に与えるようにしてもよい。近接場光によりエネルギーを与えられた領域の磁気記録層52の保持力が下がり、磁気記録を容易に行うことが可能となる。
【0058】
磁気記録媒体50に記録された記録信号の読み出しは、近接場光デバイス122の周囲に発生する近接場光の強度を受光器124でモニターするか、記録状態に応じた磁気記録層52の磁場の変調によって磁気発生器121に生ずる電流の変化等で検知する。(図8図9は近接場光の強度を受光器124でモニターする構成例を示している)。もちろん、近接場光の強度を受光器124でモニターする手法と磁気記録層52の磁場の変調によって磁気発生器121に生ずる電流の変化の双方を検知し、記録信号の復号の精度をあげるようにしてもよい。
【0059】
図9は、近接場光デバイス122の先端微粒子(即ち、金属端224)を、ニッケル、鉄、コバルト等の磁性体で構成した様子を示す。先端微粒子に金を用いた場合に比べて、磁場の集中が起こる。先端微粒子は容易に磁化されるように、真空装置等の中で作製する時、磁場を一方向にかけると有効である。
【0060】
近接場光デバイス122の先端微粒子に、磁気記録媒体50の微小領域へのエネルギー伝搬効果だけでなく、磁気記録媒体50の微小領域への磁気エネルギー収束効果も併せ持たせた。これによって、従来必要とされていた、TMGやGMRを用いた再生用磁気ヘッドを不要にすると共に、非常に高密度な磁気記録媒体50の書き込み読み出しを、1デバイス(近接場光デバイス122)で行える。
【0061】
尚、記録再生装置100は、近接場光デバイス122に加えて、磁界読取器、及び該磁界読取器の出力信号を読み取る信号読取器を備えていてもよい。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う近接場光デバイス及び記録装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
11…CPU、12…ヘッド、13…位置調整器、14、15…出力調整器、16…信号読取器、17…回転調整器、50…記録媒体、100…記録再生装置、121…磁界発生器、122…近接場光デバイス、123…エネルギー源、124…受光器、222、223…量子ドット層、224…金属端
図1
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図9